説明

移動通信システム、基地局装置および移動通信方法

【課題】移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随する。
【解決手段】移動局装置は、基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部111と、受信品質測定部111が異なる時間に測定した受信品質の関係を計算する受信品質情報測定部と、受信品質測定部111で測定した受信品質情報および受信品質の関係を示す情報を基地局装置に送信する無線送信部105とを備え、基地局装置は、上記受信品質情報と受信品質の関係を示す情報に基づいて移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部209と、適応変調符号化の制御を行なった信号を移動局装置に送信する無線送信部205と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信品質を測定、送信する移動通信システム、基地局装置および移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、移動通信システムにおいてはデータ通信の需要が高まっており、それに伴う通信データの増加に対応した、高い周波数利用効率が得られる様々な技術が提案されている。周波数利用効率を高める技術の1つにOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)がある。このOFDMAは、セルで構成される通信エリアにおいて、すべてのセルで同じ周波数を用いて通信する際の変調方式の技術に関するものであり、高速なデータ通信を実現することができる。
【0003】
OFDMAシステムにおける送信パケットのスケジューリングでは、すべてのサブキャリアにおける下り回線状態の受信品質を示す情報であるCQI(Channel Quality Indicator)を移動局装置が基地局装置に送信し、基地局装置は各移動局装置から送信された全てのサブキャリアのCQIに基づいて、パケットのスケジューリングを行なうという方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、複数のサブキャリアを用いるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交波周波数分割多重)システムにおける送信パケットのスケジューリングにおいて、移動局装置で下りの各チャネル状態(周波数特性、すなわち、周波数に依存する伝送損失等の特性)を評価し、各チャネル状態を量子化した情報を基地局装置に送信し、基地局装置は送信された情報に基づいて各移動局装置に割り振るサブキャリアを決定するという技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図9は、従来から知られている基地局装置と移動局装置との通信方法について説明するための図である。図9に示す通信方法は、例えば、非特許文献2に開示されている。図9に示すように、基地局装置から受信品質測定に用いる下り回線のダウンリンク情報を受信した移動局装置は、そのダウンリンク情報に基づいて各チャネルの受信品質を測定し、伝搬路のチャネルプロファイルを作成する。
【0006】
移動局装置が作成したチャネルプロファイルは、受信品質情報として、移動局装置から基地局装置に送信される。基地局装置は、その受信品質情報に基づいて、基地局装置から移動局装置に対して送信するダウンリンク情報に対して、適応変調符号化や周波数選択スケジューリングの処理を行なう。
【特許文献1】特開2005−130491号公報
【非特許文献1】“Comments on frequency scheduling and joint power and rate optimization for OFDM”、3GPP、TSG RAN WG1 Meeting #29、R−02−1321、2002年11月
【非特許文献2】“CQI design and its impact to DL performance”、3GPP、TSG RAN WG1 Meeting #48、R1−071002、2007年2月
【非特許文献3】“Compressed CQI Reporting Scheme”、3GPP、TSG RAN WG1 Meeting #48、R1−070879、2007年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術(図9)において、基地局装置が、移動局装置に対して適切な適応変調符号化や周波数選択スケジューリングを行なうためには、移動局装置がある領域ごとに分割された全てのチャネルについての受信品質情報を基地局装置に対して送信する必要がある。例えば、非特許文献2に記載されている技術においては、25個に分割されたチャネルのそれぞれについて32段階(5ビット)に区分される受信品質情報を移動局装置から基地局装置に対して送信する場合、25個×5ビット=125ビットの情報量の受信品質情報を送信する必要がある。
【0008】
この点に関して、非特許文献3においては、移動局装置が基地局装置に受信品質情報とその差分情報とを送信することにより、送信する受信品質情報の情報量を削減する手法が提案されている。以下、この手法について、図10を用いて説明する。
【0009】
図10で示すように、時刻t0における周波数f0、f1、…、fn−1、fnでの受信品質をx(t0、f0)、x(t0、f1)、…、x(t0、fn−1)、x(t0、fn)、時刻t1における周波数f0、f1、…、fn−1、fnでの受信品質をx(t1、f0)、x(t1、f1)、…、x(t1、fn−1)、x(t1、fn)、時刻t2における周波数f0、f1、…、fn−1、fnでの受信品質をx(t2、f0)、x(t2、f1)、…、x(t2、fn−1)、x(t2、fn)とするとき、まず移動局装置は、時刻t0における受信品質情報x(t0、f0)、x(t0、f1)、…、x(t0、fn−1)、x(t0、fn)を基地局装置に送信する。続いて、時刻t0と時刻t1の受信品質の差分情報、x(t1、f0)−x(t0、f0)、x(t1、f1)−x(t0、f1)、x(t1、f2)−x(t0、f2)…をそれぞれ、例えば、3ビット(8レベル)で送信する。同様にして、時刻t1と時刻t2の受信品質の差分情報x(t2、f0)−x(t1、f0)、x(t2、f1)−x(t1、f1)、x(t2、f2)−x(t1、f2)…をそれぞれ、例えば、3ビット(8レベル)で送信する…というように、移動局装置が、基地局装置に前回送信した受信品質情報に対する差分情報を少ない情報量(ビット)で表現して送信することにより、基地局装置に送信する受信品質情報の情報量を減らそうとするものである。
【0010】
しかしながら、この手法(図10)においては、伝搬路のチャネル状態が急激に変化した場合、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報が、実際の伝搬路のチャネル変動に追随できなくなるという問題が発生する。
【0011】
伝搬路のチャネル状態が急激に変化する、すなわち、基地局装置が送信する信号に施す変調方式、符号化率を大きなレベルで変更しなければならない場合(例えば、変調方式QPSK、符号化率1/3から変調方式16QAM、符号化率8/9に変更しなければならない場合)において、移動局装置からの少ない情報量(例えば3ビット)を持った受信品質情報では、変調方式、符号化率を大きなレベルで変更することができないために、要求される変調方式、符号化率で適応変調符号化を施すことができない。これは、基地局装置で信号に施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル変動に追随できていないことを示している。
【0012】
また、少ない情報量を持った受信品質情報で、変更できる変調方式、符号化率のレベルを大きくしようとすると、細かな伝搬路のチャネル変動に追随することができなくなる。少ない情報量を持った受信品質情報を、複数回送信することにより、変調方式、符号化率を大きなレベルで変更したとしても、これは、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量の増加につながることになる。
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することができる移動通信システム、基地局装置および移動通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明に係る移動通信システムは、移動局装置と基地局装置とを備える移動通信システムであって、前記移動局装置は、前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部と、前記受信品質測定部が異なる時間に測定した受信品質の関係を計算する受信品質情報測定部と、前記受信品質測定部で測定した受信品質情報および前記受信品質の関係を示す情報を前記基地局装置に送信する受信品質情報送信部とを備え、前記基地局装置は、前記受信品質情報と前記受信品質の関係を示す情報に基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、前記変調符号制御部で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴としている。
【0015】
このように、例えば、基地局装置において、受信品質の関係が所定の関係にある場合(例えば、異なる時間に測定した受信品質の変動が大きい場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を大きく変更する一方、受信品質の関係が所定の関係にない場合(例えば、異なる時間に測定した受信品質の変動が小さい場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を小さく変更することで、移動局装置で異なる時間に測定された受信品質の関係に応じて、基地局装置が信号に施す変調方式、符号化率を決定することができるので、実際の伝搬路のチャネル変動に追随した適応変調制御を施すことができる。また、移動局装置から受信品質の差分情報と受信品質の関係を示す情報を基地局装置に対して送信するだけで基地局装置において信号に施す変調方式、符号化率が決定されるので、移動局装置から基地局装置へ送信する受信品質情報の情報量を減らすことができる。この結果、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することが可能となる。
【0016】
(2)また、本発明に係る移動通信システムは、移動局装置と基地局装置とを備える移動通信システムであって、前記移動局装置は、前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部と、前記受信品質測定部が異なる時間に測定した受信品質に基づいて受信品質の関係を示す相関値を計算する相関値計算部と、前記受信品質測定部で測定した受信品質情報と前記相関値とを前記基地局装置に送信する受信品質情報送信部とを備え、前記基地局装置は、前記受信品質情報と前記相関値とに基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、前記変調符号制御部で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴としている。
【0017】
このように、例えば、基地局装置において、移動局装置が異なる時間に測定した受信品質に基づいて計算した相関値が大きい場合(例えば、移動局装置が静止している場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を小さく変更する一方、相関値が小さい場合(例えば、移動局装置が高速で移動している場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を大きく変更することができるので、実際の伝搬路のチャネル変動に追随した適応変調制御を施すことができる。また、移動局装置から受信品質の差分情報と相関値(もしくは計算された相関値を示す情報)とを基地局装置に対して送信するだけで基地局装置において信号に施す変調方式、符号化率が決定されるので、移動局装置から基地局装置へ送信する受信品質情報の情報量を減らすことができる。この結果、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することが可能となる。
【0018】
(3)また、本発明に係る移動通信システムは、移動局装置と基地局装置とを備える移動通信システムであって、前記移動局装置は、前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部と、前記受信品質測定部が異なる時間に測定した受信品質に基づいて受信品質の関係を示す分散値を計算する分散値計算部と、前記受信品質測定部で測定した受信品質情報と前記分散値とを前記基地局装置に送信する受信品質情報送信部とを備え、前記基地局装置は、前記受信品質情報と前記分散値とに基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、前記変調符号制御部で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴としている。
【0019】
このように、例えば、基地局装置において、移動局装置が異なる時間に測定した受信品質に基づいて計算した分散値が小さい場合(例えば、移動局装置が静止している場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を小さく変更する一方、分散値が大きい場合(例えば、移動局装置が高速で移動している場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を大きく変更することができるので、実際の伝搬路のチャネル変動に追随した適応変調制御を施すことができる。また、移動局装置から受信品質の差分情報と分散値(もしくは計算された分散値を示す情報)とを基地局装置に対して送信するだけで基地局装置において信号に施す変調方式、符号化率が決定されるので、移動局装置から基地局装置へ送信する受信品質情報の情報量を減らすことができる。この結果、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することが可能となる。
【0020】
(4)本発明に係る基地局装置は、移動局装置と通信する基地局装置であって、前記移動局装置で異なる時間に測定された複数のチャネルの受信品質情報と、前記受信品質情報の関係を示す情報とに基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、前記変調符号制御部で適応変調符号化を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴としている。
【0021】
このように、移動局装置から送信される受信品質情報と受信品質情報の関係を示す情報に基づいて、信号に施す変調方式、符号化率を決定することから、例えば、受信品質の関係が所定の関係にある場合(例えば、異なる時間に測定した受信品質の変動が大きい場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を大きく変更する一方、受信品質の関係が所定の関係にない場合(例えば、異なる時間に測定した受信品質の変動が小さい場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を小さく変更することで、実際の伝搬路のチャネル変動に追随した適応変調制御を施すことができる。また、移動局装置から送信された受信品質の差分情報と受信品質の関係を示す情報だけを用いて信号に施す変調方式、符号化率を決定することができるので、移動局装置から基地局装置へ送信する受信品質情報の情報量を減らすことができる。この結果、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することが可能となる。
【0022】
(5)本発明に係る移動通信方法は、移動局装置と基地局装置とを用いた移動通信方法であって、前記移動局装置は、前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定過程と、前記受信品質測定過程で異なる時間に測定した受信品質の関係を計算する受信品質情報測定過程と、前記受信品質測定過程で測定した受信品質情報と前記受信品質の関係を示す情報とを前記基地局装置に送信する受信品質情報送信過程とを実行し、前記基地局装置は、前記受信品質情報と前記受信品質の関係を示す情報とに基づいて、前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御過程と、前記変調符号制御過程で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信過程とを実行することを特徴としている。
【0023】
このように、例えば、基地局装置において、受信品質の関係が所定の関係にある場合(例えば、異なる時間に測定した受信品質の変動が大きい場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を大きく変更する一方、受信品質の関係が所定の関係にない場合(例えば、異なる時間に測定した受信品質の変動が小さい場合)には、変調方式、符号化率を決定するためのステップ幅を小さく変更することで、移動局装置で異なる時間に測定された受信品質の関係に応じて、基地局装置が信号に施す変調方式、符号化率を決定することができるので、実際の伝搬路のチャネル変動に追随した適応変調制御を施すことができる。また、移動局装置から受信品質の差分情報と受信品質の関係を示す情報を基地局装置に対して送信するだけで基地局装置において信号に施す変調方式、符号化率が決定されるので、移動局装置から基地局装置へ送信する受信品質情報の情報量を減らすことができる。この結果、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、移動局装置で異なる時間に測定された受信品質の関係に応じて、基地局装置で信号に施す変調方式、符号化率を決定するようにしたので、実際の伝搬路のチャネル変動に追随した適応変調制御を施すことができる。また、移動局装置から受信品質の差分情報と受信品質の関係を示す情報を基地局装置に対して送信するだけで基地局装置において信号に施す変調方式、符号化率が決定されるので、移動局装置から基地局装置へ送信する受信品質情報の情報量を減らすことができる。この結果、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくしつつ、伝搬路のチャネル変動が大きい場合においても、基地局装置で施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。第1の実施形態に係る移動通信システムは、基地局装置と移動局装置とを備えている。図1は、第1の実施形態に係る移動通信システムが有する移動局装置および基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【0026】
図1に示すように、移動局装置は、送信バッファ101、変調符号化部102、マッピング部103、逆高速フーリエ変換(IFFT)部104、無線送信部(受信品質情報送信部とも称する)105、送信制御部106、無線受信部107、高速フーリエ変換(FFT)部108、復調復号化部109およびアンテナ110を備えている。送信制御部106は、受信品質測定部111、受信品質情報生成部112および相関値計算部113を具備している。
【0027】
移動局装置は、基地局装置から送信されたダウンリンク情報を、無線受信部107で受信し、受信した信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、アナログ/デジタル変換した後、高速フーリエ変換部108にて各サブキャリアを変調シンボルに変換する。高速フーリエ変換部108によって変換された変調シンボルは、復調復号化部109によって復調および復号化され、受信品質測定部111および相関値計算部113に出力される。
【0028】
一方、移動局装置には、上位レイヤから基地局装置に対する送信情報が入力される。この送信情報には、信号の送信先である基地局装置の情報が含まれており、送信バッファ101に一時的に保存される。変調符号化部102は、送信バッファ101から出力される信号に変調処理や誤り訂正符号化処理を施し、符号化ビット系列をマッピング部103に出力する。マッピング部103は、変調符号化部102から出力される符号化ビット系列を各サブキャリア上のシンボル系列にマッピングし、逆高速フーリエ変換部104に出力する。
【0029】
逆高速フーリエ変換部104は、マッピング部103から出力されるシンボル系列に逆高速フーリエ変換の処理を施し、時系列のベースバンドデジタル信号に変換し、無線送信部105に出力する。逆高速フーリエ変換部104からの出力信号は、無線送信部105においてデジタル/アナログ変換され、送信に適した周波数にアップコンバートされた後に、アンテナ110を介して、各基地局装置に送信される。
【0030】
受信品質測定部111は、基地局装置から受信する信号に基づいて、複数のチャネルの受信品質を測定する。なお、本実施形態においては、受信品質測定部111は、受信品質として、CINR(Carrier-to-Interference plus Noise power Ratio:搬送波対干渉波+雑音電力比)を測定する。
【0031】
基地局装置は、送信バッファ201、変調符号化部202、マッピング部203、逆高速フーリエ変換(IFFT)部204、無線送信部(信号送信部とも称する)205、無線受信部206、高速フーリエ変換(FFT)部207、復調復号化部208、変調符号制御部209、スケジューラ制御部210およびアンテナ211を備えている。
【0032】
基地局装置には、上位レイヤから送信情報(ダウンリンク情報とも称する)が入力される。ダウンリンク情報には、信号の送信先である移動局装置の情報が含まれており、それぞれの移動局装置に送信する信号が、送信バッファ201に一時的に保存される。変調符号制御部209は、移動局装置から送信される受信品質情報と相関値に基づいて信号に施す変調方式、符号化率を決定し、変調符号化部202に出力する。変調符号化部202は、変調符号制御部209が決定した変調方式および符号化率に基づいて、送信バッファ201から出力される信号に対して、変調処理や誤り訂正符号化処理を施し、符号化ビット系列をマッピング部203に出力する。
【0033】
マッピング部203は、スケジューラ制御部210から出力されるスケジューリング情報に基づいて、変調符号化部202から出力される符号化ビット系列を各サブキャリア上のシンボル系列にマッピングし、逆高速フーリエ変換部204に出力する。逆高速フーリエ変換部204は、マッピング部203から出力されるシンボル系列に逆高速フーリエ変換の処理を施し、時系列のベースバンドデジタル信号に変換し、無線送信部205に出力する。逆高速フーリエ変換部204からの出力信号は、無線送信部205においてデジタル/アナログ変換され、送信に適した周波数にアップコンバートされた後に、無線送信部205およびアンテナ212を介して、各移動局装置に送信される。
【0034】
一方、基地局装置は、移動局装置から送信された送信信号を、無線受信部206で受信する。無線受信部206は、受信した信号を、ベースバンド信号へダウンコンバートし、アナログ/デジタル変換する。高速フーリエ変換部207は、無線受信部206が出力する各サブキャリアを、変調シンボルに変換する。高速フーリエ変換部207によって変換された変調シンボルは、復調復号化部208によって復調および復号化され、変調符号制御部209およびスケジューラ制御部210に出力される。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係る移動局装置の受信品質測定部111が測定する受信品質について説明するための図である。図2においては、横軸方向に周波数をとっており、縦軸方向に時間をとっており、横軸と縦軸とに直交する方向に受信品質をとっている。図2に示す受信品質は、基地局装置から送信された信号についての移動局装置における受信品質を示している。
【0036】
図2において、受信品質測定部111は、時刻tで、曲線g1で示される受信品質を測定している。その後、受信品質測定部111は、時刻tで、曲線g2で示される受信品質を測定している。その後、受信品質測定部111は、時刻tで、曲線g3で示される受信品質を測定している。なお、移動局装置の受信品質測定部111で測定する受信品質は、時刻tおよび周波数fの関数として、X(t,f)と表すことができる。
【0037】
相関値計算部113は、受信品質測定部111が異なる時間(例えば、図2における時刻tと時刻t)に測定した受信品質に基づいて受信品質の関係を示す相関値を計算する。具体的に、相関値は以下のようにして計算する。
【0038】
移動局装置の受信品質測定部111で測定された、所定時刻t、所定周波数fにおける受信品質X(t,f)と、所定時刻tよりも時刻差Tだけ以前の時刻t−T、所定周波数fにおける受信品質X(t−T,f)を用いて、相関値計算部113は、以下の式(1)により相関値R(t)を計算する。

【数1】


ここで、式(1)におけるnは、受信品質の相関値を測定する区間を示している。例えば、受信品質の相関値を測定する区間が5TTI(Time Transmission Interval)であるならば、n=5となる。
【0039】
また、式(1)におけるE(t)、S(t)は、時刻tにおける受信品質X(t,f)の周波数方向の平均値、標準偏差をそれぞれ示している。平均値E(t)は、以下の式(2)のように表すことができる。また、標準偏差S(t)は、以下の式(3)のように表すことができる。

【数2】


【数3】

【0040】
さらに、相関値を計算するための受信品質X(t,f)の測定時間長をL(=t−t(図2))とすると、相関値R(t)を時刻τ近傍で平均化したものは、以下の式(4)で表すことができる。

【数4】


ここで、受信品質X(t,f)の時間方向の変化速度が十分に緩やかであるとすると、RT,τを測定した時刻τでの受信品質X(τ,f)と、それより時刻差Tだけ後の時刻での受信品質X(τ+T,f)とには、大きい相関値RT,τがあると推定できる。
【0041】
なお、上述した式(1)〜式(4)を用いた方法以外の計算方法を用いて相関値を計算してもよい。また、本実施形態においては、受信品質としてCINRを用いて相関値を計算している場合について説明しているが、その他の受信品質指標を用いて相関値を計算してもよい。
【0042】
次に、基地局装置が移動局装置から送信される相関値に基づいて、変調符号制御部209によって行なう変調方式、符号化率を決定する方法について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態による、基地局装置が移動局装置から送信された相関値に基づいて行なう、変調方式、符号化率を決定する方法について説明するための図である。
【0043】
基地局装置は、移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の相関値の大小に応じて、異なるステップ幅を持ったテーブルを選択し、そのステップ幅で送信する信号に施す変調方式、符号化率を決定するレベルを変更する。具体的には、移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の相関値が大きい場合、基地局装置は変調方式、符号化率を小さく変更するステップ幅を持ったテーブルAを選択し、テーブルAのステップ幅で送信する信号に施す変調方式、符号化率を決定するレベルを変更する。また、異なる時間に測定した受信品質の相関値が小さい場合、基地局装置は変調方式、符号化率を大きく変更するステップ幅を持ったテーブルCを選択し、テーブルCのステップ幅で送信する信号に施す変調方式、符号化率を決定するレベルを変更する。
【0044】
変調方式、符号化率を小さく変更するステップ幅を持ったテーブルAとは、移動局装置が、基地局装置に前回送信した受信品質情報(もしくは、時刻t0で送信した受信品質情報)に対する差分情報を、例えば、3ビット(8レベル)で送信したとき、その差分情報3ビット(8レベル)に対して、例えば、−3から+4までの範囲で1ステップずつのステップ幅で、基地局装置が信号に施す変調方式、符号化率を決定することができるテーブルを示している。
【0045】
変調方式、符号化率を大きく変更するステップ幅を持ったテーブルCとは、移動局装置が、基地局装置に前回送信した受信品質情報(もしくは、時刻t0で送信した受信品質情報)に対する差分情報を、例えば、3ビット(8レベル)で送信したとき、その差分情報3ビット(8レベル)に対して、例えば、−12から+16までの範囲で4ステップずつのステップ幅で、基地局装置が信号に施す変調方式、符号化率を決定することができるテーブルを示している。
【0046】
同様に、図3で示すテーブルBは、移動局装置が、基地局装置に前回送信した受信品質情報(もしくは時刻t0で送信した受信品質情報)に対する差分情報を、例えば、3ビット(8レベル)で送信したとき、その差分情報3ビット(8レベル)に対して、例えば、−6から+8までの範囲で2ステップずつの幅で、基地局装置が信号に施す変調方式、符号化率を決定することができるテーブルを示している。
【0047】
なお、図3においては、移動局装置から送信される差分情報を3ビットで表しているが、受信品質の差分情報は何ビットで表されてももちろんよい。また、3ビット(8レベル)に対応するステップ幅は、どのような値でもよく整数以外の数字でもよい。
【0048】
図4は、本発明の第1の実施形態による、基地局装置の変調符号制御部209が記憶する情報の一例を示す図である。移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の相関値を基地局装置に送信し、基地局装置は、その値に基づいて変調方式、符号化率を決定するためのテーブルを選択して、そのテーブルのステップ幅で信号に施す変調方式、符号化率を決定する。基地局装置の変調符号制御部209は、移動局装置から送信される相関値(例えば、R12以上)とステップ幅を決定するためのテーブル(例えばテーブルA)とを対応付けて記憶している。本実施形態では、相関値に、2つの閾値R11、R12を設定している。なお、ここで、R11<R12である。
【0049】
相関値が所定の閾値R12以上である場合には、基地局装置の変調符号制御部209は、変調方式、符号化率を決定するためのテーブルとして、テーブルAを選択する。このテーブルAとしては、例えば、上記で示したような3ビット(8レベル)の差分情報に対して、−3から+4までの範囲で1ステップずつの幅を持ったテーブルである。
【0050】
相関値が所定の閾値R11以上であって所定の閾値R12未満である場合には、基地局装置の変調符号制御部209は、変調方式、符号化率を決定するためのテーブルとして、テーブルBを選択する。このテーブルBとしては、例えば、上記で示したような3ビットの差分情報に対して、−6から+8までの範囲で2ステップずつの幅を持ったテーブルである。
【0051】
相関値が所定の閾値R11未満である場合には、基地局装置の変調符号制御部209は、変調方式、符号化率を決定するためのテーブルとして、テーブルCを選択する。このテーブルCとしては、例えば、上記で示したような3ビット(8レベル)の差分情報に対して、−12から+16までの範囲で4ステップずつの幅を持ったテーブルである。
【0052】
上記に示すように、基地局装置は、移動局装置から送信される受信品質の差分情報と、相関値に基づいて選択されたテーブルのステップ幅とから、信号に施す変調方式、符号化率を決定する。これにより、伝搬路のチャネル変動が大きい場合でも、信号に施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することができる。また、受信品質の差分情報と相関値(もしくは計算された相関値を示す情報)だけを送信するために、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくすることができる。
【0053】
図5は、本発明の第1の実施形態による移動通信システムの処理を示すシーケンスチャートである。図5に示すように、基地局装置の無線送信部205は、移動局装置に対してアンテナ211を介して信号を送信する(S501)。移動局装置の無線受信部107は、基地局装置から送信された信号を受信し、受信品質測定部111は、その受信した信号に基づいて、複数のチャネルの受信品質を測定する。
【0054】
そして、移動局装置の相関値計算部113は、受信品質測定部111が異なる時間(例えば、図2のtとt)に測定した受信品質(例えば、図2の曲線g1と曲線g2)に基づいて、上述した式(1)〜式(4)を用いて相関値を計算する。ここでは、移動局装置の相関値計算部113が、相関値としてR13(ただし、R11<R13<R12)を得た場合について説明する。
【0055】
そして、移動局装置の無線送信部105は、基地局装置に前回送信した受信品質情報(もしくは時刻t0で送信した受信品質情報)に対する差分情報と、相関値計算部が計算した相関値R13を、基地局装置に対してアンテナを介して送信する(S502)。
【0056】
基地局装置の無線受信部205は、移動局装置が送信した受信品質の差分情報と相関値R13の情報(もしくはR13を示す情報)を受信する。次に、基地局装置の変調符号制御部209は、移動局装置の相関値計算部113が計算した相関値R13に応じたテーブルを、予め対応付けて記憶された情報に基づいて選択する。例えば、図3で示したテーブルを使用するならば、ここでは、変調符号制御部209は、相関値R13に対応付けられているテーブルBを選択する。
【0057】
そして、変調符号制御部209は、移動局装置から送信された受信品質の差分情報と、テーブルで定められたステップ幅(例えば、図3で示したテーブルを使用するならば、−6から+8までの範囲で2ステップずつの幅)とで、送信する信号に施す変調方式、符号化率を決定する。基地局装置は、決定した変調方式、符号化率で、信号に適応変調符号化を施して、移動局装置に対してアンテナ211を介して送信する(S503)。
【0058】
図6は、本発明に係る第1の実施形態による効果について説明するための図である。図6(a)は、移動局装置が低速移動の際に測定される受信品質の特性を示している。基地局装置は、時刻t、t、tで、移動局装置に対して信号を送信している。図6(b)は、移動局装置が高速移動の際に測定される受信品質の特性を示している。基地局装置は、時刻t、t、tで、移動局装置に対して信号を送信している。
【0059】
移動局装置の受信品質測定部111が測定する受信品質は、基地局装置から移動局装置までの伝搬路の状況によって大きく異なる。このような伝搬路の状況において、移動局装置の相関値計算部113は、時刻tで測定した受信品質情報と、時刻tで測定した受信品質情報、時刻tで測定した受信品質情報と、時刻tで測定した受信品質情報、および、時刻tで測定した受信品質情報と、時刻tで測定した受信品質情報、時刻tで測定した受信品質情報と、時刻tで測定した受信品質情報の相関値を計算する。なお、相関値計算部113が異なる時間に測定した2つの受信品質から相関値を計算するのではなく、ある一定区間に亘って測定した受信品質情報から相関値を計算してもよい。
【0060】
移動局装置が静止していたり低速で移動したりしている場合、すなわち伝搬路のチャネル変動が小さい場合、移動局装置が測定する受信品質の時間的な変動は小さいため、相関値計算部113で算出される相関値は大きな値となる。例えば、移動局装置が、図6(a)に示す時刻t、時刻t、時刻tで受信品質を測定した場合は、より大きな相関値が算出される。
【0061】
この場合、本実施形態においては、移動局装置から送信される受信品質の差分情報と、移動局装置から送信される相関値に基づいて選択された小さなステップ幅を持ったテーブルとから、信号に施す変調方式、符号化率を決定するため、伝搬路のチャネルの変動に追随した、きめ細かな変調方式、符号化率の決定を行なうことができる。
【0062】
一方、移動局装置が高速で移動している場合、すなわち伝搬路のチャネル変動が大きい場合、移動局装置が測定する受信品質の時間的な変動が大きいため、相関値計算部113で算出される相関値は小さな値となる。例えば、移動局装置が、図6(b)に示す時刻t、時刻t、時刻tで受信品質を測定した場合は、より小さな相関値が算出される。
【0063】
この場合、本実施形態においては、移動局装置から送信される受信品質の差分情報と、移動局装置から送信される相関値に基づいて選択された大きなステップ幅を持ったテーブルから、信号に施す変調方式、符号化率を決定するため、伝搬路の大きなチャネル変動に追随した、変調方式、符号化率の決定を行なうことができる。
【0064】
なお、上述した実施形態においては、受信品質としてCINRを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、受信品質として、RSSI(Receive Signal Strength Indication:受信信号強度値)、SNR(Signal to Noise power Ratio:信号対雑音電力比)、SIR(Signal to Interference power Ratio:信号対干渉電力比)、SINR(Signal to Interference plus Noise power Ratio:信号対干渉および雑音電力比)、CNR(Carrier to Noise power Ratio:搬送波対雑音電力比)、CIR(Carrier to Interference power Ratio:搬送波対干渉波電力比)など受信信号電力や搬送波電力に関連して受信品質を示す指標を用いてもよい。また、受信品質としてBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)、PER(Packet Error Rate:パケット誤り率)、BLER(Block Error Rate:ブロック誤り率)など受信の成否に関連して受信品質を示す指標受信の成否に関連して受信品質を示す指標などを用いてもよい。
【0065】
また、本実施形態におけるチャネルは、1つあるいは複数のサブキャリアからなるが、MIMO(Multiple Input Multiple Output)などのSDMA(Space Division Multiple Access)においての送信アンテナあるいは固有モードが示す複数のチャネル、あるいは、これらの組み合わせのチャネルなどを利用する移動通信システムに本実施形態を適用しても良い。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による移動通信システムについて説明する。第2の実施形態に係る移動通信システムは、第1の実施形態に係る移動通信システムが、移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の相関値に応じて変調方式、符号化率を決定するのに対し、移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の分散値に応じて変調方式、符号化率を決定する点で相違する。
【0067】
なお、第2の実施形態に係る移動通信システムにおいては、基地局装置が、相関値計算部113の代わりに分散値計算部114を備えている点で第1の実施形態に係る基地局装置と相違している。図7は、第2の実施形態に係る移動通信システムが有する移動局装置および基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。なお、図7において、図1と同一の構成については、同一の符号を付与し、その説明を省略する。
【0068】
第2の実施形態に係る移動局装置において、分散値計算部114は以下のようにして分散値を計算する。ここで、移動局装置にて測定された受信品質のある時刻t、ある周波数fにおける測定された値をX(t,f)とする。このとき、測定された受信品質X(t,f)の時間方向の分散値は、以下のように求めることができる。
【0069】
移動局装置が、分散を測定する測定時間長をLとした時、周波数fにおけるX(t,f)の時刻τ近傍での分散は以下の式(5)のように表すことができる。

【数5】


ここでE(t,f)は、区間τ±1/2L、周波数fにおける受信品質X(t,f)の時間方向の平均値を示し、以下の式(6)で表すことができる。

【数6】

【0070】
さらに、周波数fにおける分散V(τ,f)を周波数方向に平均化したものは、以下の式(7)で表すことができる。

【数7】


ここで、分散V(τ)が小さい場合には、V(τ)を測定した時刻τでの受信品質X(τ,f)と、それより時刻差Tだけ後の時刻での受信品質X(τ+T,f)とには、強い相関があり、逆に分散値V(τ)が大きい場合には、測定した受信品質X(τ,f)から時刻差T後の受信品質X(τ+T,f)を推定することは困難である。
【0071】
なお、上述した式(5)〜式(7)を用いた方法以外の分散値の計算方法を用いてもよい。また、本実施形態では、受信品質としてCINRを用いて、分散値を計算する場合について示しているが、その他の受信品質指標を用いて分散値を計算してもよい。
【0072】
基地局装置の変調符号制御部209は、移動局装置の受信品質測定部が異なる時間(例えば、図2における時刻tと時刻t)に測定した受信品質の分散値の大小に応じて、異なるステップ幅を持ったテーブルを選択し、そのテーブルのステップ幅で信号に施す変調方式、符号化率を決定する。具体的には、移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の分散値が小さい場合、基地局装置は変調方式、符号化率を小さく変更するステップ幅を持ったテーブルAを選択し、テーブルAのステップ幅で信号に施す変調方式、符号化率を決定する。移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の分散値が大きい場合、基地局装置は変調方式、符号化率を大きく変更するステップ幅を持ったテーブルCを選択し、テーブルBのステップ幅で信号に施す変調方式、符号化率を決定する。ここで、テーブルA、テーブルCとは、例えば、相関値の実施例で挙げた図3で示されるテーブルである。
【0073】
次に、基地局装置の変調符号制御部209による、移動局装置によって送信される分散値に基づいた、異なるステップ幅を持ったテーブルの選択方法について説明する。
【0074】
図8は、本発明の第2の実施形態による、基地局装置の変調符号制御部が記憶する情報の一例を示す図である。移動局装置が異なる時間に測定した受信品質の分散値を基地局装置に送信し、基地局装置は、その値に基づいて変調方式、符号化率を決定するためのテーブルを選択して、そのテーブルのステップ幅で信号に施す変調方式、符号化率を決定する。基地局装置の変調符号制御部209は、移動局装置から送信される分散値(例えば、V12以上)とステップ幅を決定するためのテーブル(例えばテーブルC)とを対応付けて記憶している。本実施形態では、分散値に、2つの閾値V11、V12を設定している。ここで、V11<V12である。
【0075】
分散値が所定の閾値V12以上である場合には、基地局装置の変調符号制御部209は、変調方式、符号化率を決定するためのテーブルとして、テーブルCを選択する。分散値が所定の閾値V11以上であって所定の閾値V12未満である場合には、基地局装置の変調符号制御部209は、変調方式、符号化率を決定するためのテーブルとして、テーブルBを選択する。分散値が所定の閾値R11未満である場合には、基地局装置の変調符号制御部209は、変調方式、符号化率を決定するためのテーブルとして、テーブルAを選択する。ここで、テーブルA、テーブルB、テーブルCとは、例えば、相関値の実施形態で挙げた図3で示されるテーブルを示している。
【0076】
上記に示すように、基地局装置は、移動局装置から送信される受信品質の差分情報と、移動局装置から送信される分散値に基づいて選択されたテーブルから、信号に施す変調方式、符号化率を決定する。これにより、伝搬路のチャネル変動が大きい場合でも、施される適応変調符号化が、実際の伝搬路のチャネル状態に追随することができる。また、受信品質の差分情報と分散値(もしくは計算された分散値を示す情報)だけを送信するために、移動局装置から基地局装置に対して送信する受信品質情報の情報量を小さくすることができる。
【0077】
本発明の第2の実施形態による移動通信システムの処理を示すシーケンスは、上述した第1の実施形態で示した図5で表されるシーケンスと同様なシーケンスで実現することができる。
【0078】
なお、以上説明した実施形態において、これらの機能またはこれらの機能の一部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより基地局装置または移動局装置の制御を行なってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0079】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0080】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの基地局装置、移動局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】第1の実施形態による移動局装置の受信品質測定部が測定する受信品質について説明するための図である。
【図3】第1の実施形態による信号に施す変調方式、符号化率を決定するためのテーブルの選択について説明した図である。
【図4】第1の実施形態による基地局装置が記憶する情報の一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態による移動通信システムの処理を示すシーケンスチャートである。
【図6】第1の実施形態による効果について説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る移動通信システムの基地局装置、移動局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図8】第2の実施形態による基地局装置が記憶する情報の一例を示す図である。
【図9】従来の基地局装置と移動局装置との通信方法について説明するための図である。
【図10】従来の移動局装置における受信品質の測定について説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
101 送信バッファ
102 変調符号化部
103 マッピング部
104 逆高速フーリエ変換(IFFT)部
105 無線送信部(受信品質情報送信部)
106 送信制御部
107 無線受信部
108 高速フーリエ変換(FFT)部
109 復調復号化部
110 アンテナ
111 受信品質測定部
112 受信品質情報生成部
113 相関値計算部
114 分散値計算部
201 送信バッファ
202 変調符号化部
203 マッピング部
204 逆高速フーリエ変換(IFFT)部
205 無線送信部(信号送信部)
206 無線受信部
207 高速フーリエ変換(FFT)部
208 復調復号化部
209 変調符号制御部
210 スケジューラ制御部
211 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局装置と基地局装置とを備える移動通信システムであって、
前記移動局装置は、
前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部と、
前記受信品質測定部が異なる時間に測定した受信品質の関係を計算する受信品質情報測定部と、
前記受信品質測定部で測定した受信品質情報および前記受信品質の関係を示す情報を前記基地局装置に送信する受信品質情報送信部と、を備え、
前記基地局装置は、
前記受信品質情報と前記受信品質の関係を示す情報に基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、
前記変調符号制御部で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
移動局装置と基地局装置とを備える移動通信システムであって、
前記移動局装置は、
前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部と、
前記受信品質測定部が異なる時間に測定した受信品質に基づいて受信品質の関係を示す相関値を計算する相関値計算部と、
前記受信品質測定部で測定した受信品質情報と前記相関値とを前記基地局装置に送信する受信品質情報送信部とを備え、
前記基地局装置は、
前記受信品質情報と前記相関値とに基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、
前記変調符号制御部で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴とする移動通信システム。
【請求項3】
移動局装置と基地局装置とを備える移動通信システムであって、
前記移動局装置は、
前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定部と、
前記受信品質測定部が異なる時間に測定した受信品質に基づいて受信品質の関係を示す分散値を計算する分散値計算部と、
前記受信品質測定部で測定した受信品質情報と前記分散値とを前記基地局装置に送信する受信品質情報送信部と、を備え、
前記基地局装置は、
前記受信品質情報と前記分散値とに基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、
前記変調符号制御部で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴とする移動通信システム。
【請求項4】
移動局装置と通信する基地局装置であって、
前記移動局装置で異なる時間に測定された複数のチャネルの受信品質情報と、前記受信品質情報の関係を示す情報とに基づいて前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御部と、
前記変調符号制御部で適応変調符号化を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信部と、を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項5】
移動局装置と基地局装置とを用いた移動通信方法であって、
前記移動局装置は、
前記基地局装置から受信する信号に基づいて複数のチャネルの受信品質を測定する受信品質測定過程と、
前記受信品質測定過程で異なる時間に測定した受信品質の関係を計算する受信品質情報測定過程と、
前記受信品質測定過程で測定した受信品質情報と前記受信品質の関係を示す情報とを前記基地局装置に送信する受信品質情報送信過程とを実行し、
前記基地局装置は、
前記受信品質情報と前記受信品質の関係を示す情報とに基づいて、前記移動局装置に送信する信号について適応変調符号化の制御を行なう変調符号制御過程と、
前記変調符号制御過程で適応変調符号化の制御を行なった信号を前記移動局装置に送信する信号送信過程と、を実行することを特徴とする移動通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−17075(P2009−17075A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174849(P2007−174849)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】