説明

移動体放送受信装置

【課題】放送電波を安定した状態で受信することのできる移動体放送受信装置を提供する。
【解決手段】移動体の異なる位置に配設され、RF信号を受信する複数のアンテナ14a〜14dと、各アンテナ14a〜14dにより受信した各RF信号を増幅する複数の増幅器(低ノイズ増幅器LNAa〜LNAd)と、各RF信号の各信号レベルを検出する検出手段(CPU30)と、各信号レベルの何れかが所定閾値以上であるか否かを判定する判定手段(CPU30)と、各信号レベルの何れかが所定閾値以上と判定されたとき、全ての増幅器(低ノイズ増幅器LNAa〜LNAd)を、各RF信号を増幅しない非作動状態に設定する設定手段(スイッチ部16)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体放送受信装置に関し、特に、車両等の移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体には、テレビ等の放送電波を受信して視聴することのできる放送受信装置が搭載されているものがある。このような放送受信装置においては、移動体の移動に伴う放送局からの距離の変化や、走行路周辺の建造物の影響等により、放送電波の受信状態が変化するため、場所によっては視聴困難となることがある。
【0003】
視聴困難な場所での感度改善策として、アンテナで受信した放送電波を低ノイズ増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)で増幅してチューナに供給するように構成したものがある。この場合、弱電界中では、感度改善の効果があるものの、強電界中では、ゲイン(利得)が大き過ぎるため、放送電波の入力特性が悪化して映像がフリーズしたり、ブロックノイズが発生するといった不具合が生じてしまう。
【0004】
このような不具合を回避するため、例えば、下記の特許文献1(特開2008−109533号公報)には、アンテナで受信した放送電波の信号レベルを検出し、信号レベルが所定の閾値以下(弱電界環境)のときには、LNAにより信号レベルを増幅してチューナに供給する一方、信号レベルが所定の閾値よりも大きいとき(強電界環境)には、LNAをバイパスさせて放送電波を直接チューナに供給するようにしたデジタル放送受信機および制御方法が開示されている。
【0005】
この特許文献1によれば、受信する放送電波の信号レベルの変動によらず、所望の放送を視聴可能になるとともに、LNAを不必要に稼動させないことで、節電を図ることができる。しかしながら、信号レベルに応じてLNAを切り替えているだけであるため、例えば、車両が市街地を走行している場合のように、周囲の建物によって放送信号の信号レベルが頻繁に変動するような場所では、LNAの切り替えが頻繁に発生し、映像や音声が乱れて放送の視聴状態が安定しない不具合が生じる。
【0006】
また、下記の特許文献2(特開2006−261710号公報)では、IF−AGC制御電圧が第1の閾値を上回ったとき、放送電波であるRF信号を前置増幅器で増幅してチューナに供給する一方、RF−AGC制御電圧が第2の閾値を下回ったとき、前置増幅器をバイパスさせてRF信号をチューナに供給することにより、前置増幅器の切り替え頻度を少なくしてハンチングを回避するようにした移動体受信用デジタル放送受信機が開示されている。また、この移動体受信用デジタル放送受信機では、2系統の受信回路を備えたダイバシティ方式において、両系統の受信回路が同時に切り替わらないように構成することにより、ハンチングをさらに回避可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−109533号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2006−261710号公報(請求項1、3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に開示されているように、複数の前置増幅器毎に前置増幅器をバイパスさせるか、前置増幅器を介して増幅してチューナに供給するかを切り替えている場合、下記のような問題が生じうる。
【0009】
例えば、現在位置において、ビルなどの建造物の影響がなければIF−AGC制御電圧が第1の閾値以上得られる位置であっても、建造物の影響によりIF−AGC制御電圧が第2の閾値以下しか得られない場合がある。この際に、いずれかのアンテナで第1の閾値以上のIF−AGC制御電圧が得られていても、その他のアンテナではIF−AGC制御電圧が第2の閾値以下であれば場合、当該その他のアンテナで受信したRF信号を前置増幅器で増幅してチューナに供給するように切り替えられる。
【0010】
すなわち、建造物の影響で一時的にあるアンテナで受信したRF信号のみのIF−AGC制御電圧が下がった場合、当該RF信号を前置増幅器で増幅してチューナに供給するように切り替えてしまう。そして、移動に伴い、一時的な建造物の影響から脱した場合、当該アンテナで受信したRF信号のIF−AGC制御電圧が第1の閾値以上となるため、前置増幅器をバイパスさせるように切り替えることになり、前置増幅器をバイパスさせるか否かを頻繁に切り替える必要が生じてしまい、無駄な消費電力を消費してしまうという問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解消することを課題とするものであり、放送電波を安定した状態で受信することができ、さらには、消費電力の節約が可能な移動体放送受信装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの何れかが所定閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、前記各信号レベルの何れかが前記所定閾値以上と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅しない非作動状態に設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項2にかかる発明は、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの全てが所定閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記所定閾値以下と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅する作動状態に設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項3にかかる発明は、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの何れかが第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する第2判定手段と、前記第1判定手段により、前記各信号レベルの何れかが前記第1閾値以上と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅しない非作動状態に設定し、前記第2判定手段により、前記各信号レベルの全てが前記第2閾値以下と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅する作動状態に設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項4にかかる発明は、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの何れかが第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する第2判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さく、且つ、前記各信号レベルの何れかが前記第2閾値よりも大きいと判定されたとき、全ての前記増幅器の作動状態をそのまま維持するように設定する設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項5にかかる発明は、請求項1〜4の何れかにかかる発明において、前記設定手段は、各前記アンテナと各前記増幅器との間に接続され、各前記放送電波を各前記増幅器に供給し、または、各前記増幅器をバイパスさせる切り替えスイッチにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1にかかる発明においては、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの何れかが所定閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、前記各信号レベルの何れかが前記所定閾値以上と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅しない非作動状態に設定する設定手段と、を備える。
【0018】
このように構成することにより、各放送電波の信号レベルの何れかが所定閾値以上であれば、全ての増幅器をOFF状態に設定して、放送電波を増幅することなく所望の放送を視聴することができる。この場合、増幅器が頻繁にON、OFFされることがないため、安定した状態で放送を視聴することができる。また、頻繁な切り替えによる無駄な電力消費を抑制することができ、消費電力の節約が可能になるから省電力にも十分寄与できる。
【0019】
請求項2にかかる発明においては、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの全てが所定閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記所定閾値以下と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅する作動状態に設定する設定手段と、を備える。
【0020】
このように構成することにより、各放送電波の信号レベルの全てが所定閾値以下であれば、全ての前記増幅器をON状態に設定して放送電波を増幅し、所望の放送を安定した状態で視聴することができる。また、頻繁な切り替えによる無駄な電力消費を抑制することができ、消費電力の節約が可能になるから省電力にも十分寄与できる。
【0021】
請求項3にかかる発明においては、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの何れかが第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する第2判定手段と、前記第1判定手段により、前記各信号レベルの何れかが前記第1閾値以上と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅しない非作動状態に設定し、前記第2判定手段により、前記各信号レベルの全てが前記第2閾値以下と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅する作動状態に設定する設定手段と、を備える。
【0022】
このように構成することにより、放送電波のAGCレベルの少なくとも1つが第1の閾値以上であれば、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いず、逆に、全ての放送電波のAGCレベルが第2の閾値以下であれば、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いるようしたので、増幅器LNAa〜LNAdのオン(接続)、オフ(非接続)制御にヒステリシスを持たせることができ、増幅器が頻繁に切り替わってしまう不具合を効果的に解消することができる。また、増幅器が頻繁にON、OFFされることがないため、無駄な電力消費を抑制することができ、消費電力の節約が可能になる。
【0023】
請求項4にかかる発明においては、移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、前記各信号レベルの何れかが第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する第2判定手段と、前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さく、且つ、前記各信号レベルの何れかが前記第2閾値よりも大きいと判定されたとき、全ての前記増幅器の作動状態をそのまま維持するように設定する設定手段と、を備える。
【0024】
このように構成することにより、各放送電波の信号レベルの全てが第1閾値よりも小さく、且つ、前記各信号レベルの何れかが第2閾値よりも大きいとき、増幅器を現在の状態に維持することにより、増幅器が頻繁にON、OFFされることがなく、安定した状態で所望の放送を視聴することができる。また、増幅器が頻繁にON、OFFされることがないため、無駄な電力消費を抑制することができ、消費電力の節約が可能になる。
【0025】
請求項5にかかる発明においては、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記設定手段は、各前記アンテナと各前記増幅器との間に接続され、各前記放送電波を各前記増幅器に供給し、または、各前記増幅器をバイパスさせる切り替えスイッチにより構成される。これにより、容易に増幅器の接続、非接続(オン・オフ)を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例における移動体放送受信装置の構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施例における移動体放送受信装置の動作フローチャートである。
【図3】本発明の実施例における各アンテナにより受信した放送電波のAGCレベルと、低ノイズ増幅器のON、OFF状態との関係説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための移動体放送受信装置を例示するものであって、本発明をこの移動体放送受信装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の移動体放送受信装置にも等しく適応し得るものである。
【実施例】
【0028】
図1は、本発明の一実施例である自動車に搭載された移動体放送受信装置10の構成を示すブロック図である。移動体放送受信装置10は、放送局12から送信される放送電波、すなわち、RF信号(高周波帯域信号)を受信する複数のアンテナ14a〜14dを有したダイバシティ方式の受信装置である。各アンテナ14a〜14dは、自動車の異なる部位に配置される(例えば、自動車のフロントガラスの左上、右上、左横、右横など)。なお、移動体放送受信装置10は、現在位置および地図情報に基づき目的地までの経路を探索して、探索した経路を表示するナビゲーション装置などに搭載することができる。
【0029】
各アンテナ14a〜14dが受信したRF信号は、スイッチ部16を構成する各切り替えスイッチ18a〜18d(設定手段)を介して、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAd(増幅器)に供給され、または、バイパスライン20a〜20dから直接チューナ部22に供給される。
【0030】
チューナ部22は、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdによって増幅された各RF信号、または、バイパスライン20a〜20dを介して供給された各RF信号のゲインを自動調整するAGC回路24a〜24dと、各AGC回路24a〜24dによりゲインが調整されたRF信号を合成する信号合成回路26と、合成されたRF信号から所望の周波数のRF信号を選択するチューナ回路28とを備える。
【0031】
また、移動体放送受信装置10は、動作制御を行うCPU30(検出手段、判定手段、第1判定手段、第2判定手段)を備える。CPU30は、チューナ部22を構成するAGC回路24a〜24dにより調整されたRF信号のレベルであるAGCレベルに基づき、スイッチ部16の切り替えスイッチ18a〜18dを切り替え制御する。切り替えスイッチ18a〜18dは、ON、OFF制御されることで、アンテナ14a〜14dと低ノイズ増幅器LNAa〜LNAd、または、アンテナ14a〜14dとバイパスライン20a〜20dとを接続する。
【0032】
なお、以下の説明では、アンテナ14a〜14dと低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdとを接続する(低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いる)ことを、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを作動状態に設定するとし、アンテナ14a〜14dとバイパスライン20a〜20dとを接続する(低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いない)ことを、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを非作動状態に設定するとして説明を行う。
【0033】
また、後述する通り、各RF信号のAGCレベルの全てが第2の閾値B以下である場合において、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いない状態(非作動状態)から、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いる状態(作動状態)に変更する場合に加え、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いる状態(作動状態)を維持する場合も作動状態に設定することに含まれるものとして説明を行う。なお、非作動状態に設定する場合も同様である。
【0034】
なお、CPU30がスイッチ部16の切り替えスイッチ18a〜18dを切り替え制御する際に用いる信号(レベル)は、AGCレベルに限らずRF信号のレベルに対して所定関係をもつ信号であれば、AGCレベル以外の信号も用いても良い。
【0035】
CPU30には、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部32と、移動体放送受信装置10の動作制御を行うためのプログラムや処理データを記憶するROM/RAM34と、チューナ部22のチューナ回路28により選択されたRF信号に基づく画像や音声を出力部36に出力するための制御を行う出力制御部38とが接続される。操作部32は、タッチパネルやリモコンからなり、例えば、チューナ回路28に対してチャンネル指定を行うとともに、出力制御部38に対して音量調整を行うことができる。出力部36は、液晶表示パネルやスピーカ等とすることができる。
【0036】
本発明のかかる移動体放送受信装置10においては、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが所定の閾値以上であれば、移動体放送受信装置10を搭載した自動車が放送局12からのRF信号を十分に受信可能な強電界環境の場所にいることが明らかである。この場合、他のRF信号のAGCレベルが閾値より低くても、建物の影などで一時的にAGCレベルが低下していると考えられるから、車両が少し移動すればAGCレベルが回復する筈である。従って、全てのRF信号に対して低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いないよう(非作動状態)に設定することで、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdが頻繁にON、OFFされることを防止でき、安定した状態で放送を視聴することができる。また、頻繁な切り替えを防止できるため、省電力にも十分寄与できる。
【0037】
逆に、全てのRF信号のAGCレベルが閾値以下であれば、移動体放送受信装置10を搭載した自動車が放送局12から遠い、弱電界環境の場所にいるものと判断し、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いるよう(作動状態)に設定し、所望の放送を安定した状態で視聴することができるようにする。
【0038】
ここで前記所定の閾値を、第1の閾値Aとそれより低い第2の閾値Bとしておき、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが第1の閾値A以上であれば、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いず、逆に、全てのRF信号のAGCレベルが第2の閾値B以下であれば、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いるようにすれば、増幅器LNAa〜LNAdのオン(接続)、オフ(非接続)制御にヒステリシス特性を持たせることができ、増幅器が頻繁に切り替わってしまう不具合を効果的に解消することができる。
【0039】
なお、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いている場合(作動状態)において、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが所定の閾値A以上であれば、全てのRF信号に対して低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いないようにする(非作動状態)設定を行うが、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いていない場合(非作動状態)において、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが所定の閾値A以上である場合も、全てのRF信号に対して低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いないようにする(非作動状態)設定を行う。なお、作動状態に設定する場合も同様である。
【0040】
また、各RF信号レベルの全てが第1の閾値Aよりも小さく、且つ、各RF信号レベルの何れかが第2の閾値Bよりも大きいと判定されたとき、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdの状態をそのまま維持するように構成している。これにより、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを現在の状態に維持することで、増幅器が頻繁にON、OFFされることがなく、安定した状態で所望の放送を視聴することができる。
【0041】
本実施例の移動体放送受信装置10は、基本的には、以上のように構成されるものであり、次に、その動作について、図2に示すフローチャート、および、図3に示すAGCレベルと低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdのON、OFF状態との関係説明図に基づいて説明する。
【0042】
ユーザは、自動車の走行中において、操作部32を操作して視聴したい放送局のチャンネルを指定する。CPU30は、指定されたチャンネルをチューナ部22のチューナ回路28に指示し、放送局12から所望のRF信号の受信を開始する。
【0043】
移動体放送受信装置10の各アンテナ14a〜14dは、放送局12からRF信号を受信し(ステップS101)、切り替えスイッチ18a〜18dおよび低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを介してチューナ部22に供給する。なお、切り替えスイッチ18a〜18dは、当初、アンテナ14a〜14dと低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdとを接続しているものとして説明する。従って、受信したRF信号は、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdによって増幅され、チューナ部22に供給される。
【0044】
チューナ部22のAGC回路24a〜24dは、供給された各RF信号のゲインを調整し、調整されたRF信号を信号合成回路26に供給する。信号合成回路26は、供給された各RF信号を合成した後、チューナ回路28に供給する。なお、信号合成回路26では、各AGC回路24a〜24dからのRF信号を単純に加算する処理、加算平均する処理、信号レベルの最も大きいRF信号を選択する処理等、種々の合成処理を行うことができる。
【0045】
チューナ回路28は、合成されたRF信号から、指定されたチャンネルのRF信号を選択し、出力制御部38に供給する。出力制御部38は、RF信号に基づいて出力部36を制御し、所望の画像及び音声を出力させる。
【0046】
CPU30は、AGC回路24a〜24dによって調整された各RF信号のAGCレベルを検出し(ステップS102)、所定の閾値A(第1閾値)および閾値B(第2閾値)(A>B)と比較する。
【0047】
ここで、RF信号の何れかのAGCレベルが閾値A以上であるとき(ステップS103、YES)、CPU30は、切り替えスイッチ18a〜18dをバイパスライン20a〜20d側に切り替えることにより、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdの全てをOFFの状態(非作動状態)に設定する(ステップS104、図3、時刻t=t1参照)。
【0048】
すなわち、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが閾値A以上であれば、移動体放送受信装置10を搭載した自動車が放送局12からのRF信号を十分に受信可能な場所にいるため、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いることなく、RF信号を確実に受信することができる。すなわち、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが閾値A以上であれば、RF信号の変動によって低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdが頻繁にON、OFFされることがなく、安定した状態で放送を視聴することができる。また、RF信号を無駄に増幅することがないため、省電力にも十分に寄与することができる。
【0049】
全てのRF信号のAGCレベルが閾値Aよりも小さく(ステップS103、NO)、且つ、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが閾値Bよりも大きいとき(ステップS105、NO)、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdの全てを現在の状態に維持する。
【0050】
例えば、ステップS104において低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdの全てがOFFの状態に設定されている場合、RF信号のAGCレベルの少なくとも1つが閾値Bよりも大きければ、移動体放送受信装置10を搭載した自動車が放送局12からのRF信号を受信可能な場所にいるため、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを用いることなく、RF信号を受信することができる。また、RF信号の変動によって低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdが頻繁にON、OFFされることがなく、安定した状態で放送を視聴することができる。さらに、RF信号を無駄に増幅することがないため、省電力にも十分に寄与することができる。
【0051】
なお、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdの全てがONの状態に設定されている場合も同様に、RF信号のAGCレベルの全てが閾値A以下であれば、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdをON状態に維持することにより、安定した状態で放送を視聴することができる。
【0052】
全てのAGCレベルが閾値B以下のときには(ステップS105、YES)、CPU30は、切り替えスイッチ18a〜18dを低ノイズ増幅器LNAa〜LNAd側に切り替え、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdの全てをON(作動状態)に設定する(ステップS106、図3、時刻t=t2参照)。すなわち、全てのアンテナ14a〜14dが弱電界のRF信号しか受信できない場合であっても、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdによってRF信号を増幅し、良好な受信状態を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。
【0054】
例えば、低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdの前段に配設したスイッチ部16によりバイパスライン20a〜20dと低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを切替え低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdをON、OFFするのに代えて、CPU30により低ノイズ増幅器LNAa〜LNAdを直接ON、OFF制御するように構成してもよい。また、アンテナ14a〜14dは、移動体放送受信装置10の異なる2つ以上の位置に配置されたものであればよい。
【0055】
また、上記実施例では、チューナ部22のAGC回路24a〜24dは、供給された各RF信号のゲインを調整し、調整されたRF信号を信号合成回路26に供給し、信号合成回路26は、供給された各RF信号を合成した後、チューナ回路28に供給したが、これに限ることはなく、チューナ部22のAGC回路24a〜24dは、供給された各RF信号のゲインを調整し、調整された各RF信号を複数のチューナ回路(アンテナ数に対応した数)に夫々供給し、各チューナ回路は、指定されたチャンネルのRF信号を選択し、信号合成回路26に供給するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10・・・移動体放送受信装置
12・・・放送局
14a〜14d・・・アンテナ
16・・・スイッチ部
18a〜18d・・・スイッチ
20a〜20d・・・バイパスライン
22・・・チューナ部
24a〜24d・・・AGC回路
26・・・信号合成回路
28・・・チューナ回路
30・・・CPU
32・・・操作部
34・・・ROM/RAM
36・・・出力部
38・・・出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、
前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、
各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、
各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、
前記各信号レベルの何れかが所定閾値以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記各信号レベルの何れかが前記所定閾値以上と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅しない非作動状態に設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする移動体放送受信装置。
【請求項2】
移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、
前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、
各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、
各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、
前記各信号レベルの全てが所定閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、
前記各信号レベルの全てが前記所定閾値以下と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅する作動状態に設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする移動体放送受信装置。
【請求項3】
移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、
前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、
各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、
各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、
前記各信号レベルの何れかが第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する第2判定手段と、
前記第1判定手段により、前記各信号レベルの何れかが前記第1閾値以上と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅しない非作動状態に設定し、前記第2判定手段により、前記各信号レベルの全てが前記第2閾値以下と判定されたとき、全ての前記増幅器を各前記放送電波を増幅する作動状態に設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする移動体放送受信装置。
【請求項4】
移動体に搭載され、放送局から送信される放送電波を受信する移動体放送受信装置において、
前記移動体の異なる位置に配設され、前記放送電波を受信する複数のアンテナと、
各前記アンテナが受信した各前記放送電波を増幅する複数の増幅器と、
各前記放送電波の各信号レベルを検出する検出手段と、
前記各信号レベルの何れかが第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下であるか否かを判定する第2判定手段と、
前記各信号レベルの全てが前記第1閾値よりも小さく、且つ、前記各信号レベルの何れかが前記第2閾値よりも大きいと判定されたとき、全ての前記増幅器の作動状態をそのまま維持するように設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする移動体放送受信装置。
【請求項5】
前記設定手段は、各前記アンテナと各前記増幅器との間に接続され、各前記放送電波を各前記増幅器に供給し、または、各前記増幅器をバイパスさせる切り替えスイッチにより構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動体放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−229057(P2011−229057A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98660(P2010−98660)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】