説明

移植機

【課題】伝動された動力を後輪への動力と整地作業機への動力とに分岐する移植機において、部品点数を少なくして構造を簡略化し、製造コストを低く抑えることが可能な移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、エンジンからの動力を変速伝動する変速伝動機構31と、変速伝動機構31からの動力をリヤアクスルケース42内に伝動する伝動軸41と、リヤアクスルケース42内で左右の後輪2にそれぞれ動力を伝動する後輪伝動機構57とを備え、前記伝動軸41の動力を、走行機体3の後部に連結されて植付作業機6前方で整地作業を行う整地作業機7への動力と、前記後輪伝動機構57への動力とに分岐する動力分岐機構52を設けた移植機において、リヤアクスルケース42内に前記動力分岐機構52を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動された動力を後輪への動力と整地作業機への動力とに分岐する移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンからの動力を変速伝動する変速伝動機構と、変速伝動機構からの動力をリヤアクスルケース内に伝動する伝動軸と、リヤアクスルケース内で左右の後輪にそれぞれ動力を伝動する後輪伝動機構とを備え、前記伝動軸の動力を、走行機体の後部に連結された植付作業機の前方で整地作業を行う整地作業機への動力と、前記後輪伝動機構への動力とに分岐する動力分岐機構を設けた特許文献1に示す移植機が公知になっている。
【特許文献1】特開2004−113185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記文献の移植機は、動力分岐機構を設置するためにリヤアクスルケースとは別に動力分岐ケースが設けられており、部品点数が増加して、構成を簡略することが困難になるとともに製造コストを低く抑えることが難しいという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、伝動された動力を後輪への動力と整地作業機への動力とに分岐する移植機において、部品点数を少なくして構造を簡略化し、製造コストを低く抑えることが可能な移植機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明の移植機は、第1に、エンジンからの動力を変速伝動する変速伝動機構31と、変速伝動機構31からの動力をリヤアクスルケース42内に伝動する伝動軸41と、リヤアクスルケース42内で左右の後輪2にそれぞれ動力を伝動する後輪伝動機構57とを備え、前記伝動軸41の動力を、走行機体3の後部に連結されて植付作業機6前方で整地作業を行う整地作業機7への動力と、前記後輪伝動機構57への動力とに分岐する動力分岐機構52を設けた移植機において、リヤアクスルケース42内に前記動力分岐機構52を設けたことを特徴としている。
【0005】
第2に、リヤアクスルケース42を走行機体3のフレーム部83にローリング可能に支持し、リヤアクスルケース42内の動力を整地作業機7側に出力する出力軸とリヤアクスルケース42のローリング支点Sとが同一心軸上に位置するように該出力軸を配置したことを特徴としている。
【0006】
第3に、前記伝動軸41と一体回転する上流側ハイポイドギヤ81と、後輪伝動機構57の少なくとも一部を構成して左右の後輪2に動力を分配する走行軸53と一体回転するとともに前記上流側ハイポイドギヤ81と常時噛合う下流側パイポイドギヤ82とにより前記動力分岐機構52を構成し、伝動軸41と走行軸53とを上下にずらして配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の移植機によれば、伝動された動力を後輪への動力と整地作業機への動力とに分岐する動力分岐機構をリヤアクスルケース内に設けており、動力分岐機構を設置するためにリヤアクスルケースとは別に動力分岐ケース等を設置する必要が無いため、部品点数を減らして製造コストを低く抑えることが可能になるという効果がある。
【0008】
また、リヤアクスルケースを走行機体のフレーム部にローリング可能に支持し、リヤアクスルケース内の動力を整地作業機側に出力する出力軸とリヤアクスルケースのローリング支点とが同心軸上に位置するように該出力軸を配置することにより、リヤアクスルケースがローリングしても出力軸の姿勢が略一定に保たれるため、出力軸の揺動スペースを設ける必要が無いとともに出力軸から整地作業機への動力伝動を安定して行うことが可能になるという効果がある。
【0009】
さらに、前記伝動軸と一体回転する上流側ハイポイドギヤと、後輪伝動機構の少なくとも一部を構成して左右の後輪に動力を分配する走行軸と一体回転するとともに前記上流側ハイポイドギヤと常時噛合う下流側パイポイドギヤとにより前記動力分岐機構を構成し、伝動軸と走行軸とを上下にずらして配置することにより、伝動軸を走行軸と平面視交差するようにリヤアクスルケース外に延設することが可能になる。このことにより、伝動軸を整地作業機に動力を出力する出力軸と兼用することもできるため、部品点数を減らして製造コストを低く抑えることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図であり、図2は、本乗用田植機の動力伝動構造及び整地作業機の構成を示す要部平面図である。本乗用田植機は、左右一対の前輪1及び後輪2を有する走行機体3と、走行機体3の後部に昇降リンク(リンク機構)4を介して昇降駆動可能に連結された植付作業機(作業機)6と、植付作業機6の前方で圃場の整地作業(対地作業)を行う整地作業機(対地作業機)7と、走行機体3の側方に配設され後方に下降傾斜して走行機体3前方の予備苗を植付作業機6側に後方搬送する前後方向の予備苗載せ台8とを備えている。
【0011】
上記植付作業機6は、後面側に形成された苗載せ台9と、苗載せ台9下方に配置された植付部11と、苗載せ台9下方に配置されて圃場に接地させる前後方向のフロート12とを備えている。植付部11は苗載せ台9上の苗を掻き取って圃場に植付けるように構成されており、フロート12は左右方向に複数並列配置されている。
【0012】
上記整地作業機7は、左右方向に延びる円柱状の整地ロータ13を左右方向に複数並列配置することにより構成され、各整地ロータ13が軸装される左右方向のロータ軸14によって前後回転駆動させる。このロータ軸14は植付作業機6に吊下げ支持されており、ロータ軸14の左右方向中央部にはギヤケース16が設置され、このギヤケース16に入力された動力によってロータ軸14が駆動される。
【0013】
整地作業機7の支持構造について具体的に説明すると、植付作業機6の枠体を構成する左右方向に延びる角柱部材からなる横フレーム17の左部及び右部から上方に向かって上下方向の縦フレーム18がそれぞれ突出形成されており、この左右の縦フレーム18間に左右方向の支持軸19(図3参照)が軸回りに上下回動自在に支持されている。
【0014】
この支持軸19の左右の各端部には支持軸19と一体で上下揺動(上下回動)する前後方向の支持アーム21が突設されており、この左右の各支持アーム21にはリンク22を介して前後方向の支持ロッド23が支持されている。この左右の支持ロッド23の下端部にベアリング24を介して前述したロータ軸14が前後回転自在に支持されている。そして、支持アーム21を上下揺動することにより、整地作業機(ロータ軸)14を植付作業機6に対して昇降作動させて、圃場から離間又は圃場に接地させることが可能になる。
【0015】
走行機体3のボンネット26内に収容固定されたエンジン(図示しない)の動力は、HST(油圧式無段階変速機)27で無段階変速され、変速入力軸28によって、ミッションケース29内の走行変速伝動機構(変速伝動機構)31に入力される。走行変速伝動機構31で変速された動力は、ミッションケース29に基端部が固設され機体外側に向かって延設された左右のフロントアクスルケース32内の前輪伝動機構33に伝動される他、ミッションケース29から後方に突出する前後方向の変速出力軸34に伝動される。
【0016】
左右の前輪伝動機構33に伝動された動力は、フロンアクスルケース32先端部から機体外側方に向かって延びて前後回動可能に支持された左右方向の前輪駆動軸(ドライブシャフト)36にそれぞれ伝動され、左右の前輪1を駆動させる。
【0017】
変速出力軸34は前半部がミッションケース29に軸回りに回転可能に支持されて後端部が前後方向の中間軸37の前端部とスリーブ継手(カップリング)38を介して連結固定されている。この中間軸37の後端部には、スリーブ継手(カップリング)39を介して前後方向のリヤアクスルケース伝動軸(伝動軸)41が連結固定されている。すなわち、変速出力軸34、中間軸37及びリヤアクスルケース伝動軸41は、同一軸心上に配置され、軸回りに一体回転するように構成されている。
【0018】
上記リヤアクスルケース伝動軸41は、左右方向に延びるリヤアクスルケース42の左右方向中央部(中央部)に挿通支持されており、前端部及び後端部がリヤアクスルケース42から前後突出している。具体的には、左右方向のリヤアクスルケース42本体の中央部から前後に一体的に突出する前後一対の筒状部43,44の突出端がそれぞれ開放されており、この開放箇所からリヤアクスルケース42内にリヤアクスルケース伝動軸41を挿通させ、このリヤアクスルケース伝動軸41をリヤアクスルケース42の前後の各筒状部43,44内に設置されたベアリング46,47によって軸回りに回転自在に支持している。
【0019】
リヤアクスルケース42内には、リヤアクスルケース42内の左部、中央部及び右部に設置された3つのベアリング48,49,51によって軸回りに前後回転自在に支持され且つ動力分岐機構52を介してリヤアクスルケース伝動軸41の動力が伝動される左右方向の走行軸(分配軸)53が設けられている。この走行軸53は、リヤアクスルケース伝動軸41に対して上下位置がずらされた状態(オフセットされた状態)で、平面視リヤアクスルケース伝動軸41に直交(交差)するようにリヤアクスルケース42内に支持されており、一対の各後輪2に向かって動力を左右に分配するように構成されている。
【0020】
リヤアクスルケース42内における走行軸53の左右両側にはサイドクラッチ54がそれぞれ設けられている。この左右のサイドクラッチ54を入切させることにより、走行軸53の動力を、左右の後輪2をそれぞれ駆動する左右一対の後輪駆動軸(ドライブシャフト)56にそれぞれ断続伝動させる。
【0021】
上記走行軸53、左右のサイドクラッチ54,54及び左右の後輪駆動軸56,56等により、リヤアクスルケース42内で後輪2に動力を伝動する後輪伝動機構57を構成している。くわえて、各サイドクラッチ54から対応する各後輪駆動軸56への動力伝動経路には、サイドブレーキ58が設置されており、この左右一対のサイドブレーキ58によって左右の対応する後輪2をそれぞれ制動させることができる。
【0022】
上記リヤアクスルケース伝動軸41の後端部には、ユニバーサルジョイント61によって、整地作業機伝動軸(対地作業機伝動軸)62の前端部が連結されており、この整地作業機伝動軸62の動力が整地作業機7の上記ギヤケース16に伝動される。すなわち、リヤアクスルケース伝動軸41が、リヤアクスルケース42内に動力を入力する入力軸として機能するとともにリヤアクスルケース42から整地作業機7側に動力を出力する出力軸としても機能する他、前述した動力分岐機構52は、リヤアクスルケース伝動軸41によってリヤアクスルケース42内に入力された動力を、整地作業機7への動力と、後輪伝動機構57への動力とに分岐するように構成されている。
【0023】
具体的には、上記整地作業機伝動軸62の後端部にユニバーサルジョイント63によって前後方向のクラッチケース伝動軸64の前端部が連結されており、このクラッチケース伝動軸64は、前述したギヤケース16から一体的に前方延設されたクラッチケース66に軸回りに回転自在に支持されている。クラッチケース伝動軸64の同一軸心上には、クラッチケース66内からギヤケース16内に至る範囲に延びるクラッチ軸67が軸回りに回転自在に支持されている。
【0024】
クラッチ軸67の外周には該クラッチ軸67と一体回転するスライド筒68がクラッチ軸67の軸方向にスライド自在に支持されている。スライド筒68をクラッチケース伝動軸64側にスライド移動させることにより、クラッチ筒68とクラッチケース伝動軸64側との間に形成された図示しない整地作業クラッチ(対地作業クラッチ,クラッチ)が入作動され、スライド筒68及びクラッチ軸67がクラッチケース伝動軸64と一体回転する。一方、スライド筒68をクラッチケース伝動軸64から離間する側にスライド移動させることにより、上記整地作業クラッチが切作動され、クラッチ伝動軸64からクラッチ軸67への動力伝動が遮断される。
【0025】
クラッチ軸67の動力は、クラッチ軸67の後端部に設置されてクラッチ軸67と一体回転するベベルギヤ69と、ロータ軸14のギヤケース16内箇所に取付けられてロータ軸14と一体回転するとともに上記ベベルギヤ69と常時噛合うベベルギヤ71とにより、ロータ軸14に伝動され、整地作業機7を駆動させる。すなわち、整地作業クラッチは、リヤアクスルケース42内から出力された動力をロータ軸14に断続伝動するように構成されている。
【0026】
なお、クラッチケース外周の側部(図示する例では左側部)には上下揺動可能にシフトアーム(クラッチアーム)72が支持されている。このシフトアーム72を上方位置に揺動させることにより整地作業クラッチを切作動させる側にスライド筒68が移動する一方で、下方位置に揺動させることにより整地作業クラッチを入作動させる側にスライド筒68が移動する。スライド筒68は弾性部材等により整地作業クラッチを入作動させる側に常時付勢されているため、シフトアーム72は下方位置に揺動された状態で保持される。
【0027】
図3は、整地作業クラッチの入切構造及びリヤアクスルケースから後輪及び整地作業機への動力伝動構造を示す要部側面図である。上記シフトアーム72はワイヤ(連係機構)73を介して支持軸19に機械的に連結され、整地作業クラッチは整地作業機7の昇降に連動して入切されるように構成されている。
【0028】
具体的には、ワイヤ73がアウタケーブル74と、アウタケーブル74内を軸方向に移動可能で両端部がアウタケーブル74から突出して露出するインナケーブル76とから構成されている。アウタケーブル74の一端はクラッチケース66に固設された取付ブラケット77に固定され、他端は縦フレーム18に固設された取付ブラケット78に固定されている。インナケーブル76の一端はシフトアーム72の先端部に取付けられ、他端は支持軸19外周面から外方に突設されて支持軸19の上下回動に伴って一体で上下揺動する連結体79に取付けられている。
【0029】
そして、整地作業機7を植付作業機6に対して上昇させるために支持アーム21を上方揺動させると、それに伴って連結体79が上方揺動し、ワイヤ73がシフトアーム72先端部を引上げるようにプル作動してシフトアーム72を上方位置に揺動させ、整地作業クラッチを切作動させる。一方、整地作業機7を植付作業機6に対して下降させるために支持アーム21を下方揺動させると、それに伴って連結体79が下方揺動し、ワイヤ73のシフトアーム72先端部を引上げるプル作動が解除され、シフトアーム72が前述の弾性部材の付勢力により上方位置に揺動されて整地作業クラッチが入作動される。
【0030】
次に、図2及び3に基づき、動力分岐機構の構成について説明する。
動力分岐機構52は、リヤアクスルケース伝動軸41のリヤアクスルケース42内箇所に取付固定されてリヤアクスルケース伝動軸41と一体回転する上流側ハイポイドギヤ(ハイポイドギヤ)81と、リヤアクスルケース42内の走行軸53に取付固定されて走行軸53と一体回転するとともに上流側ハイポイドギヤ81と常時噛合う下流側ハイポイドギヤ(ハイポイドギヤ)82とにより構成される。
【0031】
上記一対のハイポイドギヤ81,82は、平行で無く且つ延長線上でも交わらない一対の伝動軸の一方から他方に動力を伝動することが可能な円錐状のギヤであるため、リヤアクスルケース伝動軸41と走行軸53の上下高さをオフセットして、平面視で互いが交差(直交)する位置にリヤアクスルケース伝動軸41と走行軸53とを配置することが可能になる。
【0032】
ちなみに、一対のベベルギヤ(傘歯車)を用いて、平面視で軸心が交差する一対の伝動軸の一方から他方に動力を伝動するためには、一対の伝動軸が延長線上で交わるように、一対の伝動軸の上下高さを揃えなければならないが、この場合には一対の伝動軸の何れか一方の伝動軸が他方の伝動軸に対して挿通可能なように他方の伝動軸を分割形成する必要がある。
【0033】
例えば、本乗用田植機ではリヤアクスルケース伝動軸41が入力軸と出力軸とを兼ねているが、一対のベベルギヤによりリヤアクスルケース伝動軸41から走行軸53に動力を分岐伝動させる場合、上記入力軸及び出力軸を別体で形成するか、走行軸53を左右分割形成する必要があり、部品点数が増加する。このような不具合を、上記一対のハイポイドギヤ81,82を用いることにより、解消できる。
【0034】
次に、図3及び4に基づきリヤアクスルケースの支持構造について説明する。
図4(A),(B)は、リヤアクスルケースの支持構造を示す要部背面図及び側面図である。走行機体3の枠体を構成する前後方向の角柱状部材である左右一対の前後フレーム(フレーム部)83,83間に、前後フレーム83から下方に延びる支持体84が前後一対で架設固定されており、この前後一対の支持体84,84の間に、リヤアクスルケース42の前述した前後の筒状部43,44外周がベアリング(軸受)85,86を介して、背面視筒状部中心を支点(ローリング支点)Sとして軸回りに左右回動自在にそれぞれ支持されている。
【0035】
すなわち、リヤアクスルケース42は、走行機体3の枠体に対してローリング自在に支持されている。この際、左右の前後フレーム83,83の上面にそれぞれ固設された取付ブラケット87と、リヤアクスルケース42の対応する左右の各箇所との間には、それぞれ上下方向のスプリング(弾性部材)88が介装されており、このスプリング88によってリヤアクスルケース42の左右がそれぞれ略同一の力で下方に弾力的に付勢されている。この左右一対のスプリング88によって、リヤアクスルケース42が略水平な状態で走行機体3の枠体に弾力的に支持され、圃場面からの衝撃が吸収される。
【0036】
なお、リヤアクスルケース42のローリング支点Sと、リヤアクスルケース伝動軸41とが同一軸心上に配置されるように、リヤアクスルケース伝動軸41がリヤアクスルケース42の所定箇所に支持されている。これによって、リヤアクスルケース42が走行機体3の枠体に対してローリングしても、リヤアクスルケース42に対してリヤアクスルケース伝動軸41の姿勢が略一定に保持される。このため、一対のユニバーサルジョイント61,63及び整地作業機伝動軸62に安定した姿勢で動力を伝動できる。
【0037】
次に、図5及び6に基づき、本発明の別実施形態について前述した実施形態と異なる点を説明する。
図5,6は、他の実施形態の構成を示す要部平断面図及び要部側断面図である。リヤアクスルケース伝動軸41は、後端部がリヤアクスルケース42内に位置し、前側の筒状部43内に設置されたベアリング46に片持ち支持されているため、前述の例とは異なり、リヤアクスルケース42から動力を出力する出力軸としては機能していない。
【0038】
リヤアクスルケース42内の動力を整地作業機7側に出力する前後方向の出力軸89は、前端部がリヤアクスルケース42内に位置し且つ後端部がリヤアクスルケース42から後方突出して前述のユニバーサルジョイント61と連結された状態で、後側の筒状部44内に設置されたベアリング47に片持ち支持されている。
【0039】
リヤアクスルケース伝動軸41と、出力軸89と、前述のローリング支点Sとは、同一軸心上に配置されている。くわえて、リヤアクスルケース伝動軸41及び出力軸89の軸心と走行軸53の延長線とが直交(交差)するように、リヤアクスルケース伝動軸41、出力軸89及び走行軸53が支持配置されている。
【0040】
リヤアクスルケース伝動軸41の後端部にはリヤアクスルケース伝動軸41と一体回転するベベルギヤ91が設けられ、走行軸53のリヤアクスルケース42内における上記ベベルギヤ91近傍には走行軸53と一体回転するとともに上記ベベルギヤ91と常時噛合うベベルギヤ92が設けられ、出力軸89の前端部には出力軸89と一体回転するとともに上記ベベルギヤ92と常時噛合うベベルギヤ93が設けられている。すなわち、上記3つのベベルギヤ91,92,93により前述の動力分岐機構52を構成しており、リヤアクスルケース伝動軸41の動力を、後輪2への動力と、整地作業機7への動力とに分岐している。
【0041】
次に、図7に基づき、本発明の別実施形態について前述した実施形態と異なる点を説明する。
図7は、他の実施形態の構成を示す要部平断面図である。前述の実施形態ではクラッチケース66をギヤケース16側に設け、リヤアクスルケース42の構成を簡略化する例につき説明したが、同図に示す例では、筒状部44に替えて、リヤアクスルケース42の後面側に、該後面から後方に一体的に延びるクラッチケース66を設けている。
【0042】
出力軸89は、クラッチケース66内前側のベアリング94に片持ち支持されており、クラッチ軸67側のクラッチ筒68と、出力軸89側との間には、前述の整地作業クラッチが設けられ、出力軸89の動力をクラッチ軸67に断続伝動する。クラッチ軸67の後端部は、クラッチケース66から後方に突出して前述のユニバーサルジョイント61によって整地作業機伝動軸62に連結されている。なお、上記整地作業クラッチは、ワイヤ73を介して支持軸19と連結される前述したシフトアーム72によって入切作動される。
【0043】
整地作業機伝動軸62の後端部には、前述のユニバーサルジョイント63を介して、前後方向のギヤケース伝動軸96が連結されている。ギヤケース伝動軸96の後端部は、ギヤケース16内に位置しており、前述のベベルギヤ69が取付固定されている。このベベルギヤ69は、ギヤケース伝動軸96と一体回転し、クラッチケース66から出力された動力をベベルギヤ71を介してロータ軸14に伝動する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の移植機を適用した乗用田植機の全体側面図である。
【図2】本乗用田植機の動力伝動構造及び整地作業機の構成を示す要部平面図である。
【図3】整地作業クラッチの入切構造及びリヤアクスルケースから後輪及び整地作業機への動力伝動構造を示す要部側面図である。
【図4】(A),(B)は、リヤアクスルケースの支持構造を示す要部背面図及び側面図である。
【図5】他の実施形態の構成を示す要部平断面図である。
【図6】他の実施形態の構成を示す要部側断面図である。
【図7】他の実施形態の構成を示す要部平断面図である。
【符号の説明】
【0045】
2 後輪
3 走行機体
6 植付作業機(作業機)
7 整地作業機(対地作業機)
31 走行変速伝動機構(変速伝動機構)
41 リヤアクスルケース伝動軸(伝動軸,入力軸,出力軸)
42 リヤアクスルケース
52 動力分岐機構
53 走行軸(分配軸)
57 後輪伝動機構
81 上流側ハイポイドギヤ(ハイポイドギヤ)
82 下流側ハイポイドギヤ(ハイポイドギヤ)
83 前後フレーム(フレーム部)
S 支点(ローリング支点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を変速伝動する変速伝動機構(31)と、変速伝動機構(31)からの動力をリヤアクスルケース(42)内に伝動する伝動軸(41)と、リヤアクスルケース(42)内で左右の後輪(2)にそれぞれ動力を伝動する後輪伝動機構(57)とを備え、前記伝動軸(41)の動力を、走行機体(3)の後部に連結されて植付作業機(6)前方で整地作業を行う整地作業機(7)への動力と、前記後輪伝動機構(57)への動力とに分岐する動力分岐機構(52)を設けた移植機において、リヤアクスルケース(42)内に前記動力分岐機構(52)を設けた移植機。
【請求項2】
リヤアクスルケース(42)を走行機体(3)のフレーム部(83)にローリング可能に支持し、リヤアクスルケース(42)内の動力を整地作業機(7)側に出力する出力軸とリヤアクスルケース(42)のローリング支点(S)とが同一心軸上に位置するように該出力軸を配置した請求項1の移植機。
【請求項3】
前記伝動軸(41)と一体回転する上流側ハイポイドギヤ(81)と、後輪伝動機構(57)の少なくとも一部を構成して左右の後輪(2)に動力を分配する走行軸(53)と一体回転するとともに前記上流側ハイポイドギヤ(81)と常時噛合う下流側パイポイドギヤ(82)とにより前記動力分岐機構(52)を構成し、伝動軸(41)と走行軸(53)とを上下にずらして配置した請求項1又は2の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−46028(P2010−46028A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213910(P2008−213910)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】