穀粒乾燥機のバーナ制御装置
【課題】穀粒乾燥用の高温空気温度の検出誤差によることなく、所要の乾燥速度によって乾燥品質を確保することができる穀粒乾燥機のバーナ制御装置を提供する。
【解決手段】穀粒乾燥機のバーナ制御装置は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、外気温度Taの高低毎に予め設定された上下限H1,L1の範囲でバーナ加熱量を変更制御するように構成する。
【解決手段】穀粒乾燥機のバーナ制御装置は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、外気温度Taの高低毎に予め設定された上下限H1,L1の範囲でバーナ加熱量を変更制御するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒が所要の乾燥速度で乾燥されるようにバーナの熱出力を調節制御する穀粒乾燥機のバーナ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、穀粒の乾燥加熱に際して所要の乾燥速度となるようにバーナの熱出力を調節制御する穀粒乾燥機のバーナ制御装置が知られている。このバーナ制御装置は、穀粒の乾燥速度と高温空気の温度との相関性に基づき、高温空気の温度を検出して目標温度になるように燃料供給量(流量)を調節してバーナの熱出力を制御するものである。
【0003】
しかし、温度の検出精度その他の原因により、高温空気の実質温度が検出値に反映されていない場合は、そのような検出値に基づいてバーナの熱出力を調節制御することによって過剰加熱に陥り、乾燥穀物の品質を損ねるという事態を招くこととなる。
【特許文献1】特公平2−56568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、穀粒乾燥用の高温空気温度の検出誤差によることなく、所要の乾燥速度によって乾燥品質を確保することができる穀粒乾燥機のバーナ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、外気温度の高低毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする。
【0006】
上記制御装置により、外気温度と所要の乾燥温度との温度差と対応してバーナの熱出力が調節制御されることから、加熱乾燥用の高温空気は、上記制御部の熱出力制御により、外気温度から昇温されて所用の乾燥速度と対応する変化幅内の乾燥温度に調節され、所要の乾燥速度と対応する乾燥温度範囲内に規制される。
【0007】
請求項2に係る発明は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、穀物種別毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする。上記制御装置により、乾燥温度は穀物種別に応じて特定され、それぞれに対応して乾燥処理される。
【0008】
請求項3に係る発明は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、バーナの稼動履歴により予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする。上記制御装置により、稼動履歴に応じたバーナ特性の変化が熱出力制御に反映される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀粒乾燥機のバーナ制御装置は、以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、外気温度Taに基づいてバーナへの燃料供給の上限量、下限量を設定することにより、バーナが正常燃焼可能な状況下においてバーナの組付け誤差等によって設定熱風温度Tcに達していることが検出できない場合であっても、むやみに燃料供給量を上げて熱風室内が過剰加熱状況となる事態を回避することができる。したがって、燃料供給量の規制により、異常状態を防止して乾燥穀物の品質をそれぞれ確保することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、穀物種別に応じて乾燥温度が特定されることから、穀物種別の特性を反映した適正な乾燥処理が可能となる。すなわち、穀物種類が変わり、例えば籾と大豆を例にとると、大豆の場合は粒間の隙間空間が籾の場合よりも大となるから、同じ設定の風量が作用していても、つつ抜け易い大豆の場合は、所定燃焼量を確保するため燃料増加信号を出力し続け加熱高温域での燃焼に陥り易いが、穀物種別に応じて乾燥温度が特定されるように構成することによって過剰な高温域での燃焼を抑制できる。
【0011】
請求項3に係る発明は、稼動履歴に応じたバーナ特性の変化が熱出力制御に反映されることから、実体にそぐわない燃焼能力によるアンバランスな燃料供給を招くことなく、バーナ能力の実態に沿った適正な燃焼制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
穀物乾燥機の機体aは、具体的には、その正面及び側面の断面図(図15、図16)に示すように、穀粒を貯留調質する貯留部b、繰出バルブcを備えてこの貯留部bからの穀粒を流下部j,jを流下させながら乾燥する通風乾燥部d、この通風乾燥部dに乾燥用空気を供給するとともに通風乾燥部dから受けた穀粒を集める集穀部e、この集穀部eから貯留部bに穀粒を戻すために下部搬送機構f、昇降機g、上部搬送機構h等からなる循環手段、乾燥用空気を加熱するバーナi、該バーナiに直接加熱されて遠赤外線を放射し上記流下部j,jを流下する穀粒に輻射熱を作用させる遠赤外線放射体k、該放射体kの上・下部のスリット孔部から排出される乾燥用空気を通風乾燥部dに吸引送風する送風機l等から構成されるほか、機体aの正面側にコントロールボックスm等を備える。このコントロールボックスmには、張込・乾燥・排出・停止の各運転スイッチ、停止水分設定ダイヤル、張込量設定ダイヤル、表示部等を設けている。また、昇降機g途中には搬送中穀粒の一部を受ける構成の水分計nを配置している。
【0013】
穀粒乾燥機の制御装置は、調質貯留部、乾燥部、循環部等からなる穀粒乾燥機において、その乾燥部に備えたバーナの火力により、調質貯留部から流下する穀粒に吹きかけて加熱乾燥する高温空気を造り、穀粒が所要の乾燥速度となるようにバーナの熱出力を調節制御する制御部を備えて構成される。
【0014】
上記乾燥機の制御装置の入出力構成は、図1のブロック図に示すように、CPUによる制御部2について、その入力側に、穀粒種類切替スイッチ3a、乾燥スイッチ3b等の入力機器類、外気温センサ4a、熱風温度センサ4b等のセンサ類の信号を受け、制御部2の演算処理結果により、バルブモータ5a、水分計モータ5b、燃料ポンプ5c等の機器を制御する。バルブモータ5aは、繰出バルブcを駆動して調質貯留部から穀粒を乾燥部に送り出す。水分計モータ5bは、穀粒を順次取り込んで穀粒の水分値計測を準備する。燃料ポンプ5cは、バーナの燃料供給量(流量)を調節してバーナの熱出力を定める。
【0015】
即ち、前記遠赤外線放射体kの入口側には、図17,図18において、乾燥機正面に配置するバーナiからの熱風を受け入れる構成である。即ち、バーナiは気化型バーナとされ、正面向きの燃焼盤oの中央部に横軸周りの回転気化筒pを備え、気化筒pの内側に設ける燃料ノズル(図示せず)からの噴出燃料は燃焼火炎を受けて加熱する気化筒pによって気化され燃焼盤oから噴出しながら燃焼を継続する構成である。
【0016】
気化型バーナiは次のように装着される。基板qに対して断面矩形の支持筒rをもって送風筒sが支持されている。この基盤qには該支持筒rの左右に位置してイグナイタu用トランスv及び上記燃焼ノズルを接続する燃料ポンプwを装着し、該支持筒r前側には外気導入口x及び前面を導入口xに形成した案内ガイドyを設けている。zは配線部、Aは燃料供給管である。
【0017】
上記基板qの裏面側には上記外気導入口xに接続しかつ上記支持筒rに通じる送風ダクトBを設け、風調ファンCの回転により、上記導入口xからの外気を送風筒s内に供給すべく構成する。Dは風調ファンモータである。
【0018】
上記バーナiは、燃料ポンプwからの燃料を図外ノズルから噴出して回転気化筒pの内側壁面を伝って燃焼盤oに至り燃焼する。なお回転気化筒pは火炎の輻射熱で加熱され灯油燃料の気化を促進する。燃焼に必要な一次空気(燃焼用空気)は導入口xから吸引され送風筒s内部に供給されるが、燃焼用空気量は風調ファンDを連動する風調ファンモータDの回転に制御される。即ち必要な燃料供給量yの入力を受けると燃料ポンプwの駆動周波数fを指定出力し、併せて風調ファンモータDの回転数nを制御出力する構成とされる。
【0019】
制御部2は、外気温センサ4aによる外気温度Taに対して乾燥温度Tcとの温度差ΔTと対応する燃料供給量となるように燃料ポンプ5cを調節して必要な熱出力により加熱乾燥用の高温空気を乾燥部に送り込む。このとき、乾燥温度Tcは、所要の乾燥速度と対応して別途把握されている適正な上限温度Hおよび下限温度Lの範囲内とし、この定められた範囲の温度H,Lと外気温度Taとの温度差H―Ta,L―Taに応じて定められる熱出力の範囲でバーナを調節制御することにより、所望の乾燥処理品質を得ることができる。
【0020】
制御部2における具体的な制御処理手順は、図2のフローチャートに示すように、各種のスイッチとセンサからの入力(S1)に応じて乾燥温度、燃焼量上下限、水分測定等の乾燥処理条件を定める(S2)。次に、水分値測定(S3)を所定回数の繰返し(S4)の後、総平均及びばらつきを算出(S5)し、目標水分値になるまで(S6)測定休止(S7)を挟んで一連の処理を繰り返した後に、乾燥停止の処理(S8)を行う。
【0021】
上記乾燥処理におけるバーナ制御においては、図3の特性線図に示すように、外気温度Taを設定乾燥温度Tcに反映させ、その上限温度H1および下限温度L1の変化と対応する燃焼量上下限の範囲で設定乾燥温度Tcとの温度差H1―Ta,L1―Taに基づいてバーナ制御する。なお、上記上限温度H1および下限温度L1は穀物種類として籾の場合を示している。
【0022】
図3において、上限温度H1ライン、及び下限温度L1ラインは夫々の外気温度Taにおける上・下限範囲を示すものであり、これらを燃焼量に換算すると、例えば、
QH=KH(Tc―Ta)
QL=KL(Tc―Ta)
で表される。ここで、KH及びKLは上・下限夫々の係数であり、乾燥空気量、比熱、燃焼効率等を勘案しながら実験的に求められる。算出一例として図4のようになる。即ち図4籾(a)の例では、外気温度Taが10℃で上下限規制値は3.0リットル〜5.0リットル/時であり、20℃で2.0リットル〜4.0リットル/時、30℃で1.0リットル〜3.0リットル/時となる。乾燥機の仕様等で上記換算式の係数KH及びKLは適宜に変更設定されるものである。
【0023】
しかして、従来灯油1〜6リットル/時の範囲で燃焼可能に設けられていたバーナは、上記のQL及びQHの範囲で燃焼することとなる。つまり、外気温度Taが高くなるほど、加熱量は減少しうるものであるが、図3の実施例では、外気温度Taの上昇に従って、上限及び下限とも減少する関係に設定している。
【0024】
乾燥速度制御乾燥において、水分値の差値から算出される算出乾燥速度と予め設定した乾燥速度との比較によって遅い場合には設定乾燥温度Tcが高い側に変更され、この変更された設定乾燥温度と外気温度との差値に基づき燃焼信号が出力されるものとなる。この燃焼信号出力が、当該外気温度における上限又は下限を超える場合には、出力を制限して上限または下限値で停止されるようになっている。
【0025】
なお、上例では所謂乾燥速度制御における設定乾燥温度への移行について説明したが、低温乾燥であってもよく、その他の乾燥制御における方法でもよい。要するに、乾燥中における設定乾燥温度が外気温度によって予め設定した上限・下限から外れることのないように制御させる構成としている。
【0026】
また、籾のほかに各種の穀類の乾燥に乾燥機を共用する場合は、その種別に応じた乾燥温度の特性線図に基づく燃焼量上下限の範囲でバーナ制御することにより、穀物種別に応じた乾燥制御が可能となる。例えば、小麦は、籾の上限温度H1および下限温度L1より高温域の特性H2,L2、大豆は、低温域の特性H3,L3を使用する。
【0027】
この乾燥特性に基づく燃料供給量は、灯油1〜6毎時リットルの6段階で熱出力の調節範囲を有するバーナの例において、図4に示すように、籾(a)、小麦(b)、大豆(c)について、外気温度Taと乾燥温度Tcとの温度差H―Ta,L―Taに応じてそれぞれの上下限の調節幅で供給量を決定することができる。
【0028】
このように、外気温度Taに基づいてバーナへの燃料供給の上限量、下限量を設定することにより、バーナが正常燃焼可能な状況下においてバーナの組付け誤差等によって設定熱風温度Tcに達していることが検出できない場合であっても、むやみに燃料供給量を上げて熱風室内が過剰加熱状況となる事態を回避することができる。したがって、燃料供給量の規制により、異常状態を防止して乾燥穀物の品質をそれぞれ確保することができる。すなわち、遠赤外線発生装置を利用するものにおいては外気温度の高い場合に無理な加熱をしないよう上下限規制値を下げて運転でき、逆に低外気温度状態であるときは微少な加熱設定によるバーナの異常低温運転を防止して運転できることとなって、信頼性を向上する。
【0029】
また、穀物種類が変わり、例えば大豆を例にとると、隙間空間が籾の場合よりも大となるから、同じ設定の風量が作用していても、つつ抜け易い大豆の場合は、所定燃焼量を確保するため燃料増加信号を出力し加熱高温域での燃焼に陥り易いが、上記のように構成することによって過剰な高温域での燃焼を抑制できる。
上記の例では、外気温度の変化に伴い上下限量を設定変更しうる上、穀物種類によっても上下限量を変更させる形態としたが、外気温度の変化によらず、穀物種類のみによって上下限量を設定できる構成でもよい。
【0030】
次に、バーナの経時変化を反映した乾燥制御について説明する。バーナ熱出力の制御において、バーナの燃料供給量の上下限量をその稼動履歴情報によって変更し、その範囲内で穀粒の乾燥制御を行う。稼動履歴情報は、バーナの運転積算時間等のバーナの稼動量の情報である。
【0031】
その制御処理手順は、例えば、図5のフローチャートに示すように、乾燥処理条件設定(S2)に運転積算時間読み取り(S2a)を含め、また、乾燥停止の処理(S8)に運転時間積算(S8a)を含める。この運転積算時間に応じてバーナの燃料供給量の上下限量を変更する。この燃料供給量の上下限量は、図6の例のように、バーナ性能について別途把握されている経時変化と対応して燃焼量の上下限値を調節幅が狭くなるように設定する。
【0032】
燃焼機器の経年劣化は、給油経路の詰まり、ノズル噴出孔の拡大、燃焼盤の噴出口の拡大等の現象として現れ、一般に、図7のバーナのオンタイム特性図に示すように、燃料パイプの詰まりによって上限量が減少し、また、ノズル噴出口拡大により下限量が増加する。その結果、オンタイムと燃料供給量とがアンバランスとなり、燃焼異常を引き起すことから、バーナの当初の出力範囲と対応する上下限量H0,L0を変更し、稼動時間tの経過後の出力範囲の変化と対応して上下限量Ht,Ltを定めて燃料供給量を制限する。
【0033】
上下限量Ht,Ltとバーナの経時変化との関係を詳細に説明すると、予混合火炎を形成する灯油ガス化バーナの場合は、使用時間を追うごとに、灯油のガス化部の不純物等による汚れによりガス化能力が低下する。そのまま最大燃焼をすると、燃料が過剰供給となり、ガス化不良による未燃灯油が乾燥室に飛散することにより、穀粒品質不良や火災の危険性が増大するので、過剰供給を抑える必要から燃焼量上限値を低く設定する。この上限値の低下は、籾乾燥には殆ど支障がなく、一方、小麦乾燥の一部で10〜20%程度乾燥速度の減少となるものの、ガス化能力の低下による不都合を未然に防止することができる。
【0034】
また、さらに時間を重ねることによって不純物の付着は累積しなくなるが、バーナヘッドが熱で劣化して火炎孔面積が拡大することから、最低燃焼時に火炎の吹き消えや逆火の危険性が増大するので、最低燃焼の限界値を高く設定する必要がある。その結果、外気温の高い夏季の籾乾燥が一部制限を受けるものの、長期に亘り乾燥運転の安全性を確保することができる。
【0035】
上述のように、稼動経過に伴うバーナ出力の変化は、回転気化式バーナの場合は運転積算時間、燃焼量積算、燃焼空気供給量積算等、また、噴霧ガンチップの摩耗が寿命要素となるガンバーナの場合は燃焼量積算値等、バーナ構造に応じた稼動履歴情報を評価対象として乾燥制御に反映することにより、長期使用による部品劣化を伴う各種の形式のバーナについて、その実態性能変化に即した過不足のない燃料供給による安全な自動運転制御下で所要の乾燥速度を確保することができる。
【0036】
次に、ロータリ気化バーナの点火制御について説明する。
ロータリ気化バーナ10は、温水生成装置や暖房機あるいは穀粒等の乾燥装置において使用され、その構造は、図8の縦断面図に示すように、燃焼盤Fの中央部に図外モータに直結する回転軸Gを設け、この回転軸Gに設ける回転気化筒11の内周面に沿ってノズルHからの液体燃料を、燃焼盤F、燃焼筒Jによって形成される燃焼室K内に回転飛散させ、この燃焼室K内に設けられたイグナイタLにより噴霧拡散燃焼を発生させ、その燃焼気により気化筒11を加熱して液体燃料を気化させ、予混合気化燃焼に移行させるものである。このロータリ気化バーナは、比較的高出力の燃焼形式による熱源であるところから、屋外のような塵埃の多い環境下で長期に亘り使用され、その結果、バーナ内の塵埃、液体燃料の気化残渣、燃料供給手段内部の微細な汚れ等により、初期燃料供給量が減少して着火不良が発生する。
【0037】
その対応策として、ロータリ気化バーナ10の点火制御は、図9の入出力制御系統図に示すように、制御部21により燃料ポンプ22を駆動制御するべく構成し、かつ、バーナ稼働時間情報を積算し、その積算情報により噴霧燃焼を発生させる初期液体燃料供給量を変更する。例えば、図10に示すように、稼動積算時間に応じて初期燃料供給量を増加する。
【0038】
詳細に説明すれば、初期の噴霧拡散燃焼時の燃料供給量は、バーナの構成によるところが大きく、上記例では、予混合燃焼時の最大燃焼量が5.0毎時リットルの例である。最大燃焼量を初期供給したのでは、バーナ構成にもよるが、特に縦型構成のものは、供給過多による燃焼室の濡れすぎにより気化燃焼への移行がスムーズに行かず、着火検出に時間をとられることがある。したがって、初期燃焼量は低減して、例えば、最大燃焼量の略60%程度で噴霧拡散燃焼を実施することで最適な気化燃焼への移行が確保されることが多い。
【0039】
しかし、長期にわたり使用することで、前記理由により、10%の燃料ダウンとはいかないまでも、噴霧に供される燃料は低減するので、運転積算時間により5%から10%程度の供給量増加をするべく、燃料供給量制御信号を10%から20%増加して運転をする。
【0040】
これにより、従来では、バーナ部のオーバーホールや部品交換をしていたのであるが、ノーメンテナンスで長期にわたり運転できるようになった。また、JIS1号灯油以外の外国産灯油等では、分留点(蒸発温度)が高く、タール分の気化筒内付着発生量が多く、早期にバーナ部のオーバーホールや部品交換をしていたが、本案により長期運転が可能となった。
【0041】
以上に述べたように、上記構成の点火制御は、初期燃料供給量を自動的に規定する供給量制御信号をバーナの稼動情報により変更することにより、長期に使用した場合に、初期燃料供給量を増加させる方向に制御することにより、着火ミスのない信頼性の高い自動運転制御を長期に亘り確保することができる。
【0042】
次に、回転式気化バーナの燃焼気案内路について説明する。回転式気化バーナを穀粒乾燥装置に使用する場合、従来のものは、バーナ外周の乾燥用空気流により、火炎が気化筒に対し不適正な位置で過熱状態になり、適正な燃焼状態とならないので、高価な耐熱材を使用して対策をしても火炎温度が高温度のため、変形や損傷によって長期の機能維持が困難であった。また、適正な位置を確保するべく構成して良好な燃焼を可能としても、乾燥装置をコンパクト化すると気化筒が過熱して適正な燃焼が確保できないという問題があった。
【0043】
そこで、図11の斜視図に示す井桁状に、また、図12の斜視図に示すリング状に、バーナ下流の案内空気路の断面を区画するように調整板31,32を構成し、火炎下流側に乾燥用空気の気流方向を調整することにより、気化筒に対する火炎位置を適正化することができるとともに、コンパクトにレイアウト構成した場合でも適正燃焼を達成することができる。
【0044】
また、図13に示す穀粒乾燥機の乾燥室41に架設した赤外線放射体41aの燃焼気案内路については、貯留室42から流下する穀粒を赤外線加熱して再び貯留するものであって、その加熱量の大小により、貯留した穀流量の大小に関わらず、略一定の乾燥速度を得ることができる穀粒乾燥装置において、加熱量の大小を変更する加熱手段に回転式気化バーナを用い、バーナから発生する熱量を外気空気と混合希釈するべく、バーナ外周に外気空気を案内して穀粒に供給する案内空気路を設け、この空気路を赤外放射体とし、この赤外線放射体内のバーナ火炎の下流側に案内空気流方向を調整する調整板を設ける。例えば、図14の断面図のように、下流に広がるリング状の調整板44を設けることにより、更に加えてその中心位置に下流に広がる円錐状の調整板45を設ける。
【0045】
回転式気化バーナを穀粒乾燥装置に利用する場合、従来のものは、前記同様に、バーナ外周の乾燥用空気流により、火炎が気化筒に対し不適正な位置で過熱状態になり、適正な燃焼状態とならないので、高価な耐熱材を使用して対策をしても火炎温度が高温度のため、変形や損傷によって長期の機能維持が困難であった。また、適正な位置を確保するべく構成して良好な燃焼を可能としても、乾燥装置のコンパクト化すると気化筒が過熱して適正な燃焼が確保できないという問題があった。
【0046】
しかし、上記のように、特に赤外線放射体過熱手段に回転式気化バーナを用いた場合において、放射体内の略中心位置にバーナ中心を置くことで、火炎は気流の影響を受けてバーナ中心に集まり、気化筒加熱を促進し、さらに赤外線放射を気化筒が受けることで気化筒温度上昇が著しいことから、加熱による燃料油の蒸発不良からくる赤火燃焼によって適正な青炎燃焼にならず、異常燃焼さらには放射体過熱異常を起こすという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】バーナ制御装置による入出力構成の系統図である。
【図2】バーナを調節制御する制御処理手順のフローチャートである。
【図3】制御処理手順のフローチャートである。
【図4】籾(a)、小麦(b)、大豆(c)の燃料供給量の上下限量の例である。
【図5】バーナの経時変化を反映した乾燥制御のフローチャートである。
【図6】運転積算時間による燃料供給量の上下限量の例である。
【図7】バーナのオンタイム特性図である。
【図8】ロータリ気化バーナの縦断面図である。
【図9】点火制御の入出力制御系統図である。
【図10】稼動積算時間による初期燃料供給量の例である。
【図11】井桁状の調整板の斜視図である。
【図12】リング状の調整板の斜視図である。
【図13】赤外線放射体を備える穀粒乾燥機の内部構成図である。
【図14】赤外線放射体の断面図である。
【図15】穀物乾燥機の正面の断面図である。
【図16】穀物乾燥機の側面の断面図である。
【図17】バーナの側面図である。
【図18】バーナの平面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 制御部
4a 外気温センサ
10 ロータリ気化バーナ
11 回転気化筒
21 制御部
22 燃料ポンプ
H,L 上下限温度
H0,L0 上下限量
H1,L1 籾上下限温度
H2,L2 小麦上下限温度
H3,L3 大豆上下限温度
Ht,Lt 上下限量
i バーナ
j 流下部(流下通路)
t 稼動時間
Ta 外気温度
Tc 乾燥温度(設定熱風温度)
ΔT 温度差
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒が所要の乾燥速度で乾燥されるようにバーナの熱出力を調節制御する穀粒乾燥機のバーナ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、穀粒の乾燥加熱に際して所要の乾燥速度となるようにバーナの熱出力を調節制御する穀粒乾燥機のバーナ制御装置が知られている。このバーナ制御装置は、穀粒の乾燥速度と高温空気の温度との相関性に基づき、高温空気の温度を検出して目標温度になるように燃料供給量(流量)を調節してバーナの熱出力を制御するものである。
【0003】
しかし、温度の検出精度その他の原因により、高温空気の実質温度が検出値に反映されていない場合は、そのような検出値に基づいてバーナの熱出力を調節制御することによって過剰加熱に陥り、乾燥穀物の品質を損ねるという事態を招くこととなる。
【特許文献1】特公平2−56568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、穀粒乾燥用の高温空気温度の検出誤差によることなく、所要の乾燥速度によって乾燥品質を確保することができる穀粒乾燥機のバーナ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、外気温度の高低毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする。
【0006】
上記制御装置により、外気温度と所要の乾燥温度との温度差と対応してバーナの熱出力が調節制御されることから、加熱乾燥用の高温空気は、上記制御部の熱出力制御により、外気温度から昇温されて所用の乾燥速度と対応する変化幅内の乾燥温度に調節され、所要の乾燥速度と対応する乾燥温度範囲内に規制される。
【0007】
請求項2に係る発明は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、穀物種別毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする。上記制御装置により、乾燥温度は穀物種別に応じて特定され、それぞれに対応して乾燥処理される。
【0008】
請求項3に係る発明は、貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、バーナの稼動履歴により予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする。上記制御装置により、稼動履歴に応じたバーナ特性の変化が熱出力制御に反映される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀粒乾燥機のバーナ制御装置は、以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、外気温度Taに基づいてバーナへの燃料供給の上限量、下限量を設定することにより、バーナが正常燃焼可能な状況下においてバーナの組付け誤差等によって設定熱風温度Tcに達していることが検出できない場合であっても、むやみに燃料供給量を上げて熱風室内が過剰加熱状況となる事態を回避することができる。したがって、燃料供給量の規制により、異常状態を防止して乾燥穀物の品質をそれぞれ確保することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、穀物種別に応じて乾燥温度が特定されることから、穀物種別の特性を反映した適正な乾燥処理が可能となる。すなわち、穀物種類が変わり、例えば籾と大豆を例にとると、大豆の場合は粒間の隙間空間が籾の場合よりも大となるから、同じ設定の風量が作用していても、つつ抜け易い大豆の場合は、所定燃焼量を確保するため燃料増加信号を出力し続け加熱高温域での燃焼に陥り易いが、穀物種別に応じて乾燥温度が特定されるように構成することによって過剰な高温域での燃焼を抑制できる。
【0011】
請求項3に係る発明は、稼動履歴に応じたバーナ特性の変化が熱出力制御に反映されることから、実体にそぐわない燃焼能力によるアンバランスな燃料供給を招くことなく、バーナ能力の実態に沿った適正な燃焼制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記技術思想に基づき具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
穀物乾燥機の機体aは、具体的には、その正面及び側面の断面図(図15、図16)に示すように、穀粒を貯留調質する貯留部b、繰出バルブcを備えてこの貯留部bからの穀粒を流下部j,jを流下させながら乾燥する通風乾燥部d、この通風乾燥部dに乾燥用空気を供給するとともに通風乾燥部dから受けた穀粒を集める集穀部e、この集穀部eから貯留部bに穀粒を戻すために下部搬送機構f、昇降機g、上部搬送機構h等からなる循環手段、乾燥用空気を加熱するバーナi、該バーナiに直接加熱されて遠赤外線を放射し上記流下部j,jを流下する穀粒に輻射熱を作用させる遠赤外線放射体k、該放射体kの上・下部のスリット孔部から排出される乾燥用空気を通風乾燥部dに吸引送風する送風機l等から構成されるほか、機体aの正面側にコントロールボックスm等を備える。このコントロールボックスmには、張込・乾燥・排出・停止の各運転スイッチ、停止水分設定ダイヤル、張込量設定ダイヤル、表示部等を設けている。また、昇降機g途中には搬送中穀粒の一部を受ける構成の水分計nを配置している。
【0013】
穀粒乾燥機の制御装置は、調質貯留部、乾燥部、循環部等からなる穀粒乾燥機において、その乾燥部に備えたバーナの火力により、調質貯留部から流下する穀粒に吹きかけて加熱乾燥する高温空気を造り、穀粒が所要の乾燥速度となるようにバーナの熱出力を調節制御する制御部を備えて構成される。
【0014】
上記乾燥機の制御装置の入出力構成は、図1のブロック図に示すように、CPUによる制御部2について、その入力側に、穀粒種類切替スイッチ3a、乾燥スイッチ3b等の入力機器類、外気温センサ4a、熱風温度センサ4b等のセンサ類の信号を受け、制御部2の演算処理結果により、バルブモータ5a、水分計モータ5b、燃料ポンプ5c等の機器を制御する。バルブモータ5aは、繰出バルブcを駆動して調質貯留部から穀粒を乾燥部に送り出す。水分計モータ5bは、穀粒を順次取り込んで穀粒の水分値計測を準備する。燃料ポンプ5cは、バーナの燃料供給量(流量)を調節してバーナの熱出力を定める。
【0015】
即ち、前記遠赤外線放射体kの入口側には、図17,図18において、乾燥機正面に配置するバーナiからの熱風を受け入れる構成である。即ち、バーナiは気化型バーナとされ、正面向きの燃焼盤oの中央部に横軸周りの回転気化筒pを備え、気化筒pの内側に設ける燃料ノズル(図示せず)からの噴出燃料は燃焼火炎を受けて加熱する気化筒pによって気化され燃焼盤oから噴出しながら燃焼を継続する構成である。
【0016】
気化型バーナiは次のように装着される。基板qに対して断面矩形の支持筒rをもって送風筒sが支持されている。この基盤qには該支持筒rの左右に位置してイグナイタu用トランスv及び上記燃焼ノズルを接続する燃料ポンプwを装着し、該支持筒r前側には外気導入口x及び前面を導入口xに形成した案内ガイドyを設けている。zは配線部、Aは燃料供給管である。
【0017】
上記基板qの裏面側には上記外気導入口xに接続しかつ上記支持筒rに通じる送風ダクトBを設け、風調ファンCの回転により、上記導入口xからの外気を送風筒s内に供給すべく構成する。Dは風調ファンモータである。
【0018】
上記バーナiは、燃料ポンプwからの燃料を図外ノズルから噴出して回転気化筒pの内側壁面を伝って燃焼盤oに至り燃焼する。なお回転気化筒pは火炎の輻射熱で加熱され灯油燃料の気化を促進する。燃焼に必要な一次空気(燃焼用空気)は導入口xから吸引され送風筒s内部に供給されるが、燃焼用空気量は風調ファンDを連動する風調ファンモータDの回転に制御される。即ち必要な燃料供給量yの入力を受けると燃料ポンプwの駆動周波数fを指定出力し、併せて風調ファンモータDの回転数nを制御出力する構成とされる。
【0019】
制御部2は、外気温センサ4aによる外気温度Taに対して乾燥温度Tcとの温度差ΔTと対応する燃料供給量となるように燃料ポンプ5cを調節して必要な熱出力により加熱乾燥用の高温空気を乾燥部に送り込む。このとき、乾燥温度Tcは、所要の乾燥速度と対応して別途把握されている適正な上限温度Hおよび下限温度Lの範囲内とし、この定められた範囲の温度H,Lと外気温度Taとの温度差H―Ta,L―Taに応じて定められる熱出力の範囲でバーナを調節制御することにより、所望の乾燥処理品質を得ることができる。
【0020】
制御部2における具体的な制御処理手順は、図2のフローチャートに示すように、各種のスイッチとセンサからの入力(S1)に応じて乾燥温度、燃焼量上下限、水分測定等の乾燥処理条件を定める(S2)。次に、水分値測定(S3)を所定回数の繰返し(S4)の後、総平均及びばらつきを算出(S5)し、目標水分値になるまで(S6)測定休止(S7)を挟んで一連の処理を繰り返した後に、乾燥停止の処理(S8)を行う。
【0021】
上記乾燥処理におけるバーナ制御においては、図3の特性線図に示すように、外気温度Taを設定乾燥温度Tcに反映させ、その上限温度H1および下限温度L1の変化と対応する燃焼量上下限の範囲で設定乾燥温度Tcとの温度差H1―Ta,L1―Taに基づいてバーナ制御する。なお、上記上限温度H1および下限温度L1は穀物種類として籾の場合を示している。
【0022】
図3において、上限温度H1ライン、及び下限温度L1ラインは夫々の外気温度Taにおける上・下限範囲を示すものであり、これらを燃焼量に換算すると、例えば、
QH=KH(Tc―Ta)
QL=KL(Tc―Ta)
で表される。ここで、KH及びKLは上・下限夫々の係数であり、乾燥空気量、比熱、燃焼効率等を勘案しながら実験的に求められる。算出一例として図4のようになる。即ち図4籾(a)の例では、外気温度Taが10℃で上下限規制値は3.0リットル〜5.0リットル/時であり、20℃で2.0リットル〜4.0リットル/時、30℃で1.0リットル〜3.0リットル/時となる。乾燥機の仕様等で上記換算式の係数KH及びKLは適宜に変更設定されるものである。
【0023】
しかして、従来灯油1〜6リットル/時の範囲で燃焼可能に設けられていたバーナは、上記のQL及びQHの範囲で燃焼することとなる。つまり、外気温度Taが高くなるほど、加熱量は減少しうるものであるが、図3の実施例では、外気温度Taの上昇に従って、上限及び下限とも減少する関係に設定している。
【0024】
乾燥速度制御乾燥において、水分値の差値から算出される算出乾燥速度と予め設定した乾燥速度との比較によって遅い場合には設定乾燥温度Tcが高い側に変更され、この変更された設定乾燥温度と外気温度との差値に基づき燃焼信号が出力されるものとなる。この燃焼信号出力が、当該外気温度における上限又は下限を超える場合には、出力を制限して上限または下限値で停止されるようになっている。
【0025】
なお、上例では所謂乾燥速度制御における設定乾燥温度への移行について説明したが、低温乾燥であってもよく、その他の乾燥制御における方法でもよい。要するに、乾燥中における設定乾燥温度が外気温度によって予め設定した上限・下限から外れることのないように制御させる構成としている。
【0026】
また、籾のほかに各種の穀類の乾燥に乾燥機を共用する場合は、その種別に応じた乾燥温度の特性線図に基づく燃焼量上下限の範囲でバーナ制御することにより、穀物種別に応じた乾燥制御が可能となる。例えば、小麦は、籾の上限温度H1および下限温度L1より高温域の特性H2,L2、大豆は、低温域の特性H3,L3を使用する。
【0027】
この乾燥特性に基づく燃料供給量は、灯油1〜6毎時リットルの6段階で熱出力の調節範囲を有するバーナの例において、図4に示すように、籾(a)、小麦(b)、大豆(c)について、外気温度Taと乾燥温度Tcとの温度差H―Ta,L―Taに応じてそれぞれの上下限の調節幅で供給量を決定することができる。
【0028】
このように、外気温度Taに基づいてバーナへの燃料供給の上限量、下限量を設定することにより、バーナが正常燃焼可能な状況下においてバーナの組付け誤差等によって設定熱風温度Tcに達していることが検出できない場合であっても、むやみに燃料供給量を上げて熱風室内が過剰加熱状況となる事態を回避することができる。したがって、燃料供給量の規制により、異常状態を防止して乾燥穀物の品質をそれぞれ確保することができる。すなわち、遠赤外線発生装置を利用するものにおいては外気温度の高い場合に無理な加熱をしないよう上下限規制値を下げて運転でき、逆に低外気温度状態であるときは微少な加熱設定によるバーナの異常低温運転を防止して運転できることとなって、信頼性を向上する。
【0029】
また、穀物種類が変わり、例えば大豆を例にとると、隙間空間が籾の場合よりも大となるから、同じ設定の風量が作用していても、つつ抜け易い大豆の場合は、所定燃焼量を確保するため燃料増加信号を出力し加熱高温域での燃焼に陥り易いが、上記のように構成することによって過剰な高温域での燃焼を抑制できる。
上記の例では、外気温度の変化に伴い上下限量を設定変更しうる上、穀物種類によっても上下限量を変更させる形態としたが、外気温度の変化によらず、穀物種類のみによって上下限量を設定できる構成でもよい。
【0030】
次に、バーナの経時変化を反映した乾燥制御について説明する。バーナ熱出力の制御において、バーナの燃料供給量の上下限量をその稼動履歴情報によって変更し、その範囲内で穀粒の乾燥制御を行う。稼動履歴情報は、バーナの運転積算時間等のバーナの稼動量の情報である。
【0031】
その制御処理手順は、例えば、図5のフローチャートに示すように、乾燥処理条件設定(S2)に運転積算時間読み取り(S2a)を含め、また、乾燥停止の処理(S8)に運転時間積算(S8a)を含める。この運転積算時間に応じてバーナの燃料供給量の上下限量を変更する。この燃料供給量の上下限量は、図6の例のように、バーナ性能について別途把握されている経時変化と対応して燃焼量の上下限値を調節幅が狭くなるように設定する。
【0032】
燃焼機器の経年劣化は、給油経路の詰まり、ノズル噴出孔の拡大、燃焼盤の噴出口の拡大等の現象として現れ、一般に、図7のバーナのオンタイム特性図に示すように、燃料パイプの詰まりによって上限量が減少し、また、ノズル噴出口拡大により下限量が増加する。その結果、オンタイムと燃料供給量とがアンバランスとなり、燃焼異常を引き起すことから、バーナの当初の出力範囲と対応する上下限量H0,L0を変更し、稼動時間tの経過後の出力範囲の変化と対応して上下限量Ht,Ltを定めて燃料供給量を制限する。
【0033】
上下限量Ht,Ltとバーナの経時変化との関係を詳細に説明すると、予混合火炎を形成する灯油ガス化バーナの場合は、使用時間を追うごとに、灯油のガス化部の不純物等による汚れによりガス化能力が低下する。そのまま最大燃焼をすると、燃料が過剰供給となり、ガス化不良による未燃灯油が乾燥室に飛散することにより、穀粒品質不良や火災の危険性が増大するので、過剰供給を抑える必要から燃焼量上限値を低く設定する。この上限値の低下は、籾乾燥には殆ど支障がなく、一方、小麦乾燥の一部で10〜20%程度乾燥速度の減少となるものの、ガス化能力の低下による不都合を未然に防止することができる。
【0034】
また、さらに時間を重ねることによって不純物の付着は累積しなくなるが、バーナヘッドが熱で劣化して火炎孔面積が拡大することから、最低燃焼時に火炎の吹き消えや逆火の危険性が増大するので、最低燃焼の限界値を高く設定する必要がある。その結果、外気温の高い夏季の籾乾燥が一部制限を受けるものの、長期に亘り乾燥運転の安全性を確保することができる。
【0035】
上述のように、稼動経過に伴うバーナ出力の変化は、回転気化式バーナの場合は運転積算時間、燃焼量積算、燃焼空気供給量積算等、また、噴霧ガンチップの摩耗が寿命要素となるガンバーナの場合は燃焼量積算値等、バーナ構造に応じた稼動履歴情報を評価対象として乾燥制御に反映することにより、長期使用による部品劣化を伴う各種の形式のバーナについて、その実態性能変化に即した過不足のない燃料供給による安全な自動運転制御下で所要の乾燥速度を確保することができる。
【0036】
次に、ロータリ気化バーナの点火制御について説明する。
ロータリ気化バーナ10は、温水生成装置や暖房機あるいは穀粒等の乾燥装置において使用され、その構造は、図8の縦断面図に示すように、燃焼盤Fの中央部に図外モータに直結する回転軸Gを設け、この回転軸Gに設ける回転気化筒11の内周面に沿ってノズルHからの液体燃料を、燃焼盤F、燃焼筒Jによって形成される燃焼室K内に回転飛散させ、この燃焼室K内に設けられたイグナイタLにより噴霧拡散燃焼を発生させ、その燃焼気により気化筒11を加熱して液体燃料を気化させ、予混合気化燃焼に移行させるものである。このロータリ気化バーナは、比較的高出力の燃焼形式による熱源であるところから、屋外のような塵埃の多い環境下で長期に亘り使用され、その結果、バーナ内の塵埃、液体燃料の気化残渣、燃料供給手段内部の微細な汚れ等により、初期燃料供給量が減少して着火不良が発生する。
【0037】
その対応策として、ロータリ気化バーナ10の点火制御は、図9の入出力制御系統図に示すように、制御部21により燃料ポンプ22を駆動制御するべく構成し、かつ、バーナ稼働時間情報を積算し、その積算情報により噴霧燃焼を発生させる初期液体燃料供給量を変更する。例えば、図10に示すように、稼動積算時間に応じて初期燃料供給量を増加する。
【0038】
詳細に説明すれば、初期の噴霧拡散燃焼時の燃料供給量は、バーナの構成によるところが大きく、上記例では、予混合燃焼時の最大燃焼量が5.0毎時リットルの例である。最大燃焼量を初期供給したのでは、バーナ構成にもよるが、特に縦型構成のものは、供給過多による燃焼室の濡れすぎにより気化燃焼への移行がスムーズに行かず、着火検出に時間をとられることがある。したがって、初期燃焼量は低減して、例えば、最大燃焼量の略60%程度で噴霧拡散燃焼を実施することで最適な気化燃焼への移行が確保されることが多い。
【0039】
しかし、長期にわたり使用することで、前記理由により、10%の燃料ダウンとはいかないまでも、噴霧に供される燃料は低減するので、運転積算時間により5%から10%程度の供給量増加をするべく、燃料供給量制御信号を10%から20%増加して運転をする。
【0040】
これにより、従来では、バーナ部のオーバーホールや部品交換をしていたのであるが、ノーメンテナンスで長期にわたり運転できるようになった。また、JIS1号灯油以外の外国産灯油等では、分留点(蒸発温度)が高く、タール分の気化筒内付着発生量が多く、早期にバーナ部のオーバーホールや部品交換をしていたが、本案により長期運転が可能となった。
【0041】
以上に述べたように、上記構成の点火制御は、初期燃料供給量を自動的に規定する供給量制御信号をバーナの稼動情報により変更することにより、長期に使用した場合に、初期燃料供給量を増加させる方向に制御することにより、着火ミスのない信頼性の高い自動運転制御を長期に亘り確保することができる。
【0042】
次に、回転式気化バーナの燃焼気案内路について説明する。回転式気化バーナを穀粒乾燥装置に使用する場合、従来のものは、バーナ外周の乾燥用空気流により、火炎が気化筒に対し不適正な位置で過熱状態になり、適正な燃焼状態とならないので、高価な耐熱材を使用して対策をしても火炎温度が高温度のため、変形や損傷によって長期の機能維持が困難であった。また、適正な位置を確保するべく構成して良好な燃焼を可能としても、乾燥装置をコンパクト化すると気化筒が過熱して適正な燃焼が確保できないという問題があった。
【0043】
そこで、図11の斜視図に示す井桁状に、また、図12の斜視図に示すリング状に、バーナ下流の案内空気路の断面を区画するように調整板31,32を構成し、火炎下流側に乾燥用空気の気流方向を調整することにより、気化筒に対する火炎位置を適正化することができるとともに、コンパクトにレイアウト構成した場合でも適正燃焼を達成することができる。
【0044】
また、図13に示す穀粒乾燥機の乾燥室41に架設した赤外線放射体41aの燃焼気案内路については、貯留室42から流下する穀粒を赤外線加熱して再び貯留するものであって、その加熱量の大小により、貯留した穀流量の大小に関わらず、略一定の乾燥速度を得ることができる穀粒乾燥装置において、加熱量の大小を変更する加熱手段に回転式気化バーナを用い、バーナから発生する熱量を外気空気と混合希釈するべく、バーナ外周に外気空気を案内して穀粒に供給する案内空気路を設け、この空気路を赤外放射体とし、この赤外線放射体内のバーナ火炎の下流側に案内空気流方向を調整する調整板を設ける。例えば、図14の断面図のように、下流に広がるリング状の調整板44を設けることにより、更に加えてその中心位置に下流に広がる円錐状の調整板45を設ける。
【0045】
回転式気化バーナを穀粒乾燥装置に利用する場合、従来のものは、前記同様に、バーナ外周の乾燥用空気流により、火炎が気化筒に対し不適正な位置で過熱状態になり、適正な燃焼状態とならないので、高価な耐熱材を使用して対策をしても火炎温度が高温度のため、変形や損傷によって長期の機能維持が困難であった。また、適正な位置を確保するべく構成して良好な燃焼を可能としても、乾燥装置のコンパクト化すると気化筒が過熱して適正な燃焼が確保できないという問題があった。
【0046】
しかし、上記のように、特に赤外線放射体過熱手段に回転式気化バーナを用いた場合において、放射体内の略中心位置にバーナ中心を置くことで、火炎は気流の影響を受けてバーナ中心に集まり、気化筒加熱を促進し、さらに赤外線放射を気化筒が受けることで気化筒温度上昇が著しいことから、加熱による燃料油の蒸発不良からくる赤火燃焼によって適正な青炎燃焼にならず、異常燃焼さらには放射体過熱異常を起こすという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】バーナ制御装置による入出力構成の系統図である。
【図2】バーナを調節制御する制御処理手順のフローチャートである。
【図3】制御処理手順のフローチャートである。
【図4】籾(a)、小麦(b)、大豆(c)の燃料供給量の上下限量の例である。
【図5】バーナの経時変化を反映した乾燥制御のフローチャートである。
【図6】運転積算時間による燃料供給量の上下限量の例である。
【図7】バーナのオンタイム特性図である。
【図8】ロータリ気化バーナの縦断面図である。
【図9】点火制御の入出力制御系統図である。
【図10】稼動積算時間による初期燃料供給量の例である。
【図11】井桁状の調整板の斜視図である。
【図12】リング状の調整板の斜視図である。
【図13】赤外線放射体を備える穀粒乾燥機の内部構成図である。
【図14】赤外線放射体の断面図である。
【図15】穀物乾燥機の正面の断面図である。
【図16】穀物乾燥機の側面の断面図である。
【図17】バーナの側面図である。
【図18】バーナの平面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 制御部
4a 外気温センサ
10 ロータリ気化バーナ
11 回転気化筒
21 制御部
22 燃料ポンプ
H,L 上下限温度
H0,L0 上下限量
H1,L1 籾上下限温度
H2,L2 小麦上下限温度
H3,L3 大豆上下限温度
Ht,Lt 上下限量
i バーナ
j 流下部(流下通路)
t 稼動時間
Ta 外気温度
Tc 乾燥温度(設定熱風温度)
ΔT 温度差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、外気温度の高低毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする穀粒乾燥機のバーナ制御装置。
【請求項2】
貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、穀物種別毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする穀粒乾燥機のバーナ制御装置。
【請求項3】
貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、バーナの稼動履歴により予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする穀粒乾燥機のバーナ制御装置。
【請求項1】
貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、外気温度の高低毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする穀粒乾燥機のバーナ制御装置。
【請求項2】
貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、穀物種別毎に予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする穀粒乾燥機のバーナ制御装置。
【請求項3】
貯留室から穀粒流下通路を流下する穀粒にバーナで加熱した乾燥用熱風を流通させて乾燥し再び貯留室に還元して調質する穀粒乾燥機において、上記乾燥用熱風の温度をバーナの加熱量の大小に基づいて変更できるよう構成し、穀粒を所定の乾燥速度で乾燥すべく上記バーナの加熱量を大小に変更制御する制御部を備え、上記制御部は、バーナの稼動履歴により予め設定された上下限の範囲でバーナ加熱量を変更制御することを特徴とする穀粒乾燥機のバーナ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−97949(P2006−97949A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283789(P2004−283789)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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