説明

移動体制御装置、これを用いた移動体、及び移動体制御方法

【課題】移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を容易にしてドライバの負担を軽減する移動体制御装置、これを用いた移動体、及び移動体制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数のレーンLが略平行配置されたコンテナヤード1(走行領域)上で移動するトランスファークレーン11(移動体)に、各レーンLに設けられたオートステア用ガイドライン42(走行ガイド用標識)を検出するガイドライン検出器46(標識検出器)と、トランスファークレーン11の動作を制御する移動制御装置48とを設ける。移動制御装置48を、トランスファークレーン11が異なるレーンLに移動する際には、ガイドライン検出器46が移動先のレーンLに対応するオートステア用ガイドライン42を検出したことをもって移動先のレーンLに到達したと判断して、検出したオートステア用ガイドライン42に対してトランスファークレーン11の位置調整を行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略平行配置される複数のレーンを有する走行領域上での移動体の動作を制御する移動体制御装置、これを用いた移動体、及び移動体制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体制御装置としては、例えば後記の特許文献1に記載のトランスファークレーン走行移動制御装置が知られている。
ここで、トランスファークレーン(移動体)は、例えば港湾等のコンテナヤード内で自走して、このコンテナヤード内でコンテナの荷役を行うものである。
コンテナヤードには、それぞれコンテナが段積みされる複数のレーンが互いに平行にして設けられている。各レーンには、それぞれトランスファークレーンが設けられており、これらトランスファークレーンは、レーンに沿って移動可能とされていて、レーン上の任意の位置でコンテナの荷役を行うことができるようになっている。
【0003】
トランスファークレーン走行移動制御装置は、各レーンのそれぞれにレーンに沿って設けられるオートステア用ガイドラインと、トランスファークレーンに設けられてオートステア用ガイドラインを検出するオートステア用センサとを有している。
トランスファークレーン走行移動制御装置は、オートステア用センサの出力に基づいてオートステア用ガイドラインに対するトランスファークレーンの位置ずれを検出し、この情報に基づいて、トランスファークレーンがオートステア用ガイドラインに沿って走行するように(すなわちトランスファークレーンがレーンに沿って走行するように)、トランスファークレーンの走行方向を制御するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−192268号公報(段落[0024])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランスファークレーンは、各レーンに沿った方向への走行(横走行)以外にも、レーンに直交する方向への走行(縦走行)が可能とされており、異なるレーンに移動することも可能である。
しかし、トランスファークレーンを異なるレーンに移動させる際には、移動先のレーンにおいてもトランスファークレーンの横走行時にトランスファークレーン走行移動制御装置が正しく機能するように、オートステア用センサとオートステア用ガイドラインとが対向する位置にトランスファークレーンを正確に位置決めする必要がある。この位置決め作業の際に許容される位置決め誤差は、±50mm程度と非常に小さいので、この位置決め作業は、トランスファークレーンのドライバにとっては大きな負担となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を容易にして移動体のドライバの負担を軽減する移動体制御装置、これを用いた移動体、及び移動体制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、平行配置される複数のレーンとこれら各レーンに対応させて設けられた走行ガイド用標識とを有する走行領域上で、前記走行ガイド用標識に基づいて移動体の動作を制御する移動体制御装置であって、前記移動体に設けられて前記走行ガイド用標識を検出する標識検出器と、該標識検出器の検出結果に基づいて前記移動体の動作を制御する移動制御装置とを有し、該移動制御装置は、前記移動体が同一の前記レーン上で移動する際には、前記標識検出器によって検出された前記走行ガイド用標識に基づいて前記移動体の走行方向を制御し、前記移動体が異なる前記レーンに移動する際には、移動過程で前記標識検出器によって移動先の前記レーンに対応する前記走行ガイド用標識が検出されたことをもって、前記移動体が前記移動先のレーンに到達したと判断して、前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識に対して前記移動体の位置調整を行う移動体制御装置を提供する。
【0008】
このように構成される移動体制御装置では、移動体がレーンに沿って移動する際には、従来の移動体制御装置と同様に、標識検出器によって走行ガイド用標識が検出され、この標識検出器の検出結果に基づいて、移動体がレーンに沿って移動するよう、移動制御装置によって移動体の走行方向が制御される。
【0009】
一方、この移動体制御装置では、移動体が異なるレーンに移動する際には、移動制御装置は、移動過程で標識検出器によって移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識が検出されたことをもって、移動体が前記移動先のレーンに到達したと判断して、移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識に対して、移動体の位置調整を行う。
【0010】
ここで、移動体本体と標識検出器との相対位置が移動体の移動方向によらず一定である場合には、移動体は、標識検出器が移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識を検出した時点での位置に位置決めされる。
また、移動体を異なるレーンに移動させる際には、移動体のドライバが手動操作によって移動体を移動先のレーン近傍まで移動させたのちに移動制御装置による制御に切替えてもよく、また、異なるレーンに移動する際に移動体に行う制御の全てを移動制御装置が行うようにしてもよい。
【0011】
この移動体制御装置では、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を自動的に行うことができるので、移動体のドライバの負担が軽減される。
また、この移動体制御装置では、移動体をレーンに沿って移動させる際の移動体の走行方向の制御に用いる構成を利用して、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を行うので、移動体制御装置の部品点数が少なくて済み、製造コストを抑えられる。
【0012】
ここで、移動体としては、移動体本体と、この移動体本体を支持する車輪と、この車輪を移動体の走行方向に向けることによって移動体本体を平行移動させる走行方向切替装置とを有するものがある。このような移動体に対して、標識検出器が、車輪との相対位置を常に一定にして設けられている場合には、移動体本体と標識検出器との位置関係は、車輪の向きによって変わってしまう。
このため、レーン間を移動する過程で、移動体を、標識検出器が移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識を検出する位置に位置決めしても、車輪をレーンに沿った方向に向けると、標識検出器が走行ガイド用標識を検出可能な位置から外れてしまう。この状態では、標識検出器が走行ガイド用標識を検出することができないので、標識検出器が走行ガイド用標識を検出できるように、移動体の位置を調整する必要がある。
【0013】
そこで、本発明に係る移動体制御装置では、このような移動体の制御を行う場合には、移動制御装置が、車輪の向きの変化に伴う標識検出器の変位を考慮して移動体の位置決めを行う構成とされる。
具体的には、移動制御装置は、移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識に対して移動体の位置調整を行うにあたって、標識検出器が移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識を検出した時点での移動体の位置を基準位置とし、この基準位置に対して、移動体をレーンに沿って移動する状態からレーン間を移動する状態に切替える際の標識検出器の変位方向とは逆方向に、移動体をレーンに沿って移動する状態からレーン間を移動する状態に切替える際の標識検出器の変位量と同じ距離離間した位置を目標位置に設定し、移動体を前記目標位置に位置決めする構成とする。
【0014】
これにより、移動体の位置決め完了後に車輪をレーンに沿った方向に向けることで、標識検出器が走行ガイド用標識に対向することになり、標識検出器によって走行ガイド用標識が検出されるので、移動体をレーンに沿った方向への移動にスムーズに移行させることができる。
ここで、移動制御装置は、移動先のレーンに対する移動体の位置決め作業だけでなく、移動体の他の制御も行うようにしてもよい。例えば、レーン間を移動する際の移動体の制御を行ったり、移動先のレーンに対する移動体の位置決め作業後に、車輪をレーンに沿った方向に向くように走行方向切替装置を制御する構成とされていてもよい。
【0015】
また、本発明は、上記いずれかの構成の移動体制御装置を有する移動体を提供する。
このように構成される移動体では、移動体制御装置によって、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を自動的に行うことができるので、移動体のドライバの負担が軽減される。
また、この移動体では、移動体制御装置は、移動体をレーンに沿って移動させる際に用いる構成を利用して、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を行うので、部品点数が少なくて済み、製造コストを抑えられる。
【0016】
また、本発明は、平行配置される複数のレーンとこれら各レーンに対応させて設けられた走行ガイド用標識とを有する走行領域上での移動体の制御方法であって、前記移動体に前記走行ガイド用標識を検出する標識検出器を設け、前記移動体が同一の前記レーン上で移動する際には、前記標識検出器によって検出された前記走行ガイド用標識に基づいて前記移動体の走行方向を制御し、前記移動体が異なる前記レーンに移動する際には、移動過程で前記標識検出器によって移動先の前記レーンに対応する前記走行ガイド用標識が検出されたことをもって、前記移動体が前記移動先のレーンに到達したと判断して、前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識に対して前記移動体の位置調整を行う移動体制御方法を提供する。
【0017】
この移動体制御方法では、移動体がレーンに沿って移動する際には、従来の移動体の制御方法と同様に、標識検出器によって走行ガイド用標識が検出され、この標識検出器の検出結果に基づいて、移動体がレーンに沿って移動するよう、移動体の走行方向が制御される。
一方、この移動体制御方法では、移動体が異なるレーンに移動する際には、移動過程で標識検出器によって移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識が検出されたことをもって、移動体が前記移動先のレーンに到達したと判断して、移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識に対して、移動体の位置調整を行う。
ここで、移動体本体と標識検出器との相対位置が移動体の移動方向によらず一定である場合には、移動体は、標識検出器が移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識を検出した時点での位置に位置決めされる。
【0018】
この移動体制御方法では、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業が容易となるので、移動体のドライバの負担が軽減される。
また、この移動体制御方法では、移動体をレーンに沿って移動させる際の移動体の走行方向の制御に用いる構成を利用して、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を行うので、移動体の部品点数が少なくて済み、製造コストを抑えられる。
【0019】
ここで、本発明に係る移動体制御方法においては、移動体が、移動体本体と、この移動体本体の移動に用いられる車輪と、この車輪を移動体の走行方向に向けることによって移動体本体を平行移動させる走行方向切替装置とを有し、標識検出器が、車輪との相対位置を常に一定にして移動体に設けられている場合には、車輪の向きの変化に伴う標識検出器の変位を考慮して、移動体の位置決めを行う。
具体的には、移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識に対して移動体の位置調整を行うにあたって、標識検出器が移動先のレーンに対応する走行ガイド用標識を検出した時点での移動体の位置を基準位置とし、この基準位置に対して、移動体をレーンに沿って移動する状態からレーン間を移動する状態に切替える際の標識検出器の変位方向とは逆方向に、移動体を前記レーンに沿って移動する状態からレーン間を移動する状態に切替える際の標識検出器の変位量と同じ距離離間した位置を目標位置に設定し、移動体を目標位置に位置決めする。
【0020】
これにより、位置決め完了後に車輪をレーンに沿った方向に向けることで、標識検出器が走行ガイド用標識に対向することになり、標識検出器によって走行ガイド用標識が検出されるので、移動体をレーンに沿った方向に移動させる際に、標識検出器を用いて移動体の走行方向の制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る移動体制御装置、これを用いる移動体、及び移動体制御方法によれば、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を自動的に行うことができるので、移動体のドライバの負担が軽減される。
また、本発明に係る移動体制御装置、これを用いる移動体、及び移動体制御方法によれば、移動体をレーンに沿って移動させる際に用いる構成を利用して、移動体を異なるレーンに移動させる際の移動体の位置決め作業を行うので、移動体の部品点数が少なくて済み、移動体の製造コストを抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、本発明を、港湾等のコンテナヤード内でコンテナの荷役に用いられるトランスファークレーン(移動体)に適用した例を示す。
図1の斜視図に示すように、コンテナヤード1(走行領域)には、それぞれコンテナCが段積みされる複数のレーンLが、互いに平行にして設けられている。
本発明にかかるトランスファークレーン11は、各レーンLのそれぞれについて設けられている。これらトランスファークレーン11は、コンテナヤード1上を移動可能とされていて、レーンL上の任意の位置でコンテナCの荷役を行うことができるようになっている。なお、後述するように、トランスファークレーン11は、コンテナヤード1上を移動する際には、基本的に、その向きを一定に保った状態にして移動させられる(すなわちトランスファークレーン11は略平行移動することになる)。
【0023】
図2の斜視図に示すように、トランスファークレーン11は、門形に形成されたクレーン本体12と、クレーン本体12の下端に設けられた走行装置13とを有しており、これによって、レーンL上に載置されるコンテナCをまたいでレーンL上を移動することができるようになっている。
【0024】
クレーン本体12は、互いに離間して配置される一対の脚部16,17と、これら脚部16,17の上端同士を接続する梁部18とを有している。
梁部18には、梁部18に沿って脚部16,17間を略水平方向に移動するトロリ21が設けられている。
トロリ21には、吊りロープ22の巻き上げ、繰り出しを行う巻上装置23が設けられている。吊ロープ22にはコンテナCを吊り上げるための吊具(スプレッダ)24が吊り下げられている。吊具24は吊荷であるコンテナCを係脱可能に保持することができるようになっている。
【0025】
走行装置13は、タイヤ31(車輪)を有するタイヤ式走行装置とされている。
本実施形態では、走行装置13は、脚部16,17のそれぞれの下端に一対ずつ設けられている。走行装置13は、各脚部16,17において、脚部16,17の配列方向に略直交する方向に配列されている。
図2及び図3の平面図に示すように、各走行装置13には、脚部16,17の配列方向に略直交する方向に沿って、一対のタイヤ支持部32が配列されている(図3では、脚部17側の走行装置13のみ図示している)。本実施形態では、各タイヤ支持部32は、一対のタイヤ31を略同軸にして支持する構成とされている。
各走行装置13には、各タイヤ支持部32をタイヤ31ごと略垂直軸線回りに回転させる走行方向切替装置(図示せず)が設けられており、これによってクレーン本体12をタイヤ31の向けられた方向に略平行移動させることができるようになっている。
【0026】
このトランスファークレーン11には、図2及び図3に示すように、トランスファークレーン11の動作を制御するクレーン制御装置41が設けられている。
ここで、コンテナヤード1には、各レーンLに対応させて、走行ガイド用標識が設けられている。本実施形態では、図2及び図3に示すように、走行ガイド用標識として、レーンLの長手方向に沿って設けられたオートステア用ガイドライン42が用いられている。
また、図2に示すように、各レーンLには、レーンLの長手方向に沿って間隔を置いて、複数のベイマーク(横走行用停止位置決めマーク)43が設けられている。
オートステア用ガイドライン42及びベイマーク43は、それぞれレーンL上に設置される磁石によって構成されている。
【0027】
クレーン制御装置41は、トランスファークレーン11に設けられてオートステア用ガイドライン42を検出するガイドライン検出器46(標識検出器、図2、図3参照)と、トランスファークレーン11に設けられてベイマーク43を検出するベイマーク検出器47(図2参照)と、ガイドライン検出器46及びベイマーク検出器47の検出結果に基づいてトランスファークレーン11の動作を制御する移動制御装置48とを有している。
また、本実施形態では、クレーン制御装置41は、トランスファークレーン11の移動量を検出する移動量検出装置(図示せず)を有している。移動量検出装置は、例えばタイヤ31の回転を検出する回転量検出器と、この回転量検出器の出力とタイヤ31の外周長の情報とに基づいてトランスファークレーン11の移動量を算出する演算装置とを有する構成とされている。
【0028】
本実施形態では、図3に示すように、ガイドライン検出器46は、トランスファークレーン11の脚部17側に設けられる走行装置13に設けられている。
脚部17側の走行装置13に設けられるタイヤ支持部32のうち、他方の走行装置13側に位置するタイヤ支持部32には、タイヤ31の軸線に略直交する方向に張り出すステー32aが設けられている。
ガイドライン検出器46は、このステー32aによって、タイヤ支持部32からタイヤ31の軸線に略直交する方向に張り出した状態にして支持されている。すなわち、ガイドライン検出器46は、ステー32aを介して接続されるタイヤ支持部32に対して、このタイヤ支持部32に設けられているタイヤ31との相対位置を常に一定にして保持されている。
これにより、走行方向切替装置によって、例えば図3(a)に示す状態から図3(b)に示す状態のように、タイヤ支持部32及びタイヤ31の向きが変えられた場合には、ガイドライン検出器46は、タイヤ支持部32及びタイヤ31とともにその向きが変えられるようになっている。
【0029】
このように構成されるトランスファークレーン11は、レーンLに沿って移動する場合(横走行を行う場合)には、トランスファークレーン11に搭乗しているドライバがクレーン制御装置41に横走行指令を入力することによって、各走行装置13が、それぞれタイヤ31をレーンLに沿った方向に向けた状態で回転駆動し、これによってトランスファークレーン11の横走行が行われる。
このとき、ドライバによってクレーン制御装置41に横走行方向制御指令が入力された場合には、クレーン制御装置41は、ガイドライン検出器46及び移動制御装置48を用いて、トランスファークレーン11がオートステア用ガイドライン42に沿って移動するように、走行装置13の動作を制御する。
【0030】
移動制御装置48は、クレーン制御装置41に横走行方向制御指令が入力された場合には、ガイドライン検出器46の出力に基づいて走行装置13の動作(タイヤ31の向き)を制御する。
例えば、移動制御装置48は、ガイドライン検出器46が検出する磁力が最大となっている状態では、ガイドライン検出器46がオートステア用ガイドライン42に対向していると判断して、トランスファークレーン11の移動方向を現状のまま維持する(タイヤ31の向きを現状のまま維持する)。
【0031】
一方、ガイドライン検出器46が検出する磁力が最大値よりも小さい場合には、ガイドライン検出器46がオートステア用ガイドライン42から離間していると判断して、ガイドライン検出器46の検出する磁力が大きくなるようにトランスファークレーン11の移動方向を調整する(ガイドライン検出器46の検出する磁力が大きくなる方向にタイヤ31の向きを調整する)。これにより、ガイドライン検出器46が常にオートステア用ガイドライン42に対向する位置となるようにトランスファークレーン11の走行方向が制御されることになり、結果、トランスファークレーン11がオートステア用ガイドライン42に沿って走行することとなる。
【0032】
また、このトランスファークレーン11では、図4の平面図に示すように、異なるレーンLに移動する場合(縦走行を行う場合)には、ドライバがクレーン制御装置41に縦走行指令を入力することによって、各走行装置13が、それぞれタイヤ31を移動先のレーンLに向けた状態(例えば図3(b)に示すようにレーンLの長手方向に略直交する方向に向けた状態)で回転駆動し、これによってトランスファークレーン11の縦走行が行われる。このときのクレーン制御装置41の制御の流れを、図5のフローチャートに示す。
【0033】
クレーン制御装置41は、縦走行指令が入力されると、各タイヤ31が移動先のレーンLに向いている場合(すなわち縦走行状態にある場合)には走行方向切替装置の動作を制御して各タイヤ31の向きを維持し、各タイヤ31が移動先のレーンLに向いていない場合には、走行方向切替装置の動作を制御して、各タイヤ31を移動先のレーンLに向ける。
クレーン制御装置41は、このように各タイヤ31が縦走行状態となったのちに、ドライバから走行開始指令が入力されることで、各走行装置13を動作させて、トランスファークレーン11を縦走行させる。
【0034】
このとき、ドライバによってクレーン制御装置41に縦走行停止位置制御指令が入力されている場合には、クレーン制御装置41は、ガイドライン検出器46及び移動制御装置48を用いて、トランスファークレーン11が移動先のレーンL上の適正位置に正確に停止するよう、走行装置13の動作を制御する(ステップS1,S2)。
【0035】
具体的には、移動制御装置48は、移動過程でガイドライン検出器46によるオートステア用ガイドライン42の監視を行い(ステップS2,S3)、ガイドライン検出器46によって移動先のレーンLに対応するオートステア用ガイドライン42が検出されたことをもって、トランスファークレーン11が移動先のレーンLに到達したと判断して、移動先のレーンLに対応するオートステア用ガイドライン42に対してトランスファークレーン11の位置調整を行う(ステップS4)。
【0036】
なお、トランスファークレーン11を異なるレーンLに移動させる際には、ドライバが手動操作によってトランスファークレーン11を移動先のレーンL近傍まで移動させたのちに移動制御装置48による制御に切替えてもよく、また、異なるレーンLに移動する際にトランスファークレーン11に行う制御の全てを移動制御装置48が行うようにしてもよい。
【0037】
トランスファークレーン11を異なるレーンLに移動させる際の制御を全て移動制御装置48が行うようにした場合、移動制御装置48は、トランスファークレーン11の移動過程でガイドライン検出器46によってオートステア用ガイドライン42が検出された回数から、現在のトランスファークレーン11の位置を検出する。
例えば、トランスファークレーン11を一つ隣のレーンLに移動させる場合には、トランスファークレーン11の移動過程でガイドライン検出器46が初めてオートステア用ガイドライン42を検出した時点で、トランスファークレーン11が移動先のレーンLに到達したと判定する。
同様に、トランスファークレーン11をN本隣のレーンLに移動させる場合には、トランスファークレーン11の移動過程でガイドライン検出器46がオートステア用ガイドライン42をN回検出した時点で、トランスファークレーン11が移動先のレーンLに到達したと判定する。
【0038】
なお、本実施形態では、移動制御装置48は、なんらかの理由でガイドライン検出器46がオートステア用ガイドライン42を検出できなかった場合にもトランスファークレーン11が必要以上に移動してしまうことがないように、移動制御装置48にはフェールセーフ機能が設けられている。具体的には、移動制御装置48は、トランスファークレーン11がレーンL間を移動する際には、移動量検出装置の出力に基づいてトランスファークレーン11の移動量を監視し、トランスファークレーン11の移動量が移動先のレーンLへの移動に必要な量を超えた場合には走行装置13を停止させる構成とされている。
【0039】
ここで、トランスファークレーン11において、クレーン本体12とガイドライン検出器46との相対位置がトランスファークレーン11の移動方向によらず一定である場合には、移動制御装置48は、ガイドライン検出器46が移動先のレーンLに対応するオートステア用ガイドライン42を検出した時点での位置に位置決めすることで、ガイドライン検出器46がオートステア用ガイドライン42に対向した状態でトランスファークレーン11が停止することになるので、そのまま横走行に移行することができる。
【0040】
本実施形態に係るトランスファークレーン11では、前記のように、ガイドライン検出器46がタイヤ31との相対位置を常に一定にして設けられているので、タイヤ31の向きによってクレーン本体12に対するガイドライン検出器46の位置が変わる。
具体的には、このトランスファークレーン11では、レーンL間を移動する過程で、図6(a)に実線で示すようにガイドライン検出器46が移動先のレーンLに対応するオートステア用ガイドライン42に対向する位置に位置決めしても、タイヤ31をこのレーンLに沿った方向に向けると、図6(a)に二点差線で示すように、ガイドライン検出器46がオートステア用ガイドライン42に対向する位置から外れる。
このため、本実施形態では、移動制御装置48が、ガイドライン検出器46が移動先のレーンLに対応するオートステア用ガイドライン42を検出したのちは、タイヤ31の向きの変化に伴うガイドライン検出器46の変位を考慮してトランスファークレーン11の位置決めを行う。
【0041】
具体的には、移動制御装置48は、ガイドライン検出器46が移動先のレーンLに対応するオートステア用ガイドライン42を検出した時点(図6(a)に実線で示す状態)でのトランスファークレーン11の位置を基準位置SPとする。
続いて、移動制御装置48は、この基準位置SPに対して、トランスファークレーン11をレーンLに沿って移動する状態からレーンL間を移動する状態に切替える際のガイドライン検出器46の変位方向とは逆方向に、トランスファークレーン11をレーンLに沿って移動する状態からレーンL間を移動する状態に切替える際のガイドライン検出器46の変位量と同じ距離離間した位置を目標位置OPに設定し(図6(b)参照)、トランスファークレーン11を目標位置OPに位置決めする。
【0042】
ここで、トランスファークレーン11は、縦走行時にはレーンLの長手方向における位置がほとんど変わらないので、レーンLの長手方向に沿った方向については、トランスファークレーン11の位置決めは不要である。また、オートステア用ガイドライン42は、レーンLの長手方向に沿って設けられているので、トランスファークレーン11の縦走行時にレーンLの長手方向における位置が変わったとしても、レーンLの長手方向に沿った方向については、トランスファークレーン11の位置決めは不要である。
【0043】
このため、本実施形態では、移動制御装置48は、ガイドライン検出装置46が移動先のオートステア用ガイドライン42を検出した時点からの縦走行方向におけるトランスファークレーン11の移動量及び移動方向を監視し、トランスファークレーン11の基準位置SPから目標位置OPに向う方向への移動量を正の移動量、目標位置OPから基準位置SPに向う方向を負の移動量とし、トランスファークレーン11の移動量が基準位置SPから目標位置OPまでの距離Xに達した時点(言い換えれば、基準位置SPから目標位置OPまでの距離Xからトランスファークレーン11の移動量を差し引いた値が0となった時点)でトランスファークレーン11を停止させて、位置決めを完了する。
【0044】
このようにトランスファークレーン11の位置決めを行うことで、位置決め完了後にタイヤ31をレーンLに沿った方向に向けた際(すなわちタイヤ31を横走行状態にした際)に、ガイドライン検出器46がオートステア用ガイドライン42に対向することになり、ガイドライン検出器46によってオートステア用ガイドライン42が検出されるので、トランスファークレーン11を横走行させる際に、移動体制御装置48によるトランスファークレーン11の走行方向の制御を行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では、移動制御装置48は、トランスファークレーン11が目標位置OPに近接するにしたがって移動速度が低下するように、各走行装置13の動作を制御する。これにより、トランスファークレーン11を目標位置OPに正確に停止させることができ、位置決め精度が高い。
【0046】
このように構成されるトランスファークレーン11によれば、トランスファークレーン11を異なるレーンLに移動させる際のトランスファークレーン11の位置決め作業を自動的に行うことができるので、トランスファークレーン11のドライバの負担が軽減される。
また、このトランスファークレーン11では、トランスファークレーン11をレーンLに沿って移動させる際に用いる構成を利用して、トランスファークレーン11を異なるレーンLに移動させる際の位置決め作業を行うので、トランスファークレーン11の部品点数が少なくて済み、製造コストを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るトランスファークレーンとこのトランスファークレーンが運用されるコンテナヤードを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るトランスファークレーンを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るトランスファークレーンを示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るクレーン制御装置による、トランスファークレーンの制御の様子を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るクレーン制御装置によるトランスファークレーンの制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係るクレーン制御装置によるトランスファークレーンの位置決めの様子を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 コンテナヤード(走行領域)
11 トランスファークレーン(移動体)
31 タイヤ(車輪)
41 クレーン制御装置(移動体制御装置)
42 オートステア用ガイドライン(走行ガイド用標識)
46 ガイドライン検出器(標識検出器)
L レーン
OP 目標位置
SP 基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配置される複数のレーンとこれら各レーンに対応させて設けられた走行ガイド用標識とを有する走行領域上で、前記走行ガイド用標識に基づいて移動体の動作を制御する移動体制御装置であって、
前記移動体に設けられて前記走行ガイド用標識を検出する標識検出器と、
該標識検出器の検出結果に基づいて前記移動体の動作を制御する移動制御装置とを有し、
該移動制御装置は、前記移動体が同一の前記レーン上で移動する際には、前記標識検出器によって検出された前記走行ガイド用標識に基づいて前記移動体の走行方向を制御し、
前記移動体が異なる前記レーンに移動する際には、移動過程で前記標識検出器によって移動先の前記レーンに対応する前記走行ガイド用標識が検出されたことをもって、前記移動体が前記移動先のレーンに到達したと判断して、前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識に対して前記移動体の位置調整を行う移動体制御装置。
【請求項2】
前記移動体が、移動体本体と、該移動体本体を支持する車輪と、該車輪を前記移動体の走行方向に向けることによって前記移動体本体を平行移動させる走行方向切替装置とを有し、
前記標識検出器が、前記車輪との相対位置を常に一定にして前記移動体に設けられており、
前記移動制御装置は、前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識に対して前記移動体の位置調整を行うにあたって、前記標識検出器が前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識を検出した時点での前記移動体の位置を基準位置とし、
該基準位置に対して、前記移動体を前記レーンに沿って移動する状態から前記レーン間を移動する状態に切替える際の前記標識検出器の変位方向とは逆方向に、前記移動体を前記レーンに沿って移動する状態から前記レーン間を移動する状態に切替える際の前記標識検出器の変位量と同じ距離離間した位置を目標位置に設定し、
前記移動体を前記目標位置に位置決めする請求項1記載の移動体制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動体制御装置を有する移動体。
【請求項4】
平行配置される複数のレーンとこれら各レーンに対応させて設けられた走行ガイド用標識とを有する走行領域上での移動体の制御方法であって、
前記移動体に前記走行ガイド用標識を検出する標識検出器を設け、
前記移動体が同一の前記レーン上で移動する際には、前記標識検出器によって検出された前記走行ガイド用標識に基づいて前記移動体の走行方向を制御し、
前記移動体が異なる前記レーンに移動する際には、移動過程で前記標識検出器によって移動先の前記レーンに対応する前記走行ガイド用標識が検出されたことをもって、前記移動体が前記移動先のレーンに到達したと判断して、前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識に対して前記移動体の位置調整を行う移動体制御方法。
【請求項5】
前記移動体が、移動体本体と、該移動体本体を支持する車輪と、該車輪を前記移動体の走行方向に向けることによって前記移動体本体を平行移動させる走行方向切替装置とを有し、
前記標識検出器が、前記車輪との相対位置を常に一定にして前記移動体に設けられており、
前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識に対して前記移動体の位置調整を行うにあたって、前記標識検出器が前記移動先のレーンに対応する前記走行ガイド用標識を検出した時点での前記移動体の位置を基準位置とし、
該基準位置に対して、前記移動体を前記レーンに沿って移動する状態から前記レーン間を移動する状態に切替える際の前記標識検出器の変位方向とは逆方向に、前記移動体を前記レーンに沿って移動する状態から前記レーン間を移動する状態に切替える際の前記標識検出器の変位量と同じ距離離間した位置を目標位置に設定し、
前記移動体を前記目標位置に位置決めする請求項4記載の移動体制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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