説明

移動通信方法及び移動局

【課題】CA通信における干渉を低減する。
【解決手段】本発明に係る移動通信方法は、移動局UEが、DL CC#2におけるPDCCHを介して、移動局UEに対してUL CC#1における上りリンクデータ信号の送信を許可する「UL grant」を受信する工程Aと、UL CC#1の送信電力が、非アクティブ状態のDL CC#1から推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、移動局UEが、「UL grant」を廃棄する工程Bとを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信方法及び移動局に関する。
【背景技術】
【0002】
LTE-Advanced方式では、移動局UEが、無線基地局eNBとの間で、搬送周波数の異なる複数のDL CC(Downlink Component Carrier)及び複数のUL CC(Uplink Component Carrier)を用いてCA(Carrier Aggrigation)通信を行うことができるように構成されている。
【0003】
図7に示すように、LTE-Advanced方式では、CA通信で用いられているCCの各々について、アクティブ(Active)状態或いは非アクティブ(Deactive)状態に設定することができる。
【0004】
また、LTE-Advanced方式では、移動局UEは、所定のDL CCから推定されるパスロス(Pathloss)に基づいて、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel、上りリンク共有チャネル)における送信電力や、PUCCH(Physical Uplink Control Channel、上りリンク制御チャネル)における送信電力や、SRS(Sounding Reference Signal)の送信電力や、PRACH(Physical Random Access Channel、物理ランダムアクセスチャネル)における送信電力等を制御するように構成されている。
【0005】
ここで、移動局UEは、所定のDL CCにおいて、無線基地局eNBにおける下りリンク共通パイロット信号(cell-specific reference signal)の送信電力(Resource Element単位)と、移動局UEにおける下りリンク共通パイロット信号の受信電力(Resource Element単位)との差によって、パスロスを算出するように構成されている。
【0006】
なお、無線基地局eNBにおける下りリンク共通パイロット信号の送信電力は、無線基地局eNBによって報知されている。
【0007】
また、各UL CCでの送信電力を制御するために用いるパスロスを、どのDL CCから算出すべきかについては、無線基地局eNBから移動局UEに対して通知することが検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP TS36.133
【非特許文献2】3GPP TS36.321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、出願人は、上述のLTE-Advanced方式において、以下のような問題点を発見した。
【0010】
LTE-Advanced方式では、移動局UEは、非アクティブ状態のDL CCのモニタリングについては頻繁に行わないため、かかるDL CCにおけるパスロスの推定精度を担保することができない。
【0011】
したがって、かかるパスロスに基づくUL CCの送信電力制御の精度についても担保することができず、かかるUL CCにおける上りリンク信号の送信は、余分な干渉要因となる可能性があるという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、CA通信における干渉を低減することができる移動通信方法及び移動局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の特徴は、移動局が、無線基地局との間で、搬送波周波数が異なる複数の下りリンクキャリア及び複数の上りリンクキャリアを用いた通信を行う移動通信方法であって、前記移動局が、第1下りリンクキャリアにおける物理下りリンク制御チャネルを介して、該移動局に対して所定上りリンクキャリアにおける上りリンクデータ信号の送信を許可するスケジューリング信号を受信する工程Aと、前記所定上りリンクキャリアの送信電力が、非アクティブ状態の第2下りリンクキャリアから推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、該移動局が、前記スケジューリング信号を廃棄する工程Bとを有することを要旨とする。
【0014】
本発明の第2の特徴は、無線基地局との間で、搬送波周波数が異なる複数の下りリンクキャリア及び複数の上りリンクキャリアを用いた通信を行うことができるように構成されている移動局であって、第1下りリンクキャリアにおける物理下りリンク制御チャネルを介して、前記移動局に対して所定上りリンクキャリアにおける上りリンクデータ信号の送信を許可するスケジューリング信号を受信するように構成されている受信部を具備し、前記所定上りリンクキャリアの送信電力が、非アクティブ状態の第2下りリンクキャリアから推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、前記受信部は、前記スケジューリング信号を廃棄するように構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、CA通信における干渉を低減することができる移動通信方法及び移動局を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る移動局の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおける下りCCと上りCCとのマッピングについて説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムで行われているCA通信について説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムで行われているCA通信について説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る移動局の動作を示すフローチャートである。
【図7】従来の移動通信システムについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システム)
図1乃至図6を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。
【0018】
本実施形態に係る移動通信システムは、LTE-Advanced方式の移動通信システムであって、本実施形態に係る移動通信システムにおいて、移動局UEは、無線基地局eNBとの間で、搬送周波数の異なる複数のCCを用いてCA通信を行うことができるように構成されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る移動通信システムでは、移動局UEは、PUSCH(Physical Uplink Shared Channel、上りリンク共有チャネル)を介して、上りリンクデータ信号を送信し、PUCCH(Physical Uplink Control Channel、上りリンク制御チャネル)を介して、上りリンク制御信号を送信するように構成されている。
【0020】
また、本実施形態に係る移動通信システムでは、無線基地局eNBは、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel、下りリンク共有チャネル)を介して、下りリンクデータ信号を送信し、PDCCH(Physical Downlink Control Channel、下りリンク制御チャネル)を介して、下りリンク制御信号を送信するように構成されている。
【0021】
また、本実施形態に係る移動通信システムでは、移動局UEは、UL CC#1とUL CC#2とDL CC#1とDL CC#2とを用いて、CA通信を行っているものとする。
【0022】
図2に示すように、移動局UEは、受信部11と、送信部12と、CA制御部13とを具備している。
【0023】
受信部11は、PDSCH及びPDCCHを介して、無線基地局eNBから下りリンク信号を受信するように構成されている。
【0024】
送信部12は、PUSCH及びPUCCHを介して、無線基地局eNBに対して、上りリンク信号を送信するように構成されている。
【0025】
CA制御部13は、移動局UEによるCA通信に係る制御を行うように構成されている。
【0026】
例えば、移動局UEが、CA通信を行っている場合、CA制御部12は、RRCレイヤにおいて、無線基地局eNBからの指示(具体的には、RRCメッセージ)に応じて、新規にCCを追加したり、既存のCCを削除したり、PCC(Primary Component Carrier)を変更したりすることができるように構成されている。
【0027】
また、移動局UEが、CA通信を行っている場合、CA制御部13は、MACレイヤにおいて、無線基地局eNBからの指示(具体的には、「MAC Control Element」)に応じて、CA通信で用いられている各CCの状態(アクティブ状態又は非アクティブ状態)を設定するように構成されている。
ここで、受信部11が、無線基地局eNBから、特定のDL CCにおけるPDCCHを介して、移動局UEに対して、特定のUL CCにおける上りリンクデータ信号の送信を許可する「UL grant」を受信した場合、送信部12は、かかる特定のUL CCにおけるPUSCHを介して、上りリンクデータ信号を送信するように構成されている。
【0028】
図3の例では、無線基地局eNBが、SIB(System Information Block)2によって、UL CC#1とDL CC#1とを対応付ける情報(SIB2 Linking)及びUL CC#2とDL CC#2とを対応付ける情報(SIB2 Linking)を通知している。
【0029】
かかる場合、受信部11が、無線基地局eNBから、DL CC#1/#2におけるPDCCHを介して、CIF(Carrier Indicator Field)が付随していない「UL grant」を受信した場合、送信部12は、DL CC#1/#2に対応するUL CC#1/#2におけるPUSCHを介して、上りリンクデータ信号を送信するように構成されている。
【0030】
一方、受信部11が、無線基地局eNBから、DL CC#1/#2におけるPDCCHを介して、CIFが付随している「UL grant」を受信した場合、送信部12は、CIFによって指示されているUL CC#1/#2におけるPUSCHを介して、上りリンクデータ信号を送信するように構成されている。
【0031】
また、図4に示すように、受信部11は、無線基地局eNBから、DL CC#2におけるPDCCHを介して、移動局UEに対して、UL CC#1における上りリンクデータ信号の送信を許可する「UL grant」、すなわち、UL CC#1を指示するCIFが付随している「UL grant」を受信した場合で、かつ、UL CC#1の送信電力が、非アクティブ状態のDL CC#1から推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、かかる「UL grant」を廃棄(すなわち、無視)するように構成されている。
【0032】
さらに、図5に示すように、SIB2 Linkingによって、DL CC#1とUL CC#1とが対応付けられている場合、受信部11は、無線基地局eNBから、DL CC#1にてCIFが付随していない「UL grant」を受信した場合で、かつ、UL CC#1の送信電力が、非アクティブ状態のDL CC#2から推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、かかる「UL grant」を廃棄(すなわち、無視)するように構成されている。
【0033】
なお、上記において、移動局UEがPDCCHを介して「UL grant」を受信するケースとして、無線基地局eNBが実際には当該移動局UEにPDCCH(「UL grant」)を送信していないにも関わらず、移動局UEがそれを誤検出してしまう場合も含まれる。
【0034】
具体的には、PDCCH(「UL grant」)にはPUSCHを介した上りリンクデータ信号の送信を許可する移動局UE固有の識別子(C-RNTI)にてmaskingされた誤り検出ビット列(CRCビット列)が付与され、移動局UEは、受信したPDCCH(「UL grant」)の、自己に割当てられているC-RNTIによってunmaskingした後のCRCビット列による検査結果が「OK」と判定された場合に、PDCCH(「UL grant」)が自分に割当てられていることを検出するが、この際、無線基地局eNBが、実際には移動局UEにPDCCH(「UL grant」)を送信していないにも関わらず、当該移動局UEが、PDCCH(「UL grant」)でのCRCビット列による検査結果を誤って「OK」と判定してしまケースをも含む。
【0035】
以下、図6を参照して、本実施形態に係る移動通信システムにおける移動局UEの動作について説明する。
【0036】
図6に示すように、移動局UEは、ステップS101において、特定のUL CCにおける上りリンクデータ信号の送信を許可する「UL grant」を受信すると、ステップS102において、かかる特定のUL CCの送信電力が、非アクティブ状態のDL CCから推定されるパスロスに基づいて制御されているか否かについて判定する。
【0037】
移動局UEは、非アクティブ状態のDL CCから推定されるパスロスに基づいて制御されていると判定した場合、ステップS103において、かかる「UL grant」を廃棄(又は、無視)する。
【0038】
一方、移動局UEは、アクティブ状態のDL CCから推定されるパスロスに基づいて制御されていると判定した場合、ステップS103において、かかる「UL grant」に基づいて、PUSCHを介して、無線基地局eNBに対して、上りリンクデータ信号を送信する。
【0039】
本実施形態に係る移動通信システムによれば、移動局UEが、非アクティブ状態のDL CCから推定されるパスロスに基づいて送信電力が制御されているUL CCにおける上りリンクデータ信号の送信を停止することができるため、無駄な干渉を回避することができる。
【0040】
以上に述べた本実施形態の特徴は、以下のように表現されていてもよい。
【0041】
本実施形態の第1の特徴は、移動局UEが、無線基地局eNBとの間で、搬送波周波数が異なる複数のDL CC(下りリンクキャリア)及び複数のUL CC(上りリンクキャリア)を用いたCA通信を行う移動通信方法であって、移動局UEが、DL CC#2(第1下りリンクキャリア)におけるPDCCH(物理下りリンク制御チャネル)を介して、移動局UEに対してUL CC#1(所定上りリンクキャリア)における上りリンクデータ信号の送信を許可する「UL grant(スケジューリング信号)」を受信する工程Aと、UL CC#1の送信電力が、非アクティブ状態のDL CC#1(第2下りリンクキャリア)から推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、移動局UEが、「UL grant」を廃棄する工程Bとを有することを要旨とする。
【0042】
本実施形態の第1の特徴において、工程Aにおいて、移動局UEは、「UL grant」と共に、UL CC#1を指示するCIF(キャリア指示子)を受信してもよい。
【0043】
本実施形態の第1の特徴において、無線基地局eNBは、移動局UEに対して、報知情報(SIB2)によって、UL CC#1とDL CC#2とを対応付ける情報を通知する工程を有してもよい。
【0044】
本実施形態の第2の特徴は、無線基地局eNBとの間で、搬送波周波数が異なる複数のDL CC及び複数のUL CCを用いたCA通信を行うことができるように構成されている移動局UEであって、DL CC#2におけるPDCCHを介して、移動局UEに対してUL CC#1における上りリンクデータ信号の送信を許可する「UL grant」を受信するように構成されている受信部11を具備し、UL CC#1の送信電力が、非アクティブ状態のDL CC#1から推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、受信部11は、「UL grant」を廃棄するように構成されていることを要旨とする。
【0045】
なお、上述の移動局UEや無線基地局eNBの動作は、ハードウェアによって実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実施されてもよいし、両者の組み合わせによって実施されてもよい。
【0046】
ソフトウェアモジュールは、RAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリや、ROM(Read Only Memory)や、EPROM(Erasable Programmable ROM)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)や、レジスタや、ハードディスクや、リムーバブルディスクや、CD-ROMといった任意形式の記憶媒体内に設けられていてもよい。
【0047】
かかる記憶媒体は、プロセッサが当該記憶媒体に情報を読み書きできるように、当該プロセッサに接続されている。また、かかる記憶媒体は、プロセッサに集積されていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ASIC内に設けられていてもよい。かかるASICは、移動局UEや無線基地局eNB内に設けられていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ディスクリートコンポーネントとして移動局UEや無線基地局eNB内に設けられていてもよい。
【0048】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0049】
eNB…無線基地局
UE…移動局
11…受信部
12…送信部
13…CA制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局が、無線基地局との間で、搬送波周波数が異なる複数の下りリンクキャリア及び複数の上りリンクキャリアを用いた通信を行う移動通信方法であって、
前記移動局が、第1下りリンクキャリアにおける物理下りリンク制御チャネルを介して、該移動局に対して所定上りリンクキャリアにおける上りリンクデータ信号の送信を許可するスケジューリング信号を受信する工程Aと、
前記所定上りリンクキャリアの送信電力が、非アクティブ状態の第2下りリンクキャリアから推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、前記移動局が、前記スケジューリング信号を廃棄する工程Bとを有することを特徴とする移動通信方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記移動局は、前記スケジューリング信号と共に、前記所定上りリンクキャリアを指示するキャリア指示子を受信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項3】
前記無線基地局は、前記移動局に対して、報知情報によって、前記所定上りリンクキャリアと前記第1下りリンクキャリアとを対応付ける情報を通知する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項4】
無線基地局との間で、搬送波周波数が異なる複数の下りリンクキャリア及び複数の上りリンクキャリアを用いた通信を行うことができるように構成されている移動局であって、
第1下りリンクキャリアにおける物理下りリンク制御チャネルを介して、前記移動局に対して所定上りリンクキャリアにおける上りリンクデータ信号の送信を許可するスケジューリング信号を受信するように構成されている受信部を具備し、
前記所定上りリンクキャリアの送信電力が、非アクティブ状態の第2下りリンクキャリアから推定されるパスロスに基づいて制御されている場合、前記受信部は、前記スケジューリング信号を廃棄するように構成されていることを特徴とする移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−239474(P2011−239474A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178969(P2011−178969)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【分割の表示】特願2010−106008(P2010−106008)の分割
【原出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】