説明

移動体検出装置および移動体検出方法

【課題】振動センサを内蔵し、安価な移動体検出装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、振動を増幅し、波動を反射する振動部22と、波動を出射し、振動部22で反射した波動の反射波を検出することにより振動を検出するとともに、移動体で反射した波動の反射波を検出することにより移動体を検出する検出部と、を具備する移動体検出装置である。本発明によれば、振動センサを新たに設置することが不要となる。また、振動センサに配線することが不要となる。よって、設置場所の削減、コスト削減が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体検出装置および移動体検出方法に関し、特に移動体の動きと振動を検出する移動体検出装置および移動体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や建物の盗難防止システムにおいては、移動体(動くもの、例えば車両や建物への侵入者)を検出する移動体センサや、侵入者に起因した振動や衝撃を検出する振動センサが用いられている。特許文献1には、送信信号が移動体で反射された信号のドップラシフト信号を用い移動体を検出するセンサが開示されている。また、特許文献2には、移動体で反射された信号を解析して侵入者か否かを判定する判定装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−296757号公報
【特許文献2】特開2003−167050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
移動体センサと振動センサとを独立に設けると、設置場所が独立に必要になる。また、費用が高くなってしまう。移動体センサと振動センサを同じカバー内に設けることも考えられる。しかしながら、同じカバー内に2つのセンサを内蔵した場合であっても、振動センサとの配線は必要になる。また、振動センサには圧電素子を用いることが多い。圧電素子は高価なうえ温度、湿度に影響されやすい。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、振動センサを内蔵し、安価な移動体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、振動を増幅し、波動を反射する振動部と、前記波動を出射し、前記振動部で反射した前記波動の反射波を検出することにより前記振動を検出するとともに、移動体で反射した前記波動の反射波を検出することにより前記移動体を検出する検出部と、を具備することを特徴とする移動体検出装置である。本発明によれば、振動センサを新たに設置することが不要となる。また、振動センサに配線することが不要となる。よって、設置場所の削減、コスト削減が可能となる。
【0006】
上記構成において、前記検出部は、前記移動体に起因した前記反射波に関する信号と前記振動部の振動に起因した前記反射波に関する信号とを分離する分離部を具備する構成とすることができる。この構成によれば、移動体に起因した信号と振動部に起因した信号とのそれぞれの特徴から移動体をより精度良く判定することができる。
【0007】
上記構成において、前記波動の一部を透過させ、前記波動の別の一部を反射させるレドームを具備し、前記検出部は、前記レドームを透過し前記移動体で反射し前記レドームを透過した前記波動の反射波を検出し、前記レドームを反射し前記振動部で反射し前記レドームで反射した前記波動の反射波を検出する構成とすることができる。この構成によれば、振動部には、レドームで反射した波動を照射することにより、振動部が移動体を検出するための波動の障害になることを抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記検出部は、前記波動を出射し前記反射波を検出するアンテナを備え、前記アンテナは前記基板の一面に設けられ、前記振動部は、前記基板の一面とは反対の面に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、振動部が移動体を検出するための波動の障害になることを抑制することができる。
【0009】
上記構成において、前記検出部は、前記波動を出射し前記反射波を検出するアンテナを備え、前記振動部は、前記アンテナに対し、前記アンテナから前記波動が出射する出射方向とは反対の方向に設けられている構成とすることができる。この構成によれば、検出部の移動体を検出する精度を向上させることができる。
【0010】
上記構成において、前記検出部は、前記波動を出射し前記反射波を検出するアンテナを備え、前記振動部は、前記アンテナから前記波動が出射する出射方向に振動する構成とすることができる。この構成によれば、検出部の振動を検出する精度を向上させることができる。
【0011】
上記構成において、前記検出部が検出した前記移動体に起因した前記反射波に関する信号と前記振動部の振動に起因した前記反射波に関する信号とに基づき侵入者の有無を判定する判定部を具備する構成とすることができる。
【0012】
本発明は、上記移動体検出装置と、前記判定部の判定結果に基づき、警報部に、侵入者の存在を警報させる制御部と、を具備することを特徴とする侵入検知システムである。
【0013】
本発明は、波動を出射し移動体で反射した前記波動の反射波を検出することにより、前記移動体を検出するステップと、振動を増幅し、前記波動を反射する振動部で反射した前記波動の反射波を検出することにより、前記基板の振動を検出するステップと、を備える移動体検出方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振動センサを新たに設置することが不要となる。また、振動センサに配線することが不要となる。よって、設置場所の削減、コスト削減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を用い実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1に係る移動体センサ(移動体検出装置)のケースを透視した上面図である。図2は、移動体センサのケースを透視した側面図である。図1および図2を参照に、基板42上にキャビティ40が設けられている。キャビティ40内には電磁波の送信回路や受信回路等が収納されている。キャビティ40はネジ56により基板42に固定されている。キャビティ40上には振動部22がネジ54により固定されている。振動部22は、振動する振動体22a、キャビティ40を固定する固定部22cおよび振動体22aと固定部22cとを接続する接続部22bとを備えている。接続部22bが細い棒状であるため、振動体22aは、基板42が振動すると振動を増幅して振動する。基板42の一面には、電磁波を送信および受信するアンテナ44が設けられている。基板42上には、アンプ部46およびマイコン48が搭載されている。
【0017】
ケース50およびレドーム52は、キャビティ40、振動部22および基板42を覆っている。レドーム52はアンテナ44側に設けられ、アンテナ44から出射された電磁波の一部を透過させ、別の一部を反射する。図2を参照に、アンテナ44は例えば24.5GHzの電磁波60および64を出射する。一部の電磁波60は、レドーム52を透過し、車両内で反射した電磁波62がレドーム52を透過しアンテナ24に入射する。一方、別の一部の電磁波64はレドーム52で反射され、さらに振動体22aにより反射される。振動体22aにより反射された電磁波66はレドーム52で反射し、アンテナ24に入射する。
【0018】
図3は、移動体センサのブロック図である。移動体センサ10は、振動部22、検出部20および判定部30を備えている。検出部20は、電磁波60を出射し移動体で反射した電磁波62を検出することにより、移動体を検出す。振動部22は、基板42の振動を増幅し振動する。また、電磁波64を反射する。検出部20は、アンテナ24、受信回路25、バッファアンプ26、分離部28およびアンブ29を備えている。
【0019】
アンテナ24は、電磁波60および64を出射し、移動体により反射された電磁波62および振動部22により反射された電磁波66を受信する。受信回路25は、図1および図2のキャビティ40内に設けられており、アンテナ24が受信した電磁波と送信した電磁波との周波数のシフト成分であるドプラー成分を検出信号としてバッファアンプ26に出力する。バッファアンプ26、分離部28およびアンプ29は、アンプ部46内に設けられている。バッファアンプ26は、検出信号を増幅する。分離部28は、移動体に起因した反射波に関する検出信号(移動体信号)と振動部22の振動に起因した反射波に関する検出信号(振動信号)とを分離する。分離部28はフィルタ28aおよび28bを備えており、それぞれ、移動体信号および振動信号を抽出する。アンプ29はアンプ29aおよび29bを備えており、それぞれ移動体信号および振動信号を増幅する。判定部30は、図1および図2のマイコン48が有する機能であり、移動体信号と振動信号とに基づき車両への侵入者の有無を判定する。
【0020】
図4(a)および図4(b)は、フィルタ28aおよび28bのフィルタ特性を示す図である。図4(a)を参照に、フィルタ28aは、移動体の移動速度範囲に相当する周波数帯域に通過帯域を有する。例えば、盗難防止用の移動体センサの場合、フィルタ28aは、f1=30Hzからf2=300Hzに通過帯域を有する。通過帯域は、例えば法令等を考慮し設定される。振動体22aが基板42の振動や衝撃を増幅し振動する場合、振動の周波数は固有振動数により定まる。そこで、図4(b)を参照に、フィルタ28bは、振動体22aの固有振動数に対応する周波数f0に通過帯域を有する。以上により、分離部28は、検出信号から移動体信号と振動信号とを分離することができる。なお、振動体22aの固有振動数は、フィルタ28aの通過帯域に重ならないことが好ましい。また、ケース50等他の部品の固有振動数に重ならないことが好ましい。また、分離部28は、1つのフィルタを有し、通過帯域を切り替えて用いてもよい。さらに、フィルタをソフトフィルタで構成し、マイコン48の指示により、通過帯域を設定してもよい。
【0021】
図5(a)および図5(b)は、振動信号および移動体信号の例を示したタイムチャートである。図5(a)を参照に、例えば、侵入者が窓を割って車両に侵入した場合について説明する。まず、時間領域Aにおいて、ガラスが割られると衝撃や振動が車両を伝わるため、移動体センサの基板42が振動し、振動体22aが振動する。このため、振動信号の振幅は大きくなる。このとき、車両内の物品は移動しないため移動体信号は変化しない。その後、時間領域Bにおいて、侵入者が車両内に進入すると、振動や衝撃はほとんどないため振動信号は変化しない。一方、侵入者が車両内を移動するため移動体信号の振幅は大きくなる。このように、振動信号と移動体信号との時間差により、判定部30は、侵入者が侵入したと判定することができる。
【0022】
図5(b)を参照に、外部の騒音が大きい場合について説明する。時間領域Cにおいて、外部の騒音に起因した振動信号および移動体信号はほぼ同期している。このように、振動信号と移動体信号がほぼ同じ時間に検出された場合、判定部30は、侵入者ではないと判定することができる。これにより、侵入検知システムの誤動作を抑制することができる。
【0023】
実施例1によれば、検出部20が、移動体とともに、振動部22で反射した反射波を検出することにより、振動を検出する。これにより、振動センサを新たに設置することが不要となる。また、振動センサに配線することが不要となる。よって、設置場所の削減、コスト削減が可能となる。また、圧電素子を用いないため、安価で、温度や湿度に影響されにくい。さらに、移動体センサと振動センサとをほぼ同じ場所に設置できることから、図5(a)および図5(b)のように、判定部30は、振動信号と移動体信号との時間差から、侵入者の車両への侵入をより精度良く判定することができる。
【0024】
また、分離部28により、1つの検出信号から振動信号と移動体信号とを得ることができる。これにより、振動信号と移動体信号とのそれぞれの特徴から侵入者等をより精度良く判定することができる。
【0025】
図6は、アンテナ24と振動部22との位置関係を示す図である。図6を参照に、振動部22yは、アンテナ24に対し、アンテナ24から電磁波が出射する出射方向Sに設けられている。この場合。レドーム52から出射すべき電磁波の一部が振動部22yによって反射されてしまう。よって、検出部20が移動体を検出する精度が低下してしまう。そこで、振動部22xは、アンテナ24に対し、出射方向Sとは反対方向に設けられている。これにより、検出部20の移動体を検出する精度を向上させることができる。
【0026】
また、図2のように、検出部20は、レドーム52を透過し移動体で反射しレドーム52を再び透過した反射電磁波62を検出する。さらに、検出部20は、レドーム52を反射し振動部22で反射し再びレドーム52で反射した反射電磁波66を検出する。このように、振動部22には、レドーム52で反射した電磁波64を照射することにより、振動部22が移動体を検出するための電磁波60および62の障害になることを抑制することができる。
【0027】
さらに、図2のように、アンテナ24は基板42の一面に設けられ、振動部22は、基板42の一面とは反対の面に設けられていることが好ましい。これにより、振動部22が電磁波60および62の障害になることを抑制することができる。
【0028】
図7は、アンテナ24と振動部22との位置関係を示す図である。図7を参照に、振動部22zは、出射方向Sに垂直方向に振動している。この場合、電磁波64は反射しにくく、電磁波66は弱くなってしまう。よって、検出部20が振動を検出する精度が低下してしまう。そこで、振動部22xは出射方向Sの垂直方向に交差する方向に振動することが好ましい。さらに、振動部22xは出射方向Sに振動することがより好ましい。これにより、検出部20の振動を検出する精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0029】
図8は、実施例2に係る移動体センサの例である。振動部22はケース50の外側に設けられている。アンテナ24を出射した電磁波64は、レドーム52を透過し、反射板70で反射し振動部22に照射される。振動部22で反射した電磁波66は、反射板70で反射し、レドーム52を透過しアンテナ24に至る。その他の構成は実施例1の図2と同じであり説明を省略する。実施例2のように、振動部22をケース50の外に設けることもできる。
【実施例3】
【0030】
実施例3は、実施例1に係る移動体センサを有する車両の侵入検知システムの例である。図9は、実施例3に係る侵入検知システムのブロック図である。侵入検知システムは、移動体センサ10、ガラス割れセンサ12、セキュリティECU(Electric Control Unit)を備えている。移動体センサ10は、実施例1の移動体センサである。ガラス割れセンサ12は、車両のガラスが割れを検出する。ECU14は移動体センサ10およびガラス割れセンサ12の信号に基づき、車両への侵入者の有無を判定する。警報部16は、ECU14の指示基づき、音声や光を用い警報を通知する。実施例3によれば、ECU14(制御部)は、実施例1の判定部30の判定結果に基づき、警報部16に、侵入者の存在を警報させることができる。
【0031】
実施例1〜実施例3においては、受信回路25が電磁波のドプラー信号を検出信号とする例を説明したが、電磁波の定在波を用い検出信号を生成してもよい。また、電磁波は、24.5GHz以外の電磁波でもよい。さらに、電磁波以外に超音波等を用いてもよい。このように、検出部20は、波動の反射波を用い移動体の検出および振動の検出を行えばよい。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、実施例1に係る移動体センサの上面図である。
【図2】図2は、実施例1に係る移動体センサの側面図である。
【図3】図3は、実施例1に係る移動体センサのブロック図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、フィルタの通過特性を示す図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、振動信号および移動体信号の例である。
【図6】図6は、アンテナと振動部の位置関係を示す図(その1)である。
【図7】図7は、アンテナと振動部の位置関係を示す図(その2)である。
【図8】図8は、実施例2に係る移動体センサの側面図である。
【図9】図9は、実施例3に係る侵入検知システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
10 移動体センサ
14 ECU
16 警報部
20 検出部
24 アンテナ
28 分離部
30 判定部
42 温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を増幅し、波動を反射する振動部と、
前記波動を出射し、前記振動部で反射した前記波動の反射波を検出することにより前記振動を検出するとともに、移動体で反射した前記波動の反射波を検出することにより前記移動体を検出する検出部と、
を具備することを特徴とする移動体検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記移動体に起因した前記反射波に関する信号と前記振動部の振動に起因した前記反射波に関する信号とを分離する分離部を具備することを特徴とする請求項1記載の移動体検出装置。
【請求項3】
前記波動の一部を透過させ、前記波動の別の一部を反射させるレドームを具備し、
前記検出部は、前記レドームを透過し前記移動体で反射し前記レドームを透過した前記波動の反射波を検出し、前記レドームを反射し前記振動部で反射し前記レドームで反射した前記波動の反射波を検出することを特徴とする請求項1または2記載の移動体検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記波動を出射し前記反射波を検出するアンテナを備え、
前記アンテナは前記基板の一面に設けられ、
前記振動部は、前記基板の一面とは反対の面に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の移動体検出装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記波動を出射し前記反射波を検出するアンテナを備え、
前記振動部は、前記アンテナに対し、前記アンテナから前記波動が出射する出射方向とは反対の方向に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の移動体検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記波動を出射し前記反射波を検出するアンテナを備え、
前記振動部は、前記アンテナから前記波動が出射する出射方向に振動することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の移動体検出装置。
【請求項7】
前記検出部が検出した前記移動体に起因した前記反射波に関する信号と前記振動部の振動に起因した前記反射波に関する信号とに基づき侵入者の有無を判定する判定部を具備することを特徴とする1から6のいずれか一項記載の移動体検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の移動体検出装置と、
前記判定部の判定結果に基づき、警報部に、侵入者の存在を警報させる制御部と、
を具備することを特徴とする侵入検知システム。
【請求項9】
波動を出射し移動体で反射した前記波動の反射波を検出することにより、前記移動体を検出するステップと、
振動を増幅し、前記波動を反射する振動部で反射した前記波動の反射波を検出することにより、前記基板の振動を検出するステップと、
を備える移動体検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−54410(P2010−54410A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220963(P2008−220963)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】