説明

移動通信システム

【課題】移動局1局当りのポーリングに必要な通信時間が少なくて済むようにした移動通信システムを提供することを提供すること。
【解決手段】基地局Bと複数の移動局Mの間のデータ伝送を基地局Bのポーリングにより開始する方式の移動通信システムにおいて、基地局Bのデータ送受制御部114が、通信フレームの通信チャネルに付加すべき空線信号をポーリング時だけ付加しないようにする手段を備え、移動局Mのデータ送受制御部102は、待ち受け受信状態で自局宛てのデータが受信され、通信チャネルの同期ワードが検出されたとき初期化されるカウンタを備え、このカウンタによる計数値が予め設定してある規定数以上になったとき、通信チャネルの終了と判定するようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル無線通信によるデータ伝送方法に係り、特にSCPC単信通信方式のデータ伝送方法に好適な移動通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル無線通信方式の一種にSCPC(Single Channel Per Carrier)と呼ばれる単信通信方式があり、近年、基地局と複数の移動局の間のデータ通信に適用されるようになっているが、このSCPCによるデータ伝送方法では、送信電波に基地局と移動局で夫々異なった周波数のキャリアを使用するようになっており、基地局では周波数(f)のキャリアを送信に用い、移動局では周波数(F)のキャリアを送信に用いるようになっている。
【0003】
ここで、図3は、このSCPCによるデータ伝送方法が適用された通信システムの一例で、これは、例えば特許文献1に記載されているシステムであり、この場合、基地局Bからのポーリング(Polling)に応答して移動局Mが送信を行い、移動局Mのデータ端末101と基地局Bのデータ端末115の間でデータの伝送が得られるようにしたシステムで、ここには図示されていないが、他にもいくつかの移動局があるシステムになっている。
【0004】
ここで、まず、移動局Mは、データ送受制御部102とチャネルコーデック部103、変復調処理部104、データ判定部106、伝送制御カウンタ107、同期処理部108、タイミング生成部109、それにVCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)110を備え、次に、基地局Bは、基地局の変復調処理部112とチヤネルコーデック部113、データ送受制御部114、基地局同期処理部116、基地局タイミング生成部117、OCXO118、受信データ判定部119、それに同期保護タイマ120を備えている。
【0005】
そして、基地局Bと各移動局Mは、基地局の変復調信号入出力端子111に接続されているアンテナと各移動局の変復調信号入出力端子105に接続されているアンテナにより、無線伝送路を介して相互に結合され、これにより相互に通信が可能に構成されている。
次に、この図3のシステムによるデータの伝送動作について説明する。
【0006】
まず、基地局Bは、データ送受制御部114の制御により、第1の周波数の電波(f)を用いて送信動作を行わせ、ポーリングとデータ通信を行う。
一方、複数の移動局Mは、自局が送信する場合を除き、常時、基地局Bの電波を受信し、基地局Bのポーリングが自局宛ての呼び掛けであるか否かをモニタしている状態、いわゆる待ち受け受信状態を保つ。そして、ポーリングが自局宛ての呼び掛けであったとき、それに応じて、第2の周波数のキャリアによる電波(F)により基地局B宛のデータを送信する。
【0007】
このときの詳細な説明は特許文献1に記載があるので、ここでは省くが、このとき各移動局Mは、基地局Bから受信した信号により、基地局Bのフレームタイミング及びシンボルタイミングに同期し、データの受信を行うようになっている。
そこで、このときの各移動局Mでの受信動作について、以下、図4のフローチャート(流れ図)を用い、図5の同期バーストのフレーム構成と図6の通信チャネルのフレーム構成、図7の通信フレーム構成及び図8のポーリング時の通信フレーム構成を参照して説明する。
【0008】
この図4のフローチャートに従った処理は、移動局Mにおいて、データ送受制御部102により実行される。
データ送受動作を開始したら、まず、同期バースト検出処理S201を実行し、受信されたポーリング時の通信フレーム(図8)から同期バーストSB(図7)を抽出し、次いで同期ワード検出判定処理S202を実行し、抽出した同期バーストのフレーム(図5)から同期ワードSWが検出できたか否かを判定する。
そして、同期ワードが検出できた場合は同期バースト同期確立処理S203に進み、検出できなかった場合は通信チャネル検出処理S205に進む。
【0009】
同期バースト同期確立処理S203では、周波数同期とシンボル同期及びフレーム同期の各同期について同期確立処理を行い、この後、同期確立判定処理S204により、同期確立処理の結果を判定する。
このときの同期確立判定処理S204による判定は、同期ワードSWのビット数の照合により行う。
そして、誤りが所定数以下なら同期が確立したものとして通信チャネル検出処理S205に進み、誤りが所定数を越えたら最初の同期バースト検出処理S201に戻る。
【0010】
通信チャネル検出処理S205では、通信チャネルの検出を行うが、このとき同期バーストにより同期が確立していた場合は、同期が確立したときの各同期情報に基づいて通信チャネルを検出する処理を行い、同期が確立していなかった場合は、予め設定してある初期値情報に基づいて通信チャネルを検出する処理を行うが、このとき、同期ワードの検出も行い、この後、同期ワード検出判定処理S206を実行する。
【0011】
このとき、同期バーストと通信チャネルでは、図5と図6に示されているように、同期ワードSWのワード長が異なっている(この例では、同期バーストのワード長は32で通信チャネルではワード長20)。
そこで、同期ワード検出判定処理S206では、同期ワードSWのワード長から何れの同期ワードが検出されたのかを識別し、同期バーストの同期ワードであったときは通信チャネル検出処理S205に戻り、通信チャネルの同期ワードのときは通信チャネル受信処理S207に進む。一方、同期ワードが検出されていなかったときは、最初の同期バースト検出処理S201に戻る。
【0012】
通信チャネル受信処理S207では、図6の通信チャネルのフレーム構成を参照し、データを各チャネルに分離し、上位制御層に通知した後、空線信号受信判定処理S208に進み、受信された通信フレームTCHが図7と図8に示す空線(空線信号)であるか否かを判定する。なお、空線信号とは、単に信号が何もない状態のことである。
そして、空線であった場合はフレームの終了を意味するから、ここで最初の同期バースト検出処理S201に戻り、次の同期バーストの検出処理に入る。
一方、空線では無かった場合は同期外れ検出判定処理S209に進む。
【0013】
同期外れ検出判定処理S209では、このとき受信したフレームの同期ワードを調べ、同期ワードのビット数が予め想定してある規定ビット値以上で、且つそれが予め想定してある規定フレーム数以上に渡って連続した場合、同期外れが検出されたものと見做し、ここでタイマー動作処理S210に進み、同期外れが検出された時点から経過してゆく時間の計測を開始し、他方、同期外れが検出されなかった場合は、通信チャネル受信処理S207に戻り、通信が正しく継続されているものとして、そのまま受信処理を継続する。
【0014】
タイムアウト判定処理S211では、タイマー動作処理S210で計測が開始されている時間、つまり計測時間を予め設定してある規定時間値と比較し、計測時間が規定時間値を越えたらタイムアウトと判定する。
そして、タイムアウトと判定されるまでは通信チャネル受信処理S207に戻り、通信が正しく継続されているものとして受信処理を継続させ、タイムアウトと判定されたら、通信が途切れて同期外れになったものと見做し、ここで最初の同期バースト検出処理S201に戻るのである。
【0015】
この結果、図3により説明した従来技術の通信ステムによれば、移動局Mは、基地局Bのポーリングに対して正しく応答し、この後、移動局のデータ端末101と基地局のデータ端末115の間でSCPC単信通信方式によりデータの送受信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−115790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来技術は、移動局1局当りのポーリングに要する時間について配慮がされておらず、移動局が多くなった場合、ポーリングに必要な通信時間が多くなってしまうという問題がある。
【0018】
SCPC単信通信方式の通信システムの場合、図7に示すように、通信フレームを同期バーストと通信チャネルで構成し、このとき、図示のように、まず、3フレームの同期バーストSBを最初に設け、これに続いてNフレームの音声データなどの伝送に使用する通信チャネルTCHを設けるものとして規格化され、ここで通信チャネルTCHの終りの3フレームには空線信号の挿入が規格化されている。なお、Nは1以上の整数である。
【0019】
ここで通信チャネルTCHの終りに空線信号の挿入が規格化されているのは、空線信号を受信したことにより、移動局Mでデータを受信するのに必要な同期が外れ、これにより次の通信フレームの受信が開始されるようにするためであり、従って、音声データなど、フレーム数Nがデータに応じて変化する場合には、終了点を知らせるのに必要だからである。
【0020】
ここで図8は、ポーリングに使用される通信フレームの一例を示したもので、この場合でも、空線信号の挿入が規格化されているので、データ用の通信チャネルに空線信号のための通信チャネルが3フレーム分設けられている。
ところで、この場合、伝送すべきデータ長は、ポーリングのためだけなので、かなり短くて済み、しかも固定になっているのが通例で、図示の例では、3フレームで固定されている。
【0021】
従って、この場合でも、通信チャネルが少なくとも6フレーム分必要になり、この結果、移動局1局当りのポーリングに必要な通信時間が多くなってしまうという問題が生じてしまうのである。
そして、この問題は、移動局が多くなればなるほど深刻になり、ポーリング頻度の低下をもたらし、緊急時での迅速な対応に支障となる。
本発明の目的は、移動局1局当りのポーリングに必要な通信時間が少なくて済むようにした移動通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的は、基地局と複数の移動局を備え、基地局と各移動局の間のデータ伝送を前記基地局のポーリングにより開始する方式の移動通信システムにおいて、前記基地局の制御部が、通信フレームの通信チャネルに付加すべき空線信号をポーリング時だけ付加しないようにする手段を備え、前記各移動局の制御部は、待ち受け受信状態で自局宛てのデータが受信され、通信チャネルの同期ワードが検出されたとき初期化される計数手段を備え、前記計数手段による計数値が予め設定してある規定数以上になったとき、前記通信チャネルの終了と判定するようにして達成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、移動局1局当りのポーリングに必要なデータ長が短縮できるので、移動局の全てに対するポーリング時間が少なくて済み、この結果、ポーリング頻度を上げることができ、緊急時での迅速な対応に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る移動通信システムの一実施の形態による動作を説明するための流れ図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるポーリング時の通信フレームを示す説明図である。
【図3】本発明に係る移動通信システムの適用対象の一例である移動通信システムのブロック構成図である。
【図4】従来技術による移動通信システムの一例による動作を説明するための流れ図である。
【図5】同期バーストのフレーム形式を示す説明図である。
【図6】通信チャネルのフレーム形式を示す説明図である。
【図7】通信フレームの一例を示す説明図である。
【図8】ポーリング時における通信フレームの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る移動通信システムについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。
まず、本発明に係る移動通信システムの一実施の形態が適用対象とする移動通信システムも、そのブロック構成は、図3に示した従来技術の場合のシステムと同じで、異なっているのは、移動局Mのデータ送受制御部102と基地局Bのデータ送受制御部114による制御の内容にあり、その他、各々のブロックの構成と動作については、従来技術の場合のシステムと同じである。
【0026】
最初、基地局Bについて説明する。
まず、この実施形態においても、データ送受制御部114は、周波数(f)のキャリアによりポーリングと通常のデータ通信のための送信動作が得られるように制御する点は、従来技術の場合と同じであるが、しかし、この実施形態では、ポーリングには、図2に示す形式の専用の通信フレームを用いるようになっていて、この点で従来技術とは異なっている。但し、このときも通常のデータ通信には従来技術の場合と同じく、図7の形式の通信フレームを用いるようになっている。
【0027】
ここで、この図2は、ポーリングに必要なデータが通信チャネルTCHの3フレーム分で済んでいる場合の一例で、この場合、まず、3フレームの同期バーストSBが規格に従って設けてあり、この後に3フレームの通信チャネルTCHが続くが、しかし、それだけで、空線信号からなる通信チャネルTCHは付加されていない。
従って、この場合、ポーリング時に送信されるデータは、6フレーム長で済んでいることになる。
【0028】
次に、移動局Mについて説明する。
上記した基地局Bでのポーリングの違いを受け、移動局M(複数)では、まず、データ送受制御部102にカウンタ(計数手段)が設けてある。
そして、これを前提として、データ送受制御部102は、各移動局Mでの受信動作を、図1のフローチャートに従って実行させるようになっている。
ここで、まず、この図1のフローチャートを図4のフローチャートと比較してみると、両者は、最初の同期バースト検出処理S201から同期ワード検出判定処理S206までは同じである。
【0029】
従って、待ち受け状態にある移動局Mで受信された信号に同期が確立し、同期ワードが検出されるまでの動作も、この実施形態の場合も従来技術の場合と同じである。
そこで、同期ワードが検出されるまでの動作については、前述の従来技術についての説明に譲り、以下では、同期ワード検出判定処理S206以降の動作について説明する。
【0030】
ここで、再び図1と図4を比較してみると、同期ワード検出判定処理S206以降の部分で異なっているのは、本発明の実施形態では、従来技術における空線信号受信判定処理S208と同期外れ検出判定処理S209及びタイマー動作処理S210それにタイムアウト判定処理S211が除かれ、代りに通信チャネルカウンタ初期化処理S101とカウンタ規定数判定処理S102、それにカウンタインクリメント処理S103が設けられている点にある。
【0031】
そして、まず、通信チャネルカウンタ初期化処理S101は通信チャネル受信処理S207の前に位置し、上記したカウンタを初期化、つまりカウント値をリセットして0にする。
次に、カウンタ規定数判定処理S102は通信チャネル受信処理S207の後に位置し、ここで上記したカウンタのカウント値が予め設定してある規定値に達しているか否かを判定し、カウント値が規定値以上なら、ここで通信チャネルは終了したものとして最初の同期バースト検出処理S201に戻る。
【0032】
一方、カウント値が規定値未満なら、まだ通信チャネルがあるものと判断し、カウンタインクリメント処理S103を実行してから通信チャネル受信処理S207に戻り、次の通信チャネルを受信する。
このときカウンタインクリメント処理S103では、カウンタのカウント値をインクリメントし、元のカウント値に1が加算される。
【0033】
そこで、このときカウンタ規定数判定処理S102に設定してある規定数を3にしておけば、図2の形式の通信フレームがポーリング時に受信された場合、そこには通信チャネルTCHが3チャネル分しかないので、カウンタのカウント値が3になったら通信チャネルTCHが終わった証左であり、従って、この実施形態によれば、空線信号がなくても確実に通信チャネルの終了が検出できることになる。
【0034】
ここで、図2を見れば明らかなように、このときの通信フレームは、3チャネルの同期ワードSBと同じく3チャネルの通信チャネルTCHからなる合計6チャネル分のデータ長しかなく、従って、伝送に要する時間は、例えば図8に示した従来技術の場合に比してかなり少なくて済むことが判る。
【0035】
従って、この実施形態によれば、移動局1局当りのポーリングに必要なデータ長が短縮され、この結果、移動局Mの全てに対するポーリング時間が少なく抑えられるので、ポーリング頻度が上げられ、迅速な対応が可能になる。
また、図2の実施形態の場合のフローチャートと図4の従来技術の場合のフローチャートを比較してみれば明らかなように、図2の実施形態の場合の方が移動局Mのデータ送受制御部102による処理ステップ数が少なくて済んでいて、その分、処理時間が短縮され、従って、この点でも、移動局の全てに対するポーリング時間が少なく抑えられることになる。
【符号の説明】
【0036】
B 基地局
M 移動局
101 データ端末(移動局のデータ端末)
102 移動局データ送受制御部
103 車動局チャネルコーデック部
104 移動局変復調処理部
105 移動局変復調信号人出力端子
106 データ判定部
107 伝送制御カウンタ
108 移動局同期処理部
109 移動局タイミング生成部
110 VCTCXO(電圧制御温度補償水晶発振器)
111 基地局変復調信号入出力端子
112 基地局変復調処理部
113 基地局チャネルコーデック部
114 基地局データ送受制御部
115 データ端末(基地局のデータ端末)
116 基地局同期処理部
117 基地局タイミング生成部
118 OCXO(恒温槽付水晶発振器)
119 受信データ判定部
120 同期保護タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と複数の移動局を備え、基地局と各移動局の間のデータ伝送を前記基地局のポーリングにより開始する方式の移動通信システムにおいて、
前記基地局の制御部が、通信フレームの通信チャネルに付加すべき空線信号をポーリング時だけ付加しないようにする手段を備え、
前記各移動局の制御部は、待ち受け受信状態で自局宛てのデータが受信され、通信チャネルの同期ワードが検出されたとき初期化される計数手段を備え、
前記計数手段による計数値が予め設定してある規定数以上になったとき、前記通信チャネルの終了と判定することを特徴とする移動通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−77999(P2011−77999A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229604(P2009−229604)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】