説明

移動式水力発電装置

【課題】河川やカヌー等に設置することで、燃料や電池等が不要で、騒音や排気ガスに関する配慮も不要な移動式の発電装置を提供する。
【解決手段】移動可能で、水面に浮上して周囲に流れる水を案内する浮上・導水部材2、3と、浮上・導水部材に回転可能に保持された回転軸7と、回転軸と共に回転可能で、浮上・導水部材によって案内された水の流れによって回転する水車8と、回転軸の回転によって生ずる機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機9とを備える移動式水力発電装置1。移動可能な浮上・導水部材を水面に浮上させて周囲に流れる水を案内し、案内された水の流れによって水車を回転させ、さらに回転軸を回転させて発電機で電力を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等に設置して発電する移動式水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川等の付近でキャンプや、軽作業等を行う際の照明として、ガソリン式、ガス式又はバッテリー式のランタンやLEDランプ、可搬式の発電装置を用いた照明装置等が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記ランタン、LEDランプ、可搬式の発電装置を用いた照明装置等は、燃料や電池が必要になると共に、可搬式の発電装置を用いた照明装置等では、さらに騒音や排気ガスに関する配慮も必要になる。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、河川等に設置することで、燃料や電池等が不要で、騒音や排気ガスに関する配慮も不要な移動式の発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、移動式水力発電装置であって、移動可能で、水面に浮上して周囲に流れる水を案内する浮上・導水部材と、該浮上・導水部材に回転可能に保持された回転軸と、該回転軸と共に回転可能で、前記浮上・導水部材によって案内された水の流れによって回転する水車と、前記回転軸の回転によって生ずる機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機とを備えることを特徴とする。
【0006】
そして、本発明によれば、移動可能な浮上・導水部材を水面に浮上させて周囲に流れる水を案内し、案内された水の流れによって水車を回転させ、さらに回転軸を回転させて発電機で電力を得ることができるため、河川に設置したり、河川を航行するカヌー等に取り付けてカヌー等の進む力を利用することで、燃料や電池等が不要で、騒音や排気ガスに関する配慮も不要な移動式の発電装置を提供することができる。
【0007】
上記移動式水力発電装置において、前記浮上・導水部材は、相対向する一対の円筒状部材であって、該一対の円筒状部材の各々は、中央部で曲折し、該中央部から一方の端部に向かって該一対の円筒状部材の間隔が徐々に大きくなるように構成され、前記中央部から他方の端部に向かって該一対の円筒状部材の間隔が等しく構成され、該一対の円筒状部材の間を、該一対の円筒状部材の一方の端部側から、他方の端部側へ水が案内されるように構成することができる。これによって、簡単な構成で、効率よく水を案内して発電効率を高めることができる。
【0008】
上記移動式水力発電装置において、前記一対の円筒状部材の各々の前記一方の端部に、該浮上・導水部材を水上に固定する固定用索の一端を装着することができ、固定用索によって、移動式水力発電装置全体を容易に水面に固定することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、河川等に設置することで、燃料や電池等が不要で、騒音や排気ガスに関する配慮も不要な移動式の発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる移動式水力発電装置の一実施の形態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示す移動式水力発電装置の使用方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明にかかる移動式水力発電装置の一実施の形態を示し、この移動式水力発電装置1は、移動可能で、水面に浮上して周囲に流れる水を案内する浮上・導水部材としての一対の円筒状部材2、3と、円筒状部材2、3を繋ぐように設置されたフレーム4と、フレーム4の内側に配設され、回転軸7を回転可能に保持する一対の保持部材5、6と、回転軸7と共に回転可能で、円筒状部材2、3によって案内された水の流れによって回転する水車8と、回転軸7の回転によって生ずる機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機9等を備える。
【0013】
円筒状部材2、3は、各々プラスチック等で管状に形成され、両端が閉じられ、水面に浮上可能に設けられる。これら円筒状部材2、3は、中央部で曲折し、中央部から右側の案内部2a、3aでは、右方に向かうにつれて両者2a、3aの間隔が徐々に大きくなるように構成され、中央部から左側の保持部2b、3bでは、両者2b、3bの間隔が等しく構成される。
【0014】
フレーム4は、L型鋼等からなり、円筒状部材2、3を跨いでこれらを繋ぐように設置され、枠部4aと、円筒状部材2、3の保持部2b、3bに沿って下方に延設された脚部4bとで構成される。フレーム4の内側には、一対のL型鋼等からなる保持部材5、6が設けられる。
【0015】
回転軸7は、保持部材5、6に軸受(不図示)を介して回転可能に保持され、回転軸7の回転によって、回転軸7を囲繞するように設置された発電機9が電力を発生させる。
【0016】
水車8は、回転軸7と共に回転可能であって、円環部材8aに12枚の板状の羽根8bが固定される。円環部材8aは、内側に装着されたスポーク状の補強部材8cによって補強される。
【0017】
電灯11は、発電機9と電線10を介して電気的に接続され、発電機9で発生した電力によって点灯する。
【0018】
固定用索12、13は、円筒状部材2、3を水上に固定するために備えられ、円筒状部材2、3の右端部に固定用索12、13の一端が固定され、他端が陸側の岩等に固定される。
【0019】
次に、上記構成を有する移動式水力発電装置1の使用方法について、図2を中心に参照しながら説明する。
【0020】
河川等の付近でキャンプや、軽作業等を行う際に、移動式水力発電装置1を車両の荷台等に積載して現場まで搬送し、移動式水力発電装置1全体を河川の流れの中に置く。この際、円筒状部材2、3の案内部2a、3a側を上流20側に向け、中央部に水車8が位置するフレーム4を、岩21、22に挟まれた場所のように、河川の流れの狭い場所に配置することが、河川の水の流れを有効に利用することができて好ましい。
【0021】
移動式水力発電装置1を好ましい場所に位置決めし終えたら、固定用索12、13を現場付近の岩や、樹木等に固定し、移動式水力発電装置1の移動を防止する。これで、移動式水力発電装置1の使用準備が完了し、図2に示す状態となる。
【0022】
図2に示す状態で、上流20側から下流23側へ水が流れると、水は、図1(a)に示すように、円筒状部材2、3の案内部2a、3aの間を、矢印で示すように、下流側に向かうにつれて中央部に集まるように流れ、この流れによって、図1(b)に示す矢印方向に水車8が回転し、これに伴い回転軸7が回転し、発電機9によって発電がなされる。発電機9で発生した電力は、電線10を介して電灯11に供給され、電灯11が点灯する。上流20側から下流23側へ水が流れ、水車8の回転が継続すると、電灯11が点灯し続ける。
【0023】
尚、上記実施の形態においては、浮上・導水部材として一対の円筒状部材2、3を用いたが、移動式水力発電装置1全体を水面に浮上させ、水車8へ河川等の水の流れを案内することができれば、他の構成を採用することもできる。
【0024】
また、回転軸7、水車8及び発電機9の円筒状部材2、3による保持構造についても、フレーム4や保持部材5、6によらず、その他の保持構造であってもよく、円筒状部材2、3によって、水車8を河川等の水の流れによって回転させながら保持することができる構造であればよい。
【0025】
さらに、発電機9を回転軸7を囲繞するように設置したが、回転軸7の回転を利用するものであれば、その他の構造を備えた発電機であってもよい。
【0026】
また、水車8の全体構造、羽根8bの枚数も上記実施の形態に記載のものに限定されず、河川等の水の流れによって回転し、水の流れのエネルギーを回転軸7に効率よく伝達できるものであれば他の構成を採用することもできる。
【0027】
さらにまた、電灯11を発電機9に隣接して設置したが、電灯11を移動可能とし、陸側で照明用に用いることも可能である。
【0028】
さらに、上記実施の形態においては、移動式水力発電装置1を固定用索12、13を用いて河川の水上に固定したが、移動式水力発電装置1を固定せずに、例えば、河川を航行するカヌー等に取り付け、カヌー等の進む力によって生ずる水の流れによって回転軸7を回転させ、発電機9によって発電を行うこともできる。
【符号の説明】
【0029】
1 移動式水力発電装置
2 円筒状部材
2a 案内部
2b 保持部
3 円筒状部材
3a 案内部
3b 保持部
4 フレーム
4a 枠部
4b 脚部
5、6 保持部材
7 回転軸
8 水車
8a 円環部材
8b 羽根
8c 補強部材
9 発電機
10 電線
11 電灯
12、13 固定用索

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能で、水面に浮上して周囲に流れる水を案内する浮上・導水部材と、
該浮上・導水部材に回転可能に保持された回転軸と、
該回転軸と共に回転可能で、前記浮上・導水部材によって案内された水の流れによって回転する水車と、
前記回転軸の回転によって生ずる機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機とを備えることを特徴とする移動式水力発電装置。
【請求項2】
前記浮上・導水部材は、相対向する一対の円筒状部材であって、該一対の円筒状部材の各々は、中央部で曲折し、該中央部から一方の端部に向かって該一対の円筒状部材の間隔が徐々に大きくなるように構成され、前記中央部から他方の端部に向かって該一対の円筒状部材の間隔が等しく構成され、該一対の円筒状部材の間を、該一対の円筒状部材の一方の端部側から、他方の端部側へ水が案内されることを特徴とする請求項1に記載の移動式水力発電装置。
【請求項3】
前記一対の円筒状部材の各々の前記一方の端部に、該浮上・導水部材を水上に固定する固定用索の一端が装着されることを特徴とする請求項2に記載の移動式水力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251524(P2012−251524A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126826(P2011−126826)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(500540833)武甲鉱業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】