説明

移植片対宿主病または移植関連死に対する感受性を検出するための方法および試薬

【課題】GvHDの見込みおよび/または重症度、ならびに、移植関連死亡が起こる見込みを決定するための方法を提供する。
【解決方法】患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症および/または重症度を予測する方法において、a)前記患者から樹状細胞(DC)を含むサンプルを入手するステップと、b)DC表面のCD11cと関連するバイオマーカーを測定するステップと、c)CD11c+細胞とCD11c-細胞との割合を決定するステップであって、約1未満の前記割合が、GvHDの発生を示している、ステップと、を含む、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔連邦支援による研究または開発についての説明〕
本発明を成すために、政府資金は全く用いていない。
【0002】
〔発明の背景〕
移植片対宿主病(GVHD)は、移植と関連して起こる。GVHDでは、提供者のT細胞が、受容者の体に対して攻撃を仕掛けることにより、受容者の組織や臓器を拒絶する。他の疾患の大部分は、宿主免疫系の制御不能を伴う。調合薬により最もよく治療される者もいれば、生物製剤による者もおり、他には、体外フォトフェレーシスのような治療法による者もいれば、治療の選択肢がいまだ非常に限定されている者もいる。
【0003】
体外フォトフェレーシス(ECP)は、特定のT細胞介在性疾患において、効果的な治療法であることが示されている。GVHDの場合、局所用トリアムシノロン軟膏、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗生物質、免疫グロブリン、メトトレキサートと関連する治療法として、フォトフェレーシスが用いられている。また、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、プレドニゾン、シクロスポリン、ヒドロキシクロロキン、ステロイド、FK-506、ならびに、cGVHDおよび難治性cGVHDのためのサリドマイドといった免疫抑制剤とともに、ECPが用いられている。固形臓器移植については、腎臓同種移植片および心臓移植と関連する急性同種移植片の拒絶反応の発現数を減らすための免疫抑制剤と組み合わせて、ECPが用いられている。例えば、急性腎臓同種移植片拒絶反応を逆転するために、OKT3および/または免疫抑制剤プレドニゾン、アザチオプリン、シクロスポリンとともに、ECPが用いられている。また、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、または、重度の再生不良性貧血に対する同種骨髄移植については、シクロフォスファミド、分割全身照射、および、エトポシドとともに、ECPが用いられている。
【0004】
〔発明の概要〕
いくつもの実験戦略により、ECPのための薬力学的バイオマーカーが同定されている。pGvHD試験における患者サンプルのフローサイトメトリー分析により、特定の樹状細胞サブセットの相対的な存在度が、GvHDを発症させる傾向や、その過程におけるECPの影響を反映するような傾向をも予測することが示唆されている。
【0005】
フローサイトメトリーデータの、中央実験データとの相関により、DC比率と相関し、フローサイトメトリー研究に対する必要性を除去するような追加的候補バイオマーカーが導き出された。加えて、研究中のDCサブセットと相関するB細胞サブセットが同定された。本発明は、簡単に測定されるマーカーであって、ともに分析する場合に、ECP作用および疾患進行の統計的に強固な測定法を提供するようなマーカーのセットを提供する。
【0006】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、臨床試験と研究計画を示している。
【0007】
図2は、PBMCのサイトメトリー表現型決定を示している。
【0008】
図3は、DCプロファイルが重度のGvHDを予測することを示している。DCサブセットはGvHD悪性度に応じて変化する。(B)に示されたCD11c+/CD11c DCのプロットとともに、DC存在度のヒートマップは、後にGvHDを患った患者における、これらのDCサブタイプの相対的な発現における相違を示す。(C)、(D)は、細胞表面マーカーのロジスティック回帰分析の結果を示す。ここでは、ROCが、悪性度0または1の集団と、重度のGvHD集団との識別のためのマーカーの実用性を反映している。よりよい試験は1により近いROCを有し、最も悪い試験のROCは0.5である。
【0009】
図4は、DCプロファイルがTRMを予測することを示している。
【0010】
図5は、異なるバイオマーカーによるモデル形成、および、本研究で見られた最も良いTRMの予測因子が、CD11c+DCおよびNK細胞を含んでいるモデルであることを示している。
【0011】
図6は、(A)GvHDを予測するモデルを示しており、59個の結果のうち、単球数(ROC=0.66)、および、好中球数(ROC=0.69)のみが、GvHDのためのDCサブセットの予測力と似通っていた。(B)TRMを予測するモデルを示している。実験値と患者の人口統計との組み合わせにより、TRMについて著しい予測力を有するモデルを作り出した。結果は、独立に(左下)、および、組み合わせてモデル化した場合(ROC曲線、右下)が示されている。モデルのためのROC曲線には、アルブミン、BUN/クレアチニン比率、提供者適合性、ならびに、適合性−関連性およびアルブミン相互作用が含まれる。(C)相関した細胞表面マーカーと実験値を示している。細胞表面マーカー値を、細胞プロファイルとサイトメトリー解析における相関した変化を同定するために、ピアソン相関を用いて実験結果と比較した。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
本説明中に引用したすべての文献を、全体的に、本明細書中に組み入れる。用語「被験者」または「患者」は、ほぼ同じ意味に用いられ、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトについて言う。
【0013】
「細胞集団」には概して、血液中に見られる細胞型が含まれる。その用語には、1つ以上の血液細胞型、具体的には赤血球、血小板、白血球が含まれてもよい。細胞集団は、白血球のサブタイプ、例えば、T細胞、樹状細胞、B細胞等を含んでいてもよい。1つの実施態様では、細胞集団は細胞型の混合物または集合を含んでいてもよい。あるいは、細胞集団は、実質的に精製された細胞の型、例えば、T細胞または樹状細胞を含んでいてもよい。
【0014】
「ECP法」または「ECP」は、体外フォトフェレーシスを言い、体外光線療法としても知られている。それは、UVA光と光活性化可能化合物とにさらした細胞の集団の治療法である。好ましくは、細胞の集団は臓器または組織由来であり、より好ましくは、細胞の集団は血液の一部であり、最も好ましくは、細胞の集団はバフィーコートである。DNA架橋剤(例えば、ソラレン[好ましくは、8-MOP])の存在下でのUVA光によるアポトーシス誘導法に、細胞集団をさらす過程を言うために、ECPが時折用いられる。
【0015】
本発明で最も好まれる実施態様では、アポトーシスを誘導するために、ECPを用いる。これには、生体外(ex vivo)で細胞集団に添加される光活性化可能化合物が必要である。場合によっては、被験者、受容者、または、提供者からの採血の結果得られる血液細胞を含む細胞集団に、紫外光照射に先立って、または、それと同時に、光感受性化合物を投与してもよい。また、標的血液細胞または血液成分が光感受性化合物を受容する場合、全血またはその区画を含む細胞集団に、光感受性化合物を投与してもよい。別の実施態様では、被験者の血液の一部、受容者の血液の一部、または、提供者の血液の一部を、まず、実質的に赤血球を除去するための既知の方法を用いて処理することができ、その後、濃縮された白血球区画を含む結果的な細胞集団に、光活性化化合物を投与してもよい。
【0016】
代替的な実施態様では、光活性化可能化合物をin vivoで投与してもよい。被験者の血液、受容者の血液、または、提供者の血液を含む細胞集団に投与する場合、場合によっては、光感受性化合物をin vivoで投与してもよく、経口投与してもよく、静脈内投与してもよく、および/または、他の慣用的な投与経路により投与してもよい。光活性化化合物の経口用量は、約0.3〜約0.7 mg/kgの範囲であってよく、より具体的には、約0.6 mg/kgである。経口投与する場合、光感受性化合物を、フォトフェレーシス処理に先立つ、少なくとも約1時間前に投与してもよく、フォトフェレーシス処理に先立つ、わずか約3時間前に投与してもよい。
【0017】
本発明とともに用いるための光活性化可能な化合物には、ソラレン(または、フロクマリン)として知られる化合物、ならびに、例えば、米国特許第4,321,919号、同第5,399,719号で説明されているようなソラレン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。好まれる化合物には、8−メトキシソラレン、4,5'8−トリメチルソラレン、5−メトキシソラレン、4−メチルソラレン、4,4−ジメチルソラレン、4−5'−ジメチルソラレン、4'−アミノメチル−4,5',8−トリメチルソラレン、4'−ヒドロキシメチル−4,5',8−トリメチルソラレン、4',8−メトキシソラレン、および、4'−(ω−アミノ−2−オキサ)アルキル−4,5'8−トリメチルソラレンが含まれる。4'−(4−アミノ−2−オキサ)ブチル−4,5',8−トリメチルソラレンが含まれるが、これに限定されない。1つの実施態様では、用いられてもよい光感受性化合物は、ソラレン誘導体、アモトサレン(S-59)(Cerus, Corp., Concord, Calif.)を含む。別の実施態様では、光感受性化合物は、8−メトキシソラレン(8-MOP)を含む。
【0018】
光活性化可能化合物を添加した細胞集団を、光活性化可能化合物が活性化される波長の光で処理する。好ましくは、長波紫外光(UVA)、例えば、320〜400 nmの範囲の波長を用いて、光活性化可能化合物を活性化する治療ステップを実行する。フォトフェレーシス処理中の紫外光への暴露を、好ましくは、細胞集団に、約1〜2 J/cm2送達するのに十分な時間投与する。
【0019】
本発明の方法で有用な体外フォトフェレーシス装置には、UVAR(商標)の名称でTherakos, Inc.(Exton, Pa.)により製造された装置が含まれる。このような装置の説明が、米国特許第4,683,889号に見られる。UVAR(商標)システムは、治療システムを用いるものであり、(1)(白血球が濃縮された)バフィーコート区画の収集、(2)収集されたバフィーコート区画の照射、(3)処理した白血球の再注入、の3つの段階から構成される。収集段階は、6サイクルの血液採取、遠心分離、再注入ステップを有する。各サイクルの間、全血を遠心分離し、フェレーシスボールの中に分離する。この分離により、各収集サイクルで、血漿[各サイクルにおける容量を、UVAR(商標)Instrument operatorにより決定する]および40 mLのバフィーコートを、保存する。赤血球および余分な血漿のすべてを、次の収集サイクルが始まる前に患者に再注入する。最終的に、全部で240 mLのバフィーコートと300 mLの血漿を分離し、UVA照射用に保存する。
【0020】
照射サーキット中の白血球濃縮血液の照射を、最初の収集サイクルにおけるバフィーコート収集の間に開始する。収集した血漿およびバフィーコートを、200 mLのヘパリン化生理食塩水および200 mgのUVADEX(商標)(水溶化8−メトキシソラリン)と混合する。この混合物は、PHOTOCEPTOR(商標)光活性化チャンバーを通って1.4 mm厚の層の中を流れるもので、チャンバーは、PHOTOSETTE(商標)UVAランプの2つの溝(banks)の間に挿入されている。PHOTOSETTE(商標)UVAランプは、このUVA透過性PHOTOCEPTOR(商標)チャンバーの両側を照射し、紫外線A光に180分間暴露させて、リンパ球当たり1〜2 J/cm2の平均照射を生ずる。最終的なバフィーコート準備物は、全体の末梢血単核球成分のおよそ20%〜25%を含み、2.5%〜7%のヘマトクリットを有する。光活性化期間の後、30〜45分間かけて、容量を患者に再注入する。米国特許出願公開第09/480,893号(参照により本願に組み入れる)は、ECP投与で使用される別のシステムを説明する。また、米国特許第5,951,509号、同第5,985,914号、同第5,984,887号、同第4,464,166号、同第4,428,744号、同第4,398,906号、同第4,321,919号、国際公開第WO97/36634号、同第WO97/36581号には、この点で有用な機器および方法についての記載が含まれる。
【0021】
米国特許出願公開第09/556,832号には、本発明の方法に有用かもしれない別のシステムが記載されている。そのシステムには、ECP中に、被験者から収集し、または、取り除いた正味液量を減らすことのできる機器が含まれている。米国特許第6,219,584号に記載の方法およびシステムを用いて、細胞集団に送達される光エネルギーの有効量を決定してもよい。
【0022】
細胞集団でアポトーシスを誘導するための様々な他の方法が周知であり、本発明で使用するために、それらの方法を採用してもよい。このような1つの処理には、電離放射線(γ線、X線等)、および/または、非電離性電磁放射線(紫外光を含む)、加熱、冷却、血清涸渇、成長因子涸渇、酸性化、希釈、アルカリ化、イオン強度変化、血清涸渇、照射、もしくは、それらの組み合わせに、細胞集団をさらすことが含まれる。あるいは、細胞集団を超音波にさらすことにより、アポトーシスを誘導してもよい。
【0023】
更に、アポトーシスを誘導する別の方法は、酸化ストレスを体外で細胞集団へ適用することを含む。懸濁液の中で、化学的酸化剤(例えば、過酸化水素、他の過酸化物およびヒドロペルオキシド、オゾン、過マンガン酸塩、過ヨウ素酸塩、ならびに、同様のもの)により、細胞集団を処理することによって、これを達成してもよい。生物学的に許容できる酸化剤を、残基に関連する電位の問題、および、形成されたアポトーシスを誘導した細胞集団の汚染を減少させるために用いてもよい。
【0024】
アポトーシスを誘導した細胞集団を準備する際に、酸化ストレス、放射線、薬剤処理等を過剰なレベルで適用しないように注意しなければならない。さもなければ、処理中に、少なくともいくつかの細胞のネクローシスを引き起こすような、重大な危険性があるからである。ネクローシスは、細胞膜の破裂、細胞内容物の放出を引き起こし、生物学的に有害な結果(特に炎症)をしばしば招くため、ネクローシス細胞とその成分を、アポトーシス細胞を含む細胞集団とともに存在させることは、避けることが最も良い。アポトーシスを誘導するための細胞集団の処理の適切な程度、および、アポトーシスを誘導するために選択される処理の種類を、当業者は容易に決定することができる。
【0025】
本発明の1つの過程には、被験者由来の、または、適合性のある哺乳類細胞株由来の細胞の培養が必要である。それから、アポトーシスを誘導し、細胞集団を形成するために、体外で培養細胞を処理してもよい。体外処理は、抗体、化学療法剤、放射線照射、体外フォトフェレーシス、超音波、タンパク質、酸化剤からなる群から選択されてもよい。それから、被験者の血漿または別の適当な懸濁培地(例えば、生理食塩水、または、調整された哺乳類細胞培養培地)に懸濁された細胞を、患者に投与してもよい。
【0026】
本発明において被験者に投与するための準備物中のアポトーシスの存在およびその濃度を決定するために、アポトーシスを検出し、定量化するための方法が有用である。被験者において求められる臨床的有益性を得るために必要な、細胞集団でのアポトーシス細胞数は、細胞の出所、被験者の状態、被験者の年齢および体重、ならびに、周知の方法により容易に決定することのできる他の関連のある因子に応じて、変動してもよい。好ましくは、患者に投与されるアポトーシス細胞数は、1億〜500億個であり、より好ましくは、10億〜100億個、最も好ましくは、25億〜75億個である。
【0027】
1つの実施態様では、アガロースゲル電気泳動で見られる特徴的なDNAの「はしご化(laddering)」によって、アポトーシスを経験した細胞を同定してもよい。その「はしご化」は、DNAが一連のフラグメントへと分解した結果生ずるものである。別の実施態様では、アポトーシスが誘導された細胞集団を同定、および/または、定量化するために、細胞上のホスファチジルセリンの表面発現を用いてもよい。ミトコンドリア膜電位の変化はミトコンドリア膜透過性の変化を反映するものであるが、これを測定することは、細胞集団の同定方法として認識されている別の方法である。また、アポトーシスを経験した細胞、および、細胞集団の他の多くの同定方法は、多くが細胞集団特異的なマーカーに対するモノクローナル抗体を用いるものであり、それらもまた科学文献に記載されている。
【0028】
急性固形臓器移植拒絶反応は、肺移植後に30%〜60%の患者で起こり、肝臓、腎臓、心臓等は、免疫抑制剤が有効なため、それよりも低い程度で起こる。移植抗原に対するリンパ球(細胞)介在性免疫反応は、急性拒絶反応の主要なメカニズムである。遅延性または慢性拒絶反応は、移植後数ヶ月から数年で移植片崩壊を引き起こすものであり、移植された組織のネクローシスを招く血管崩壊によって特徴付けられる。この拒絶反応は、標準療法では現在のところ大幅には抑制されておらず、より持続的な免疫耐性に対する要求は、明らかに満たされていない。
【0029】
遅発性の移植片悪化が時折生じており、この慢性型の拒絶反応は、免疫抑制治療が高められているにも関わらず、しばしば潜行的に進行する。病理学的実態は、急性拒絶反応のものとは異なっている。段階的に血管腔を閉塞しうる広範囲の増殖に、動脈内皮が主に関係しており、結果的に虚血と移植片の線維症が生ずる。
【0030】
拒絶反応を制御するために、免疫抑制剤が現在広く用いられており、移植の成功の主な要因である。しかしながら、これらの薬剤はあらゆる免疫反応を抑制し、それにより、移植受容者の主な死亡原因である激しい感染症を引き起こす。
【0031】
現存の免疫抑制治療は、移植の型が異なっている場合、異なる可能性がある。肝臓同種移植片は、他の臓器の同種移植片よりも、激しく拒絶されない。例えば、HLA抗原またはABO不適合に対して事前感作された患者において、肝移植の超急性拒絶反応が、常に起こるわけではない。成人の一般的な免疫抑制治療には、シクロスポリンを用いることが必要とされ、通常IVの場合、移植時に4〜6 mg/kg/日で開始し、食事が可能な場合、8〜14 mg/kg/日で経口投与する。腎機能障害が生じた場合、用量を減らすように調整し、適正な用量の概算測定値として、血中濃度を用いる。
【0032】
心臓移植では、免疫抑制療法は、腎臓移植または肝臓移植の場合と同様である。しかしながら、肺移植および心肺移植では、急性拒絶反応が、80%を超える患者で生じるのだが、うまく管理されるかもしれない。患者をコルチコステロイドで、急性IVの場合には、高用量のATGまたはOKT3で治療する。予防的なALGまたはOKT3もまた、最初の移植後2週の間頻繁に与えられる。新生血管形成性臓器移植のうち、すい臓移植は独特なものである。すなわち、生命を救うために用いられるのではなく、I型糖尿病の壊滅的な標的臓器合併症を安定化し、予防するために試みられる。受容者は免疫抑制の危険度とインスリン注射の危険度を引き替えにするため、すい臓移植は主として、既に免疫抑制剤を投与しなければならない患者(すなわち、腎臓移植を受けている、腎臓疾患の糖尿病患者)に、概して限定される。
【0033】
急性脊髄性白血病またはリンパ芽球性白血病の患者には、骨髄移植(BMT)が有効かもしれない。小児性BMTは、遺伝疾患(例えば、サラセミア、鎌状赤血球貧血、免疫不全症、代謝の先天的異常)の子供を治す可能性があるため広まっている。BMTに対する別の選択肢は、自家移植(あらゆる残存腫瘍の破壊、および、患者自身の骨髄の回復の望みがある患者の切除治療がその後に行われて、完全寛解が導かれる場合の、患者自身の骨髄の除去)である。自家移植片を用いるため、腫瘍根絶および骨髄切除のために用いられる短期間高用量の化学療法を除いて、免疫抑制が全く必要ない。また、GVHDによる移植後の問題は最小限である。
【0034】
白血病患者へのHLA同一提供者からの移植では、拒絶率は5%未満である。また、多重に輸血された再生不良性貧血の患者についても、移植導入中に高められた免疫抑制のために、拒絶率は明らかに減少している。それにも関わらず、大部分の骨髄移植による拒絶反応、急性GVHD、感染症を含む合併症が生じる可能性がある。より遅発性の合併症には、慢性GVHD、長期の免疫不全、疾患の再発が含まれる。
【0035】
また、本発明の方法を、インプラント手術においても、例えば、美容形成外科または非美容形成外科で通常実行されるインプラント手術とともに用いることができる。このようなインプラントには、歯、脂肪移植(例えば、頬、唇、臀部への移植)、顔用インプラント(鼻、頬、額、顎、頭蓋骨のインプラントを含む)、臀部インプラント、胸部インプラント等が含まれてもよい。他のインプラントには、角膜輪、皮質、眼窩、蝸牛、筋肉(胸筋、臀筋、腹筋、腓腹筋、ひらめ筋、二頭筋、三頭筋を含むあらゆる筋肉)、異物形成関節(alloplastic joint)および骨置換、脊椎骨毛(vertebral hair)、胎児細胞または幹細胞移植が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
強力な抗原提示細胞(APC)である樹状細胞(DC)の造血発生は明らかであり、単球と密接に関連しているものもあるいくつかの前駆体経路の後に起こるかもしれない。DCはリンパ球前駆体に由来するかもしれない。Thomas et al. (1993) J. Immunol. 150:821-834参照。血液中と同様に、胸腺中に存在する3つの識別可能なDCサブセット、(1)形質細胞様CD4+CD11c-DC、(2)CD4+CD11c+DC、および(3)指状嵌入DCがあるかもしれない。
【0037】
サイトカインとともに前駆細胞をin vitroで培養することを通じて、潜在的な臨床利用のために多量のDCを生成することが、近年達成されている。樹状細胞に抗原を導入するために様々な戦略が採用されており、そのため、共刺激との関連で、より効果的にT細胞へ提示するかもしれない。また、体液性経路または全身性経路のいずれかの後に起こるように、樹状細胞が、抗原に対するT細胞反応に影響を与える可能性があることも示されている。
【0038】
DCは、一次免疫反応の開始、および、耐性の発生に必須なAPCである。DCは、ナイーブT細胞集団の刺激に必要なMHCを発現する。DCの造血発生は明らかであり、いくつかの前駆体経路の後に起こるかもしれないし、そのうちのいくつかは単球と密接に関連している。参考のために、Avigan (1999) Blood Rev. 13:51-64を参照のこと。異なるDCサブセットは、違った発生経路を有している。新しく現れた概念とは、1つのDCサブセットが、自己抗原に対する耐性の誘導に寄与するかもしれない制御性の機能を有するというものである。Austyn (1998) Curr. Opin. Hematol. 5:3-15参照。
【0039】
血液中のDCに対する研究は、その細胞の希少性と、DC特異的細胞表面マーカーの相対的欠如により、進展していなかった。DC単離のための方法は、低い浮遊密度の獲得のような、短い培養期間の後の成熟変化、または、DC活性化/成熟抗原(CD83、CMRF-44、CMRF-56)の発現のいずれかに基づいている。Young et al. (1988) Cell Immunol. 111:167、Van Voorhis et al. (1982) J. Exp, Med. 155:1172参照。
【0040】
血液からのDCの単離は、白血球系統(lin)特異的抗原(例えば、CD3、CD14、CD19、およびCD56)のパネルの不存在、および、HLA-DR、CD4またはCD33の存在のような、大部分の免疫表現型基準にこれまでは頼っていた。Romani et al. (1996) J. Immunol. Met. 196:137-151参照。
【0041】
培養されていない血液から単離されたDCの分析から、血液DCは均質な細胞集団ではなく、少なくとも2つの集団の混合物であるということが明らかになった。Thomas et al. (1994)参照。第1の血液DCサブ集団は、CD123brightCD11c-DCであり、形質細胞様の形態と、強力なT細胞刺激作用とを有する。第2の血液DCサブ集団は、CD123dimCD11cbrightであり、外見上はむしろ単球様で、CD45ROを発現し、たとえ任意の外因性サイトカインなしに培養する場合でさえも、自然発生的に一般的な成熟DCへと発達する。形質細胞様CD123brightCD11c-DCは、リンパ球前駆体から生じるかもしれないことを示唆するpre-T cell receptor α chainの発現といった、いくつかの特徴を示している。Bruno et al. (1997) J. Exp. Med. 185:875-884参照。CD123dimCD11cbrightDCは、脊髄性DCのあらゆる基準を示している。形質細胞様CD123brightCD11c-DCに類似するDCは、リンパ組織のT細胞豊富な領域で検出されており、それらの形態や表現型のために、形質細胞様T細胞または形質細胞様単球として、最初に誤って割り当てられた。Grouard et al. (1997) J. Exp. Med. 185:1101-111参照。
【0042】
このたび我々は、DCサブセット、ならびに、その分析方法が、GVHDに対する感受性、GVHDの進行、および治療法を検出する方法であること、また、ECPのバイオマーカーであることを見出した。
【0043】
GvHDの予防および臨床転帰(ECPの結果、少なくとも部分的に)は、末梢血CD11c+とCD11c-との比率、および、ECPの後のその比率の変化に反映されている。
【0044】
臨床試験での同定により示しているように、このバイオマーカーは、静脈切開術以上の、医師が必要とする高度な知識に拠ることがほとんどなく、確実に測定することができる。それにも関わらず、フローサイトメトリー測定法は、高度な技術であり、ほとんどの適用で好まれるよりも、より多くの技術的な専門知識が必要とされる。pGvHD試験に基づく豊富なデータセットにより、このDCサブセットの存在と相関し、より容易に測定される追加的なバイオマーカーを同定するような、いくつもの機会が生み出されている(以下を参照のこと)。
【0045】
バイオマーカーは、指定されたマーカー遺伝子の発現レベルの任意の兆候である。その兆候は、直接的または間接的でありうるし、生理学的パラメーターが与えられた場合、また、内部標準、正常組織、または、別のがんと比較して、遺伝子の過剰発現または不足発現を測定しうる。バイオマーカーには、核酸(過剰発現、不足発現と、直接、間接ともに)が含まれるが、これに限定されない。核酸をバイオマーカーとして用いることには、本分野で既知の任意の方法が含まれうる。その方法には、DNA増幅、RNA、マイクロRNA、ヘテロ接合性欠乏(LOH)、一塩基多型(SNPs)(Brookes (1999)参照)、マイクロサテライトDNA、DNAハイポメチル化またはDNAハイパーメチル化を測定することが含まれるが、これらに限定されない。タンパク質をバイオマーカーとして用いることには、本分野で既知の任意の方法が含まれる。その方法には、量、活性、修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、ADPリボシル化、ユビキチン化等)、または、免疫組織化学(IHC)を測定することが含まれるが、これらに限定されない。他のバイオマーカーには、イメージング、細胞計数、アポトーシスマーカーが含まれる。
【0046】
マーカー核酸は、その配列を含む場合、配列番号により指定された配列に対応する。遺伝子断片またはフラグメントは、参照配列またはその相補配列の一部を、その遺伝子の配列であると識別できるほど十分に含む場合、このような遺伝子の配列に対応する。遺伝子発現産物は、そのRNA、mRNA、miRNAまたは、cDNAが、このような配列を有する組成物(例えば、プローブ)とハイブリダイズする場合、あるいは、ペプチドまたはタンパク質の場合、このようなmRNAによりコードされる場合、このような配列に対応する。遺伝子発現産物の断片またはフラグメントは、参照遺伝子発現産物またはその相補物を、その遺伝子の配列または遺伝子発現産物であると識別できるほど十分に含む場合、このような遺伝子の配列または遺伝子発現産物に対応する。
【0047】
本明細書で説明し、特許請求の範囲に記載した発明の方法、組成物、物品、キットには、1つ以上のマーカー遺伝子が含まれる。「マーカー」または「マーカー遺伝子」は、本明細書を通じて、GvHDまたはTRMの発症の見込みと関連して、過剰発現または不足発現する任意の遺伝子に対応するような遺伝子および遺伝子発現産物を言うために用いられる。
【0048】
本発明は、本明細書で説明する方法を実行するためのマイクロアレイまたは遺伝子チップを、更に提供する。
【0049】
本発明は、その組み合わせが、生物由来サンプルにおける遺伝子発現を測定し、特徴付けるのに十分であると、本明細書で説明する遺伝子の組み合わせのバイオマーカー(例えば、単離核酸配列、その相補配列、それらの部分配列)を測定するのに適した試薬を含む診断的/予後的ポートフォリオを、更に提供する。
【0050】
本発明で説明する任意の方法は、サンプルにおいて構成的に発現する少なくとも1つの遺伝子の発現を測定することを更に含む。
【0051】
本発明は、本明細書で説明する方法にしたがって、GvHDまたはTRMの見込みを決定し、適切な治療法を同定することにより、治療の方針を提供するための方法を、更に提供する。
【0052】
本発明は、本明細書で説明する方法にしたがって、GvHDまたはTRMの見込みを決定し、対応する予後を同定することにより、予後を提供するための方法を、更に提供する。
【0053】
本発明は、マーカー遺伝子の発現レベルを決定すること、その発現を決定するために、マーカー遺伝子についてのバイオマーカーを測定すること、本明細書で説明する方法にしたがって、マーカー遺伝子の発現を分析すること、およびマーカー遺伝子がGvHDまたはTRMに有効に特異的であるかどうか決定することを含む、バイオマーカーを見出すための方法を、更に提供する。
【0054】
本発明は、本明細書で説明する解析を実施するための、キット、物品、マイクロアレイまたは遺伝子チップ、診断的/予後的ポートフォリオ、および、本願の方法により得られた結果を報告する患者報告を、更に提供する。
【0055】
特定の核酸配列が組織サンプルに単に存在するかしないかということだけでは、診断価値または予後価値を有するかどうかまではわからない。一方、様々なタンパク質、ペプチド、または、mRNAの発現についての情報は、ますます重要なものと見なされている。ゲノム内に、タンパク質、ペプチド、または、mRNAを発現する可能性がある核酸配列(このような配列を「遺伝子」というが)が単に存在するということ、それ自体は、タンパク質、ペプチド、または、mRNAが所与の細胞において発現するかどうか決定するものではない。タンパク質、ペプチド、または、mRNAを発現することができる所与の遺伝子かそうでないかということ、そして、たとえそうであっても、どの程度このような発現が起こるかということは、様々な複合的要因によって決定される。これらの要因を理解し、評価することの難しさにも関わらず、遺伝子発現を解析することは、GvHDまたはTRM、他の臨床上関連のある現象のような、重要な事象の発生についての有用な情報を提供しうる。遺伝子が活性であるか不活性であるかの程度についての相対的な指標は、遺伝子発現プロファイルの中に見出すことができる。
【0056】
遺伝子発現プロファイルを確立するための好まれる方法には、タンパク質またはペプチドをコードしうる遺伝子により産生されるRNA量を決定することが含まれる。これは、逆転写PCR(RT-PCR)、競合RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、ディファレンシャルディスプレイRT-PCR、ノーザンブロット分析、および、他の関連する試験によって達成される。個々のPCR反応を用いて、これらの技術を実施することが可能であるが、mRNAから生成される相補的DNA(cDNA)または相補的RNA(cRNA)を増幅し、マイクロアレイで分析することが最も良い。多くの異なるアレイ配置、および、それらを作る方法が、本分野の当業者に既知であり、例えば、米国特許第5445934号、同第5532128号、同第5556752号、同第5242974号、同第5384261号、同第5405783号、同第5412087号、同第5424186号、同第5429807号、同第5436327号、同第5472672号、同第5527681号、同第5529756号、同第5545531号、同第5554501号、同第5561071号、同第5571639号、同第5593839号、同第5599695号、同第5624711号、同第5658734号、同第5700637号に記載されている。
【0057】
マイクロアレイ法は、何千もの遺伝子の定常状態のmRNAレベルまたはmiRNAレベルを同時に測定することを可能にし、それによって、GvHDの開始、もしくは、調節といった効果を同定するための強力なツールを提示する。2つのマイクロアレイ法、cDNAアレイ、オリゴヌクレオチドアレイ、が現在広く用いられている。これらのチップ構成には違いが存在するが、本質的にすべての下流のデータ分析および出力は、同じものである。これらの分析の産物は、一般的に、サンプル由来のcDNA配列を検出するために用いられる標識プローブから受け取られるシグナルの強度を測定することであり、そのプローブは、マイクロアレイ上の既知の位置で核酸配列にハイブリダイズする。一般的に、シグナルの強度は、サンプル細胞で発現するcDNA、したがって、mRNAまたはmiRNAの量と比例する。多くのこのような技術が利用可能であり有用である。好ましい方法は、米国特許第6271002号、同第6218122号、同第6218114号、同第6004755号、Keene et al. (2006) RIP-Chip: the isolation and identification of mRNAs, microRNAs and protein components of ribonucleoprotein complexes from cell extracts Nature Protocols 1 :302-307に見られる。
【0058】
発現レベルの分析は、このようなシグナル強度を比較することによって実施される。このことは、対照サンプルでの遺伝子の発現強度に対する、試験サンプルでの遺伝子の発現強度についての比例行列(ratio matrix)を生成することによりなされるのが最も良い。例えば、異常組織由来の遺伝子発現強度を、同じ種類の正常組織から生成される発現強度と比較することができる。これらの発現強度の比率は、試験サンプルと対照サンプル間との遺伝子発現が、倍数的に異なることを示している。
【0059】
選択は統計的検定に基づきうる。この統計的検定は、ランク付けしたリストを作り出し、そのランク付けしたリストは、GvHDまたはTRMに関係する因子間で、各遺伝子が特異な発現をすることについての有意性の証拠に関係する。このような検定の例には、ANOVAおよびクラスカル・ウォリスが含まれる。カットオフまでのこのような重みの総計を、他のクラスよりも1つのクラスに有利になるように、証拠の優越として解釈するように設計したモデルにおいて、そのランキングを重み付けとして用いることができる。また、文献に記載されたような従来の証拠を、その重み付けを調整するために用いてもよい。
【0060】
遺伝子発現プロファイルを、多くの方法で表わすことができる。最も一般的な方法は、生の蛍光強度または比例行列を、縦軸が試験サンプルを、横軸が遺伝子を示す図形的な系統樹に配置することである。よく似た発現プロファイルを有する遺伝子が互いに近位にあるように、データを配置する。各遺伝子の発現率は、色により視覚化される。例えば、1より低い発現率(ダウンレギュレーション)は、スペクトルの青の部分に現れ、1より高い発現率(アップレギュレーション)は、スペクトルの赤の部分に現れる。市販のコンピュータソフトウェアプログラムが、このようなデータを表示するために利用でき、それらには“GeneSpring”(Silicon Genetics, Inc.)、“Discovery”および“Infer”(Partek, Inc.)が含まれる。
【0061】
遺伝子発現を決定するためにタンパク質レベルを測定する場合、結果的に適当な特異度と感度とをもたらすならば、本分野で既知の任意の方法が適している。例えば、タンパク質レベルは、タンパク質特異的な抗体または抗体フラグメントを結合させ、抗体結合タンパク質の量を測定することによって測定することができる。検出を容易にするために、放射性物質、蛍光物質、または、他の検出可能な試薬で、抗体を標識することができる。検出方法には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫ブロット法が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
また、本発明の遺伝子発現プロファイルを、診断、予後、または、治療観察で有用な、他の非遺伝的診断法とあわせて用いることもできる。例えば、いくつかの環境では、上記で説明した方法に基づいた遺伝子発現の診断力を、血清タンパク質マーカーのような従来マーカーからのデータと組み合わせることが有用である。このような方法の1つにおいて、血液を治療患者から定期的に採取し、その後、アルブミンのような血清マーカーについて酵素免疫測定を行う。マーカーの濃度が、GvHDまたはTRMの見込みを示唆する場合、遺伝子発現分析に適しているサンプル原料を採用する。このアプローチは他の試験法があいまいな結果を生じる場合に、特に有用でありうる。
【0063】
本発明にしたがって作られるキットには、バイオマーカーの発現を決定するためのフォーマット化された解析が含まれる。これらには、バイオマーカーを解析する試薬、使用説明書、媒体のような、解析を実施するために必要とされる材料のすべて、または、一部が含まれうる。
【0064】
本発明の物品には、疾患を治療し、診断し、予後し、さもなければ、評価するために有用なバイオマーカー発現の説明が含まれる。これらのプロファイルの説明は、コンピュータで読み取り可能な媒体(磁気的、光学的、同様の媒体)のような、機械により自動的に読むことができる媒体へ変換される。物品には、このような媒体で遺伝子発現プロファイルを評価するための使用説明書も含まれうる。例えば、物品は、上記の遺伝子ポートフォリオについての遺伝子発現プロファイルを比較するためのコンピュータの使用説明書を有するCD-ROMを備えてもよい。物品はまた、デジタルに記録した遺伝子発現プロファイルを有してもよく、それらを患者サンプルの遺伝子発現データと比較してもよい。あるいは、プロファイルを異なる表現フォーマットで記録することができる。図形的な記録はこのようなフォーマットの1つである。例えば、上記のPartek, Inc.の“DISCOVERY”および“INFER”ソフトウェアに組み込まれているような、クラスタリングアルゴリズムは、このようなデータの視覚化に、最も良く役立つ可能性がある。
【0065】
本発明にしたがった異なる種類の製造物品は、遺伝子発現プロファイルを明らかにするために用いられる媒体、または、フォーマット化された解析である。これらは、例えば、マイクロアレイを含むことができ、そのマイクロアレイにおいて、相補配列またはプローブは、マトリックスに貼り付けられる。そのマトリックスには、目的の遺伝子を示す配列が結合して、それらの存在の読み取り可能な決定因子を生成する。あるいは、本発明による物品を、GvHDまたはTRMを予測するための目的の遺伝子の発現レベルを示すハイブリダイゼーション、増幅、シグナル形成を実施するための試薬キットへと作り上げることができる。
【0066】
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載した発明を例示するものであるが、限定するものではない。本明細書において引用されたすべての参照文献は、参照により本明細書に組み入れる。
【0067】
〔実施例1〕
≪バイオマーカー候補1:末梢血樹状細胞サブセット[疾患予測バイオマーカー、作用メカニズム(MOA)バイオマーカー、治効のバイオマーカー]≫
GvHD予防試験のサブ研究サンプルのフローサイトメトリー分析は、悪性度2、3、4のGvHDに侵された患者の末梢血におけるCD11c+、CD11c-樹状細胞(単核球の区画として発現した、lin-/HLADR+単核球)間の比率について、無GvHD患者、または、ほんの軽度のGvHD発症患者(“無GvHD”、悪性度0、1)と比較して、統計的に有意な差を示した。結果を表1、表2に示す。図1は試験を概説したものであり、図2はPBMCのサイトメトリー表現型決定を示している。
【0068】
【表1】

【0069】
GvHDおよびTRMを予測するかもしれない末梢血細胞表面マーカーを同定するために、32人のECP処理患者のサブセット由来の血液を試験した。ECPの直前に(基準時)、およびECPの直後であるが骨髄破壊前処置より前に、サンプルを採取し、その後、フローサイトメトリーで解析した。サイトメトリーデータをグループ化し、予測精度を、単独または、臨床実験値と組み合わせて、評価するために、モデル化した。ロジスティック回帰により、骨髄破壊より前に存在する特異的なDCサブセットについてのマーカーが、最も良い転帰予測因子であることが示された。基準lin-HLA-DR+CD11c+脊髄性細胞が、予測精度で、循環Lin-HLA-DR+細胞のより小さな割合を構成する場合に、悪性度II〜IVのGvHD(aGvHD)の見込みが高まり、それは0.83未満の受信者動作曲線(ROC)領域に反映されていた。TRMについての最も予測的なモデルは、基準時における循環lin-HLA-DR+CD123+形質細胞様DCのより低い絶対存在量であった(ROC=0.86)。実験値を含んだ後のaGvHDまたはTRMについては、追加的な予測力は全く生じなかった。しかしながら、特定の臨床実験結果と人口統計因子とを組み合わせたモデルもまた、これらの臨床転帰を予測したし、そのモデルは、複雑なサイトメトリー解析に対して、可能性のある代替物を提供する。最も良いこのようなモデルには、TRMについては、BUN/クレアチニン比率、血清アルブミン、および移植片提供者と受容者の適合性/関連性の基準測定が含まれたが(ROC=0.82、n=59)、aGvHDについては、基準の好中球数が最も予測的であった(ROC=0.69、n=60)。要約すると、宿主DCサブセットを含んだバイオマーカーと、容易に測定される臨床試験と、少なくともECPを受けた患者で、前処置前に存在し、転帰を予測することができる人口統計因子と、を同定した。
【0070】
DC細胞絶対数を考慮すると、所与の末梢血細胞集団に対するCD11c+およびCD11c-DCの相対的な寄与が、その患者におけるGvHDの終局的な発症を予測しうることが明らかになっている。具体的には、所与の患者サンプルにおけるCD11c+のCD11c-DC細胞に対する比率は、ほぼ1[結果として重度(悪性度2〜4)のGvHDを発症しない患者]から0.006と同じくらい低い値(重度のGvHDをより後に発症する患者)まで極端に離れている。
【0071】
データにおけるパターンは、このバイオマーカーの耐久性(ruggedness)を示している。以下に示す絶対数は、毎マイクロリットル単位で小さいものであるが、関連するCD123+/-集団数を考慮する場合、結果は絶対数と比率の点で、再現性があるものである。この比較は、マーカー(−)絶対数における合理的な重複を示し、CD123-およびCD11c-集団間の強い関連性を示している。実際に、Lin-/HLA-DR+/CD11c-およびLin-/HLA-DR+/CD123-集団は、ECP前およびECP後サンプルの両方において高い相関を示し(それぞれ、ピアソン相関係数r=0.95、および0.985)、これらの測定が同一の細胞集団を表しているかもしれないことを示唆している。その上、これらの絶対数は、正常集団およびGvHD集団で以前に報告されたDC数と一致している。我々の研究は、CD11c-およびCD123-集団を試験するという事実において独特であるが、ほとんどの研究は抗原陽性の、より成熟したDC集団を試験するものである。したがって、我々は、臨床転帰と関連した新規のDC集団を同定している。
【0072】
【表2】

【0073】
Cd11c+およびCD11c-DCの比率対GvHD悪性度のプロットは、患者におけるGvHDの比率および終局的な重症度間の相関を明らかにする。図3参照。図4〜6は、TRMを予測するDCプロファイルを示している。
【0074】
他のパターンには、ECP処理後に陽性になるような、この比率についての傾向、および、より低い死亡率(lower mortality)を有する、より1に近いBMT前比率である患者(0〜1群で死亡者2人、対、2〜4群で5人)についての傾向が含まれる。測定の変動性、または、提供者の受容者に対する関連のいずれも、GvHD悪性度と相関しないことを明らかにしているし、そのことは受容者特異的な特性がGvHDに向かう傾向を作用しないことを更に示唆している。
【0075】
DC1/DC2比率、および、未成熟DCの相対的な割合が、疾患進行および多くの関連した症状における治療転帰の予後指標を提案してきた。その関連した症状には、セザリー症候群、GvHDを含んだ固形臓器および骨髄移植、固形腫瘍、アトピー性皮膚炎、炎症性大腸炎、全身性ウイルス感染が含まれる。
【0076】
抗原陰性DC数は、活性化B細胞集団とよく相関している。CD11c-数および見込みのあるCD123-DC数は、CD19+/CD27+およびCD19+/CD40+(それぞれ、r=0.91、および0.8)と相関し、すべてのサブ研究参加者についてのCD19+/CD20+B細胞計数(r=0.64)より低いものである。これらのデータは、循環系におけるCD11c-/CD123-DCの絶対数が、GvHDにおいて関連して考察される、B細胞の活性化度を反映していることを示している。
【0077】
〔実施例2〕
≪バイオマーカー候補2、3:血清GGTおよびLDH(疾患予測、MOA、治療効率のためのバイオマーカー)≫
CD11c+/CD11c-比率を用いて、DCサブセット比率およびGvHD重症度の双方と相関させるために、主要な実験データを試験した。移植前サンプルから、2つの新規な相関、上昇した血清GGTおよびLDHが見つかった。明らかに低下した血小板計数とともに、これらのマーカーの上昇は、基準およびECP後の両方のサンプルにおける悪性度0および1のGvHDの個体と、高い悪性度のGvHDに後で侵された個体とを識別することができる。
【0078】
CD11c比率から派生して、これらの主要な実験マーカーは、フローサイトメトリーマーカーのために説明されたあらゆる診断基準に合致するが、容易に測定され解釈されるという追加的な利点を有する。GGTは、肝硬変、他の肝障害における肝臓障害についてのマーカーとして、広く用いられており、LDHは、細胞溶解の測定に一般的に考慮される。これらのマーカーは、移植前患者で上昇し、以前に同定されたGvHDについての危険因子(低い血小板計数)と相関するように思われるならば、上記で説明したフローサイトメトリー測定を超える追加的な利点を提供するかもしれない。
【0079】
<GvHD診断の利用可能性>
これらの観察は、第1予測マーカーまたはマーカーセットが、急性GvHDの発症や重症度を説明している。指定実験室では、疾患の発症を予測するために、DCサブセットの絶対的または相対的な定量を伴うフローサイトメトリーが容易に実施される。あるいは、感受性の他のマーカーと組み合わせた単球計数および好中球計数の利用により、予測を高め、骨髄移植後の治療を誘導することができる。
【0080】
他の診断因子と組み合わせたこれらの予測的な細胞サブセットの使用により、予測的であるか、またはDCサブセットの予測力に加えられる、共変量検体(例えば、血漿もしくは血清構成物、または、他の生物学的マーカー)の同定を可能にするかもしれない。また、この観察および診断を確実にすることも関連があり、概して、骨髄移植を受けるすべての患者に適用できる。
【0081】
〔実施例3〕
転帰を予測するような基準マーカー、実験値、および、人口統計変数を用いて、ECPを受けた高い危険率の患者(移植およびGVHD悪性度II〜IVにより死亡)を同定するために、ロジスティック回帰分析を用いる。人口統計の情報を、62人の被験者(13人が移植に関連して死亡し、22人が悪性度III/IVの急性GVHDである)について収集した。悪性度III/IVの急性GVHDが、1人の被験者について欠落し、この被験者はマーカーサブセットには入れなかった。実験値を有する被験者数は、データの欠落のために変動している。収集したマーカー値を有する患者サブセットは、全体で23人の被験者のものであり、9人の被験者が移植に関連して死亡し、15人の被験者が悪性度III/IVの急性GVHDであった。
【0082】
マーカー値 n=32
【0083】
マーカー値のいずれかが、転帰(移植による死亡およびGVHD悪性度II〜IV)のどちらかを予測するのに寄与したかどうかを決定するために、基準マーカー値を有する患者サブセットを解析した。表3および表4に示された変数は、収集したマーカー変数のすべてのうちのより良い予測因子である。マーカー値を、連続変数として、モデル中に配置する。
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
この患者サブセットにおいて、移植による死亡の最も良い予測因子は、HLAmDRsCD123csでの減少である。GVHD悪性度II〜IVの最も良い予測因子は、p_HLAmDRsCD11csでの減少である。
【0087】
実験値および人口統計値 N=62
【0088】
基準実験値または人口統計値のいずれかが、転帰のどちらかを予測するのに寄与したかどうか決定するために、ECPを受けたすべての患者を分析した。飽和モデルおよび基本モデルの-2 log尤度における差により決定される有意水準に基づいて、「最も良い」モデルとして、モデルを選択した。「最も良い」モデルから得られた結果を、表5〜表10に示す。
【0089】
移植による死亡を予測するための最も良いモデルは、変数L_BUN_CREATININE_RATIO、L_ALBUMIN__G_DL_、Not Matched vs. Matchedを含んでいた。
【0090】
【表5】

【0091】
GVDH悪性度II〜IVを予測するための最も良いモデルは、変数L_NEUTROPHIL___のみを含んでいる。
【0092】
【表6】

【0093】
転帰:実験値および基準値
【0094】
上記の表は、以下のデータを要約している。
【0095】
【表7】

【0096】
【表8】

【0097】
転帰:実験値および基準値
【0098】
【表9】

【0099】
転帰:GVHD悪性度2〜4
【0100】
【表10】

【0101】
【表11】

【0102】
〔実施例4〕
≪予言≫
骨髄移植は、白血病または他の生死に関わる遺伝的異常に侵された患者ために、概して認知された治療法である。不幸なことに、20〜50%の同種造血幹細胞移植受容者が、提供者T細胞が介在する受容者組織への攻撃である移植片対宿主病で死亡する。現在、GvHDの予防は、T細胞に対する全身免疫抑制(CSA等)に非常に依存している。提供者集団からT細胞を涸渇させることは、移植片対宿主反応を明らかに消滅させるのだが、追加的に、生着を損ない、受容者において悪生細胞を根絶するのを抑制し、提供者に対する免疫の再構築を危険にさらす(このことにより、受容者は、白血病の再発に対して敏感になる)。
【0103】
皮膚T細胞性リンパ腫、強皮症、リウマチ性関節炎、移植拒絶反応、急性GvHDおよび慢性GvHDを含んだいくつもの炎症性疾患や自己免疫疾患において、ECPの免疫調節効果により、ECPが有利な(生存させる)保護を提供することが示されている。ECPによるBMT患者の事前治療は、抗原提示細胞区画の調節を通じて、作用すると考えられている。より具体的には、移植片と受容者の両方における樹状細胞(DC)が、同種BM移植の拒絶反応を刺激するのに必要であるのかもしれない。DCの成熟は、移植拒絶反応の刺激に向けた重要なステップである。ECPが免疫細胞(T細胞、NK細胞、およびDC)上で免疫調節効果を有するかどうか評価するために、このサブ研究では、免疫細胞区画での表現型変化を観察することを採用した。フォトフェレーシスより前、およびフォトフェレーシス後であるが、全身照射(TBI)より前に、各患者から血液サンプルを収集する。第3の血液サンプルを、移植片の導入後1年で収集する。
【0104】
<研究目的>
標準的な骨髄破壊の移植前処置を受ける患者の末梢血における樹状細胞およびT細胞区画への、UVADEX(登録商標)によるECPの免疫調節効果を研究する。その処置は、血液悪性腫瘍の治療のための同種同胞の、もしくは、無関係のBMT、または、末梢血幹細胞移植(PBSCT)を経験した患者における急性GvHDおよび慢性GvHDの発生に対する標準的な骨髄破壊の移植前処置単独と歴史的に比較される。
【0105】
<研究設計およびサンプルの大きさ>
この複数のセンターによるサブ研究は、ECPを受けた患者における末梢血樹状細胞、T細胞、NK細胞区画への、UVADEX(登録商標)によるECPの免疫調節効果を、決定する。ECPは、骨髄移植直前のシクロホスファミドおよびTBIによる骨髄破壊移植前処置の後に行われる。pGvHD試験のための選択基準に適合し、このサブ研究に対してインフォームドコンセントが得られた患者のみが含まれる。したがって、サンプルの大きさは、インフォームドコンセントを提供するpGvHD試験に登録した患者数に依存する。
【0106】
およそ5〜6のセンターが、GvHD予防研究に参加する。GvHD予防研究に登録した、全体で50〜60人の患者に当たる、センター当たりおよそ10人の患者がECPを受けており、およそ20〜30人の患者から、この臨床的サブ研究への参加についてインフォームドコンセントが得られることが期待されている。患者は、このサブ研究に365日間参加する。
【0107】
≪サブ研究の方法の具体的な説明≫
<サンプル収集時間>
このサブ研究を実行するために、患者当たり全体で3つの血液サンプルを、以下の時点で収集する。
・サンプルPT1:ECP処理より前21日〜10日で採血
・サンプルPT2:移植を受けた後7日で採血
・サンプルPT3:移植を受けた後365日で採血
【0108】
患者番号、訪問番号、日付、採血の正確な時間をラベル付けされた、ヘパリン処理済のvacutainerチューブ中に、患者の血液を収集した。一晩の配達によりEsoterix, Inc. (Tennessee)へ血液サンプルを輸送した。Ficoll勾配により、全血から白血球を分離する。様々な系統、活性化、分化マーカーに特異的な蛍光標識抗体と、単核球を反応させる。患者血液サンプルを免疫表現型決定するために利用されるパネルには、T細胞、NK細胞、樹状細胞特異的抗体が含まれるだろうが、これらに限定されない。Becton Dickinson FACScan上のフローサイトメトリーにより、抗原発現レベルの分析を実行する。
【0109】
<技術的な方法>
各サンプル収集時点で、前腕静脈から静脈穿刺を通じて、8mLの血液サンプルを、ヘパリンナトリウムを含むガラスチューブ中に収集した。逆さまにすることによってサンプルを混和し、提供された輸送容器に梱包する前に室温で保存した。
【0110】
<統計的方法>
DC、T細胞、または、NK表現型における変化と、疾患または治療転帰との間に相関がありうるかどうか決定するために、結果データに統計的検定を実行した。
【0111】
〔実施例5〕
≪miRNA発現プロファイル≫
上記で説明したようにDCを入手し、これまで説明されているように、miRNAを入手し、分析した。Keene et al. (2006) RIP-Chip: the isolation and identification of mRNAs, microRNAs and protein components of ribonucleoprotein complexes from cell extracts Nature Protocols 1:302-307参照。得られた結果を表11に示す。
【0112】
【表12】

【0113】
〔実施の態様〕
(1)患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から樹状細胞(DC)を含むサンプルを入手するステップと、
b)DC表面のCD11cと関連するバイオマーカーを測定するステップと、
c)CD11c+細胞とCD11c-細胞との割合を決定するステップであって、約1未満の前記割合が、GvHDの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
前記サンプルが、自己由来のアポトーシス細胞による患者の治療後に、入手される、方法。
(3)実施態様2に記載の方法において、
前記細胞が、体外フォトフェレーシス(ECP)により患者を治療することによって、入手される、方法。
(4)患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から血清サンプルを入手するステップと、
b)γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および酪酸脱水素酵素(LDH)と関連するバイオマーカーを測定するステップと、
c)これらのバイオマーカーのレベルが上昇するかどうか決定するステップであって、移植に先立つこれらのバイオマーカーの上昇が、GvHDの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
(5)患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から好中球を含むサンプルを入手するステップと、
b)既知容量中の好中球の数を測定するステップであって、移植に先立つ好中球の減少が、GvHDの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
【0114】
(6)実施態様1、4、または、5にしたがって、GvHD発生の見込みを決定し、適切な治療法を同定することにより、治療の方針を提供する、方法。
(7)実施態様1、4、または、5にしたがって、GvHD発生の見込みを決定し、対応する予後を同定することにより、予後を提供する、方法。
(8)実施態様1、4、または、5にしたがって解析を実施するためのキットにおいて、
バイオマーカー検出試薬、
を含む、キット。
(9)実施態様1、4、または、5のうちのいずれか1項の方法を実行するためのマイクロアレイ、または、遺伝子チップ。
(10)患者における移植関連死(transplant related mortality)(TRM)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から樹状細胞(DC)を含むサンプルを入手するステップと、
b)形質細胞様DC表面のlin、HLA-DR、および、CD123と関連するバイオマーカーを測定するステップであって、基準でのlin-HLA-DR+CD123+である形質細胞様DCの絶対存在量の低下が、TRMの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
【0115】
(11)患者における移植関連死(TRM)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)血清γ−グルタミルトランスフェラーゼ、および、酪酸脱水素酵素の基準測定を入手するステップであって、移植に先立つこれらのバイオマーカーの上昇が、TRMの発生を示している、ステップ、
を含む、方法。
(12)実施態様10、または、11にしたがって、TRMの発生の見込みを決定し、適切な治療法を同定することによって、治療の方針を提供する方法。
(13)実施態様10、または、11にしたがって、TRMの発生の見込みを決定し、対応する予後を同定することによって、予後を提供する方法。
(14)実施態様10、または、11にしたがって、解析を実施するためのキットにおいて、
バイオマーカー検出試薬、
を含む、方法。
(15)実施態様10、または、11の方法を実行するためのマイクロアレイ、または、遺伝子チップ。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】臨床試験と研究計画を示している。
【図2】PBMCのサイトメトリー表現型決定を示している。
【図3A】DC存在度のヒートマップを示している。
【図3B】CD11c+/CD11cDCのプロットを示している。
【図3C】細胞表面マーカーのロジスティック回帰分析の結果を示している。
【図3D】細胞表面マーカーのロジスティック回帰分析の結果を示している。
【図4】DCプロファイルがTRMを予測することを示している。
【図5】異なるバイオマーカーによるモデル形成を示している。
【図6】GvHDおよびTRMを予測するモデルを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から樹状細胞(DC)を含むサンプルを入手するステップと、
b)DC表面のCD11cと関連するバイオマーカーを測定するステップと、
c)CD11c+細胞とCD11c-細胞との割合を決定するステップであって、約1未満の前記割合が、GvHDの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記サンプルが、自己由来のアポトーシス細胞による患者の治療後に、入手される、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記細胞が、体外フォトフェレーシス(ECP)により患者を治療することによって、入手される、方法。
【請求項4】
患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から血清サンプルを入手するステップと、
b)γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および酪酸脱水素酵素(LDH)と関連するバイオマーカーを測定するステップと、
c)これらのバイオマーカーのレベルが上昇するかどうか決定するステップであって、移植に先立つこれらのバイオマーカーの上昇が、GvHDの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
患者における移植片対宿主病(GvHD)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から好中球を含むサンプルを入手するステップと、
b)既知容量中の好中球の数を測定するステップであって、移植に先立つ好中球の減少が、GvHDの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1、4、または、5にしたがって、GvHD発生の見込みを決定し、適切な治療法を同定することにより、治療の方針を提供する、方法。
【請求項7】
請求項1、4、または、5にしたがって、GvHD発生の見込みを決定し、対応する予後を同定することにより、予後を提供する、方法。
【請求項8】
請求項1、4、または、5にしたがって、解析を実施するためのキットにおいて、
バイオマーカー検出試薬、
を含む、キット。
【請求項9】
請求項1、4、または、5のうちのいずれか1項の方法を実行するためのマイクロアレイ、または、遺伝子チップ。
【請求項10】
患者における移植関連死(TRM)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)前記患者から樹状細胞(DC)を含むサンプルを入手するステップと、
b)形質細胞様DC表面のlin、HLA-DR、および、CD123と関連するバイオマーカーを測定するステップであって、基準でのlin-HLA-DR+CD123+である形質細胞様DCの絶対存在量の低下が、TRMの発生を示している、ステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
患者における移植関連死(TRM)の発症および/または重症度を予測する方法において、
a)血清γ−グルタミルトランスフェラーゼ、および、酪酸脱水素酵素の基準測定を入手するステップであって、移植に先立つこれらのバイオマーカーの上昇が、TRMの発生を示している、ステップ、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項10、または、11にしたがって、TRMの発生の見込みを決定し、適切な治療法を同定することによって、治療の方針を提供する方法。
【請求項13】
請求項10、または、11にしたがって、TRMの発生の見込みを決定し、対応する予後を同定することによって、予後を提供する方法。
【請求項14】
請求項10、または、11にしたがって、解析を実施するためのキットにおいて、
バイオマーカー検出試薬、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項10、または、11の方法を実行するためのマイクロアレイ、または、遺伝子チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−535061(P2009−535061A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509710(P2009−509710)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010724
【国際公開番号】WO2007/127493
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(500322321)セラコス・インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Therakos, Inc.
【住所又は居所原語表記】437 Creamery Way, Exton, Pennsylvania 19341, U.S.A.
【Fターム(参考)】