説明

移動機位置管理装置、移動通信システム及び該移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法

【課題】自然災害が発生した場合などのような緊急時、特定の位置登録エリアに在圏する携帯電話機などの移動機に迅速に情報を配信するための移動機位置管理装置を提供する。
【解決手段】移動機位置管理装置84により、移動機51,52,53が管轄圏内に在圏する移動通信交換機(たとえば、MSC/VLR/SGSN71,72)から位置登録エリア情報が受信されて位置登録エリア毎の移動機リストが作成され、HLR81では把握されていない、位置登録エリア単位での移動機の位置が管理され、また、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる位置登録エリア毎の移動機リストが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動機位置管理装置、移動通信システム及び該移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法に係り、たとえば自然災害が発生した場合などのような緊急時、特定の位置登録エリアに在圏する携帯電話機などの移動機に迅速に情報を配信する場合に用いて好適な移動機位置管理装置、移動通信システム及び該移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの移動機が無線接続されて通信が行われる移動通信システムに対して、移動機の在圏情報に基づいて各種情報を当該移動機に配信するサービスの需要が高まっている。移動機の在圏情報は、HLR(Home Location Register)で管理されているが、情報配信装置が外部から各種情報の配信要求を受けるたびに在圏情報を同HLRに問い合わせると、同HLRの処理能力の限界を超えることがある。すなわち、HLRで管理されている在圏情報は、移動機の電話番号を検索キーとするデータ構造を有するため、情報配信装置が移動機の在圏情報をキーとして対象移動機の検索を行う場合、在圏情報が保持されている全ての移動機の在圏情報を検索する必要があるため、検索に時間がかかるという問題が発生する。また、HLRは、加入者情報の収容が可能な移動機の数に限度があり、移動体通信事業者内の全ての移動機の加入者情報を1台で収容することができないため、同移動機の加入者情報は、通常、複数のHLRに分散されて収容されるようになっている。
【0003】
この種の移動通信システムは、たとえば図4に示すように、移動機1,2,3と、基地局(無線基地局)11,12,13と、MSC(Mobile Switching Center 、移動交換局)/VLR(Visitor Location Register 、ビジターロケーションレジスタ)/SGSN(Serving GPRS Support Node 、移動通信用パケット交換機)21,22と、複数のHLR31,…,31と、情報配信装置32と、情報配信要求送信装置33とから構成されている。移動機1,2,3は、たとえば携帯電話機などであり、位置登録エリアA1,A2,A3にそれぞれ在圏し、基地局(無線基地局)11,12,13に、それぞれ無線接続される。基地局11,12は、MSC/VLR/SGSN21に有線(又は無線)接続され、また、基地局13が、MSC/VLR/SGSN22に有線(又は無線)接続されている。MSC/VLR/SGSN21は自網N1に接続され、MSC/VLR/SGSN22が海外網N2に接続され、また、自網N1と海外網N2とが相互に接続されている。HLR31,…,31及び情報配信装置32は、自網N1に接続され、同情報配信装置32に情報配信要求送信装置33が接続されている。また、HLR31,…,31は、移動機1,2が管轄圏内に在圏するVLR/MSC/SGSN21の情報、及び、移動機3が在圏するVLR/MSC/SGSN22の情報を在圏情報として保持している。
【0004】
この移動通信システムでは、たとえば自然災害が発生した場合、情報配信要求送信装置33から、特定の位置登録エリアに在圏する移動機に情報を配信するための情報配信要求drが情報配信装置32へ送信される。情報配信装置32では、HLR31,…,31にアクセスして管理されている在圏情報を検索し、該当する移動機に向けて情報を配信する。
【0005】
上記の移動通信システムの他、この種の関連する技術としては、たとえば、特許文献1に記載されたユーザ別情報提供サービスシステムがある。
このシステムでは、移動網内に情報メニューセンタが配置され、同情報メニューセンタは、ユーザ契約情報及びユーザの在圏情報からユーザへ提供すべき情報メニューを生成する。移動機の電源投入時もしくは在圏エリア移行時に、移動機と移動網との間で位置登録が行われ、このとき、情報メニューセンタからユーザ(移動機)に対して個別の情報メニューが送信されることにより、品質の高い情報提供サービスが実現する。これにより、新規に情報提供者が増えた場合でも、情報メニューの更新を行うだけで、IPの情報サービスが提供され、柔軟な情報提供サービスの運用が可能となる。
【0006】
また、特許文献2に記載された位置登録方法では、位置登録エリア中の特定領域に設定されている基地局から、基地局IDを示すID信号が報知されている。基地局の無線ゾーンに在圏する移動局は、上記ID信号を受信すると、基地局ID及び移動局IDを含む位置登録要求信号を基地局に送信する。ホームメモリでは、基地局ID及び移動局IDが狭域位置登録情報として登録される。IPサーバは、位置関連情報を位置関連情報データベースから取得し、ゲートウエイサーバに送信する。ゲートウエイサーバは、受信した位置関連情報の送信対象をホームメモリを参照して特定し、当該位置関連情報を移動局に送信する。
【0007】
また、特許文献3に記載された移動無線通信システムでは、移動通信交換機に、TLR(テンポラリーロケーションレジスタ)が設けられている。同TLRでは、移動機からの位置登録の要求を受け取り、移動機の位置情報として各位置登録エリアを移動機の識別子に対応するメモリに記憶させる。
【0008】
また、非特許文献1に記載された同報配信システムでは、図5に示すように、たとえば、地震発生時、気象庁41にて、震源地や地域毎の震度情報などを含む緊急地震速報電文(専用プロトコル)が作成され、接続する事業者に対して送出される(フェーズ[1])。この緊急地震速報電文は、気象庁41と接続されているCBC(Cell Broadcast Center 、セル・ブロードキャストセンター)42で受信されて内容が解析される。CBC42では、電文内に含まれている「強い揺れが推定される地域」から配信先エリアが決定されると共に、移動端末に通知するためのメッセージが作成される(フェーズ[2])。SGSN(Serving General Packet Radio Service Support Node )43は、CBC42とインタフェースをもち、同CBC42で作成されたメッセージを含むSABP(Service Area Broadcast Protocol )上の同報配信指示を意味するWrite-Replace (メッセージ)を受信する(フェーズ[3])。
【0009】
SGSN43は、CBC42から配信されたWrite-Replace を、配信エリアを収容するRNC(Radio Network Controller、無線ネットワーク制御装置)44へ送信する(フェーズ[4])。Write-Replace を受信したRNC44は、移動端末間インタフェースのBMC(Broadcast Multicast Control )プロトコルにCBS(Cell Broadcast Service)メッセージを載せ替えてBTS(Base Transceiver Station)45を経て移動端末46へ配信する(フェーズ[5])。
【特許文献1】特開2000−333258号公報(要約書、図1)
【特許文献2】特開2002−084564号公報(要約書、図1)
【特許文献3】特開平11−285052号公報(要約書、図1)
【非特許文献1】緊急情報の同報配信サービスの開発、NTT技術ジャーナルのホームページ、NTTドコモ、2008/6、P.36-39
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記各文献を含む上記技術では、次のような問題点があった。
すなわち、図4の移動通信システムでは、情報配信装置32が移動機の在圏位置登録エリアを得るためには、全てのHLR31,…,31に問い合わせる必要があり、迅速な処理が困難であるという問題点がある。また、HLR31,…,31では、移動機が在圏するVLR/MSC/SGSNの情報が在圏情報として保持されているが、基地局の位置登録エリアに関する情報までは保持されていないため、位置登録エリア単位でユーザの移動機に情報を配信することができないという問題点がある。
【0011】
また、特許文献1に記載されたユーザ別情報提供サービスシステムでは、あらかじめユーザ毎に情報配信を要求する設定が行われている移動機に対して、特定の位置登録エリアに位置登録したことを契機に情報が配信されるが、ある時点で特定の位置登録エリアに在圏し、かつ情報配信サービスに加入している移動機に対して、一斉に情報を配信することはできない。このため、情報配信の対象となる移動機の位置登録エリアを得るためには、HLRに問い合わせる必要があるという問題点がある。
【0012】
特許文献2に記載された位置登録方法では、ホームメモリに狭域位置登録情報が保持されているが、同ホームメモリも、1つの通信事業者で地域毎に多数配置され、位置登録エリアもしくは狭域位置登録情報が分散配置されることになり、迅速な情報配信が困難となるという問題点がある。
【0013】
特許文献3に記載された移動無線通信システムでは、移動通信交換機にTLRが設けられているが、移動通信交換機は、たとえば1つの通信事業者が日本国内に設置している数が百数十台となっている。特定の位置登録エリアのみに情報を配信する場合であれば、特定の移動通信交換機のみに情報配信要求を送出し、同移動通信交換機にある移動機リストを用いて情報を配信することができるが、広範囲の地域や国単位で情報を配信したい場合、位置登録エリアを検索キーとする移動機リストも日本国内に分散して配置されることになる。移動機リストが分散して配置されることの弊害として、移動機リストを一元的に把握することが難しく、情報を配信する段階では、迅速な情報配信が行えないという問題点がある。
【0014】
非特許文献1に記載された同報配信システムでは、情報配信の対象となる位置登録エリア(配信先エリア)に在圏する全ての移動端末に対して一様に情報が配信される構成になっているため、移動端末側で情報の受信をしないこととする個別の設定は可能であるが、情報の配信を希望しないユーザにまで配信されてしまうこと、及び、この同報配信システムに対応した移動端末でなければ、情報を受信できないという問題点がある。
【0015】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、特定の位置登録エリアに在圏する携帯電話機などの移動機に迅速に情報を配信するための移動機位置管理装置、移動通信システム及び該移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、移動機位置管理装置に係り、移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムに設けられ、前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成する構成とされていることを特徴としている。
【0017】
この発明の第2の構成は、移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムに係り、前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成する移動機位置管理装置が設けられていることを特徴としている。
【0018】
この発明の第3の構成は、移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法に係り、移動機位置管理装置を設けておき、該移動機位置管理装置が、前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
この発明の構成によれば、移動機位置管理装置により、移動機が管轄圏内に在圏する移動通信交換機から位置登録エリア情報が受信されて位置登録エリア毎の移動機リストが作成されるので、ホームロケーションレジスタでは把握されていない、位置登録エリア単位での移動機の位置が管理される。これにより、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる位置登録エリア毎の移動機リストが提供されるので、該当する移動機へ情報を迅速に配信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
移動機が管轄圏内に在圏する移動通信交換機から位置登録エリア情報を受信して位置登録エリア毎の移動機リストを作成する一方、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる位置登録エリア毎の移動機リストを提供する構成とされている移動機位置管理装置を提供する。
【0021】
また、この形態では、移動機位置管理装置は、移動機の在圏国及び位置登録エリア情報を検索キーとして、在圏する移動機がリスト化されたデータ構造を有する。
【0022】
また、この形態では、移動機位置管理装置は、情報配信の対象となる移動機の位置登録又は位置登録エリアの移動を契機として移動通信交換機から位置登録エリア情報を受信し、情報配信要求を受けたとき、在圏国及び位置登録エリアの対象となる移動機リストを提供する構成とされている。
【0023】
また、この形態では、上記移動通信システムは、情報配信要求を受けたとき、移動機リストから対象となる移動機を抽出し、移動機に当該情報を配信する情報配信装置が設けられている。
【0024】
また、この形態では、位置登録エリア情報は、当該位置登録エリアを構成するセルの情報を含む。
【実施形態】
【0025】
図1は、この発明の一実施形態である移動機位置管理装置が設けられている移動通信システムの要部の構成を示す模式図である。
この形態の移動通信システムは、同図に示すように、移動機51,52,53と、基地局61,62,63と、MSC(Mobile Switching Center )/VLR(Visitor Location Register )/SGSN(Serving GPRS Support Node )71,72と、HLR81と、情報配信装置82と、情報配信要求送信装置83と、移動機位置管理装置84とから構成されている。
【0026】
移動機51,52,53は、たとえば携帯電話機などであり、位置登録エリアA1,A2,A3にそれぞれ在圏し、基地局(無線基地局)61,62,63に、それぞれ無線接続され、配信された情報を表示する機能を有している。基地局61,62は、MSC/VLR/SGSN71に有線(又は無線)接続され、また、基地局63が、MSC/VLR/SGSN72に有線(又は無線)接続されている。MSC/VLR/SGSN71は自網N1に接続され、MSC/VLR/SGSN72が海外網N2に接続され、また、自網N1と海外網N2とが相互に接続されている。自網N1は、移動通信サービスを提供する通信事業者の移動網であり、また、海外網N2は、移動機がローミングアウトして利用可能な移動網である。MSC/VLR/SGSN71,72は、回線交換及びパケット交換の呼接続処理を行う機能を有し、移動機51,52,53が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際にHLR81に位置登録を行うと共に、位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する。
【0027】
HLR81及び情報配信装置82は、自網N1に接続され、同情報配信装置82に情報配信要求送信装置83が接続されている。HLR81は、移動機51,52が管轄圏内に在圏するVLR/MSC/SGSN61の情報、及び、移動機53が管轄圏内に在圏するVLR/MSC/SGSN62の情報を在圏情報として保持している。また、HLR81は、移動機51,52,53の加入者情報を蓄積し、情報配信サービスの加入/非加入の状態情報を保持する。移動機位置管理装置84は、自網N1に接続され、移動機51,52,53が管轄圏内に在圏するMSC/VLR/SGSN71,72から位置登録エリア情報を受信して位置登録エリア毎の移動機リストを作成する一方、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる位置登録エリア毎の上記移動機リストを提供する。
【0028】
特に、この実施形態では、移動機位置管理装置84は、移動機の在圏国及び位置登録エリア情報を検索キーとして、在圏する移動機がリスト化されたデータ構造を有し、情報配信の対象となる移動機の位置登録又は位置登録エリアの移動を契機として、MSC/VLR/SGSN71,72から位置登録エリア情報を受信し、上記情報配信要求を受けたとき、在圏国及び位置登録エリアの対象となる移動機リストを情報配信装置82又は情報配信要求送信装置83に提供する。情報配信要求送信装置83は、たとえば自然災害が発生した場合、特定の位置登録エリアに在圏する移動機に情報を配信するための情報配信要求drを出力する。情報配信装置82は、情報配信要求送信装置から情報配信要求drを受けたとき、移動機位置管理装置84で作成された移動機リストから対象となる移動機を抽出し、同移動機に電子メールやショートメッセージサービス(SMS、Short Message Service )を用いて当該情報を配信する。また、情報配信装置82及び情報配信要求送信装置83は、移動機のユーザに対して、情報配信サービスの加入/非加入をあらかじめ選択するための手順が設けられている。
【0029】
図2は、図1中の移動機位置管理装置84が有するデータ構造の一例を示す概念図である。
このデータ構造では、同図2に示すように、ファイルF1,F2,F3が設けられている。ファイルF1では、在圏国毎の位置登録エリアがリスト化されている。ファイルF2では、位置登録エリア毎に在圏する移動機番号がリスト化されている。ファイルF3では、位置登録の履歴を保持するために、移動機番号毎に位置登録エリアを超えて移動した日時と位置登録エリア、及び、移動機のIMEI番号(International Mobile Equipment Identities )がリスト化されている。IMEI番号は、GSM(Group Special Mobile)及びW−CDMA(Wideband-CDMA 、広帯域符号分割多重接続)方式で移動機の識別のために付与されているユニークな番号である。この番号により、世界中のGSM及びW−CDMA方式の移動機を一意に特定することが可能となっている。
【0030】
図3は、図1の移動通信システムの動作を説明するシーケンス図である。
この図を参照して、この形態の移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法の処理内容について説明する。
この移動通信システムでは、移動機51,52,53が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際、MSC/VLR/SGSN71,72により、HLR81に位置登録が行われると共に、位置登録を行った際の位置登録エリア情報が保持される。そして、移動機位置管理装置84により、移動機51,52,53が管轄圏内に在圏するMSC/VLR/SGSN71,72から位置登録エリア情報が受信されて位置登録エリア毎の移動機リストが作成される一方、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる位置登録エリア毎の移動機リストが提供される。
【0031】
すなわち、移動機位置管理装置84では、日本国内の自網N1に限らず、ローミングアウトして利用する海外網N2においても、在圏国毎の位置登録エリアをファイルF1にあらかじめリスト化しておく(ステップA1)。また、位置登録エリアの追加や変更があった場合、ファイルF1のデータが更新される。移動機51のユーザは、在圏している国や位置登録エリアをもとにした情報配信サービスを受けるために、情報配信装置82又は情報配信要求送信装置83にWEBブラウザなどでHTTP(HyperText Transfer Protocol )によるアクセスを行い、情報配信サービスの加入/非加入をあらかじめ選択しておく(ステップA2,A3)。情報配信サービスの加入/非加入の状態情報は、情報配信装置82又は情報配信要求送信装置83からHLR81に送信され、HLR81にて状態情報が保持される(ステップA4,A5)。
【0032】
情報配信サービスに加入しているユーザの移動機51が位置登録要求を行うと(ステップA6)、同移動機51が管轄圏内に在圏するVLR/MSC/SGSN71の情報がHLR81に登録されると同時に(ステップA7)、加入者プロファイルとして情報配信サービスの加入/非加入の状態情報がVLR/MSC/SGSN71にダウンロード(D/L)される(ステップA8)。そして、情報配信サービスに加入している移動機である場合、VLR/MSC/SGSN71から移動機位置管理装置84に対して移動機番号と位置登録エリアの情報が送信される(ステップA9)。
【0033】
移動機位置管理装置84では、受信した移動機番号と位置登録エリアをもとに、図2中のファイルF2に示すように、位置登録エリア毎に在圏する移動機番号がリスト化される(ステップA10,A11)。たとえば、日本国内の特定地域、海外の特定の国、あるいは、その国の特定の地域において、災害や危険度の高い事件や事故などが発生した場合、安全の確保に役立つ情報が配信されるようにするため、自網N1の外部にある情報配信要求送信装置83からは、該当の国、単一又は複数の位置登録エリアと、配信するメッセージ内容を付与して、情報配信装置82に情報配信要求drが送信される(ステップA12)。情報配信要求送信装置83から情報配信要求drを受信した情報配信装置82は(ステップA13)、要求された位置登録エリアに在圏する移動機のリストを移動機位置管理装置84から取得し(ステップA14)、電子メールやSMSを利用して、リスト化された全ての移動機に情報を配信する(ステップA15)。
【0034】
また、ローミングアウトした先の海外網N2で、初回の位置登録を契機として、移動機53の位置登録エリアが変更される毎に(ステップA16)、VLR/MSC/SGSN72では、移動機位置管理装置84に対して、移動機番号とその位置登録エリア、及び位置登録要求を行った日時が通知される(ステップA17,A18)。海外渡航中の移動機53から位置登録要求が行われると、移動機位置管理装置84では、IMEI番号がHLR81から受信され、移動機53の位置登録履歴に合わせてファイルF3に保存される(ステップA19)。また、ユーザが海外渡航先から帰国して国内の自網N1に位置登録を行うことによって、移動機位置管理装置84に保存した位置登録履歴であるファイルF3の更新を停止し、一定の期間は保存しておくこととする。
【0035】
以上のように、この実施形態では、移動機位置管理装置84により、移動機51,52,53が管轄圏内に在圏するMSC/VLR/SGSN71,72から位置登録エリア情報が受信されて位置登録エリア毎の移動機リストが作成されるので、HLR81では把握されていない、位置登録エリア単位での移動機の位置が管理され、また、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる位置登録エリア毎の移動機リストが提供されるので、該当する移動機へ情報が迅速に配信される。
【0036】
たとえば、日本国内の特定地域、あるいは海外の特定の国、もしくはその国の特定の地域において、災害や危険度の高い事件や事故などが発生した場合、ユーザが常に携行している移動機に対して、安全の確保に役立つ情報が配信される。また、たとえば、海外渡航者が渡航先にて行方不明となった場合、海外渡航時における位置登録履歴を保存及び参照することで、海外渡航先での災害や事件に巻き込まれた場合でも、安否確認や捜査情報として利用される。また、IMEI番号の履歴を保存しておくことで、移動機やSIM(Subscriber Identity Module)カードの盗難などの被害にあった場合でも、履歴を参照することで、被害の照明が可能となる。
【0037】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、移動機位置管理装置84で保持する位置登録履歴は、海外渡航時のみに保存するように移動機のユーザが設定しても良く、また、国内に在圏する場合でも、位置登録履歴を保存するように設定しても良いため、情報配信装置82又は情報配信要求送信装置83にて、情報配信サービスの加入/非加入の状態情報の保持と共に、位置登録履歴の保存を海外渡航時のみとするか、国内でも保存するかを選択する手順を提供し、かつ、HLR81での状態情報保持を行っても良い。
【0038】
移動機位置管理装置84では、位置登録エリアをキーとして在圏する移動機をリスト化するが、位置登録エリアよりも細かいセル単位又は当該セルを管轄する基地局単位の位置情報をキーとした移動機のリスト化を行うことで、さらに、きめ細かい在圏位置による情報配信サービスが行われる(請求項6に対応)。この場合、移動機51,52,53が在圏エリアを跨ぐ移動が頻繁に行われると、VLR/MSC/SGSN71,72から移動機位置管理装置84への信号を送信する頻度が非常に多くなり、多大な信号量により自網N1及び海外網N2に負荷がかかるため、地域や位置登録エリア単位、基地局単位、セル単位など、移動機51,52,53の位置が変化する単位をVLR/MSC/SGSN71,72に設定可能とする。また、加入者情報としての、情報配信サービスの加入/非加入設定状態は、移動機51,52,53からWEBブラウザによりアクセスする他、同一のユーザ情報を利用してインターネットを経由してユーザのパソコンなどからWEBブラウザによりアクセスするようにしても良く、また、電話や、顧客向け窓口での店頭受け付けでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、特定の位置登録エリアに在圏する携帯電話機などの移動機に迅速に情報を配信する場合全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施形態である移動機位置管理装置が設けられている移動通信システムの要部の構成を示す模式図である。
【図2】図1中の移動機位置管理装置84が有するデータ構造の一例を示す概念図である。
【図3】図1の移動通信システムの動作を説明するシーケンス図である。
【図4】移動通信システムの構成を示す模式図である。
【図5】非特許文献1に記載された同報配信システム構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0041】
51,52,53 移動機
61,62,63 基地局
71,72 MSC(Mobile Switching Center )/VLR(Visitor Location Register )/SGSN(Serving GPRS Support Node )(移動通信交換機、移動通信システムの一部)
81 HLR(Home Location Register)(ホームロケーションレジスタ)(移動通信システムの一部)
82 情報配信装置(移動通信システムの一部)
84 移動機位置管理装置(移動通信システムの一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、
前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムに設けられ、前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成する構成とされていることを特徴とする移動機位置管理装置。
【請求項2】
移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、
前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムに設けられ、前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成する一方、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる前記位置登録エリア毎の前記移動機リストを提供する構成とされていることを特徴とする移動機位置管理装置。
【請求項3】
前記移動機の在圏国及び位置登録エリア情報を検索キーとして、在圏する前記移動機がリスト化されたデータ構造を有することを特徴とする請求項2記載の移動機位置管理装置。
【請求項4】
情報配信の対象となる前記移動機の位置登録又は位置登録エリアの移動を契機として前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信し、前記情報配信要求を受けたとき、在圏国及び位置登録エリアの対象となる移動機リストを提供する構成とされていることを特徴とする請求項3記載の移動機位置管理装置。
【請求項5】
前記移動通信システムは、
前記情報配信要求を受けたとき、前記移動機リストから対象となる移動機を抽出し、前記移動機に当該情報を配信する情報配信装置が設けられていることを特徴とする請求項2、3又は4記載の移動機位置管理装置。
【請求項6】
前記位置登録エリア情報は、
当該位置登録エリアを構成するセルの情報を含むことを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の移動機位置管理装置。
【請求項7】
移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、
前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムであって、
前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成する移動機位置管理装置が設けられていることを特徴とする移動通信システム。
【請求項8】
移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、
前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムであって、
前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成する一方、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる前記位置登録エリア毎の前記移動機リストを提供する移動機位置管理装置が設けられていることを特徴とする移動通信システム。
【請求項9】
移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、
前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法であって、
移動機位置管理装置を設けておき、該移動機位置管理装置が、前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成することを特徴とする移動機位置管理方法。
【請求項10】
移動機の位置登録を行うためのホームロケーションレジスタと、
前記移動機が現在の位置登録エリアから他の位置登録エリアへ移動した際に前記ホームロケーションレジスタに位置登録を行うと共に、該位置登録を行った際の位置登録エリア情報を保持する移動通信交換機とを有する移動通信システムに用いられる移動機位置管理方法であって、
移動機位置管理装置を設けておき、該移動機位置管理装置が、前記移動機が管轄圏内に在圏する前記移動通信交換機から前記位置登録エリア情報を受信して前記位置登録エリア毎の移動機リストを作成する一方、外部から情報配信要求を受けたとき、情報配信の対象となる前記位置登録エリア毎の前記移動機リストを提供することを特徴とする移動機位置管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−124234(P2010−124234A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296001(P2008−296001)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】