説明

移動体監視システムおよび方法

【課題】複数の自由移動体を広い範囲に亘って監視する移動体監視システムを提供する。
【解決手段】送信電波の有効到達範囲以内を監視エリア10とする少なくとも1台の無指向性発信装置2から送信電波を放射し、移動体8にそれぞれ付帯された無指向性受送信装置9で受信し、送信電波の受信に応答して、無指向性受送信装置9から、自己の識別符号を根拠に呼を電波により送信し、前記呼を少なくとも1台の無指向性受信装置3で受信して通信の接続を完了し、通信の接続完了後に、通信の接続完了後に、無指向性受信装置3から前記識別符号の無指向性受送信装置9との通信の接続ができた旨の確認信号を本体制御装置1に出力する。本体制御装置1おいて、無指向性発信装置2に対して発信を指示した後、無指向性受信装置3から前記確認信号を受けた場合には移動体8が監視エリア10内に居るか否かを判断し、前記確認信号が受信不能な場合には居ないと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体監視システムおよび方法、特に、人および人以外の動物や、乗り物などを監視するのに適した移動体監視システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、徘徊老人の監視システムとして、例えば下記特許文献1に開示されたものがある。この徘徊老人監視システムにおいては、徘徊老人等の移動する人がIDコードを発する発信器を所持し、この発信器の無線信号を検知する検知器を建物の内部だけでなく、徘徊老人等が通りそうな屋外の門扉、塀、或いは電柱、立木等建物の周辺数百m以内に複数設置し、各検知器には設置場所に対応した場所情報(ロケーションコード)を内蔵し、建物の内部には検知器からの検知信号を受信し警報を発する警報装置を設置してシステムを構築する。従って、徘徊老人が建物の外部に徘徊してしまった場合にも、その探索ができる。
【0003】
しかし、上記従来技術では、発信器と検知器だけで監視エリアを構築するため、多数の検知器を常時可動状態に置いて用いなければ広い監視エリアを確立することができない。また移動体に付帯させる発信器も常時発信状態に置いて用いなければならず、移動体の数が多いときは1つの強い発信電波により他の移動体の電波がマスクされ、他の移動体を把握できなくなる虞がある。従って、複数の自由移動体を広い範囲に亘って監視することに、必ずしも適していないという問題があった。
【特許文献1】特開平11−120459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の自由移動体を広い範囲に亘って監視することに適した移動体監視システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0006】
(1)自己の送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとして確立すべく配置された少なくとも1台の発信装置と、前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯されており、前記発信装置からの送信電波を受信し且つこれに応答して自己の識別符号を根拠に電波により呼を送信する無指向性受送信装置と、前記監視エリアを監視するに足る位置に設置され前記無指向性受送信装置からの送信電波による呼を受信して通信の接続を完了した後に、前記識別符号の無指向性受送信装置と通信の接続ができた旨の確認信号を出力する少なくとも1台の受信装置と、前記発信装置に対して発信を指示し、その後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合に、前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断する本体制御装置と、を有することを特徴とする移動体監視システム。
【0007】
(2)前記発信装置は、無指向性発信装置であり、前記受信装置は、無指向性受信装置であることを特徴とする上記(1)に記載の移動体監視システム。
【0008】
(3)前記発信装置および前記受信装置のうちの少なくとも1つを移動させることにより前記監視エリアが移動可能であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の移動体監視システム。
【0009】
(4)前記無指向性受送信装置から発せられる信号には、移動体の属性を示すデータが含まれることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【0010】
(5)前記本体制御装置が、前記発信装置が電波を発したのに対して呼応すべく発せられた前記無指向性受送信装置からの送信電波が前記受信装置へ到達する一連の時間から、前記移動体が前記受信装置から離れつつあるのかまたは近づきつつあるのかを判断する手段を有する、ことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【0011】
(6)前記本体制御装置は、前記発信装置に対して複数回の送信指示を与え、これにより得られる各回の前記確認信号の受信までに要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する手段を有する、ことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【0012】
(7)前記発信装置が複数台設けられ、その各発信装置が前記本体制御装置から発信を指示された場合に相互に所定のタイムラグを置いて発信する手段を有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【0013】
(8)前記本体制御装置は、前記複数台の発信装置から発信される送信電波により前記無指向性受送信装置が呼を送信し、少なくとも1台以上の前記受信装置が当該呼を受信する一連の過程において要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する手段を有する、ことを特徴とする上記(7)記載の移動体監視システム。
【0014】
(9)前記発信装置が前記本体制御装置と通信する手段を有し、前記本体制御装置は、各発信装置を個別に呼び出して発信を指示し、前記確認信号が受信できるかどうかを試す手段と、いずれかの発信装置を個別に呼び出して発信を指示したときに前記確認信号が受信できたときは前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、また全ての発信装置を個別に呼び出して発信を指示しても前記確認信号が受信できないときは前記移動体が監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【0015】
(10)前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の第2エリア無指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記第2エリア無指向性発信装置からの電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を確認する少なくとも1台の第2エリア無指向性受信装置と、前記本体制御装置により前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したとき、前記第2エリア無指向性発信装置と前記第2エリア無指向性受信装置を作動して監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記第2エリア無指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の移動体監視システム(図26参照)。
【0016】
(11)前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を同期して受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の有指向性受信装置と、前記本体制御装置が、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したとき、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記有指向性受信装置を作動して監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記有指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の移動体監視システム(図27参照)。
【0017】
(12)前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の無指向性受信装置と、前記本体制御装置により前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したとき、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記無指向性受信装置を作動して監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記無指向性受信装置から前記移動体の追跡信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれか1つに記載の移動体監視システム(図30参照)。
【0018】
(13)自己の送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとして確立すべく配置された少なくとも1台の発信装置と、前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯されており、前記発信装置からの送信電波を受信し且つこれに応答して自己の識別符号を根拠に電波により呼を送信する無指向性受送信装置と、前記監視エリアを監視するに足る位置に設置され前記無指向性受送信装置からの送信電波による呼を受信して通信の接続を完了した後に、前記識別符号の無指向性受送信装置と通信の接続ができた旨の確認信号を出力する少なくとも1台の受信装置と、前記発信装置が自律的に行った発信に対し、その後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合に、前記移動体が監視エリア内に居るか否かと判断する本体制御装置と、を有することを特徴とする移動体監視システム。
【0019】
(14)送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとする少なくとも1台の発信装置から送信電波を放射し、前記送信電波を、前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯された無指向性受送信装置で受信し、前記送信電波の受信に応答して、前記無指向性受送信装置から、自己の識別符号を根拠に呼を電波により送信し、前記呼を前記監視エリアを監視するに足る位置に設置された少なくとも1台の受信装置で受信して通信の接続を完了し、前記通信の接続完了後に、前記受信装置から前記識別符号の無指向性受送信装置との通信の接続ができた旨の確認信号を本体制御装置に出力し、前記本体制御装置おいて、前記発信装置に対して発信を指示した後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合には前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、前記確認信号が受信不能な場合には居ないと判断することを特徴とする移動体監視方法。
【0020】
(15)前記発信装置は、無指向性発信装置であり、前記受信装置は、無指向性受信装置であることを特徴とする上記(14)に記載の移動体監視方法。
【0021】
(16)前記発信装置および前記受信装置のうちの少なくとも1つを移動させることにより前記監視エリアが移動可能であることを特徴とする上記(14)または(15)に記載の移動体監視システム。
【0022】
(17)前記無指向性受送信装置から発せられる信号には、移動体の属性を示すデータが含まれることを特徴とする上記(14)〜(16)のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【0023】
(18)前記本体制御装置が、前記発信装置が電波を発したのに対して呼応すべく発せられた前記無指向性受送信装置からの送信電波が前記受信装置へ到達する一連の時間から、前記移動体が前記受信装置から離れつつあるのかまたは近づきつつあるのかを判断する、ことを特徴とする上記(14)〜(17)のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【0024】
(19)前記本体制御装置から前記発信装置に対して複数回の送信指示を与え、これにより得られる各回の前記確認信号の受信までに要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する、ことを特徴とする上記(14)〜(18)のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【0025】
(20)前記発信装置を複数台設け、前記本体制御装置から発信を指示された場合に各発信装置が相互に所定のタイムラグを置いて発信することを特徴とする上記(14)〜(19)のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【0026】
(21)前記本体制御装置において、前記複数台の発信装置から発信される送信電波により前記無指向性受送信装置が呼を送信し、少なくとも1台以上の前記受信装置が当該呼を受信する一連の過程において要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する、ことを特徴とする上記(20)に記載の移動体監視方法。
【0027】
(22)前記本体制御装置から各発信装置を個別に呼び出して発信を指示し、前記確認信号が受信できるかどうかを試し、いずれかの発信装置を個別に呼び出して発信を指示したときに前記確認信号が受信できたときは前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、また全ての発信装置を個別に呼び出して発信を指示しても前記確認信号が受信できないときは前記移動体が監視エリア内に居ないと判断することを特徴とする上記(14)〜(21)のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【0028】
(23)前記監視エリアを第1の監視エリアとし、その周囲に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の第2エリア無指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記第2エリア無指向性発信装置からの電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を確認する第2エリア無指向性受信装置と、を設け、前記本体制御装置により、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したときは、前記第2エリア発信装置と前記第2エリア無指向性受信装置を作動させて監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記第2エリア無指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断することを特徴とする上記(14)〜(21)のいずれか1つに記載の移動体監視方法(図26参照)。
【0029】
(24)前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を同期して受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の有指向性受信装置と、を設け、前記本体制御装置により、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したときは、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記有指向性受信装置を作動させて監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記有指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断することを特徴とする上記(14)〜(21)のいずれか1つに記載の移動体監視方法(図27参照)。
【0030】
(25)前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の無指向性受信装置と、を設け、前記本体制御装置により、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したときは、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記無指向性受信装置を作動させて監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアに切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記無指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断することを特徴とする上記(14)〜(21)のいずれか1つに記載の移動体監視方法(図30参照)。
【0031】
(26)送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとする少なくとも1台の発信装置から送信電波を放射し、前記送信電波を、前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯された無指向性受送信装置で受信し、前記送信電波の受信に応答して、前記無指向性受送信装置から、自己の識別符号を根拠に呼を電波により送信し、前記呼を前記監視エリアを監視するに足る位置に設置された受信装置で受信して通信の接続を完了し、前記通信の接続完了後に、前記受信装置から前記識別符号の無指向性受送信装置との通信の接続ができた旨の確認信号を本体制御装置に出力し、前記本体制御装置おいて、前記発信装置が自律的に行った発信に対し、その後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合に、前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、前記確認信号が受信不能な場合には居ないと判断することを特徴とする移動体監視方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、発信装置の自律的発信の有無にかかわらず、必要に応じて或いは周期的に発信装置に発信指示を与えて移動体の無指向性受送信装置を呼び出し、各移動体の無指向性受送信装置と受信装置との間で順次に通信を行わせるので、多数の移動体を順次効率よく監視することができる。また、移動体の無指向性受送信装置は呼び出しに応じてその都度応答し動作すればよいので、移動体に発信器を付帯させて常時最大限のパワーで無線信号を出し続ける従来の形態に比べ、電池消耗の少ない経済的なシステムを構築することができる。従って、複数の自由移動体を広い範囲に亘って容易に監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる移動体監視システムの全体構成を示す図である。
【0035】
本実施形態にかかる移動体監視システムは、自己の送信電波の有効到達範囲以内を監視エリア10として確立すべく配置された1台の無指向性発信装置2(mH)と、上記監視エリア10内に位置すべき監視対象である第1の移動体8aおよび第2の移動体8bからなる二つの移動体8と、各移動体8にそれぞれ付帯されており、無指向性発信装置2(mH)からの送信電波を受信し且つこれに応答して自己の識別符号を根拠に電波により呼を送信する無指向性受送信装置9(F)と、上記監視エリア10を監視するに足る位置に設置され無指向性受送信装置9(F)からの送信電波による呼を受信して通信の接続を完了した後に、上記識別符号の無指向性受送信装置9(F)と通信の接続ができた旨の確認信号(移動体確認信号)を出力する無指向性受信装置3(mJ)と、上記無指向性発信装置2(mH)に対して必要に応じて発信を指示し、その後、若しくは自律的に無指向性発信装置2(mH)が発信を行った後に、上記無指向性受信装置3(mJ)から上記確認信号を受けた場合に、移動体8(8aまたは8b)が監視エリア10内に居るか否かを判断する本体制御装置1とを有する。
【0036】
図2〜図4に使用可能なアンテナの例を示す。無指向性発信装置用の無指向性アンテナとしては、図2に示すような基台22に設けた単一導体からなる垂直アンテナ23があり、また無指向性受信装置用の無指向性アンテナとしては、図3(a)(b)に示すような基台22に設けた垂直アンテナ24や鉄塔25を用いた垂直アンテナ24がある。この無指向性発信装置用の無指向性アンテナと無指向性受信装置用の無指向性アンテナは、図4(a)に示すように、垂直アンテナ23と垂直アンテナ24を近接して配設した一体型のものや、図4(b)に示すように、垂直アンテナ23と垂直アンテナ24を近接して配設した一体型のものを用いることもできる。
【0037】
移動体8に付帯させる無指向性受送信装置9は、移動体8が自動車等の機械要素の場合、図5に示すように、アンテナがケース26内に納められたアンテナ内蔵型(a)や、アンテナ91をケース26から突出させたアンテナ外出し型(b)や、アンテナ91をケース26と別体として設けて有線92で接続するアンテナ分離型(c)など、いずれを採用してもよい。
【0038】
しかし、移動体8が人や動物の場合、移動体8から離脱してしまう可能性があるので、無指向性受送信装置9は、移動体8から外れないようにする工夫が必要である。図6は、人や動物用に適した無指向性受送信装置9の装着形態を示したもので、(a)は動物用首輪型、(b)は人用ペンダント型、(c)は人用時計型、(d)は人用指輪型、(e)は人用万年筆型、(f)はクリップにて肌着などに付けるようにしたクリップ型である。
【0039】
本体制御装置1はCPU、ROM、RAM、ハードディスク、ディスプレイ、入力装置および通信インタフェースを備えたコンピュータを主体に構成されており、監視用の警報装置1aを備えている。本体制御装置1と無指向性発信装置2の間および本体制御装置1と無指向性受信装置3の間は、それぞれ通信ケーブル等の第1の有線6、第2の有線7により接続されているが、無線により接続することもできる。本体制御装置1は無指向性発信装置mHに対して発信を指示する機能と、無指向性受信装置3からの上記確認信号を受けて、移動体8(8aまたは8b)が監視エリア10内に居るかどうかを判断する機能と、移動体8(8aまたは8b)が監視エリア10内に居ない場合に警報装置1aから警報を発する機能とを有する。
【0040】
本例においては無指向性発信装置2(mH)を用いて説明を行ったが、有指向性発信装置を用いても同等のシステムを構築することができる。有指向性発信装置の詳細については後述する。なお、以下の説明でも無指向性発信装置2(mH)を用いて説明を行うが、有指向性発信装置を用いても同様である。
【0041】
次に動作について説明する。
【0042】
図1において、まず、本体制御装置1は無指向性発信装置2(mH)に対して発信を指示するか、若しくは無指向性発信装置2(mH)が自律的に発信を行う。これを受けて、無指向性発信装置2が全ての移動体8の無指向性受送信装置9に対して呼を送信する。ここで無指向性発信装置2と全ての無指向性受送信装置9との間の通信プロトコルは、共通の「統一プロトコル」として予め決められており、無指向性発信装置2は自己の識別符号を根拠として、すなわち呼出コードの一部として、無指向性受送信装置9を呼び出す。
【0043】
呼び出された無指向性受送信装置9は、当該識別符号の無指向性発信装置2との通信の接続を完了し、必要な通信を行う。そして、無指向性受送信装置9は、自己の識別符号を根拠として、専用のプロトコルで、無指向性受信装置3を呼び出す。このとき、必要な場合は、すなわち移動体8の個体数が多く互いの電波が容易に混信する場合においては、各無指向性受送信装置9は、相互に正確に時間が合わせられた自己の内部時計等の各無指向性受送信装置間での発信に互いに所定のインターバルを作ることを可能とする手段を用いて、互いに時間差を持って、すなわち前後して無指向性受信装置3を呼び出す。
【0044】
呼び出された無指向性受信装置3は、当該識別符号の無指向性受送信装置9との通信の接続を完了し、必要な通信を行う。その後に、無指向性受信装置3は、当該識別符号の無指向性受送信装置9と通信の接続ができた旨の確認信号(移動体確認信号)を、自己の識別符号と共に本体制御装置1に向けて出力する。
【0045】
ここで、無指向性発信装置2と無指向性受送信装置9との間の通信や、無指向性受送信装置9と無指向性受信装置3との間の通信や、無指向性受信装置3と本体制御装置1との間の通信や、本体制御装置1と無指向性発信装置2との通信は、例えば次のような内容を持つフレームを送受することで行う。
【0046】
[(A)+(B)+(C)+(D)+(E)]
ただし、(A):相手呼出符号。(B):呼び出す相手の固有コード。(C):自己を教えるコードを出すという情報の頭コード。(D):自己の識別コード。(E):もし有れば送受するデータであり、例えば監視対象者の血液型、年齢などの移動体の属性を示すデータを含むものである。移動体の属性を示すデータを確認することにより、移動体を特定できるだけでなく、個々の移動体に応じた適切な処置を迅速に取ることが可能となる。
【0047】
本体制御装置1は、無指向性発信装置2に対して発信を指示した後、若しくは無指向性発信装置2が自律的に発信を行った後に、無指向性受信装置3から上記確認信号を受けたときは、その移動体8の存在する範囲を確認し(移動体8の位置の確認方法は後述)、管理エリア10内に移動体8が存在するか否かを判断し、もし移動体8が監視エリア10を越えて存在している場合や、若しくは無指向性発信装置2に対して発信を指示した後に無指向性受信装置3から上記確認信号を受信できなかったときは、移動体8が監視エリア10内に居ないと判断し、警報装置1aを作動させ、表示または音響にてその旨を管理者に報知する。
【0048】
次に、本体制御装置1は、移動体8の存在する位置(必ずしも1点に定まらないこともある)とともに、無指向性受送信装置9からの送信電波が無指向性受信装置3へ到達する時間から、移動体8が無指向性受信装置3から離れつつあるのかまたは近づきつつあるのかを判断する手段を有する。この前提として、無指向性受送信装置9、無指向性受信装置3および本体制御装置1、及び自律的に無指向性発信装置2が発信を行う場合に無指向性発信装置2は、それぞれ正確に時刻を合わせられた内部時計等の正確に時間を知り得る手段を有し、また、無指向性発信装置2が自律的に発信を行う場合にその時間を知り得る手段を本体制御装置1は有しており、本体制御装置1は、2回にわたり上記無指向性発信装置2に対して発信を指示するか、若しくは無指向性発信装置2が2回にわたり自律的に発信を行う。
【0049】
この移動体8が無指向性受信装置3から離れつつあるのかまたは近づきつつあるのかを判断する動作につき説明する。
【0050】
図7に示すように、無指向性発信装置2(mH)、無指向性受信装置3(mJ)、無指向性受送信装置9(F)の座標位置が、それぞれベクトルmH(h1、h2、h3)、ベクトルmJ(j1、j2、j3)、ベクトルF(f1、f2、f3)で表せたとする。このうち、無指向性発信装置2と無指向性受信装置3の座標位置は既知である。以下、ベクトルmH、ベクトルmJ、ベクトルFを、それぞれ単にmH、mJ、Fと記す。
【0051】
今、本体制御装置1が1回目の発信を指示するか、無指向性発信装置2が自律的に行った、無指向性発信装置2より発した1回目の通信波が無指向性受送信装置9に受信されて、その無指向性受送信装置9より発信した通信波が無指向性受信装置3に到達し、その出力が本体制御装置1で処理されるまでに要するトータル時間がt0であったとする。このトータル時間t0より、本体制御装置1から無指向性発信装置2へ指示の伝達に要する時間δ1(ただし無指向性発信装置が自律的に発信を行う場合にはδ1=0となる)、無指向性受送信装置9が通信波を受信してから通信波を送信するまでに要する時間δ2、無指向性受信装置3が本体制御装置1に出力してから本体制御装置1が情報の処理を終えるのに要する時間δ3の合計を差し引いた時間tが、実際に電波が、電波伝達区間(距離L)での伝達に要した時間となる。ここに電波伝達区間(距離L)は、無指向性発信装置2から無指向性受送信装置9までの区間(距離L1)と無指向性受送信装置9から無指向性受信装置3までの区間(距離L2)を加算したものであり、図7においては、距離L1=│F−mH│+│mJ−F│である。
【0052】
今、大気中の光速をcとすると、L=ctとなるから、
無指向性受送信装置9(移動体8)の空間上の位置は、下記(1)式
│F−mH│+│mJ−F│=ct …(1)
の解となる。これは一般に(特殊解を除いて)、図8に示すように、位置ベクトルmH、mJを2つの焦点S1、R1とするフットボール型の曲面(楕円回転体H1)として得られ、p(ベクトル)=mH−mJ が長軸となる。
【0053】
ax+by+cZ=0 なる平面との交点を求めると、図9に示すような楕円D1が解と考えられる。従って、ある平面上を移動する無指向性受送信装置9(移動体8)に関しては、図10に示すように、楕円D1の円周上に存在することになり、これが前述の本体制御装置1が移動体8の存在位置を確定する手段となる。なお、小動物ではこれで円周上の位置といえるが、高さのある人間などでは距離L1、L2が十分に遠くないと、円周上とは言えなくなる可能性もある。
【0054】
そこで、本体制御装置1が2回目の発信を指示し、若しくは自律的に、無指向性発信装置2が2回目の通信波を発することで得られる解による無指向性受送信装置9(移動体8)の空間上の位置が、1回目の無指向性受送信装置9(移動体8)の空間上の位置に比べ広がっていれば、無指向性受送信装置9(移動体8)の運動は管理エリアの外側の方向、正確には無指向性発信装置2と無指向性受信装置3を結ぶ長軸方向の距離より遠ざかっていることになる。また、1回目の無指向性受送信装置9(移動体8)の空間上の位置に比べ2回目の位置が縮まっていれば、無指向性受送信装置9(移動体8)の運動は管理エリアの内側の方向、正確には無指向性発信装置2と無指向性受信装置3を結ぶ長軸方向に近づく方向に向かっていることになる。
【0055】
よって、移動体8が監視エリア10外に有るか、若しくは監視エリア10の境界近傍に有り、且つ離れる方向に移動している場合に、警報装置1aを作動させるシステムを構築することができる。
【0056】
<第2の実施形態>
図11は、無指向性発信装置2を、第1の無指向性発信装置2a(mH1)と第2の無指向性発信装置2b(mH2)の2つに増やした実施形態を示す(無指向性発信装置2の少なくとも1つを有指向性発信装置に変えても同等のシステムを構築することができることは前述と同じである)。なお、監視エリアは便宜上四角形に描いてある。この実施形態の場合、第1の無指向性発信装置2aと第2の無指向性発信装置2bが2つ同時に1つの無指向性受信装置3に対して呼を送信すると、呼の衝突が起こり得るので、第1の無指向性発信装置2aと第2の無指向性発信装置2bが呼を送信する送信タイミングに時間差を設ける。
【0057】
このときの動作は次のようになる。
【0058】
図11において、まず、本体制御装置1が第1の無指向性発信装置2a(mH1)および第2の無指向性発信装置2b(mH2)に対して時間差をもって発信を指示するか、若しくは第1の無指向性発信装置2a(mH1)および第2の無指向性発信装置2b(mH2)が自律的に時間差を持って発信する。
【0059】
これにより、まず第1の無指向性発信装置2a(mH1)が作動し、自己の識別符号を根拠として、全ての移動体8(8a、8b)の無指向性受送信装置9に対して、統一プロトコルで呼を送信する。
【0060】
呼を受信した全ての無指向性受送信装置9は、当該識別符号の第1の無指向性発信装置2aとの通信の接続を完了し、必要な通信を行う。そして、無指向性受送信装置9は、自己の識別符号を根拠として、専用のプロトコルで、無指向性受信装置3を呼び出す。
【0061】
呼び出された無指向性受信装置3は、当該識別符号の無指向性受送信装置9との通信の接続を完了し、必要な通信を行う。その後に、無指向性受信装置3は、当該識別符号の無指向性受送信装置9(F1、F2)と通信の接続ができた旨の確認信号(移動体確認信号)を、本体制御装置1に向けて出力する。
【0062】
次に第2の無指向性発信装置(mH2)が作動し(正確には第1の無指向性発信装置2a(mH1)の通信が完全に終了する以前においても同通信を混乱させないタイムラグを設けて)、自己の識別符号を根拠として、全ての移動体8(8a、8b)の無指向性受送信装置9に対して、統一プロトコルで呼を送信する。
【0063】
呼を受信した全ての移動体8(8a、8b)の無指向性受送信装置9は、当該識別符号の第2の無指向性発信装置2bとの通信の接続を完了し、必要な通信を行う。そして、各無指向性受送信装置9は、自己の識別符号を根拠として、専用のプロトコルで、無指向性受信装置3を時間差を持って呼び出す。
【0064】
呼び出された無指向性受信装置3は、当該識別符号の無指向性受送信装置9との通信の接続を完了し、必要な通信を行う。その後に、無指向性受信装置3は、当該識別符号の無指向性受送信装置9(F1、F2)と通信の接続ができた旨の確認信号(移動体確認信号)を、本体制御装置1に向けて出力する。
【0065】
本体制御装置1は、第1および第2の無指向性発信装置2a、2bに対して発信を指示した後、若しくは2つの無指向性発信装置2a、2bが自律的に時間差をもって発信した後に、無指向性受信装置3から上記確認信号を受けたときは、その移動体8の存在する範囲を確認し、監視エリア10内に存在するかを判断する。そして、移動体8が監視エリア10を越えて存在している場合や、第1および第2の無指向性発信装置2a、2bに対して発信を指示した後に無指向性受信装置3から上記確認信号を受信できなかったときは、移動体8が監視エリア10内に居ないと判断し、警報装置1aを作動させ、表示または音響にてその旨を管理者に報知する。
【0066】
<第2の実施形態のエラー処理1>
図11において、第1の無指向性発信装置2a(統一プロトコル)→移動体8の無指向性受送信装置9(F1、F2)→無指向性受信装置3の第1ルートでリレーミスが生じた場合、上記確認信号が本体制御装置1に伝達されない。このリレーミスは本体制御装置1に記憶される。
【0067】
次に、本体制御装置1は、第2の無指向性発信装置2b(統一プロトコル)→移動体8の無指向性受送信装置9(F1、F2)→無指向性受信装置3の第2ルートでリレーミスの有無を判断し、リレーミスがなく無事に上記確認信号が受信できたときは、移動体8の確認がとれたとして処理を終了する。
【0068】
しかし、この第2ルートでもリレーミスが生じた場合、本体制御装置1は、各移動体8が備える無指向性受送信装置9固有の専用プロトコル(以下、専用プロトコルと記す)で第1の無指向性発信装置2aに発信を指示し、第1の無指向性発信装置2a→移動体8の無指向性受送信装置9(F1、F2)→無指向性受信装置3の第3ルートでリレーミスの有無を判断する。また、これに続いて、本体制御装置1は、専用プロトコルで第2の無指向性発信装置2bに発信を指示し、第2の無指向性発信装置2b→移動体8の無指向性受送信装置9(F1、F2)→無指向性受信装置3の第4ルートでリレーミスの有無を判断し、リレーミスがなく無事に上記確認信号が受信できたときは、移動体8の確認がとれたとして処理を終了する。
【0069】
しかし、これでもリレーミスが生じた場合、移動体8の無指向性受送信装置9(F1、F2)が存在しないことになるので、本体制御装置1は警報装置1aを作動させて警報を発する。
【0070】
<第2の実施形態のエラー処理2>
図11は移動体8がある程度離れている場合であった。しかし、移動体8は、図12に示すように、相互に非常に接近している場合がありうる。かかる場合、上記統一プロトコルによる第1ルートおよび第2ルートの送受では、無指向性受送信装置9(F1、F2)に、第1の無指向性発信装置2aおよび第2の無指向性発信装置2bからの送信電波が同時に受信される等の理由によりジャミングが起こり、通信の情報が処理されず、本体制御装置1に伝送されないことが生じ得る。
【0071】
そこで、本体制御装置1はかかる場合も、呼び出し専用プロトコルによる第3ルートで第1の無指向性発信装置2aに発信を指示し、次に専用プロトコルによる第4ルートで第2の無指向性発信装置2bに発信を指示する。そして本体制御装置1は、これら第3ルートまたは第4ルートで無指向性受信装置3から、リレーミスがなく無事に通信ができた旨の上記確認信号が受信できたときは、移動体8の確認処理を終了する。もし第3ルートおよび/または第4ルートでリレーミスが生じたときは、警報装置1aを作動させて、警報を発する。
【0072】
従って、移動体8が相互に非常に接近していてジャミングによりリレーミスがある場合も、正しく移動体8の確認処理を行うことができる。
【0073】
第3ルートまたは第4ルートでの通信にのみ専用プロトコル(専用呼び出し符号)を用い、第1ルートまたは第2ルートでの通信には専用プロトコルを用いずに統一プロトコルを用いている理由は、移動体8が大量に存在した場合、その無指向性受送信装置9を一つ一つを呼び出していては通信接続完了までに時間がかかりすぎるためである。特に、移動体8が監視エリア10に近づきつつあるのか遠ざかりつつあるのかを知るのには、2回の通信波の発信が必要であるので、誤差が生じやすくなる。また後述するような移動体8の位置、速度を求める場合には、その無指向性受送信装置9からのデータの高速な演算処理が必要であり、上記通信接続完了までの時間が無視できなくなる。したがって、移動体8が少数の場合など演算処理に問題を生じない場合は、全て専用プロトコルを用いるシステムで構築することも可能である。
【0074】
<移動体8の位置、速度の認識>
(A)無指向性発信装置2が1台で無指向性受信装置3が1〜3台、(B)無指向性発信装置2が2台で無指向性受信装置3が1台、(C)無指向性発信装置2が3台で無指向性受信装置3が1台、という各組合せの場合には、一般に、移動体8が監視エリア10に内に存在するかどうかと、移動体8が監視エリア10に近づきつつあるのか遠ざかりつつあるのか、だけを知ることができる。移動体8の位置、速度を認識するためには、上記台数以上の無指向性発信装置2と無指向性受信装置3の組合せが特別な場合を除いて必要である。また前提として、速度若しくは位置の変化の認識のためには一般に、2回の通信波の発信が必要となる。
【0075】
以下、移動体8の位置、速度の認識に関して、場合を分けて説明する。
【0076】
(a)無指向性発信装置2が1台で無指向性受信装置3が1〜3台の場合(図1および上記(A)の場合)。
【0077】
この場合には、無指向性発信装置2が1台しかないので、移動体8が監視エリア10に内に存在するかどうかと、移動体8が監視エリア10の境界に近づきつつあるのか遠ざかりつつあるのか、だけを知ることができる。ただし、特別な例としては、移動体8が一定の平面上のみを移動するような場合、さらに条件が加わるため、無指向性受信装置が3台ある場合、位置、速度の全てを知ることが可能になる場合がある(後述)。このように一定の制限が加わった場合、無指向性発信装置や無指向性受信装置の数が少なくても移動体8の位置、速度、離反などの全ての情報を知ることが可能となる場合があり得る。
【0078】
(b)無指向性発信装置2が2台(mH1、mH2)で無指向性受信装置3が1台(mJ)の場合(上記第2の実施形態および上記(B)の場合)。
【0079】
この場合、移動体8が存在する可能性がある空間上の位置は、一般に特殊解を除いて、図13に示すように、第1の無指向性発信装置2aのベクトル座標(mH1)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S1、R1とする楕円回転体H1と、第2の無指向性発信装置2bのベクトル座標(mH2)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S2、R1とする楕円回転体H2が存在することになり、その交差曲線(一般に楕円D2となる)上に、移動体8の無指向性受送信装置9が存在する。
【0080】
今、ここで移動体8がax+by+cz=0の平面27上のみを移動する(平面のみを移動する)とすると、図14に示すように2つの交点K1、K2に解を持つ。これを平面で見ると、図15のようになり、2つの交点2が移動体8の存在する可能性がある点として示される。
【0081】
従って、2台の無指向性発信装置2と1台の無指向性受信装置3の場合には移動体8の位置が1点に定まらない。しかし、特別な例としては、そのうちのいずれかの点が本来移動体8が存在し得ない地点である場合、その点を完全に棄却可能な場合はその点を棄却することにより、移動体8の位置、速度、離反などの全ての情報を知り得る。
【0082】
(c)無指向性発信装置2が3台(mH1、mH2、mH3)で無指向性受信装置3が1台(mJ)の場合(上記(C)の場合)。
【0083】
この場合は、図16に示すように、第1の無指向性発信装置2aのベクトル座標(mH1)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S1、R1とする楕円回転体H1と、第2の無指向性発信装置2bのベクトル座標(mH2)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S2、R1とする楕円回転体H2と、第3の無指向性発信装置のベクトル座標(mH3)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S3、R1とする楕円回転体H3と、が存在する。従って、2つの交点K1,K2が移動体8の存在する可能性がある点として示され、移動体8の位置が1点に定まらない。しかし、今ここで特別な例として移動体8がax+by+cz=0の平面27上のみを移動する場合、図18に示すように1つの交点K0(これはK1,K2のいずれかの点)に解をもつ。これを平面で見ると、図19のようになり、移動体8が存在する可能性ある点は1点のK0に定まるため、この場合は移動体8の位置、速度、離反などの全ての情報を知ることが可能である(速度に関しては後述する)。さらに、無指向性発信装置2が3台で無指向性受信装置3が1台の場合と、無指向性発信装置2が1台で無指向性受信装置3が3台の場合は、数学的には同値であるため、前述したごとく、この場合も移動体8の位置、速度、離反などの全ての情報を知ることが可能となるわけである(速度に関しては後述する)。
(d)無指向性発信装置2が2台(mH1、mH2)で無指向性受信装置3が2台(mJ1、mJ2)の場合(上記(A)(B)(C)以外の場合)。
【0084】
この場合は、図17に示すように、第1の無指向性発信装置2aのベクトル座標(mH1)および第1の無指向性受信装置のベクトル座標(mJ1)を焦点S1、R1とする楕円回転体H1と、第2の無指向性発信装置2bのベクトル座標(mH2)および第1の無指向性受信装置のベクトル座標(mJ1)を焦点S2、R1とする楕円回転体H2と、第1の無指向性発信装置2aのベクトル座標(mH1)および第2の無指向性受信装置のベクトル座標(mJ2)を焦点S1、R2とする楕円回転体H3と、第2の無指向性発信装置2bのベクトル座標(mH2)と第2の無指向性受信装置のベクトル座標(mJ2)を焦点S2、R2とする楕円回転体H4とが存在し、この交点は一定となり、位置が定まる。
【0085】
よって、本体制御装置1は、2台の無指向性発信装置2(mH1、mH2)からそれぞれ通信波を2回発信させ、2台の無指向性受信装置3(mJ1、mJ2)から伝送されてくる2回目の通信波の時間データを1回目の通信波の時間データと比較し演算することにより、移動体8が移動する方向、速度、離反などのデータを全て入手することができる。
(e)無指向性発信装置2が4台(mH1、mH2、mH3、mH4)で無指向性受信装置3が1台(mJ)の場合(上記(A)(B)(C)以外の場合)。
【0086】
この場合は、図20に示すように、第1の無指向性発信装置2aのベクトル座標(mH1)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S1、R1とする楕円回転体H1と、第2の無指向性発信装置2bのベクトル座標(mH2)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S2、R1とする楕円回転体H2と、第3の無指向性発信装置のベクトル座標(mH3)および第1の無指向性受信装置のベクトル座標(mJ)を焦点S1、R1とする楕円回転体H3と、第4の無指向性発信装置のベクトル座標(mH4)および無指向性受信装置3のベクトル座標(mJ)を焦点S4、R1とする楕円回転体H4とが存在する。従って、移動体8が存在する可能性がある点が、1点のK0に定まる。
【0087】
よって、本体制御装置1は、4台の無指向性発信装置2(mH1〜mH4)からそれぞれ通信波を2回発信させ、1台の無指向性受信装置3(mJ)から伝送されてくる2回目の通信波の時間データを1回目の通信波の時間データと比較し演算することにより、移動体8が移動する方向、速度、離反などのデータを全て入手することができる。
【0088】
<第3の実施形態:徘徊老人監視システム(図21、図24)>
本発明の第3の実施形態を図21に示す。これは、図1の移動体8が徘徊老人であり、その徘徊老人が個室より出てはならない形態を取り扱った徘徊老人監視システムである。
【0089】
11は老人室であり、ドア12、窓13を有する。この老人室11をカバーする監視エリア10が生じるように、中央に無指向性発信装置2と無指向性受信装置3がペアで配置されている。監視エリア10から徘徊老人が出ると警報が発生される点は、既に述べた通りである。
【0090】
しかし、図1と異なり、この図21の徘徊老人監視システムでは、ドア12と窓13の幅方向両側に、それぞれ指向方向固定形有指向性発信装置4(kH)と有指向性受信装置5(yJ)が一対配置され、監視ゲート28が構成されている。
【0091】
監視ゲートの例として、図22(a)は反射鏡タイプのアンテナ29を専用のスタンド30に設けた形態の指向方向固定形有指向性発信装置4と有指向性受信装置5を、また図22(b)は導波素子と反射素子を平行に配列した多素子タイプのアンテナ32を専用のスタンド30に設けた形態の指向方向固定形有指向性発信装置4と有指向性受信装置5を示す。また図23(a)は反射鏡タイプのアンテナ29を共通のスタンド33に設けた形態の指向方向固定形有指向性発信装置4と有指向性受信装置5を、また図23(b)はパラボラタイプのアンテナ34を共通のスタンド33に設けた形態の指向方向固定形有指向性発信装置4と有指向性受信装置5を示す。
【0092】
これらの指向方向固定形有指向性発信装置4と有指向性受信装置5は常時可動しており、本体制御装置1は、指向方向固定形有指向性発信装置4からの発信電波に対する移動体8が身につけている無指向性受送信装置9による呼が有指向性受信装置5で受信できた場合に、移動体8である徘徊老人が該当個所のドア12または窓13を通過したと判断する。従って、本体制御装置1は、監視エリア10内に移動体8である徘徊老人が居るかどうかの監視機能とこのゲート監視機能を合わせて持つことにより、監視エリア10から徘徊老人が出て警報装置1aが作動するとき、徘徊老人が何処の監視ゲート28に居るのかを判断することが可能となる。なお、指向方向固定形有指向性発信装置4と有指向性受信装置5は常時可動しているが、必要に応じて可動させるように構成することもできる。
【0093】
図24は第3の実施形態の変形例であり、徘徊老人が個室より出てトイレまで行ってよい形態を取り扱った徘徊老人監視システムである。
【0094】
図21と異なり、老人室11がドア12を隔てて廊下14に繋がっており、廊下14を経てトイレ14aが存在し、これら全体が監視エリア10として設定されている。また、廊下14の一端側と他端側にそれぞれ、指向方向固定形有指向性発信装置4と有指向性受信装置5が配設され監視ゲート28が構成されている。本体制御装置1は、監視エリア10内に移動体8である徘徊老人が居るかどうかの監視機能とこのゲート監視機能を合わせて持つことにより、監視エリア10から徘徊老人が出て警報装置1aが作動するとき、徘徊老人が何処の監視ゲート28に居るのかを判断することが可能となる。
【0095】
<第4の実施形態:徘徊老人監視システム(図25)>
本発明の第4の実施形態を図25に示す。これは徘徊老人が家より出てはならない形態を取り扱った徘徊老人監視システムである。
【0096】
この図25の徘徊老人監視システムは、2台の無指向性発信装置2(mH)と2台の無指向性受信装置3(mJ)で構成される。この点で、それらが1台ずつである図21および図24の場合と異なる。
【0097】
図25では、一対の第1の無指向性発信装置2aおよび第1の無指向性受信装置3aにより監視エリア10aが形成され、また一対の第2の無指向性発信装置2bおよび第2の無指向性受信装置3bにより監視エリア10bが形成され、全体として繭型の監視エリア10が構築される。この監視エリア10内に、老人室11を持つ家16が配置されるように設定される。ドア12および窓13に監視ゲート28が設けられると共に、家16の玄関15にも監視ゲート28が設けられる。
【0098】
本体制御装置1はドア12の監視ゲート28を老人が出たときより、玄関15の監視ゲート28の動作を可能にする。そして本体制御装置1は、徘徊老人がこの玄関15または窓13の監視ゲート28を通過して監視エリア10を出た場合に、警報装置1aを作動させる。
【0099】
監視エリア10内に移動体8である徘徊老人が居るかどうかの監視機能と、上記のゲート監視機能を合わせて持つことにより、本体制御装置1は、監視エリア10から徘徊老人が出て警報装置1aが作動するとき、徘徊老人が何処の監視ゲート28に居るのかを判断することが可能となる。
【0100】
<第5の実施形態:徘徊老人監視システム(図26)>
図26に本発明の第5の実施形態を示す。これは徘徊老人が庭まで出て良いが、外出してはならない形態を取り扱った徘徊老人監視システムである。
【0101】
この徘徊老人監視システムでは、図25で説明した家16の周りに庭17があり、これを囲って人が乗り越えられない塀18があり、その塀18の一部に門19が設けられている。
【0102】
図25の場合と同じく、一対の第1の無指向性発信装置2aおよび第1の無指向性受信装置3aと、一対の第2の無指向性発信装置2bおよび第2の無指向性受信装置3bとにより、家16をカバーする繭型の第1の監視エリア10が構築される。しかし図25の場合と異なり、更に、無指向性発信装置21(mH)および無指向性受信装置31(mJ)を一対とする送受信ユニットを、庭17に計3ユニットを配設することにより、塀18をカバーする第2の監視エリア20が構築される。また、老人室11の窓13および家16の玄関15に監視ゲート28が設けられると共に、塀18の門19にも指向方向固定形有指向性発信装置4および有指向性受信装置5から成る監視ゲート28が設けられる。
【0103】
本体制御装置1は、徘徊老人が玄関15を出るか第1の監視エリア10より出るか、若しくは窓13より出ると、警報装置1aを作動させて、その旨の第1警報(例えば黄色ランプの点滅)を出力する。また本体制御装置1は、徘徊老人が第2の監視エリア20より出るか、若しくは門19より出ると、警報装置1aを作動させて、その旨の第2警報(例えば赤色ランプの点滅)を出力する。この場合、第2の監視エリア用の無指向性発信装置21が3台、無指向性受信装置31が3台あるので、徘徊老人の位置について定点観測が可能である。
【0104】
<第6の実施形態:徘徊老人監視システム(図27)>
図27に本発明の第6の実施形態を示す。これは徘徊老人が庭17まで出て良いが、外出してはならない形態を取り扱った徘徊老人監視システムである点で図26と同じであるが、第2の監視エリア20を形成すべく指向方向追跡形有指向性発信装置61(aH)および有指向性受信装置51(yJ)を一対とする計4対の送受信ユニットが配設されている点で相違する。
【0105】
図28に、指向方向追跡形有指向性発信装置61のアンテナ91の形態例を示す。図28(a)は導波素子と反射素子を配列した多素子アンテナから成る送信用アンテナ35と受信用アンテナ36を1ユニットとしてスタンド33に取り付け、同期しながら水平方向360度、垂直方向90度をスキャンするように回転させる構成としたものである。図28(b)も同様であるが、鉄塔25に取り付けている点で相違する。なお、図28には送信用アンテナおよび受信用アンテナの双方を備えた装置を示したが、本発明においては、送信用アンテナのみを備えた装置と、受信用アンテナのみを備えた装置とが別個に用意されて必要に応じて使用され得る。
【0106】
指向方向追跡形有指向性発信装置61の指向性通信波が徘徊老人の無指向性受送信装置9に達すると、無指向性受送信装置9は無指向性通信波を発し、その発した電波を有指向性受信装置51(yJ)が指向性を持って受信する。この場合、第2の監視エリアは指向方向追跡形の送信装置および受信装置で構成されているので、徘徊老人の位置について定点観測が可能である。
【0107】
上述したように、電界強度が最大で受信された方向において、送信より受信されるまでに要した時間のうち、前述した処理に要した時間を差し引いた時間tに大気中の光速cをかけた値ctが距離となる。徘徊老人に関し、最初の通信での位置と、2度目の通信での位置を比較することにより、徘徊老人の進行方向および速度が算出される。
【0108】
本体制御装置1は、徘徊老人が玄関15を出るか、第1の監視エリア10より出るか、若しくは窓13より出ると、警報装置1aを作動させて、その旨の第1警報(例えば黄色ランプの点滅)を出力すると共に、指向方向追跡形有指向性発信装置61および有指向性受信装置51から成る4つの送受信ユニットを可能状態として第2の監視エリア20を有効にする。そして本体制御装置1は、徘徊老人が第2の監視エリア20より出るか、若しくは門19より出ると、警報装置1aを作動させて、その旨の第2警報(例えば赤色ランプの点滅および音響の発生)を出力する。
【0109】
なお、図28に示す多素子タイプの指向方向追跡形有指向性発信装置61は、徘徊老人監視システムのように、処理速度および光速が移動体8の速度よりも十分速い場合に用いるのに適する。移動体8の速度が非常に速い場合には、図29に示すパラボラタイプの指向方向追跡形有指向性発信装置62を用いる。
【0110】
すなわち、図29(a)はパラボラアンテナから成る送信用アンテナ37と受信用アンテナ38を1ユニットとしてスタンド33に取り付け、同期しながら水平方向360度、垂直方向90度をスキャンするように回転させる構成としたものである。図29(b)も同様であるが、鉄塔25に取り付けている点で相違する。この図29に示すパラボラタイプの指向方向追跡形有指向性発信装置62は、図28の多素子タイプのものよりも、さらに電界強度の幅が狭い、すなわち指向性が強いものである。なお、図29には送信用アンテナおよび受信用アンテナの双方を備えた装置を示したが、本発明においては、送信用アンテナのみを備えた装置と、受信用アンテナのみを備えた装置とが別個に用意されて必要に応じて使用され得る。
【0111】
このパラボラタイプの指向方向追跡形有指向性発信装置62は、移動速度が速い移動体8を監視するのに適するので、例えば、距離的要素を考えて、馬、車などでは、ドプラー効果を利用して、速度や進行方向の計算することができる。移動体8が近づくときは移動体8の無指向性受送信装置9が出す通信波の波長が短くなり、移動体8が遠ざかると長くなるからである。
【0112】
<第7の実施形態:放牧馬の監視システム(図30)>
図30に本発明の第7の実施形態を示す。これは放牧する馬を移動体8として監視する監視システムである。
【0113】
平原に放牧した馬を監視する目標監視エリア20aに対し、その内側に第1の監視エリア10を確立すべく、無指向性発信装置2(mH)と無指向性受信装置3(mJ)を一対とする計3対の送受信ユニットが配設されている。更に、目標監視エリア20aの中央には、この第1の監視エリア10の周囲に第2の監視エリア20を確立すべく、1台のパラボラ方式の指向方向追跡形有指向性発信装置62(bH)と1台の無指向性受信装置31(mJ)を一対とする1つの送受信ユニットが配設されている。また、平原に放牧した馬(移動体8)には、それぞれ無指向性受送信装置9が付設されている。
【0114】
ここで用いられている指向方向追跡形有指向性発信装置62は、図29で説明したパラボラタイプのものであり、図28の多素子タイプよりも指向性が強いものである。この指向方向追跡形有指向性発信装置62は、図27の実施形態で用いた指向方向追跡形有指向性発信装置61(図28の多素子タイプ)の場合と異なり、他の受信システムからの位置速度などの情報を基に、通信波を連続的に出し、移動体8を連続的に水平360度、垂直90度の範囲でトレースし続ける。自ら移動体8を探索することも可能であるが、効率は悪い。速度、進行方向の計算の仕方は、図28に示すタイプの指向方向追跡形有指向性発信装置61を用いた場合と基本的に同じであるが、ドプラー効果を利用して、速度や進行方向の計算することもできる。
【0115】
本体制御装置1は、移動体8たる馬が図30中に馬8gとして示すように第1の監視エリア10を離脱すると警報装置1aを作動させて第1の警報(黄色ランプの点滅)を出すと共に、指向方向追跡形有指向性発信装置62および無指向性受信装置31から成る送受信ユニットを可動状態にする。これにより第2の監視エリア20が有効になり、馬8gの位置の特定と追跡が行われる。本体制御装置1は、馬8gが第2の監視エリア20を離脱すると警報装置1aを作動させて、第2の警報(赤色ランプの点滅および音響出力)を出し、管理者に報せる。なお本例では、無指向性受信装置31を用いて説明したが、その代わりとして、指向方向追跡形有指向性発信装置62と同期させた有指向性受信装置51を用いてもよい。
【0116】
放牧馬の平原のように第2の監視エリア20が広い場合には、乗用車を用意してこれに指向方向追跡形有指向性発信装置61と有指向性受信装置51を搭載し、その多素子アンテナユニットを屋根の上に搭載すると共に、車内に本体制御装置1を搭載して、監視対象の移動体8を追跡することもできる。その際、警報装置1aの一部として、移動体8までの距離を表示する表示器(例えば数字メータ、PPIスコープ)や、一定の距離以内に入った場合に音響を発する音響発生器(例えばブザーやスピーカ)を設けるのが好ましい。また、同装置をコンパクトにしてハンディタイプとし、徒歩での使用を可能としたり、また、監視エリア20を越えてしまったような場合、本システムの無指向性発信装置2と、無指向性受信装置3と、本体制御装置1をもって、自ら移動型の監視エリア10を形成して探索し、さらに場合によっては、同監視エリア10に入った(本体制御装置1が認識した)移動体8に対して、指向方向追跡形有指向性発信装置61と有指向性受信装置51、および本体制御装置1よりなる追跡装置により、より正確な移動体8の位置を探索することも可能である。
【0117】
<第8の実施形態:放牧馬の監視システム(図31)>
図31に本発明の第8の実施形態を示す。これは放牧する多数の馬を移動体8として監視する監視システムの変形例である。
【0118】
平原に放牧した馬を監視する目標監視エリア20aに対し、その内側に第1の監視エリア10を確立すべく、無指向性発信装置2(mH)と無指向性受信装置3(mJ)を一対とする計9対の送受信ユニット(a)が配設されている。更に、目標監視エリア20aの周囲に第2の監視エリア20を確立すべく、第1の監視エリア10と目標監視エリア20aの間の領域に、パラボラタイプの指向方向追跡形有指向性発信装置62(bH)と無指向性受信装置3(mJ)を一対とする計8対の送受信ユニット(b)と、多素子タイプの指向方向追跡形有指向性発信装置61(aH)と無指向性受信装置3(mJ)を一対とする計8対の送受信ユニット(c)が配設されている。また、平原に放牧した馬(移動体8)には、それぞれ無指向性受送信装置9が付設されている。
【0119】
本体制御装置1は、移動体8たる馬が8qで示すように第1の監視エリア10を離脱すると警報装置1aを作動させて第1の警報(黄色ランプの点滅)を出すと共に、8つの送受信ユニット(c)を可動状態とし、馬8qの位置を特定する。馬8qの位置が特定されたならば、本体制御装置1は、8つの送受信ユニット(b)のうちの最も近くにある送受信ユニット(b)を可動状態として馬8qを追跡し続ける。そして、馬8qが第2の監視エリア20から離脱した場合、本体制御装置1は、警報装置1aを作動させて、第2の警報(赤色ランプの点滅および音響出力)を出し、管理者に報せる。もし馬8qが第1の監視エリア10内に戻れば、本体制御装置1は、送受信ユニット(b)(c)は再び休止状態に置かれる。
【0120】
本例においては、パラボラタイプの指向方向追跡形有指向性発信装置62(bH)と対になる受信装置を、同期させたパラボラタイプの指向方向追跡形有指向性受信装置や、多素子タイプの指向方向追跡形有指向性受信装置に変えてもよい。また、多素子タイプの指向方向追跡形有指向性発信装置62(bH)と対になる受信装置を、多素子タイプの指向方向追跡形有指向性受信装置に変えてもよい。
【0121】
以上述べたように、本発明の移動体監視システムは、本体制御装置1が必要に応じて或いは周期的に無指向性発信装置2に発信指示を与えるか、無指向性発信装置2が自律的に発信し、移動体8の無指向性受送信装置9を呼び出し、各移動体の無指向性受送信装置9と無指向性受信装置3との間で通信を行わせるので、多数の移動体を順次効率よく監視することができる。
【0122】
上記実施形態では、無指向性発信装置2(mH)と無指向性受送信装置9(F)との間で双方向の通信を行うものとして説明したが、無指向性発信装置2(mH)から一方向の通信を行い、無指向性受送信装置9(F)はその無指向性発信装置2からの発信電波を受信し、呼応する電波を発信し、無指向性受信装置3がこれを受信するだけのシステムとして構築することができる。この形態においても、必要に応じて或いは周期的に無指向性発信装置2に発信指示を与えて、若しくは無指向性発信装置2が自律的に発信を行い、移動体8の無指向性受送信装置9を呼び出し、各移動体の無指向性受送信装置9と無指向性受信装置3との間で順次に通信を行わせるので、多数の移動体を順次効率よく監視することができる効果が得られるからである。
【0123】
また、本発明においては、監視エリアを確立するべく用いる発信装置を無指向性のもので主に説明したが、移動体8の移動範囲が限られたものであって、移動体8の移動速度が比較的遅いものなどでは、有指向性発信装置で代用し得る。また、同様の理由により、無指向性受信装置も、同期させるなどの方法により有指向性受信装置で代用することも可能である。
【0124】
また本発明は、受送信装置を持つ複数の自由移動体に対して、複数の送受信機を用いて、その複数の自由移動体の動きを監視し、一定の管理エリアを越えた場合に警告を発するシステムであり、システム全体の構造が柔軟性に優れており、管理エリアを離脱した自由移動体を探索検知するシステムとしても活用することができる。従って、例えば一匹の動物の管理など、極めて小規模なシステムから、放牧する数100匹の羊の群れの管理などの大規模なものまでも、管理対象とすることが可能である。さらに本システムは、管理エリアを移動させることが可能であるから、そのような群れの移動にも追従していくことが可能である。
【0125】
本発明は、前述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の技術的概念から逸脱することなく、種々様々な変更あるいは修正を実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の移動体監視システムは、人および人以外の動物や、乗り物など、全ての移動体8を対象として監視することができる。例えば、次のような移動体8を対象とした監視システムとして構築することができる。
【0127】
(1)徘徊老人監視システム(第3〜第6の実施形態)。
【0128】
(2)放牧馬の監視システム(第7および第8の実施形態)。
【0129】
(3)登山者に無指向性受送信装置9を持たせた登山者監視システム。山では携帯電話は通じにくい上に、遭難者が意識がない状態では電話が通じないが、この登山者監視システムにより、遭難者を探索し易くなる。
【0130】
(4)駐車自動車の監視システム。自分の車に無指向性受送信装置9を装備させ、大型の駐車場などに駐車したとき、後で車を探し出し易くする。
【0131】
(5)在庫品の監視システム。倉庫の在庫管理に用い、特定の荷物が何処にあるか、三次元的に瞬時に把握可能とする。
【0132】
(6)迷子の監視システム。大型のイベントや遊園地に入るとき子供に持たせ、迷子の防止を図る。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる移動体監視システムの全体構成を示す図である。
【図2】無指向性発信装置用の無指向性アンテナを例示した図である。
【図3】無指向性受信装置用の無指向性アンテナの種類を示す図である。
【図4】無指向性発信装置用と無指向性受信装置用の無指向性アンテナを一体型とした形態を示す図である。
【図5】機械要素の移動体に付帯させる無指向性受送信装置の種類を示した図である。
【図6】人や動物用に適した無指向性受送信装置の装着形態を示した図である。
【図7】無指向性発信装置(mH)、無指向性受信装置(mJ)、移動体の無指向性受送信装置(F)のベクトル座標位置を例示した図である。
【図8】移動体(無指向性受送信装置)が存在する可能性がある曲面を示した図である。
【図9】移動体(無指向性受送信装置)の空間上の位置を示す図である。
【図10】平面上を移動する移動体(無指向性受送信装置)の位置を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかる、2つの無指向性発信装置と1つの無指向性受信装置で構成した移動体監視システムを示した図である。
【図12】図11の形態において2つの移動体が非常に接近している場合を示した図である。
【図13】無指向性発信装置が2つの場合に、移動体(無指向性受送信装置)が存在する可能性がある空間上の位置を示す図である。
【図14】図13の移動体(無指向性受送信装置)が存在する可能性がある空間上の位置と平面との関係を示す図である。
【図15】図14の平面上に移動体(無指向性受送信装置)が存在する位置を示す図である。
【図16】無指向性発信装置が3台で無指向性受信装置が1台の場合に、移動体(無指向性受送信装置)が存在する可能性がある空間上の位置を示す図である。
【図17】無指向性発信装置が2台で無指向性受信装置が2台の場合に、移動体(無指向性受送信装置)が存在する可能性がある空間上の位置を示す図である。
【図18】図17の移動体(無指向性受送信装置)が存在する可能性がある空間上の位置と平面との関係を示す図である。
【図19】図18の平面上に移動体(無指向性受送信装置)が存在する位置を示す図である。
【図20】無指向性発信装置が4台で無指向性受信装置が1台の場合に、移動体(無指向性受送信装置)が存在する可能性がある空間上の位置を示す図である。
【図21】本発明の第3の実施形態に係る徘徊老人監視システムを示す図である。
【図22】指向方向固定形有指向性発信装置と有指向性受信装置のアンテナユニットを例示した図である。
【図23】指向方向固定形有指向性発信装置と有指向性受信装置を一対とするアンテナユニットを例示した図である。
【図24】本発明の第3の実施形態(図21)に係る徘徊老人監視システムの変形例を示す図である。
【図25】本発明の第4の実施形態に係る徘徊老人監視システムを示す図である。
【図26】本発明の第5の実施形態に係る徘徊老人監視システムを示す図である。
【図27】本発明の第6の実施形態に係る徘徊老人監視システムを示す図である。
【図28】多素子タイプの指向方向追跡形有指向性発信装置と有指向性受信装置を一対とするアンテナの形態例を示す図である。
【図29】パラボラタイプの指向方向追跡形有指向性発信装置と有指向性受信装置を一対とするアンテナの形態例を示す図である。
【図30】本発明の第7の実施形態に係る放牧馬の監視システムを示す図である。
【図31】本発明の第8の実施形態に係る放牧馬の監視システムを示す図である。
【符号の説明】
【0134】
1 本体制御装置、
1a 警報装置、
2 無指向性発信装置、
2a 第1の無指向性発信装置、
2b 第2の無指向性発信装置、
3 無指向性受信装置、
3a 第1の無指向性受信装置、
3b 第2の無指向性受信装置、
4 指向方向固定形有指向性発信装置、
5 有指向性受信装置、
6 第1の有線、
7 第2の有線、
8 移動体、
8a 第1の移動体、
9 無指向性受送信装置、
10 監視エリア、
10 第1の監視エリア、
10a 監視エリア、
10b 監視エリア、
11 老人室、
12 ドア、
13 窓、
14 廊下、
15 玄関、
16 家、
17 庭、
18 塀、
19 門、
20 第2の監視エリア、
20a 目標監視エリア、
21 無指向性発信装置、
22 基台、
23 垂直アンテナ、
24 垂直アンテナ、
25 鉄塔、
26 ケース、
27 平面、
28 監視ゲート、
29 反射鏡タイプのアンテナ、
30 専用のスタンド、
31 無指向性受信装置、
32 多素子タイプのアンテナ、
33 共通のスタンド、
34 パラボラタイプのアンテナ、
35 送信用アンテナ、
36 受信用アンテナ、
37 送信用アンテナ、
38 受信用アンテナ、
51 有指向性受信装置、
61 指向方向追跡形有指向性発信装置、
62 指向方向追跡形有指向性発信装置、
91 アンテナ、
92 有線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己の送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとして確立すべく配置された少なくとも1台の発信装置と、
前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯されており、前記発信装置からの送信電波を受信し且つこれに応答して自己の識別符号を根拠に電波により呼を送信する無指向性受送信装置と、
前記監視エリアを監視するに足る位置に設置され前記無指向性受送信装置からの送信電波による呼を受信して通信の接続を完了した後に、前記識別符号の無指向性受送信装置と通信の接続ができた旨の確認信号を出力する少なくとも1台の受信装置と、
前記発信装置に対して発信を指示し、その後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合に、前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断する本体制御装置と、を有することを特徴とする移動体監視システム。
【請求項2】
前記発信装置は、無指向性発信装置であり、前記受信装置は、無指向性受信装置であることを特徴とする請求項1に記載の移動体監視システム。
【請求項3】
前記発信装置および前記受信装置のうちの少なくとも1つを移動させることにより前記監視エリアが移動可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の移動体監視システム。
【請求項4】
前記無指向性受送信装置から発せられる信号には、移動体の属性を示すデータが含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項5】
前記本体制御装置が、前記発信装置が電波を発したのに対して呼応すべく発せられた前記無指向性受送信装置からの送信電波が前記受信装置へ到達する一連の時間から、前記移動体が前記受信装置から離れつつあるのかまたは近づきつつあるのかを判断する手段を有する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項6】
前記本体制御装置は、前記発信装置に対して複数回の送信指示を与え、これにより得られる各回の前記確認信号の受信までに要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する手段を有する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項7】
前記発信装置が複数台設けられ、その各発信装置が前記本体制御装置から発信を指示された場合に相互に所定のタイムラグを置いて発信する手段を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項8】
前記本体制御装置は、前記複数台の発信装置から発信される送信電波により前記無指向性受送信装置が呼を送信し、少なくとも1台以上の前記受信装置が当該呼を受信する一連の過程において要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する手段を有する、
ことを特徴とする請求項7記載の移動体監視システム。
【請求項9】
前記発信装置が前記本体制御装置と通信する手段を有し、
前記本体制御装置は、各発信装置を個別に呼び出して発信を指示し、前記確認信号が受信できるかどうかを試す手段と、いずれかの発信装置を個別に呼び出して発信を指示したときに前記確認信号が受信できたときは前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、また全ての発信装置を個別に呼び出して発信を指示しても前記確認信号が受信できないときは前記移動体が監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項10】
前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の第2エリア無指向性発信装置と、
前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記第2エリア無指向性発信装置からの電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を確認する少なくとも1台の第2エリア無指向性受信装置と、
前記本体制御装置により前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したとき、前記第2エリア無指向性発信装置と前記第2エリア無指向性受信装置を作動して監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記第2エリア無指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項11】
前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、
前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を同期して受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の有指向性受信装置と、
前記本体制御装置が、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したとき、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記有指向性受信装置を作動して監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記有指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項12】
前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、
前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の無指向性受信装置と、
前記本体制御装置により前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したとき、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記無指向性受信装置を作動して監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記無指向性受信装置から前記移動体の追跡信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する手段と、を有する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項13】
自己の送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとして確立すべく配置された少なくとも1台の発信装置と、
前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯されており、前記発信装置からの送信電波を受信し且つこれに応答して自己の識別符号を根拠に電波により呼を送信する無指向性受送信装置と、
前記監視エリアを監視するに足る位置に設置され前記無指向性受送信装置からの送信電波による呼を受信して通信の接続を完了した後に、前記識別符号の無指向性受送信装置と通信の接続ができた旨の確認信号を出力する少なくとも1台の受信装置と、
前記発信装置が自律的に行った発信に対し、その後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合に、前記移動体が監視エリア内に居るか否かと判断する本体制御装置と、を有することを特徴とする移動体監視システム。
【請求項14】
送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとする少なくとも1台の発信装置から送信電波を放射し、
前記送信電波を、前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯された無指向性受送信装置で受信し、
前記送信電波の受信に応答して、前記無指向性受送信装置から、自己の識別符号を根拠に呼を電波により送信し、
前記呼を前記監視エリアを監視するに足る位置に設置された少なくとも1台の受信装置で受信して通信の接続を完了し、
前記通信の接続完了後に、前記受信装置から前記識別符号の無指向性受送信装置との通信の接続ができた旨の確認信号を本体制御装置に出力し、
前記本体制御装置おいて、前記発信装置に対して発信を指示した後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合には前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、前記確認信号が受信不能な場合には居ないと判断することを特徴とする移動体監視方法。
【請求項15】
前記発信装置は、無指向性発信装置であり、前記受信装置は、無指向性受信装置であることを特徴とする請求項14に記載の移動体監視方法。
【請求項16】
前記発信装置および前記受信装置のうちの少なくとも1つを移動させることにより前記監視エリアが移動可能であることを特徴とする請求項14または15に記載の移動体監視システム。
【請求項17】
前記無指向性受送信装置から発せられる信号には、移動体の属性を示すデータが含まれることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1つに記載の移動体監視システム。
【請求項18】
前記本体制御装置が、前記発信装置が電波を発したのに対して呼応すべく発せられた前記無指向性受送信装置からの送信電波が前記受信装置へ到達する一連の時間から、前記移動体が前記受信装置から離れつつあるのかまたは近づきつつあるのかを判断する、
ことを特徴とする請求項14〜17のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【請求項19】
前記本体制御装置から前記発信装置に対して複数回の送信指示を与え、これにより得られる各回の前記確認信号の受信までに要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する、
ことを特徴とする請求項14〜18のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【請求項20】
前記発信装置を複数台設け、前記本体制御装置から発信を指示された場合に各発信装置が相互に所定のタイムラグを置いて発信することを特徴とする請求項14〜19のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【請求項21】
前記本体制御装置において、前記複数台の発信装置から発信される送信電波により前記無指向性受送信装置が呼を送信し、少なくとも1台以上の前記受信装置が当該呼を受信する一連の過程において要した時間の差に基づき、前記各移動体の位置、移動方向、および速度を算出する、
ことを特徴とする請求項20に記載の移動体監視方法。
【請求項22】
前記本体制御装置から各発信装置を個別に呼び出して発信を指示し、前記確認信号が受信できるかどうかを試し、いずれかの発信装置を個別に呼び出して発信を指示したときに前記確認信号が受信できたときは前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、また全ての発信装置を個別に呼び出して発信を指示しても前記確認信号が受信できないときは前記移動体が監視エリア内に居ないと判断する
ことを特徴とする請求項14〜21のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【請求項23】
前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の第2エリア無指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記第2エリア無指向性発信装置からの電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を確認する少なくとも1台の第2エリア無指向性受信装置と、を設け、
前記本体制御装置により、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したときは、前記第2エリア発信装置と前記第2エリア無指向性受信装置を作動させて監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記第2エリア無指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する
ことを特徴とする請求項14〜21のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【請求項24】
前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を同期して受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の有指向性受信装置と、を設け、
前記本体制御装置により、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したときは、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記有指向性受信装置を作動させて監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアにエリアを拡大若しくは切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記有指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する
ことを特徴とする請求項14〜21のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【請求項25】
前記監視エリアを第1の監視エリアとし、第1の監視エリアの境界を越えた領域に更に第2の監視エリアを確立するように前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に配置された少なくとも1台の指向方向追跡形有指向性発信装置と、前記第2の監視エリアを監視するに足る位置に設置され、前記指向方向追跡形有指向性発信装置からの追跡電波を受信して、前記第2の監視エリアに居る前記移動体を追跡する少なくとも1台の無指向性受信装置と、を設け、
前記本体制御装置により、前記移動体が前記第1の監視エリア内に居ないと判断したときは、前記指向方向追跡形有指向性発信装置と前記無指向性受信装置を作動させて監視エリアを前記第1の監視エリアから前記第2の監視エリアに切り替え、その前記第2の監視エリアについて前記無指向性受信装置から前記移動体の確認信号が得られないときは前記移動体が前記第2の監視エリア内に居ないと判断する
ことを特徴とする請求項14〜21のいずれか1つに記載の移動体監視方法。
【請求項26】
送信電波の有効到達範囲以内を監視エリアとする少なくとも1台の発信装置から送信電波を放射し、
前記送信電波を、前記監視エリア内に位置すべき監視対象である移動体に付帯された無指向性受送信装置で受信し、
前記送信電波の受信に応答して、前記無指向性受送信装置から、自己の識別符号を根拠に呼を電波により送信し、
前記呼を前記監視エリアを監視するに足る位置に設置された受信装置で受信して通信の接続を完了し、
前記通信の接続完了後に、前記受信装置から前記識別符号の無指向性受送信装置との通信の接続ができた旨の確認信号を本体制御装置に出力し、
前記本体制御装置おいて、前記発信装置が自律的に行った発信に対し、その後に前記受信装置から前記確認信号を受けた場合に、前記移動体が監視エリア内に居るか否かを判断し、前記確認信号が受信不能な場合には居ないと判断する
ことを特徴とする移動体監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2007−327839(P2007−327839A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158924(P2006−158924)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(506109030)
【Fターム(参考)】