説明

移載装置

【目的】 複数のリング状の保持部材が上下方向に配列された、例えば縦型熱処理装置に用いられるウエハボートと、収納具例えばウエハキャリアとの間で効率よく半導体ウエハを移載すること。
【構成】 独立して進退自在な複数例えば2枚のフォーク7A、7Bを備えた移載機構を用い、キャリアC内に2枚のフォーク7A、7Bを同時に進入させて2枚のウエハWを同時にすくい上げる。そしてウエハボート4内に上側のフォーク7Aを進入させ、突き上げ機構6によりフォーク7A上のウエハを突き上げ、フォーク7Aを後退させた後保持部材44上に載置する。次いで下側のフォーク7Bを進入させ、同様にして、ウエハWを保持部材44上に受け渡す。ウエハボート4から移載機構5へウエハを受け渡すときには、下側のフォークから順番にウエハボート4内に進入させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は板状体の移載装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体ウエハ(以下「ウエハという」)の製造プロセスの一つである熱処理を行う装置としては、従来の横型熱処理炉に代って縦型熱処理炉が多く使用されるようになってきている。縦型熱処理炉を用いた縦型熱処理装置においては、多数枚のウエハを上下に間隔をおいて塔載して熱処理炉に対してロード、アンロードを行うために、通常ウエハボートなど呼ばれる縦長の保持具が用いられる。
【0003】このウエハボートは、耐熱性及び化学的安定性に優れた石英などの材質からなり、例えば4本の支柱に溝が形成され、この溝によりウエハを各々水平な状態で上下に間隔をおいて保持するように構成されている。一方ウエハは搬送用容器である樹脂等から構成されたウエハキャリアにより各処理装置に対して搬出入される。従ってウエハキャリア(以下「キャリア」という)とウエハボートとの間でウエハを移載する移載装置が必要であり、従来この種の移載装置としては、板状の保持部材であるフォ−クにより一枚づつ移載する構造、あるいは複数のフォ−クを共通の進退機構に取り付けてこれらを同時にキャリア内あるいはウエハボート内に進退させて複数枚のウエハを一括して移載する構造が採用されていた。
【0004】ところでスループットを上げるために昇温レートを高くする工夫が行われており、その一つとしてウエハボートにおけるウエハの支持をリング状の保持部材で行うことが検討されている。このようなリング状の保持部材を用いれば、ウエハの周縁部の熱を当該保持部材を伝って逃がし、これによりウエハの周縁部と中央部との温度差を小さくできるので、昇温レートを高めても高い面内温度均一性が得られる。
【0005】ここでこのようなウエハボートにおいては、従来の移載装置ではピンセットが保持部材と位置的に緩衝し、昇降時に保持部材に衝突するので、例えば図9R>9に示すような移載装置が検討されている。図9の移載装置は、ボート載置台1の中に、ウエハボート2のリング状の保持部材21で囲まれた空間内を昇降し、3本のピン10を備えた突き上げ機構11を設け、進退自在な1枚のフォーク12を備えた移載機13と突き上げ機構11とを協動させて、これらの間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。従って例えばキャリアC内にフォーク12を進入させて処理前のウエハWを受け取り、次いでフォーク12をウエハボート2の保持部材21の間に進入させ、突き上げ11機構の突き上げ動作及びフォーク12の退避動作によりフォーク12上のウエハWが保持部材21に受け渡される。
【0006】また特開平3−83730号に記載されているように保持用アームの下方側に、3本のピンを有する突き上げ用のアームを設けた移載機構を用い、突き上げ用のアームを上昇させて保持部材あるいは保持用アーム上のウエハを突き上げる方法も検討されている。
【0007】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら上述の移載装置は、キャリアCとウエハボート2との間でウエハWを1枚づつ移載するものであるため、多数枚の例えば50枚のウエハを保持するウエハボート2に用いる場合には、例えば50枚のウエハの受け渡しを終了するまでに長い時間がかかっていた。このためリング状の保持部材を用いて昇温レートを早めるようにしても、ウエハの移載に長い時間がかかってしまうと、熱処理装置のスループットの向上に十分反映されないという問題があった。
【0008】本発明は、このような事情のもとになされたものであり、その目的は、ウエハなどの板状体をリング状の保持部材で保持する保持具を用いる場合に、板状体の移載時間を短縮することのできる移載装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、複数の板状体の周縁部を夫々保持するための複数のリング状の保持部材が上下方向に配列された保持具と、各板状体の側縁部を保持して複数の板状体を上下方向に配列して収納する収納具と、の間で板状体を移載する装置において、前記保持具内に位置する板状体を突き上げる突き上げ機構と、上下方向に配列され、各々独立して進退自在であると共に保持具及び収納具に対して相対的に昇降自在な複数の搬送部材を備えた移載機構と、複数の搬送部材を同時に収納具内に進入させて当該搬送部材と収納具との間で板状体の受け渡しを行うと共に、複数の搬送部材を順番に保持具内に進入させ、移載機構と突き上げ機構と協働して搬送部材と保持部材との間で板状体の受け渡しを行うように制御する制御部と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
【作用】移載機構の複数の搬送部材を同時に収納具内に進入させ、複数の板状体を一括して収納具から受け取る。次いで上から1番目の搬送部材を保持部材の間に進入させ、突き上げ機構により当該搬送部材上の板状体を突き上げると共に搬送部材を退壁させた後、突き上げ機構を降下させて板状体を保持部材に保持させる。このような動作を上側に位置する搬送部材から順に行い、複数の板状体を順番に保持部材上に保持させる。また保持部材から搬送部材へ受け渡すときは逆の動作が行われる。従って移載機構と保持具との間では搬送部材を順次進退させて順番に板状体を受け渡し、収納具との間では複数の板状体を一括して受け渡すようにしているため、効率よく板状体の移載を行うことができ、高いスループットを得ることができる。
【0011】
【実施例】図1は本発明を、縦型熱処理装置におけるウエハの移載装置に適用した実施例を示す図であり、この縦型熱処理装置は、ウエハの収納具であるウエハキャリア(以下「キャリア」という)Cを載置するためのキャリア載置部3と、熱処理時におけるウエハの保持具であるウエハボート4と、前記キャリアCとウエハボート4との間でウエハの移載を行う移載機構5と、ウエハボート4の載置部61内に配設された突き上げ機構6と、縦型熱処理炉14に対してウエハボート4を搬出入するためのボートエレベータ15と、移載機構5及び突き上げ機構6を制御する制御部30とを備えている。
【0012】前記キャリアCは、互に対向する側壁内面に図示しない溝が形成されており、この例では本発明の板状体に相当するウエハWの側縁部を前記溝により保持して複数例えば25枚のウエハWを上下方向に例えば約6.35mmの間隔で配列して収納するように構成されている。
【0013】前記ウエハボート4は、耐熱性の大きい材質例えば石英などから構成され、天板41及びリング状の底板42間に4本の支柱43が垂立して設けられると共に、ウエハWの周縁部を夫々保持するために複数例えば50枚のリング状の保持部材44が支柱43に取り付けられて、上下方向に例えば約11mmの間隔で配列されている。なおこれら保持部材44は、図1では示さないが、内縁側にウエハWが嵌入される凹部が形成されている。
【0014】前記移載機構5は、搬送基台51の上に上下方向に複数例えば2枚のこの例では搬送部材をなすフォーク7A、7Bを備えている。このフォーク7A、7Bは、夫々搬送基台51の一対の外側の溝52A及び一対の内側の溝52Bを介して搬送基台51内の図示しない進退機構に取り付けられ、各々独立して進退できるように構成されている。これらフォーク7A、7Bには、ウエハの位置ずれを防止するために例えばガイド部(図示せず)が設けられ、フォーク7A、7Bの先端部には、突き上げ機構6の後述のピンが上下に通過できる切り欠き53が形成されている。
【0015】前記搬送基台21は、鉛直軸のまわり(θ方向)に回転するθ機構54の上に設けられると共に、このθ機構54は、例えばボールネジなどを用いた昇降機構55の上に設けられており、従ってフォーク7A、7Bは進退動作の他、上下及びθ方向に移動できることになる。そして前記キャリアC及びウエハボート4は円周上に配置され、搬送基台51の回転中心は、その円の中心と一致するように設定される。
【0016】前記突き上げ機構6は、ウエハボート4の底板42の内方側空間を通ってリング状の保持部材44により囲まれる空間内を昇降する昇降部材62と、この昇降部材62の表面にウエハを突き上げるための突き上げ部材である3本のピン63と、前記昇降部材62を昇降させる昇降機構、例えば載置台61側に固定されたモータMによりプーリPを回転させて、これに螺合されたボールネジ64を回転昇降させるように構成した昇降機構とを備えている。前記3本のピン63は、例えば正三角形の頂点に配置され、2本のピン63の間は前記フォーク7A、7Bの横幅よりも大きく設定され、また残り1本のピン63は前記フォーク7A、7Bの切り欠き53内を上下に通るように構成されている。
【0017】前記制御部30は、例えば所定のプログラムにもとずいて、移載機構5の2枚のフォーク7A、7Bを同時にキャリアC内に進入させてキャリアCとの間でウエハの受け渡しを行うと共に、フォーク7A、7Bを順番にウエハボート2内に進入させ、フォーク7A、7Bと突き上げ機構6とを協働させてフォーク7A、7Bと保持部材44との間でウエハの受け渡しを行うように制御する機能を有する。なお31は信号ラインである。
【0018】次に上述実施例の作用について述べる。先ず処理前のウエハWを例えば25枚収納したキャリアCがキャリア載置部3に載置する。そして制御部30の制御指令により移載機構5の2枚のフォーク7A、7Bを同時にキャリアCのウエハ間に進入させ、次いで昇降機構55により上昇させてフォーク7A、7Bの上に夫々ウエハWを保持し、フォーク7A、7Bを後退させると共にθ機構54により回転させてウエハボート4に対向させる。
【0019】その後上側のフォーク7Aを図2に示すように前進させて、ウエハWがリング状の保持部材44の真上、つまり図3に示すように凹部45の真上に位置させる。続いて突き上げ機構6の昇降部材62を保持部材44により囲まれた空間を上昇させて図4に示すように3本のピン63により、フォーク7A上のウエハWを突き上げ、更に図5に示すようにフォーク7Aを後退させた後、図6に示すように昇降部材62を下降させて、ピン63により保持されているウエハWを保持部材44の凹部45内に嵌合させて当該保持部材44に保持させる。
【0020】そしてピン63を、前記保持部材44の一つ下の段の保持部材44よりも低い位置に待機させておき、下側のフォーク7Bを図7に示すように、既にウエハWが保持された保持部材44とその一つ下の段の保持部材44との間に進入させ、同様に突き上げ機構6と協動させて、当該フォーク7B上のウエハWを保持部材44上に保持させる。このようなウエハWの移載は、最上段の保持部材44から順に行われる。
【0021】こうしてキャリアC内から2枚ずつ一括してウエハWが抜き取られ、移載機構5からはフォーク7A、7Bを交互に進退させて、その2枚のウエハWが順番にウエハボート4に受け渡される。そしてウエハボート4に所定枚数例えば50枚のウエハWが塔載されると、図示しないボート移載機構により、当該ウエハボート4をボートエレベータ15に移し替え、このボートエレベータ15によりウエハボート4を縦型熱処理炉14内に搬入して、所定の熱処理例えばCVDが行われる。
【0022】また熱処理後にウエハボート4がボート載置部61に載置されると、上述と逆の動作で保持部材44からフォーク7A、7BにウエハWが移載される。即ちフォーク7A(7B)をウエハボート2内に進入させる前に突き上げ機構6により保持部材44上のウエハWを突き上げ、その後フォーク7A、(7B)を進入させてピン63からフォーク7A(7B)にウエハWが受け渡される。ただしこの場合には下側のフォーク7Bから順に進退させ、下側に位置するウエハWから順番に移載機構5側に受け渡される。そして移載機構5からキャリアCへのウエハWの受け渡しは、上述の逆の動作で2枚のウエハWが一括してキャリアCへ受け渡される。
【0023】このように上述実施例によれば、移載機構5をキャリアCからウエハボート4へ(またはウエハボート4からキャリアCへ)1回回転することにより2枚のウエハWの移載を行うことができ、しかもキャリアCに対しては2枚のウエハWを一括して受け渡しすることができるので、ウエハWの移載を効率よく行うことができ、1枚のフォークを用いていた従来の場合に比べて移載時間が短縮され、スループットが向上する。
【0024】以上において、移載機構5においては、フォークの数が2枚に限らず3枚以上であってもよいし、フォークの相互のピッチ(上下の離間距離)が可変な構成としてもよく、ピッチを変更できる場合には、保持部材のピッチが種々のものに対して、予めフォーク間のピッチを対応させておくことにより、フォークを1枚進退させる度にフォークを昇降させるといった制御をしなくて済む。
【0025】また本発明は、移載機構の高さを一定にしておいて、キャリアCやウエハボート4の高さを変える場合にも適用できる。そしてウエハボート4の保持部材がリング状であるとは、円形状でなくとも、三角や多角形のリング形状も含まれ、またリングの一部が欠けている形状も含むものである。
【0026】そしてまた移載機構は、図8に示すように複数例えば2本の多関節アーム8A、8Bを備え、これら各アーム8A、8Bによりキャリア内の2枚のウエハWを一括して受け取り、更に順番にウエハボートのリング状の保持部材に受け渡すようにしてもよい。
【0027】なお本発明の移載装置は、CVDに限らず、酸化、拡散やエッチングなどの熱処理装置に適用できるし、熱処理装置以外の場合にも適用できる。そしてまた板状体としてはウエハに限らずLCD基板やプリント基板であってもよい。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、リング状の保持部材を上下に配列した保持具に対して板状体の移載を行うにあたって、複数の搬送部材を備えた移載機構を用い、保持具との間では搬送部材を順次進退させて順番に板状体を受け渡し、収納具との間では複数の板状体を一括して受け渡すようにしているため、効率よく板状体の移載を行うことができ、高いスループットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例の要部を示す斜視図である。
【図3】半導体ウエハを移載する様子を示す説明図である。
【図4】半導体ウエハを移載する様子を示す説明図である。
【図5】半導体ウエハを移載する様子を示す説明図である。
【図6】半導体ウエハを移載する様子を示す説明図である。
【図7】半導体ウエハを移載する様子を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例の要部を示す斜視図である。
【図9】従来の移載装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
2、4 ウエハボート(保持具)
21、44 リング状の保持部材
11、6 突き上げ機構
30 制御部
5 移載機構
51 搬送基台
52A、52B フォーク(搬送部材)
C ウエハキャリア(収納具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の板状体の周縁部を夫々保持するための複数のリング状の保持部材が上下方向に配列された保持具と、各板状体の側縁部を保持して複数の板状体を上下方向に配列して収納する収納具と、の間で板状体を移載する装置において、前記保持具内に位置する板状体を突き上げる突き上げ機構と、上下方向に配列され、各々独立して進退自在であると共に保持具及び収納具に対して相対的に昇降自在な複数の搬送部材を備えた移載機構と、前記複数の搬送部材を同時に収納具内に進入させて当該搬送部材と収納具との間で板状体の受け渡しを行うと共に、複数の搬送部材を順番に保持具内に進入させ、前記移載機構と突き上げ機構と協働して搬送部材と保持部材との間で板状体の受け渡しを行うように制御する制御部と、を備えてなることを特徴とする移載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開平6−271009
【公開日】平成6年(1994)9月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−85754
【出願日】平成5年(1993)3月18日
【出願人】(000109576)東京エレクトロン東北株式会社 (3)