説明

移動体テレビ受信器における伝送規格の自動選択

移動体受信器に情報チャネルA1、A2、A3を伝送するための移動体システムにおいて、上記情報チャネルA1、A2、A3は、様々な伝送規格を用いる複数のデータチャネルを介して、並列に伝送される。移動体受信器は、伝送規格を、そのエネルギー供給方法に応じて選択する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、様々な伝送規格を用いて情報チャネルを伝送するための移動体通信システムに関するものである。さらに、本発明は、これらの様々な伝送規格間の情報チャネルを受信するために選択された移動体受信器、および、本発明の移動体通信システムと本発明の移動体受信器との操作方法に関するものである。
【0002】
ラジオ番組またはテレビ番組のような情報チャネルを伝送するために、アナログ伝送規格またはデジタル伝送規格が用いられる。エンドユーザへの伝送は、地上波無線リンクまたは、ケーブルリンク、または、衛星によって行われることが多い。2003年、2004年には特に、デジタル地上波テレビの伝送は、伝送規格DVB‐T(デジタルビデオ地上波放送(Digital Video Broadcasting-Terrestrial))にしたがって行われている。この伝送規格は、特に、据付の、移動式ではない受信器の画質を上げることを目標としている。その結果、受信器の消費電力が上がるので、移動体機器ではこの伝送規格の実用的な利用が妨げられてしまう。
【0003】
携帯できる移動体機器による実用的なテレビ受信を可能にするために、標準DVB‐H(携帯型デジタルラジオ放送(Digital RadioBroadcasting-Handheld))が開発された。この規格の特徴は、画像の解像度が低く、伝送速度が遅いことにある。この解像度は、一般的には移動体機器の表示素子が比較的小さいので、差し支えない。しかし、この伝送規格の特に優れた点は、いわゆるタイムスライシング方法またはタイムスロット方法にある。この方法では、データの伝送は、時間的に制限された期間に、いわゆるデータバーストとして行われる。これにより、送信器は、例えば、時分割多重方式によってより多くの情報チャネルを送信できる。この伝送規格の大きな利点は、実行中のデータバーストとデータバーストとの間の時間において、受信器の幅広い範囲の電源を切断することができる、という点である。これにより、エネルギーを著しく節約することができ、移動体受信器の動作時間を著しく長くすることができる。
【0004】
本発明の目的は、情報チャネルをエンドユーザに伝送するために有効な様々な伝送規格をどのように用いることができるかという技術思想を提示することにある。
【0005】
本発明は、情報チャネルを複数の移動体受信器に伝送するための移動体通信システム、および、その動作方法に基づいている。ここで、少なくとも1つの情報チャネルが、様々な伝送規格を有する複数のデータチャネルを介して、並列に伝送される。ここでは、等価情報が、様々なデータチャネルを介して、同時に並列に送信される。1つの情報チャネルに対応する複数のデータチャネルは、等価情報(つまり移動体受信器のユーザが内容的に等価である、または、同じであると認識するような等価情報)を伝送する。したがって、これらの様々なデータチャネルは、並列で独立型の、代替的に選択可能な、情報チャネルの伝送路になっている。
【0006】
上記のデータチャネルは単方向性である。つまり、受信器は、これらのデータチャネルに対して受動的な受信器である。情報は、データチャネル内で一方向にのみ送信される。したがって、送信器から伝送されるデータチャネルを、複数の受信器が同時に受信または利用できる。しかし、特定個人向けサービスを、本発明の移動体通信システムを介して、単一のまたは複数グループの受信器に伝送してもよい。さらに、伝送されたデータは、受信器専用コードによって保護または暗号化されている。これにより、コードを知っている受信器だけが、このサービスを利用でき、または、上記データを復号できる。したがって、本発明の移動体通信システムを用いて、例えば、様々な料金の様々な詳細に関する情報チャネルを、提供できる。
【0007】
1つの情報チャネルに対応した複数のデータチャネルに用いられる伝送規格は、異なっている。特に、1つの情報チャネルの様々なデータチャネルのデータ速度は異なっていてもよい。したがって、データチャネル同士の帯域幅が変化してもよい。例えば、この情報チャネルの様々な質の程度(画像の解像度、フレームレート、色の濃さなど)は、様々なデータチャネルを介して、伝送される。1つの情報チャネルを複数のデータチャネルまたは様々な伝送規格を介して並列に提供する場合の他の基本的な考えが、提示された伝送規格が移動体受信器に対して非常に様々な技術的要求を課す、ということである。これらの技術的要求は、ここで、例えば、各伝送規格を使用するために必要があれば受信器が行わなければならない、ある種の最小要求に関するものであってもよいし(演算性能、記憶場所など)、または、例えば伝送規格を復調している間に受信器が受け取る移動体受信器の電力といった、間接的な変数に関するものであってもよい。該受信器が第1伝送規格を、そのデータチャネルをアンテナにおいて用いるにもかかわらず、用いることができない場合、または、用いるべきではない場合、この受信器は、第2データチャネルを介して使用可能な、簡単に実現されるか、または、与えられた情況により適した技術的要求を僅かに有している第2伝送規格を使用する。
【0008】
好ましい一形態では、1つの情報チャネルを様々なデータチャネルで伝送するための主なデジタル伝送規格を用いる。
【0009】
本発明の移動体通信システムの他の好ましい一形態では、該データチャネルは、地上波で伝送される。特に好ましい一形態では、該様々なデータチャネルは、同じ送信器、または、近接した複数の送信器から送信される。これにより、該様々なデータチャネルにほぼ同じ空間的な受信可能範囲が生じる。したがって、1つの情報チャネルに基づいて、様々な伝送規格を常に選択することができる。
【0010】
本発明の移動体通信システム、または、本発明の移動体通信システムの動作方法の、好ましい一形態では、1つのデータチャネルにおいて、いわゆるタイムスライシング方法またはタイムスロット方法を用いる伝送規格を少なくとも使用する。ここで、データは、制限されたタイムスロット内でのみ、いわゆるデータバーストとして伝送される。互いに隣接しているタイムスロット間の時間領域では、移動体受信器をほぼOFF状態にすることができる。これにより、移動式受信器の平均消費電力を著しく低減できる。このことはとりわけ、移動可能な携帯用の受信機器にとって利点である。
【0011】
本発明の移動体通信システムは、様々な種類の情報チャネル、例えば、ラジオ放送またはテレビ放送、または、各種(例えば、音楽の題名およびビデオクリップ)のデータ(特にマルチメディアデータ)のデータストリーム(「ストリーミング」、「ビデオオンデマンド」)に用いられる。本発明の好ましい一形態では、移動体通信システムは、テレビ番組を伝送するために形成されている。これらのデータチャネルに用いられる伝送規格は、デジタルテレビ伝送規格DVB-T(Digital Video Broadcasting- Terrestrial)およびDVB‐H(Digital VideoBroadcasting-Handheld)を含んでいることが好ましい。DVB‐T‐規格は、テレビ放送の地上波デジタル伝送に用いられ、つまり、場所を固定した受信器用である。この規格の特徴は、解像度の高い大きな表示素子に適した、高い画像品質にある。また、DVB‐H‐規格は、デジタルテレビ放送を携帯機器に受信するために用いられる。この規格の特徴は、画像品質が、通常携帯可能な機器の小さな表示素子に差し支えない程度に低く、受信器の消費電力が少ないという点にある。
【0012】
本発明の他の一側面は、移動体受信器、および、移動体通信システムにおける情報チャネルの受信方法に関するものである。少なくとも1つの情報チャネルが、様々な伝送規格を有する複数のデータチャネルを介して、並列に伝送される。本発明の移動体受信器は、ここで、移動体通信システムが伝送する様々な伝送規格を検出して使用する、つまり、処理または復調することができる。
【0013】
本発明の情報チャネルの受信方法の好ましい一形態では、移動体受信器において、所望の情報チャネルを、用いられるデータチャネルのどのデータチャネルを介して受信するかという選択が、行われる。好ましい一形態では、このデータチャネルの選択を、伝送規格の選択と組み合わさった情報チャネルの選択に基づいて行う。該情報チャネルの選択は、ユーザによって行われる。
【0014】
好ましい一形態では、該伝送規格の選択は、移動体受信器の動作情報に基づいて行われる。本発明の移動体受信器の特に好ましい一形態では、移動体受信器の電力供給方法に応じて上記伝送規格を選択するための手段が接続されている。この移動体受信器にエネルギー網を介してエネルギーが供給されると、該移動体受信器の上記選択手段は、例えば伝送規格を選択する。この伝送規格は、移動体受信器に対して高度の要求(演算性能、消費電力など)を設定し、しかしそのために、高品質(画像の解像度、色の濃さ、フレームレートなど)を提供している。一方で、上記移動体受信器は、容量に応じて制限されたエネルギー源(電池、Akkuなど)から該移動体受信器の電気エネルギーを受け取ると、この移動体受信器の選択手段は伝送規格を選択する。この伝送規格を受信すると、移動体受信器の消費電力は低減する。ここで、質の下がった情報チャネルを受信する場合がある。この伝送規格は、エネルギー供給方法に応じて、つまり自動的に、選択される。
【0015】
他の好ましい一形態では、エネルギー供給が容量に応じて制限されている場合、例えばDVB‐H‐規格のようなタイムスライシング方法を用いる伝送規格が選択される。しかし、ユーザが伝送規格の選択を直接制御するか、または、ユーザが伝送規格を選択するための様々な決定基準を規定することも、考えられる。
【0016】
情報チャネルを受信するための本発明の移動体受信器の他の好ましい一形態では、伝送規格を選択するための手段は、図表間で選択する。これらの図表では、利用可能な情報チャネルに対する、アンテナに位置する使用可能なデータチャネルの受信情報またはチャネル情報は、公知の伝送規格にしたがって保存される。
【0017】
次に、本発明の移動体受信器を、図面および実施形態に基づいて詳述する。
【0018】
図1は、移動体受信器においてデータチャネルを選択する選択メカニズムの一形態を示している。ユーザインターフェース1には、選択に用いられる様々な情報チャネルA1、A2、A3がある。テレビ受信器が移動体受信器である場合、情報チャネルA1、A2、A3は、ARD、ZDF、3sat、RTLといった使用可能なテレビ放送に相当する。図表2aには、伝送規格DVB‐Tに用いるデータチャネルのチャネル情報が、様々な情報チャネルA1、A2、A3に保存されている。図表2bには、伝送規格DVB‐Hに基づいて、等価チャネル情報が保存されている。制御ユニット4が、スイッチ3を、移動体受信器のエネルギー供給方法に応じて接続する。移動体受信器に、エネルギー網を介してエネルギーを供給すると、図表2a(伝送規格DVB‐T)から復号器5にデータチャネルのチャネル情報を供給するように、スイッチ3が接続される。一方では、移動体受信器が、組み込まれた電池または組み込まれたAkkuから該移動体受信器の電気エネルギーを受け取ると、図表2b(伝送規格DVB‐H)から復号器5にチャネル情報が供給される。復号器5が受信するチャネルは、移動体受信器のエネルギー供給方法に応じて自動的に選択される。情報チャネルA1、A2、A3に対して、単一のデータチャネルおよびそれに伴う単一の伝送規格を用いる場合、好ましい一形態では、いかなる場合でも、エネルギー供給方法の影響を受けずに、このデータチャネルのチャネル情報を復号器5に供給する。
【0019】
この移動体受信器では、情報チャネルの受信器から送信器にデータを伝送できる他の通信チャネルが、用いられていることが好ましい。これらの他の通信チャネルは、GSM、UMTS、または、ブルートゥースといった公知の伝送規格を用いてもよい。
【0020】
本発明の移動体受信器は、情報チャネルをDVB‐H‐規格に基づいて受信する場合、連続波の出力が300mW未満で動作できる。各100mWは、受信部分および復号器に分配される。残りの出力の最大部分は、表示素子の照明に用いられる。したがって、例えば、規格サイズの携帯電話当たり10〜15時間駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】移動体受信器においてデータチャネルを選択する選択メカニズムの一形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報チャネル(A1、A2、A3)を複数の移動体受信器に伝送するための移動体通信システムであって、少なくとも1つの情報チャネル(A1、A2、A3)が、様々な伝送規格を有する複数のデータチャネルを介して並列に伝送されることを特徴とする、移動体通信システム。
【請求項2】
少なくとも1つの伝送規格がタイムスライシング方法を用いることを特徴とする、請求項1に記載の移動体通信システム。
【請求項3】
上記移動体通信システムは、デジタルテレビ番組を伝送するために備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
上記伝送規格は、DVB‐TおよびDVB‐Hを含んでいることを特徴とする、請求項3に記載の移動体通信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの1つまたは複数の請求項に記載の移動体通信システムの中の情報チャネル(A1、A2、A3)を受信することを特徴とする、移動体受信器。
【請求項6】
どのデータチャネルを介して情報チャネル(A1、A2、A3)が受信されるかが、移動体受信器において選択されることを特徴とする、請求項5に記載の移動体受信器。
【請求項7】
上記伝送規格を選択するための手段(3)が、動作情報に応じて、特に、移動体受信器のエネルギー供給方法に応じて、または、ユーザ情報に応じて、伝送規格を選択することを特徴とする、請求項6に記載の移動体受信器。
【請求項8】
上記伝送規格を選択するための手段(3)は、利用可能な情報チャネル(A1、A2、A3)に対する、上記受信器に位置する使用可能なデータチャネルの受信情報が公知の伝送規格にしたがって保存されている図表(2a、2b)間で、選択することを特徴とする、請求項7に記載の移動体受信器。
【請求項9】
請求項1または請求項1〜4のうちの1つまたは複数にかかる移動体通信システムの情報チャネル(A1、A2、A3)を複数の移動体受信器に伝送するための方法において、
少なくとも1つの情報チャネル(A1、A2、A3)を、様々な伝送規格を有する複数のデータチャネルを介して並列に伝送することを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の移動体通信システムにおける、情報チャネル(A1、A2、A3)を受信することを特徴とする、方法。
【請求項11】
どのデータチャネルを介して情報チャネル(A1、A2、A3)が受信されるかを、移動体受信器において選択することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記伝送規格を、動作情報に応じて、特に、移動式受信器のエネルギー供給方法に応じて、または、ユーザ情報に応じて、送信することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記伝送規格を選択するために、利用可能な情報チャネル(A1、A2、A3)に対する、上記受信器に位置する使用可能なデータチャネルの受信情報が公知の伝送規格にしたがって保存されている図表(2a、2b)間で、選択することを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−528166(P2007−528166A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502179(P2007−502179)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000217
【国際公開番号】WO2005/088879
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (331)
【Fターム(参考)】