説明

移動農機

【課題】使用時には燃料容器を載置して燃料補給作業を容易に行いながらも、非使用時には、走行時の振動等で機体外方に不用意に倒れるような不都合を発生させず、かつ機体外方から視認できないように構成した移動農機を提供する。
【解決手段】開閉カバー13の裏面13aに、該カバー13を開放したときに燃料容器30を載置し得る状態となるように燃料容器載置台19を支持している。このため、使用時には、カバー開放状態で燃料容器載置台19に燃料容器30を載置して燃料補給作業を容易に行うことができ、非使用時には、振動等で燃料容器載置台19が外部に不用意に倒れるような不都合の発生を確実に防止できる。開閉カバー13を閉じると、燃料容器載置台19を機体外方から視認できず、コンバイン1の外観が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の移動農機に係り、詳しくはエンジン駆動用の燃料を貯留する燃料タンクに燃料を補給する燃料補給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動農機、例えばコンバインは、走行機体に、クローラ走行装置を駆動するためのエンジンと、該エンジンを駆動する燃料を貯留する燃料タンクと、を備え、該燃料タンクへの給油構造として種々の形態を備えたものが存在している。その一例として、走行機体(以下、単に「機体」ともいう)の前部に刈取部を備え、機体後方に脱穀機及びグレンタンクを備え、機体に搭載されたエンジンの駆動用燃料を貯留する燃料タンクへの給油口を、脱穀機の排稈処理装置とグレンタンクとの間の空間部に備え、燃料容器を載置可能なタンク載台を、給油口の下方で機体後方に突出する燃料供給作業姿勢(以下、単に「作業姿勢」ともいう)と、上方に向けて回動退避する格納姿勢とに切換え固定可能に備えた構造のコンバインが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のコンバインでは、燃焼供給作業を行う場合、コンバイン作業時に上方に上げた格納姿勢にあるタンク載台を、取付片と係止片との係合を外して支軸を支点として機体後側に回動させて姿勢を切り換え、これにより機体後方に突出した作業姿勢のタンク載台上に燃料容器を載置する。つまり、燃料供給作業時には、作業姿勢に切り換えたタンク載台上に燃料容器を載置することで、該燃料容器を給油口に容易に接近できる構造が得られるため、機体の大型化に伴い給油口の高さが高くなっても、燃料容器からの燃料補給作業を楽に行うことができる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−243753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1記載のコンバインでは、タンク載台がその基部を機体後端に設けた支軸を支点として機体前後方向に回動自在にされ、機体後方に突出する作業姿勢と機体側に接する格納姿勢とに切り換え可能にされて機体外方に露出しているため、格納姿勢に切り換えて走行する場合等、振動等によりタンク載台が不用意に倒れて作業姿勢になるようなことも考えられる。また、タンク載台は常に露出した状態となっていることから、外観を損なう虞もあった。
【0006】
そこで本発明は、使用時には燃料容器を載置して燃料補給作業を容易に行い得るものでありながら、非使用時には、走行時の振動等で機体外方に不用意に倒れるような不都合の発生を確実に防止し、かつ機体外方から視認できないように構成し、もって上記課題を解決した移動農機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、走行機体(3)に、エンジン(32)と、該エンジン(32)の駆動用燃料を貯留する燃料タンク(22)と、を備える移動農機(1)において、
前記走行機体(3)に、前記燃料タンク(22)に燃料を補給するための給油口(16)と、該給油口(16)に対して開閉するように支持された開閉カバー(13)と、を備え、
前記開閉カバー(13)の裏面(13a)に、該開閉カバー(13)を開放したときに燃料容器(30)を載置し得る状態となるように燃料容器載置台(19)を支持してなる、
ことを特徴とする移動農機(1)にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は(例えば図4及び図5参照)、前記燃料容器載置台(19)が、前記燃料容器(30)を載置して燃料補給する補給位置(図4の実線位置)と収納する収納位置(図4の二点鎖線位置)とに切り換え自在に設けられ、前記補給位置から前記収納位置に向けて跳ね上げた状態で収納し得るように下端部(19a)を軸支されてなる、
請求項1記載の移動農機(1)にある。
【0009】
請求項3に係る本発明は(例えば図2ないし図5参照)、前記走行機体(3)にグレンタンク(9)を備え、
前記開閉カバー(13)は、前記グレンタンク(9)の後方にて排出オーガ(8)の縦螺旋(8a)を覆うカバーである、
請求項1又は2記載の移動農機(1)にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、走行機体に備えた開閉カバーの裏面に、該開閉カバーを開放したときに燃料容器を載置し得る状態となるように燃料容器載置台を支持したので、燃料補給時には、開閉カバーを開放した状態で燃料容器載置台に燃料容器を載置して、燃料の補給作業を容易に行い得るものでありながら、刈取り作業を行う際や単に走行する際等の非使用時には、開閉カバーを閉じることで、振動等で燃料容器載置台が外部に不用意に倒れるような不都合の発生を確実に防止することができる。また、開閉カバーを閉じた状態では、燃料容器載置台を機体外方から視認できない状態にできるので、移動農機の外観を向上することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、燃料容器載置台が、燃料容器を載置して燃料補給する補給位置と収納する収納位置とに切り換え自在に設けられ、補給位置から収納位置に向けて跳ね上げた状態で収納し得るように下端部を軸支されるので、簡単な構成からなるものでありながら、燃料補給しない非使用時には、開閉カバー側に跳ね上げて容易に収納することができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、開閉カバーが、グレンタンクの後方にて排出オーガの縦螺旋を覆うカバーであるので、開閉カバーを特別に設けることなく、備え付けのカバーを利用して燃料容器載置台を簡便に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に沿って、本発明に係る移動農機を適用したコンバインの実施の形態について説明する。なお、図1は本実施形態におけるコンバインの全体構成を示す斜視図、図2は該コンバインの側面図、図3は該コンバインの平面図、図4は該コンバイン後部の開閉カバーを開放した状態で示す斜視図、図5は図4の状態にて燃料容器載置台を補給位置にして燃料容器を載置した状態を示す斜視図である。
【0015】
まず、図1ないし図3に沿って、本実施形態におけるコンバインの全体構成について説明する。
【0016】
すなわち、コンバイン1は、圃場や路上を走行するための左右一対のクローラ走行装置2,2と、該クローラ走行装置2,2に支持された機体フレーム(走行機体)3と、を備え、該機体フレーム3の前部には、稲を刈取るための刈取部4が昇降自在に架設されており、その後方一側には、刈取り後の稲を導いて脱穀処理する脱穀部5が搭載されている。また、脱穀部5の他側には、コンバイン1を操作するレバー類が配置された操作部7を挟んで運転席6が配設されると共に、その後方には、グレンタンク(穀粒タンク)9が搭載されている。該グレンタンク9の後方には、該グレンタンク9から穀粒を外部へ搬出する排出オーガ8の縦螺旋8aが配置されている。更に、コンバイン1の最後尾には排藁処理装置10が配設されており、該排藁処理装置10により、脱穀後の排藁が細断或いは長藁のまま機外に排出される。
【0017】
また、図2に示すように、運転席6の下部にはコンバイン1の動力源となるエンジン32が搭載されており、該エンジン32の動力は、脱穀部5、刈取部4、クローラ走行装置2,2に伝達される。係るエンジン32や動力伝達装置は、回転機械部分を多く含み、部品によっては高速に回転している部位を有していることから、これら回転部品は、操作パネル11(図3参照)等によって覆われている。なお、図2及び図3における符号12は、パネル11aの裏面にあるフレーム35に設けられた電飾部品(図示せず)を主に覆っているカバーである。
【0018】
圃場作業にあるコンバイン1では、運転者は運転席6の右側方にある昇降口から乗り込み、操作部7に配置された各種のスイッチやレバー類を操作して作業を進行させる。また運転席6の前方には、図3に示すように、中央にメータパネル36が埋め込まれた上記パネル11aが配置されている。
【0019】
操作部7には、運転席6の前側から、傾動角に応じた前進又は後進変速速度を得るための主変速レバー23、走行トランスミッション(図示せず)内に設けた副変速装置(図示せず)を操作するための副変速レバー24、及び、作業機(脱穀部5、排藁処理装置10)と刈取部4への動力継断を行うための作業機・刈取機クラッチレバー26等が配置されている。パネル11a上の右側には、クローラ走行装置2,2の駆動を制御するための操舵レバー25が配置されている。操舵レバー25は、左右の傾倒操作によりコンバイン1を操舵すると共に、前後の傾倒操作により刈取部4を昇降する。また、運転席6の前部下方には、コンバイン1を制動するための走行クラッチペダル27が配置されている。この走行クラッチペダル27は、ペダルストロークの前半ではエンジン32と走行HST(図示せず)の伝動部に設けた主クラッチを切断し、ストロークエンドで走行トランスミッション内の駐車ブレーキを制動する機能を有する。基本的にコンバイン1は、主変速レバー23が中立位置に操作されると機体が停止し、走行クラッチペダル27は、基本的に副変速の操作時、又は駐車ブレーキを必要とする時に操作される。
【0020】
また、脱穀機5とグレンタンク9との間の空間部には、エンジン32の駆動用燃料を貯留する燃料タンク22が配設されており、該燃料タンク22には、該タンク22に燃料を補給するための給油口16が給油パイプ34を介して連通している。そして、図1ないし図3に示すように、機体フレーム3に備えたグレンタンク9の後方には、排出オーガ8の縦螺旋8aを覆う開閉カバー13が開閉自在に配設されている。
【0021】
図4に示すように、給油口16に対して開閉するように支持される開閉カバー13は、グレンタンク9の背面にヒンジ18,18を介して開閉自在に取り付けられている。該開閉カバー13にて開閉される機体後方の空間33内には、上記排出オーガ8の縦螺旋8aと、該縦螺旋8aの開閉カバー13側に立設される給油口16とが配設されている。なお、符号17は給油口16を閉塞するキャップを示し、符号21は排藁処理装置10のカッター部を示している。
【0022】
そして、開閉カバー13の裏面13aには、図4及び図5に示すように、開閉カバー13を開放したときに燃料容器30を載置し得る状態となるように燃料容器載置台19が支持されている。この燃料容器載置台19は、開閉カバー13の裏面13aに、図4矢印A方向に回動し得るように支持されており、20リットル程度の燃料収容可能な燃料容器30を載置して燃料補給する補給位置(図4の実線位置)と、収納する収納位置(図4の二点鎖線位置)とに切り換え自在に設けられる。即ち、燃料容器載置台19は、上記補給位置から上記収納位置に向けて跳ね上げた状態で収納し得るように、一端部19aが開閉カバー13の裏面13aに回動支持部31によって軸支されている。
【0023】
燃料容器載置台19は、充分な強度を有する略々矩形状の金属製載置台からなり、図4及び図5に示す実線の補給位置にあっては、回動支持部31で支持された一端部19a近傍が、回動支持部31直下にて開閉カバー13の裏面13aから張り出す支持部20により支持され、これにより、重量のある燃料容器30を堅固に支え得るように構成される。また、燃料容器載置台19の他端部の一側には、該載置台19から突出する突起部28が設けられており、開閉カバー13の裏面13aにおける突起部28に対応する位置には、該突起部28を係止して収納位置の燃料容器載置台19を裏面13aに固定するための係止具29(クランプ)が設けられている。なお、図5中の符号30aは、燃料容器30の給油開口を示している。
【0024】
ついで、本実施の形態におけるコンバイン1による作用を説明する。
【0025】
すなわち、穀稈が植立した圃場にて本コンバイン1を用いて刈取り作業を行う場合、コンバイン1は、刈取部4を刈取作業位置に保持した状態で、エンジン32の動力に基づきクローラ走行装置2,2を駆動して適宜の速度で走行し、穀稈を引起こしつつ、刈取り刃(図示せず)にて穀稈を刈取る。すると、刈取られた穀稈は、エンジン32の動力に基づき作動する脱穀部5のフィードチェン(図示せず)に引継がれ、該脱穀部5内で脱穀・選別された後、選別穀粒がグレンタンク9に移送されて一旦貯蔵される。
【0026】
そして、作業終了後、或いは作業中に一旦停止し、燃料補給を行う場合には、以下のように作業が進められる。まず、オペレータが、閉止している開閉カバー13を開放し、突起部28が係止具29で係止されて収納位置(図4の二点鎖線位置)に保持されている燃料容器載置台19を、係止具29から突起部28を外して矢印A方向に倒す。これにより、燃料容器載置台19は、一端部19aが支持部20で支持されるまで回動支持部31を中心に回動し、支持部20で支持された時点で補給位置(図4の実線位置)となり、該位置に堅固に保持される。
【0027】
この状態において、オペレータは、図5に示すように、燃料容器載置台19上に燃料容器30を載置すると共に給油口16のキャップ17を外し、不図示の給油具を用いて、燃料容器30の給油開口30aから給油口16に燃料を送り込み、燃料補給作業を実施する。
【0028】
そして、燃料補給が終了した時点で、オペレータは、燃料容器載置台19を矢印A方向に回動させて跳ね上げ、突起部28を係止具29に係止して、該載置台19を開閉カバー13の裏面13aに接触した収納位置(図4の二点鎖線位置)に保持して、開閉カバー13を機体フレーム3側に閉止する。
【0029】
以上説明したように本実施の形態では、機体フレーム3に備えた開閉カバー13の裏面13aに、該開閉カバー13を開放したときに燃料容器30を載置し得る状態となるように燃料容器載置台19を支持している。これにより、燃料補給時(使用時)には、開閉カバー13を開放した状態で燃料容器載置台19に燃料容器30を載置して、燃料の補給作業を容易に行い得るものでありながら、刈取り作業を行う際や単に走行する際等の非使用時には、開閉カバー13を閉じることで、振動等で燃料容器載置台19が外部に不用意に倒れるような不都合の発生を確実に防止できる。また、開閉カバー13を閉じた状態では、燃料容器載置台19と給油口16を機体外方から視認できない状態にできるので、コンバイン1の外観を向上することができる。
【0030】
また本実施の形態では、燃料容器載置台19が、燃料容器30を載置して燃料補給する補給位置(図4の実線位置)と収納する収納位置(図4の二点鎖線位置)とに切り換え自在に設けられ、補給位置から収納位置に向けて跳ね上げた状態で収納し得るように一端部19aが軸支されている。このため、簡単な構成からなるものでありながら、燃料補給しない非使用時には、開閉カバー13側に跳ね上げて容易に収納することができる。そして、本発明に係る開閉カバーとして、グレンタンク9の後方にて排出オーガ8の縦螺旋8aを覆う開閉カバー13を活用したので、開閉カバーを特別に設けることなく、備え付けのカバーを利用して燃料容器載置台19を簡便に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態におけるコンバインの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態におけるコンバインの側面図である。
【図3】本実施形態におけるコンバインの平面図である。
【図4】本実施形態におけるコンバイン後部の開閉カバーを開放した状態で示す斜視図である。
【図5】燃料容器載置台を補給位置にして燃料容器を載置した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 移動農機(コンバイン)
3 走行機体(機体フレーム)
8 排出オーガ
8a 縦螺旋
9 グレンタンク
13 開閉カバー
16 給油口
19 燃料容器載置台
19a 下端部
22 燃料タンク
30 燃料容器
32 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に、エンジンと、該エンジンの駆動用燃料を貯留する燃料タンクと、を備える移動農機において、
前記走行機体に、前記燃料タンクに燃料を補給するための給油口と、該給油口に対して開閉するように支持された開閉カバーと、を備え、
前記開閉カバーの裏面に、該開閉カバーを開放したときに燃料容器を載置し得る状態となるように燃料容器載置台を支持してなる、
ことを特徴とする移動農機。
【請求項2】
前記燃料容器載置台は、前記燃料容器を載置して燃料補給する補給位置と収納する収納位置とに切り換え自在に設けられ、前記補給位置から前記収納位置に向けて跳ね上げた状態で収納し得るように下端部を軸支されてなる、
請求項1記載の移動農機。
【請求項3】
前記走行機体にグレンタンクを備え、
前記開閉カバーは、前記グレンタンクの後方にて排出オーガの縦螺旋を覆うカバーである、
請求項1又は2記載の移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−186049(P2007−186049A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4970(P2006−4970)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】