説明

移動型炉床炉の操業方法

【課題】工業的な利用に適したサイズの還元鉄を高い収率で回収することができるとともに、設備の小型化と補修頻度の少ない、経済的な移動型炉床炉の操業方法を提案する。
【解決手段】
移動型炉床炉内で生成する還元生成物および炉床炭材の一部または全部を、排出装置で排出した後にこれらを分級し、篩下の炭材について、その一部または全部についてのみ磁力選別し、その磁力選別した篩下炭材を炉床炭材として再利用する移動型炉床炉の操業方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内を水平方向に移動する炉床上に原料等を積みつけ、この移動炉床が炉内を移動する間に、前記原料を加熱、還元して還元鉄を生成させる移動型炉床炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼は、一般に、転炉や電気炉で精錬して製造するのが普通である。このうち、電気炉法は、スクラップや還元鉄を、電気エネルギーを使って加熱溶融し、場合によっては、さらに精錬することにより鋼にしている。ただし、近年、スクラップの需給が逼迫していること、およびより高品質な鋼への要求が高くなってきたことから、スクラップに代えて還元鉄を使用する傾向が見られる。こうした要請に応えるべく最近、還元鉄を製造する新しい技術が開発されている。この技術は、水平方向に移動する炉床上に、鉄鉱石などの酸化物鉄含有原料と固体還元材等との混合物を装入堆積させ、上方から輻射伝熱によって前記酸化物を加熱還元する方法、またはさらに、その還元生成物を同じ炉床上で溶融してスラグとメタルとに分離させることにより、還元鉄を回収する方法である(特許文献1、2)。
【0003】
これらの従来技術では、移動型炉床炉を用いているが、この炉は、炉床が炉内を水平に移動するものであって、その移動の過程で原料を加熱する方法のであり、水平に移動する炉床とは、図1に示すような回転移動する形式のものが普通である。この形式の故に該移動型炉床炉は、回転炉床炉とも呼ばれている。
【0004】
この回転炉床炉は、従来、図1に示すように、原料の供給側から排出側に向かって、予熱帯10a、還元帯10b、溶融帯10cおよび冷却帯10dに区画された環状の炉体10を有し、その炉体内には、環状の炉床11が回転移動するように配設してある。その回転移動する炉床11上には、例えば、鉄鉱石と固体還元材との混合物からなる混合原料2が装入される。その混合原料としては、炭材内装ペレットや粉状の鉄鉱石と固体還元材を混ぜ合わせた混合物が好適に用いられる。なお、この炉床11は、表面に耐火物が施工してあるが、たとえば粒状耐火物を堆積させたものであってもよい。そして、この炉体10の上部には、バーナー13を配設し、このバーナー13を熱源として、炉床11上に堆積させた鉄鉱石等の金属含有酸化物を還元材介在の下に加熱還元して、還元生成物を得る。なお、図1において、符号14は原料を炉床上へ装入する装入装置、符号15は還元物を排出する排出装置である。
【0005】
そして、この移動型炉床炉において、還元生成物を溶融してスラグとメタルとに分離させる方法では、炉床を溶融スラグから保護するため、および原料近傍の還元ポテンシャルを高めて還元・浸炭を進める目的で、その炉床上に炉床炭材を敷く方法が採用されている。この方法において、溶融して分離したメタルは、スラグや炉床に敷いた炉床炭材と一緒に排出されるが、メタルとスラグおよび炭材とは、磁選あるいは篩分けにより、主としてメタルのみを分離回収することとしている(特許文献2、3)。
【0006】
特許文献4には、メタルとスラグから分離した炭材を酸化鉄に混合する還元材や炉床炭材としてリサイクルする方法が示されている。
【0007】
特許文献5には、メタルを磁選や静電分離によりメタルからスラグならびに炭材を分離し、炭材のみをリサイクルする方法が開示されている。この方法は、工業的な利用に適さない3mm未満のメタル、スラグが発生することに対し、粒径3mm以上の粒状メタルと粒径3mm未満のメタルおよびスラグが混入した炭材とに分離し、3mm未満のメタルとスラグが混入した炭材をリサイクルして使用する方法である。即ち、この方法では、リサイクルされた炭材が再度、炉内に供給されて加熱処理を受ける際に、この炭材中の小粒径メタルおよびスラグを、酸化鉄原料の還元によって生成するメタルおよびスラグを吸収させることができ、回収率を上げることができる。
【0008】
しかしながら、この方法において、溶融分離したメタルを、スラグや炉床に積載した炉床炭材と分離するために、その全量を磁選するには、これら排出物を冷却する必要がある。この場合、炭材が湿るのを避けるには空冷方式のクーラーを用いることが好ましいが、設備が大型化して経済的でないだけでなく、磁着側に、工業的な利用が難しい3mm未満のメタルが10mass%程度以上発生するだけでなく、メタル以外の細かなスラグや炭材も混入してしまうという問題がある。また、始めに、3mmで篩って3mm未満のメタルとスラグが混入した炭材をリサイクルする方法では、篩目が細かいため、現実的な篩効率で処理するには篩が大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
なお、前記炉床炭材は、移動型炉床炉内で消費されたり、還元および/または溶融生成物と分離する際に、一部が系外に排出されたりする。この点について、特許文献6は、その減少分を補償するために、新しい炭材を装入する際に、新規の炭材を高温のリサイクル炭材に合流させることにより、新しい炭材が低温のまま炭材積みつけ部に入るのを防止し、かつ炉床炭材に大きな温度ムラができることを防止する方法を開示している。
【0010】
しかしながら、この方法では原料の性状によっては、高温のリサイクル炭材中に20mass%以上ものメタルが濃縮することがあり、このような炭材を200℃以上の高温で搬送すると、搬送部材の磨耗が激しくなり、部材の交換頻度が高くなるという問題が発生する。
【0011】
また、還元金属を溶融せずに回収する方法についても、酸化鉄原料が炉床に融着、固化するのを防止する目的で炉床には炉床炭材を装入堆積させている(特許文献7)。
【特許文献1】特開平11−310832号公報
【特許文献2】特開平11−172312号公報
【特許文献3】特開2001−279315号公報
【特許文献4】特開平11−106814号公報
【特許文献5】特開2003−213312号公報
【特許文献6】特開2005−283011号公報
【特許文献7】特開2002−302710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特許文献1〜7に記載の従来技術が抱えている上述した問題点を解決することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、工業的利用に適したサイズの還元鉄を高収率で回収することができるとともに、設備の小型化と設備の補修頻度が少ない移動型炉床炉の操業方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、上記課題が解決でき、上記目的を実現できる方法について鋭意検討を重ねた結果、以下に述べる要旨構成にかかる操業方法が有効であるとの知見を得て、本発明を開発した。
即ち、本発明は、移動型炉床炉の移動する炉床上に、まず、粉状の炉床炭材を積載して炉床炭材層を形成し、その炉床炭材層の上に酸化鉄含有原料および炭素質還元材を含む混合原料を粉状のままおよび/または塊成化してから装入し、炉床が炉内を移動する間に加熱し、還元して還元生成物を生成させる方法において、前記還元生成物および前記炉床炭材の一部または全部を排出装置で排出した後にこれらを分級し、篩下の炭材についてその一部または全部を磁力選別し、その磁力選別後の篩下炭材を前記炉床炭材として再利用することを特徴とする移動型炉床炉の操業方法が有効である。
【0014】
また、本発明は、移動型炉床炉の移動する炉床上に、まず、粉状の炉床炭材を積載して炉床炭材層を形成し、その炉床炭材層の上に酸化鉄含有原料および炭素質還元材を含む混合原料を粉状のままおよび/または塊成化してから装入し、炉床が炉内を移動する間に加熱し、還元して還元生成物を生成させ、その還元生成物を少なくとも一度は溶融し、冷却して固化させる方法において、冷却固化後の前記還元生成物および前記炉床炭材の一部または全部を排出装置で排出した後にこれを分級し、篩下の炭材についての一部または全部を磁力選別し、その磁力選別後の篩下炭材を前記炉床炭材として再利用することを特徴とする移動型炉床炉の操業方法もまた、有効な課題解決手段となることがわかった。
【0015】
なお、本発明において、篩下炭材のうちの磁力選別を経ない炭材を、磁力選別後の炭材と混合して用いること、再利用のために回収した前記炉床炭材は、全Fe分が20mass%以下となるようにすること、前記炉床炭材の全Fe分は、該炭材の嵩密度を管理することによって調整すること、前記炉床炭材の全Fe分は、篩下炭材のうちの磁力選別を経ない炭材と磁力選別後の炭材との配合調整によって調整すること、移動型炉床炉が回転炉床炉であること、が好ましい解決手段を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
上述したような構成を有する本発明によれば、工業的な利用に適したサイズの還元鉄を高い収率で製造することができるようになる。また、本発明によれば、磁力選別によって、全Fe分の少ない排出物を処理することになるから、設備の補修頻度を少なくできる上、その設備の小型化を図ることができる。従って、本発明によれば、経済性に優れる移動型炉床炉の操業方法を提案することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る移動型炉床炉の操業方法は、特開平11−172312号公報に見られるように、移動型炉床上に炉床炭材を積み付けて炉床炭材層を形成し、この炉床炭材層上に酸化鉄含有原料と炭素質還元材等とを、必要に応じて塊成化してから装入堆積させ、炉床の移動中に加熱還元して還元生成物を生成させるか、さらには、その還元生成物を溶融し、凝集させた後に、冷却固化して還元鉄を製造するようにした技術に適用される。
【0018】
本発明方法においては、移動型炉床炉で還元鉄(金属鉄)を製造する際、炉内を移動する炉床を溶融物から保護するため、あるいは酸化鉄原料を含む粉体が融着、固化して炉床上に堆積層を形成するのを防ぐために、原料近傍の還元ポテンシャルを高め、還元、浸炭を促す目的で、炉床上には炉床炭材を積載して炉床炭材層を形成し、その上に混合原料を装入して操業を開始する。
【0019】
即ち、本発明は、前記還元生成物および前記炉床炭材の一部または全部を排出装置で排出した後にこれらを分級し、篩下の炭材について、その一部または全部を磁力選別し、その磁力選別によってメタル(Fe)を除去した篩下炭材を前記炉床炭材として回収し、これを再利用する方法である。この方法において、篩下炭材のうちの一部を磁力選別する場合、残りの磁力選別をしない炭材については、全Fe分20mass%以下にするためには、少なくとも磁力選別した炉床炭材と混合して用いることが必要となる。移動型炉床炉のこのような操業を行うと、設備の小型化と、設備の補修頻度を少なくすることができると共に、工業的利用に適したサイズの還元鉄を高い収率で回収することができるようになる他、炉床炭材中の全Fe分を減少させることができる。
【0020】
本発明の上記操業方法において重要なことは、リサイクルさせる回収炭材中に含まれる全Fe分を20mass%以下となるようにすることである。このように、移動炉床炉内で処理されたリサイクル用炉床炭材中の全Fe分を20mass%以下に調整すると、搬送機器の摩耗が大幅に低減できる。ここで、図2は、細かなメタルを含む炭材について、そのメタルの一部を磁選により除去して、メタル量(全Fe量)を変えた炭材を用い、この炭材の全Fe分と、磨耗速度との関係を温度を変えて測定した結果を示している。この図に示すように、炭材中の全Fe分が20mass%を超えると、全温度域で磨耗速度が急に上昇することがわかる。一方で、全Fe分が20mass%以下では、磨耗速度は全Fe分が1mass%の場合と大差がないこともわかった。したがって、回収する炉床炭材の全Fe分は20mass%以下となるように管理することがわかった。
【0021】
なお、炉床炭材としてリサイクルされる回収炭材の全Fe分を20mass%以下に調整する方法の一つとして、リサイクル炭材の嵩密度を指標として管理する方法を用いることができる。一般に、炭材の嵩密度は、ベース炭材の嵩密度、炭材の粒度分布に影響を受けるので、実際のリサイクル炭材の嵩密度を測定し、相関をとった上で、この嵩密度を管理値として全Fe分を決定する方法が好ましい。
【0022】
リサイクルすべき炉床炭材の全Fe量を直接分析して管理することは工業的な方法とは言えないし、一方で、リサイクルする炭材の嵩密度と全Fe分とは強い相関関係を示すからである。従って、炭材の嵩密度を測定すれば、該炭材の全Fe量を簡便に推定し、管理することができると考えられる。
【0023】
即ち、図3は、前記磨耗測定時の炭材の嵩密度との関係を示すものである。この図に示すように、炭材中の全Feとこの炭材の嵩密度とは強い相関関係があり、全Fe分=20mass%では、炭材の嵩密度は1.2g/cm相当である。なお、本発明において、炭材の嵩密度は、1リットルの容器上にじょうごをセットしその上でリサイクル炭材を6mmのふるいを通して供給し、容器に山盛りにした後、定規で容器表面をすりきり、1リットルにした上で中身の質量を測定して求めた値である。
【0024】
ただし、炭材の嵩密度は、ベース炭材の嵩密度、炭材の粒度分布にも影響を受けるので、“嵩密度:1.2”は、絶対的な指標ではなく、実際のリサイクル炭材の嵩密度を測定し相関をとった上で管理値を決めることが好ましい。
【0025】
次に、炉床炭材として再利用するために移動型炉床炉の排出装置から回収されるリサイクル用の炉床炭材用炭材(以下、単に「リサイクル炭材」という)は、これを磁選するには、該リサイクル炭材の温度を500℃以下に下げることが必要となる。このリサイクル炭材の温度を下げる方法としては、例えば、湿った新炭材と細粒側に分離した篩下の高温の回収炭材とを混合して、水分を蒸発させると共に該回収炭材の温度を低下させる方などがある。
【0026】
リサイクル炭材は、その温度を磁選に適した状態にした上で磁選し、メタルの一部もしくは全部を分離除去する。このようにして得られたメタル含有量が少ないリサイクル炭材は、前記炉床上に再装入されて炉床炭材層を形成する。また、このような処理の仕方は、回収した炭材の顕熱を無駄にすることなく、リサイクルすることが可能になることを意味している。なお、分級操作により製品メタル、還元鉄等と炭材とを分別した後、その篩下のリサイクル炭材は湿った新炭材を使って該リサイクル炭材の温度を下げるようにしてもよい。
【0027】
図4は、回収した炭材をリサイクルする場合、そのリサイクル炭材を磁選しない例のフローを示す。即ち、この方法は、移動型炉床炉(以下、単に「還元炉」という)2から排出された、高温の還元生成物および炉排出炭材をスクリーン3で分級し、製品(篩上)4とリサイクルされる炭材、即ち、炉床炭材用炭材とに分離する。ただし、この例の場合、その炭材中には、スクリーン3を通過したメタルやスラグ等をも含有しており、そのまま炭材リサイクルライン5を経て還元炉2に供給される。従って、この方法では、炭材中にメタルを含むため、とくにそのメタルの量が全Fe分で20mass%を超えるようになると、各種設備の磨耗速度が増加し、設備更新周期が短くなってしまう。
【0028】
図5(a)〜(d)は、本発明方法に適合する炭材リサイクルフローを示す。図5(a)の例は、スクリーン3の出口に、リサイクル炭材貯槽6を設置し、回収した炭材が、このリサイクル炭材貯槽6から炭材リサイクルライン5を経て、還元炉2にリサイクルされる場合である。この方法では、リサイクル炭材貯槽6中の炭材の一部が磁選機7に送られ、磁着粉8が除去された残りの炭材は再びリサイクル炭材貯槽6に返される。また、この方法では、リサイクル炭材の温度を磁選するのに適した500℃以下に下げるために、高温の回収炭材を冷却する手段が必要となる。そのため、リサイクル炭材貯槽6には、冷却手段およびリサイクル炭材温度を均一にする機能が付いていることが望ましい。例えば、好ましい冷却手段としては、水スプレーや水冷管、不活性ガス送風等でよく、特別な制限はない。炭材温度の均一化は、撹拌機を使ってもよいが、リサイクル炭材貯槽6からのリサイクル炭材を、磁選機7側あるいは炭材リサイクルライン5側へ搬送するコンベアの動きにより炭材が撹拌されるような構造であってもよい。
【0029】
磁選機7に送られる炭材量は、炭材リサイクルライン5上を搬送されるリサイクル炭材中の全Fe分が20mass%以下になるようにするために、炭材嵩密度の調整に必要な量以上とする。もちろん、リサイクル炭材の全量を磁選しても、炭材中のFeによる搬送部材の磨耗を低減可能であるが、全量を磁選するにはその分大きな磁選機が必要となり設備が大きくなる。炭材リサイクルライン5のリサイクル炭材中の全Fe分が20mass%以下となるように、定期的あるいは不定期的に炭材リサイクルライン5からリサイクル炭材をサンプリングし、嵩密度がFe分20mass%相当値よりも高い時には、磁選量をふやすように管理し、磁選量を必要最小限とすることで、設備を小型化できる。なお、スクリーン3からリサイクル炭材貯槽6へ、リサイクル炭材貯槽6から磁選機7へのリサイクル回収炭材の搬送は、リサイクル回収炭材の自重による落下を利用し設備の磨耗を極力低減することが好ましい。磁選により分離された磁着粉8は、還元鉄、金属鉄の原料として同一プロセス内でリサイクルすれば無駄にならないし、焼結等他のプロセスの原料に再利用してもよい。
【0030】
図1(b)は、本発明の別の実施形態を示すものであり、図1(a)に対して磁選機7からの戻りがリサイクル炭材貯槽6でなく還元炉2になるフローの例である。この例も、磁選機7に送られる炭材量は、炭材リサイクルライン5を搬送されるリサイクル炭材中の全Fe分が20mass%以下になるように、定期的あるいは不定期的に炭材リサイクルライン5からリサイクル炭材をサンプリングし、嵩密度が全Fe分20mass%相当値よりも高い時には、磁選量をふやすように管理する。
【0031】
図1(c)は、本発明のさらに別の実施形態を示すものであり、図1(a)に対して、湿炭材ホッパー1からの新炭材の供給が炭材リサイクルライン5ではなく、リサイクル炭材貯槽6となっている例である。この例では、リサイクル炭材の温度を磁選するに適した500℃以下に下げるために、湿った新炭材からの蒸発潜熱を利用できるので好ましい形態である。リサイクル炭材貯槽6には、リサイクル炭材温度を均一にするための炭材を撹拌する機能が付いていることが望ましいが、リサイクル炭材貯槽6からリサイクル炭材を磁選機7側あるいは炭材リサイクルライン5側へ搬送するコンベアの動きにより炭材が撹拌される構造であってもよい。この場合も、磁選機7に送られる炭材量は、炭材リサイクルライン5を搬送されるリサイクル炭材中の全Fe分が20mass%以下になるように、定期的あるいは不定期的に炭材リサイクルライン5からリサイクル炭材をサンプリングし、嵩密度が全Fe分20mass%相当値よりも高い時には、磁選量をふやすように管理する。
【0032】
図(d)は、本発明のさらに別の実施形態を示すものであり、図1(b)に対して、湿炭材ホッパー1からの新炭材の供給が、炭材リサイクルライン5ではなく、リサイクル炭材貯槽6となっている。この場合も、磁選機7に送られる炭材量は、炭材リサイクルライン5を搬送されるリサイクル炭材中の全Fe分が20mass%以下になるように、定期的あるいは不定期的に炭材リサイクルライン5からリサイクル炭材をサンプリングし、嵩密度がFe分20mass%相当値よりも高い時には、磁選量をふやすように管理する。
【0033】
なお、還元生成物および炉排出炭材の分級に用いる篩(スクリーン)の篩目は、3〜15mm程度が好ましい。その篩目が小さいとリサイクル回収炭材中に混入する製品メタル、還元鉄等の比率は少なくなるが工業的に利用しにくい細かな製品の比率が増加し、製品価値が相対的に低くなる。また、同じ処理量では、篩目が小さい程、必要な篩面積が大きくなる。逆に篩目が大きいと、製品粒度が工業的利用に適したサイズとなり、篩のサイズも小さくてよいが、リサイクル炭材中に混入する製品メタル、還元鉄等の比率が増加し、リサイクル炭材を搬送する設備が磨耗しやすくなる。なお、炉床炭材の粒度は、スクリーンの篩目以下が好ましい。スクリーンの篩目以上の粗い炭材は、製品に混ざって排出されてしまうからである。
【0034】
以上説明したように、本発明では、必要最小限の設備でよく、また設備の補修頻度を少なくすることができ、そして工業的利用に適したサイズの還元鉄を高い収率で回収することが可能でなる。なお、移動型炉床炉は、リサイクル炭材中にFeが蓄積するタイプであれば、本発明の適用が可能であり、原料を還元して溶融せずに回収する還元炉であっても、また、原料を還元後、溶融しメタル、スラグを回収する還元・溶融炉であっても適用は可能である。しかし、特に好ましい設備は、リサイクル炭材の搬送経路を最も短くできる回転炉床炉の使用が推奨される。
【実施例】
【0035】
図1に示すような直径が7mの回転炉床炉を用いて還元鉄、金属鉄を生産する操業を行い、回収物を図1(c)の処理フローで処理し、磁選の有無によるリサイクル炭材性状、リサイクル炭材搬送コンベアの磨耗速度について調査した。その結果を表1に示す。なお、スクリーン3の篩目は、6mmで補給用湿新炭材は5mm以下に粒度調整したものを使用した。
【0036】
実施例1
炉内を移動する炉床上に形成した炉床炭材層上に、粉鉱石と粉石炭と石灰石を74:22:4の比率で混合した混合粉原料を装入し、表面に凹凸をつけた後、最高1500℃の炉内温度で、加熱、還元、溶融処理を行った。回収炭材(篩下)4bとして、0.71t/hの炭材と、0.25t/hの混入Feが発生したが、合計0.96t/hの内0.25t/hを磁選処理したところ0.07t/hの磁着物を除去できた。除去した磁着物は焼結原料として利用した。リサイクル炭材の嵩密度は1.18g/cmで全Feは19mass%であった。炭材リサイクルライン5の温度は450℃で、搬送機器の磨耗速度は低かった(相対値で1:1)。
【0037】
比較例1
実施例1と同条件で、加熱、還元、溶融処理を行った。回収炭材(篩下)4bとして0.73t/hの炭材と0.26t/hの混入Feが発生したが、磁選処理は実施しなかった。その結果、リサイクル炭材の嵩密度は1.30g/cmで全Feは25mass%であった。炭材リサイクルライン5の温度は480℃で、搬送機器の磨耗速度は相対値で3.5と大きかった。
【0038】
実施例2
高炉ダストと焼結返鉱を67:33の比率で混合し、約7ccのブリケットに成型後、炉床上に形成した炉床炭材層上に装入し、最高1500℃の炉内温度で、還元、溶融処理を行った。回収炭材(篩下)4bとして0.38t/hの炭材と0.19t/hの混入Feが発生したが合計0.57t/hの内0.25t/hを磁選処理したところ、0.08t/hの磁着物を除去できた。除去した磁着物は焼結原料として利用した。リサイクル炭材の嵩密度は1.18g/cmで、全Feは19mass%であった。炭材リサイクルライン5の温度は440℃で、搬送機器の磨耗速度は低かった(相対値で1.0)。
【0039】
実施例3
磁選して除去した磁着物をブリケットに混ぜて装入したこと以外は、実施例2と同条件で、加熱、還元、溶融処理を行った。回収炭材(篩下)4bとして、0.38t/hの炭材と0.19t/hの混入Feが発生したが、合計0.57t/hの内0.25t/hを磁選処理したところ、0.08t/hの磁着物を除去できた。リサイクル炭材の嵩密度は1.19g/cmで、全Feは19mass%であった。炭材リサイクルライン5の温度は440℃で、搬送機器の磨耗速度は低かった(相対値で1:1)。回収したメタルは実施例2に比べて0.08t/h増加した。磁選で除去後にブリケットに混ぜて再装入した磁着物が、篩上サイズのメタルとして回収できた。
【0040】
実施例4
高炉ダストと転炉ダストを40:60の比率で混合し、約7cmのブリケットに成型後、炉床上に形成した炉床炭材層上に装入し、最高1350℃の炉内温度で、還元処理を行った。回収炭材(篩下)4bとして、0.30t/hの炭材と0.12t/hの混入Feが発生したが合計0.42t/hの内0.15t/hを磁選処理したところ、0.04t/hの磁着物を除去できた。除去した磁着物は焼結原料として利用した。リサイクル炭材の嵩密度は1.14g/cmで全Feは17mass%であった。炭材リサイクルライン5の温度は460℃で、搬送機器の磨耗速度は低かった(相対値で1:0)。
【0041】
実施例5
磁選して除去した磁着物を混合粉に混ぜてブリケット成型したこと以外は、実施例4と同条件で、加熱、還元処理を行った。回収炭材(篩下)4bとして、0.31t/hの炭材と0.12t/hの混入Feが発生したが、合計0.43t/hの内0.15t/hを磁選処理したところ、0.04t/hの磁着物を除去できた。リサイクル炭材の嵩密度は1.15g/cmで全Feは17mass%であった。炭材リサイクルライン5の温度は460℃で、搬送機器の磨耗速度は低かった(相対値で1:1)。回収した還元鉄は、実施例4に比べて0.04t/h増加した。磁選で除去後にブリケット原料粉に混ぜて再装入した磁着物が篩上サイズの還元鉄として回収できた。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の技術は、回転炉床炉のような移動型の炉床炉の操業技術として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】移動型炉床炉を示す略線図である。
【図2】炭材中の全Fe量と磨耗速度の関係を示すグラフである。
【図3】炭材中の全Fe量とリサイクル炭材の嵩密度の関係を示すグラフである。
【図4】回収炭材を磁選しない従来方法の例を示す略線図である。
【図5】回収炭材を磁選する本発明方法の例を示す略線図である。
【符号の説明】
【0045】
1 浸炭材ホッパー
2 還元炉
3 スクリーン
4a 製品(篩上)
4b 回収炭材(篩下)
5 炭材リサイクルライン
6 リサイクル炭材貯槽
7 磁選機
8 磁着粉
9 非磁着炭材リサイクルライン
10 炉体
10a 予熱帯
10b 還元帯
10c 溶融帯
10d 冷却帯
11 炉床
13 バーナー
14 装入装置
15 排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動型炉床炉の移動する炉床上に、まず、粉状の炉床炭材を積載して炉床炭材層を形成し、その炉床炭材層の上に酸化鉄含有原料および炭素質還元材を含む混合原料を粉状のままおよび/または塊成化してから装入し、炉床が炉内を移動する間に加熱し、還元して還元生成物を生成させる方法において、
前記還元生成物および前記炉床炭材の一部または全部を排出装置で排出した後にこれらを分級し、篩下の炭材についてその一部または全部を磁力選別し、その磁力選別後の篩下炭材を前記炉床炭材として再利用することを特徴とする移動型炉床炉の操業方法。
【請求項2】
移動型炉床炉の移動する炉床上に、まず、粉状の炉床炭材を積載して炉床炭材層を形成し、その炉床炭材層の上に酸化鉄含有原料および炭素質還元材を含む混合原料を粉状のままおよび/または塊成化してから装入し、炉床が炉内を移動する間に加熱し、還元して還元生成物を生成させ、その還元生成物を少なくとも一度は溶融させてから、冷却して固化させる方法において、
冷却固化後の前記還元生成物および前記炉床炭材の一部または全部を排出装置で排出した後にこれを分級し、篩下の炭材についての一部または全部を磁力選別し、その磁力選別後の篩下炭材を前記炉床炭材として再利用することを特徴とする移動型炉床炉の操業方法。
【請求項3】
篩下炭材のうちの磁力選別を経ない炭材を、磁力選別後の炭材と混合して用いることを特徴とする請求項1または2に記載の移動型炉床炉の操業方法。
【請求項4】
再利用のために回収した前記炉床炭材は、全Fe分が20mass%以下となるようにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動型炉床炉の操業方法。
【請求項5】
前記炉床炭材の全Fe分は、該炭材の嵩密度を管理することによって調整することを特徴とする請求項4に記載の移動型炉床炉の操業方法。
【請求項6】
前記炉床炭材の全Fe分は、篩下炭材のうちの磁力選別を経ない炭材と磁力選別後の炭材との配合調整によって調整することを特徴とする請求項4または5に記載の移動型炉床炉の操業方法。
【請求項7】
移動型炉床炉が回転炉床炉であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の移動型炉床炉の操業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−189972(P2008−189972A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24215(P2007−24215)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成13年新エネルギー・産業技術総合開発機構基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】