説明

移動局および無線通信システム

【課題】隣接する基地局の境界にできる無線干渉区間に移動局の空中線のいずれかがある場合、受信部にて正常に復調できなくなり無線通信ができないという問題があった。
【解決手段】この発明にかかる移動局は、基地局1,4からの無線信号を受信する複数の空中線10等と、複数の空中線10等で受信した無線信号を復調するダイバーシチ受信可能な受信部14と、自局である列車8の移動状態を検出する検出手段と、検出手段において検出された移動状態に応じて、複数の空中線10等で受信された無線信号のいずれを受信部14において復調するかを選択する選択手段に含まれる空中線選択部16,高周波スイッチ17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局と移動局が漏洩同軸ケーブルを介して通信する、無線通信システムである列車無線通信システム等に好適に利用可能な、基地局と無線通信する移動局および当該移動局を備える無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、特許文献1に記載された従来の移動局を備えた無線通信システムの構成図の例であり、移動局としての列車8は特許文献1に記載のように受信性能向上のため4台の空中線10,11,12,13でダイバーシチ受信し、基地局1,4との通信を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−49683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4において示される無線通信システムは、隣接する基地局1,4を有し、基地局1と接続し、電波の送信、受信をする漏洩同軸ケーブル2,3と、基地局4と接続し、電波の送信、受信をする漏洩同軸ケーブル5,6と、漏洩同軸ケーブル2,3,5,6を介して電波を受信する列車8と、列車8の備えられた空中線10,11,12,13と、空中線10〜13からの出力を受信し電波を復調する受信部14と、受信部14からの出力を受信し、無線通信を制御する回線接続装置15とを備えるものである。また、基地局1と基地局4との間の境界にできる電波干渉区間7が存在する。
【0005】
次に、動作について説明する。基地局1は漏洩同軸ケーブル2,3を介して列車8と無線通信が可能であり、基地局4も漏洩同軸ケーブル5及び6を介して列車8と無線通信が可能である。ただし、隣接した基地局1と基地局4のゾーン境界には電波干渉区間7ができ、電波干渉区間7に列車8の空中線10、11、12、13のいずれかがかかる場合、受信部14は正常に復調できなくなり、回線制御装置15を用いて無線通信ができなくなる。
【0006】
従来の移動局を備える無線通信システムは、隣接する基地局(図4での基地局1,4)の境界にできる無線干渉区間に移動局である列車の空中線(図4での空中線10,11,12,13)のいずれかがある場合、受信部にて正常に復調できなくなり無線通信ができなかった。移動局である列車が高速で走行している時は瞬断が発生する程度であり無線通信に大きな影響はないが、列車が停止または低速で走行し、かつ列車の空中線のいずれかが無線干渉区間にある場合、列車が移動し全ての空中線が無線干渉区間の外に出るまでは通信ができなくなるなどの問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、移動局である列車が停止または低速で走行する場合においても、通信可能である移動局および移動局を備える無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる移動局は、基地局からの無線信号を受信する複数の空中線と、前記複数の空中線で受信した無線信号を復調するダイバーシチ受信可能な受信部と、自局の移動状態を検出する検出手段と、前記検出手段において検出された前記移動状態に応じて、前記複数の空中線で受信された前記無線信号のいずれを前記受信部において復調するかを選択する選択手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、移動局において、基地局からの無線信号を受信する複数の空中線と、前記複数の空中線で受信した無線信号を復調するダイバーシチ受信可能な受信部と、自局の移動状態を検出する検出手段と、前記検出手段において検出された前記移動状態に応じて、前記複数の空中線で受信された前記無線信号のいずれを前記受信部において復調するかを選択する選択手段とを備えることにより、移動局が停止または低速で走行している移動状態である時に、選択手段にて、正常に復調できる空中線を選択するようにしたので、いずれかの空中線が電波干渉区間にあり正常に復調できない場合でも、無線通信ができる可能性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による無線通信システムを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2による無線通信システムを示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3による無線通信システムを示す構成図である。
【図4】従来の無線通信システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<A.実施の形態1>
<A−1.構成>
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。図1はこの発明を適用した移動局である列車8を備えた無線通信システムの例であり、図において、隣接する基地局1,4を有し、基地局1と接続し、電波の送信、受信をする漏洩同軸ケーブル2,3と、基地局4と接続し、電波の送信、受信をする漏洩同軸ケーブル5,6と、漏洩同軸ケーブル2,3,5,6を介して電波(無線信号)を受信する列車8と、列車8の備えられた空中線10,11,12,13と、空中線10〜13からの出力を受信し電波(無線信号)を復調する受信部14と、受信部14からの出力を受信し、無線通信を制御する回線接続装置15と、受信部14からの同期情報と検出手段(図示せず)からの列車8の速度情報とを用いて、空中線10〜13の選択を指示する空中線選択部16と、空中線選択部16からの指示で空中線10〜13を選択し、空中線10〜13と受信部14との接続を接断する高周波スイッチ17とを備えるものである。また、基地局1と基地局4との間の境界に、基地局間の電波の干渉により無線通信ができなくなる電波干渉区間7が存在する。
【0012】
<A−2.動作>
次に動作について説明する。基地局1は漏洩同軸ケーブル2及び3を介して列車8と無線通信が可能であり、基地局4も漏洩同軸ケーブル5及び6を介して列車8と無線通信が可能である。ただし、基地局1と基地局4のゾーン境界には電波干渉区間7ができ、電波干渉区間7に列車8の空中線10、11、12、13のいずれかがかかる場合、受信部14は正常に復調できなくなり、回線制御装置15を用いて無線通信ができなくなる。
【0013】
移動局である列車8において、選択手段に含まれる空中線選択部16は、速度情報を用いて列車8が停止または低速で移動していることを検出手段(図示せず)にて検出すると、受信部14が出力する同期情報を監視し、正常に復調できていないと判断した場合に、選択手段に含まれる高周波スイッチ17に対して、受信部14において正常に復調できる空中線10〜13の選択を指示する。空中線選択部16は受信部14が出力する同期情報を監視し、正常に復調できていることが確認できるまで空中線10〜13の選択を繰り返す。
【0014】
また、空中線選択部16は検出手段からの速度情報を監視し、列車8が一定以上の速度で移動していることを検知した場合、空中線10〜13の選択を中止し、空中線10〜13を全て受信部14に接続する。
【0015】
<A−3.効果>
この発明にかかる実施の形態1によれば、移動局において、基地局1,4からの無線信号を受信する複数の空中線10等と、複数の空中線10等で受信した無線信号を復調するダイバーシチ受信可能な受信部14と、自局である列車8の移動状態を検出する検出手段と、検出手段において検出された移動状態に応じて、複数の空中線10等で受信された無線信号のいずれを受信部14において復調するかを選択する選択手段に含まれる空中線選択部16,高周波スイッチ17とを備えることで、列車8が停止または低速で走行している移動状態である時に、空中線選択部16にて、正常に復調できる空中線を選択するように高周波スイッチ17に対して指示するので、いずれかの空中線10〜13が電波干渉区間7にあり正常に復調できない場合でも、無線通信を継続できる可能性が高くなる。
【0016】
また、この発明にかかる実施の形態1によれば、移動局において、検出手段が、移動局である列車8の速度情報から移動状態を検出することで、検出した移動状態に基づいて空中線選択部16が指示し、受信部14において復調可能な空中線10〜13の無線信号を選択することができる。よって無線通信を継続できる。
【0017】
また、この発明にかかる実施の形態1によれば、移動局において、選択手段に含まれる空中線選択部16は、移動局である列車8が停止あるいは所定速度以下の移動状態である場合に、受信部14において復調可能な無線信号を選択することで、列車8が停止または低速で走行している移動状態である時に、いずれかの空中線10〜13が電波干渉区間7にあり正常に復調できない場合でも、無線通信を継続できる可能性が高くなる。
【0018】
また、この発明にかかる実施の形態1によれば、選択手段に含まれる空中線選択部16は、受信部14において正常に復調できていないと判断した場合に、受信部14において復調可能な無線信号を選択することで、空中線選択部16は高周波スイッチ17に対して指示し、受信部14において復調できる空中線10〜13の無線信号を選択できる。よって無線通信を継続できる。
【0019】
また、この発明にかかる実施の形態1によれば、移動局において、選択手段は、複数の空中線10〜13で受信した無線信号から、受信部14に出力する無線信号を選択する高周波スイッチ17を備えることで、空中線選択部16は高周波スイッチ17に対して指示し、受信部14において復調できる空中線10〜13の無線信号を選択できる。よって無線通信を継続できる。
【0020】
また、この発明にかかる実施の形態1によれば、無線通信システムにおいて、例えば線路等の所定経路に沿って移動する列車8と、列車8と無線通信可能な、所定経路に沿って配置された複数の基地局1,4とを備えることで、例えば基地局1と基地局4との境界に生じる電波干渉区間7において空中線10〜13のいずれかが位置する場合においても、空中線選択部16が、列車8の速度情報から、受信部14において復調可能な空中線10〜13からの無線信号を選択することができ、無線通信の継続が可能となる。
【0021】
また、この発明にかかる実施の形態1によれば、無線通信システムにおいて、複数の基地局1,4と列車8とは、所定経路に沿って配設された漏洩同軸ケーブル2,3,5,6を介して無線通信することで、所定経路に沿って配置された漏洩同軸ケーブル2,3,5,6からの電波を空中線10〜13において受信し、無線通信を行うことができる。
【0022】
<B.実施の形態2>
<B−1.構成>
図2はこの発明の実施の形態2による移動局である列車8を備えた無線通信システムの例であり、図において受信部14は空中線選択部16の指示で、受信する空中線10〜13を選択する機能を有する選択復調手段(図示せず)を備える。他の構成品は実施の形態1の図1と全く同一である。ただし、実施の形態2では実施の形態1の構成品である、高周波スイッチ17を用いない。
【0023】
<B−2.動作>
実施の形態1では、空中線選択部16の指示によって、高周波スイッチ17において空中線10〜13を選択していたが、本実施の形態2では、受信部14が選択復調手段を備えることにより、選択復調手段において復調すべき無線信号を選択できる。
【0024】
実施の形態1を同様に、選択手段に含まれる空中線選択部16は、検出手段からの速度情報から列車8が停止または低速で移動していると検出すると、受信部14の選択復調手段に対し、受信部14において正常に復調できる空中線10〜13の選択を指示する。
【0025】
<B−3.効果>
この発明にかかる実施の形態2によれば、移動局において、選択手段は、受信部14に設けられ、受信した無線信号のうちから復調すべき無線信号を選択的に復調する選択復調手段を備えることで、空中線選択部16は検出手段からの速度情報を用いて列車8が停止または低速で移動していること検知すると、受信部14が出力する同期情報を監視し、正常に復調できていないと判断した場合に、受信部14に対して空中線10〜13の選択を指示する。
【0026】
よって、実施の形態1における高周波スイッチ17を用いなくとも、選択復調手段において復調する無線信号を選択することが可能となり、より安価で、かつより信頼性の高い移動局である列車8を得ることができる。
【0027】
<C.実施の形態3>
<C−1.構成>
図3はこの発明の実施の形態3による移動局である列車8を備えた無線通信システムの例であり、図において空中線選択部16は受信部14の出力する電界情報を監視し、検出手段において列車8の速度を検出する。他の構成品は実施の形態1の図1と全く同一である。
【0028】
<C−2.動作>
空中線10,11,12,13には、列車8が所定の速度で走行している際には、所定経路に沿って設けられた漏洩同軸ケーブル2,3,5,6による一定の周期の電界の変動がある。しかし、列車8が停止または低速で走行する場合には、当該変動がなくなる、または非常に長い周期のものになる。この電界の変動の状態を受信部14から出力し、図示しない検出手段において検出することにより、速度情報を得ることなくとも列車の移動状態を検出することが可能となる。
【0029】
これにより、実施の形態1と同様に、選択手段に含まれる空中線選択部16により高周波スイッチ17に対して、受信部14において正常に復調可能な空中線10,11,12,13からの無線信号を選択できる。
【0030】
<C−3.効果>
この発明にかかる実施の形態3によれば、移動局において、検出手段が、空中線10〜13がうける電界の変動から移動状態を検出することで、空中線選択部16は当該電界情報により受信部14において復調できる無線信号を判断し、実施の形態1,2と同様の動作をすることが可能となる。よって、速度情報が不要となり、速度情報を接続することができない列車8においても同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0031】
1,4 基地局、2,3,5,6 漏洩同軸ケーブル、7 電波干渉区間、8 列車、10,11,12,13 空中線、14 受信部、15 回線接続装置、16 空中線選択部、17 高周波スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局からの無線信号を受信する複数の空中線と、
前記複数の空中線で受信した無線信号を復調するダイバーシチ受信可能な受信部と、
自局の移動状態を検出する検出手段と、
前記検出手段において検出された前記移動状態に応じて、前記複数の空中線で受信された前記無線信号のいずれを前記受信部において復調するかを選択する選択手段と、
を備える移動局。
【請求項2】
前記検出手段は、前記移動局の速度情報から前記移動状態を検出する、
請求項1に記載の移動局。
【請求項3】
前記検出手段は、前記空中線がうける電界の変動から前記移動状態を検出する、
請求項1または2に記載の移動局。
【請求項4】
前記選択手段は、前記移動局が停止あるいは所定速度以下の前記移動状態である場合に、前記選択をする、
請求項1〜3のいずれかに記載の移動局。
【請求項5】
前記選択手段は、前記受信部において正常に復調できていないと判断した場合に、前記選択をする、
請求項1〜4のいずれかに記載の移動局。
【請求項6】
前記選択手段は、前記複数の空中線で受信した前記無線信号から、前記受信部に出力する前記無線信号を選択する高周波スイッチを備える、
請求項1〜5のいずれかに記載の移動局。
【請求項7】
前記選択手段は、前記受信部に設けられ、受信した前記無線信号のうちから復調すべき前記無線信号を選択的に復調する選択復調手段を備える、
請求項1〜5のいずれかに記載の移動局。
【請求項8】
所定経路に沿って移動する請求項1〜7のいずれかに記載の移動局と、
前記移動局と無線通信可能な、前記所定経路に沿って配置された複数の基地局と、
を備える無線通信システム。
【請求項9】
前記複数の基地局と前記移動局とは、前記所定経路に沿って配設された漏洩ケーブルを介して無線通信する、
請求項8に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−193336(P2010−193336A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37459(P2009−37459)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】