説明

移動ステージの混成解像度フィードバックのための方法および装置

低解像度/低コストのフィードバックデバイス72を高解像度/高コストのフィードバックデバイス74、76、78、80、82、84、86、88と組み合わせることによって、移動の範囲全体から高解像度の位置フィードバックを提供することに関連するコストを発生することなく、割出しシステム10において移動ステージ52から高解像度の位置フィードバックを取得するための、方法および装置が提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年5月29日に出願された仮出願第61/182,469号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、レーザ加工システムにおける移動ステージの位置に関連するフィードバックを取得するための、方法および装置に関する。具体的には、電子機器の製造で使用されるレーザ加工システム内の、加工または装着/取り外し位置の間で、物品を割出しするように設計された移動ステージから高解像度の位置フィードバックを取得することに関する。より具体的には、粗い解像度および微細な解像度のフィードバックデバイスを並行して使用する、移動ステージから高解像度の位置フィードバックを取得するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
高解像度の位置フィードバックは、多くの精密移動システム、特に電子機器の製造で使用されるレーザ加工システムにおいて、物品を固定するように設計された移動システムの要件である。レーザ加工システムは、一般的に、物品から材料を除去するため、物品の表面または内部に印を付けるため、共通の基板上に加工された物品を単品化(singulate)するため、または焼きなますため、または別法により物品を調整するために使用される。物品は、アルミニウムもしくはスチール等の金属類、ガラスもしくはガラスのような材料、または種々のプラスチック類から作製することができる。物品は、半導体ウエハもしくはプリント配線板等の基板、集積回路もしくは電気光学デバイス等のデバイス、ディスプレイもしくはセンサ等のアセンブリ、または筐体等の包装構成要素であることができる。
【0004】
いくつかのレーザ加工システムは、システム処理量を増大させるために、一度に2つ以上の物品を固定することができる移動ステージを備えて構築される。これらのシステムは、物品を、それらが装着または取り外すことができる位置から、レーザ加工のための位置、場合によってはさらなるレーザ加工または検査等の他の作業のための位置へと移動させる、移動ステージを有する。これらの機能を実行する1つの例示的なレーザ加工システムは、米国オレゴン州ポートランド(郵便番号97229)のElectro Scientific Industriesによって製造される、ESI ML5900 Laser Micromachining Systemである。図1は、ESI ML5900等の典型的なレーザ加工システムの略図を示す。これらのシステムは、移動された距離のごくわずかな割合である精度を維持しながら、位置の間の比較的長い距離で物品を割出ししなければならない。この移動は、回転、連続的なベルト等の直線状、または往復である可能性がある。例えば、回転ステージは、物品を数センチメートル相当移動させる場合があり、物品の位置が移動の終了時に数ミクロン内であることが既知であることが必要である場合がある。これは、この作業を達成するために必要な機械的精密度を有する装置を構築することによって達成することができる可能性があるが、動作するためにはコストおよび時間の両方が多いものとなる。典型的に使用される手法は、機械構成要素を通常の製造公差内に構築し、ステージの位置を示すためのエンコーダを備える移動ステージを設置することである。この問題に対する典型的な手法は、移動システムの運動範囲全体にわたる高解像度のフィードバックを提供するために、微細なグリッドピッチの高品質の直線もしくは回転式光学エンコーダまたは線形干渉計の使用を伴う。双方の解決法が十分に確立されてはいるが、しかしながら、運動範囲全体にわたりかかる高解像度のフィードバックを提供することに関連するコストは大きい。図2は、典型的な先行技術の回転ステージ割出しシステムを示す。
【0005】
低解像度かつ低コストのフィードバックデバイスを、高解像度かつ高コストのデバイスと組み合わせる、フィードバック要件を位置付ける明白な業界の解決法は存在しない。したがって、低解像度かつ低コストのデバイスと高解像度/高コストのデバイスとの間のコストで、移動ステージから高解像度の位置フィードバックデータを取得するための、方法および装置の継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、所定の位置の間で割出しするように設計される移動ステージから、低解像度および高解像度の両方の位置フィードバックを提供することによって、レーザ加工を改善する。本発明の態様は、移動ステージが割出しされた位置の間を移動する際に、移動ステージから粗い位置情報を提供するために、低解像度/低コストのデバイスを使用する。既存のレーザマイクロマシニングシステム、ESI ML5900は、本発明の態様を実装するように適合される。ESI ML5900は、物品を加工する際に位置間で割出しする移動ステージを有する。「割出し」とは、システムが物品を加工する過程で繰り返し戻る、ステージの全運動範囲内の1つ以上の位置を有する移動ステージを指す。これらの位置は、物品がステージに装着もしくはそこから取り外しされる位置、またはレーザ加工もしくは検査等の他の作業が行われる位置であってもよい。高解像度/高コストのフィードバックデバイスは、低解像度フィードバックデバイスが、移動ステージが割出し位置の近傍にあることを示すときに、本システムが割出し位置近傍に設置された高解像度フィードバックデバイスから位置フィードバック情報にアクセスできるように、これらの割出し位置の近傍の移動ステージに適用され、それにより、移動ステージの全運動範囲にわたって高解像度の位置フィードバックを提供することに関連するコストなしで、移動ステージの位置に関する高解像度情報を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】先行技術のレーザ加工システムを示す図である。
【図2】先行技術の割出し移動ステージを示す図である。
【図3】混成解像度のフィードバックを有する、割出し移動ステージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、運動範囲にわたる移動ステージの位置を示す低解像度位置フィードバックデバイスを提供することによって、レーザ加工システムを用いた物品のレーザ加工を改善する。本実施形態は、移動ステージに、低解像度位置フィードバックデバイスによって示される第1の位置に移動するように指示し、さらに、第1の位置の近傍では高解像度位置フィードバックデバイスを提供する。次に、これらの実施形態は、移動ステージに、高解像度位置フィードバックデバイスによって示される第2の位置に移動するように指示し、それによってレーザ加工システムに、その運動範囲全体に高解像度のフィードバックを必要とすることなく、高解像度の位置精度を提供する。
【0009】
レーザ加工システムは、レーザビームに対して物品を位置付け、次にレーザビームに、物品に衝突するエネルギーを発するように指示することにより、それらを加工する。図1は、レーザパルス14を発するレーザ12を有する典型的な先行技術のレーザ加工システム10を示す。これらのパルス14は、任意選択で、トップハット分布等の所望の空間分布、またはテーラード(tailored)パルス等の所望のパルス時間分布を形成するように、レーザによって発される典型的なガウス分布パルスから、レーザパルスの空間的および時間的分布を成形することができる、ビーム成形光学素子16によって成形される。次に、パルス14は、ビームをステアリングするために検流計、高速ステアリングミラー、可変鏡、電気光学デバイス、または音響光学デバイスを使用して、レーザビームを方向付けるビームステアリング光学素子18によって、物品上の所望の位置に再度方向付けられる。次に、レーザパルスは、移動ステージ24上に固定された物品22に衝突するように、任意選択の場光学素子20を通って方向付けられる。移動ステージ24の移動は、レーザ12、ビームステアリング光学素子18、および移動ステージ24の動作を協調させ、指示するコントローラ26によって、ビームステアリング光学素子18のステアリングと組み合わされる。
【0010】
移動システムの典型的な使用は、機械加工目的で、加工ステーションに対して部品を正確に位置付けることを伴う。この種類の使用に対する特定のシナリオは、有限数の個別の割出し位置を有する回転テーブルを備える移動システムである。1つの割出し位置から次の割出し位置へと順次移動し、その後、次の部品を加工領域内に位置付ける。図2は、回転テーブル32に取り付けられた物品を保持するための4つの固定具34、36、38、40を有する、かかる回転式割出しテーブル32を示す。図2は、固定具34の中に物品50を装着した、回転テーブル32に隣接する装着/取り外しステーション42を示す。次に、回転テーブル32は、物品50を加工ステーション44によって加工されるように位置52に持ってきて、固定具34および物品50を、以前は固定具36によって占有されていた位置である、加工ステーション44の隣接する位置に持ってくるように、矢印の方向に割出しする。回転テーブル32の続く割出しが、固定具34および物品50を加工ステーション46の隣接する位置に持ってくることになり、固定具34を位置38に配置し、かつ物品50を位置54に配置する。同様に、回転テーブル34の割出しが、再び固定具34および物品50を、加工ステーション48に隣接するそれぞれ位置44および56に持ってくる。別の割出しが、固定具34および物品50を装着/取り外しステーション42の隣接する位置に持ってきて戻すことになり、ここで加工された物品50を取り外し、新しい未加工の物品と置き換えることができる。
【0011】
回転テーブルは、加工のために物品を固定するエンドレスベルト等の線形デバイスと置き換えられてもよい。この配設では、物品がある地点で装着され、加工ステーションを過ぎて割出しされ、次に別の地点で取り外されてもよい。また、回転テーブルは、往復移動を支持するデバイスと置き換えられてもよく、ここでは部品がある地点で装着され、デバイスがその部品を1つ以上の加工ステーションに移動させ、次いでその部品を戻す。
【0012】
本発明の実施形態が図3に示される。回転テーブル53は、回転テーブル53が矢印の方向に割出しする際に、装着/取り外しステーション62および後続の加工ステーション64、66、68に隣接して、物品70を保持するための固定具55、57、59、60を有する。本実施形態は、加工ステーションに隣接して適用される走査ヘッド82、84、86、および88とともに、回転テーブル53に適用される低解像度、すなわち粗い解像度の位置フィードバックセンサ72、および高解像度、すなわち微細解像度スケール74、76、78、および80を追加することにより、本発明に従って適合される。例えば、レーザ加工システム(図示せず)が、低解像度位置センサ72から受け取られた情報に従って、回転テーブル53に、固定具55および物品70を加工ステーション64の隣接する位置に配置するように割出しすることを指示すると、高解像度スケール74は、走査ヘッド84の近位に持ってこられることになり、それにより高解像度位置センサを形成し、次いで、隣接する加工ステーション64に対する回転テーブル53、したがって固定具55および物品70の位置に関する高解像度の位置情報を通信する。
【0013】
レーザ加工システムによって受け取られた高解像度情報を使用して、移動ステージに移動するように命令することにより、レーザ加工システムに対する物品の位置を訂正してもよく、あるいはその情報を使用して、物品を電気光学的に加工するために使用されるレーザビームの経路を変更して、物品の位置を補正してもよい。本実施形態では、低解像度センサは、数ミリラジアンの解像度を有するシャフトエンコーダであってもよく、一方高解像度センサは、硝子スケールおよび数ミクロンの解像度を有する電気光学走査ヘッドを備えてもよい。
【0014】
前述の説明は例示的な様式で提示され、本特許の意図または意義から逸脱しない、本発明を実装する他の手段が利用可能である場合がある。したがって、我々は、本発明の範囲が以下の特許請求の範囲によってのみ決定されることを要求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工システムを用いて物品をレーザ加工するための改善された方法であって、前記レーザ加工システムが移動ステージを有する、方法は、
前記移動ステージの第1の位置を含む第1の近傍内の前記移動ステージの位置を示すために、前記移動ステージに動作可能に接続された低解像度位置フィードバックデバイスを提供することと、
前記移動ステージに、前記低解像度位置フィードバックデバイスによって示された前記第1の位置に移動するように指示することと、
前記第1の位置を含む第2の近傍内の前記移動ステージの第2の位置を示すために、前記移動ステージに動作可能に接続された高解像度位置フィードバックデバイスを提供することと、
前記高解像度位置フィードバックデバイスによって示された前記第2の位置を、前記レーザ加工システムに通信することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記レーザ加工システムは、前記通信された第2の位置に基づいて、前記移動ステージに、前記高解像度位置フィードバックデバイスによって示された第3の位置に移動するように指示する、請求項1に記載の改善された方法。
【請求項3】
移動ステージを有する物品をレーザ加工するための改善されたレーザ加工システムであって、前記改善点は、
前記移動ステージの第1の位置を示すための、前記移動ステージに動作可能に接続された低解像度位置フィードバックデバイスと、
前記移動ステージの第2の位置を示すための、前記第1の位置の近傍で前記移動ステージに動作可能に接続された高解像度位置フィードバックデバイスと、を含む、改善されたレーザ加工システム。
【請求項4】
レーザ加工システムを用いて物品をレーザ加工するための改善された方法であって、前記レーザ加工システムは、レーザ、レーザビーム、レーザビームステアリング光学素子、コントローラ、および移動ステージを有し、前記改善点は、
前記移動ステージの第1の位置を含む第1の近傍内の前記移動ステージの位置を示すために、低解像度位置フィードバックデバイスを提供することと、
前記移動ステージに、前記低解像度位置フィードバックデバイスによって示された第1の位置に移動するように指示することと、
前記第1の位置の第2の近傍内の前記移動ステージの第2の位置を示すために、前記移動ステージに動作可能に接続された高解像度位置フィードバックデバイスを提供することと、
前記高解像度位置フィードバックデバイスによって示された前記第2の位置を、前記コントローラに通信することと、を含む、方法。
【請求項5】
前記コントローラは、前記通信された第2の位置に基づいて、前記移動ステージに、前記高解像度位置フィードバックデバイスによって示された第3の位置に移動するように指示する、請求項4に記載の改善された方法。
【請求項6】
前記コントローラは、前記通信された第2の位置に基づいて、前記レーザビームステアリング光学素子に、前記レーザビームをステアリングするように指示する、請求項4に記載の改善された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−528010(P2012−528010A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513288(P2012−513288)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036556
【国際公開番号】WO2010/138804
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】