説明

移動通信システムにおける基地局及び基地局において使用される方法

【課題】ユーザ装置UEの自セルへのアクセスの抑制を促すように、基地局がシステム情報を変更したことで、輻輳が生じないようにすること。
【解決手段】移動通信システムにおける基地局は、UEの自セルへのアクセスの抑制を促すシステム情報を作成するシステム情報編集部と、 待ち受け状態のUEが間欠受信周期毎に起動するタイミングから、UEを複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知する通知タイミングをグループ毎に決定するタイミング決定部と、第1の単位報知期間において、何れかのグループについての通知タイミングでページング信号を送信し、ページング信号を受信したUEが、第1の単位報知期間に続く第2の単位報知期間において、システム情報を受信すべきことを、何れかのグループに属するUEに通知することに加えて、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングでシステム情報を送信する送信部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムにおける基地局及び基地局において使用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムのセルが輻輳してきた場合、基地局は、セル内で待ち受け中のユーザ装置を他のセルに移すことで、輻輳の状態を回避することができる。セル内のユーザ装置を他のセルに移すことは、基地局からの報知信号に含まれているシステム情報を用いて行うことができる。この場合、少なくとも2つの方法が考えられる。
【0003】
第1の方法は、セルに規制をかけるものである。例えば、セルの状態を示す状態情報がシステム情報に含まれ、その状態情報により、セルが輻輳しているか否かが示されてもよい。セルが輻輳していることを示すシステム情報を受信したユーザ装置は、他のセルをセル選択することになる。ロングタームエボリューション(LTE)方式等の移動通信システムの場合、そのような状態情報として「cellBarred IE」という情報要素を使用することができる。この情報要素は、輻輳していない場合は「notBarred」という値をとり、輻輳している場合は「Barred」という値をとる。このような技術については、非特許文献1に示されている。
【0004】
第2の方法は、周波数又は無線アクセス技術(RAT)の優先度を利用するものである。例えば、周波数やRATの優先度を示す情報がシステム情報に含まれ、その優先度の情報により、ユーザ装置がセル選択すべきセルの周波数やRATを指定することができる。例えば、ユーザ装置の在圏セルの周波数の優先度よりも、他のセルの周波数の優先度が高く設定されていた場合、ユーザ装置は他の周波数のセルをセル選択することになる。このような技術については、非特許文献1、2に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS36.304 V8.9.0(2010−09),5.2.4章,5.3章
【非特許文献2】3GPP TS36.331 V8.13.0(2011−03),6.3.1章,6.3.4章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、システム情報はセルに待ち受ける全てのユーザ装置により受信される。したがって、他のセルにセル選択することを促す情報を含むシステム情報が送信された場合、それを受信した多数のユーザ装置が一斉に他のセルへセル選択を試みることになる。この場合、移行先である他のセルが急激に輻輳してしまうことが懸念される。特に、無線アクセス技術(RAT)が異なる他のセルへセル選択する場合、ユーザ装置は、アタッチの処理や位置登録等を行う必要があるので、移行先のセルでは、アタッチや位置登録等の信号が一斉に発生し、移行先のセルを収容する基地局装置が急激に輻輳してしまうことが懸念される。
【0007】
本発明の課題は、ユーザ装置のセル選択を促すように、基地局がシステム情報を変更したことで、移行先のセルにおいて輻輳が生じてしまうおそれを少なくとも軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施例による基地局は、
システム情報を作成するシステム情報編集部と、
待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期毎に起動するページング受信タイミングから、該ユーザ装置を複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知する通知タイミングをグループ毎に決定するタイミング決定部と、
第1の単位報知期間において、何れかのグループについての通知タイミングで前記ページング信号を送信し、該ページング信号を受信したユーザ装置が、前記第1の単位報知期間に続く第2の単位報知期間において、前記システム情報を受信すべきことを、該何れかのグループに属するユーザ装置に通知することに加えて、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングで前記システム情報を送信する送信部と
を有する、移動通信システムにおける基地局である。
【発明の効果】
【0009】
一実施例によれば、基地局がシステム情報を変更したことで、移行先のセルにおいて輻輳が生じてしまうおそれを少なくとも軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例において想定されている状況の一例を示す図。
【図2】実施例において使用される基地局の機能ブロック図。
【図3】起動タイミングによりユーザ装置をグループ分けする方法を説明するための図。
【図4】システム情報が送信される様子を示す図。
【図5】基地局が行う動作例のフローチャート。
【図6】動作の詳細を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例によれば、基地局はセルが輻輳してきた場合に、ユーザ装置に通知するシステム情報を更新することで、待ち受け状態で動作しているセル内のユーザ装置が当該セルへ一斉にアクセスすることを避けることができる。待ち受け状態の多数のユーザ装置は、間欠受信周期(DRX周期)毎に起動するページング受信タイミングにより、複数のグループに分けられる。さらに、システム情報を受信すべきことを示すページング信号が、グループ毎に順番に通知される。このため、第1の単位報知期間において第1のグループに属するユーザ装置のみがシステム情報を受信した後に、後続の第2の単位報知期間において第2のグループに属するユーザ装置のみがシステム情報を受信することになる。第1のグループに属するユーザ装置は、更新後のシステム情報に基づいた動作を開始する。その後に、第2のグループに属するユーザ装置が、更新後のシステム情報に基づいた動作を開始する。このように、システム情報の更新通知はグループ毎に順番に行われるので、全てのユーザ装置が一斉に動作し、装置が輻輳してしまう問題を効果的に解決できる。仮に、第1のグループに属するユーザ装置が更新されたシステム情報に従って動作を試みた時点で輻輳しそうになった場合、例えば更にグループを細分化することで、輻輳を回避することができる。
【0012】
以下の観点から実施例を説明する。
【0013】
1.システム
2.基地局
3.動作例
4.変形例
【実施例1】
【0014】
<1.システム>
図1は実施例において想定されている状況の一例を示す。LTE方式の移動通信システムにおける2つのセル(LTEセル)が示され、セルの各々に基地局eNBが示されている。左側のLTEセルと少なくとも一部が地理的に重複するセルを有する別のセルも示されている。別のセルは、例えば第3世代の移動通信システムにおけるセル(3Gセル)であり、基地局BSも示されている。左側のLTEセルは輻輳状態である又は輻輳状態になりつつある。このため、左側のLTEセルの基地局eNBは、3Gセルのような他のセルにユーザ装置UEがセル選択することを促す。あるいは逆に、LTEセルが輻輳状態から通常状態に戻った場合に、3GセルからLTEセルへのセル選択を促すような場合にも、本実施例は適用可能である。ユーザ装置UEは、典型的には移動局であるが固定局でもよいが、LTE方式及び3G方式の何れの方式でも動作可能であることを要する。ユーザ装置UEは、具体的には、携帯電話、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ等であるがこれらに限定されない。図示の簡明化のため、3Gセル1つとLTEセル2つとが示されているが、セルの数は任意である。また、LTE方式と第3世代方式とが例示されているが、他の方式の移動通信システムが使用されてもよい。
【0015】
<2.基地局>
図2は、図1に示されるような状況において使用される基地局を示す。基地局は、LTEセルの基地局eNBでもよいし、3Gセルの基地局BSでもよいが、説明の便宜上、LTEセルにおける基地局であるとする。ただし、本発明はこの形態に限定されず、待ち受け状態であるセル内のユーザ装置からのアクセスを抑えようとしている任意の基地局に本発明が適用可能である。図2には、基地局に備わる様々な機能部又は処理部のうち、実施例の説明に特に関連のあるものが示されている。基地局は、輻輳測定・検出部21、パラメータ選択部22、システム情報編集部23、ページングメッセージ編集部24、ページングタイミング決定部25及び信号送信部26を少なくとも有する。
【0016】
輻輳測定・検出部21は、セルの輻輳レベルを測定又は検出する。輻輳レベルは、適切な如何なる方法で測定又は検出されてもよい。一例として、輻輳レベルは、基地局のCPU使用率や検査信号のラウンドトリップ遅延時間(RTD)等によって測定又は検出される。例えば、基地局の中央処理装置の使用率(CPU使用率)が50%未満であった場合、セルは輻輳しておらず、CPU使用率が50%以上であった場合、セルは輻輳していると判断されてもよい。さらに、輻輳レベルは、輻輳しているか否かの2値により表現されてもよいし、2より多い種類の数又はレベルで表現されてもよい。例えば、CPU使用率のパーセンテージが輻輳レベルに対応していてもよい。輻輳測定・検出部21は、輻輳レベルの値をパラメータ選択部22に通知する。一例として、輻輳測定・検出部21は、輻輳していなかったセルの輻輳レベルが所定の閾値を超えた場合(セルが輻輳した場合)に、パラメータ選択部22にその旨及び輻輳レベルを通知する。あるいは逆に、輻輳測定・検出部21は、輻輳していたセルの輻輳レベルが所定の閾値未満になった場合に、パラメータ選択部22にその旨及び輻輳レベルを通知してもよい。
【0017】
パラメータ選択部22は、本実施例で使用される各種のパラメータの値を選択する。具体的には、パラメータ選択部22は、(a)規制をかけるか否かを示す状態情報、(b)周波数又はRATの優先度の情報、(c)ユーザ装置のグループ情報等を示すパラメータの値を、輻輳レベルに応じて選択する。
【0018】
(a)規制をかけるか否かを示す状態情報は、例えば、輻輳しているか否かを示す2値により表現されてもよい。LTE方式等の移動通信システムの場合、そのような状態情報として「cellBarred IE」という情報要素を使用することができる。この情報要素は、輻輳していない場合は「notBarred」という値をとり、輻輳している場合は「Barred」という値をとる。規制をかけるか否かを示す状態情報は、システム情報に含まれる。規制の有無を示すシステム情報を受信したユーザ装置は、システム情報の指示に従って動作することになる。状態情報は、規制の有無だけでなく、どの程度規制しているかを示す規制レベルで表現してもよい。例えば、規制レベルとして70%の値が示され、70%の規制がかかっていることを状態情報が示していた場合、この状態情報を受信したユーザ装置は、発信しようとした際に、70%の確率で送信信号の送信を控え、30%の確率で送信信号を送信する。
【0019】
(b)周波数又はRATの優先度の情報は、ユーザ装置が使用すべき周波数又はRATの優先度を示す。この優先度の情報は、システム情報に含まれる。周波数又はRATの優先度を適宜変更することで、ユーザ装置がセル選択すべき周波数又はRATを指定することができる。ユーザ装置の在圏セルの周波数の優先度よりも、他の周波数の優先度が高く設定されていた場合、ユーザ装置は他の周波数のセルをセル選択することになる。
【0020】
(c)ユーザ装置のグループ情報は、待ち受け中のユーザ装置が、複数のグループのうちの何れに属しているかを示す情報や、グループの総数を示す情報等を含む。待ち受け中の場合、ユーザ装置は、間欠受信周期(DRX)毎に起動し、制御信号を受信及び復調し、常時受信状態に移行すべきか否かを判定する。移行する必要があれば速やかに移行し、その必要がなければ待ち受け状態に留まり、次の起動のタイミングまで休止する。パラメータ選択部22は、待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期(DRX周期)毎に起動するタイミングから、そのユーザ装置を何れかのグループに分類する。
【0021】
図3は、様々なユーザ装置UE#1ないしUE#6が間欠受信周期(DRX周期)毎に起動している様子を示す。これらのユーザ装置は何れも同じ間欠受信周期(DRX周期)で起動するが、起動するタイミングはユーザ装置毎に異なっている。このように分散している起動のタイミングに基づいて、間欠受信状態のユーザ装置を複数のグループに分類することができる。図3に示す例の場合、第1のユーザ装置UE#1が起動するタイミングを基準時点として、DRX周期の前半の期間内に起動するユーザ装置UE#1、UE#2、UE#3が、第1のグループに分類される。DRX周期の後半の期間内に起動するユーザ装置UE#4、UE#5、UE#6は、第2のグループに分類される。このようにしてユーザ装置が2つのグループに分類される。分類するグループ数は、2より多い数でもよい。その場合、DRX周期を2より多い数に分割する必要がある。図2のパラメータ選択部22は、このように待ち受け状態のユーザ装置をどのようにグループ分けするか(グループ分けの仕方)を示すグループ情報のパラメータを決定する。具体的には、グループの総数を示すパラメータや、待ち受け状態のユーザ装置が所属するグループを示すパラメータ等の値が選択又は決定される。
【0022】
パラメータ選択部22は、(a)規制をかけるか否かを示す状態情報、(b)周波数又はRATの優先度の情報、(c)ユーザ装置のグループ情報等を示すパラメータの値を、輻輳レベルに応じて選択する。この場合、(a)状態情報及び(b)優先度の情報の双方のパラメータが選択されることは必須でない。何れか一方のシステム情報を更新することによって、輻輳を回避することができるからである。したがって、パラメータ選択部22は、輻輳レベルが所定値以上であった場合、どのようにして輻輳を回避すべきかを決定し、(a)状態情報及び/又は(b)優先度の情報のパラメータを選択する。パラメータ選択部22により選択されたパラメータは、システム情報編集部23、ページングメッセージ編集部24、ページングタイミング決定部25に通知される。
【0023】
システム情報編集部23は、システム情報を作成又は編集する。輻輳していないセルの基地局がセルの輻輳を回避する場合、a)規制をかけるか否かを示す状態情報及び/又は(b)周波数又はRATの優先度の情報を変更する。例えば、規制していないことを示す状態情報が、規制していることを示す状態情報に変更される。あるいは、自セルの周波数又はRATよりも他のセルの周波数又はRATの優先度が高くなるように変更される。システム情報編集部23は、このように変更されたシステム情報を準備する。
【0024】
なお、輻輳していないセルが輻輳してきた場合だけでなく、逆に、輻輳していたセルが通常通りユーザ装置を収容できるようになった場合も、状態情報や周波数等の優先度の情報を示すシステム情報が変更される。この場合、例えば、規制していることを示す状態情報が、規制していないことを示す状態情報に変更される。あるいは、自セルの周波数又はRATの優先度が、他のセルの周波数又はRATよりも高くなるように変更される。
【0025】
ページングメッセージ編集部24は、間欠受信状態のユーザ装置に通知するページング信号を作成又は編集する。ページング信号は、着信があったことや、システム情報を受信すべきこと等をユーザ装置に通知するための信号である。本実施例では特にシステム情報を受信すべきこと等を示す通知情報をユーザ装置に通知するために、ページング信号が使用される。システム情報は、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングで基地局から送信される。
【0026】
図4は、システム情報が送信されるタイミングを模式的に示す。システム情報は、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングで送信される。単位報知期間の長さは、ユーザ装置の間欠受信周期の整数倍(例えば、4倍)となるようにシステムで一意に決定されており、例えば2560ミリ秒であるが、これに限定されない。システム情報が送信される所定のタイミングや周期は、オペレータにより適切に決定され、システム情報の一部としてユーザ装置に通知される。単位報知期間内のシステム情報は、必要に応じて変更される。上述したように規制の状態情報や周波数等の優先度の情報を示すシステム情報は、セルの輻輳レベルに応じて変更されても良い。このように変更されたシステム情報の受信を促すために、ページング信号が使用される。ある単位報知期間において、待ち受け状態のユーザ装置が、間欠的に起動したタイミングでページング信号を受信した場合、そのユーザ装置は、次の単位報知期間に至るまで間欠受信状態に留まり、次の単位報知期間から起動してシステム情報を受信する。ある単位報知期間において、間欠受信状態のユーザ装置が、そのようなページング信号を受信しなかった場合、そのユーザ装置は、間欠受信状態に留まり続け、次の単位報知期間においてシステム情報を受信しなくても良い。
【0027】
図2のページングタイミング決定部25は、複数のグループのうちの何れかのグループに属するユーザ装置がページング信号を受信できるように、ページング信号の通知タイミング(ページングタイミング)を決定する。パラメータ選択部22は、待ち受け状態のユーザ装置が起動するタイミングに基づいて、ユーザ装置をグループ分けしている。したがって、間欠受信周期をグループ毎に分割することで、各グループのページングタイミングを決定することができる。図3に示す例の場合、第1及び第2のグループが存在し、それぞれDRX周期の前半及び後半で起動する。したがって、第1のグループに属するユーザ装置に通知するページング信号の通知タイミングは、DRX周期の前半の期間として決定される。第2のグループに属するユーザ装置に通知するページング信号の通知タイミングは、DRX周期の後半の期間として決定される。その結果、例えば第1の単位報知期間において、基地局がDRX周期の前半だけでページング信号を送信した場合、第1のグループに属するユーザ装置のみがページング信号を受信し、それらが次の第2の単位報知期間から起動してシステム情報を受信する。システム情報には変更後のシステム情報(例えば、規制していることを示す情報)が含まれているので、第1のグループのユーザ装置はシステム情報に従った動作を試みる。しかしながら、第2のグループに属するユーザ装置は、第1の単位報知期間においてページング信号を受信していないので、第2の単位報知期間においてシステム情報を受信せず、システム情報に従った動作をしようとしない。第2又はそれ以降の単位報知期間において、基地局は、DRX周期の後半だけでページング信号を送信することで、第2のグループに属するユーザ装置のみがページング信号を受信できるようにする。これにより、第2のグループに属するユーザ装置は、第3又はそれ以降の単位報知期間から起動してシステム情報を受信し、システム情報に従った動作を試みることになる。
【0028】
信号送信部26は、一般的な制御信号やデータ信号を送信することに加えて、特に、変更後のシステム情報を受信すべきことを示すページング信号、及び変更後のシステム情報をユーザ装置に送信する。
【0029】
動作の詳細については後述するが、本実施例では、ユーザ装置が原則としてグループ毎に順番にシステム情報を受信してシステム情報に従った動作をしようとするので、待ち受け状態のユーザ装置全体が一斉にシステム情報に従った動作を試みることで輻輳してしまう従来の問題を効果的に回避できる。ただし、グループ毎に順番にシステム情報に従った動作を試みるようにすることは必須でない。例えば、複数のグループのうちの特定のグループのユーザ装置のみがシステム情報に従った動作を試みるように、特定のグループだけにページング信号が通知されてもよい。
【0030】
ユーザ装置を2つのグループに分類する場合は、上述したように間欠受信周期(DRX周期)の前半と後半に分類しても良いし、間欠受信周期(DRX周期)の奇数番目のページングタイミング(図3のUE#1, UE#3, UE#5)と偶数番目のページングタイミング(図3のUE#2, UE#4、UE#6)に分類しても良いし、それ以外の分類を行っても良い。
【0031】
<3.動作例>
図5は、図2に示すような基地局が行う動作例のフローチャートを示す。フローはステップS501から始まり、ステップS503に進む。
【0032】
ステップS503において、基地局は、輻輳測定・検出部21により、セルの輻輳レベルを測定する。
【0033】
ステップS505において、基地局は、輻輳レベルが所定値以上であるか否かを判定する。輻輳レベルが所定値以上であった場合、基地局の輻輳測定・検出部21は、輻輳を回避するためのシステム情報を作成すべきことを、輻輳レベルとともにパラメータ選択部22に通知する。輻輳レベルが所定値未満であった場合、基地局の輻輳測定・検出部21は、ユーザ装置を収容するするためのシステム情報を作成すべきことを、輻輳レベルとともにパラメータ選択部22に通知する。
【0034】
ステップS507において、基地局は、パラメータ選択部22により、各種のパラメータの値を輻輳レベルに応じた値に設定する。輻輳していた場合、パラメータ選択部22は、どのようにして輻輳を回避するかを決定する。具体的には、(a)規制をかけるか否かを示す状態情報、(b)周波数又はRATの優先度の情報、(c)ユーザ装置のグループ情報等を示すパラメータの値が、輻輳レベルに応じて選択される。輻輳していなかった場合、これらのパラメータの値は原則として変更されないが、輻輳していた状態から通常の状態に戻ったばかりの場合、これらのパラメータの値が、通常通りユーザ装置を収容するための値に変更される。
【0035】
ステップS509において、基地局は、システム情報編集部23により、システム情報を作成する。セルの輻輳を回避する必要がある場合のシステム情報は、例えば、(a)セルが規制していることを示す状態情報及び/又は(b)他のセルの周波数又はRATの優先度が自セルの周波数より高いことを示す優先度の情報である。輻輳状態から通常状態に戻る場合のシステム情報は、例えば、(a)セルが規制していないことを示す状態情報及び/又は(b)自セルの周波数又はRATの優先度が他セルの周波数又はRATより高いことを示す優先度の情報である。
【0036】
ステップS511において、基地局は、ページングメッセージ編集部24により、ページングメッセージを作成する。この場合におけるページングメッセージは、それを受信した待ち受け状態のユーザ装置が、次の単位報知期間から起動してシステム情報を受信すべきことを示す。
【0037】
ステップS513において、基地局は、ページングタイミング決定部25により、ページング信号をユーザ装置に通知する通知タイミング(ページングタイミング)を決定する。この通知タイミングは、グループ分けされたユーザ装置が起動するタイミングに合わせて決定される。
【0038】
なお、説明及び図示の便宜上、ステップS509、S511、S513がこの順序で行われるように示されているが、このことは必須でなく、別の順序で行われてもよいし、複数のステップの処理の全部又は一部が同時に行われてもよい。
【0039】
ステップS515において、グループの番号を指定するパラメータNが1に設定される。グループ数はNG>1である。図3に示す例の場合、NG=2であり、本説明でもNG=2とするが、グループ数は任意である。
【0040】
ステップS515において、基地局は、N番目のグループに属するユーザ装置が起動する該ミングに合わせてページング信号を送信する。
【0041】
ステップS517において、基地局は、一連の単位報知期間のうちの所定のタイミングにおいて、変更後のシステム情報を含む報知信号を送信する。
【0042】
ステップS521において、グループの番号Nがグループ数NGより小さいか否かが判定される。グループの番号Nがグループ数NGより小さかった場合、フローはステップS523に進み、Nの値がインクリメントされ、フローはステップS517に戻り、別のグループについて説明済みの動作が行われる。グループの番号Nがグループ数NGより小さくなかった場合、フローはステップS525に進み、終了する。
【0043】
図6は、図5におけるステップS517及びS519に関する動作を詳細に説明するための図である。説明の便宜上、ユーザ装置UE−A及びUE−Bが第1のグループに属し、ユーザ装置UE−C及びUE−Dが第2のグループに属しているものとする。システム情報は、一連の単位報知期間の各々における所定のタイミングで送信される。単位報知期間は、便宜上、T1−T8の8つの期間に分割されているものとする。この期間の2つ分が、間欠受信周期(DRX周期)に等しいとする。
【0044】
先ず、第1の単位報知期間の場合、基地局は、T1、T3、T5、T7の期間においてページング信号を送信する。第1のグループに属するユーザ装置UE−A及びUE−Bが起動するタイミングは、T1、T3、T5、T7の期間に含まれている。第2のグループに属するユーザ装置UE−C及びUE−Dが起動するタイミングはこれらの期間に含まれていない。したがって、T1、T3、T5、T7の期間において送信されたページング信号は、第1のグループに属するユーザ装置だけに通知されることになる。第1の単位報知期間においてページング信号を受信したユーザ装置UE−A及びUE−Bは、第2の単位報知期間に至るまで間欠受信状態に留まり、第2の単位報知期間の開始とともに起動し、システム情報を受信する。システム情報には、例えば、当該セルにおける規制情報や、周波数やRATの優先度を示す情報等が含まれているので、ユーザ装置UE−A及びUE−Bは、システム情報に基づいた動作を試みる。
【0045】
次に、第2の単位報知期間の場合、基地局は、T2、T4、T6、T8の期間においてページング信号を送信する。第2のグループに属するユーザ装置UE−C及びUE−Dが起動するタイミングは、T2、T4、T6、T8の期間に含まれている。第1のグループに属するユーザ装置UE−A及びUE−Bが起動するタイミングはこれらの期間に含まれていない。したがって、T2、T4、T6、T8の期間において送信されたページング信号は、第2のグループに属するユーザ装置だけに通知されることになる。第2の単位報知期間においてページング信号を受信したユーザ装置UE−C及びUE−Dは、第3の単位報知期間に至るまで間欠受信状態に留まり、第3の単位報知期間の開始とともに起動し、システム情報を受信する。システム情報には、例えば、当該セルにおける規制情報や、周波数やRATの優先度を示す情報等が含まれているので、ユーザ装置UE−C及びUE−Dは、システム情報に基づいた動作を試みる。
【0046】
図示の例の場合、第1のグループに属するユーザ装置は第2の単位報知期間からシステム情報を受信し、システム情報に基づいた動作を試みる一方、第2のグループに属するユーザ装置は第3の単位報知期間からシステム情報を受信し、システム情報に基づいた動作を試みる。このように本実施例では、システム情報を受信するタイミングをグループ毎に変更することで、待ち受け状態で動作している全てのユーザ装置全体が一斉にシステム情報に基づいた動作を試みた結果、セルが輻輳してしまうという問題を効果的に解決できる。仮に、第1のグループのユーザ装置がシステム情報に基づいた動作を試みた結果、輻輳しそうになった場合、例えば更にグループを細分化することで、深刻な輻輳状態に陥ってしまうことを回避できる。
【0047】
<4.変形例>
上記の説明においては、便宜上、待ち受け状態のユーザ装置をグループ分けする際のグループ数は、2つであったが、本実施例は2グループに限定されず、グループ数は任意である。例えば、図6に示す例の場合、T1−T8の期間をDRX周期とした場合は、8つまでの数のグループを設定することができる。
【0048】
上記の説明では、各グループのユーザ装置に通知するシステム情報は同一であったが、このことは必須でない。更新するシステム情報は、グループ毎に異なってもよい。例えば、第1のグループに対しては第1の周波数のセルへセル選択することを促し、第2のグループに対しては第2の周波数のセルへセル選択することを促してもよい。あるいは、何れかのグループにはセル選択が促され、別のグループにはセル選択が促されなくてもよい。具体的には、規制に関する状態情報や周波数等の優先度の情報を示すシステム情報が、グループ毎に作成されることになる。この場合、待ち受け状態のユーザ装置を移す移行先をグループ毎に指定することができるので、特定のセルのみが移行先となる場合に比べて、移行先となる他のセルへ及ぼす影響を軽減しつつ自セルの輻輳を回避することができる。
【0049】
本実施例は、輻輳していない通常状態から輻輳状態に向かう場合だけでなく、逆に輻輳状態から通常状態に戻る場合にも適用可能である。前者の場合、セル内のユーザ装置からのアクセスを減らすことになるが、後者の場合、グループ毎に自セルへのアクセスを受け入れることになる。
【0050】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、輻輳を回避するために自セルへのアクセスの抑制を促す機能を有する適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。例えば本発明は、W−CDMA方式のシステム、HSDPA/HSUPA方式のW−CDMAシステム、LTE方式のシステム、LTE−Advanced方式のシステム、IMT−Advanced方式のシステム、WiMAX、Wi−Fi方式のシステム等に適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数式を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数式は単なる一例に過ぎず適切な如何なる数式が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2つ以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0051】
21 輻輳測定・検出部
22 パラメータ選択部
23 システム情報編集部
24 ページングメッセージ編集部
25 ページングタイミング決定部
26 信号送信部
eNB LTE基地局
BS 3G基地局
UE ユーザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム情報を作成するシステム情報編集部と、
待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期毎に起動するタイミングから、該ユーザ装置を複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知する通知タイミングをグループ毎に決定するタイミング決定部と、
第1の単位報知期間において、何れかのグループについての通知タイミングで前記ページング信号を送信し、該ページング信号を受信したユーザ装置が、前記第1の単位報知期間に続く第2の単位報知期間において、前記システム情報を受信すべきことを、該何れかのグループに属するユーザ装置に通知することに加えて、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングで前記システム情報を送信する送信部と
を有する、移動通信システムにおける基地局。
【請求項2】
当該基地局のセルの輻輳レベルを測定する測定部をさらに有し、測定された輻輳レベルが所定のレベルを超えていた場合に、前記システム情報編集部は、システム情報を更新する、請求項1記載の基地局。
【請求項3】
前記システム情報が、セルが規制していること又は他の周波数の優先度が当該基地局のセルの周波数より高いことを示す、請求項2記載の基地局。
【請求項4】
前記システム情報により促される動作が、グループ毎に決定されている、請求項3記載の基地局。
【請求項5】
前記システム情報で通知された優先度の無線アクセス技術が、当該基地局において使用されているものと異なる、請求項1ないし4の何れか1項に記載の基地局。
【請求項6】
前記単位報知期間が、前記間欠受信周期の1つ以上の期間に等しい、請求項1ないし5の何れか1項に記載の基地局。
【請求項7】
システム情報を作成し、
待ち受け状態のユーザ装置が間欠受信周期毎に起動するタイミングから、該間欠受信状態のユーザ装置を複数のグループのうちの何れかに分類し、ページング信号を通知する通知タイミングをグループ毎に決定し、
第1の単位報知期間において、何れかのグループについての通知タイミングで前記ページング信号を送信し、該ページング信号を受信したユーザ装置が、前記第1の単位報知期間に続く第2の単位報知期間において、前記システム情報を受信すべきことを、該何れかのグループに属するユーザ装置に通知することに加えて、一連の単位報知期間各々における所定のタイミングで前記システム情報を送信するステップ
を有する、基地局において使用される方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−231334(P2012−231334A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98677(P2011−98677)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】