移動軸傾斜検出機構および測定装置
【課題】軸受け部分でアームを支持する移動機構において、アームの傾きを検出する移動軸傾斜検出機構の実現。
【解決手段】軸受け部3,5に摺動可能に保持された移動部材1の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構であって、移動部材の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点11を有する接触部材12と、接触部材に設けられ、接触部材の鉛直方向からの変位角度を検出する傾斜計15と、を備える。
【解決手段】軸受け部3,5に摺動可能に保持された移動部材1の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構であって、移動部材の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点11を有する接触部材12と、接触部材に設けられ、接触部材の鉛直方向からの変位角度を検出する傾斜計15と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受け部に摺動可能に保持された移動部材の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構およびそれを使用した測定装置に関し、特に移動部材の移動に伴う移動軸の傾斜変化や軸受け部の損耗に起因する移動軸の傾斜変化を検出する移動軸傾斜検出機構および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1軸移動機構、および1軸移動機構を組み合わせた2軸または3軸移動機構が広く使用されている。一般の1軸移動機構は、一般に固定軸に対して移動部材が移動する機構を有するが、構造の関係から軸受け部で支持された移動軸が移動する機構も使用される。図1は、そのような機構が使用される真円度測定機の構成を示す図である。図示のように、真円度測定機は、ベース51と、ベース51に設けられた回転台52と、ベース51に設けられたコラム53と、コラム53に沿って上下方向に移動するZ軸移動部材54と、Z軸移動部材54に支持され、X軸方向に移動するアーム55と、アーム55の先端に設けられた取り付け部56と、取り付け部56に設けられ、プローブ58の変位を検出する変位計57と、を有する。回転台52の上にワークWを載置し、Z軸移動部材54およびアーム55を適宜移動してプローブ58をワークWの表面に接触させた状態で、回転台52を回転させて回転に伴うプローブ58の変位を検出する。
【0003】
Z軸移動部材54は、コラム53に軸受け部材により係合されており、コラム53の摺動面に沿って移動する。また、Z軸移動部材54には、アーム55の摺動面を支持する軸受け部材が設けられており、アーム55を移動可能に支持している。アーム55の移動に伴い、図1の面内でのアーム55のZ軸移動部材54に対する回転モーメントが変化し、アーム55自体の撓みや軸受け部材のあそびの分だけ取り付け部56、すなわち変位計57の位置がZ軸方向に変化する。この変化は、ワークWの上表面の面形状の測定などに影響する。
同様にZ軸移動部材54がコラム53の摺動面に沿ってZ軸方向に移動した場合も、コラム53の摺動面が変化し、ワークWの上表面の面形状の測定などに影響する。
【0004】
図2は、Z軸移動部材54のアーム55の支持部などに使用される一般的な移動機構の支持部分の構成を示す図である。図示のように、筐体2の下側に設けられた下支持部材4の上に下側軸受け部材3が設けられており、その上にアーム1(55)の摺動面が支持される。アーム1の上側の摺動面は、筐体2の上側に設けられた上支持部材6の上に設けられた上側軸受け部材5により下側軸受け部材3に押し付けられている。上支持部材6は、例えばバネ部材である。アーム1は、以上のように下側軸受け部材3と上側軸受け部材5により移動可能に支持される。なお、アーム1を移動させるための駆動機構も筐体内に設けられるのが一般的であるが、発明に直接関係しないので、図示および説明は省略する。
【0005】
なお、アーム(移動部材)を移動可能に支持する機構は、図2のような構成に限られず、空気軸受けなどを利用した各種の構成がある。
【0006】
図3は、アームの移動に伴う影響を説明する図である。図3の(A)は、アーム1の中央部が筐体2に位置した、筐体2に対する回転モーメントの小さいバランスした状態を示し、(B)は、アーム1が移動可能範囲の端に移動して、筐体2に対する大きな回転モーメントを生じるアンバランスの状態を示す。参照番号7はアーム1の先端に設けられた図1の取り付け部56および変位計57に相当する部材であり、8は筐体2を支持し、垂直軸9に沿って移動するZ軸移動部材を示す。
【0007】
図3の(A)に示す状態では、筐体2に対するアーム1および部材7の回転モーメントは小さく、アーム1の撓みはほとんど無視できるとすると、部材7のZ軸方向のずれは非常に小さい。これに対して、図3の(B)に示す状態では、筐体2に対するアーム1および部材7の回転モーメントが大きく、筐体2の下側軸受け部材3および上側軸受け部材5に大きな力が掛かり、軸受けのあそびの分だけアーム1が傾く。
【0008】
また、軸受けは、使用に従って損耗し、その分あそびが増加し、上記のアーム1の傾き量も増加する。
【0009】
上記の真円度測定機、3次元測定機、表面粗計などでは、プローブの支持に図2および図3に示した機構が使用されており、アームの傾きが測定精度に影響する。そこで、特許文献1から3は、アームまたはプローブの傾きを検出するための傾斜計を設け、検出した傾斜量だけアームまたはプローブが傾いていると仮定して補正を行うことにより測定精度を向上する構成を記載している。また、特許文献4は、鉛直方向からの傾きを高分解能で検出する傾斜計を記載している。
【0010】
【特許文献1】特許第3001989号
【特許文献2】特許第3099645号
【特許文献3】特許第3531882号
【特許文献4】特開2003−139530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アームおよびプローブの傾きは、アームを支持する図2に示した軸受け部分のあそびだけでなく、アームの撓みや、図3のZ軸移動部材8の軸受け部のあそび、コラム9の撓み、およびベースの傾きなどによっても生じる。そのため、傾斜計でアームおよびプローブの傾きを検出しただけでは各部がどのように傾いているかは分からず、原因の詳細究明を行うことは難しいという問題があった。
【0012】
アームおよびプローブの傾きに大きく影響するのは、図2に示したアームを支持する軸受け部分のあそびであると考えられる。これまで軸受け部分の傾きおよびあそびによる傾きの変化についての測定は行われていなかった。
【0013】
本発明は、軸受け部分でアーム(移動部材)を支持する移動機構において、アームの傾きを検出する移動軸傾斜検出機構を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を実現するため、本発明の移動軸傾斜検出機構は、移動部材(アーム)の摺動面の離れた2点に接触部材の2個の接触点を接触させ、接触部材の傾きを傾斜計で検出する。
【0015】
すなわち、本発明の移動軸傾斜検出機構は、軸受け部に摺動可能に保持された移動部材の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構であって、前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点を有する接触部材と、前記接触部材に設けられ、前記接触部材の鉛直方向からの変位角度を検出する傾斜計と、を備えることを特徴とする。
【0016】
軸受け部で移動部材の摺動面を支持する場合、移動に差し支えるので摺動面に傾斜計を取り付けることはできず、形状・配線などの関係で、傾斜検出装置の設置は難しく、これまでは行われていなかった。そのため、特許文献1から3に記載されるように、従来は移動部材の移動に差し支えない先端部またはプローブに傾斜計を設けることが考えられるが、重量の関係などから実際には難しい。
【0017】
これに対して、本発明では、移動部材の移動に差し支えないように接触部材の2個の接触点が移動部材の摺動面に接触するように構成し、接触部材の2個の接触点が移動部材の摺動面に接触して接触部材の傾きが移動部材の摺動面の傾きに直接対応するようにして、接触部材に設けた傾斜計で接触部材の傾きを検出することにより移動部材の摺動面の傾きを検出する。
【0018】
移動部材(アーム)を軸受け部に対して移動させた前後における傾斜計の検出した変位角度の差である傾斜変化量を算出する演算部をさらに設け、移動部材の移動に伴う傾きの変化を検出するように構成する。
【0019】
さらに、経時変化を検出するため、初期状態において算出された傾斜変化量を記憶する初期傾斜変化量記憶部をさらに設け、演算部は、算出した傾斜変化量と、初期傾斜変化量記憶部に記憶された初期状態の傾斜変化量との差を算出する。この差が大きい場合には、軸受け部に大きな損耗があると考えられる。
【0020】
また、軸受け部を支持する支持部材(筐体)自体が傾いた場合には移動部材(アーム)も傾く。そこで、支持部材の傾きの影響を算出して除くため、軸受け部の支持部材の鉛直方向からの変位角度を検出する基体傾斜計をさらに設け、傾斜計と基体傾斜計の検出した変位角度の差である基準差を算出する演算部を設ける。
さらに、初期状態において算出された基準差を記憶する初期基準差記憶部をさらに設け、演算部は、算出した基準差と、初期基準差記憶部に記憶された初期状態の基準差との差を算出する。これにより軸受け部の経時変化が検出できる。
また、移動部材を軸受け部に対して移動した前後の基準差を算出するようにしてもよく、この移動前後の基準差の変化の経時変化を検出するようにしてもよい。
【0021】
接触部材は、移動部材の上側の摺動面の離れた2点に接触させるなどの配置が考えられるが、接触部材の2個の接触点を移動部材の摺動面の離れた2点に接触させる付勢機構を設けて確実に接触させることが考えられる。
しかし、接触部材の2個の接触点は移動部材の摺動面の離れた2点に接触しても、移動部材の摺動面を損傷しないことが要求される。そのため、接触圧を非常に小さく設定することなどが考えられるが、それでも接触点が常時摺動面に接触していたのでは摺動面の損耗は避けられない場合には、付勢部材は、接触部材の2個の接触点が移動部材の摺動面の離れた2点に接触する状態と接触しない状態を切り替える切替機構をさらに備え、移動部材の摺動面の傾きを検出する時のみ、接触点が摺動面に接触するようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、軸受け部で移動部材の摺動面を支持する移動機構において、摺動面の傾きを検出可能になり、移動部材の移動に伴う傾きの変化を検出できる。これにより、軸受け部の損耗などを評価可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図4は、本発明の第1実施形態の移動機構の支持部分の構成を示す図であり、図2に対応する図である。
【0024】
図4に示すように、第1実施形態の移動機構は、図2と同様に、筐体2と、下側軸受け部材3と、下支持部材4と、上側軸受け部材5と、上支持部材6と、を備え、アーム(移動部材)1の摺動面を、移動可能に支持する。なお、アーム1を移動可能に支持する機構は、図示の構成に限られない。
【0025】
第1実施形態の移動機構は、さらにアーム1の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点11を有する接触部材12と、接触部材12をアーム1の摺動面に接触するように付勢する付勢部材13と、筐体2に付勢部材13を保持するように設けられた保持部材14と、接触部材12の鉛直方向からの変位角度を検出するように接触部材12に設けられた傾斜計15と、傾斜計15の検出結果を演算する演算部16と、を備える。演算部16は、コンピュータなどで構成され、演算結果を記憶する不揮発性のメモリで構成される初期値記憶部17を有する。付勢部材13は、例えばバネである。傾斜計15は、重力方向(鉛直方向)に対する絶対水平を検出する電子式の水準器であり、例えば特許文献4に記載されたような構成を有する。
【0026】
接触部材12に設けた2個の接触点11がアーム1の摺動面の離れた2点に接触することにより、接触部材12は、アーム1の摺動面の傾きに対応した傾きになるので、接触部材12に取り付けられた傾斜計15で鉛直方向からの傾きを検出すれば、アーム1の摺動面の傾きを検出できる。接触部材12は、図示していない位置規制部材により、アーム1の摺動面の所定の位置に接触するように構成されている。
【0027】
図5は、第1実施形態の移動機構において、アーム1が図3の(A)と(B)のような移動を行った場合の、支持部分におけるアーム1の傾きの差を算出する処理を示すフローチャートである。
【0028】
ステップ101では、図3の(A)に示すように、アーム1がもっとも右側に位置する最短位置に移動する。
【0029】
ステップ102では、傾斜計15の出力を検出データD1として読み取る。
【0030】
ステップ103では、図3の(B)に示すように、アーム1がもっとも左側に位置する最遠位置に移動する。
【0031】
ステップ104では、傾斜計15の出力を検出データD2として読み取る。
【0032】
ステップ105では、D1とD2の差D1−D2を算出する。これが、最短位置と最遠位置におけるアーム1の傾きの差である。
【0033】
ステップ106では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値Tより大きいかを判定し、小さければステップ107に進み、大きければステップ108に進む。
【0034】
ステップ107では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値Tより小さいので、アーム1の移動に伴う傾きの変化は許容範囲であり、正常である。従って、通常動作を開始し、必要に応じて正常であることを報知する。
【0035】
ステップ108では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値Tより大きいので、アーム1の移動に伴う傾きの変化は許容範囲を超えており、軸受け部などの損耗が大きいなど何らかの原因があると考えられるので、異常であることを報知する。
【0036】
なお、算出した差D1−D2を使用して、アーム1の先端部の傾きによる誤差を算出して補正を行うことも可能である。また、アーム1の先端部に傾斜計が設けられている場合には、その検出データとの差を算出することにより、アーム1の撓みを検出することができる。
【0037】
図6は、第1実施形態における別の処理を示すフローチャートである。この処理では、アーム1の傾きの変化の経時変化を算出する。
【0038】
ステップ201からステップ203は、移動機構を設置した初期化時に行う。
【0039】
ステップ201では、アーム1の最短位置における傾斜計15の出力を検出データD1として読み取る。
【0040】
ステップ202では、アーム1の最遠位置における傾斜計15の出力を検出データD2として読み取る。
【0041】
ステップ203では、D1とD2の差DXを算出して、初期値記憶部17に記憶する。従って、差DXは、永久的に保持される。
【0042】
これ以降のステップは、定期的にまたは使用状況などに応じて随時行われる。
【0043】
ステップ204では、アーム1の最短位置における傾斜計15の出力を検出データD1’として読み取る。
【0044】
ステップ205では、アーム1の最遠位置における傾斜計15の出力を検出データD2’として読み取る。
【0045】
ステップ206では、D1’とD2’の差DX’を算出する。
【0046】
ステップ207では、差DXと差DX’の差の絶対値が所定の経時閾値T1より大きいかを判定し、小さければステップ208に進み、大きければステップ209に進む。
【0047】
ステップ208では、差DXと差DX’の差の絶対値が経時閾値T1より小さいので、初期状態からの変化が小さく、軸受け部の損耗などは小さいと考えられるので正常であり、通常動作を開始する。
【0048】
ステップ209では、差DXと差DX’の絶対値が経時閾値T1より大きいので、軸受け部の損耗などが大きいと考えられるので、異常であることを報知する。
【0049】
第1実施形態では、図3に示すような構成で、アーム1を含む部分の回転モーメントの変化によるZ軸移動部材8の軸受け部やコラム(垂直軸)9の傾き変化を含めたアーム1の傾き変化を検出することになる。これでは、筐体2の軸受け部による傾き変化のみを検出することはできない。そこで、本発明の第2実施形態では、筐体2の軸受け部による傾き変化のみを検出可能にする。
【0050】
図7は、本発明の第2実施形態の移動機構の支持部分の構成を示す図であり、筐体2に基体傾斜計18が設けられている点が、第1実施形態と異なり、他の部分は第1実施形態と同じである。なお、演算部16も設けられているが、図示を省略している。また、ここでは、傾斜計15が傾斜計Aに、傾斜計18が傾斜計Bに対応するとする。
【0051】
図8は、第2実施形態の移動機構において、軸受け部の傾きの経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【0052】
ステップ301では、アーム1を所定の位置に移動する。
【0053】
ステップ302では、傾斜計A15の出力を検出データDAとして読み取る。
【0054】
ステップ303では、傾斜計B18の出力を検出データDBとして読み取る。
【0055】
ステップ304では、DA−DB=DY(基準差)を算出して、初期値記憶部に記憶する。従って、差DXは、永久的に保持される。これ以降のステップは、定期的にまたは使用状況などに応じて随時行われる。
【0056】
ステップ305では、アーム1をステップ301と同じ所定の位置に移動する。
ステップ306では、傾斜計A15の出力を検出データDA’として読み取る。
ステップ307では、傾斜計B18の出力を検出データDB’として読み取る。
ステップ308では、DA’とDB’の差DY’(基準差)を算出する。
【0057】
ステップ309では、差DYと差DY’の差(基準差の経時変化量)の絶対値が所定の閾値T2より大きいかを判定し、小さければステップ310に進み、大きければステップ311に進む。
【0058】
ステップ310では、差DYと差DY’の差の絶対値が閾値T2より小さいので、初期状態からの変化が小さく、軸受け部の損耗などは小さいと考えられるので正常であり、通常動作を開始する。
【0059】
ステップ311では、差DYと差DY’の絶対値が閾値T2より大きいので、軸受け部の損耗などが大きいと考えられるので、異常であることを報知する。
【0060】
図9は、第2実施形態の移動機構において、アーム1が図3の(A)と(B)のような移動を行った場合の、支持部分におけるアーム1の傾きの差を算出する処理を示すフローチャートである。
【0061】
ステップ401では、アーム1を最短位置に移動する。
ステップ402では、傾斜計A15の出力を検出データD1Aとして読み取る。
ステップ403では、傾斜計B18の出力を検出データD1Bとして読み取る。
ステップ404では、D1A−D1B=D1X(基準差)を算出して、記憶する。
【0062】
ステップ405では、アーム1を最遠位置に移動する。
ステップ406では、傾斜計A15の出力を検出データD2Aとして読み取る。
ステップ407では、傾斜計B18の出力を検出データD2Bとして読み取る。
ステップ408では、D2A−D2B=D2X(基準差)を算出して、記憶する。
【0063】
ステップ409では、D1XとD2Xの差(基準差の移動変化量)の絶対値が所定の閾値T3より大きいかを判定し、小さければステップ410に進み、大きければステップ411に進む。
【0064】
ステップ410では、D1XとD2Xの差の絶対値が所定の閾値T3より小さいので、移動機構の支持部分の軸受け部は正常であり、通常動作を開始する。
【0065】
ステップ411では、D1XとD2Xの差の絶対値が所定の閾値T3より大きいので、移動機構の支持部分の軸受け部の損耗が大きいと考えられ、異常であることを報知する。
【0066】
図10は、第2実施形態の移動機構において、アーム1が図3の(A)と(B)のような移動を行った場合の、支持部分におけるアーム1の基準差の移動変化量の経時変化を算出する処理を示すフローチャートである。
【0067】
ステップ501では、図3の(A)に示すように、アーム1がもっとも右側に位置する最短位置に移動する。
ステップ502では、図9のステップ402〜404を行って、D1Xを算出する。
【0068】
ステップ503では、図3の(B)に示すように、アーム1がもっとも左側に位置する最遠位置に移動する。
ステップ504では、図9のステップ406〜408を行って、D2Xを算出する。
ステップ505では、D1X−D2X=DYを算出して、初期値記憶部に記憶する。従って、差DYは、永久的に保持される。これ以降のステップは、定期的にまたは使用状況などに応じて随時行われる。
【0069】
ステップ506では、アーム1を最短置に移動する。
ステップ507では、図9のステップ402〜404を行って、D1Xを算出して、それをD1X’とする。
【0070】
ステップ508では、アーム1を最遠位置に移動する。
ステップ509では、図9のステップ406〜408を行って、D2Xを算出して、それをD2X’とする。
ステップ510では、D1X’−D2X’=DY’を算出する。
【0071】
ステップ511では、DYとDY’の差の絶対値が所定の閾値T4より大きいかを判定し、小さければステップ512に進み、大きければステップ513に進む。
【0072】
ステップ512では、DYとDY’の差の絶対値が所定の閾値T4より小さいので、移動機構の支持部分の軸受け部は正常であり、通常動作を開始する。
【0073】
ステップ513では、DYとDY’の差の絶対値が所定の閾値T4より大きいので、移動機構の支持部分の軸受け部の損耗が大きいと考えられ、異常であることを報知する。
【0074】
第1および第2実施形態では、接触部材12に設けられた2個の接触点11は、アーム1の摺動面に常時接触する構成である。このため、接触点11が損耗したり、アーム1の摺動面を損傷する恐れがある。第3実施形態では、この問題を解決する。
【0075】
図11は、本発明の第3実施形態の移動機構の構成を示す図であり、(A)は非接触状態を、(B)は接触状態を示す。
【0076】
図11に示すように、第3実施形態の移動機構は、第1実施形態と同様に、筐体2と、下側軸受け部材3と、下支持部材4と、上側軸受け部材5と、上支持部材6と、を備え、アーム(移動部材)1の摺動面を、移動可能に支持する。第3実施形態の移動機構は、さらに、アーム1の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点11を有する接触部材12と、接触部材12をアーム1の摺動面に接触するように付勢する付勢部材13と、付勢部材13を支持し、回転軸22を有する付勢支持部材21と、筐体2に設けられた回転軸24と、付勢支持部材21の回転軸22と回転軸24を係合する係合部材23と、筐体2に設けられ、係合部材23を上側に押し上げるアクチュエータ25と、接触部材12に設けられた傾斜計26と、を有する。傾斜計26の検出結果を演算する演算部も設けられているが、図示は省略している。アクチュエータ25は、例えば、ピエゾ素子で構成される。この場合も、各部材は図示していない位置規制部材により、接触部材12の接触点11がアーム1の摺動面の所定の位置に接触するように構成されており、退避時も接触点11とアーム1の摺動面の間隔は小さいが確実に接触しないように構成されている。
【0077】
アクチュエータ25に電圧を印加しない状態では、図11の(A)に示すように、係合部材23は下側に傾いており、付勢支持部材21は降下した状態で、接触部材12は、2個の接触点11がアーム1の摺動面に接触しない状態に位置する。
【0078】
アクチュエータ25に電圧を印加すると、図11の(B)に示すように、係合部材23は上側に傾き、付勢支持部材21は上昇し、接触部材12は、2個の接触点11がアーム1の摺動面に接触する状態に位置する。付勢部材13により、2個の接触点11はアーム1の摺動面に所定の圧力で接触する。これにより、接触部材12は、アーム1の摺動面の傾きに対応した傾きになるので、接触部材12に取り付けられた傾斜計26で鉛直方向からの傾きを検出すれば、アーム1の摺動面の傾きを検出できる。
【0079】
図11の(B)の状態にしてアーム1の傾きを検出し、傾きの検出が終了すると、図11の(A)の状態にして、アーム1を移動させる。これにより、接触点11が損耗したり、アーム1の摺動面を損傷する恐れはなくなる。
【0080】
第3実施形態の移動機構の構成は、第1および第2実施形態にも適用可能である。
【0081】
第1及び第2実施形態では、接触部材12の2個の接触点11は、付勢部材13によりアーム1の下側の摺動面の離れた2点に接触するように構成されたが、図12に示すように、接触部材12がアーム1の上側の摺動面に接触するように構成してもよい。この場合も、図示していない位置規制部材により、接触部材12の2個の接触点11が、アーム1の上側の摺動面の所定位置に接触するように構成されている。この場合、接触部材12は傾斜計15を含めた自重で接触するようにしてもよいが、それで接触圧が大きくなりすぎる時には、接触圧を低減するような機構を設けてもよい。また、この場合も、第3実施形態のような退避機構を設けて、検出時のみ接触部材12の2個の接触点11が、アーム1の上側の摺動面に接触するように構成することも可能である。
【0082】
第1から第3実施形態の移動機構を使用することにより、移動部材(アーム)の先端位置のずれを算出して、ずれ分を補正することにより、測定装置の測定精度を向上させたり、加工装置の加工精度を向上させることが可能である。
図13は、図1に示した真円度測定機のZ軸移動部材54の部分に第1実施形態の移動機構の構成を適用し、アーム55の傾斜を測定するようにした真円度測定機の概略構成を示す図である。
図13に示すように、真円度測定機には、制御・データ処理部61が設けられている。参照番号62は、真円度測定機に設けられたコラム53、Z軸移動部材54およびアーム55の移動位置を検出するセンサを示す。
【0083】
制御・データ処理部61は、真円度測定機の各部の駆動機構を制御すると共に、変位計57からのプローブ58の変位を示す検出信号、回転台52の回転位置センサの出力する回転位置信号、センサ62の出力するコラム53、Z軸移動部材54と、Z軸移動部材54およびアーム55の移動位置信号に基づいて、プローブ58の位置を算出する。ここでは、制御・データ処理部61は、Z軸移動部材54に設けられた移動機構の演算部16からの傾斜信号により、算出したプローブ58の位置を補正する。補正は、例えば、アーム55のZ軸移動部材54からプローブ58までの水平距離に傾斜量を乗じた量をZ軸方向(高さ方向)の位置ずれとして行う。また、アーム55の撓みなどを考慮する場合もある。さらに、アーム55の移動位置により傾斜量が変化する時には、あらかじめ移動位置に応じたて補正する。補正方法には各種の方法が可能である。
【0084】
図14は、制御・データ処理部61の補正処理を示すフローチャートである。
ステップ601では、図3の(A)に示すように、アーム1がもっとも右側に位置する最短位置に移動する。
ステップ602では、傾斜計15の出力を、演算部16を介して検出データD1として読み取る。
ステップ603では、図3の(B)に示すように、アーム1がもっとも左側に位置する最遠位置に移動する。
ステップ604では、傾斜計15の出力を、演算部16を介して検出データD2として読み取る。
ステップ605では、D1とD2の差D1−D2を算出する。
【0085】
ステップ606では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T5より大きいかを判定し、小さければステップ608に進み、大きければステップ607に進む。閾値T5は、図5のTと同じであっても異なってもよい。
ステップ607では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T5より大きいので、補正可能な許容範囲を超えており、軸受け部などの損耗が大きいなど何らかの原因があると考えられるので、異常であることを報知する。
【0086】
ステップ608では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T6より大きいかを判定し、小さければステップ609に進み、大きければステップ610に進む。
ステップ608では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T6より小さいので、アーム1の移動に伴う傾きの変化は補正の必要がないので、そのまま通常動作を開始する。
【0087】
ステップ610では、差D1−D2から、アームの移動位置に応じたプローブ58の高さ方向の位置ずれを算出する方程式やルックアップテーブルを作成する。
ステップ611では、測定動作を開始するが、測定値の算出においては、ステップ610で求めた位置ずれ算出式に基づいて、アーム移動位置に応じたプローブ58の位置ずれを補正する。
【0088】
以上、本発明の実施形態を説明したが、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。例えば、第1から第3実施形態では、水平方向に移動するアームの水平面に対する傾きの変化を検出したが、アームが垂直方向に移動する移動機構に本発明を適用することも可能であり、その場合には、接触部材に取り付ける傾斜計の方向を90度変える。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、移動部材が軸受部に対し重心移動する(回転モーメントの変化が生じる)移動機構であれば、どのようなものにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】真円度測定機の構成を示す図である。
【図2】軸受け部に支持されたアームが移動する従来の移動機構の構成を示す図である。
【図3】従来の移動機構におけるアーム移動に伴う傾き変化を説明する図である。
【図4】本発明の第1実施形態の移動機構の構成を示す図である。
【図5】第1実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化の経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態の移動機構の構成を示す図である。
【図8】第2実施形態の移動機構において傾きの経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化の経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態の移動機構の構成を示す図である。
【図12】移動機構の変形例の構成を示す図である。
【図13】真円度測定機に実施形態の移動機構を適用した場合の構成を示す図である。
【図14】実施形態の移動機構を適用した真円度測定機における補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1 移動部材(アーム)
2 筐体
3 下側軸受け部
4 下支持部材
5 上側軸受け部
6 上支持部材
11 接触点
12 接触部材
13 付勢部材
15 傾斜計
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受け部に摺動可能に保持された移動部材の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構およびそれを使用した測定装置に関し、特に移動部材の移動に伴う移動軸の傾斜変化や軸受け部の損耗に起因する移動軸の傾斜変化を検出する移動軸傾斜検出機構および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1軸移動機構、および1軸移動機構を組み合わせた2軸または3軸移動機構が広く使用されている。一般の1軸移動機構は、一般に固定軸に対して移動部材が移動する機構を有するが、構造の関係から軸受け部で支持された移動軸が移動する機構も使用される。図1は、そのような機構が使用される真円度測定機の構成を示す図である。図示のように、真円度測定機は、ベース51と、ベース51に設けられた回転台52と、ベース51に設けられたコラム53と、コラム53に沿って上下方向に移動するZ軸移動部材54と、Z軸移動部材54に支持され、X軸方向に移動するアーム55と、アーム55の先端に設けられた取り付け部56と、取り付け部56に設けられ、プローブ58の変位を検出する変位計57と、を有する。回転台52の上にワークWを載置し、Z軸移動部材54およびアーム55を適宜移動してプローブ58をワークWの表面に接触させた状態で、回転台52を回転させて回転に伴うプローブ58の変位を検出する。
【0003】
Z軸移動部材54は、コラム53に軸受け部材により係合されており、コラム53の摺動面に沿って移動する。また、Z軸移動部材54には、アーム55の摺動面を支持する軸受け部材が設けられており、アーム55を移動可能に支持している。アーム55の移動に伴い、図1の面内でのアーム55のZ軸移動部材54に対する回転モーメントが変化し、アーム55自体の撓みや軸受け部材のあそびの分だけ取り付け部56、すなわち変位計57の位置がZ軸方向に変化する。この変化は、ワークWの上表面の面形状の測定などに影響する。
同様にZ軸移動部材54がコラム53の摺動面に沿ってZ軸方向に移動した場合も、コラム53の摺動面が変化し、ワークWの上表面の面形状の測定などに影響する。
【0004】
図2は、Z軸移動部材54のアーム55の支持部などに使用される一般的な移動機構の支持部分の構成を示す図である。図示のように、筐体2の下側に設けられた下支持部材4の上に下側軸受け部材3が設けられており、その上にアーム1(55)の摺動面が支持される。アーム1の上側の摺動面は、筐体2の上側に設けられた上支持部材6の上に設けられた上側軸受け部材5により下側軸受け部材3に押し付けられている。上支持部材6は、例えばバネ部材である。アーム1は、以上のように下側軸受け部材3と上側軸受け部材5により移動可能に支持される。なお、アーム1を移動させるための駆動機構も筐体内に設けられるのが一般的であるが、発明に直接関係しないので、図示および説明は省略する。
【0005】
なお、アーム(移動部材)を移動可能に支持する機構は、図2のような構成に限られず、空気軸受けなどを利用した各種の構成がある。
【0006】
図3は、アームの移動に伴う影響を説明する図である。図3の(A)は、アーム1の中央部が筐体2に位置した、筐体2に対する回転モーメントの小さいバランスした状態を示し、(B)は、アーム1が移動可能範囲の端に移動して、筐体2に対する大きな回転モーメントを生じるアンバランスの状態を示す。参照番号7はアーム1の先端に設けられた図1の取り付け部56および変位計57に相当する部材であり、8は筐体2を支持し、垂直軸9に沿って移動するZ軸移動部材を示す。
【0007】
図3の(A)に示す状態では、筐体2に対するアーム1および部材7の回転モーメントは小さく、アーム1の撓みはほとんど無視できるとすると、部材7のZ軸方向のずれは非常に小さい。これに対して、図3の(B)に示す状態では、筐体2に対するアーム1および部材7の回転モーメントが大きく、筐体2の下側軸受け部材3および上側軸受け部材5に大きな力が掛かり、軸受けのあそびの分だけアーム1が傾く。
【0008】
また、軸受けは、使用に従って損耗し、その分あそびが増加し、上記のアーム1の傾き量も増加する。
【0009】
上記の真円度測定機、3次元測定機、表面粗計などでは、プローブの支持に図2および図3に示した機構が使用されており、アームの傾きが測定精度に影響する。そこで、特許文献1から3は、アームまたはプローブの傾きを検出するための傾斜計を設け、検出した傾斜量だけアームまたはプローブが傾いていると仮定して補正を行うことにより測定精度を向上する構成を記載している。また、特許文献4は、鉛直方向からの傾きを高分解能で検出する傾斜計を記載している。
【0010】
【特許文献1】特許第3001989号
【特許文献2】特許第3099645号
【特許文献3】特許第3531882号
【特許文献4】特開2003−139530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アームおよびプローブの傾きは、アームを支持する図2に示した軸受け部分のあそびだけでなく、アームの撓みや、図3のZ軸移動部材8の軸受け部のあそび、コラム9の撓み、およびベースの傾きなどによっても生じる。そのため、傾斜計でアームおよびプローブの傾きを検出しただけでは各部がどのように傾いているかは分からず、原因の詳細究明を行うことは難しいという問題があった。
【0012】
アームおよびプローブの傾きに大きく影響するのは、図2に示したアームを支持する軸受け部分のあそびであると考えられる。これまで軸受け部分の傾きおよびあそびによる傾きの変化についての測定は行われていなかった。
【0013】
本発明は、軸受け部分でアーム(移動部材)を支持する移動機構において、アームの傾きを検出する移動軸傾斜検出機構を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を実現するため、本発明の移動軸傾斜検出機構は、移動部材(アーム)の摺動面の離れた2点に接触部材の2個の接触点を接触させ、接触部材の傾きを傾斜計で検出する。
【0015】
すなわち、本発明の移動軸傾斜検出機構は、軸受け部に摺動可能に保持された移動部材の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構であって、前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点を有する接触部材と、前記接触部材に設けられ、前記接触部材の鉛直方向からの変位角度を検出する傾斜計と、を備えることを特徴とする。
【0016】
軸受け部で移動部材の摺動面を支持する場合、移動に差し支えるので摺動面に傾斜計を取り付けることはできず、形状・配線などの関係で、傾斜検出装置の設置は難しく、これまでは行われていなかった。そのため、特許文献1から3に記載されるように、従来は移動部材の移動に差し支えない先端部またはプローブに傾斜計を設けることが考えられるが、重量の関係などから実際には難しい。
【0017】
これに対して、本発明では、移動部材の移動に差し支えないように接触部材の2個の接触点が移動部材の摺動面に接触するように構成し、接触部材の2個の接触点が移動部材の摺動面に接触して接触部材の傾きが移動部材の摺動面の傾きに直接対応するようにして、接触部材に設けた傾斜計で接触部材の傾きを検出することにより移動部材の摺動面の傾きを検出する。
【0018】
移動部材(アーム)を軸受け部に対して移動させた前後における傾斜計の検出した変位角度の差である傾斜変化量を算出する演算部をさらに設け、移動部材の移動に伴う傾きの変化を検出するように構成する。
【0019】
さらに、経時変化を検出するため、初期状態において算出された傾斜変化量を記憶する初期傾斜変化量記憶部をさらに設け、演算部は、算出した傾斜変化量と、初期傾斜変化量記憶部に記憶された初期状態の傾斜変化量との差を算出する。この差が大きい場合には、軸受け部に大きな損耗があると考えられる。
【0020】
また、軸受け部を支持する支持部材(筐体)自体が傾いた場合には移動部材(アーム)も傾く。そこで、支持部材の傾きの影響を算出して除くため、軸受け部の支持部材の鉛直方向からの変位角度を検出する基体傾斜計をさらに設け、傾斜計と基体傾斜計の検出した変位角度の差である基準差を算出する演算部を設ける。
さらに、初期状態において算出された基準差を記憶する初期基準差記憶部をさらに設け、演算部は、算出した基準差と、初期基準差記憶部に記憶された初期状態の基準差との差を算出する。これにより軸受け部の経時変化が検出できる。
また、移動部材を軸受け部に対して移動した前後の基準差を算出するようにしてもよく、この移動前後の基準差の変化の経時変化を検出するようにしてもよい。
【0021】
接触部材は、移動部材の上側の摺動面の離れた2点に接触させるなどの配置が考えられるが、接触部材の2個の接触点を移動部材の摺動面の離れた2点に接触させる付勢機構を設けて確実に接触させることが考えられる。
しかし、接触部材の2個の接触点は移動部材の摺動面の離れた2点に接触しても、移動部材の摺動面を損傷しないことが要求される。そのため、接触圧を非常に小さく設定することなどが考えられるが、それでも接触点が常時摺動面に接触していたのでは摺動面の損耗は避けられない場合には、付勢部材は、接触部材の2個の接触点が移動部材の摺動面の離れた2点に接触する状態と接触しない状態を切り替える切替機構をさらに備え、移動部材の摺動面の傾きを検出する時のみ、接触点が摺動面に接触するようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、軸受け部で移動部材の摺動面を支持する移動機構において、摺動面の傾きを検出可能になり、移動部材の移動に伴う傾きの変化を検出できる。これにより、軸受け部の損耗などを評価可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図4は、本発明の第1実施形態の移動機構の支持部分の構成を示す図であり、図2に対応する図である。
【0024】
図4に示すように、第1実施形態の移動機構は、図2と同様に、筐体2と、下側軸受け部材3と、下支持部材4と、上側軸受け部材5と、上支持部材6と、を備え、アーム(移動部材)1の摺動面を、移動可能に支持する。なお、アーム1を移動可能に支持する機構は、図示の構成に限られない。
【0025】
第1実施形態の移動機構は、さらにアーム1の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点11を有する接触部材12と、接触部材12をアーム1の摺動面に接触するように付勢する付勢部材13と、筐体2に付勢部材13を保持するように設けられた保持部材14と、接触部材12の鉛直方向からの変位角度を検出するように接触部材12に設けられた傾斜計15と、傾斜計15の検出結果を演算する演算部16と、を備える。演算部16は、コンピュータなどで構成され、演算結果を記憶する不揮発性のメモリで構成される初期値記憶部17を有する。付勢部材13は、例えばバネである。傾斜計15は、重力方向(鉛直方向)に対する絶対水平を検出する電子式の水準器であり、例えば特許文献4に記載されたような構成を有する。
【0026】
接触部材12に設けた2個の接触点11がアーム1の摺動面の離れた2点に接触することにより、接触部材12は、アーム1の摺動面の傾きに対応した傾きになるので、接触部材12に取り付けられた傾斜計15で鉛直方向からの傾きを検出すれば、アーム1の摺動面の傾きを検出できる。接触部材12は、図示していない位置規制部材により、アーム1の摺動面の所定の位置に接触するように構成されている。
【0027】
図5は、第1実施形態の移動機構において、アーム1が図3の(A)と(B)のような移動を行った場合の、支持部分におけるアーム1の傾きの差を算出する処理を示すフローチャートである。
【0028】
ステップ101では、図3の(A)に示すように、アーム1がもっとも右側に位置する最短位置に移動する。
【0029】
ステップ102では、傾斜計15の出力を検出データD1として読み取る。
【0030】
ステップ103では、図3の(B)に示すように、アーム1がもっとも左側に位置する最遠位置に移動する。
【0031】
ステップ104では、傾斜計15の出力を検出データD2として読み取る。
【0032】
ステップ105では、D1とD2の差D1−D2を算出する。これが、最短位置と最遠位置におけるアーム1の傾きの差である。
【0033】
ステップ106では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値Tより大きいかを判定し、小さければステップ107に進み、大きければステップ108に進む。
【0034】
ステップ107では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値Tより小さいので、アーム1の移動に伴う傾きの変化は許容範囲であり、正常である。従って、通常動作を開始し、必要に応じて正常であることを報知する。
【0035】
ステップ108では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値Tより大きいので、アーム1の移動に伴う傾きの変化は許容範囲を超えており、軸受け部などの損耗が大きいなど何らかの原因があると考えられるので、異常であることを報知する。
【0036】
なお、算出した差D1−D2を使用して、アーム1の先端部の傾きによる誤差を算出して補正を行うことも可能である。また、アーム1の先端部に傾斜計が設けられている場合には、その検出データとの差を算出することにより、アーム1の撓みを検出することができる。
【0037】
図6は、第1実施形態における別の処理を示すフローチャートである。この処理では、アーム1の傾きの変化の経時変化を算出する。
【0038】
ステップ201からステップ203は、移動機構を設置した初期化時に行う。
【0039】
ステップ201では、アーム1の最短位置における傾斜計15の出力を検出データD1として読み取る。
【0040】
ステップ202では、アーム1の最遠位置における傾斜計15の出力を検出データD2として読み取る。
【0041】
ステップ203では、D1とD2の差DXを算出して、初期値記憶部17に記憶する。従って、差DXは、永久的に保持される。
【0042】
これ以降のステップは、定期的にまたは使用状況などに応じて随時行われる。
【0043】
ステップ204では、アーム1の最短位置における傾斜計15の出力を検出データD1’として読み取る。
【0044】
ステップ205では、アーム1の最遠位置における傾斜計15の出力を検出データD2’として読み取る。
【0045】
ステップ206では、D1’とD2’の差DX’を算出する。
【0046】
ステップ207では、差DXと差DX’の差の絶対値が所定の経時閾値T1より大きいかを判定し、小さければステップ208に進み、大きければステップ209に進む。
【0047】
ステップ208では、差DXと差DX’の差の絶対値が経時閾値T1より小さいので、初期状態からの変化が小さく、軸受け部の損耗などは小さいと考えられるので正常であり、通常動作を開始する。
【0048】
ステップ209では、差DXと差DX’の絶対値が経時閾値T1より大きいので、軸受け部の損耗などが大きいと考えられるので、異常であることを報知する。
【0049】
第1実施形態では、図3に示すような構成で、アーム1を含む部分の回転モーメントの変化によるZ軸移動部材8の軸受け部やコラム(垂直軸)9の傾き変化を含めたアーム1の傾き変化を検出することになる。これでは、筐体2の軸受け部による傾き変化のみを検出することはできない。そこで、本発明の第2実施形態では、筐体2の軸受け部による傾き変化のみを検出可能にする。
【0050】
図7は、本発明の第2実施形態の移動機構の支持部分の構成を示す図であり、筐体2に基体傾斜計18が設けられている点が、第1実施形態と異なり、他の部分は第1実施形態と同じである。なお、演算部16も設けられているが、図示を省略している。また、ここでは、傾斜計15が傾斜計Aに、傾斜計18が傾斜計Bに対応するとする。
【0051】
図8は、第2実施形態の移動機構において、軸受け部の傾きの経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【0052】
ステップ301では、アーム1を所定の位置に移動する。
【0053】
ステップ302では、傾斜計A15の出力を検出データDAとして読み取る。
【0054】
ステップ303では、傾斜計B18の出力を検出データDBとして読み取る。
【0055】
ステップ304では、DA−DB=DY(基準差)を算出して、初期値記憶部に記憶する。従って、差DXは、永久的に保持される。これ以降のステップは、定期的にまたは使用状況などに応じて随時行われる。
【0056】
ステップ305では、アーム1をステップ301と同じ所定の位置に移動する。
ステップ306では、傾斜計A15の出力を検出データDA’として読み取る。
ステップ307では、傾斜計B18の出力を検出データDB’として読み取る。
ステップ308では、DA’とDB’の差DY’(基準差)を算出する。
【0057】
ステップ309では、差DYと差DY’の差(基準差の経時変化量)の絶対値が所定の閾値T2より大きいかを判定し、小さければステップ310に進み、大きければステップ311に進む。
【0058】
ステップ310では、差DYと差DY’の差の絶対値が閾値T2より小さいので、初期状態からの変化が小さく、軸受け部の損耗などは小さいと考えられるので正常であり、通常動作を開始する。
【0059】
ステップ311では、差DYと差DY’の絶対値が閾値T2より大きいので、軸受け部の損耗などが大きいと考えられるので、異常であることを報知する。
【0060】
図9は、第2実施形態の移動機構において、アーム1が図3の(A)と(B)のような移動を行った場合の、支持部分におけるアーム1の傾きの差を算出する処理を示すフローチャートである。
【0061】
ステップ401では、アーム1を最短位置に移動する。
ステップ402では、傾斜計A15の出力を検出データD1Aとして読み取る。
ステップ403では、傾斜計B18の出力を検出データD1Bとして読み取る。
ステップ404では、D1A−D1B=D1X(基準差)を算出して、記憶する。
【0062】
ステップ405では、アーム1を最遠位置に移動する。
ステップ406では、傾斜計A15の出力を検出データD2Aとして読み取る。
ステップ407では、傾斜計B18の出力を検出データD2Bとして読み取る。
ステップ408では、D2A−D2B=D2X(基準差)を算出して、記憶する。
【0063】
ステップ409では、D1XとD2Xの差(基準差の移動変化量)の絶対値が所定の閾値T3より大きいかを判定し、小さければステップ410に進み、大きければステップ411に進む。
【0064】
ステップ410では、D1XとD2Xの差の絶対値が所定の閾値T3より小さいので、移動機構の支持部分の軸受け部は正常であり、通常動作を開始する。
【0065】
ステップ411では、D1XとD2Xの差の絶対値が所定の閾値T3より大きいので、移動機構の支持部分の軸受け部の損耗が大きいと考えられ、異常であることを報知する。
【0066】
図10は、第2実施形態の移動機構において、アーム1が図3の(A)と(B)のような移動を行った場合の、支持部分におけるアーム1の基準差の移動変化量の経時変化を算出する処理を示すフローチャートである。
【0067】
ステップ501では、図3の(A)に示すように、アーム1がもっとも右側に位置する最短位置に移動する。
ステップ502では、図9のステップ402〜404を行って、D1Xを算出する。
【0068】
ステップ503では、図3の(B)に示すように、アーム1がもっとも左側に位置する最遠位置に移動する。
ステップ504では、図9のステップ406〜408を行って、D2Xを算出する。
ステップ505では、D1X−D2X=DYを算出して、初期値記憶部に記憶する。従って、差DYは、永久的に保持される。これ以降のステップは、定期的にまたは使用状況などに応じて随時行われる。
【0069】
ステップ506では、アーム1を最短置に移動する。
ステップ507では、図9のステップ402〜404を行って、D1Xを算出して、それをD1X’とする。
【0070】
ステップ508では、アーム1を最遠位置に移動する。
ステップ509では、図9のステップ406〜408を行って、D2Xを算出して、それをD2X’とする。
ステップ510では、D1X’−D2X’=DY’を算出する。
【0071】
ステップ511では、DYとDY’の差の絶対値が所定の閾値T4より大きいかを判定し、小さければステップ512に進み、大きければステップ513に進む。
【0072】
ステップ512では、DYとDY’の差の絶対値が所定の閾値T4より小さいので、移動機構の支持部分の軸受け部は正常であり、通常動作を開始する。
【0073】
ステップ513では、DYとDY’の差の絶対値が所定の閾値T4より大きいので、移動機構の支持部分の軸受け部の損耗が大きいと考えられ、異常であることを報知する。
【0074】
第1および第2実施形態では、接触部材12に設けられた2個の接触点11は、アーム1の摺動面に常時接触する構成である。このため、接触点11が損耗したり、アーム1の摺動面を損傷する恐れがある。第3実施形態では、この問題を解決する。
【0075】
図11は、本発明の第3実施形態の移動機構の構成を示す図であり、(A)は非接触状態を、(B)は接触状態を示す。
【0076】
図11に示すように、第3実施形態の移動機構は、第1実施形態と同様に、筐体2と、下側軸受け部材3と、下支持部材4と、上側軸受け部材5と、上支持部材6と、を備え、アーム(移動部材)1の摺動面を、移動可能に支持する。第3実施形態の移動機構は、さらに、アーム1の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点11を有する接触部材12と、接触部材12をアーム1の摺動面に接触するように付勢する付勢部材13と、付勢部材13を支持し、回転軸22を有する付勢支持部材21と、筐体2に設けられた回転軸24と、付勢支持部材21の回転軸22と回転軸24を係合する係合部材23と、筐体2に設けられ、係合部材23を上側に押し上げるアクチュエータ25と、接触部材12に設けられた傾斜計26と、を有する。傾斜計26の検出結果を演算する演算部も設けられているが、図示は省略している。アクチュエータ25は、例えば、ピエゾ素子で構成される。この場合も、各部材は図示していない位置規制部材により、接触部材12の接触点11がアーム1の摺動面の所定の位置に接触するように構成されており、退避時も接触点11とアーム1の摺動面の間隔は小さいが確実に接触しないように構成されている。
【0077】
アクチュエータ25に電圧を印加しない状態では、図11の(A)に示すように、係合部材23は下側に傾いており、付勢支持部材21は降下した状態で、接触部材12は、2個の接触点11がアーム1の摺動面に接触しない状態に位置する。
【0078】
アクチュエータ25に電圧を印加すると、図11の(B)に示すように、係合部材23は上側に傾き、付勢支持部材21は上昇し、接触部材12は、2個の接触点11がアーム1の摺動面に接触する状態に位置する。付勢部材13により、2個の接触点11はアーム1の摺動面に所定の圧力で接触する。これにより、接触部材12は、アーム1の摺動面の傾きに対応した傾きになるので、接触部材12に取り付けられた傾斜計26で鉛直方向からの傾きを検出すれば、アーム1の摺動面の傾きを検出できる。
【0079】
図11の(B)の状態にしてアーム1の傾きを検出し、傾きの検出が終了すると、図11の(A)の状態にして、アーム1を移動させる。これにより、接触点11が損耗したり、アーム1の摺動面を損傷する恐れはなくなる。
【0080】
第3実施形態の移動機構の構成は、第1および第2実施形態にも適用可能である。
【0081】
第1及び第2実施形態では、接触部材12の2個の接触点11は、付勢部材13によりアーム1の下側の摺動面の離れた2点に接触するように構成されたが、図12に示すように、接触部材12がアーム1の上側の摺動面に接触するように構成してもよい。この場合も、図示していない位置規制部材により、接触部材12の2個の接触点11が、アーム1の上側の摺動面の所定位置に接触するように構成されている。この場合、接触部材12は傾斜計15を含めた自重で接触するようにしてもよいが、それで接触圧が大きくなりすぎる時には、接触圧を低減するような機構を設けてもよい。また、この場合も、第3実施形態のような退避機構を設けて、検出時のみ接触部材12の2個の接触点11が、アーム1の上側の摺動面に接触するように構成することも可能である。
【0082】
第1から第3実施形態の移動機構を使用することにより、移動部材(アーム)の先端位置のずれを算出して、ずれ分を補正することにより、測定装置の測定精度を向上させたり、加工装置の加工精度を向上させることが可能である。
図13は、図1に示した真円度測定機のZ軸移動部材54の部分に第1実施形態の移動機構の構成を適用し、アーム55の傾斜を測定するようにした真円度測定機の概略構成を示す図である。
図13に示すように、真円度測定機には、制御・データ処理部61が設けられている。参照番号62は、真円度測定機に設けられたコラム53、Z軸移動部材54およびアーム55の移動位置を検出するセンサを示す。
【0083】
制御・データ処理部61は、真円度測定機の各部の駆動機構を制御すると共に、変位計57からのプローブ58の変位を示す検出信号、回転台52の回転位置センサの出力する回転位置信号、センサ62の出力するコラム53、Z軸移動部材54と、Z軸移動部材54およびアーム55の移動位置信号に基づいて、プローブ58の位置を算出する。ここでは、制御・データ処理部61は、Z軸移動部材54に設けられた移動機構の演算部16からの傾斜信号により、算出したプローブ58の位置を補正する。補正は、例えば、アーム55のZ軸移動部材54からプローブ58までの水平距離に傾斜量を乗じた量をZ軸方向(高さ方向)の位置ずれとして行う。また、アーム55の撓みなどを考慮する場合もある。さらに、アーム55の移動位置により傾斜量が変化する時には、あらかじめ移動位置に応じたて補正する。補正方法には各種の方法が可能である。
【0084】
図14は、制御・データ処理部61の補正処理を示すフローチャートである。
ステップ601では、図3の(A)に示すように、アーム1がもっとも右側に位置する最短位置に移動する。
ステップ602では、傾斜計15の出力を、演算部16を介して検出データD1として読み取る。
ステップ603では、図3の(B)に示すように、アーム1がもっとも左側に位置する最遠位置に移動する。
ステップ604では、傾斜計15の出力を、演算部16を介して検出データD2として読み取る。
ステップ605では、D1とD2の差D1−D2を算出する。
【0085】
ステップ606では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T5より大きいかを判定し、小さければステップ608に進み、大きければステップ607に進む。閾値T5は、図5のTと同じであっても異なってもよい。
ステップ607では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T5より大きいので、補正可能な許容範囲を超えており、軸受け部などの損耗が大きいなど何らかの原因があると考えられるので、異常であることを報知する。
【0086】
ステップ608では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T6より大きいかを判定し、小さければステップ609に進み、大きければステップ610に進む。
ステップ608では、差D1−D2の差の絶対値が所定の閾値T6より小さいので、アーム1の移動に伴う傾きの変化は補正の必要がないので、そのまま通常動作を開始する。
【0087】
ステップ610では、差D1−D2から、アームの移動位置に応じたプローブ58の高さ方向の位置ずれを算出する方程式やルックアップテーブルを作成する。
ステップ611では、測定動作を開始するが、測定値の算出においては、ステップ610で求めた位置ずれ算出式に基づいて、アーム移動位置に応じたプローブ58の位置ずれを補正する。
【0088】
以上、本発明の実施形態を説明したが、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。例えば、第1から第3実施形態では、水平方向に移動するアームの水平面に対する傾きの変化を検出したが、アームが垂直方向に移動する移動機構に本発明を適用することも可能であり、その場合には、接触部材に取り付ける傾斜計の方向を90度変える。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、移動部材が軸受部に対し重心移動する(回転モーメントの変化が生じる)移動機構であれば、どのようなものにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】真円度測定機の構成を示す図である。
【図2】軸受け部に支持されたアームが移動する従来の移動機構の構成を示す図である。
【図3】従来の移動機構におけるアーム移動に伴う傾き変化を説明する図である。
【図4】本発明の第1実施形態の移動機構の構成を示す図である。
【図5】第1実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化の経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態の移動機構の構成を示す図である。
【図8】第2実施形態の移動機構において傾きの経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態の移動機構においてアームの移動に伴う傾き変化の経時変化を検出する処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態の移動機構の構成を示す図である。
【図12】移動機構の変形例の構成を示す図である。
【図13】真円度測定機に実施形態の移動機構を適用した場合の構成を示す図である。
【図14】実施形態の移動機構を適用した真円度測定機における補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1 移動部材(アーム)
2 筐体
3 下側軸受け部
4 下支持部材
5 上側軸受け部
6 上支持部材
11 接触点
12 接触部材
13 付勢部材
15 傾斜計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に設けられた軸受け部に摺動可能に保持された移動部材の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構であって、
前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点を有する接触部材と、
前記接触部材に設けられ、前記接触部材の鉛直方向からの変位角度を検出する傾斜計と、を備えることを特徴とする移動軸傾斜検出機構。
【請求項2】
前記接触部材を、前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触するように付勢する付勢部材をさらに備える請求項1に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記接触部材の前記2個の接触点が前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触する状態と接触しない状態を切り替える切替機構をさらに備える請求項1または2に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項4】
前記軸受け部の支持部材の鉛直方向からの変位角度を検出する基体傾斜計をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項5】
前記移動部材を前記軸受け部に対して移動させた前後における前記傾斜計の検出した前記変位角度の差である傾斜変化量を算出する演算部をさらに備える請求項1に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項6】
初期状態において算出された前記傾斜変化量を記憶する初期傾斜変化量記憶部をさらに備え、
前記演算部は、算出した前記傾斜変化量と、前記初期傾斜変化量記憶部に記憶された初期状態の前記傾斜変化量との差を算出する請求項5に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項7】
前記傾斜計と前記基体傾斜計の検出した前記変位角度の差である基準差を算出する演算部をさらに備える請求項4に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項8】
初期状態において算出された前記基準差を記憶する初期基準差記憶部をさらに備え、
前記演算部は、算出した前記基準差と、前記初期基準差記憶部に記憶された初期状態の前記基準差との差を算出する請求項7に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項9】
前記演算部は、前記移動部材を前記軸受け部に対して移動させる前の状態における前記基準差である移動前基準差を算出して記憶し、前記移動部材を前記軸受け部に対して移動した後の状態における前記基準差である移動後基準差を算出して、前記移動前基準差との差である移動基準差変化量を算出する請求項7に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項10】
初期状態において算出された前記移動基準差変化量を記憶する初期基準差変化量記憶部をさらに備え、
前記演算部は、算出した前記移動基準差変化量と、前記初期基準差変化量記憶部に記憶された初期状態の前記移動基準差変化量との差を算出する請求項9に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項11】
移動部材と、
前記移動部材の先端に設けられ、ワークの表面位置を検出するプローブと、
前記移動部材を摺動可能に保持する軸受け部を有する摺動保持部と、
前記移動部材を移動する駆動部と、
前記駆動部を含む各部の制御を行うと共に、前記プローブの検出データを処理して前記ワークの表面形状を算出する制御・データ処理部と、を備える測定装置において、
前記摺動保持部に設けられ、前記移動部材の移動軸の傾斜を検出する請求項1から4のいずれか1項に記載の移動軸傾斜検出機構を、さらに備え、
前記制御・データ処理部は、前記移動軸傾斜検出機構の検出した傾斜に応じて、前記プローブの位置ずれを算出し、算出した位置ずれに基づいて前記検出データを補正して前記ワークの表面形状を算出する測定装置。
【請求項1】
支持部材に設けられた軸受け部に摺動可能に保持された移動部材の移動軸の傾斜を検出する移動軸傾斜検出機構であって、
前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触する2個の接触点を有する接触部材と、
前記接触部材に設けられ、前記接触部材の鉛直方向からの変位角度を検出する傾斜計と、を備えることを特徴とする移動軸傾斜検出機構。
【請求項2】
前記接触部材を、前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触するように付勢する付勢部材をさらに備える請求項1に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記接触部材の前記2個の接触点が前記移動部材の摺動面の離れた2点に接触する状態と接触しない状態を切り替える切替機構をさらに備える請求項1または2に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項4】
前記軸受け部の支持部材の鉛直方向からの変位角度を検出する基体傾斜計をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項5】
前記移動部材を前記軸受け部に対して移動させた前後における前記傾斜計の検出した前記変位角度の差である傾斜変化量を算出する演算部をさらに備える請求項1に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項6】
初期状態において算出された前記傾斜変化量を記憶する初期傾斜変化量記憶部をさらに備え、
前記演算部は、算出した前記傾斜変化量と、前記初期傾斜変化量記憶部に記憶された初期状態の前記傾斜変化量との差を算出する請求項5に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項7】
前記傾斜計と前記基体傾斜計の検出した前記変位角度の差である基準差を算出する演算部をさらに備える請求項4に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項8】
初期状態において算出された前記基準差を記憶する初期基準差記憶部をさらに備え、
前記演算部は、算出した前記基準差と、前記初期基準差記憶部に記憶された初期状態の前記基準差との差を算出する請求項7に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項9】
前記演算部は、前記移動部材を前記軸受け部に対して移動させる前の状態における前記基準差である移動前基準差を算出して記憶し、前記移動部材を前記軸受け部に対して移動した後の状態における前記基準差である移動後基準差を算出して、前記移動前基準差との差である移動基準差変化量を算出する請求項7に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項10】
初期状態において算出された前記移動基準差変化量を記憶する初期基準差変化量記憶部をさらに備え、
前記演算部は、算出した前記移動基準差変化量と、前記初期基準差変化量記憶部に記憶された初期状態の前記移動基準差変化量との差を算出する請求項9に記載の移動軸傾斜検出機構。
【請求項11】
移動部材と、
前記移動部材の先端に設けられ、ワークの表面位置を検出するプローブと、
前記移動部材を摺動可能に保持する軸受け部を有する摺動保持部と、
前記移動部材を移動する駆動部と、
前記駆動部を含む各部の制御を行うと共に、前記プローブの検出データを処理して前記ワークの表面形状を算出する制御・データ処理部と、を備える測定装置において、
前記摺動保持部に設けられ、前記移動部材の移動軸の傾斜を検出する請求項1から4のいずれか1項に記載の移動軸傾斜検出機構を、さらに備え、
前記制御・データ処理部は、前記移動軸傾斜検出機構の検出した傾斜に応じて、前記プローブの位置ずれを算出し、算出した位置ずれに基づいて前記検出データを補正して前記ワークの表面形状を算出する測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−121964(P2009−121964A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296644(P2007−296644)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】
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