説明

積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト

【課題】 本発明は、積層セラミック電子部品を製造するために用いられる積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストを提供する。
【解決手段】 本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、バインダー樹脂、有機溶剤及び無機粉末を含有する積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストであって、上記有機溶剤は、25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度が110〜185℃である一方、上記バインダー樹脂が、繰返し単位(1)と、繰返し単位(2)とからなり、繰返し単位(1)のモル比率が0.5〜0.99であり且つ繰返し単位(2)のモル比率が0.01〜0.5であると共に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された重量平均分子量が10000〜1000000である高分子であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品を製造するために用いられる積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストに関し、詳細には、熱分解性に優れ且つ高い塗工性及び印刷性を有していると共にセラミックグリーンシート上に塗布した際にシートアタックの少ない積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野において、導電粉末、セラミック粉末、ガラス粉末などの無機粉末をバインダー樹脂中に分散させてなるペーストをドクターブレード法などを用いてポリエチレンテレフタレートなどからなるキャリアフィルム上に塗布、乾燥させた上で焼成することによって、精密な導電膜、セラミック膜、ガラス膜を製造することが行われている。そして、積層セラミックコンデンサなどの積層型の電子部品は、一般的に下記の要領で作製される。
【0003】
先ず、ブチラール樹脂や(メタ)アクリル酸エステル系樹脂などのバインダー樹脂、セラミック原料粉末、可塑剤及び分散剤などを均一に混合することによって得られたセラミックスラリーを、ポリエチレンテレフタレートフィルムやステンレス板などの支持板の離型処理面上に流延成形した後、支持板から剥離することによってセラミックグリーンシートを製造する。
【0004】
次に、複数枚のセラミックグリーンシートの夫々に、パラジウムやニッケルなどの導電粉末を分散させてなる導電ペーストをスクリーン印刷などによって塗布した上で、複数枚のセラミックグリーンシートを互いに重ね合わせて加熱圧着して積層体を製造する。そして、この積層体に脱脂処理を施した上で焼成してセラミック焼成物を製造し、このセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結することによって積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0005】
積層セラミックコンデンサの製造工程において、上述のように、導電ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層しているが、この際、セラミックグリーンシート上には、導電ペーストを塗布した部分(導電ペースト層)と、導電ペーストを塗布していない部分との間に段差が生じていることから、セラミックグリーンシートを積層する際に上記段差が原因となって、セラミックグリーンシートと導電ペースト層とが層間剥離する、所謂、デラミネーションを生じ、或いは、積層セラミックコンデンサの端部において誘電層や導電層が変形するといった問題点を生じていた。特に、近年では、積層セラミックコンデンサに高容量化が求められ、更なる多層化、薄膜化が求められていることから、導電ペーストの塗布によって生じるセラミックグリーンシート表面の段差のおよぼす影響が顕著に表れる虞れがあった。
【0006】
そこで、特許文献1には、セラミックグリーンシート上における導電ペーストが塗布されていない部分にセラミックペーストをスクリーン印刷などを用いて塗布することによってセラミックグリーンシート上の段差を解消する方法が開示されている。
【0007】
そして、導電ペーストやセラミックペーストに用いられるバインダー樹脂としては、塗工性に優れており、スクリーン印刷などの塗工方法に好適に適用して精密な形状の塗膜を容易に形成することができることから、エチルセルロース樹脂が多く用いられている。
【0008】
ところが、エチルセルロース樹脂は、熱分解性に劣ることから脱脂処理を施しても、上記積層体の焼成後にカーボン成分が残留し、得られる積層セラミックコンデンサの電気特性が低下するといった問題点を生じていた。
【0009】
又、上述したように、積層セラミックコンデンサの高容量化が求められていることから、セラミックグリーンシートも薄膜化されており、このようなセラミックグリーンシートに導電ペーストをスクリーン印刷により塗布すると、導電ペーストがセラミックグリーンシートを溶解する、所謂、シートアタックを生じ、その結果、焼成後に、誘電層と導電層とが層間剥離する、所謂、デラミネーションや、ショートが生じるといった問題点を生じていた。
【0010】
【特許文献1】特開2002−280250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、積層セラミック電子部品を製造するために用いられ、熱分解性に優れ且つ高い塗工性及び印刷性を有していると共にセラミックグリーンシート上に塗布した際にシートアタックが少なくて電気特性に優れた積層セラミック電子部品を得ることができる積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、バインダー樹脂、有機溶剤及び無機粉末を含有する積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストであって、上記有機溶剤は、25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度が110〜185℃である一方、上記バインダー樹脂が、式1で表される繰返し単位(1)と、式2で表される繰返し単位(2)とからなり、繰返し単位(1)のモル比率が0.5〜0.99であり且つ繰返し単位(2)のモル比率が0.01〜0.5であると共に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された重量平均分子量が10000〜1000000である高分子であることを特徴とする。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

但し、Aは、HO-A-OHが少なくとも両末端に水酸基を有し且つ数平均分子量が400〜100000のポリエチレングリコール(化合物A)である2価基であり、Bは、OCN-B-NCOが鎖状脂肪族ジイソシアナート又は環状脂肪族ジイソシアナート(化合物B)である2価基であり、Dが、HO-D-OHが式3、式4又は式5で表される櫛形疎水性ジオール(化合物D)であることを特徴とする積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。
【0015】
【化3】

(但し、R1は、炭素数が1〜20の炭化水素基である。R2及びR3は、炭素数が4〜21の炭化水素基である。炭化水素基R1、R2及びR3中の水素の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素又は沃素で置換されていてもよく、R2とR3とは同一であっても異なっていてもよい。YおよびY’は、水素、メチル基又はCH2Cl基であり、YとY’とは同一であっても異なっていてもよい。Z及びZ’は酸素、硫黄又はCH2基であり、ZとZ’とは同一であっても異なっていてもよい。nは、Zが酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄又はCH2基の場合は0であり、nとn’は同じでも異なっていてもよい)
【0016】
【化4】

(但し、R4は、炭素数が1〜20の炭化水素基である。R5及びR6は、炭素数が4〜21の炭化水素基である。R4、R5及びR6中の水素の一部又は全部はフッ素、塩素、臭素又は沃素で置換されていてもよく、R5とR6とは同一であっても異なっていてもよい。Y、Y’及びY”は、水素、メチル基又はCH2Cl基であり、YとY’は同一であっても異なっていてもよい。R7は炭素数が2〜4のアルキレン基であり、kは0〜15の整数である。また、nは、Zが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄又はCH2基の場合は0である。n’は、Z’が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄又はCH2基の場合は0であり、nとn’は同一であっても異なっていてもよい)
【0017】
【化5】

(但し、R8及びR9は、R8とR9の炭素数の合計が2〜20の炭化水素基である。R10及びR11は、炭素数が4〜21の炭化水素基である。R8、R9、R10及びR11の水素の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素又は沃素で置換されていてもよい。R8とR9とは同一であっても異なっていてもよい。R10とR11とは同一であっても異なっていてもよい。R12は、炭素数が2〜7のアルキレン基である。またYおよびY’は、水素、メチル基又はCH2Cl基であり、YとY’とは、同一であっても異なっていてもよい。Z及びZ’は、酸素、硫黄、又はCH2基であり、ZとZ’とは同一であっても異なっていてもよい。nは、Zが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが,硫黄又はCH2基の場合は0である。n’は、Z’が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄又はCH2基の場合は0であり、nとn’とは同一であっても異なっていてもよい)
【0018】
上記積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストを構成しているバインダー樹脂は、ポリエチレングリコールと櫛型疎水性ジオールとをポリイソシアナートで連結して得られる櫛型疎水基を有するポリウレタンである。
【0019】
本発明で用いられるポリエチレングリコール(化合物A)の数平均分子量は、400〜100000が好ましく、1000〜20000がより好ましい。これは、ポリエチレングリコールの数平均分子量が400未満では粘着性が低く無機粉体の分散性に劣る製品が得られ易く、バインダーに用いるには不適当である一方、ポリエチレングリコール(化合物A)の数平均分子量が100000より大きくなると溶解性の低い製品が得られ易くなるからである。
【0020】
又、上記化合物Bとしては、製品の溶解性に優れ且つ脱脂時の残炭率が低く、バインダー樹脂として優れていることから、鎖状脂肪族ジイソシアナート又は環状脂肪族ジイソシアナートが用いられ、鎖状脂肪族ジイソシアナートが好ましい。そして、化合物Bの全炭素数は、大きいと、ポリウレタンの溶解性が低下し易いので、3〜18が好ましい。
【0021】
鎖状脂肪族ジイソシアナートは、NCO基の間を直鎖又は分岐鎖のアルキレン基で繋いだ構造をもつジイソシアナート化合物であり、具体的には、メチレンジイソシアナート、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、1−メチルエチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ペンタメチレンジイソシアナート、2−メチルブタン−1,4−ジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアナート、2−2’−ジメチルペンタン−1,5−ジイソシアナート、リジンジイソシアナートメチルエステル(LDI)、オクタメチレンジイソシアナート、2,5−ジメチルヘキサン−1,6−ジイソシアナート、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジイソシアナート、ノナメチルジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、トリデカメチレンジイソシアナート、テトラデカメチレンジイソシアナート、ペンタデカメチレンジイソシアナート、ヘキサデカメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートなどが挙げられ、ヘキサメチレンジイソシアナートが好ましい。
【0022】
又、環状脂肪族ジイソシアナートは、NCO基の間を繋ぐアルキレン基が環状構造をもつジイソシアナート化合物であり、具体例としては、シクロヘキサン−1,2−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアナート、1−メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアナート、1−メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアナート、1−エチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアナート、4,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジイソシアナート、1,2−ジメチルシクロヘキサン−ω,ω’−ジイソシアナート、1,4−ジメチルシクロヘキサン−ω,ω’−ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメチルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4’− ジイソシアナート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4’− ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−メチレン−ビス(イソシアナトシクロヘキサン)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアナート)(IPCI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、水素化トリレンジイソシアナート(HTDI)、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(HMDI)、水素化キシリレンジイソシアナート(HXDI)、ノルボルネンジイソシアナート(NBDI)などが挙げられ、イソホロンジイソシアナート、水素化トリレンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアナートが好ましい。
【0023】
本発明で用いられる櫛型疎水性ジオール(化合物D)は、上記式3、式4又は式5で表され、2級水酸基を分子内に2個有し且つ疎水鎖を分子内に3本以上有する疎水性のジオール類である。
【0024】
この疎水性ジオール類は、1級アミン類に各種オキシラン化合物(オキシラン環を有する化合物)を付加させることにより得ることができる。アミン類のアミノ基とオキシラン化合物の付加反応は活性が高く、無触媒でも十分反応が進行する。
【0025】
具体的に説明すると、1級アミン類としては、1級の鎖状又は環状アルキルアミン類、1級の鎖状又は環状アルケニルアミン類、1級のアラルキルアミン類、1級のジアルキルアミノアルキルアミン類、1級のN−ベンジルアミノピロリジン類、1級のN―アミノアルキルモルホリン類、1級のアリールアミン類、1級のアミノピリジン類、1級のアミノアルキルピリジン類、1級のアルキルオキシアルキルアミン類、1級アルケニルオキシアルキルアミン類、1級のアリールオキシアルキルアミン類、1級のアラルキルオキシアルキルアミン類などが挙げられる。
【0026】
先ず、1級鎖状アルキルアミン類の例としては、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、ter−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、2−アミノヘプタン、n−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−アミノオクタン、2−エチルヘキシルアミン、2−アミノ−6−メチルヘプタン、ノニルアミン、イソノニルアミン、1,4−ジメチルヘプチルアミン、3−アミノノナン、2−アミノ−6−エチルヘプタン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、2−アミノウンデカン、6−アミノウンデカン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、2−アミノトリデカン、n−テトラデシルアミン、2−アミノテトラデカン、n−ペンタデシルアミン、8−アミノペンタデカン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、2−アミノノナデカンなどが挙げられる。
【0027】
又、1級鎖状アルケニルアミン類の例としては、例えば、アリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。1級環状アルキルアミン類の例としては、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、シクロオクチルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、4−ter−ブチルシクロヘキシルアミン、1−シクロペンチル−2−アミノプロパン、1−アミノインダン、シクロドデシルアミン、o−アミノビシクロヘキシル、3−アミノスピロ[5,5]ウンデカン、ボルニルアミン、1−アダマンタンアミン、2−アミノノルボルナン、1−アダマンタンメチルアミンなどが挙げられる。
【0028】
そして、1級環状アルケニルアミン類としては、例えば、ジヒドロアビエチルアミン、2−(1−シクロヘキセニル)エチルアミンなどが挙げられる。1級のアラルキルアミン類の例としては、ベンジルアミン、フェネチルアミン、p−メトキシフェネチルアミン、α―フェニルエチルアミン、1−メトキシー3−フェニルプロピルアミン、N−アミノプロピルアニリンなどが揚げられる。
【0029】
更に、1級ジアルキルアミノアルキルアミン類の例としては、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N−ジメチルー1,3−プロパンジアミン、ジエチルアミノプロピルジアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1−ジメチルアミノ−2−プロピルアミン、N2,N2−ジメチル−1,2−プロパンジアミン、4−ジメチルアミノブチルアミン、1−ジメチルアミノエチル−2−アミノプロパン、N,N−ジメチルネオペンタンジアミン、1−ジエチルアミノ−2−プロピルアミン、6−ジメチルアミノヘキシルアミン、2−ジ−n−プロピルアミノエチルアミン、N−エチルーN−ブチルエチレンジアミン、7−ジエチルアミノヘプチルアミン、N1,N1−ジ−n−プロピル−1,2−プロパンジアミン、N’,N’−ジ−n−プロパンジアミン、5−ジエチルアミノペンチルアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、N,N−ジ−n−ブチルエチレンジアミン、N、N−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、2−ジイソブチルアミノエチルアミン、4−ジイソプロピルアミン、7−ジエチルアミノヘプチルアミン、3−(ジ−n−ブチルアミノ)プロピルアミン、N,N−ジイソブチル−1,6−ヘキサンジアミン、3−ジオクチルアミノプロピルアミン、3−ジデシルアミノプロピルアミン1−(2−アミノエチル)ピペリジン、3−ピペリジノプロピルアミン、4−ピロリジノブチルアミン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、3−アミノトロパン、5−ピロリジノアミルアミン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、1−(3−アミノプロピル)−2−ピペコリン、1−アザ−ビシクロ[2,2,2]オクトー3−イルアミン、1−ベンジル−3−アミノピロリジン、N1−エチル−N1−フェニルプロパン−1,3−ジアミンなどが挙げられる。
【0030】
又、1級のアリールアミン類の例としては、アニリン、2−クロロアニリン、2,3−ジクロロアニリン、2,4−ジブロモアニリン、2,4,6−トリブロモアニリン、o−トルイジン、2−クロロ−4−メチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,4−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2−エチルアニリン、2−イソプロピルアニリン、4−tert−ブチルアニリン、p−デシルアニリン、p−ドデシルアニリン、p−テトラデシルアニリン、4−シクロヘキシルアニリン、2−アミノビフェニル、1−ナフチルアミン、5−アミノインダン、1−アミノナフタセン、6−アミノクリセン、1−アミノピレンなどが挙げられる。
【0031】
そして、1級のアミノピリジン類の例としては、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、2−アミノ−4−エチルピリジン、2−アミノ−4−プロピルピリジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリジン、2−アミノ−3−ニトロピリジンなどが挙げられる。
【0032】
更に、1級のアミノアルキルピリジン類の例としては、2−アミノメチルピリジン、3−アミノメチルピリジン、4−アミノメチルピリジン、3−アミノメチル−6−クロロピリジンなどが挙げられる。
【0033】
又、アルキルオキシアルキルアミン類としては、2−アルコキシエチルアミン類、3−アルコキシプロピルアミン類、4−アルコキシブチルアミン類、アルケニルオキシアルキルアミン類、アラルキルオキシアルキルアミン類、アリールオキシアルキルアミン類、アルコール−アルキレンオキシド負荷物のアミノアルキルエーテル類、フェノール/アルキル置換フェノール−アルキレンオキシド負荷物のアミノアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0034】
そして、2−アルコキシエチルアミン類としては、例えば、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−プロポキシエチルアミン、2−イソプロポキシエチルアミン、2−ブトキシエチルアミン、2−(イソブトキシ)エチルアミン、2−(ter−ブトキシ)エチルアミン、2−ペンチルオキシエチルアミン、2−ヘキシルオキシエチルアミン、2−ヘプチルオキシエチルアミン、2−オクチルオキシエチルアミン、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エチルアミン、2−(α―ブチルオクチルオキシ)エチルアミン、2−デシルオキシエチルアミン、2−ドデシルオキシエチルアミン、2−テトラデシルオキシエチルアミン、2−ペンタデシルオキシエチルアミン、2−ヘキサデシルオキシエチルアミン2−ヘプタデシルオキシエチルアミン、2−オクタデシルオキシエチルアミン、2−ノナデシルエチルアミン、2−エイコシルエチルアミンなどが挙げられる。
【0035】
又、3−アルコキシプロピルアミン類としては、例えば、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(イソブトキシ)プロピルアミン、3−(ter−ブトキシ)プロピルアミン、3−ペンチルオキシプロピルアミン、3−ヘキシルオキシプロピルアミン、3−ヘプチルオキシプロピルアミン、3−オクチルオキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−(α―ブチルオクチルオキシ)プロピルアミン、3−デシルオキシプロピルアミン、3−ドデシルオキシプロピルアミン、3−、3−テトラデシルオキシプロピルアミン、3−ペンタデシルオキシプロピルアミン、3−ヘキサデシルオキシプロピルアミン、3−ヘプタデシルオキシプロピルアミン、3−オクタデシルオキシプロピルアミン、3−ノナデシルプロピルアミン、3−エイコシルプロピルアミンなどが挙げられる。
【0036】
更に、4−アルコキシブチルアミン類としては、4−メトキシブチルアミン、4−エトキシブチルアミン、4−プロポキシブチルアミン、4−イソプロポキシブチルアミン、4−ブトキシブチルアミン、4−(イソブトキシ)ブチルアミン、4−(ter−ブトキシ)ブチルアミン、4−ペンチルオキシブチルアミン、4−ヘキシルオキシブチルアミン、4−ヘプチルオキシブチルアミン、4−オクチルオキシブチルアミン、4−(2−エチルヘキシルオキシ)ブチルアミン、4−(α−ブチルオクチルオキシ)ブチルアミン、4−デシルオキシブチルアミン、4−ドデシルオキシブチルアミン、4−テトラデシルオキシブチルアミン、4−ペンタデシルオキシブチルアミン、4−ヘキサデシルオキシブチルアミン、4−ヘプタデシルオキシブチルアミン、4−オクタデシルオキシブチルアミン、4−ノナデシルブチルアミン、4−エイコシルブチルアミン、4−(2,4−ジ−ter−アミルフェノキシ)ブチルアミンなどが挙げられる。
【0037】
そして、1級のアルケニルオキシアルキルアミン類としては、例えば、2−アリルオキシエチルアミン、3−オレイルオキシプロピルアミンなどが例として挙げられる。アラルキルオキシアルキルアミン類の例としては、2−ベンジルオキシエチルアミン、3−フェネチルオキシプロピルアミンなどが挙げられる。アリールオキシアルキルアミン類としては、2−フェニルオキシエチルアミン、3−(p−ノニルフェニルオキシ)プロピルアミンなどが例として挙げられる。
【0038】
その他のアミン類としてはアルコール類やフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物など)のアミノアルカノールエーテル類が挙げられる。アルコール−エチレンオキサイド付加物のアミノアルカノールエーテルとしては、例えば、2−[2−(ドデシルオキシ)エトキシ]エチルアミン、3,6,9−トリオキサペンタデシルアミンなどが挙げられる。
【0039】
同様に、アルコール類やフェノール類のプロピレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物の各々のアミノアルカノールエーテル類を用いることも可能である。付加数kは1〜15程度が適当である。付加数が15を超えるとベタツキ易く、印刷時に糸引きが生じる。
【0040】
その他の一級アミン類としては、2−アミノメチルピラジン、2−アミノピラジン、スルファレンなどのピラジン類などが挙げられる。
【0041】
又、オキシラン化合物としては、各種グリシジルエーテル類や1,2−エポシキアルカン類、1,2−エポキシアルケン類、グリシジルスルフィド類などを用いることが可能である。
【0042】
先ず、グリシジルエーテル類としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル類、アルケニルグリシジルエーテル類、アラルキルグリシジルエーテル類、アリールグリシジルエーテル類などを挙げることができる。
【0043】
そして、アルキルグリシジルエーテル類としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、se−ブチルグリシジルエーテル、ter−ブチルグリシジルエーテル、グリシジルペンチルエーテル、グリシジルヘキシルエーテル、グリシジルオクチルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、グリシジルノニルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、グリシジルラウリルエーテル、グリシジルトリデシルエーテル、グリシジルテトラデシルエーテル、グリシジルペンタデシルエーテル、グリシジルヘキサデシルエーテル、グリシジルステアリルエーテル、3−(2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(3−パーフルオロオクチル−2−イオドプロポキシ)−1,2−エポキシプロパンなどが挙げられる。
【0044】
又、アルケニルグリシジルエーテル類としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、オレイルグリシジルエーテルなどが挙げられる。アラルキルグリシジルエーテル類としては、例えば、ベンジルグリシジルエーテル、フェネチルグリシジルエーテルなどが挙げられる。アリールグリシジルエーテル類としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、4−ter―ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−エチルフェニルグリシジルエーテル、4−エチルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジル−4−ノニルフェニルエーテル、グリシジル−3−(ペンタデカジエニル)フェニルエーテル、2−ビスフェニルグリシジルエーテル、α―ナフチルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0045】
その他のグリシジルエーテル類としては、アルコール類やフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物など)のグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0046】
エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルとしては、例えば、2−エチルヘキシルアルコール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、ラウリルアルコール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル、4−ter―ブチルフェノール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルやノニルフェノール−エチレンオキサイド付加物のグリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0047】
同様に、アルコール類やフェノール類のプロピレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド付加物、エピクロロヒドリン付加物の各々のグリシジルエーテル類を用いることも可能である。
【0048】
工業薬品のグリシジルエーテル類には、通常はエピクロロヒドリン付加物のグリシジルエーテル類が副生成物として含まれているが、そのような純度の低い原料も用いることが出来る。付加数nは1〜15程度が適当である。付加数が15を超えるとポリウレタンの溶液粘度が低下し易い。
【0049】
又、1,2−エポキシアルカン類や1,2−エポキシアルケン類の例としては、例えば、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2−エポキシ−9−デセンなどが挙げられる。
【0050】
その他のオキシラン化合物としては、2−エチルヘキシルグリシジルスルフィド、デシルグリシジルスルフィドなどのアルキルグリシジルチオエーテル(アルキルグリシジルスルフィド)類や、p−ノニルフェニルグリシジルスルフィドなどのアリールグリシジルチオエーテル(アリールグリシジルスルフィド)類が挙げられる。
【0051】
上記のアミン類とオキシラン化合物類とを、アミン類1分子にオキシラン化合物2分子の割合で反応させることにより化合物Dを得ることができ、式6に反応式を表す。
【0052】
【化6】

(但し、R、R、Rは式3〜5の各置換基に対応する。)
【0053】
反応は、オキシラン化合物として1,2−エポキシアルカン類、1,2−エポシキアルケン類、グリシジルスルフィド類を用いた場合よりも、グリシジルエーテル類を用いた場合の方が容易である。グリシジルエーテル類とアミン類との反応性が高いためと思われる。
【0054】
化合物Dは、分子内に3〜4本の疎水鎖(式3中のR1、R2及びR3、式4中のR4、R5及びR6、式5中のR8、R9、R10及びR11)を有するが、これらの疎水鎖が互いに近接していることにより、ポリウレタンに適度な疎水性を付与する効果がある。バインダーに用いたときにペーストに適度な可塑性、粘結性を与えるのはこの適度な疎水性であると推察される。各疎水鎖の炭素数はポリウレタンに適当な疎水性を付与しうる長さが必要である。
【0055】
アミン類の疎水鎖の炭素数は1以上20以下が好ましい。置換基R1又はR4の炭素数が20を超えるアミン類を用いるとポリウレタンの溶解性が低下する。同様に、置換基R8、R9の炭素数の合計が20を超えるアミン類を用いるとポリウレタンの溶解性が低下する。
【0056】
グリシジルエーテル類の疎水鎖(式3中のR2及びR3、式4中のR5及びR6、式5中のR10及びR11)の炭素数は4〜21に限定される。炭素数が4未満のグリシジルエーテルを用いると、ポリウレタンの溶解性が低下する。より好ましくは炭素数が4〜18の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を疎水基として有するアルキルグリシジルエーテル類、又は、炭素数が6〜18の芳香族若しくはアルキル置換芳香族を疎水基として有するアリールグリシジルエーテル類である。
【0057】
同様の理由により、1,2−エポキシアルカン、1,2−エポキシアルケン、アルキルグリシジルチオエーテル、アリールグリシジルチオエーテルの疎水基(式3中のR2及びR3、式4中のR5及びR6、式5中のR10及びR11)の炭素数は4〜21に限定される。
【0058】
上記バインダー樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよく、更に、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂などのバインダー樹脂として汎用されている合成樹脂が混合されていてもよい。
【0059】
次に、櫛形疎水性ジオールの製造方法を説明する。なお、本発明に用いられる櫛形疎水性ジオールの合成方法はこの例に限定されるものではない。
【0060】
攪拌装置、原料導入機構及び温度制御機構を有する反応容器に、原料のアミン類とオキシラン化合物を供給して所定の反応温度にて撹拌しながら反応させる。反応は無溶媒で行うことができるが、ジメチルホルムアミド(DMF)などの一般的な溶媒を用いてもよい。反応容器への原料の供給は、アミン類とオキシラン化合物とを一括して反応容器に供給してもよいし、アミン類又はオキシラン化合物のうちの何れか一方を反応容器に供給した上で、他方を連続的に或いは段階的に反応容器を供給してもよい。
【0061】
反応温度は、室温〜160℃程度、より好ましくは60〜120℃である。反応時間は、反応温度等にもよるが、0.5〜10時間が好ましい。又、常法によりOH価を求めることができる。
【0062】
櫛形疎水基を有する可溶性ポリウレタンは、式7に表すように、ポリエチレングリコール(化合物A)及び櫛状疎水性ジオール(化合物D)の2個の水酸基と、ジイソシアナート(化合物B)の2個のNCO基の反応により合成される。繰り返し単位(1)のモル比率が(1−x)で且つ繰り返し単位(2)のモル比率がxである可溶性ポリウレタンは、化合物Aと化合物Dのモル比率が(1−x):xの比率で反応させることにより得られる。
【0063】
【化7】

【0064】
以下に可溶性ポリウレタンの製造方法を例を挙げて説明するが、本発明は以下の製造方法に限定されるものではない。攪拌装置、原料導入機構及び温度制御機構を有する反応容器内を不活性ガスで置換した後、ポリエチレングリコールを必要に応じて溶媒と共に反応容器に供給する。
【0065】
反応容器を設定された反応温度に制御しつつ触媒を加えた上で、容器内を攪拌しつつジイソシアナート化合物及び櫛形疎水性ジオールを反応容器へ供給する。なお、ジイソシアナート及び櫛形疎水性ジオールの反応容器への供給方法は特に限定するものではなく、連続的に供給しても断続的に供給してもよい。
【0066】
又、ジイソシアナートと櫛形疎水性ジオールは、同時に反応容器内に供給しても、ジイソシアナート化合物の供給後に櫛形疎水性ジオールを供給しても、櫛形疎水性ジオールの供給後にジイソシアナート化合物を供給してもよい。
【0067】
触媒は必ずしも反応前にポリエチレングリコールに添加する必要はなく、ポリエチレングリコールにジイソシアナートや櫛形疎水性ジオールを加えた後に触媒を加え、反応を開始することも可能である。又、ジイソシアナートや櫛形疎水性ジオールに予め触媒を添加しておき、これらをポリエチレングリコールに加え反応させてもよい。
【0068】
反応に用いられる触媒は特に限定するものではなく、有機金属化合物、金属塩、3級アミン、その他の塩基触媒や酸触媒などの、一般にイソシアナート類とポリオール類の反応に用いられる公知の触媒を用いることができる。このような触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDLと略す)、ジブチル錫ジ(ドデシルチオラート)、第一錫オクタノエート、フェニル水銀アセテート、亜鉛オクトエート、鉛オクトエート、亜鉛ナフテナート、鉛ナフテナート、トリエチルアミン(TEA)、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、N−エチルモルホリン(NEM)、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、N,N‘−ジメチル−1,4−ジアザシクロヘキサン(DMP)などが挙げられる。
【0069】
反応に用いられる触媒の量は、反応温度や触媒の種類によっても異なり、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール1モル当たり0.0001〜0.1モルが好ましく、0.001〜0.1モルがより好ましい。
【0070】
反応は無溶媒で行うこともできるが、生成物の溶融粘度を下げるために溶媒を用いて反応させることもできる。このような溶媒としては、例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクレンなどのハロゲン系溶剤や、キシレン、トルエン、ベンゼンなどの芳香族系溶剤や、デカン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタンなどの飽和炭化水素系溶剤や、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤や、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトンなどのケトン系溶剤や、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤などの活性水素を持たない溶剤が有効に用いられる。なお、溶媒を用いないことは、脱溶剤の工程が不用となるので製造コストの点で有利であると共に、環境汚染の恐れが少ないので好ましい。
【0071】
反応に用いられるジイソシアナートの量は、ポリエチレングリコールと櫛形疎水性ジオールの合計1モルに対して、ジイソシアナート化合物のモル数(NCO/OH)が0.7〜1.3モルであることが好ましく、0.8〜1.2モルであることがより好ましい。これは、ジイソシアナート化合物のモル数が0.7未満或いは1.3を超えると、生成物の平均分子量が小さく、バインダーとしての能力が不充分となることがあるからである。
【0072】
但し、ポリエチレングリコールや櫛形疎水性ジオールに水分が含まれる場合には、上述のジイソシアナートの量は、水分によりジイソシアナートが分解する分だけ余分に用いる必要がある。従って、十分に乾燥した原料を用いることが好ましい。原料に含まれる水分は5000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、200ppm以下が特に好ましい。
【0073】
反応に用いられる櫛形疎水性ジオールの量は、ポリエチレングリコールの分子量や櫛形疎水性ジオールの疎水基の炭素数によっても異なるが、櫛形疎水性ジオールのモル数がポリエチレングリコール1モル当たり0.01〜1モル(xが0.01〜0.5)が適当である。櫛形疎水性ジオールのモル数が0.01モル未満では十分な疎水性の効果が表われないことがある一方、櫛形疎水性ジオールのモル数が1モルを超えて反応させることは溶解性を低下させる場合があるので好ましくない。なお、()内の数値は式7中のxの値を表している。
【0074】
反応温度は用いられる触媒の種類や量などによって異なるが、50〜180℃が好ましく、60〜150℃がより好ましく、80〜120℃が特に好ましい。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く経済的でない一方、180℃を超えると生成物が熱分解することがあるからである。反応時間は用いる触媒の種類や量、反応温度などにより異なり、特に限定されないが、1分〜10時間が好ましい。反応圧力は特に限定されず、常圧、減圧又は加圧状態で反応させることができるが、常圧又は弱加圧状態で反応させることが好ましい。
【0075】
更に、本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、無機粉末を含有している。このような無機粉末としては、例えば、ニッケル、パラジウム、銀、銅などの導電粉末、チタン酸バリウムなどのセラミック粉末などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記無機粉末として導電粉末を用いることによって、本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストを導電ペーストとして使用することができる。
【0077】
無機粉末として導電粉末を用いる場合、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト中におけるバインダー樹脂の含有量は、少ないと、導電ペーストの製膜性能が低下することがある一方、多いと、脱脂・焼成後にカーボン成分が残留し易くなるので、導電粉末100重量部に対して3〜25重量部が好ましく、5〜15重量部がより好ましい。
【0078】
又、無機粉末としてセラミック粉末を用いた場合には、本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、上述したような段差吸収用セラミックペーストとして使用することができる。なお、セラミック粉末は、セラミックグリーンシートに含有されているセラミック粉末と同一の成分からなることが好ましい。
【0079】
そして、無機粉末としてセラミック粉末を用いる場合、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト中におけるバインダー樹脂の含有量は、少ないと、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストの製膜性能が低下することがある一方、多いと、脱脂・焼成後にカーボン成分が残留し易くなるので、セラミック粉末100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、3〜30重量部がより好ましい。
【0080】
更に、本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度が110〜185℃である(以下「揮発性条件」という)有機溶剤を含有している。
【0081】
ここで、有機溶剤を25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度は、TAinstruments社から商品名「SDT2960(DSC-TGA)」にて市販されている熱分析装置を用いて、サンプルパンとして70マイクロリットルのアルミナパンを用い、サンプル量30mg、Air流量100ミリリットル/分の条件にて測定を行って得られた温度をいう。
【0082】
このように、揮発性条件を満たす有機溶媒を用いることによって、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストをセラミックグリーンシート上に塗布した後に有機溶剤を迅速に揮発させて、有機溶剤によるセラミックグリーンシートの溶解を阻止してシートアタックが生じるのを防止し、焼成後のデラミネーションやショートの発生を防止することができる。
【0083】
有機溶剤において、25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度は、低いと、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストをスクリーン印刷機を用いて印刷する際に版の目詰まりや、セラミックグリーンシート上への塗布性が低下する一方、高いと、シートアタックが発生するので、110〜185℃に限定される。
【0084】
このような有機溶剤としては、例えば、酢酸、オクチル酸、トリメチルヘキサン酸などのカルボン酸類;アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、α−テルピネオール、ジヒドロテルピネオールなどのアルコール類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテートなどのエステル類が挙げられ、カルボン酸類、アルコール類、ケトン類及びエステル類からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機化合物を含有していることが好ましく、カルボン酸類、アルコール類、ケトン類及びエステル類からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機化合物と、この有機化合物以外の有機溶剤とからなる混合有機溶剤がより好ましく、テルピネオールと、これ以外の有機溶媒とからなる混合有機溶媒が特に好ましく、α−テルピネオールと、これ以外の有機溶媒とからなる混合有機溶媒が最も好ましい。
【0085】
セラミックグリーンシートを構成するバインダー樹脂としてブチラール樹脂を用いた場合には、有機溶剤として、ブチラール樹脂を比較的、溶解しにくい、カルボン酸類、アルコール類、ケトン類又はエステル類のうちの少なくとも一種以上を用いると、有機溶剤は揮発性条件を満たしていることも相俟って、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストをセラミックグリーンシート上に塗布した際に、有機溶剤がセラミックグリーンシートを溶解、膨潤させる前に、有機溶剤を円滑に揮発、除去させることができ、シートアタックが生じるのを防止することができる。
【0086】
なお、有機溶剤は単独で用いられても二種以上が併用されて用いられてもよいが、有機溶剤を二種以上、併用して用いる場合には、二種以上の有機溶剤を混合して得られる混合有機溶剤が揮発性条件を満たしていればよい。
【0087】
そして、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト中における有機溶剤の含有量は、少ないと、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストの塗工性が低下することがある一方、多いと、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストをセラミックグリーンシート上に塗布した際にシートアタックを生じることがあるので、無機粉末100重量部に対して50〜200重量部が好ましい。
【0088】
更に、有機溶剤を希釈溶剤で希釈してもよく、このような希釈溶剤としては、特に限定されず、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−パラフィン、イソパラフィン、ベンゼン、ソルベントナフサ、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、流動パラフィン、テトラヒドロナフタリン、デカヒドロナフタリン、イソヘキサン、イソヘプタン、リグロインなどの炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0089】
又、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストに分散剤を含有させてもよい。このような分散剤としては、特に限定されず、脂肪酸、脂肪族アミン、アルカノールアミド、リン酸エステルが好ましい。上記脂肪酸としては、特に限定されず、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ヤシ脂肪酸などの飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、牛脂脂肪酸、ヒマシ硬化脂肪酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられ、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好ましい。
【0090】
上記脂肪族アミンとしては、特に限定されず、例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アルキル(ヤシ)アミン、アルキル(硬化牛脂)アミン、アルキル(牛脂)アミン、アルキル(大豆)アミンなどが挙げられる。
【0091】
そして、上記アルカノールアミドとしては、特に限定されず、例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。更に、上記リン酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0092】
なお、本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストには、その物性を損なわない範囲内において、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤などの従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0093】
次に、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストの製造方法について説明する。積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストの製造方法は、特に限定されず、例えば、バインダー樹脂、揮発性条件を満たす有機溶剤及び無機粉末をブレンダーミル、3本ロールなどの汎用の混合機に供給して混合する製造方法が挙げられる。
【0094】
そして、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、セラミックグリーンシート上にスクリーン印刷などの汎用の印刷方法を用いて塗布されて用いられ、セラミックグリーンシート上に、無機粉末を含有する極めて精密な形状の塗膜を形成することができる。
【0095】
そして、無機粉末を含有する塗膜が形成されたセラミックグリーンシートを複数枚、互いに重ね合わせて加熱圧着して積層体を製造し、この積層体に脱脂処理を施した上で焼成してセラミック焼成物を製造し、このセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結することによって積層セラミックコンデンサを製造することができる。
【0096】
ここで、積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストを塗布するセラミックグリーンシートを構成するバインダー樹脂としてはブチラール樹脂が好ましい。そして、ブチラール樹脂の計算分子量は、高いと、ブチラール樹脂の分子運動の分子運動の自由度が大きいために、有機溶剤に対する溶解時間が短くなり、シートアタックが起き易くなるので、計算分子量が20000以上が好ましく、50000以上がより好ましい。なお、ブチラール樹脂の計算分子量は、ブチラール樹脂をDMSO―d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度を測定し、原料のポリビニルアルコールの重合度と合わせて算出したものをいい、ブチラール樹脂の合成に用いられるポリビニルアルコールの重合度に略依存する。
【0097】
又、ブチラール樹脂の水酸基量は、低いと、ブチラール樹脂の極性が低くなり、有機溶剤に対する親和性が増加するためにシートアタックが生じ易くなるので、20mol%以上が好ましく、22mol%以上がより好ましい。なお、ブチラール樹脂の水酸基量は、ブチラール樹脂をDMSO―d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定したものをいい、ブチラール樹脂の合成に用いられるブチルアルデヒドの添加量を増加させると、ブチラール樹脂の水酸基量は減少する一方、ブチラール樹脂の合成に用いられるブチルアルデヒドの添加量を減少させると、ブチラール樹脂の水酸基量は増加する。
【発明の効果】
【0098】
本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、バインダー樹脂、有機溶剤及び無機粉末を含有する積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストであって、上記有機溶剤は、25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度が110〜185℃である一方、上記バインダー樹脂が、上記式1で表される繰返し単位(1)と、上記式2で表される繰返し単位(2)とからなり、繰返し単位(1)のモル比率が0.5〜0.99であり且つ繰返し単位(2)のモル比率が0.01〜0.5であると共に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された重量平均分子量が10000〜1000000である高分子であることを特徴とし、バインダー樹脂は熱分解性に優れており焼成後の残渣が少なく、優れた電気特性を有する積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0099】
そして、本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、その有機溶剤として、所定条件を満たした揮発性に優れた有機溶剤を使用していることから、セラミックグリーンシート上に塗布した場合にあっても迅速に揮発し、セラミックグリーンシートを溶解、膨潤させる、所謂、シートアタック現象を生じるようなことはない。
【0100】
更に、本発明の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストは、優れた塗工性、特に、優れたスクリーン印刷特性を有していることから、セラミックグリーンシート上に正確に塗工することができ、セラミックグリーンシート上に精密な形状を有する塗膜を精度良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0101】
(ポリウレタンの製造)
1500ミリリットルの丸底フラスコにマグネチックスターラー、温度計及び滴下ロートを配設し、この丸底フラスコ内に2−エチルヘキシルアミン64.6重量部を供給した上でフラスコ内を窒素で置換した。
【0102】
オイルバスを用いて丸底フラスコを60℃に加熱しながら丸底フラスコ内を攪拌し、この丸底フラスコ内に滴下ロートを用いて2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(ナガセ化成工業社製 商品名「デナコールEX−121」、エポキシ価188)188.0重量部を40分かけて滴下した。滴下終了後、オイルバスの温度を80℃に上げて丸底フラスコを10時間に亘って加熱した。
【0103】
続いて、オイルバスの温度を120℃に上げ、真空ポンプを用いて丸底フラスコ内を399Paの真空度として少量の未反応物を減圧留去した。2−エチルヘキシルアミン1モルに対して2−エチルヘキシルグリシジルエーテルが2モルの比率で付加した櫛形疎水性ジオール(OH価からの平均分子量490)(式8)を収率98%で得た。
【0104】
【化8】

【0105】
500ミリリットルのステンレス製のセパラブルフラスコにポリエチレングリコール(純正化学社製 商品名「PEG#6000」、OH価から求めた数平均分子量:8700)100重量部を供給した上でセパラブルフラスコ内を窒素置換した後、セパラブルフラスコ内を150℃に加熱してポリエチレングリコールを溶融させた。
【0106】
次に、セパラブルフラスコ内を攪拌しながら、セパラブルフラスコ内を399Paに減圧しながら3時間に亘ってポリエチレングリコールを乾燥させた。ポリエチレングリコールに残留する水分はその全重量に対して200ppmであった。
【0107】
続いて、セパラブルフラスコ内を80℃まで温度を下げ、セパラブルフラスコ内を攪拌しながら、上記櫛型疎水性ジオール1重量部、ヘキサメチレンジイソシアナート(東京化成)2.28重量部をセパラブルフラスコ内に供給した。
【0108】
更に、セパラブルフラスコ内に触媒としてジブチル錫ジラウレート0.01重量部を供給すると、10分程で急激に増粘した。攪拌を停止して更に2時間に亘って反応させた。反応終了後にポリウレタンをセパラブルフラスコから取り出して小片に裁断した上で放冷した。次に、小片に裁断された生成物を更に液体窒素で冷却した上で電動ミルを用いて粒径が1mm以下となるように粉砕処理してポリウレタン粉を得た。
【0109】
なお、得られたポリウレタンにおいて、式1で表される繰返し単位(1)のモル比率は0.88で且つ式2で表される繰返し単位(2)のモル比率は0.12であった。ポリウレタンにおけるGPCにより測定された重量平均分子量は500000であった。
【0110】
(実施例1、比較例1〜5)
上記で得られたポリウレタン又はエチルセルロース(ダウケミカル社 商品名「STD45型」)のうちの表1に示したバインダー樹脂7重量部と、酢酸2−エチルヘキシル95重量%及びα−テルピネオール5重量%の混合有機溶剤A、α−テルピネオール50重量%及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸50重量%の混合有機溶剤B、α−テルピネオール又は酢酸2−エチルヘキシルのうちの表1に示した有機溶剤60重量部と、ニッケル微粒子(三井金属社製 商品名「2020SS」)100重量部を三本ロールを用いて光学顕微鏡にて凝集物(未解砕物)がなくなるまで混合して積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト(導電ペースト)を得た。なお、各有機溶剤について、25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度を表1の「揮発温度」の欄に示した。
【0111】
得られた導電ペーストの印刷性、熱分解性及びシートアタック性について下記の通り測定し、その結果を表1に示した。
【0112】
(印刷性)
300メッシュのポリエステル版を用いて、1cm幅当たり20本となるように直線を連続的に印刷し、以下の基準により印刷性を評価した。
○:印刷時に不具合は発生しなかった。
×:印刷時に不具合が発生した。
【0113】
(熱分解性)
ブチラール樹脂10重量部を、トルエン30重量部とエタノール15重量部との混合溶剤に加えて攪拌、溶解させ、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加えて攪拌、溶解させて樹脂溶液を得た。
【0114】
なお、ブチラール樹脂として、実施例1、比較例1〜3,5では、積水化学工業社から商品名『エスレックB「BM−S」』で市販されているブチラール樹脂を、比較例4では、水化学工業社から商品名『エスレックB「BL−1」』で市販されているブチラール樹脂を用いた。
【0115】
得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製 商品名「BT−01(平均粒径0.3μm)」)100重量部を加え、ボールミルを用いて48時間に亘って混合してセラミックスラリー組成物を得た。
【0116】
得られたセラミックスラリー組成物を、一面が離型処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約5μmになるように塗布した後、常温で1時間に亘って風乾し、熱風乾燥機に供給して80℃で3時間、続いて、120℃で2時間に亘って乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
【0117】
セラミックグリーンシートを一辺が5cmの平面正方形状に裁断してグリーンシート片100枚を作製した。各グリーンシート片の一面に導電ペーストをスクリーン印刷によって塗布した上で、100枚のグリーンシート片をその厚み方向に互いに重ね合わせた上で温度70℃にて厚み方向に1.47×107Paの圧力でもって10分間に亘って圧縮して互いに隣接するグリーンシート片同士を一体化させてセラミックグリーンシート積層体を得た。
【0118】
得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気にて昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間に亘って保持した後、更に、昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間に亘って保持してセラミック焼結体を得た。得られたセラミック焼結体を目視観察し、以下の基準により熱分解性を評価した。
○:均一に焼結されており、セラミックパウダー以外のものは認められなかった。
×:誘電層内に黒色の点状のものが一部まれに確認された。
【0119】
(シートアタック性)
セラミックグリーンシート積層体の断面を顕微鏡で観察し、以下の基準によりシートアタック性を評価した。
○:グリーンシート片に貫通孔やシワが確認されなかった。
×:グリーンシート片に貫通穴やシワが確認された。
【0120】
(実施例2、比較例6〜10)
上記で得られたポリウレタン又はエチルセルロース(ダウケミカル社 商品名「STD45型」)のうちの表1に示したバインダー樹脂7重量部と、酢酸2−エチルヘキシル95重量%及びα−テルピネオール5重量%の混合有機溶剤A、α−テルピネオール50重量%及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸50重量%の混合有機溶剤B、α−テルピネオール又は酢酸2−エチルヘキシルのうちの表1に示した有機溶剤60重量部と、チタン酸バリウム(堺化学工業社製 商品名「BT−03」)100重量部をボールミルを用いて48時間に亘って混練して積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト(セラミックペースト)を得た。
【0121】
得られたセラミックペーストの印刷性、熱分解性及びシートアタック性について下記の通り測定し、その結果を表1に示した。
【0122】
(印刷性)
ブチラール樹脂(積水化学工業社製 商品名『エスレックB「BM−S」』、重合度:800)10重量部を、トルエン30重量部及びエタノール15重量部の混合溶剤に加えて攪拌、溶解させ、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加えて攪拌、溶解させて樹脂溶液を得た。
【0123】
なお、ブチラール樹脂として、実施例2、比較例6〜8,10では、積水化学工業社から商品名『エスレックB「BM−S」』で市販されているブチラール樹脂を、比較例9では、水化学工業社から商品名『エスレックB「BL−1」』で市販されているブチラール樹脂を用いた。
【0124】
得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製「BT−03(平均粒径0.3μm)」)100重量部を加えてボールミルで48時間に亘って混合してセラミックスラリー組成物を得た。
【0125】
得られたスラリー組成物を、一面が離型処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約10μmになるように塗布した上で常温で1時間に亘って風乾し、更に、熱風乾燥機を用いて80℃で3時間、続いて120℃で2時間に亘って乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
【0126】
スクリーン印刷機(ミノグループ社製 商品名「ミノマットY−3540」)と、スクリーン版(ミノグループ社製 商品名「SX300B」)とを用いて、セラミックペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷し、100枚印刷時の印刷面を目視又は拡大顕微鏡で観察し、以下の基準により印刷性を評価した。
○:印刷面にカスレや糸状のセラミックペーストが全く認められなかった。
×:印刷面にカスレや糸状のセラミックペーストが認められた。
【0127】
(熱分解性)
印刷性の測定時に作製したセラミックグリーンシートを一辺が5cmの平面正方形状に裁断してグリーンシート片100枚を作製した。各グリーンシート片の一面にセラミックペーストをスクリーン印刷によって塗布した上で、100枚のグリーンシート片をその厚み方向に互いに重ね合わせた上で温度70℃にて厚み方向に1.47×107Paの圧力でもって10分間に亘って圧縮して互いに隣接するグリーンシート片同士を一体化させてセラミックグリーンシート積層体を得た。
【0128】
得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気にて昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間に亘って保持した後、更に、昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間に亘って保持してセラミック焼結体を得た。得られたセラミック焼結体を目視観察し、以下の基準により熱分解性を評価した。
○:均一に焼結されており、セラミックパウダー以外のものは認められなかった。
×:グリーンシート片に黒色の点状のものが非常に多く確認された。
【0129】
(シートアタック性)
セラミックグリーンシート積層体の断面を顕微鏡で観察し、以下の基準によりシートアタック性を評価した。
○:グリーンシート片に貫通孔やシワが確認されなかった。
×:グリーンシート片に貫通穴やシワが確認された。
【0130】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、有機溶剤及び無機粉末を含有する積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペーストであって、上記有機溶剤は、25℃から10℃/分の昇温速度で昇温した時に初期重量の10重量%となる温度が110〜185℃である一方、上記バインダー樹脂が、式1で表される繰返し単位(1)と、式2で表される繰返し単位(2)とからなり、繰返し単位(1)のモル比率が0.5〜0.99であり且つ繰返し単位(2)のモル比率が0.01〜0.5であると共に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された重量平均分子量が10000〜1000000である高分子であることを特徴とする積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。
【化1】

【化2】

但し、Aは、HO-A-OHが少なくとも両末端に水酸基を有し且つ数平均分子量が400〜100000のポリエチレングリコール(化合物A)である2価基であり、Bは、OCN-B-NCOが鎖状脂肪族ジイソシアナート又は環状脂肪族ジイソシアナート(化合物B)である2価基であり、Dが、HO-D-OHが式3、式4又は式5で表される櫛形疎水性ジオール(化合物D)であることを特徴とする積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。
【化3】

(但し、R1は、炭素数が1〜20の炭化水素基である。R2及びR3は、炭素数が4〜21の炭化水素基である。炭化水素基R1、R2及びR3中の水素の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素又は沃素で置換されていてもよく、R2とR3とは同一であっても異なっていてもよい。YおよびY’は、水素、メチル基又はCH2Cl基であり、YとY’とは同一であっても異なっていてもよい。Z及びZ’は酸素、硫黄又はCH2基であり、ZとZ’とは同一であっても異なっていてもよい。nは、Zが酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄又はCH2基の場合は0であり、nとn’は同じでも異なっていてもよい)
【化4】

(但し、R4は、炭素数が1〜20の炭化水素基である。R5及びR6は、炭素数が4〜21の炭化水素基である。R4、R5及びR6中の水素の一部又は全部はフッ素、塩素、臭素又は沃素で置換されていてもよく、R5とR6とは同一であっても異なっていてもよい。Y、Y’及びY”は、水素、メチル基又はCH2Cl基であり、YとY’は同一であっても異なっていてもよい。R7は炭素数が2〜4のアルキレン基であり、kは0〜15の整数である。また、nは、Zが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが硫黄又はCH2基の場合は0である。n’は、Z’が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄又はCH2基の場合は0であり、nとn’は同一であっても異なっていてもよい)
【化5】

(但し、R8及びR9は、R8とR9の炭素数の合計が2〜20の炭化水素基である。R10及びR11は、炭素数が4〜21の炭化水素基である。R8、R9、R10及びR11の水素の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素又は沃素で置換されていてもよい。R8とR9とは同一であっても異なっていてもよい。R10とR11とは同一であっても異なっていてもよい。R12は、炭素数が2〜7のアルキレン基である。またYおよびY’は、水素、メチル基又はCH2Cl基であり、YとY’とは、同一であっても異なっていてもよい。Z及びZ’は、酸素、硫黄、又はCH2基であり、ZとZ’とは同一であっても異なっていてもよい。nは、Zが酸素の場合は0〜15の整数であり、Zが,硫黄又はCH2基の場合は0である。n’は、Z’が酸素の場合は0〜15の整数であり、Z’が硫黄又はCH2基の場合は0であり、nとn’とは同一であっても異なっていてもよい)
【請求項2】
無機粉体が、ニッケル、パラジウム、銀、銅及びチタン酸バリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の無機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。
【請求項3】
有機溶剤が、カルボン酸類、アルコール類、ケトン類及びエステル類からなる群から選ばれた少なくとも一種の有機化合物を含有する混合有機溶剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。
【請求項4】
ブチラール樹脂をバインダー樹脂として含有するセラミックグリーンシート上への塗布に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。
【請求項5】
ブチラール樹脂は、その計算分子量が20000以上であることを特徴とする請求項4に記載の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。
【請求項6】
ブチラール樹脂は、その水酸基量が20mol%以上であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の積層セラミック電子部品用スクリーン印刷ペースト。

【公開番号】特開2007−281306(P2007−281306A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107957(P2006−107957)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】