説明

神経伝達障害と関係のある障害の予防及び処置

本発明は、ヒト、コンパニオンアニマル、及び家畜におけるうつ病などの神経伝達障害と関係のある障害の予防及び処置のためのローズマリー抽出物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経伝達障害と関係のある障害の予防及び処置のためのローズマリー抽出物の使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
うつ病などの精神障害は、神経伝達障害、例えば、低い神経伝達物質濃度に関係していることは周知である。
【0003】
したがって、脳における神経伝達物質濃度を増加させ、それによりその伝達を増強する化合物は、抗うつ性、加えて、様々な他の精神障害への有益な効果を示す(「Neurotransmitters, drugs and brain function」R.A.Webster編、John Wiley & Sons、New York、2001、187〜211、289〜452、477〜498ページ)。主要な神経伝達物質は、セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、グルタメート、γ−アミノ酪酸、及びニューロペプチドである。神経伝達の増加は、シナプス前神経終末への再取り込みの阻害を通して、シナプス間隙における神経伝達物質の濃度を増加させることにより、それを神経伝達の増加若しくは持続のために利用できるようにすること、又はモノアミノオキシダーゼA及びBなどの分解酵素の阻害によって神経伝達物質異化反応を防ぐことによって達成される。
【0004】
例えば、イミプラミン、アミトリプチリン、及びクロミプラミンなどの三環系抗うつ化合物(TCA)は、セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込みを阻害する。これらの化合物は、利用可能な最も効果的な抗うつ剤の1つとして広く認められているが、いくつかの脳受容体、例えば、コリン受容体と相互作用するため、いくつかの欠点をもつ。最も重大なことには、急性心毒性を含むTCAの過量服用に関連したリスクがある。
【0005】
抗うつ薬のもう1つのクラスは、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、及びフルボキサミンを含むいわゆるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)であり、これは、セロトニンの取り込みによりセロトニン作動性神経伝達を終結させる高親和性塩化ナトリウム依存性神経伝達物質輸送体である、セロトニン輸送体(SERT)を遮断し、それによりセロトニンの再取り込みだけを阻害する。それらは、うつ病及び不安神経症の処置に効果的であることが実証されており、通常、TCAより耐容性が良好である。これらの薬物療法は典型的には、低用量から開始され、用量レベルは治療レベルに達するまで増加することができる。よく見られる副作用は、悪心である。他の起こりうる副作用には、食欲減退、口渇、発汗、感染、便秘、あくび、振戦、眠気、及び性機能不全が挙げられる。
【0006】
加えて、モノアミノオキシダーゼ(MAO)A及びBを阻害することにより、より広く神経伝達物質の異化反応を防ぐ化合物も抗うつ効果を示す。MAOは、セロトニン、ノルアドレナリン、及びドーパミンなどのアミノ基含有神経伝達物質の酸化を触媒する。
さらに、神経伝達の調節因子は、精神機能及び認知機能への多面発現効果を発揮する。
【0007】
公知の抗うつ剤のマイナス副作用を示さない、精神疾患及び/又は精神障害の処置又は予防のための化合物が必要である。多くの患者は、高用量の薬剤に関連した副作用を最小限にし、且つ追加の臨床的有用性を生じることができる代替療法に関心をもっている。重篤なうつ病は、長期にわたり、繰り返し起こる疾患であり、通常、診断が不十分である。さらに、多くの患者は、軽度又は中等度のうつ病に罹っている。このように、精神疾患/障害を処置するために、又はそのリスクがある人のうつ病などの精神疾患/障害の発症を予防するために、及び気分を安定させるために、用いることができる化合物、並びに薬学的組成物及び/又は食物組成物の開発への関心が高まっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】分画されたローズマリー葉の酢酸エチル抽出物についての画分番号に対するセロトニン取り込み阻害の比較を示す図である。
【発明の概要】
【0009】
注目すべきことに、植物ローズマリー(Rosmarinum officinalis)(俗名ローズマリー)の抽出物が、神経伝達障害に関係した疾患及び障害の管理に用いうることが今、見出された。
【0010】
したがって、本発明は、哺乳動物での神経伝達障害に関連した疾患又は障害の予防及び/又は処置のための医薬組成物又は栄養組成物の製造におけるローズマリーの抽出物の使用を提供する。
【0011】
本発明はさらに、それを必要としている哺乳動物に治療量のローズマリー抽出物を投与するステップを含む、哺乳動物において神経伝達障害に関連した疾患又は障害を予防及び/又は処置する方法にまで及ぶ。
【0012】
神経伝達障害に関連した疾患又は障害は、例えば、うつ病、過食症、又は強迫神経症でありうる。さらに、抽出物は、気分向上剤、ストレス緩和剤、又はコンディション改善剤としても用いることができる。
【0013】
哺乳動物は、ヒト又は動物、例えば、イヌ又はネコなどのコンパニオンアニマルでありうる。
【発明の詳細な説明】
【0014】
以下の説明において:
語句「ローズマリー抽出物」は、ローズマリーの抽出物を示すのに用いられる。ローズマリー抽出物は、植物体の任意の部分、例えば、葉、種子、根、胚、又は細胞培養物に由来するものであってよい。抽出物は、葉、根、及び/若しくは種子の凍結乾燥した抽出物の形であってもよく、又は当技術分野において公知の無機若しくは有機溶媒抽出法により得られる濃縮画分であってもよい。
単語「障害」はまた、疾患を含む。
単語「予防」は、障害の最初の発生の予防(一次予防)と再発の予防(二次予防)の両方を含む。
【0015】
本発明によれば、ローズマリー抽出物それ自体だけでなく、それらを含む栄養組成物及び薬学的組成物もまた、神経伝達障害に関係した障害及び疾患の処置に用いることができる。
【0016】
ローズマリー抽出物は、それが配合される製品の性質を十分顧慮して、当技術分野において公知の任意の適切な方法によって調製することができる。例えば、食品用ローズマリー抽出物は、ローズマリー植物の葉を乾燥させる、例えば、凍結乾燥することにより調製することができる。その後、乾燥した葉を適切な溶媒、例えば、ヘキサン又はヘキサンとエタノールの混合物を用いて、好ましくは不活性雰囲気下で、抽出することができる。その後、液相を、真空濾過により固相から分離することができる。濾液を取っておき、固相を最初の抽出と同様に第2抽出に供してもよく、その後、その2つの濾液を混合し、例えば、分画により必要に応じて濃縮してもよい。
【0017】
或いは、ローズマリー抽出物は、粉にした乾燥葉をヘキサンで脱脂し、その脱脂材料を酸加水分解に供し、その後、酢酸エチルなどの非混和性溶媒で加水分解水相を抽出することにより調製してもよい。この場合もやはり、得られた抽出物を必要に応じて分画してもよい。
【0018】
ローズマリー抽出物は、ヒト又は動物用の医薬組成物又は栄養組成物の調製に用いることができる。
【0019】
一実施形態において、栄養組成物は、ヒトの食用の食品組成物である。この組成物は、例えば、栄養的に完全な調合乳、乳製品、冷蔵若しくは長期保存用飲料、スープ、栄養補助食品、食事代替品、又は栄養バーでありうる。
【0020】
本発明による栄養的に完全な調合乳は、タンパク質源を含んでもよい。任意の適切な食物性タンパク質を用いることができ、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、食肉タンパク質、及び卵タンパク質など)、植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など)、遊離アミノ酸の混合物、又はそれらの組合せである。カゼイン及びホエーなどの乳タンパク質、並びに大豆タンパク質が特に好ましい。組成物はまた、炭水化物源及び脂肪源を含んでもよい。
【0021】
調合乳が脂肪源を含む場合には、脂肪源は、好ましくは、調合乳のエネルギーの5%〜40%、例えば、エネルギーの20%〜30%を供給する。ストレスのリスク及び炎症状態がある場合、n−6多価不飽和脂肪の大量摂取は、好ましくは、避けるべきである。好ましくは、n6/n3脂肪酸の比は、2:1から6:1の間であるべきである。これらの必要条件は、より高いn3含有量が要求される場合には、魚油などのn3 PUFAに富む供給源を補充した、キャノーラ油、コーン油、及び高オレイン酸ヒマワリ油のブレンドを用いることによって満たすことができる。
【0022】
炭水化物源を調合乳に加えてもよい。好ましくは、それは、調合乳のエネルギーの40%〜80%を供給する。任意の適切な炭水化物を用いることができ、例えば、ショ糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、コーンシロップ固形物、マルトデキストリン、及びそれらの混合物である。食物繊維も必要に応じて加えてもよい。食物繊維は、酵素によって消化されずに小腸を通過し、天然の膨張性薬剤及び緩下剤として機能する。食物繊維は、可溶性でも不溶性でもよく、一般的に、その2つの型のブレンドが好ましい。適切な食物繊維源には、大豆、エンドウ豆、オート麦、ペクチン、グアーガム、アラビアゴム、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、シアリル乳糖、及び畜乳由来のオリゴ糖が挙げられる。好ましい繊維ブレンドは、外側のエンドウ豆繊維(主に不溶性)、アラビアゴム、及び短鎖フルクトオリゴ糖(どちらも可溶性)の混合物である。好ましくは、繊維が存在する場合には、繊維含有量は、摂取される調合乳1l当たり10gから40gの間である。
【0023】
調合乳はまた、USRDAなどの政府機関省庁の推奨に従って、ミネラル、微量栄養素、及び微量元素を含んでもよい。
【0024】
1つ又は複数の食品用乳化剤を、必要に応じて調合乳に配合してもよく、それは例えば、モノグリセリド及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチン、並びにモノグリセリド及びジグリセリドである。同様に、適切な塩及び安定剤を含んでもよい。
【0025】
調合乳は、好ましくは経腸投与でき、例えば、乳若しくは水で戻される粉末若しくは濃縮液、固形製品、又はすぐ飲むことができる飲料の形をとる。
【0026】
調合乳は、任意の適切な方法で調製できる。例えば、それは、タンパク質源、炭水化物源、及び脂肪源を適当な割合で一緒にブレンドすることにより、調製できる。乳化剤は、用いられる場合には、この時点で含まれていてもよい。ビタミン及びミネラルをこの時点で加えてもよいが、通常、熱分解を避けるために後で加える。いずれの脂溶性ビタミン、乳化剤なども、ブレンド前に脂肪源へ溶解してもよい。その後、水、好ましくは、逆浸透にかけられた水と混合し、液体混合物を形成することができる。水の温度は、好都合には、成分の分散を助けるために約50℃〜約80℃である。液体混合物を形成するために、市販されている液化装置を用いてもよい。その後、液体混合物を例えば、2段階でホモジナイズする。
【0027】
その後、細菌負荷を低減するために、例えば、液体混合物を約80℃〜約150℃の範囲の温度まで、約5秒間〜約5分間、急速に加熱することにより、液体混合物を熱処理してもよい。これは、水蒸気圧入法、オートクレーブによって、又は熱交換器、例えば、平板熱交換器によって実施できる。
【0028】
その後、液体混合物を例えば、瞬間冷却により、約60℃〜約85℃まで冷却してもよい。その後、液体混合物を例えば、第1段階は約10MPa〜約30MPa、第2段階は約2MPa〜約10MPaの2段階で再びホモジナイズしてもよい。その後、ホモジナイズされた混合物をさらに冷却して、ビタミン及びミネラルなどの熱に弱い任意の成分を加えることもできる。ホモジナイズされた混合物のpH及び固形成分含有量を、好都合には、この時点で調整する。
【0029】
粉末調合乳を製造することが望まれる場合には、ホモジナイズされた混合物を、スプレー乾燥機又は凍結乾燥機などの適切な乾燥装置へ移し、粉末に変化させる。粉末は、約5重量%未満の含水率であるべきである。
【0030】
液体調合乳を製造することが望まれる場合には、ホモジナイズされた混合物を予備加熱し(例えば、約75〜85℃まで)、その後、ホモジナイズされた混合物に蒸気を注入して、温度を約140〜160℃に、例えば、約150℃に上昇させることにより、ホモジナイズされた混合物を無菌的に適切な容器に充填することが好ましい。その後、ホモジナイズされた混合物を例えば、瞬間冷却によって、約75〜85℃の温度まで冷却してもよい。その後、ホモジナイズされた混合物をホモジナイズし、さらに室温ぐらいまで冷却し、容器に充填してもよい。この手の無菌充填を行うための適切な装置は、市販されている。液体組成物は、約10重量%〜約14重量%の固形成分含有量をもつ、すぐに摂食できる調合乳の形をとってもよく、又は濃縮液(通常は、約20重量%〜約26重量%の固形成分含有量)の形をとってもよい。
【0031】
別の実施形態において、ヨーグルト又は朝食用シリアルなどの従来の食品を、ローズマリー抽出物で強化してもよい。
【0032】
さらなる実施形態において、ローズマリー抽出物は、ペットフード組成物の調製に用いてもよい。前記組成物をペットにその普通の食事の栄養補助食品として、又は栄養的に完全なペットフードの、若しくは低カロリーペットフード中の成分として投与してもよい。
【0033】
本発明による栄養的に完全なペットフード組成物は、粉末の乾燥した形、トリート、又は水分を含む、冷蔵若しくは長期保存用ペットフード製品でありうる。これらのペットフードは、当技術分野において公知の方法で製造することができる。
【0034】
ペットフードはまた、任意選択で、プレバイオティクス、プロバイオティクス微生物、又は別の活性作用物質、例えば、長鎖脂肪酸を含んでもよい。存在する場合には、ペットフード中のプレバイオティクスの量は、好ましくは、10重量%未満である。例えば、プレバイオティクスは、ペットフードの約0.1重量%〜約5重量%を構成できる。プレバイオティクス源としてチコリを用いるペットフードについて、チコリは、配合飼料の約0.5重量%〜約10重量%、より好ましくは、約1重量%〜約5重量%を構成するように含むことができる。
【0035】
プロバイオティクス微生物が用いられる場合には、ペットフードは、好ましくは、ペットフード1グラム当たり約10〜約1010コロニー形成単位(cfu)、より好ましくは、1グラム当たり約10〜約10cfuのプロバイオティクス微生物を含む。
【0036】
必要ならば、ペットフードにミネラル及びビタミンを補充してもよい。さらに、様々な他の成分、例えば、糖、塩、スパイス、調味料、香味剤などもまた、必要に応じて、ペットフードに配合してもよい。
【0037】
別の実施形態において、飼料添加物を、ペットフード品質を向上させる目的で調製することができる。飼料添加物として、それらは、カプセル化してもよく、又は粉末の形で提供して、メインの食事が水分を含んでいるか乾燥しているかにかかわらず、メインの食事と併せて、若しくはそれとは切り離してパッケージしてもよい。一例として、本発明による抽出物を含む粉末を粉末の形で、又はゲル若しくは液体若しくは他の適切な担体中で、小袋にパックしてもよい。これらの別々にパッケージされたユニットは、取扱説明書に従って、メインの食事と一緒に、又はメインの食事若しくはトリートと共に用いるための複数ユニットパックで、提供してもよい。
【0038】
なおさらなる実施形態において、個体において所望の効果を得るのに十分な量で前述のようなローズマリー抽出物を含む医薬を、調製することができる。この医薬は、例えば、錠剤、カプセル、トローチ、又は液体の形であってよい。ヒト又は動物用でありうる医薬はさらに、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、被膜剤、封入剤/材料、壁/殻材料、マトリックス化合物、被覆剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、蝋、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物(co−compound)、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、味マスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、酸化防止剤、及び抗菌剤を含んでもよい。医薬はまた、限定されるわけではないが、水、任意の起源のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホナート、タルク、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、香味剤、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などを含む、通常の薬学的添加剤及び補助剤、賦形剤、並びに希釈剤を含んでもよい。さらに、医薬は、経口又は経腸投与に適した有機又は無機担体物質を含んでもよい。
【0039】
神経伝達障害に関連した障害には、単極性うつ病、双極性うつ病、急性うつ病、慢性うつ病、亜慢性うつ病、気分変調症、産後うつ病、月経前不快気分/症候群(PMS)、更年期抑うつ症状、攻撃性、注意力欠陥障害(ADS)、社会不安障害、季節性感情障害、不安(障害)、線維筋痛症候群、慢性疲労、睡眠障害(不眠症)、外傷後ストレス障害、パニック障害、強迫性障害、下肢静止不能症候群、神経過敏、片頭痛/原発性頭痛及び一般的な疼痛、嘔吐、過食症(bulimia)、神経性食欲不振症、大食症(binge eating disorder)、胃腸障害、燃え尽き症候群、易刺激性、並びに疲労が挙げられる。
【0040】
ローズマリー抽出物はまた、高齢者における軽度認識障害などの神経認知障害の一次及び二次の予防並び/又は処置、心臓血管疾患、卒中、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病などの慢性疾患における併存症として起こる神経伝達障害に関係した抑うつ症状又は他の症状の処置のための組成物の製造に用いることができる。
【0041】
ある特定の状況では、ペット及び家畜もまた、神経伝達の増強又は改善を必要とすることがある。そのような状況は、捕獲後、輸送中若しくは輸送後、又は新しい家を与えた後若しくは移動させた後、生じる可能性があり、その時、動物は、類似の障害を発症し、ふさぎ込むようになり、又は攻撃的になることがある。
【0042】
このように、ローズマリー抽出物は、一般的には、ヒトを含む動物、好ましくは、ヒト、コンパニオンアニマル、及び家畜のための抗うつ剤として用いることができる。
【0043】
本発明のさらなる実施形態において、ローズマリー抽出物は、気分向上剤用としての医薬組成物及び栄養組成物の製造に用いる。「気分向上剤」とは、処置されるヒトの気分が高揚すること、自尊心が高まること、並びに/又はマイナス思考が減少する、感情のバランスがとれる、及び/若しくは一般的な健康問題が改善されることを意味する。
【0044】
さらに、ローズマリー抽出物は、ストレスの処置及び予防、ストレス関連症状の緩和、ストレス抵抗性若しくは耐性の増加のための、及び/又は健常者においてリラックスを助け、促すための、医薬組成物及び栄養組成物(即ち、そのような医薬及び組成物は、「ストレス緩和剤」としての効果をもつ)の製造に用いることができる。
【0045】
本発明のさらなる実施形態は、「コンディション改善剤」として用いる、即ち、興奮性及び疲労を低減させるため、静かな眠りを助けるため、空腹と満腹の制御及び運動活性の制御のため、並びにより一般的な言い方では罹患者又は健常者においてエネルギーを増加させるための、医薬組成物及び栄養組成物の製造におけるローズマリーの使用に関する。
【0046】
ヒト及び動物の両方について、本発明の目的のためのローズマリー抽出物の適切な1日量は、1日当たり1mg/kg体重から約100mg/kg体重までの範囲内でありうる。より好ましくは、約3mg/kg体重から約30mg/kg体重の1日量であり、特に好ましくは、約10mg/kg体重から20mg/kg体重の1日量である。
【0047】
ヒト及び動物用の医薬において、定義されたローズマリー抽出物は、適切には、用量単位当たり約1mgから約1000mgまで、好ましくは、約200mgから約500mgまでの量で存在する。
【0048】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。
【0049】
実施例1:ローズマリー抽出物の調製
40gのローズマリー葉を600mlヘキサンで脱脂した。その混合物を濾過してヘキサンを除去し、濃縮し、乾燥させ、そして粉に挽いた。300mlの1M塩酸を粉末に加えて、酸加水分解を起こし、水性加水分解物を150mlの酢酸エチルの3つの別々のアリコートで抽出した。その抽出物を濾過し、濃縮し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。
【0050】
100mgの抽出物を3mlメタノール(Merck)に溶解し、遠心分離し、濾過した(0.2μm)。この溶液の2ml(c=33mg/ml)をクロマトグラフィ(逆相RP18、水/メタノール/アセトニトリル(酢酸アンモニウム緩衝液を加えた)勾配)によって59個の画分に分画した。
【0051】
実施例2:ローズマリー抽出物によるセロトニン取り込み阻害
ヒトセロトニン再取り込み輸送体(hSERT)を安定に発現するHEK−293細胞は、R.Blakely、Vanderbilt University、USAから入手した。細胞を、10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミン、及び抗生物質G418を含むDulbecco改変イーグル培地(Bioconcept)で常法に従って増殖させ、トリプシン処理により継代した。アッセイの当日に、80%コンフルエントに達したフラスコからの細胞を、温かいリン酸緩衝食塩水(PBS)での穏やかな洗浄によって収集した。その後、細胞を遠心分離によって1回洗浄し、35μMパルギリン、2.2mM CaCl、1mMアスコルビン酸、及び5mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(「Hepes」と呼ばれる緩衝液)を追加したクレブス・リンガー重炭酸塩緩衝液(Sigma)に、160μlの緩衝液中10,000細胞の濃度で再懸濁し、丸底ポリプロピレン96ウェルマクロタイタープレート(Corning)にウェル当たり10,000細胞で分注した。細胞へのセロトニン取り込みを、放射標識(3H)セロトニン(GE Healthcare)を20nMの濃度まで添加し、穏やかに振盪させながら37℃で40分間インキュベートすることによって測定した。この時点の終わりに、組み込まれなかった標識は、Tomtec Mach III M細胞収集器を用いるUnifilter 96 GF/Bプレート(Perkin Elmer)を通して濾過することによって除去した。プレート上に保持された組み込みのセロトニンを、Microscint−40/Topcount(Perkin Elmer)を用いる液体シンチレーション測定によって定量した。
【0052】
hSERTを含む膜を、Galliら、Journal of Experimental Biology 1995、198、2197〜2212に従って、前記細胞株から調製した。データポイント当たり3μgの膜タンパク質及び0.8mgのコムギ胚芽アグルチニン被覆SPA(登録商標)(シンチレーション近接アッセイ)ビーズ(GE Healthcare)を放射標識(3H)シタロプラム(GE Healthcare)と、50mM Tris−HCl、300mM NaCl(pH7.4)中3.3nMの最終濃度まで混合した。室温で18時間インキュベートした後、結合したシタロプラムを、Topcount(Perkin Elmer)を用いるシンチレーション測定により定量した。
【0053】
ローズマリー抽出物のセロトニン取り込みへの効果を、(3H)セロトニンの添加前と添加中の10分間、0.03μMから100μMの間の濃度範囲でのアッセイにおいてそれらの包含によって測定した。図1は、分画された抽出物の(3H)セロトニン取り込みへの阻害活性を示す。
【0054】
図1:分画されたローズマリー葉の酢酸エチル抽出物についての画分番号に対するセロトニン取り込み阻害の比較を示す図である。黒色領域は、対照(0.25%DMSO単独)と比較して(3H)セロトニン取り込みの25%より大きい阻害を引き起こした画分を示す。測定された実効値は、画分16について61%、画分17について62%、及び画分45について100%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物での神経伝達障害に関連した疾患又は障害の予防又は処置のための医薬組成物又は栄養組成物の製造におけるローズマリー(Rosmarinum officinalis)の抽出物の使用。
【請求項2】
障害が、神経認知障害、単極性うつ病、双極性うつ病、急性うつ病、慢性うつ病、亜慢性うつ病、気分変調症、産後うつ病である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
哺乳動物での気分向上剤である医薬組成物又は栄養組成物の製造におけるローズマリーの抽出物の使用。
【請求項4】
哺乳動物でのストレス緩和剤である医薬組成物又は栄養組成物の製造におけるローズマリーの抽出物の使用。
【請求項5】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
哺乳動物がコンパニオンアニマル又は家畜である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
抽出物が、ローズマリーの葉、種子、根、胚、又は細胞培養物から得られる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
用量単位当たり200mgから500mgまでの抽出物を含む医薬の製造における請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
栄養組成物が、タンパク質源、炭水化物源、及び脂肪源を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−510293(P2010−510293A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537644(P2009−537644)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062707
【国際公開番号】WO2008/062046
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】