説明

移動動作決定装置、その方法及びプログラム

【課題】簡素化された構成で確実に障害物を回避し、移動体の最適な経路を決定すると共に、様々な目的に応じた適応的な行動選択を行うことができる移動動作決定装置等を提供する。
【解決手段】検出対象物の大きさに応じてポテンシャルを設定するポテンシャル設定部21と、検出領域を区画する区画検出領域のうちポテンシャルを含んでいる区画検出領域を特定する区画検出領域特定部22と、区画検出領域ごとに、含まれるポテンシャル値を検出値として算出する検出値算出部23と、区画検出領域の組み合わせ検出パターン、及びそれに対応する出力動作を動作設定情報として記憶する動作設定情報記憶部27と、動作設定情報の組み合わせ検出パターンとを比較して、移動体10の出力動作を特定する出力動作特定部24と、特定した出力動作に対して、検出値に基づいて出力動作を最適化して決定する動作決定部25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の最適な移動動作を決定する移動動作決定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体(例えば、自動車、ロボット、ショッピングセンターのカート等)の自律移動に関する研究が注目されている。例えば、複数の自律移動型のロボットの相対位置情報を用いて、障害物を回避しつつ群れ行動を生成するアルゴリズムが開発されている(非特許文献1−3を参照)。非特許文献1−3に示す技術は、ロボットを中心とした周囲に、仲間を認識する範囲と障害物を認識する範囲とを4方向に設定し、各方向に向けて設置されたセンサにより仲間の有無や近設する物体の有無を検出し、得られた情報に基づいて仲間に近づく行動や障害物を回避する行動を行うことで群れ行動を実現する技術である。
【0003】
また、自律移動に関する技術として特許文献1−3に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、支持手段によって変化した撮像手段の撮像方向に基づいて障害物の位置を移動面における位置に変換することにより、自分の周囲に存在する障害物の位置を正確に検出することができ、この移動面における障害物の位置に基づいて次の行動を決定すれば、確実に障害物を回避しながら自律的に行動することができるものである。特許文献2に示す技術は、簡単な構成により画像から高速に人の検出を行うと共に、画像世界に対する実世界における、撮像装置から人までの概略の位置を求めるものである。特許文献3に示す技術は、ポテンシャル法により障害物を回避しながら目標に向かって自律移動するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−317868号公報
【特許文献2】特開2004−178229号公報
【特許文献3】特開2003−241836号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】神酒勤,田代貴志、”単純な規則に基づく群れの誘導と制御”、第21回ファジィシステムシンポジウム講演論文集、21st、9A3−4、2005年9月
【非特許文献2】神酒勤,中村哲也,小林秀行、”限られたローカル情報に基づく群れ行動の自律的生成”、第22回ファジィシステムシンポジウム講演論文集、22nd、8D1−4、2006年9月
【非特許文献3】長尾将義,神酒勤、”ローカルな情報に基づく群れ行動アルゴリズムの自律移動ロボット群への実装”、第24回ファジィシステムシンポジウム講演論文集、24th、TC2−2、2008年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記各技術は移動体の近辺にある対象物を検出して、障害物を回避することができるものの、検出した対象物に対してどの程度近づけるかといったことや、目的に応じて異なる回避行動を取るといったことまで考慮されたものではなく、また、行動パターンの追加、変更、削除といったことを簡潔に行うことができるものではないため、無駄な移動を排除して障害物等を確実に回避しつつ、移動体が移動できる最適な経路を決定するには不十分な技術である。
【0007】
本発明は、簡素化された構成で確実に障害物を回避し、移動体の最適な経路を決定すると共に、様々な目的に応じた適応的な行動選択を行うことができる移動動作決定装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示する移動動作決定装置は、移動体に備えられ、当該移動体の移動動作を決定する移動動作決定装置において、前記移動体の近傍における移動物及び/又は固定物を検出対象物として検出し、少なくとも前記検出対象物の位置及び大きさの情報を取得するセンサと、前記センサが取得した検出対象物の大きさに応じて、当該検出対象物のポテンシャル領域及びポテンシャル値を設定するポテンシャル設定手段と、前記移動体の位置から所定の範囲である検出領域及び当該検出領域を複数の領域に区画した区画検出領域を特定する情報を記憶する検出領域記憶手段と、前記ポテンシャル設定手段が設定したポテンシャル領域の一部又は全部を含んでいる前記区画検出領域を特定する区画検出領域特定手段と、前記区画検出領域特定手段が特定した区画検出領域ごとに、当該区画検出領域に含まれるポテンシャル値を検出値として算出する検出値算出手段と、前記検出領域において前記検出対象物のポテンシャル領域の一部又は全部が存在する区画検出領域と前記検出対象物のポテンシャル領域の一部又は全部が存在しない区画検出領域との組み合わせ検出パターン、及び当該組み合わせ検出パターンに対応する前記移動体の出力動作が設定された動作設定情報を記憶する動作設定情報記憶手段と、前記区画検出領域特定手段が特定した区画検出領域のうち、前記検出値算出手段が算出した検出値が所定の規則にしたがって決定された検出値である前記区画検出領域のパターンと、前記動作設定情報記憶手段が記憶する区画検出領域の組み合わせ検出パターンとを比較して、前記移動体の出力動作を特定する出力動作特定手段と、前記出力動作決定手段が特定した出力動作に対して、前記検出値に基づいて出力動作を最適化して決定する動作決定手段とを備えるものである。
【0009】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、移動体の近傍で検出された検出対象物のポテンシャル値とポテンシャル領域とを設定し、移動体の位置から所定の範囲となる検出領域を区画した複数の区画検出領域ごとに、設定されたポテンシャルに基づいて検出値を算出し、区画検出領域のうち検出値が所定の規則にしたがって決定された検出値である区画検出領域のパターンと、予め用意されている区画検出領域における検出対象物のポテンシャルの有無の組み合わせ検出パターンとから移動体の出力動作を特定し、特定された出力動作を検出値に基づいて最適化するため、移動体近傍の検出対象物の有無だけではなく、その移動体から所定の範囲の検出領域における区画検出領域ごとのポテンシャルに応じて、パターンマッチング等の簡素化された処理により出力動作の特定を行うことができると共に、特定された出力動作をポテンシャルに応じて最適化して出力動作を決定することができ、無駄な廻り込み等を行うことなく検出対象物を確実に回避して目的地に向けた最適な移動経路を決定することができるという効果を奏する。
【0010】
また、組み合わせ検出パターンに応じて出力動作が定義されている動作設定情報は、移動体の動作を設定するためのルールを並列的に追加することができるため適応性が非常に高くなると共に、例えば定義テーブルを参照するLUT(Look Up Table)方式を用いることで、高速処理を実装することができるという効果を奏する。
【0011】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記検出領域記憶手段が、異なる大きさの複数の検出領域を特定する情報を記憶し、前記動作決定手段が、前記異なる検出領域ごとに前記移動体の出力動作を最適化して決定し、前記異なる検出領域ごとに決定された出力動作を統合する出力動作統合手段を備えるものである。
【0012】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、異なる大きさの検出領域ご
とに最適な出力動作が決定され、それぞれの出力動作を統合して移動経路が決定されるため、例えば、大きい検出領域により特定される大まかな移動経路や小さい検出領域により特定される障害物の回避動作のように、検出領域に応じた様々な要因を考慮して最適な移動経路を決定することができるという効果を奏する。
【0013】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記出力動作統合手段が、ファジィ推論を用いて出力動作を統合するものである。
【0014】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、ファジィ推論を用いて出力動作を統合するため、少ない情報量でも推論により移動経路を求めることができ、またルールを追加することで推論の精度を上げて最適な移動経路を求めることができるという効果を奏する。
【0015】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記動作設定情報記憶手段が、前記異なる検出領域ごとに異なる前記出力動作が設定された動作設定情報を記憶し、前記出力動作統合手段が、前記異なる検出領域のうち最小の当該検出領域に対して設定された出力動作を最優先とした重み付けに基づいて、出力動作を統合するものである。
【0016】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、最小の検出領域に対して設定された出力動作を最優先にして、出力動作の統合を行うため、移動体に最も接近している検出対象物に対する移動動作を最優先にすることができ、検出対象物との衝突を確実に回避して適切な移動動作を決定することができるという効果を奏する。
【0017】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記センサが検出した検出対象物を、前記移動体が追尾するための標的となる標的対象物と、前記移動体の移動動作の障害となる障害物とに区分する検出対象区分手段を備え、前記検出領域記憶手段が、前記標的対象物を追尾するための第1の検出領域及び前記障害物を回避するための第2の検出領域を特定する情報を記憶し、前記第1の検出領域及び第2の検出領域ごとに決定された出力動作を統合する出力動作統合手段を備えるものである。
【0018】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、検出対象物を追尾の対象となる標的対象物と障害の対象となる障害物とに区分し、標的対象物を追尾するための検出領域に対して設定された出力動作と、障害物を回避するための検出領域に対して設定された出力動作とを統合するため、標的対象物を追尾しつつ障害物を回避する最適な移動経路を決定することができるという効果を奏する。
【0019】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記第1の検出領域が、前記2の検出領域よりも大きく設定され、前記出力動作統合手段が、前記第2の検出領域に対して設定された出力動作を優先した重み付けに基づいて、出力動作を統合するものである。
【0020】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、標的対象物を追尾するための検出領域が大きく設定され、障害物を回避するための検出領域が小さく設定され、障害物を回避するための出力動作を優先した移動動作が決定されるため、障害物を確実に回避しつつ、標的対象物を追尾することができるという効果を奏する。
【0021】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記ポテンシャル設定手段が、前記ポテンシャル値を前記検出対象物の中心から外側にいくにしたがって小さく設定し、前記ポテンシャル領域を前記検出対象物の大きさ以上の大きさであって、当該検出対象物の全てを含んで設定するものである。
【0022】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、ポテンシャル値を検出対象物の中心から外側にいくにしたがって小さく設定し、ポテンシャル領域を検出対象物の大きさ以上の大きさであって、検出対象物の全てを含んで設定するため、ポテンシャル値とポテンシャル領域により検出対象物に近づける範囲を設定することができ、障害物を回避するような場合に大きく廻り込んでしまうような無駄な移動を削減し、効率的な移動動作を決定することが可能になるという効果を奏する。
【0023】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記検出対象物の種類、材質、表面の状態及び/又は移動速度に応じて、前記検出対象物の中心から外側にいくにしたがってポテンシャル値を小さく設定する度合いを異ならせるものである。
【0024】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、検出対象物の種類、材質、表面の状態及び/又は移動速度に応じて、検出対象物の中心から外側にいくにしたがってポテンシャル値を小さく設定する度合い(減少率とする)を異ならせるため、移動速度が速い検出対象物や近づくと危険度が高い検出対象物については、減少率に応じてポテンシャル領域を大きくすることができ、移動体が近づくことができる検出対象物の範囲を適切に設定することができるという効果を奏する。
【0025】
本願に開示する移動動作決定装置は、前記設定されたポテンシャル領域のうち、前記検出対象物の外部領域に設定されたポテンシャル領域であって、予め設定された閾値よりも小さいポテンシャル値である領域を、前記移動体が通過可能な通過余裕領域として設定するものである。
【0026】
このように、本願に開示する移動動作決定装置においては、ポテンシャル領域のうち、検出対象物の外部領域に設定されたポテンシャル領域であって、予め設定された閾値よりも小さいポテンシャル値である領域を、移動体が通過可能な通過余裕領域として設定するため、ポテンシャル領域内であっても移動体が通過することができる範囲が設定され、2つの障害物を回避するような場合に、必ずしも廻り込みを行うことなく、それぞれの障害物の間を通り抜けるような移動経路を決定することが可能になり、より最適な移動経路決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る移動動作決定装置のハードウェア構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る移動動作決定装置の機能ブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る移動動作決定装置におけるセンサが検出した検出対象物を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る移動動作決定装置におけるポテンシャルの設定を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る移動動作決定装置における検出対象物のポテンシャルの模式図である。
【図6】第1の実施形態に係る移動動作決定装置における区画検出領域を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る移動動作決定装置において算出された検出値を示す図である。
【図8】第1の本実施形態に係る移動動作決定装置における区画検出領域の組み合わせパターンを示す図である。
【図9】第1の実施形態に係る移動動作決定装置における出力動作を示す図である。
【図10】第1の実施形態に係る移動動作決定装置における通過余裕を示す図である。
【図11】第1の実施形態に係る移動動作決定装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態に係る移動動作決定装置の機能ブロック図である。
【図13】第2の実施形態に係る移動動作決定装置の異なる検出領域ごとの移動動作を示す図である。
【図14】第2の実施形態に係る移動動作決定装置の異なる検出領域の設定を示す図である。
【図15】第2の実施形態に係る移動動作決定装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】その他の実施形態に係る移動動作決定装置における追尾処理を示す図である。
【図17】その他の実施形態に係る移動動作決定装置におけるデッドロック回避の動作を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。また、以下の実施の形態では、主に装置について説明するが、所謂当業者であれば明らかな通り、本発明は方法、及び、コンピュータを動作させるためのプログラムとしても実施できる。また、本発明はハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェア及びソフトウェアの実施形態で実施可能である。プログラムは、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、光記憶装置、または、磁気記憶装置等の任意のコンピュータ可読媒体に記録できる。さらに、プログラムはネットワークを介した他のコンピュータに記録することができる。
【0029】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る移動動作決定装置について、図1ないし図11を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る移動動作決定装置のハードウェア構成図、図2は、本実施形態に係る移動動作決定装置の機能ブロック図、図3は、本実施形態に係る移動動作決定装置におけるセンサが検出した検出対象物を示す図、図4は、本実施形態に係る移動動作決定装置におけるポテンシャルの設定を示す図、図5は、本実施形態に係る移動動作決定装置における検出対象物のポテンシャルの模式図、図6は、本実施形態に係る移動動作決定装置における区画検出領域を示す図、図7は、本実施形態に係る移動動作決定装置において算出された検出値を示す図、図8は、本実施形態に係る移動動作決定装置における区画検出領域の組み合わせパターンを示す図、図9は、本実施形態に係る移動動作決定装置における出力動作を示す図、図10は、本実施形態に係る移動動作決定装置における通過余裕を示す図、図11は、本実施形態に係る移動動作決定装置の動作を示すフローチャートである。
【0030】
本実施形態に係る移動動作決定装置は、移動体の近傍で検出される検出対象物(例えば、移動体が移動する際に障害となる障害物、移動体が追跡する標的となる標的対象物等であって、移動物又は移動しない固定物とする)の位置や大きさの情報に基づいて、移動体の移動経路を決定するものである。以下、本実施形態に係る移動動作決定装置の構成について説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る移動動作決定装置のハードウェア構成を示す。移動動作決定装置1は、CPU11、RAM12、ROM13、ハードディスク(HDとする)14、通信I/F15、及び入出力I/F16を備える。ROM13やHD14には、オペレーティングシステムや各種プログラム(例えば、移動動作決定プログラム等)が格納されており、必要に応じてRAM12に読み出され、CPU11により各プログラムが実行される。通信I/F15は、他の装置(例えば、移動体制御装置、移動体、他の移動体等)と通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F16は、キーボードやマウス等の
入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやディスプレイ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F16としてUSBやRS232C等が用いられる。また、必要に応じて、光磁気ディスク、フロッピーディスク、CD−R、DVD−R等のリムーバブルディスクに対応したドライブを接続することができる。
【0032】
図2は、本実施形態に係る移動動作決定装置の機能ブロックを示す。移動動作決定装置1は、センサ20で検出された検出対象物の位置及び大きさの情報に基づいて検出対象物のポテンシャル(ポテンシャル領域とポテンシャル値)を設定するポテンシャル設定部21と、移動体10の位置から所定の範囲に設定される検出領域及び当該検出領域を複数の領域に区画した区画検出領域を特定する情報が記憶されている検出領域記憶部26と、検出対象物に設定されたポテンシャル及び検出領域記憶部26に記憶されている区画検出領域を特定する情報に基づいて、ポテンシャル領域を含んでいる区画検出領域を特定する区画検出領域特定部22と、区画検出領域に含まれているポテンシャル領域のポテンシャル値を検出値として区画検出領域ごとに算出する検出値算出部23と、検出領域において検出対象物が存在する区画検出領域と検出対象物が存在しない区画検出領域との組み合わせからなる組み合わせ検出パターン、及びこの組み合わせ検出パターンごとに対応する移動体10の出力動作が定義された動作設定情報を記憶する動作設定情報記憶部27と、区画検出領域特定部22が特定した区画検出領域のうち、検出値が所定の規則にしたがって決定された検出値である区画検出領域のパターンと、動作設定情報記憶部27が記憶する区画検出領域の組み合わせ検出パターンとを比較して、移動体の出力動作を特定する出力動作特定部24と、特定された出力動作に対して、検出値に基づいて移動体10の出力動作を最適化して決定する動作決定部25とを備える。
【0033】
センサ20が検出する検出対象物について、図3を用いて説明する。図3は移動体10及び検出対象物30を俯瞰した場合の図である。センサ20は、移動体10の少なくとも進行方向の所定の角度の範囲内(例えば、120度〜180度程度以上)に存在する検出対象物30の位置及び大きさを検出する。本実施形態においては、センサ20をレーザレンジファインダとする。
【0034】
なお、ここでは検出対象物30を検出する範囲を移動体10の進行方向に応じて限定しているが、移動体10の移動形態(例えば、前後方向の移動、左右方向の移動、前後左右方向の移動等)に応じて検出範囲を設定するようにしてもよい。より好ましくは移動体10の周囲360度の範囲で検出することである。
【0035】
また、センサ20は、少なくとも検出対象物30の位置及び大きさを検出できるものであればよいが、形状や温度等も検出することができれば、後述するポテンシャルの設定処理をより正確に行うことができるため好ましい。
【0036】
さらに、検出対象物をが何であるかを特定するために、画像情報を用いるようにしてもよい。この場合、画像情報を取得するための撮像装置と検出対象物を認識するための認識手段とを備えることとなる。
【0037】
ポテンシャル設定部21の処理について、図4を用いて説明する。図4にセンサ20で検出された検出対象物に対してポテンシャルを設定した場合の例を示す。いずれの場合も、幅がdである検出対象物の中心位置oに対して、外側方向に広がるようにポテンシャル領域sが設定され、ポテンシャル値は検出対象物の外側方向にいくに連れて次第に小さくなっている。また、検出対象物ごとに移動体10が接近できる度合いを求めるための閾値が設定されており、ポテンシャル値が閾値以下である領域(領域tで示す)については、移動体10が接近することができる領域となる。すなわち、検出対象物の種類や特徴等(人物、物、発熱体、硬度、材質、表面の状態、移動速度等)によって移動体10が接近で
きる領域が制限されるため、ポテンシャル領域及びポテンシャル値の減少率、並びに閾値の設定により移動体10が接近可能な領域を演算可能としている。
【0038】
図3で示した検出対象物30に対してポテンシャル設定部21がポテンシャルを設定したものを図5に示す。図に示す通り、検出対象物30自体の大きさよりも大きい領域のポテンシャル領域50が設定される。
【0039】
なお、このポテンシャル領域、ポテンシャル値、ポテンシャル値の減少率及び閾値等の設定は、動的に変更することができる。すなわち、時々刻々と状況が変わるにしたがって、それに対応して設定を変更することができるものである。
【0040】
次に、検出領域記憶部26に記憶される検出領域及び区画検出領域、並びに区画検出領域特定部22の処理について、図6を用いて説明する。図6(A)において、移動体10の進行方向に対して検出領域60と、検出領域60を9等分した区画検出領域61(61aないし61i)とが設定されている。この検出領域60及び画検出領域61を画定するための情報である画定境界線の情報が、検出領域記憶部26に記憶されている。区画検出領域特定部22は、図6(B)に示すように、検出対象物30の位置及びそのポテンシャル領域に基づいて、ポテンシャル領域の一部又は全部が含まれている区画検出領域61a、61b、61c、61d(図中の黒色領域に相当)を特定する。
【0041】
区画検出領域特定部22により区画検出領域が特定されると、検出値算出部23が、特定された区画検出領域61a、61b、61c、61dごとに検出値の算出を行う。検出値算出部23の処理について、図7を用いて説明する。図7において、特定された区画検出領域61a、61b、61c、61dごとに、その領域内に含まれるポテンシャル量を0〜1の範囲で量子化して算出し、その値を検出値とする。ここでは、区画検出領域61a=0.6、区画検出領域61b=0.1、区画検出領域61c=0.8、区画検出領域61a=0.5となっている。算出された検出値は、後述する出力動作特定部24及び動作決定部25の処理の際に利用する。
【0042】
なお、ここでは検出値を0〜1の間で多値化しているが、閾値を設けて2値化してもよい。また、例えば区画検出領域61bのように検出値がある閾値(例えば、0.2とする)より小さい場合、移動体10の移動には影響がないものと見なして0としてもよい。さらに、検出領域の形状は矩形に限定されず、多角形、円、楕円等の形状であってもよい。
【0043】
次に、動作設定情報記憶部27が記憶する動作設定情報について、図8を用いて説明する。図8は、検出領域60において、検出対象物30のポテンシャル領域50の一部又は全部が含まれている区画検出領域61と含まれていない区画検出領域61との組み合わせからなる組み合わせ検出パターンの例示と、各組み合わせ検出パターンごとの移動体の出力動作を示している。黒で示す区画検出領域61が、検出対象物30のポテンシャル領域50が含まれる区画検出領域を示し、白で示す区画検出領域61が、検出対象物30のポテンシャル領域50が含まれない区画検出領域を示し、矢印が移動体10の出力動作である。
【0044】
例えば、図8(A)の場合、区画検出領域61cにのみ検出対象物30のポテンシャル領域50が含まれている組み合わせ検出パターンが示され、この場合は移動体10が矢印で示すように左斜め前方向を進行方向とする出力動作が定義されている。図8(B)の場合、区画検出領域61a、61b、61cに検出対象物30のポテンシャル領域50が含まれている組み合わせ検出パターンが示され、この場合は移動体10が矢印で示すように左右いずれかの方向を進行方向とする出力動作が定義されている。図8(C)の場合、区画検出領域61a、61c、61dに検出対象物30のポテンシャル領域50が含まれて
いる組み合わせ検出パターンが示され、この場合は移動体10が矢印で示すように右斜め前方向(実線矢印で示す)又は若干右寄りの直進方向(点線矢印で示す)を進行方向とする出力動作が定義されている。図8(D)の場合、区画検出領域61a、61d、61gに検出対象物30のポテンシャル領域50が含まれている組み合わせ検出パターンが示され、この場合は移動体10が矢印で示すように右斜め前方向の後に直進方向を進行方向とする出力動作が定義されている。なお、ここで示す動作設定情報は一例であり、組み合わせ検出パターンに応じた出力動作は自由に定義することが可能である。また、動作設定情報の追加、削除、変更等も管理者が任意に行うことができ、適応的な出力動作を定義することができるものである。
【0045】
なお、図8の出力動作については、原則として実線で示す矢印が移動体10の出力動作となるが、例外として点線で示す矢印を移動体10の出力動作とするようにしてもよい。例えば、図8(B)の場合は、左右いずれかの方向に出力動作を特定することができるが、移動体10の移動環境に応じていずれが選択されてもよい。また、図8(C)の場合は、区画検出領域61a、61dと区画検出領域61cとの間を通り抜けられる場合のみ、点線で示す出力動作が選択されてもよい。
【0046】
次に、出力動作特定部24及び動作決定部25の処理について、図9を用いて説明する。ここでは、図6で特定された区画検出領域及び図7で算出された検出値を用いた場合の出力動作特定部24の処理について説明する。図6において、区画検出領域61a、61b、61c、61dが特定されているが、図7に示すように区画検出領域61bについては検出値が0.1と非常に小さいため、移動体10の移動動作に影響がないものとし、ここでは0と見なす。すなわち、図9(A)に示すパターンが処理対象となる検出パターンである。この処理対象となる検出パターンと図8で示した動作設定情報の各組み合わせ検出パターンとを比較する。比較した結果、処理対象となる検出パターンと図8(C)の組み合わせ検出パターンが同じであることから、図8(C)で定義された出力動作が特定される。つまり、移動体10が、区画検出領域61a、61dと区画検出領域61cとの間を通り抜けられる場合は、図8(C)の点線の矢印の方向を進行方向とする出力動作が特定され、通り抜けられない場合は、図8(C)の実線の矢印の方向を進行方向とする出力動作が特定される。
【0047】
ここで、検出値が0又は1で2値化されている場合は、上記で特定された図8(C)に示す出力動作を正式な出力値として決定してもよいが、ここでは検出値が多値化されているため、動作決定部25が、上記で特定された出力動作を検出値に基づいて最適化する。その前に、移動体10が、区画検出領域61a、61dと区画検出領域61cとの間を通り抜けられるかどうかの判断を行う必要がある。
【0048】
通り抜けの判断について図10を用いて説明する。図10において、検出対象物30a、30bのポテンシャル領域50a、50bが設定されている。前述したように、検出対象物30には、その種類や特徴(例えば、材質、表面の状態等)に応じて接近可能な範囲を示すための閾値(安全度を示す閾値)が設定されている。図10においては、検出対象物30bに比べて検出対象物30aの方が接近しても安全であるとすると、図に示すように安全度を示す閾値が高く設定される。すなわち、検出対象物30aの方は、移動体10の接近可能領域が広がる。一方、検出対象物30bの方は、安全度を示す閾値が低く設定されているため、移動体10の接近可能領域が狭まる。そして、これらの接近可能領域とポテンシャル領域50a、50b外の領域とを合わせた領域が、移動体10が通過することができる通過余裕領域として求められる。通過可能領域が移動体10の幅以上である場合は、移動体10が通り抜け可能であると判断する。
【0049】
図9に戻って、移動体10が、区画検出領域61a、61dと区画検出領域61cとの
間を通り抜け可能であると判断されたとすると、図8(C)の点線の矢印の方向を進行方向とする出力動作が特定される。特定された出力動作に対して、動作決定部25が検出値に基づく最適化を行う。すなわち、図8(C)の出力動作にしたがえば、若干右よりの直進方向を進行方向とするが、区画検出領域61bの検出値、及び区画検出領域61a、61dの検出値を考慮することで、図9(B)に示すような出力動作に決定される。つまり、区画検出領域61cの検出値は非常に大きい値であるため、移動体10にとって大きな障害となるのに対し、区画検出領域61a、61dの検出値はそれほど大きい値ではないため、移動体10にとってそれほど大きな障害とならない。このことを考慮して、図9(B)に示すように、出力動作が最適化されて決定される。
【0050】
なお、最適化の演算については、様々な既存の技術を用いることができ、例えば、検出値に応じて進行方向の角度を変更するための重み付け係数を求めて最適化するような演算を行ってもよい。
【0051】
また、検出対象物ごとにことなる閾値を設定するのではなく、閾値の値を固定値として検出対象物の間で同一に設定しておき、ポテンシャル領域及びその形状並びにポテンシャル値及びその減少率等を検出対象物の特徴に応じて設定するようにしてもよい。
【0052】
さらに、出力動作特定部24は、例えば、区画検出領域特定部22が特定した区画検出領域のうち、予め設定された閾値以上の検出値である区画検出領域のパターンと、動作設定情報記憶部27が記憶する区画検出領域の組み合わせ検出パターンとを比較してもよいし、区画検出領域特定部22が特定した区画検出領域のうち、アナログ的な関数で計算し、その後量子化して決定した検出値の区画検出領域のパターンと、動作設定情報記憶部27が記憶する区画検出領域の組み合わせ検出パターンとを比較してもよい。
【0053】
以上が本実施形態に係る移動動作決定装置の構成の説明である。
【0054】
次に、本実施形態に係る移動動作決定装置の動作について、図11を用いて説明する。図11において、まず、センサ20が検出対象物30を検出し、その位置及び大きさの情報を入力する(S111)。ポテンシャル設定部21が入力された情報に基づいて、各検出対象物30に対してポテンシャル領域及びポテンシャル値を設定する(S112)。区画検出領域特定部22が、予め用意されている検出領域記憶部26に記憶された検出領域60及び区画検出領域61を特定する情報と、設定されたポテンシャル領域とに基づいて、ポテンシャル領域が含まれている区画検出領域を特定し(S113)、検出値算出部23が、特定された区画検出領域ごとに、ポテンシャル量を検出値として算出する(S114)。
【0055】
出力動作特定部24が、動作設定情報記憶部27に記憶されている区画検出領域におけるポテンシャルの有無の組み合わせ検出パターンと、S113で特定された区画検出領域の検出パターンとを比較し(S115)、組み合わせ検出パターンに対応して定義されている出力動作を特定する(S116)。このとき、検出値が所定の閾値以下の区画検出領域については、検出値を0としてパターンの比較を行う。動作決定部25が、特定された出力動作について、検出値に応じて最適化を行い移動体10の出力動作を決定して(S117)、処理を終了する。
【0056】
なお、検出領域記憶部26に記憶される検出領域及び区画検出領域の大きさ、形状、検出領域における区画検出領域の数、及び検出領域の設定方向は、移動体の移動環境、移動速度、種類、及び特徴(例えば、材質、表面の状態)等に応じて管理者が任意に登録することができるものである。また、動作設定情報記憶部27に記憶される組み合わせ検出パターン、及びそれに応じた出力動作についても、移動体の移動環境、移動速度、種類、及
び特徴、並びに、検出対象物の移動速度、種類、及び特徴等に応じて管理者が任意に定義することができ、追加、削除、変更等も自由に行うことができるものである。
【0057】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る移動動作決定装置について、図12ないし図15を用いて説明する。図12は、本実施形態に係る移動動作決定装置の機能ブロック図、図13は、本実施形態に係る移動動作決定装置の異なる検出領域ごとの移動動作を示す図、図14は、本実施形態に係る移動動作決定装置の異なる検出領域の設定を示す図、図15は、本実施形態に係る移動動作決定装置の動作を示すフローチャートである。
【0058】
本実施形態に係る移動動作決定装置は、前記第1の実施形態に係る移動動作決定装置の機能を拡張したものであり、大きさが異なる複数の検出領域を設定し、各検出領域毎の出力動作を統合するものである。
【0059】
なお、本実施形態に係る移動動作決定装置において、前記第1の実施形態と重複する説明については省略する。
【0060】
図12において、第1の実施形態に係る移動動作決定装置の構成(図2)と異なるのは、検出領域記憶部26が、異なる大きさの複数の検出領域を特定するための情報と各検出領域を複数に区画している区画検出領域を特定するための情報とを記憶し、検出値算出部23、出力動作特定部24及び動作決定部25が、各検出領域ごとにそれぞれの処理を実行し、各検出領域ごとに決定された出力動作を統合する出力動作統合部28を備えることである。
【0061】
検出領域記憶部26は、図13に示すように、異なる大きさの検出領域60A、60Bを特定するための情報(画定境界線)と、各検出領域60A、60Bを9等分した区画検出領域61A(611A〜619A)、61B(611B〜619B)を特定するための情報(画定境界線)とを記憶している。検出領域60A、60Bの大きさは、その目的に応じて設定されており、ここでは、検出領域60Aは予測レンジ、検出領域60Bは回避レンジとしている。その他、後述する追従レンジと回避レンジというような設定も可能である。
【0062】
区画検出領域特定部22は、各検出領域60A、60Bごとにポテンシャル領域が含まれている区画検出領域61A(611A、613A、614A、615A、617A、618A)、61B(611B、614B)を特定し、検出値算出部23が、特定された区画検出領域61A、61Bごとに検出値を算出する。特定された区画検出領域61A、61B、それらの検出値、及び動作設定情報記憶部27に記憶されている動作設定情報に基づいて、出力動作特定部24が、検出領域60A、60Bごとに出力動作を特定する。
【0063】
ここで、動作設定情報記憶部27に記憶されている動作設定情報は、各検出領域60A、60Bごとに、それぞれの目的に応じた出力動作が定義されている。図13の場合、検出領域60Aについては、予測レンジであるため、第1の実施形態の場合と同様に検出対象物30の横や間を通り抜けるような出力動作が定義されており、検出領域60Bについては、回避レンジであるため、検出対象物30を確実に避けて回避する出力動作が定義されている。つまり、図13のように検出対象物30が検出されている場合、検出領域60Aについては矢印Aのように右奥と一番手前の検出対象物30の間を通り抜ける出力動作が特定され、検出領域60Bについては矢印Bのように一番手前の検出対象物30を確実に回避できる出力動作が特定される。
【0064】
特定された出力動作に対して、動作決定部25が第1の実施形態の場合と同様に最適化
を行い検出領域60A、60Bごとに移動体10の出力動作を決定する。出力動作統合部28は、決定された出力動作をベクトルの合成により統合する。このとき、検出領域60A、60Bに応じて優先度を設定する。すなわち、予測レンジと回避レンジとでは、検出対象物30を確実に回避する必要がある回避レンジに対応する出力動作を優先して採用したほうがよい。そこで、図13に示すように、優先度を寄与係数αで表現する。この寄与係数αは、予測レンジの大きさに依存し、回避レンジに対する距離に応じて、遠いほど小さく設定される。寄与係数αを考慮して求めたベクトルの合成が図13に示す矢印Cである。ベクトルを合成する際には、例えばファジィ推論やニューラルネットワーク等を用いた統合を行うことが可能である。
【0065】
なお、図13に示すように、検出領域ごとの優先度については、大きさが小さい検出領域に対応する出力動作ほど採用の優先度が高くなるように寄与係数(重み付け係数等)が設定されるようにすることで、移動体10に近い検出対象物30に対する移動動作が優先的に特定され、より適切な移動動作を決定することが可能となる。また、検出領域の数は2つ以上であればいくつ設定されてもよく、大きい検出領域ほど遠い未来の移動動作の予測に用いることが可能となる。
【0066】
さらに、複数の検出領域と区画検出領域の関係を図14に示すように設定することもできる。すなわち、区画検出領域61の大きさを各検出領域60A、60B、60Cの間で同一の大きさにし、区画検出領域61が含まれる個数を各検出領域ごとに異ならせる。図14の場合は、検出領域60Aは42個の区画検出領域61からなり、検出領域60Bは25個の区画検出領域61からなり、検出領域60Cは9個の区画検出領域61からなる。このように、区画検出領域の大きさを基本単位として各検出領域の大きさを設定することで、各区画検出領域及び各検出領域の先頭アドレスへのアクセスを容易にすることができ、処理が簡素化される。
【0067】
次に、本実施形態に係る移動動作決定装置の動作について図15を用いて説明する。図15において、まず、センサ20が検出対象物30を検出し、その位置及び大きさの情報を入力する(S151)。ポテンシャル設定部21が入力された情報に基づいて、各検出対象物30に対してポテンシャル領域及びポテンシャル値を設定する(S152)。区画検出領域特定部22が、予め用意されている検出領域記憶部26に記憶された大きさが異なる複数の検出領域60及びその区画検出領域61を特定する情報と、設定されたポテンシャル領域とに基づいて、ポテンシャル領域が含まれている区画検出領域61を各検出領域60ごとに特定し(S153)、検出値算出部23が、各検出領域60ごとに特定された区画検出領域61のポテンシャル量を検出値として算出する(S154)。
【0068】
出力動作特定部24が、動作設定情報記憶部27に記憶されている区画検出領域61におけるポテンシャルの有無の組み合わせ検出パターンと、S153で特定された区画検出領域61の検出パターンとを各検出領域60ごとに比較し(S155)、組み合わせ検出パターンに対応して定義されている出力動作を各検出領域60ごとに特定する(S156)。このとき、検出値が所定の閾値以下の区画検出領域61については、検出値を0としてパターンの比較を行う。動作決定部25が、特定された出力動作について、検出値に応じて最適化を行い、検出領域60ごとに移動体10の出力動作を決定する(S157)。出力動作統合部28が、各検出領域60ごとに決定された出力動作を、レンジの大きさ及び最小レンジに対する距離に応じて設定された寄与係数に基づいて、ファジィ推論を用いて統合し、移動経路が決定されて(S158)、処理を終了する。
【0069】
なお、例えば、検出領域の外から不意に検出領域内に入ってきたものに対して緊急停止して対応するために、近距離用の近接センサ(例えば、赤外線センサ等)を備え、出力動作統合部28が、検出領域における出力動作と緊急停止用の動作とを統合して行動が決定
されるようにしてもよい。
また、出力動作統合部28が、過去の複数の出力動作のパターンを統合して決定された出力動作を未来の予測動作として求めるようにしてもよい。
このように、目的に応じて大きさが異なる複数の検出領域を設定し、それぞれの出力動作を統合することで、最適な移動動作を決定することができる。
【0070】
(その他の実施形態)
本実施形態に係る移動動作決定装置について、図16及び図17を用いて説明する。上記第2の実施形態においては、検出領域60A、60Bをそれぞれ予測レンジ、回避レンジとし、各検出領域に対応する出力動作を統合する処理を説明したが、ここでは検出領域60A、60Bをそれぞれ追尾レンジ、回避レンジとし、標的対象物を追尾しつつ最適な移動経路を決定する。
【0071】
追尾処理について具体的に説明する。追尾処理を行う場合、複数の検出対象物30の中から、移動体10が追尾するための標的となる標的対象物と、移動体10の移動動作の障害となる障害物とに区分する必要がある。そこで、移動動作決定装置1は、検出対象物30を区分する処理を行う検出対象区分部を備える。標的対象物は、所定の特徴(例えば、形状、大きさ、色、速度、発光、温度等)を有しており、センサ20がこれらの特徴のいずれか一又は複数を検出できるものとする。
【0072】
検出対象区分部は、センサ20からの入力情報を受け付け、センサ20が検出した標的対象物の特徴と、予め登録されている標的対象物の特徴情報とを比較し、同一の特徴を有する検出対象物30を標的対象物とし、同一の特徴を有しない検出対象物30を障害物に区分する。区分された結果情報は、出力動作特定部24に入力され、標的対象物に対する出力動作と障害物に対する出力動作とが特定される。
【0073】
検出領域記憶部26には、標的対象物を検出するための検出領域を特定するための情報と、障害物を検出するための検出領域を特定するための情報とが記憶されている。それぞれの検出領域の大きさは、同じであってもよいし異なっていてもよいが、追尾レンジが大きく、回避レンジが小さく設定されていることが望ましい。動作設定情報記憶部27には、検出領域ごとに出力動作が定義された動作設定情報が記憶されているが、検出領域の大きさに応じて(追尾レンジ、回避レンジに応じて)、それぞれに対応する出力動作が定義されている。すなわち、追尾レンジとなる検出領域に対応する出力動作は、標的対象物を追尾するように組み合わせ検出パターンに応じた出力動作が定義されており、回避レンジとなる検出領域に対応する出力動作は、障害物を回避するように組み合わせ検出パターンに応じた出力動作が定義されている。その他の処理部は、図12に示した各処理部と同様の処理を行う。
【0074】
図16に追尾処理の具体例を示す。図16(A)において、検出領域60Aが追尾レンジで、検出領域60Bが回避レンジである。また、検出対象物30Aが標的対象物であり、その他の検出対象物30は障害物である。図16(A)に示す矢印Aは、検出領域60Aで標的対象物を検出した場合の出力動作を示しており、移動体10が検出対象物30Aを追尾するような出力動作が特定される。その後時間が経過して、図16(B)に示すような状態になると(標的対象物が左に移動すると共に移動体10がそれを追尾して移動したとする)、追尾レンジである検出領域60Aに対応する出力動作は矢印Aのように決定され、回避レンジである検出領域60Bに対応する出力動作は矢印Bのように決定される。出力動作統合部28が矢印Aのベクトルと矢印Bのベクトルを統合し、最終的に矢印Cの出力動作が得られる。
【0075】
なお、ここでは標的対象物を追尾しながら、最適な経路を決定するものとしているが、
例えば地図情報を用いることで、地図上の任意の位置を最終目標として設定し、その最終目標を標的対象として最適な経路を決定するようにしてもよい。
【0076】
このように、単に障害物を回避するだけでなく、標的対象物を追尾しつつ障害物を確実に回避する最適な移動動作を決定することができる。なお、この追尾処理においても上記と同様に、検出領域が小さい回避レンジに対応する出力動作の優先度が高くなるように寄与係数が設定されることが望ましい。また、追尾レンジ、回避レンジだけでなく、予測レンジを加えることで、標的対象物を追尾すると共に、遠方の障害物の位置、大きさを予測して移動経路を決定しつつ、直近の障害物を確実に回避することができる出力動作を決定するようにしてもよい。
【0077】
本実施形態においては、デッドロックからの回避動作を決定することができる。すなわち、移動体10が囲い込みにより移動経路を確保できず、移動動作を決定できなくなる状態から回避する。デッドロックについては、動作設定情報にデッドロックの組み合わせ検出パターンを登録し、そのパターンに対応する出力動作を定義する。図17に具体例を示す。移動体10が矢印Xの方向を進行方向としている場合に、図17(A)のように検出対象物30が検出されると、移動体10が出力動作を決定することが困難となる。そこで、出力動作として図に示すような回転動作を定義する。
なお、移動体10が回転できない物である場合は、後退、転回、Uターン等でもよい。
【0078】
移動体10が、矢印A、Bで示すように左右のいずれかの方向に回転する場合に、左右の区画検出領域61における検出値に応じて回転方向を特定する。すなわち、図17(B)に示すようなパターンが検出された場合には、検出値が小さい右回転(矢印B)が選択されて出力動作として特定される。回転した後は、新たにセンサからの入力情報を得ることで検出パターンが変化し、デッドロックからの回避が可能となる。後退、転回、Uターン等を行う場合も同様に、検出値が小さい区画検出領域61のスペースを優先的に使用して動作を行うように、出力動作を特定する。
【符号の説明】
【0079】
1 移動動作決定装置
10 移動体
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 HD
15 通信I/F
16 入出力I/F
20 センサ
21 ポテンシャル設定部
22 区画検出領域特定部
23 検出値算出部
24 出力動作特定部
25 動作決定部
26 検出領域記憶部
27 動作設定情報記憶部
28 出力動作統合部
30 検出対象物
50 ポテンシャル領域
60 検出領域
61 区画検出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備えられ、当該移動体の移動動作を決定する移動動作決定装置において、
前記移動体の近傍における移動物及び/又は固定物を検出対象物として検出し、少なくとも前記検出対象物の位置及び大きさの情報を取得するセンサと、
前記センサが取得した検出対象物の大きさに応じて、当該検出対象物のポテンシャル領域及びポテンシャル値を設定するポテンシャル設定手段と、
前記移動体の位置から所定の範囲である検出領域及び当該検出領域を複数の領域に区画した区画検出領域を特定する情報を記憶する検出領域記憶手段と、
前記ポテンシャル設定手段が設定したポテンシャル領域の一部又は全部を含んでいる前記区画検出領域を特定する区画検出領域特定手段と、
前記区画検出領域特定手段が特定した区画検出領域ごとに、当該区画検出領域に含まれるポテンシャル値を検出値として算出する検出値算出手段と、
前記検出領域において前記検出対象物のポテンシャル領域の一部又は全部が存在する区画検出領域と前記検出対象物のポテンシャル領域が存在しない区画検出領域との組み合わせ検出パターン、及び当該組み合わせ検出パターンに対応する前記移動体の出力動作が設定された動作設定情報を記憶する動作設定情報記憶手段と、
前記区画検出領域特定手段が特定した区画検出領域のうち、前記検出値算出手段が算出した検出値が所定の規則にしたがって決定された検出値である前記区画検出領域のパターンと、前記動作設定情報記憶手段が記憶する区画検出領域の組み合わせ検出パターンとを比較して、前記移動体の出力動作を特定する出力動作特定手段と、
前記出力動作決定手段が特定した出力動作に対して、前記検出値に基づいて出力動作を最適化して決定する動作決定手段とを備えることを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動動作決定装置において、
前記検出領域記憶手段が、異なる大きさの複数の検出領域を特定する情報を記憶し、前記動作決定手段が、前記異なる検出領域ごとに前記移動体の出力動作を最適化して決定し、
前記異なる検出領域ごとに決定された出力動作を統合する出力動作統合手段を備えることを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移動動作決定装置において、
前記出力動作統合手段が、ファジィ推論を用いて出力動作を統合することを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の移動動作決定装置において、
前記動作設定情報記憶手段が、前記異なる検出領域ごとに異なる前記出力動作が設定された動作設定情報を記憶し、
前記出力動作統合手段が、前記異なる検出領域のうち最小の当該検出領域に対して設定された出力動作を最優先とした重み付けに基づいて、出力動作を統合することを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の移動動作決定装置において、
前記センサが検出した検出対象物を、前記移動体が追尾するための標的となる標的対象物と、前記移動体の移動動作の障害となる障害物とに区分する検出対象区分手段を備え、
前記検出領域記憶手段が、前記標的対象物を追尾するための第1の検出領域及び前記障害物を回避するための第2の検出領域を特定する情報を記憶し、
前記第1の検出領域及び第2の検出領域ごとに決定された出力動作を統合する出力動作統合手段を備えることを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の移動動作決定装置において、
前記第1の検出領域が、前記2の検出領域よりも大きく設定され、
前記出力動作統合手段が、前記第2の検出領域に対して設定された出力動作を優先した重み付けに基づいて、出力動作を統合することを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の移動動作決定装置において、
前記ポテンシャル設定手段が、前記ポテンシャル値を前記検出対象物の中心から外側にいくにしたがって小さく設定し、前記ポテンシャル領域を前記検出対象物の大きさ以上の大きさであって、当該検出対象物の全てを含んで設定することを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の移動動作決定装置において、
前記検出対象物の種類、材質、表面の状態及び/又は移動速度に応じて、前記検出対象物の中心から外側にいくにしたがってポテンシャル値を小さく設定する度合いを異ならせることを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の移動動作決定装置において、
前記設定されたポテンシャル領域のうち、前記検出対象物の外部領域に設定されたポテンシャル領域であって、予め設定された閾値よりも小さいポテンシャル値である領域を、前記移動体が通過可能な通過余裕領域として設定することを特徴とする移動動作決定装置。
【請求項10】
コンピュータが、移動体の移動動作を決定する移動動作決定方法において、
センサが前記移動体の近傍における移動物及び/又は固定物を検出対象物として検出し、少なくとも前記検出対象物の位置及び大きさの情報を取得する情報取得ステップと、
前記取得した検出対象物の大きさに応じて、当該検出対象物のポテンシャル領域及びポテンシャル値を設定するポテンシャル設定ステップと、
前記移動体の位置から所定の範囲である検出領域及び当該検出領域を複数の領域に区画した区画検出領域を特定する情報が記憶されており、前記ポテンシャル設定手段が設定したポテンシャル領域の一部又は全部を含んでいる前記区画検出領域を特定する区画検出領域特定ステップと、
前記区画検出領域特定ステップが特定した区画検出領域ごとに、当該区画検出領域に含まれるポテンシャル値を検出値として算出する検出値算出ステップと、
前記検出領域において前記検出対象物のポテンシャル領域の一部又は全部が存在する区画検出領域と前記検出対象物のポテンシャル領域が存在しない区画検出領域との組み合わせ検出パターン、及び当該組み合わせ検出パターンに対応する前記移動体の出力動作が設定された動作設定情報が記憶されており、前記区画検出領域特定ステップが特定した区画検出領域のうち、前記検出値算出ステップで算出された検出値が所定の規則にしたがって決定された検出値である前記区画検出領域のパターンと、前記動作設定情報における区画検出領域の組み合わせ検出パターンとを比較して、前記移動体の出力動作を特定する出力動作特定ステップと、
前記出力動作決定ステップが特定した出力動作に対して、前記検出値に基づいて出力動作を最適化して決定する動作決定ステップとを含むことを特徴とする移動動作決定方法。
【請求項11】
コンピュータを移動体の移動動作を決定するように機能させる移動動作決定プログラムにおいて、
センサが前記移動体の近傍における移動物及び/又は固定物を検出対象物として検出し、少なくとも前記検出対象物の位置及び大きさの情報を取得する情報取得手段、
前記情報取得手段が取得した検出対象物の大きさに応じて、当該検出対象物のポテンシャル領域及びポテンシャル値を設定するポテンシャル設定手段、
前記移動体の位置から所定の範囲である検出領域及び当該検出領域を複数の領域に区画した区画検出領域を特定する情報を記憶する検出領域記憶手段、
前記ポテンシャル設定手段が設定したポテンシャル領域の一部又は全部を含んでいる前記区画検出領域を特定する区画検出領域特定手段、
前記区画検出領域特定手段が特定した区画検出領域ごとに、当該区画検出領域に含まれるポテンシャル値を検出値として算出する検出値算出手段、
前記検出領域において前記検出対象物のポテンシャル領域の一部又は全部が存在する区画検出領域と前記検出対象物のポテンシャル領域の一部又は全部が存在しない区画検出領域との組み合わせ検出パターン、及び当該組み合わせ検出パターンに対応する前記移動体の出力動作が設定された動作設定情報を記憶する動作設定情報記憶手段、
前記区画検出領域特定手段が特定した区画検出領域のうち、前記検出値算出手段が算出した検出値が所定の規則にしたがって決定された検出値である前記区画検出領域のパターンと、前記動作設定情報記憶手段が記憶する区画検出領域の組み合わせ検出パターンとを比較して、前記移動体の出力動作を特定する出力動作特定手段、
前記出力動作決定手段が特定した出力動作に対して、前記検出値に基づいて出力動作を最適化して決定する動作決定手段としてコンピュータを機能させる移動動作決定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−194866(P2012−194866A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59225(P2011−59225)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】