説明

移動局測位システム

【課題】精度の高い移動局測位システムを提供する。
【解決手段】前記存在確率算出部102により、測位部56による測位結果である移動局の位置と、移動局の位置に対応して測位の精度の劣化を表す精度劣化値と、移動局測位システムの測位誤差とに基づいて、移動局の位置に対する存在確率分布が移動局ごとに算出され(SA5)、移動局位置抽出部106により、第2の測距部により測定される複数の移動局間の距離に基づいて複数の移動局の位置の組合せが抽出され(SA7)、移動局位置選択部108により、抽出された前記組合せに対応する確率評価値が前記存在確率分布に基づいて算出され、確率評価値が最も高い前記組合せが選択される(SA8)。移動局位置補正部110により、測位部56による測位結果である複数の移動局位置が、移動局位置選択部108によって選択された前記組合せとなるように補正される(SA12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、移動局と基地局との距離に関して測定される距離関連値に基づいて検出された移動局の位置を、前記距離関連値よりも精度よく測定された複数の移動局間の距離に基づいて補正することにより、正確な移動局の位置の検出を行なう技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、これらの複数の基地局のそれぞれにおける電波の受信結果に基づいて、移動局の位置の検出を行なう移動局測位システムが提案されている。かかる移動局測位システムにおいては、例えば、距離関連情報として移動局と基地局との距離を算出し、算出された各移動局と各基地局間のそれぞれの距離に基づいて移動局の位置を算出する。このとき、移動局と基地局間の距離は、例えば、移動局における電波の発信時刻と基地局における電波の受信時刻に基づいて算出した電波の伝搬時間に基づいて算出したり(TOA(Time of Arrival)方式)、あるいは、各基地局の受信時刻の相対受信時刻を用いて算出する(TDOA(Time Difference of Arrival)方式)。
【0003】
前述のように電波の受信時刻に基づいて電波の伝搬時間を算出する場合には、移動局の有する時計と基地局の有する時計とが正確に一致している必要がある。また、電波の受信時刻の相対的な時間差を算出する場合には、各基地局の有する時計がそれぞれ正確に一致している必要がある。逆に言えば、電波は光速c(=約3.0×10m/s)の速度で進むことから、例えば前述の電波の伝搬時間を算出する場合において、移動局の有する時計と基地局の有する時計とが1μ(10−6)秒だけずれているだけで、移動局と基地局との距離dは約300mの誤差となって現れる。
【0004】
しかしながら、基地局と移動局とで、マイクロ秒以下、あるいはナノ(10−9)秒単位で正確に一致した時計を用意することは実用的には困難であり、また、基地局や移動局で情報処理に使用するプロセッサのクロック速度においても必ずしも正確に一致しているとは言えない。そのため、電波の受信時刻を検出することにより移動局と基地局との距離を算出し、移動局の位置の検出を行なう場合には、これらにより生ずる測位誤差は避けることができないものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−359143号公報
【特許文献2】特開2002−152798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる測位誤差を低減し、基地局の位置をより正確に検出するために、移動局と基地局との距離を測定する方法によって検出された移動局の位置を、他の情報に基づいて補正する技術が有効である。
【0007】
本発明者等は、以上の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、移動局と基地局との距離関連値に基づいて移動局の位置を算出するとともに、前記移動局と基地局との距離関連値よりも正確に測定される移動局間の距離を測定し、この移動局間距離に基づいて前記移動局の位置を補正することにより、移動局の位置の算出をより正確に行なうことができるという点を見いだした。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、移動局と基地局との距離関連値に基づいて移動局の位置を算出するとともに、前記移動局と基地局との距離関連値よりも正確に測定される移動局間の距離を測定し、この移動局間距離に基づいて前記移動局の位置を補正する移動局測位システムであって、前記補正の際には各移動局の存在確率を考慮した補正を行なうことにより、精度のよい前記移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムを提供することにある。
【0009】
なお、前記特許文献1および特許文献2には、それぞれ、移動局間の距離を測定することにより、移動局の位置の検出を行なう技術が開示されている。しかしながら、これらの技術はいずれも、既知の移動局位置と移動局間の距離とに基づいて位置が既知でない移動局の位置を算出する技術に関するものであって、本発明の第1の測距手段に対応するものであり、すでに算出された移動局位置の補正のために移動局間の距離を算出し利用する本発明とは考え方を異にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)電波を発信する発信部を有し所定の移動可能領域を移動可能な複数の移動局と、該複数の移動局によって発信された電波を受信する受信部と、該受信部が受信した電波に基づいて前記複数の移動局との距離に関連する距離関連値をそれぞれ測定する第1の測距部とを有し、既知の位置に固定された複数の基地局と、該第1の測距部によって測定された距離関連値に基づいて前記複数の移動局のそれぞれの位置を測位する測位部を有する測位サーバと、を有する移動局測位システムにおいて、(b)前記測位部による測位結果に基づいて算出された前記移動局の位置と、該移動局の位置に対応して前記測位部による移動局の位置の算出における精度の劣化を表す値である精度劣化値と、前記移動局測位システムにおける測位誤差とに基づいて、前記移動可能領域における前記移動局の位置に対する存在確率分布を前記複数の移動局のそれぞれに対し算出する存在確率算出部と、(c)前記第1の測距部よりも高い測距精度を有し、前記複数の移動局間の距離を測定する第2の測距部と、(d)前記第2の測距部により測定される前記複数の移動局間の距離に基づいて前記複数の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせを抽出する移動局位置抽出部と、(e)前記存在確率算出部において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記複数の移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置選択部と、(f)前記測位部による測位結果である前記複数の移動局位置を、前記移動局位置選択部によって選択された移動局の位置の組み合わせとなるように補正する移動局位置補正部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記移動局は、前記第2の測距部を有し、(b)前記第2の測距部による測距の結果は、前記発信部によって発信される電波を介して前記移動局位置抽出部に伝達されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、前記測位サーバは、前記存在確率算出部、前記移動局位置抽出部、移動局位置選択部及び前記移動局位置補正部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、前記第2の測距部は、音波、赤外線、受信した電波の電界強度のうち少なくとも1つを用いて測距を行なうことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記第2の測距部は、前記複数の移動局のうち、位置の補正を実行させるための1の移動局である特定移動局と、前記特定移動局以外の1の移動局である第2の移動局との距離を測距することを特徴とする。
【0015】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、相対的に存在する確率の高い前記移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置詳細選択部を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記存在確率算出部は、前記測位部により算出された移動局の位置を中心値とし、また、前記精度劣化値と前記測位誤差とを乗算することにより得られる値を標準偏差とする正規分布により移動局の位置に対する存在確率分布を算出し、(b)前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、前記存在確率算出部によって算出された存在確率分布における標準偏差の最も高い移動局の位置を含む前記移動局の位置の組み合わせを選択することを特徴とする。
【0017】
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、該移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動履歴に基づいて、前記移動局の位置の組み合わせを選択することを特徴とする。
【0018】
また、請求項9にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前における前記移動局の位置に関する情報であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項10にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動に関する情報であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項11にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記第2の測距部は、前記特定移動局と、前記複数の移動局のうち前記特定移動局および前記第2の移動局以外の移動局である第3の移動局との距離を測距し、(b)前記移動局位置抽出部は、前記第2の測距部により測定される前記特定移動局と前記第3の移動局との間の距離に基づいて前記特定移動局および前記第3の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせを抽出し、(c)前記移動局位置選択部は、前記存在確率算出部において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせを選択するものであり、(d)前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置を考慮して前記特定移動局の位置を選択することを特徴とする。
【0021】
また、請求項12にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかから所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局の位置として選択することを特徴とする。
【0022】
また、請求項13にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置詳細選択部は、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、該所定の距離内に存在する特定移動局の位置の平均を前記特定移動局の位置として選択することを特徴とする。
【0023】
また、請求項14にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置詳細選択部は、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、前記第2の移動局および前記第3の移動局のうち、前記存在確率算出部により存在確率分布を算出する際に用いた標準偏差が小さい移動局および前記特定移動局の組み合わせとして選択された特定移動局の位置であって、前記所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局の位置として選択することを特徴とする。
【0024】
また、請求項15にかかる発明の要旨とするところは、前記第3の移動局は、前記特定移動局および前記第2の移動局のそれぞれから所定の距離以上離れており、かつ前記特定移動局と前記第2の移動局とを結ぶ直線上に存在しないものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1にかかる移動局測位システムによれば、前記測位部により、前記第1の測距部によって測定された前記複数の移動局と前記複数の基地局とのそれぞれの距離に関連する距離関連値に基づいて、前記複数の移動局の位置が算出され、前記存在確率算出部により、前記測位部による測位結果に基づいて算出された前記移動局の位置と、該移動局の位置に対応して前記測位部による移動局の位置の算出における精度の劣化を表す値である精度劣化値と、前記移動局測位システムにおける測位誤差とに基づいて、前記移動可能領域における前記移動局の位置に対する存在確率分布が前記複数の移動局のそれぞれに対し算出され、前記第1の測距部よりも高い測距精度を有する第2の測距部により、前記複数の移動局間の距離が測定され、前記移動局位置抽出部により、前記第2の測距部により測定される前記複数の移動局間の距離に基づいて前記複数の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせが抽出され、前記移動局位置選択部により、前記存在確率算出部において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値が算出されるとともに、最も確率評価値が高い前記複数の移動局の位置の組み合わせが選択され、前記移動局位置補正部により、前記測位部による測位結果である前記複数の移動局位置が、前記移動局位置選択部によって選択された移動局の位置の組み合わせとなるように補正されるので、前記移動局のそれぞれについて算出される、移動局の位置に対する存在確率分布は、該移動局の位置に対応して前記測位部による移動局の位置の算出における精度の劣化を表す値である精度劣化値と、前記移動局測位システムにおける測位誤差とに基づくものとなり、ひいては、前記移動局位置抽出部により抽出された前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値も前記精度劣化値を考慮したものとなる。すなわち、測位部によって移動局の位置が算出された際の精度を考慮して、移動局の位置の補正を行なうことができ、正確な移動局の位置の算出が可能となる。
【0026】
請求項2にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局は、前記第2の測距部を有し、前記第2の測距部による測距の結果は、前記発信部によって発信される電波を介して前記移動局位置抽出部に伝達されるので、移動局間の距離は移動局によって測定されることができる。
【0027】
請求項3にかかる移動局測位システムによれば、前記測位サーバは、前記存在確率算出部、前記移動局位置抽出部、移動局位置選択部及び前記移動局位置補正部とを有するので、移動局の位置の算出およびその補正に関する演算処理を測位サーバにおいて集約することができる。
【0028】
請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記第2の測距部は、音波、赤外線、受信した電波の電界強度のうち少なくとも1つを用いて測距を行なうので、移動局間の距離を精度よく測定することができる。
【0029】
請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記第2の測距部は、前記複数の移動局のうち、位置の補正を実行させるための1の移動局である特定移動局と、前記特定移動局以外の1の移動局である第2の移動局との距離を測距するので、前記特定移動局と前記第2の移動局との距離が精度よく測定される。
【0030】
請求項6にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、相対的に存在する確率の高い前記移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置詳細選択部を有するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、相対的に存在する確率のより高い移動局の位置の組み合わせが選択される。
【0031】
請求項7にかかる移動局測位システムによれば、前記存在確率算出部は、前記測位部により算出された移動局の位置を中心値とし、また、前記精度劣化値と前記測位誤差とを乗算することにより得られる値を標準偏差とする正規分布により移動局の位置に対する存在確率分布を算出し、前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、前記存在確率算出部によって算出された存在確率分布における標準偏差の最も高い移動局の位置を含む前記移動局の位置の組み合わせを選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、存在確率分布に基づいて移動局の位置の組み合わせが選択される。
【0032】
請求項8にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、該移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動履歴に基づいて、前記移動局の位置の組み合わせを選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、移動局の移動履歴に基づいて移動局の位置の組み合わせが選択される。
【0033】
請求項9にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前における前記移動局の位置に関する情報であるので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、移動局の過去の存在位置に基づいて移動局の位置の組み合わせが選択される。
【0034】
請求項10にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動に関する情報であるので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、移動局の移動に関する情報に基づいて移動局の位置の組み合わせが選択される。
【0035】
請求項11にかかる移動局測位システムによれば、前記第2の測距部は、前記特定移動局と、前記複数の移動局のうち前記特定移動局および前記第2の移動局以外の移動局である第3の移動局との距離を測距し、前記移動局位置抽出部は、前記第2の測距部により測定される前記特定移動局と前記第3の移動局との間の距離に基づいて前記特定移動局および前記第3の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせを抽出し、前記移動局位置選択部は、前記存在確率算出部において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせを選択し、前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置を考慮して前記特定移動局の位置を選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部において、前記移動局位置選択部により前記特定移動局と前記第3の移動局との位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置を考慮して前記特定移動局の位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0036】
請求項12にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかから所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局の位置として選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部において、前記移動局位置選択部により前記特定移動局と前記第3の移動局との位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置を考慮して前記特定移動局の位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0037】
請求項13にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置詳細選択部は、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、該所定の距離内に存在する特定移動局の位置の平均を前記特定移動局の位置として選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部において、前記移動局位置選択部により前記特定移動局と前記第3の移動局との位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置を考慮して前記特定移動局の位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0038】
請求項14にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置詳細選択部は、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、前記第2の移動局および前記第3の移動局のうち、前記存在確率算出部により存在確率分布を算出する際に用いた標準偏差が小さい移動局および前記特定移動局の組み合わせとして選択された特定移動局の位置であって、前記所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局の位置として選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部において、前記移動局位置選択部により前記特定移動局と前記第3の移動局との位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置と、前記第3の移動局および前記第2の移動局のそれぞれの位置に対する前記標準偏差とを考慮して前記特定移動局の位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0039】
請求項15にかかる移動局測位システムによれば、前記第3の移動局は、前記特定移動局および前記第2の移動局のそれぞれから所定の距離以上離れており、かつ前記特定移動局と前記第2の移動局とを結ぶ直線上に存在しないものであるので、前記移動局位置詳細選択部における前記特定移動局の位置の選択が正確に行なわれるように、前記第3の移動局の選択が行なわれる。
【実施例1】
【0040】
図1は、本発明の測位システム8の構成の一例を示した図である。図1には、平面上の任意の形状に設けられる移動可能領域50として一辺30(m)の正方形状の移動可能領域50が設けられている。また、前記移動可能領域50には、後述する移動局10と無線による通信を行なう機能を有する基地局12として4つの基地局である第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12Dがそれぞれ設けられる。基地局の数としては後述するように電波の伝搬到達時間により移動局の位置を求める場合には、平面上における移動局10の位置の算出のためには少なくとも3個の基地局が必要である。従って、前記移動可能領域のいずれの地点においても、少なくとも移動局が3個の基地局と通信可能となるように基地局が配置されている。また、基地局の数が多いほど移動局の位置の算出は正確に行なうことができる。本図1においては、正方形の移動可能領域50の4隅にそれぞれ第1基地局12A乃至第4基地局12Dが1つずつ配置されており、この要件を満たす。また、前記移動可能領域50内には複数の移動局10が存在し、その移動可能領域50内を移動可能とされている。本図1においては一例として3つの移動局10A、10B、10Cが存在している。また、基地局12と例えば有線ケーブル52により接続されることにより通信可能とされた測位サーバ14が設けられ、前記移動局10によって発信され前記基地局12によって受信された電波に基づいて、前記移動可能領域内における基地局10の位置を算出する。なお、本明細書において、特に個々の移動局10A、10Bを区別しない場合には移動局10と表記し、個々の基地局12A乃至12Dを区別しない場合には基地局12と表記する。
【0041】
このとき、移動可能領域50は、便宜上図2に示すようにx軸およびy軸が定義され、移動可能領域50上の点はこの軸に基づいて座標が規定される。すなわち、第1基地局12Aは座標(0,0)上に、第2基地局12Bは座標(0,30)上に、第3基地局12Cは座標(30,30)上に、第4基地局12Dは座標(30,0)上にそれぞれ配置されている。
【0042】
図3は移動局10の構成の概要を示す機能ブロック線図である。アンテナ部20は電波を送受信するために用いられ、平衡不平衡変換器22はバラン(Balun)であり、送受信切換部24の不平衡線路をアンテナ部20に適合するように平衡線路に変換する。コントローラ401は周知のマイコンおよびその周辺回路からなる制御回路であり、後述の送受信切換部24を制御して移動局10の動作を制御するものである。
【0043】
送受信切換部24は、図3においては移動局10の送信状態と受信状態とを切り換える。すなわち、送受信切換部24が移動局10を送信状態に切り換える場合には、移動局10は送信機として機能させられ、受信状態に切り換える場合には受信機として機能させられる。また、送信アンプ部26は、前記送受信切換部24によって移動局10が送信機として機能させられる場合に、後述する無線部28によって生成された信号波を増幅する。
【0044】
無線部28は、移動局10が送信機として機能させられる場合には、後述する制御部32によって生成される信号を無線通信を行なうための形式に変換し、移動局10が受信機として機能させられる場合には、またアンテナ部20によって受信された受信波から制御部32によって処理されるための信号に変換するものであって、例えばICなどによって実装される。この無線部28は具体的にはコントローラ401からの指令により所定の周波数の搬送波を発生させるPLL回路(phase lock loop)回路、VCO(voltage controlled oscillator)回路及びデジタル変調復調部30などを有し、このデジタル変調復調部30は、制御部32によって生成される信号をデジタル変調、および受信された受信信号の復調を行ない、生成されたデジタルデータを制御部32に出力することにより移動局10と基地局12との間の無線通信がデジタル通信によってなされる。
【0045】
制御部32は、スペクトラム拡散部34、逆拡散処理部341、ベースバンド信号生成復元部36、および拡散符号発生部38などを有し、例えばこれらのブロックを制御し拡散符号を発生する機能を有するゲートアレイやマイコンなどによって実装される。このうち、ベースバンド信号生成復元部36は、移動局10が送信機として機能させられる場合には、伝送したい情報を符号化しベースバンド信号を生成する。また、移動局10または基地局12が受信機として機能させられる場合には、後述する逆拡散処理部341によって復号されたベースバンド信号から、伝送された情報を取りだす。
【0046】
拡散符号発生部38は、後述するスペクトラム拡散部34によってスペクトラム拡散を行なうための拡散符号を発生させる。この拡散符号としては、自己相関関数に高いピークを持つ、すなわち位相差がゼロである場合において自己相関が大きな値となる一方、位相差がゼロでない場合には自己相関が十分に小さく、かつ、符号間における相関が全ての位相差において十分小さい、すなわち相互相関が小さいことという条件を満たす符号列が用いられる。具体的には例えば、M系列符号やGPSにおいても使用されているGold系列符号が用いられる。このGold系列符号は疑似雑音符号(pseudo−noise code;PN信号)とも呼ばれる。
【0047】
スペクトラム拡散部34は、移動局10が送信機として機能させられる場合には、ベースバンド信号生成復元部36において生成されたベースバンド信号を、拡散符号発生部38において発生させられた拡散符号を用いてスペクトラム拡散を行ない、送信のための信号を生成する。具体的には例えば、前記ベースバンド信号と前記拡散符号との排他的論理和を用いる直接拡散(direct spread)方式が用いられる。また、逆拡散処理部341は、移動局10が受信機として機能させられる場合に、前記デジタル変調復調部30によって復調された受信波に対し前記拡散符号を用いてスペクトラム逆拡散を行ない、ベースバンド信号を取りだす。この受信の場合も送信の場合と同じ拡散符号が用いられる。このようなスペクトラム拡散を利用すれば、ある特定の移動局と基地局との通信がある特定の拡散符号を用いて行なわれている場合に、同じ時刻および同じ周波数において他の移動局と基地局との通信が別の拡散符号を用いて行なわれる場合であっても、相互の通信が影響を受けることがない。
【0048】
これらのアンテナ部20、平衡不平衡切換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、制御部32などの電波の発信のためのブロックが発信部および受信部に相当する。
【0049】
第2の測距部に対応する第2測距部70は、例えば音波発信機および音波センサ72を備え、自己の移動局10と、自己以外の他の移動局10との距離を測定すなわち測距する。具体的には例えば、自己の移動局10の前記音波発信機により発信された音波が、前記他の移動局10によって反射され自己の移動局10の前記音波センサによって検出されるまでの時間と、音波の空気中における伝搬速度とに基づいて自己の移動局10と自己以外の他の移動局10との距離が算出される。具体的には、自己の移動局10の前記音波発信機により発信された音波が、前記他の移動局10によって反射され自己の移動局10の前記音波センサによって検出されるまでに要した時間の半分に音波の伝搬速度を乗ずることによって、自己の移動局10と自己以外の他の移動局10との距離が算出される。このとき、音波を好適に反射するために、移動局10は音波発信機及び音波センサ72に加え、図示しない音波反射のための部材を有していてもよい。また音波発信機及び音波センサ72としては、正確な測距を行なうことができるという性質を考慮して、特に超音波発信機及び超音波センサが用いられる。なお、第2測距部70は、前記音波発信機及び音波センサ72に代えて、同程度の距離を正確に測定可能な装置として、赤外線発信機および赤外線センサ、所定の周波数の電波を発信する発信機およびその発信された電波を受信し受信波の強度を算出する電波強度測定装置が用いられてもよい。また、これらの組み合わせによって実現されてもよい。例えば、赤外線発信機と超音波発信機との組み合わせで、赤外線と超音波を同時に送信し、それを別の移動局が検出することにより、赤外線を検出してから、超音波を検出するまでの時間に音波の伝搬速度を乗ずることで距離を算出することができる。また、超音波のみを用いる場合においては、いずれの移動局によって反射された反射波であるかを特定できないことも起り得るが、例えば赤外線発信機および赤外線センサにより移動局を識別するための符号を前記超音波とは別に移動局間で送受信することにより、より確実に移動局間の距離を算出できる。
【0050】
また、電源部40は、上述した送信アンプ26、無線部28、制御部32、時計41などに対し、必要な電力を供給する。時計41は、制御部の動作の指令や、電波の発信時や受信時において参照される時刻情報を供給するもので、例えばリファレンスクロックのようなものである。
【0051】
図4は、基地局12の構成の概要を示す機能ブロック線図である。アンテナ部20、平衡不平衡変換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、制御部32、時計41、電源部40など、符号の共通する機能ブロックについては、その機能についても移動局10と共通するものであるので、説明を省略する。すなわち、基地局12も、上述の移動局10と同様に、送信機(送信部)および受信機(受信部)としての両方の機能を有する。
【0052】
第1の測距部に対応する第1測距部42は、移動局10によって電波が発信された時刻と基地局12がその電波を受信した時刻との時刻の差、すなわち電波の到達に要する時間に基づいて、移動局10と基地局12との距離を測定する。このとき、前記電波の到達に要する時間あるいは移動局10と基地局12との距離が距離関連値に対応する。この第1測距部42は例えばマッチドフィルタを含んで構成され、具体的には例えばレプリカ符号発生部44、遅延回路46および相関計算部50などによって構成される。レプリカ符号発生部44においては、移動局10において、拡散符号発生部38により発生され、スペクトラム拡散部34において用いられた拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号が発生させられる。そして、周知のシフトレジスタにより構成される遅延回路46においては、移動局10によって発信され基地局12によって受信された電波における信号波が入力され、予め定められた複数の所定の間隔ごとに遅延させられる。そして、相関計算部50においては、遅延回路46によって遅延させられた受信波とレプリカ符号との相関値が算出される。この結果、算出された相関値が最大となった際の受信時刻を移動局10からの電波の到来時刻とする。移動局10による送信時刻はベースバンド信号生成復元部36によりベースバンド信号を復元することにより得られるので、電波の到来時刻と送信時刻との時刻差を計算し、電波の速度c(2.997×108(m/s))を乗ずることにより移動局10との距離が算出される。
【0053】
また、基地局12には後述する測位サーバ14との通信を行なうための有線通信部43が設けられ、例えばLANケーブルなどの有線ケーブル52によって接続された測位サーバ14との間で、第1の測距部42によって測定された移動局10との距離である測距データや、ベースバンド信号生成復元部36によって受信波から復号されたベースバンド信号を含むデータや基地局12の動作に関する情報などの送受信が可能とされる。
【0054】
図1に戻って、測位サーバ14は例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより、移動局10の位置の算出すなわち測位を実行する。
【0055】
図5は、測位サーバ14の制御作動を説明する機能ブロック線図である。測位サーバ14は、測位部56、移動局選択部104、存在確率算出部102、移動局位置抽出部106、移動局位置選択部108、移動局位置補正部110、測位結果記憶部112、測位結果出力部60などから構成される。
【0056】
まず、測位部56においては、例えば複数の基地局12によって算出された基地局と移動局との距離に基づいて、移動可能領域50中の移動局10の位置を算出する。具体的には、例えば移動可能領域50が前記図1に示す様な平面である場合において、第1基地局12Aの座標を(x1,y1)、第2基地局12Bの座標を(x2,y2)、第3基地局12Cの座標を(x3,y3)、また、第1基地局12Aが測定した第1基地局12Aと移動局10との距離をr1、第2基地局12Bが測定した第2基地局12Bと移動局10との距離をr2、第3基地局12Cが測定した第2基地局12Cと移動局10との距離をr、とし、移動局の座標を(x,y)、移動局10と基地局12とがそれぞれ有する時計41の時刻のずれに基づく誤差sとすると、図6に示すように、
(x−x12+(y−y12=(r1+s)2
(x−x22+(y−y22=(r2+s)2 (1)
(x−x32+(y−y32=(r3+s)2
で表される関係がある。なお、このとき、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cのそれぞれが有する時計41の時計は例えば後述する方法により同期されており、誤差sは各基地局に共通である。このとき変数はx、yおよびsの3つであり、方程式は上記3つであるから、これらの3つの式を例えばニュートンラフソン法などにより解くことにより、x、yおよびsの値を算出することが可能である。なお、上述のように、第1基地局12A乃至第3基地局12Cのそれぞれが有する測距部42が測定して得られる第1基地局12A乃至第3基地局12Cと移動局10との距離r1、r2、およびr3はそれぞれ、移動局10と基地局12とがそれぞれ有する時計41の時刻のずれに基づく誤差sが考慮されていない、いわゆる疑似距離と呼ばれるものであるが、これらに代えて距離r1、r2、およびr3として、前記時計のずれに基づく誤差sが補正された正確な距離が用いられてもよい。
【0057】
このように移動可能領域50が平面である場合には変数が3つとなることから、少なくとも3つの式があればこれらの変数の値が算出されることになり、これは少なくとも3つの基地局12があれば移動局10の位置の算出が可能であることを意味している。一方、基地局が4つ以上存在する場合には、算出における誤差を最小化する最小二乗法を用いることなどにより、より精度のよい移動局10の位置の算出が可能となる。
【0058】
図7は4つの基地局12の有する時計41を同期させるための手順の一例を示したタイムチャートである。この図において、縦線で表された第1基地局12A乃至第4基地局12Dと測位サーバ14との間を横方向に結ぶ矢印によって各基地局および測位サーバ間の通信の様子が示されている。なお矢印の向きは通信の方向を示しており、矢印の先が向いている機器が受信側である。また、波線で表された矢印は無線による通信を表している。また、図中下向きに時間軸がとられており、下へ行くほど時間の経過を表している。
【0059】
まず時刻t1において、測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、無線通信における空きチャンネルの探索命令がされる。これをうけ、第1基地局12Aはチャンネルスキャンを実行し、発見した空きチャンネルについての情報を時刻t2において測位サーバ14に対し送信する。続いて時刻t3において測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、時刻情報を無線により送信する命令がされる。更に時刻t4乃至時刻t6において、測位サーバ14から前記任意の1の基地局以外の基地局(本図においては第2基地局12B乃至第4基地局12D)のそれぞれに対し、順次時刻情報を無線により受信する命令がされる。続いて時刻t7において、第1基地局12Aから時刻情報、すなわち第1基地局12Aの時計41の時刻情報が無線により送信され、第2基地局12B乃至第4基地局12Dによってこれが無線により受信される。更に時刻t8乃至時刻t10において、第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれが受信した時刻情報、すなわち第1基地局12Aによって発信された発信時の第1基地局の時刻と第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれが受信した時刻とからなる情報が有線通信部43により測位サーバに順次送信される。
【0060】
ここで、各基地局12の位置は既知であることから、前記第1基地局12Aから発信された電波が第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれへ到達するのに要する伝搬時間は予め算出される。従って、第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれについて、受信した時刻と第1基地局12Aが発信した時刻との時間から前記伝搬時間を引いたものが第2基地局12B乃至第4基地局12Dの時計41と第1基地局12Aの時計41との時間ずれとなる。このようにして算出された時間ずれがなくなるように時刻t11乃至時刻t13において第2基地局12B乃至第4基地局12Dの時計41が補正されることにより、各基地局12の時計は同期される。
【0061】
図8は、第1測距部42によって用いられる各基地局12と移動局10との距離rを算出するためのタイムチャートである。この図において、縦線で表された第1基地局12A乃至第4基地局12Dと測位サーバ14および移動局10との間を横方向に結ぶ矢印によって各基地局および測位サーバ間の通信の様子が示されている。なお矢印の向きは通信の方向を示しており、矢印の先が向いている機器が受信側である。また、波線で表された矢印は無線による通信を表している。また、図中下向きに時間軸がとられており、下へ行くほど時間の経過を表している。
【0062】
まず時刻t21において、測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、無線通信における空きチャンネルの探索命令がされる。これをうけ、第1基地局12Aはチャンネルスキャンを実行し、発見した空きチャンネルについての情報を時刻t22において測位サーバ14に対し送信する。続いて時刻t23において測位サーバ14から任意の1の基地局12(本図においては第1基地局12A)に対し、移動局10への時刻情報発信命令を無線により送信させる。この時刻情報送信命令は移動局10に対し時刻情報を無線により送信させるものである。これを受け、時刻t24において、第1基地局12Aは移動局10に対し、時刻情報を無線により送信させる命令を無線により送信する。更に時刻t25乃至時刻t28において、測位サーバ14から全ての基地局(本図においては第1基地局12A乃至第4基地局12D)のそれぞれに対し、順次時刻情報を無線により受信する命令がされる。続いて時刻t29において、移動局10から時刻情報、すなわち移動局10の発信時における時計41の時刻情報が無線により送信され、第1基地局12A乃至第4基地局12Dによってこれが無線により受信される。この受信信号に基づいて各基地局12の測距部42は各基地局12と移動局10との距離を算出し、時刻t30乃至時刻t33において、第1基地局12A乃至第4基地局12Dのそれぞれが算出した基地局12のそれぞれと移動局10との距離rが有線通信部43により測位サーバ14に送信される。
【0063】
このようにして得られた第1基地局12A乃至第4基地局12Dと移動局10との距離r乃至rと、各基地局の位置情報とが前記式(1)に代入され、式(1)がニュートンラフソン法もしくは最小二乗法により解かれる結果、移動局10の位置座標(x,y)が算出される。
【0064】
図5に戻って、移動局選択部104は、例えば操作者の指示に基づいて、精度よく測位結果を補正したい移動局10を選択する。このようにして移動局選択部104において選択された移動局10が特定移動局とされる。本実施例においては第1移動局10Aが特定移動局として選択される。また、測位部56によって実行された測位の結果に基づいて、例えば前記特定移動局10Aに最も近いとされた他の移動局10Bを第2の移動局として選択し、前記第2測距部による測距の対象とする。また、後述する移動局位置詳細選択部109が実行される場合には、前記特定移動局が更に第2の測距部による測距を行なう対象として、第3の移動局を選択する。
【0065】
DOP値算出部101は、前記移動局選択部104によって選択された特定移動局10A、第2の移動局10Bの、前記測位部56によって行なわれた測位の結果に基づいて、それぞれの移動局の位置に対応するDOP値を算出する。このDOP(Dilution of Precision)値は、測位の精度の指標を表す数である精度劣化値の一つである。このDOPは、移動局10と基地局12との間の距離の測定精度すなわち測距精度と、移動局の位置の測定精度すなわち測位精度との関係を表す数であり、
(測距精度)×(DOP値)=(測位精度)
である。このDOP値が小さいほど、正確な測位が実行できている指標となる。この移動局10が平面上を移動する場合には、水平方向の測位精度についてのDOP値であるHDOP(Horizontal DOP)が用いられる。HDOPは次の式で定義される。
【数1】

ここで、(x,y)は第1基地局12Aの座標、(x,y)は第2基地局12Bの座標、(x,y)は第3基地局12Cの座標、rは第1基地局12Aが測定した第1基地局12Aと移動局10との距離、rは第2基地局12Bが測定した第2基地局12Bと移動局10との距離を、rは第3基地局12Cが測定した第3基地局12Cと移動局10との距離であり、(x,y)が算出された移動局10の座標である。すなわち、移動局10の位置が前記測位部56により算出された場合において、その位置ごとに、どれほどの精度により測位が行なわれたのかが示されている。
【0066】
存在確率算出部102は、基地局12に設けられた測位部56によって行なわれた測位の結果に基づいてその測位誤差を算出し、算出された測位誤差と、前記DOP値算出部101によって算出された各移動局10の位置に対応するDOP値に基づいて、移動可能領域50における移動局10の位置とその存在位置に対応する存在確率を算出する。ここで、前記測位誤差としては例えば、既知の位置にある移動局に対し所定回数以上実行された測位結果の標準偏差が用いられ、測位システムに固有のものである。また、前記所定回数とは、少なくとも前記標準偏差を算出するのに十分な回数である。具体的には例えば、存在確率算出部102は、前記測位部56によって測位された移動局10の位置を中心とする正規分布を存在確率とする。
【0067】
図9は、x軸方向についてのみに着目した場合のx軸方向の位置と存在確率との関係を表す図の例である。まず、存在確率算出部102は前述のように予め行なわれた測位結果に基づいて、測位システムの測位誤差としての標準偏差σを算出する。続いてこの測位誤差σsysと前記測位部56による測位結果である位置μに対応するDOP値DOP(μ)とを用いて、存在確率の正規分布における標準偏差σを算出する。このσは、
σ=DOP(μ)×σsys
のように算出される。このように算出されたσを標準偏差とする平均分布f(x)は、測位部56による測位結果μからのずれxと、そのずれxを用いて、具体的に次式数2のように表される。
【数2】

このようにして算出された平均分布f(x)によって表される各位置に対する移動局の存在確率を、縦軸に存在確率を、横軸に測位結果の真値μからのずれをとって描いた図が図9である。図9は、測位部56によりx=−10の位置μに存在すると測位された移動局の、x方向の位置に対する存在確率を表している。このように、測位結果には誤差が発生するので、移動局10の測位が行なわれ移動局の存在する位置のx座標がμであるとされた場合であっても、実際には測位結果μを中心とした範囲において図9において表された確率で移動局10が存在し、必ずしも測位結果μの位置に存在するわけではないのである。
【0068】
また、図9においては、DOP値の違いによる移動局の存在確率の分布の違いを説明するため、DOP値がそれぞれ異なることにより、標準偏差σがそれぞれσ=2,3,4である場合の移動局の存在確率の分布をそれぞれ実線、一点鎖線、破線で示している。前述のように、測位精度が劣る測位システムにおいてはDOP値が大きくなるので標準偏差σも大きくなる。一方、図9によると標準偏差σが大きくなるほど、存在確率の分布を表す曲線は点μにおけるピークが小さくなっており、すなわち、測位部56による測位位置に移動局が存在する確率が小さくなっていることがわかる。
【0069】
移動局位置抽出部106は、第2測距部70によって測定された特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの距離L12に基づいて、移動可能領域50内において前記特定移動局10Aと第2の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせを抽出する。具体的には、特定移動局10Aの第2測距部70を用いて第2の移動局10Bとの距離を測距することにより得られた測距データL12に基づいて、移動可能領域50内において前記特定移動局10Aと第2の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせを抽出する。簡単のため、特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bが直線で規定された移動可能領域50内を移動する場合を例に考えると、特定移動局10Aの座標xと第2の移動局10Bの座標xとの差が距離L12となる組み合わせを全て抽出する。例えば、L12が11であった場合には、特定移動局10Aと第2の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせを、(x,x)=(0,11),(1,12),(2,13),…などのように抽出する。
【0070】
移動局位置選択部108は、移動局位置抽出部106において抽出された特定移動局10Aと第2の移動局10Bとが取り得る位置の組み合わせに対して、測位部56による測位の結果と、存在確率算出部102で算出された各移動局10ごとの存在確率とに基づいて、前記抽出された組み合わせの確率評価値をそれぞれ算出するとともに、算出された組み合わせの確率評価値のうち最も高い確率評価値に対応する組み合わせを選択する。具体的には、まず、前記組み合わせを構成する各移動局について、例えば各移動局の測位結果μと移動局の位置とのずれと、前記存在確率算出部102によって算出される。例えば図9に示すような関係f(x)とに基づいて、その存在確率をそれぞれ算出する。そして、算出された前記組み合わせを構成する特定移動局10Aの存在確率と第2の移動局10Bのそれぞれの存在確率を乗ずることによって得られた数を、前記組み合わせの確率評価値とする。測位部56による前記特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの測位結果が(μ,μ)である場合に、前記特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの位置の組み合わせが(x,x)であるとすると、その場合の各移動局の存在確率を(f,f)、前記組み合わせの確率評価値をfabとすると、fは特定移動局10Aの測位結果からのずれ(μ−x)の関数であるから、f(μ−x)と書き表され、fは同様に第2の移動局10Bの測位結果からのずれf(μ−x)で書き表される。このとき、前記組み合わせの確率評価値は
ab=f(μ−x)×f(μ−x
となる。移動局位置選択部108は、このようにして前記組み合わせの複数について確率評価値fabを算出し、その中で最大の値fab_maxとなった確率評価値に対応する組み合わせ(xa_max,xb_max)を選択する。
【0071】
図10は、この様子を前記直線で規定された移動可能領域50の例で示したものである。図中横軸(x軸)が移動可能領域50を、縦軸が存在確率を表している。測位部56による測位の結果、特定移動局10Aはx=−10の点μに、第2の移動局10Bはx=10の点μに存在すると算出されたとする。これらの測位結果に対して、存在確率算出部102によって算出された測位結果とのずれと存在確率との関係が適用される。図中、特定移動局10Aの存在確率f、第2の移動局10Bの存在確率fとして記載された曲線がそれである。
【0072】
一方、第2測位部70によって測位された特定移動局10Aから第2の移動局10Bまでの距離がL12であったとする。このとき、移動局位置抽出部106によって抽出される特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの組み合わせは、図中A1とB1、A2とB2あるいはA3とB3など、その間隔がL12である組み合わせが無数に抽出される。そして、このようにして抽出された特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの組み合わせのそれぞれについて、その特定移動局10Aの位置に対応する存在確率fと第2の移動局10Bの位置に対応する存在確率fとが算出され、算出されたfとfとが乗ぜられて、前記組み合わせの確率評価値fabがそれぞれ算出される。
【0073】
このようにして算出された各組み合わせに対応する確率評価値fabが比較され、これらのうち最も高い値となるfab_maxとなる組み合わせ(xa_max,xb_max)が選択される。例えば、図10において、特定移動局10AがA5、第2の移動局10BがB5であるときに組み合わせの確率評価値fabが最大となる場合には、特定移動局10AがA5と第2の移動局10BがB5とからなる組み合わせが選択される。
【0074】
ところで、移動局選択部108によって算出された各組み合わせに対応する確率評価値fabを比較した際に、前記最も高い値fab_maxが等しい、もしくは前記最も高い値fab_maxを上限として予め定められた所定の範囲内に他の組み合わせに対応する確率評価値fabが複数存在する場合には、移動局選択部108はこれらの複数の移動局10の組み合わせのうち、いずれの組み合わせを選択するかが問題となる。例えば、図11に示すように、特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの距離がL12’であって、移動局位置抽出部106によって抽出される特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの組み合わせのうち、特定移動局10AがA10であり第2の移動局10BがB10である組み合わせに対応する確率評価値fa10b10と、特定移動局10AがA11であり第2の移動局10BがB11である組み合わせに対応する確率評価値fa11b11とが等しいもしくは予め定められた範囲Δfabに属する、すなわち|fa10b10−fa11b11|<Δfabである場合である。なお、このΔfabの値は、例えばシステムの測位誤差や測距誤差などを考慮して決定される。図5に戻って、移動局位置詳細選択部109は、かかる場合において、これらの複数の組み合わせが存在する確率がより高いと思われる、すなわち確実性のより高い組み合わせを選択する。具体的には例えば、移動局位置詳細選択部109は、(1)各移動局の存在確率を表す分布の標準偏差σが小さい移動局の存在確率が高い組み合わせを選択する、(2)特定移動局の存在確率が高い組み合わせを選択する、(3)特定移動局の位置が、特定移動局の移動履歴に基づいて推定される推定位置に近い組み合わせを選択する、などの方法により移動局の組み合わせを選択する。
【0075】
以下、特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの組み合わせのうち、特定移動局10AがA10、第2の移動局10BがB10である組み合わせと、特定移動局10AがA11であり第2の移動局10BがB11である組み合わせとのそれぞれ対応する確率評価値が等しいもしくは所定の範囲内にある場合を図11を用いて説明する。まず、(1)移動局位置詳細選択部109が、各移動局の存在確率を表す分布の標準偏差σが小さい移動局の存在確率が高い組み合わせを選択する場合には、移動局位置詳細選択部109は特定移動局10Aの存在確率fを算出する際に算出した標準偏差σと、特定移動局10Bの存在確率fを算出する際に算出した標準偏差σとを比較する。そして、比較の結果より小さい標準偏差に対応する移動局を選択し、選択された移動局の存在確率がより高いほうの移動局の組み合わせを選択する。具体的には、図11の例においては、特定移動局10Aの存在確率fを算出する際に算出した標準偏差σと、特定移動局10Bの存在確率fを算出する際に算出した標準偏差σとを比較し、より小さい標準偏差σに対応する移動局として特定移動局10Aを選択する。そして、前記複数の組み合わせにおける特定移動局10Aの位置であるA10およびA11の存在確率を比較し、特定移動局10Aの存在確率がより高いA11を含む移動局の組み合わせである特定移動局10AがA11、第2の移動局10BがB11の組み合わせを選択する。
【0076】
また、(2)移動局位置詳細選択部109は、特定移動局の存在確率が高い組み合わせを選択する場合には、前記複数の移動局の組み合わせのうち、特定移動局の存在確率が最も高い組み合わせを選択する。具体的に図11の例においては、移動局の組み合わせを構成する移動局10Aおよび10Bのうち、特定移動局である10Aの存在確率を比較する。そして、前記複数の組み合わせにおける特定移動局10Aの位置であるA10およびA11の存在確率を比較し、特定移動局10Aの存在確率がより高いA11を含む移動局の組み合わせである特定移動局10AがA11、第2の移動局10BがB11の組み合わせを選択する。
【0077】
また、(3)移動局位置詳細選択部109は、特定移動局の位置が、特定移動局の移動履歴に基づいて推定される推定位置に近い組み合わせを選択する場合には、特定移動局の移動履歴に基づいて現在の特定移動局の位置を推定し、前記複数の移動局の組み合わせのうち、特定移動局の位置が前記推定された位置と近い組み合わせを選択する。具体的には例えば、本発明の移動局測位システムによる移動局の測位がくり返し行なわれる場合において、前記複数の移動局の組み合わせにおける特定移動局の位置が、一回前に行なわれた測位の際の特定移動局の位置に近い特定移動局を含む移動局の組み合わせを選択する。あるいは、例えば、過去に行なわれた複数の測位の際の特定移動局の位置から現在の特定移動局の位置を推定し、前記複数の移動局の組み合わせにおける特定移動局の位置が、前記推定された特定移動局の位置に近い特定移動局を含む移動局の組み合わせを選択する。図11の例においては、例えば、一回前に行なわれた測位の際の特定移動局10Aの位置がA0である場合において、A10とA11のうち、よりA0に近い特定移動局10Aの位置であるA10を含む組み合わせである、特定移動局10AがA10、第2の移動局10BがB10の組み合わせを選択する。また、過去二回行なわれた測位の際の特定移動局10Aの位置がそれぞれA0およびA00である場合において、測位の実行間隔に基づいて特定移動局10Aの移動速度を算出し、算出された移動速度に基づいて現在の特定移動局10Aの位置をApと予想する。そして、この予想された特定移動局10Aの現在の位置Apにより近い特定移動局10Aの位置であるA10を含む組み合わせである、特定移動局10AがA10、第2の移動局10BがB10の組み合わせを選択してもよい。
【0078】
移動局位置補正部110は、測位部56によって測位された各移動局10の位置を、移動局位置選択部108もしくは移動局位置詳細選択部109において選択された移動局の組み合わせを構成する各移動局の位置に補正する。具体的には、図10の例では、測位部56によって測位された測位結果が、特定移動局10Aがμ、第2の移動局が10Bがμであり、移動局位置選択部108によって選択された特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの組み合わせがA5とB5である場合には、特定移動局10Aの位置はμからA5に補正され、第2の移動局10Bの位置はμからB5に補正される。この補正の結果が特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bのそれぞれの測位結果とされる。
【0079】
また、測位結果出力部60は測位結果すなわち算出された移動局10の位置情報を例えば図示しないモニタ装置に出力したり、あるいは他のプログラムに伝達したりする。また、測位結果記憶部112は、前記移動局位置補正部110によって補正された移動局10の測位結果を、過去所定回数分記憶し、移動局10の移動履歴情報とする。
【0080】
図12は、本発明の測位システムの制御作動の概要を説明するためのフローチャートである。まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、基地局12から移動局10に対し、移動局10が有効に作動しているかや、基地局12と移動局10との電波の到達範囲内に移動局10が存在しているかを確認するため移動局の応答を求めて電波の発信が行なわれる。これを受けて自身が正常に作動している移動局10からはその旨の応答が行なわれる。
【0081】
続くSA2においては、SA1における移動局10からの応答が、2以上の移動局からあったか否かが判断される。2以上の移動局からの応答があった場合には、本ステップの判断が肯定され、SA3以降が実行される。一方、1つの移動局から応答があった場合あるいはいずれの移動局からも応答がなかった場合には、本フローチャートの前提となる複数の移動局10が存在していないとして、再度SA1が実行され、複数の移動局が有効に作動するまで一定時間待機が行なわれる。
【0082】
測位部56に対応するSA3においては、SA1において応答した複数の移動局10に対して位置の検出が実行される。すなわち、例えば前述の図8のタイムチャートに示したように、各移動局10から発せられた電波の各基地局12における受信時刻の差が測定され、この各基地局12ごとの受信時刻の差に基づいて、各移動局10の位置が算出される。
【0083】
続く移動局選択部104に対応するSA4においては、SA3において測位された複数の移動局10のうち、操作者が正確な測位を実行したいとする1つの移動局が特定移動局10Aとして選択される。また、特定移動局10Aの第2測距部70により測距の対象となる1つの移動局が第2の移動局10Bとして選択される。この第2の移動局10Bには、SA1において応答した移動局が2つであった場合には、特定移動局10A以外の移動局が自動的に決定される。また、SA1において応答した移動局が3以上であった場合には、例えば、SA3において検出された位置が特定移動局10Aに最も近い移動局が選択される。
【0084】
SA5においては、SA4で特定移動局として選択された移動局10Aについて、SA3における測位結果に基づいてDOP値が算出されるとともに、算出されたDOP値に基づいて、移動可能領域50の各位置に対する特定移動局10Aの存在確率の分布を算出する存在確率算出ルーチンが実行される。
【0085】
図13はこの存在確率算出ルーチンを説明するフローチャートである。DOP値算出部101に対応するSB1においては、SA3において測位された移動局の位置に対応するDOP値が算出される。また、存在確率算出部102に対応するSB2においては、SA3において行なわれた移動局の測位結果と、SB1において算出されたDOP値と、予め算出された測位システムの測位誤差などに基づいて、移動可能領域50の各位置に対する移動局の存在確率の分布が算出される。
【0086】
図12に戻って、同じくDOP値算出部101および存在確率算出部102に対応するSA6においては、SA4で第2の移動局として選択された移動局10Bについて、SA5と同様に例えば図13に示す存在確率算出ルーチンが実行され、移動可能領域50の各位置に対する第2の移動局10Bの存在確率の分布が算出される。
【0087】
特定移動局10Aの第2測距部70に対応するSA7においては、特定移動局10Aから第2の移動局10Bまでの距離L12が測定される。上述のように、第2の測距部70には例えば音波センサ72が設けられており、これを用いた測距が実行され、その測距の結果が、特定移動局10Aから無線通信により基地局12に送信され、更に基地局12とケーブル52で接続された測位サーバに送信される。
【0088】
SA8においては、SA3で選択された特定移動局10Aと第2の移動局10Bの位置の組み合わせが算出され、これらのうち、最も適切な組み合わせが選択する移動局組み合わせ選択ルーチンが実行される。
【0089】
図14はこの移動局組み合わせ選択ルーチンを説明するフローチャートである。移動局位置抽出部106に対応するSC1においては、SA4において測定された特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの距離に基づいて、移動可能領域50において想定される特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの位置の組み合わせを抽出する。
【0090】
移動局位置選択部108に対応するSC2においては、SC1において抽出された移動局の組み合わせのそれぞれに対し、その組み合わせにおける各移動局についてSA5およびSA6において算出された存在確率に基づいて、その組み合わせが存在する確率を評価する確率評価値を算出し、算出された確率評価値が最も高い組み合わせを選択する。
【0091】
図12に戻って、SA9においては、SA8において最も高い確率評価値と同じもしくは所定の範囲Δf内となった組み合わせが他にあるか否かが判断される。そして、このような組み合わせが他になかった場合には、本判断が否定され、SA10が実行される。一方、最も高い確率評価値と同じもしくは所定の範囲Δf内となった組み合わせが他にある場合には、本判断が肯定されSA11が実行される。
【0092】
SA10においては、最も高い確率評価値と同じもしくは所定の範囲Δfとなった組み合わせが他になく、SA8において選択された組み合わせがそのまま選択される。
【0093】
移動局位置詳細選択部109に対応するSA11においては、最も高い確率評価値と同じもしくは所定の範囲Δfab内にある複数の移動局の組み合わせのうち、いずれを移動局の組み合わせとして選択するか決定する詳細選択ルーチンが実行される。
【0094】
図15乃至17はそれぞれ、この詳細選択ルーチンを説明するフローチャートであって、いずれも移動局位置詳細選択部109に対応するものである。まず、図15は、各移動局の存在確率を表す分布の標準偏差σが小さい移動局の存在確率が高い組み合わせを選択する場合に対応するものであって、SD1においては、移動局の組み合わせを構成する各移動局、すなわち特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bのそれぞれの標準偏差の値が算出され、比較される。SD2においては、SA8において複数選択された組み合わせにおいて、SD1において行なわれた比較の結果、より小さい標準偏差を有する移動局の存在確率が比較され、最も高い存在確率を有する移動局位置を含む組み合わせが選択される。
【0095】
図16は、特定移動局の存在確率が高い組み合わせを選択する場合に対応するものであって、SE1においては、SA8において複数選択された組み合わせのそれぞれについて、SA3において選択された特定移動局10Aの存在確率が比較される。そして、SE2においては、SE1における比較の結果、特定移動局10Aの存在確率が最も高い位置を含む組み合わせが選択される。
【0096】
図17は、特定移動局の位置が、特定移動局の移動履歴に基づいて推定される推定位置に近い組み合わせを選択する場合に対応するものであって、SF1においては、特定移動局の移動履歴に基づいて特定移動局の推定位置が推定される。この推定位置としては具体的には例えば図12のフローチャートがくり返し実行される場合には、前回の実行時の特定移動局の位置とされたり、あるいは、過去2回以上の実行時の特定移動局の位置から特定移動局の移動速度や移動加速度を算出し、これらに基づいて推定される現在の特定移動局の位置とされる。そして、SF2においては、SF1において推定された特定移動局の推定位置と最も近い位置にある特定移動局の位置を含む組み合わせが選択される。
【0097】
図12に戻って、移動局位置補正部110、測位結果出力部60、測位結果記憶部112などに対応するSA12においては、SA10もしくは11において測位された各移動局の位置が、SA10もしくは11において選択された移動局の組み合わせにおけるそれぞれの移動局の位置となるように補正され、各移動局の位置とされる。また、必要に応じて補正後の各移動局の位置がディスプレイ装置などに出力されたり、あるいは記憶装置に記憶される。
【0098】
なお、前述の実施例においては、移動局位置詳細選択部109(SA9乃至SA11)がない場合であっても一定の効果を生ずるものである。
【0099】
前述の実施例によれば、前記測位部56により、前記第1の測距部42によって測定された前記複数の移動局10と前記複数の基地局12とのそれぞれの距離に関連する距離関連値である、移動局10が発信する電波が各基地局に受信される受信時刻に基づいて、前記複数の移動局10の位置が算出され、前記存在確率算出部102により、前記測位部56による測位結果に基づいて算出された前記移動局10の位置と、該移動局10の位置に対応して前記測位部56による移動局10の位置の算出における精度の劣化を表す値であるDOP値と、前記移動局測位システム8における測位誤差とに基づいて算出された標準偏差σを用いて、前記移動可能領域50における前記移動局10の位置に対する存在確率分布fが前記複数の移動局10のそれぞれに対し算出され、前記第1の測距部42よりも高い測距精度を有する第2の測距部70により、前記複数の移動局10間の距離Lが測定され、前記移動局位置抽出部106により、前記第2の測距部70により測定される前記複数の移動局10間の距離Lに基づいて前記複数の移動局10の前記移動可能領域50内における位置の組み合わせが抽出され、前記移動局位置選択部108により、前記存在確率算出部102において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部106により抽出された前記複数の移動局10の位置の組み合わせに対応する確率評価値が算出されるとともに、最も確率評価値が高い前記複数の移動局10の位置の組み合わせが選択され、前記移動局位置補正部110により、前記測位部56による測位結果である前記複数の移動局10の位置が、前記移動局位置選択部108によって選択された移動局10の位置の組み合わせとなるように補正されるので、前記移動局10のそれぞれについて算出される移動局10の位置に対する存在確率分布は、該移動局10の位置に対応して前記測位部56による移動局10の位置の算出における精度の劣化を表す値であるDOP値と、前記移動局測位システム8における測位誤差とに基づくものとなり、ひいては、前記移動局位置抽出部106により抽出された前記複数の移動局10の位置の組み合わせに対応する確率評価値も前記DOP値を考慮したものとなる。すなわち、測位部56によって移動局10の位置が算出された際の精度を考慮して、移動局10の位置の補正を行なうことができ、正確な移動局の位置の算出が可能となる。
【0100】
また、前述の実施例によれば、前記移動局10は、前記第2の測距部70を有し、前記第2の測距部70による測距の結果は、前記発信部によって発信される電波を介して前記移動局位置抽出部106に伝達されるので、移動局10間の距離は移動局10によって測定されることができる。
【0101】
また、前述の実施例によれば、前記測位サーバ14は、前記存在確率算出部102、前記移動局位置抽出部106、移動局位置選択部108及び前記移動局位置補正部110とを有するので、移動局10の位置の算出およびその補正に関する演算処理を測位サーバ14において集約することができる。
【0102】
また、前述の実施例によれば、前記第2の測距部70は、音波、赤外線、受信した電波の電界強度のうち少なくとも1つを用いて測距を行なうので、移動局10間の距離を精度よく測定することができる。
【0103】
また、前述の実施例によれば、前記第2の測距部70は、前記複数の移動局10のうち、位置の補正を実行させるための1の移動局10である特定移動局10Aと、前記特定移動局10A以外の1の移動局である第2の移動局10Bとの距離を測距するので、前記特定移動局10Aと前記第2の移動局10Bとの距離が精度よく測定される。
【0104】
また、前述の実施例によれば、前記移動局位置選択部108は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記移動局10の位置の組み合わせが複数存在する場合において、相対的に存在する確率のより高い前記移動局10の位置の組み合わせを選択する移動局位置詳細選択部109を有するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、相対的に存在する確率のより高い移動局10の位置の組み合わせが選択される。
【0105】
また、前述の実施例によれば、前記存在確率算出部102は、前記測位部56により算出された移動局10の位置を中心値とし、また、前記DOP値と前記測位誤差とを乗算することにより得られる値を標準偏差σとする正規分布により移動局10の位置に対する存在確率分布を算出し、前記移動局位置詳細選択部109は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局10の位置の組み合わせが存在する場合には、前記存在確率算出部102によって算出された存在確率分布における標準偏差の最も高い移動局の位置を含む前記移動局10の位置の組み合わせを選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局10の位置の組み合わせが複数存在する場合において、存在確率分布に基づいて移動局10の位置の組み合わせが選択される。
【0106】
また、前述の実施例によれば、前記移動局位置詳細選択部109は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局10の位置の組み合わせが存在する場合には、該移動局位置選択部108の実行前までにおける前記移動局10の移動履歴に基づいて、前記移動局10の位置の組み合わせを選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局10の位置の組み合わせが複数存在する場合において、移動局10の移動履歴に基づいて移動局10の位置の組み合わせが選択される。
【0107】
また、前述の実施例によれば、前記移動局10の移動履歴は、前記移動局位置選択部108の実行前における前記移動局10の位置に関する情報であるので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局10の位置の組み合わせが複数存在する場合において、移動局の過去の存在位置に基づいて移動局10の位置の組み合わせが選択される。
【0108】
また、前述の実施例によれば、前記移動局10の移動履歴は、前記移動局位置選択部108の実行前までにおける前記移動局10の移動に関する情報であるので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局10の位置の組み合わせが複数存在する場合において、移動局10の移動に関する情報に基づいて移動局10の位置の組み合わせが選択される。
【0109】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0110】
図18は、本発明の別の実施例における別の方法による移動局の位置の組み合わせの選択を説明するための図であって、図10に対応する図である。前述の実施例1においては、説明の簡単のため移動可能領域50を直線であると仮定したが、2次元平面もしくは3次元空間として設定された移動可能領域50を移動局10が移動する場合には、移動局の位置の組み合わせの選択はより複雑なものとなる。すなわち、図18は移動可能領域50が平面で設けられる場合において、この移動可能領域50を上方からみた図である。このとき、先の実施例1において図10のように表された各移動局10の存在確率は、確率の等しい点を連ねると、測位部56によって移動局の位置とされた点μおよびμを中心として等高線状に重なった円のように分布する。また、図10においては曲線の凸形状の鋭さとして現れていた標準偏差σは、本図18においては、等高線状に表される存在確率の線の間隔となって現れる。すなわち、標準偏差σが小さいほど存在確率を表す円の間隔が狭くなっている。
【0111】
上述のように、各移動局10の存在確率が同心円状に分布する場合には、測位部56によって特定移動局10Aの位置がμ、第2の移動局10Bの位置がμと測位される一方、第2測位部70によって特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの距離がL12であると測定された場合に、前記移動局位置抽出部106により抽出された特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの組み合わせのうち、前記移動局位置選択部108によってその確率評価値fabが最も高いとされる組み合わせが選択されると、図18のA1とB1との組み合わせとA2とB2との組み合わせのように、測位部56によって特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの位置として測位された位置であるμおよびμ(すなわち、複数の同心円状に表された特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの存在確率の分布のそれぞれの中心点)を通過する直線に対して対称の位置に1対存在する。このように、移動可能領域50が2次元平面や3次元空間で定義される場合には、前記確率評価値が同一となる移動局の位置の組み合わせが複数存在することが考えられる。
【0112】
そこで本実施例においては、移動局測位システム8は、前記移動局位置選択部108が前記最も高い確率評価値を有する移動局の位置の組み合わせを選択した際に、その最も高い確率評価値と等しい、あるいは最も高いものと所定の範囲内の値である他の組み合わせが存在する場合には、前述の実施例1の作動に代えて、次の作動を行なうことにより前記移動局10の位置の組み合わせの選択を行なう。
【0113】
すなわち、まず、移動局選択部104は、前記測位部56によって行なわれた測位結果に基づいて3つ以上の移動局10が存在するかを判断し、3つ以上の移動局10が存在する場合には、前記特定移動局10Aとの組み合わせを選択するのに適した第3の移動局を、前記複数の移動局10のうち前記特定移動局とされた移動局10Aおよび前記第2の移動局とされた移動局10B以外の移動局から選択する。ここで、前記特定移動局10Aとの組み合わせを選択するのに適した第3の移動局としては、具体的には例えば、前記第2の移動局10Bとは一定の間隔をおいて存在し、かつ、測位部56によって特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの位置として測位された位置であるμおよびμとを通過する直線上に存在しない移動局が選択される。これは、後述する移動局位置選択部108により前記特定移動局10Aおよび移動局選択部104により選択された第3の移動局の位置の組み合わせを選択し、特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの位置の組み合わせが選択されることによって選択される特定移動局10Aの位置と、特定移動局10Aおよび第3の移動局の位置の組み合わせが選択されることによって選択される特定移動局10Aの位置とを比較するが、その際に両者が同じような位置とならないためである。例えば、図18の例においては、測位部56によって位置μに存在すると測位された移動局10Cが第3の移動局として選択される。
【0114】
特定移動局10Aの第2の測距部70は、例えば前記音波発信機及び音波センサ72を用いて、前記特定移動局10Aと移動局選択部104によって選択された第3の移動局10Cとの距離を測定する。
【0115】
DOP値算出部101は前記移動局選択部104によって選択された第3の移動局10Cが存在する位置μに対応するDOP値を前述の実施例1と同様の方法により算出する。また、存在確率算出部102は、前述の実施例1において特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bについて行なったのと同様にして、前述のμに対応するDOP値および測位システムの測位誤差などに基づいて第3の移動局10Cの移動可能領域50の各位置に対する存在確率fを算出する。図18においては、この第3の移動局10Cの位置に対する存在確率fは、前記点μを中心とした複数の同心円で表されており、特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bと同様、円の中心に近づくほど存在確率が高いことを表している。
【0116】
移動局位置抽出部106は、第2測距部70によって測定された特定移動局10Aと第3の移動局10Cとの距離L13に基づいて、移動可能領域50内において前記特定移動局10Aと第3の移動局10Cとが取り得る位置の組み合わせを抽出する。すなわち、前述の実施例1と同様、特定移動局10Aに対し、第2測距部70を用いて第3の移動局10Cとの距離を測距させることにより得られた測距データL13に基づいて、移動可能領域50内において前記特定移動局10Aと第3の移動局10Cとが取り得る位置の組み合わせを抽出する。
【0117】
移動局位置選択部108は、前記移動局位置抽出部106において抽出された特定移動局10Aと第3の移動局10Cとが取り得る位置の組み合わせに対して、測位部56による測位の結果と、存在確率算出部102で算出された特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cのそれぞれの存在確率に基づいて、前記抽出された組み合わせの確率評価値をそれぞれ算出するとともに、算出された組み合わせの確率評価値のうち最も高い確率評価値に対応する組み合わせを選択する。すなわち、前述の実施例1において特定移動局10Aと第2の移動局10Bについて行なったのと同様に、特定移動局10Aと第3の移動局10Cとの組み合わせのそれぞれについて確率評価値facを算出し、その中で最大の値fac_maxとなった確率評価値に対応する組み合わせを選択する。図18においては、特定移動局10Aの位置と第3の移動局10Cの位置との組み合わせとして、A1’とC1との組み合わせが選択されている。
【0118】
移動局位置詳細選択部109は、前記移動局位置選択部108によって第3の移動局10Cとの組み合わせが選択されることによって選択された特定移動局10Aの位置A1’と、前記特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの組み合わせから移動局位置選択部108により選択された確率評価値が最も高いあるいは最も高い値と所定の範囲内にある複数の組み合わせに対応する特定移動局10Aの複数の位置A1およびA2とを比較し、前記A1’との距離が最も短いA1を含む組み合わせであるA1とB1との組み合わせを、前記特定移動局10Aと第2移動局10Bとの組み合わせであると選択する。
【0119】
なお、移動局位置詳細選択部109は、前述のように、前記第3の移動局10Cとの組み合わせによって選択された特定移動局10Aの位置A1’を考慮して、前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された特定移動局10Aの位置A1を選択した。このとき、前記特定移動局10Aの位置A1’と位置A1とが一致している場合には、移動局位置詳細選択部109は位置A1を特定移動局10Aの位置であるとする。一方、前記特定移動局10Aの位置A1’と位置A1とが一致しない場合も考えられる。この場合、移動局位置詳細選択部109は、(1)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1を移動局の位置とする、(2)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1と、前記第3の移動局10Cとの組み合わせによって選択されたA1’との位置の平均をとり、その位置の平均を移動局の位置とする、(3)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1と、前記第3の移動局10Cとの組み合わせによって選択されたA1’とのうち、特定移動局10Aの組み合わせの相手である前記第2移動局10Bおよび前記第3移動局10Cについて前記存在確率算出部102において存在確率分布を算出する際に算出した標準偏差σがより小さい移動局との組み合わせによって選択された特定移動局の位置を特定移動局10Aの位置とする、のいずれかを実行する。このうち、特に(2)あるいは(3)が実行される場合には、前記特定移動局10Aとそれぞれ異なる移動局である第2の移動局10Bおよび第3の移動局10Cとの組み合わせによる移動局の組み合わせの選択結果を用いて特定移動局10Aの位置が補正されるので、特定移動局10Aの位置がより正確に検出される。
【0120】
なお、移動局位置選択部108によって算出された前記特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cの各組み合わせに対応する確率評価値facを比較した際に、前記最も高い値fac_maxが等しい、もしくは前記最も高い値fac_maxを上限として予め定められた所定の範囲内に他の組み合わせに対応する確率評価値facが複数存在する場合には、移動局位置選択部108はこれらの複数の前記特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cの組み合わせを複数選択する。そして、移動局位置詳細選択部109は、特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの組み合わせが複数選択されることによって選択された複数の特定移動局10Aの位置Aのそれぞれと、特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cの組み合わせが複数選択されることによって選択された複数の特定移動局10Aの位置A’のそれぞれとの間の距離をそれぞれ算出し、その距離が最も短くなる場合の特定移動局10Aの位置AおよびA’を特定し、前述と同様の方法により特定移動局10Aの位置を決定することができる。
【0121】
図19はこの時の様子を具体的に説明するための一例を表したものである。すなわち図19においては、移動局位置選択部108によって、特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの位置の組み合わせのうち、その確率評価値が最も高い組み合わせとしてA1およびB1の組み合わせとA2およびB2の組み合わせとの両方が選択されている一方、特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cとの位置の組み合わせのうち、その確率評価値が最も高い組み合わせとしてA1’およびC1の組み合わせとA’2およびC2の組み合わせとの両方が選択されている。
【0122】
このとき、移動局位置詳細選択部109は、特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの組み合わせが複数選択されることによって選択された複数の特定移動局10Aの位置であるA1およびA2のそれぞれと、特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cの組み合わせが複数選択されることによって選択された複数の特定移動局10Aの位置であるA1’およびA’2のそれぞれとの間の距離をそれぞれ算出し、その距離が最も短くなる場合の特定移動局10Aの位置をA1およびA1’であると特定する。そして、前述と同様の方法に、A1およびA1’が一致する場合には、特定移動局10Aの位置をA1と決定し、また、位置A1’と位置A1とが一致しない場合には、(1)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1を移動局の位置とする、(2)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1と、前記第3の移動局10Cとの組み合わせによって選択されたA1’との位置の平均をとり、その位置の平均を移動局の位置とする、(3)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1と、前記第3の移動局10Cとの組み合わせによって選択されたA1’とのうち、特定移動局10Aの組み合わせの相手である前記第2移動局10Bおよび前記第3移動局10Cについて前記存在確率算出部102において存在確率分布を算出する際に算出した標準偏差σがより小さい移動局との組み合わせによって選択された特定移動局の位置を特定移動局10Aの位置とする、のいずれかにより特定移動局10Aの位置を決定する。
【0123】
図20は、本発明の移動局測位システムの本実施例における制御作動の概要を説明するフローチャートである。本フローチャートは、前述の実施例1を説明する図12のフローチャートのステップSA11において実行される詳細選択ルーチンであって、実施例1の図15乃至図17に代えて実行されるものである。
【0124】
ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SG1においては、SA1において基地局が発信したことに対応してSA2において3以上の移動局が応答をしたか否かが判断される。そして、3以上の移動局が応答していた場合には、本ステップの判断が肯定され、本実施例2に対応するSG2乃至SG6が実行される。一方、所定回数の基地局から移動局への発信および一定時間の待機後、2以下の移動局しか応答していなかった場合には、本ステップの判断が否定され、SG7が実行される。SG7においては、本実施例2の方法は実行することができないため、実施例1の方法、たとえば図15乃至図17のフローチャートに対応する方法などにより移動局の組み合わせの選択が行なわれる。
【0125】
移動局選択部104に対応するSG2においては、SA2で反応があった3以上の移動局のうち、前記特定移動局10Aおよび第2の移動局10B以外の移動局から第3の移動局10Cが選択される。前述のように、このとき、第3の移動局としては、前記第2の移動局10Bと予め定められた距離以上離れた位置にあり、かつ、前記特定移動局10Aと第2の移動局10Bとを通る直線上にない移動局が選ばれる。
【0126】
DOP値算出部101および存在確率算出部102に対応するSG3においては、SG2で特定移動局として選択された移動局10Aについて、SA5と同様に例えば図13に示す存在確率算出ルーチンが実行され、移動可能領域50の各位置に対する第3の移動局10Cの存在確率の分布が算出される。
【0127】
特定移動局10Aの第2測距部70に対応するSG4においては、特定移動局10Aから第3の移動局10Cまでの距離L13が測定される。上述のように、第2の測距部70には例えば音波センサ72が設けられており、これを用いた測距が実行され、その測距の結果が、特定移動局10Aから無線通信により基地局12に送信され、更に基地局12とケーブル52で接続された測位サーバに送信される。
【0128】
SG5においては、特定移動局10AとSG2で選択された第3の移動局10Cの位置の組み合わせが算出され、これらのうち、最も適切な組み合わせを選択する。たとえば図14に示すような移動局組み合わせ選択ルーチンが実行される。
【0129】
移動局位置詳細選択部109に対応するSG6においては、SA8において複数選択された特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの組み合わせにおける特定移動局10Aの複数の位置Aと、SG5において選択された特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cの組み合わせにおける特定移動局10Aの位置A’とに基づいて、特定移動局10Aの位置が決定される。具体的には、SA8において複数選択された特定移動局10Aおよび第2の移動局10Bの組み合わせにおける特定移動局10Aの複数の位置Aのうち、SG5において選択された特定移動局10Aおよび第3の移動局10Cの組み合わせにおける特定移動局10Aの位置A’との距離が最も短くなるものが選択される。また、選択された特定移動局10Aの位置に対して、(1)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1が移動局の位置とされる、(2)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1と、前記第3の移動局10Cとの組み合わせによって選択されたA1’との位置の平均をとり、その位置の平均が移動局の位置とされる、(3)前記第2の移動局10Bとの組み合わせによって選択された位置A1と、前記第3の移動局10Cとの組み合わせによって選択されたA1’とのうち、特定移動局10Aの組み合わせの相手である前記第2移動局10Bおよび前記第3移動局10Cについて前記存在確率算出部102において存在確率分布を算出する際に算出した標準偏差σがより小さい移動局との組み合わせによって選択された特定移動局の位置が特定移動局10Aの位置とされる、のいずれかが実行される。
【0130】
前述の実施例によれば、前記第2の測距部70は、前記特定移動局10Aと、前記複数の移動局のうち前記特定移動局10Aおよび前記第2の移動局10B以外の移動局である第3の移動局10Cとの距離を測距し、前記移動局位置抽出部106は、前記第2の測距部70により測定される前記特定移動局10Aと前記第3の移動局10Cとの間の距離に基づいて前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局10Cの前記移動可能領域50内における位置の組み合わせを抽出し、前記移動局位置選択部108は、前記存在確率算出部102において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部106により抽出された前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局10Cの位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局10Cの位置の組み合わせを選択し、前記移動局位置詳細選択部109は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局の位置10Cの組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局10Cの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置を考慮して前記特定移動局10Aの位置を選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局10Aの位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部109において、前記移動局位置選択部108により前記特定移動局10Aと前記第3の移動局10Cとの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置を考慮して前記特定移動局10Cの位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0131】
前述の実施例によれば、前記移動局位置詳細選択部109は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局10Aおよび前記第2の移動局10Bの位置の組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局10Aおよび前記第2の移動局10Bの位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局10Aの位置のうち、前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局10Cの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置のいずれかから所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局10Aの位置として選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部109において、前記移動局位置選択部108により前記特定移動局10Aと前記第3の移動局10Cとの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置を考慮して前記特定移動局10Aの位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0132】
前述の実施例によれば、前記移動局位置詳細選択部109は、前記特定移動局10Aおよび前記第2の移動局10Bの位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局10Aの位置のうち、前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局10Cの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、該所定の距離内に存在する特定移動局10Aの位置の平均を前記特定移動局10Aの位置として選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部109において、前記移動局位置選択部108により前記特定移動局10Aと前記第3の移動局10Cとの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置を考慮して前記特定移動局10Aの位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0133】
前述の実施例によれば、前記移動局位置詳細選択部109は、前記特定移動局10Aおよび前記第2の移動局10Bの位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局10Aの位置のうち、前記特定移動局10Aおよび前記第3の移動局10Cの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、前記第2の移動局10Bおよび前記第3の移動局10Cのうち、前記存在確率算出部102により存在確率分布を算出する際に用いた標準偏差σが小さい移動局および前記特定移動局10Aの組み合わせとして選択された特定移動局10Aの位置であって、前記所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局10Aの位置として選択するので、前記確率評価値が最も高い値と所定の範囲内で近似する前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、前記移動局位置詳細選択部109において、前記移動局位置選択部108により前記特定移動局10Aと前記第2の移動局10Bとの位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局10Aの位置と、前記第3の移動局10Cおよび前記第2の移動局10Bのそれぞれの位置に対する前記標準偏差σとを考慮して前記特定移動局10Aの位置が選択され、より精度のよい移動局の位置の算出が行なわれる。
【0134】
前述の実施例によれば、前記第3の移動局10Cは、前記特定移動局10Aおよび前記第2の移動局10Bのそれぞれから所定の距離以上離れており、かつ前記特定移動局10Aと前記第2の移動局10Bとを結ぶ直線上に存在しないものであるので、前記移動局位置詳細選択部109における前記特定移動局10Aの位置の選択が正確に行なわれるように、前記第3の移動局10Cの選択が行なわれる。
【0135】
このように、本発明は移動可能領域50が平面で与えられる場合であっても適用が可能であり、さらには移動可能領域50が3次元空間で与えられる場合であっても同様に適用が可能である。
【0136】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0137】
例えば、前述の実施例においては、各基地局12の有する時計の時刻合わせは図7に示すタイムチャートに従って行なわれるとしたが、これに限られず、他の方法によってもよい。
【0138】
また、前述の実施例においては、第1の測距部42は距離関連値として、移動局10が発信した電波の受信時刻を算出したが、これに限られず、例えば電波の受信時刻から移動局10と基地局12のそれぞれの距離を算出してもよい。言い換えれば、第1の測距部42によって算出された距離関連値に基づいて測位部56は移動局の位置を測位するが、これらを一連の作業としてみた場合に、どの計算までを第1の測距部42で行ない、残りを測位部56が行なうかについては適宜変更することが可能である。
【0139】
また、前述の実施例においては、その制御作動が図12などに示すフローチャートに従って行なわれるとされたが、これに限られない。すなわち、各ステップ間に依存関係がある場合を除き、ステップの順序を入れ替えて実行することが可能である。具体的には例えば、SA7において行なわれた特定移動局10Aと第2の移動局10Bとの距離の測定は、SA4の後でかつ、SA8の前であればいつ行なわれてもよい。
【0140】
また、前述の実施例においては、移動局選択部104は特定移動局に最も近い位置にある移動局を第2の移動局として選択したが、これに限られない。例えば第2の測距部70が実行され、有効な値を示す事が可能な移動局10であればどの移動局であっても第2の移動局としてもよい。
【0141】
また、前述の実施例においては、移動可能領域50は直線あるいは正方形状の平面として例示されたが、その形状は限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明が適用される測位システムの一例の概要を表した図である。
【図2】移動可能領域に定義される座標の一例を説明する図である。
【図3】移動局の機能の概要を表した機能ブロック線図である。
【図4】基地局の機能の概要を表した機能ブロック線図である。
【図5】測位サーバの機能の概要を表した機能ブロック線図である。
【図6】測位サーバによる測位の原理を説明するための図である。
【図7】基地局の有する時計の同期を行なう手順の一例を説明するタイムチャートである。
【図8】各基地局と移動局との距離を測定する手順の一例を説明するタイムチャートである。
【図9】標準偏差の値と存在確率分布の変化の様子を示した図である。
【図10】移動局位置抽出部による移動局の位置の組み合わせの抽出の様子を説明する図である。
【図11】移動局位置選択部による移動局の位置の組み合わせの選択の様子を説明する図である。
【図12】本発明の移動局測位システムの制御作動の概要を説明するフローチャートである。
【図13】存在確率算出ルーチンを説明するフローチャートである。
【図14】移動局組み合わせ選択ルーチンを説明するフローチャートである。
【図15】詳細選択ルーチンの一例を説明するフローチャートである。
【図16】詳細選択ルーチンの別の例を説明するフローチャートである。
【図17】詳細選択ルーチンの別の例を説明するフローチャートである。
【図18】本発明の移動局測位システムの別の実施例における、移動局位置詳細選択部による移動局の位置の組み合わせの選択を説明する図である。
【図19】移動局位置詳細選択部による移動局の位置の組み合わせの選択の別の例を説明する図であって、図18に対応する図である。
【図20】本発明の移動局測位システムの別の実施例における詳細選択ルーチンを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0143】
8:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
14:測位サーバ
42:第1の測距部
50:移動可能領域
56:測位部
70:第2の測距部
102:存在確率算出部
106:移動局位置抽出部
108:移動局位置選択部
110:移動局位置補正部
109:移動局位置詳細選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を発信する発信部を有し所定の移動可能領域を移動可能な複数の移動局と、
該複数の移動局によって発信された電波を受信する受信部と、該受信部が受信した電波に基づいて前記複数の移動局との距離に関連する距離関連値をそれぞれ測定する第1の測距部とを有し、既知の位置に固定された複数の基地局と、
該第1の測距部によって測定された距離関連値に基づいて前記複数の移動局のそれぞれの位置を測位する測位部を有する測位サーバと、を有する移動局測位システムにおいて、
前記測位部による測位結果に基づいて算出された前記移動局の位置と、該移動局の位置に対応して前記測位部による移動局の位置の算出における精度の劣化を表す値である精度劣化値と、前記移動局測位システムにおける測位誤差とに基づいて、前記移動可能領域における前記移動局の位置に対する存在確率分布を前記複数の移動局のそれぞれに対し算出する存在確率算出部と、
前記第1の測距部よりも高い測距精度を有し、前記複数の移動局間の距離を測定する第2の測距部と、
前記第2の測距部により測定される前記複数の移動局間の距離に基づいて前記複数の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせを抽出する移動局位置抽出部と、
前記存在確率算出部において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記複数の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記複数の移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置選択部と、
前記測位部による測位結果である前記複数の移動局位置を、前記移動局位置選択部によって選択された移動局の位置の組み合わせとなるように補正する移動局位置補正部とを、
有することを特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記移動局は、前記第2の測距部を有し、
前記第2の測距部による測距の結果は、前記発信部によって発信される電波を介して前記移動局位置抽出部に伝達されること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記測位サーバは、
前記存在確率算出部、前記移動局位置抽出部、移動局位置選択部及び前記移動局位置補正部とを有すること
を特徴とする請求項1または2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記第2の測距部は、音波、赤外線、受信した電波の電界強度のうち少なくとも1つを用いて測距を行なうこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記第2の測距部は、前記複数の移動局のうち、位置の補正を実行させるための1の移動局である特定移動局と、前記特定移動局以外の1の移動局である第2の移動局との距離を測距すること
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記移動局位置選択部は、
前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合において、相対的に存在する確率の高い前記移動局の位置の組み合わせを選択する移動局位置詳細選択部を有すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記存在確率算出部は、前記測位部により算出された移動局の位置を中心値とし、また、前記精度劣化値と前記測位誤差とを乗算することにより得られる値を標準偏差とする正規分布により移動局の位置に対する存在確率分布を算出し、
前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、前記存在確率算出部によって算出された存在確率分布における標準偏差の最も高い移動局の位置を含む前記移動局の位置の組み合わせを選択すること、
を特徴とする請求項6に記載の移動局測位システム。
【請求項8】
前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内にある複数の前記移動局の位置の組み合わせが存在する場合には、該移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動履歴に基づいて、前記移動局の位置の組み合わせを選択すること、
を特徴とする請求項6に記載の移動局測位システム。
【請求項9】
前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前における前記移動局の位置に関する情報であること、
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項10】
前記移動局の移動履歴は、前記移動局位置選択部実行前までにおける前記移動局の移動に関する情報であること、
を特徴とする請求項8に記載の移動局測位システム。
【請求項11】
前記第2の測距部は、前記特定移動局と、前記複数の移動局のうち前記特定移動局および前記第2の移動局以外の移動局である第3の移動局との距離を測距し、
前記移動局位置抽出部は、前記第2の測距部により測定される前記特定移動局と前記第3の移動局との間の距離に基づいて前記特定移動局および前記第3の移動局の前記移動可能領域内における位置の組み合わせを抽出し、
前記移動局位置選択部は、前記存在確率算出部において算出された存在確率分布に基づいて、前記移動局位置抽出部により抽出された前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせに対応する確率評価値を算出するとともに、最も確率評価値が高い前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせを選択するものであり、
前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置を考慮して前記特定移動局の位置を選択すること、
を特徴とする請求項5乃至10のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項12】
前記移動局位置詳細選択部は、前記算出した確率評価値が予め設定された所定の範囲内である前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせが複数存在する場合には、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかから所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局の位置として選択すること、
を特徴とする請求項11に記載の移動局測位システム。
【請求項13】
前記移動局位置詳細選択部は、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、該所定の距離内に存在する特定移動局の位置の平均を前記特定移動局の位置として選択すること、
を特徴とする請求項11に記載の移動局測位システム。
【請求項14】
前記移動局位置詳細選択部は、前記特定移動局および前記第2の移動局の位置の組み合わせとして選択された複数の前記特定移動局の位置のうち、前記特定移動局および前記第3の移動局の位置の組み合わせとして選択された前記特定移動局の位置のいずれかと所定の距離内に存在するものがある場合には、
前記第2の移動局および前記第3の移動局のうち、前記存在確率算出部により存在確率分布を算出する際に用いた標準偏差が小さい移動局および前記特定移動局の組み合わせとして選択された特定移動局の位置であって、前記所定の距離内に存在するものを、前記特定移動局の位置として選択すること、
を特徴とする請求項11に記載の移動局測位システム。
【請求項15】
前記第3の移動局は、前記特定移動局および前記第2の移動局のそれぞれから所定の距離以上離れており、かつ前記特定移動局と前記第2の移動局とを結ぶ直線上に存在しないものであること
を特徴とする請求項11乃至14のいずれか1に記載の移動局測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−69026(P2009−69026A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238522(P2007−238522)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】