説明

積層体の製造方法

【課題】基材との密着性に優れた金属層を有する積層体を、環境負荷が小さく、且つ、低温プロセスで、更に、親水化前処理を施すことなく製造しうる積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】基材又は金属箔上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程、及び、前記工程にて基材上に接着層が形成された場合は、該接着層上に、(1)金属箔をラミネートする、又は、(2)蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成する手段を用いて金属層を形成する工程、或いは、前記(a)工程にて金属箔上に接着層が形成された場合は、該接着層上に、(3)有機樹脂層をキャスト法で成膜する手段を用いて基材を形成する工程、を含む、基材と接着層と金属層とからなる積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と金属薄膜との密着性に優れた積層体の製造方法に関する。特に、半導体パッケージ基板、フレキシブルプリント配線板などのプリント配線板に適用しうる積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の導電性パターン形成方法としては、主に「サブトラクティブ法」、「セミアディティブ法」による金属パターン形成方法が知られている。サブトラクティブ法とは、基材上に形成された金属の層に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、ついで、金属をエッチングして導電性パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。この方法で使用される金属基板は、基材と金属層との密着性を持たせるために、基材界面を凹凸処理してアンカー効果により密着性を発現させていた。その結果、出来上がる導電性パターンの基材界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。
【0003】
また、セミアディティブ法では、先ず、基材上にめっき等により薄くCr等の下地金属層を形成し、該下地金属層上にレジストパターンを形成する。続いて、レジストパターン以外の領域の下地金属層上にめっきによりCu等の金属層を形成した後、レジストパターンを除去することにより配線パターンを形成する。更に、配線パターンをマスクとして下地金属層をエッチングし、レジストパターン以外の領域にのみ導電性パターンを形成する。この方法は、30μm以下の細線パターンの形成が容易であり、めっきにより必要な部分にのみ金属を析出させるため、環境、価格面でも有効である。しかしながら、この方法でも、基材と導電性パターンの密着性を持たせるために基材表面を凹凸処理する必要があり、その結果、出来上がる導電性パターンの基材界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。従って、平滑基材面に密着性のよい配線を形成する技術が望まれている。
【0004】
これを達成する技術として、硫黄と金属の高い親和性を利用して接着強度を発現させる技術が知られている。例えば、硫黄成分(加硫剤)含有架橋接着剤を利用した技術(例えば、特許文献1参照。)、含硫黄エポキシ樹脂を含む熱硬化型アンダーコート剤を利用した技術(例えば、特許文献2参照。)、含硫黄硬化剤を含む熱硬化型アンダーコート剤を利用した技術(例えば、特許文献3参照)、スルフィド結合を含んだ特定構造の樹脂と熱硬化性樹脂から成る接着剤組成物の熱応力緩和効果を利用した技術(例えば、特許文献4参照。)、銅箔をポリチオール処理する技術(例えば、特許文献5参照。)、特定樹脂から形成される層と、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる原子と芳香環を含有する化合物から形成される層の二層タイプの層間絶縁層フィルムを利用した技術(例えば、特許文献6参照。)、エピスルフィド含有樹脂組成物を接着剤組成物として利用した技術(例えば、特許文献7参照。)、特定構造のジスルフィド系化合物ないしチオエーテル化合物を含む樹脂組成物を接着剤組成物として利用した技術(例えば、特許文献8参照。)、親水性の硫黄化合物、窒素化合物、リン化合物と架橋剤を含有した流動性組成物を利用した技術(例えば、特許文献9参照。)、メルカプトトリアジン含有シランカップリング剤を分子接着剤として利用した技術(例えば、特許文献10参照。)が知られている。
【0005】
また、平滑基材上に高密着の金属層を形成する方法として、フレキシブルプリント配線板で汎用的な製造方法であるようなスパッタ法(めっきによるメタライジング法)が挙げられる。更に、スパッタ法以外のめっき法による密着発現技術も最近知られるようになってきている(例えば、特許文献11、及び特許文献12参照。)。
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1〜9、11、12に記載の技術ではプロセス中に150〜190℃の高温アニールを必要とするという問題点がある。なぜなら、近年有機エレクトロニクスの分野等で、TFTなどの素子を低温プロセスでフィルム基板上に作製することが望まれており、これらの用途では高温アニール処理は使用できないからである。また、上述の特許文献10、11、12に記載の技術では、前処理として基材表面親水化が必要となるため、金属パターンを形成した際、その金属パターン間の電気絶縁性に劣るという問題点もある。更にスパッタリング法では、核付け層にクロムスパッタリングを使用しているため環境負荷が大きく、また、密着強度が十分でないという問題点もある。
【0007】
このような状況を鑑み、平滑基材上に高密着の金属層を、低温プロセス、具体的には、90℃以下のプロセス温度で形成する方法が望まれている。更に、基材表面親水化前処理を施すことなく金属層を形成するのが金属パターンを形成した際、その金属パターン間の電気絶縁性の点から好ましく、クロムフリーのプロセスで金属層が形成できれば環境上も好ましい。
【特許文献1】特開平7−314603号公報
【特許文献2】特開平8−148829号公報
【特許文献3】特開平8−148830号公報
【特許文献4】特開平10−178035号公報
【特許文献5】特開2000−196207号公報
【特許文献6】特開2001−298275号公報
【特許文献7】特開2003−167331号公報
【特許文献8】特開2007−39486号公報
【特許文献9】特開2007−128864号公報
【特許文献10】特開2008−50541号公報
【特許文献11】特開2004−79660号公報
【特許文献12】特開2004−186661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明の第1の目的は、基材との密着性に優れた金属層を有する積層体を、環境負荷が小さく、且つ、低温プロセスで、更に、親水化前処理を施すことなく製造しうる積層体の製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、基材との密着性に優れたパターン状の金属層を有し、そのパターン間の電気絶縁性に優れる積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討の結果、硫黄成分を側鎖に有するアクリル樹脂を接着層の形成に使用することにより、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の第1の積層体の製造方法は、(a1)基材上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程と、(b1)該接着層上に、(1)金属箔をラミネートする、又は、(2)蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成する手段を用いて金属層を形成する工程と、を含む、基材と接着層と金属層とからなることを特徴とする。
また、本発明の第2の積層体の製造方法は、(a2)金属箔上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程と、(b2)該接着層上に、(3)有機樹脂層をキャスト法で成膜する手段を用いて基材を形成する工程と、を含む、基材と接着層と金属層とからなることを特徴とする。
【0011】
本発明において、接着層用組成物が、熱又は光で硬化する化合物を更に含有することが好ましい。
また、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂が、分子内に熱又は光で硬化する部分構造を有するものも好ましい態様である。
更に、前記接着層用組成物が、光重合開始剤を更に含有することも好ましい。
【0012】
本発明において、前記(a1)工程で用いられる基材が、金属、有機樹脂、及び金属を積層した有機樹脂から選択された基材であることが好ましい態様であり、特に、金属が銀、銅、金から選択された金属であることが好ましく、特に、銅であることが好ましい。
また、金属がパターン状であってもよい。
一方、本発明における基材が有機樹脂からなる場合、該有機樹脂は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びABS樹脂から選択された樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
本発明は、基材直上に、硫黄成分を側鎖に有するアクリル樹脂を用いて接着層を形成し、その上にドライプロセスにて金属層を形成することを特徴としている。
このような方法を用いることで、基材表面を粗面化することなく平滑面であっても、金属層との間に高い密着強度を与えることができる。この基材と金属層との間の高い密着性は、接着層に含まれる柔軟性の高い樹脂成分が接着部分の塑性変形能力を高めたことや、硫黄成分と金属との高い親和性に基づき発現したものと考えられる。
【0014】
本発明における接着層用組成物は、熱又は光で硬化する化合物を含有することが好ましい態様として挙げられ、この場合、プロセス中、高温を必要とせず硬化させることができる(低温プロセス適性)の点で、光硬化する化合物が好ましい。また、本発明における接着層は高い密着性を有するため、通常密着付与のために行われる高温アニーリング処理は必要としないという意味でも低温プロセス適性を有する。
【0015】
また、基材表面或いは接着層表面を親水化することなく金属層を形成することができるため、配線形成後の電気絶縁性に優れる。
更に、スパッタリング法で汎用的に使用されている核付け用のクロムを用いなくても金属層を形成することができるため、環境負荷の小さいプロセスを提供することができるというメリットも有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基材との密着性に優れた金属層を有する積層体を、環境負荷が小さく、且つ、低温プロセスで、更に、親水化前処理を施すことなく製造しうる積層体の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、基材との密着性に優れたパターン状の金属層を有し、そのパターン間の電気絶縁性に優れる積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1の積層体の製造方法(以下、「積層体の製造方法<1>」と称する。)は、(a1)基材上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程と、(b1)該接着層上に、(1)金属箔をラミネートする、又は、(2)蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成する手段を用いて金属層を形成する工程と、を含む、基材と接着層と金属層とからなることを特徴とする。
また、本発明の第2の積層体の製造方法(以下、適宜、「積層体の製造方法<2>」と称する。)は、(a2)金属箔上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程と、(b2)該接着層上に、(3)有機樹脂層をキャスト法で成膜する手段を用いて基材を
以下、本発明の積層体の製造方法<1>及び<2>における各工程について順次説明する。
【0018】
〔(a1)工程〕
積層体の製造方法<1>における(a1)工程では、基材上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する。
まず、本工程で用いる基材について説明する。
【0019】
<基材>
本発明に用いられる基材としては、金属、有機樹脂、及び金属を積層した有機樹脂から選択された基材であることが好ましい。ここで、金属としては、銀、銅、金等の難接着金属と言われる金属であることが好ましい。これらの金属は以下に記載する有機樹脂基材上に積層されていてもよく、更には、有機樹脂基材上にパターン化されていてもよい。
本発明に適用しうる有機樹脂については特に制限はないが、以下に挙げる如き各種樹脂を使用することができる。
例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、PET、PEN、三酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、液晶ポリマー、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、アラミド樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ABS樹脂などの樹脂を用いることができる。
基材としては、一般的には、平板状の基材(各種基板)が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材を用いることもできる。
【0020】
本発明の積層体の製造方法は、低温プロセス適性に優れるので、有機樹脂基材に適用してその効果が著しい。ここでいう有機樹脂基材とは、基材の一部に有機樹脂を用いたものを指し、例えば、複数の有機樹脂を積層した複合有機基材であってもよいし、ガラスなどの無機支持体上に有機樹脂層を有する基材も本発明における有機樹脂基材に包含される。
低温プロセスに好適な有機樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂が好ましい。
【0021】
なお、基材は、接着層との密着性を高める点から、光ラジカル発生能を有する化合物若しくはラジカル反応性化合物を含有していてもよい。
【0022】
<接着層>
次に、(a1)工程において用いられる接着層用組成物、及びこれを用いた接着層の形成方法について説明する。
まず、本発明に用いられる接着層用組成物に含有される、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂(以下、適宜、「硫黄原子含有アクリル樹脂」と称する。)について説明する。
【0023】
−2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂−
本発明に用いられる硫黄原子含有アクリル樹脂は、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むものである。ここで、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体は、少なくとも、2価の硫黄原子とアクリロイル基やメタクリロイル基によるエチレン性不飽和結合とを1つ以上有していれば、如何なるものであってもよい。
2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体として、具体的には、特開平9−110827号公報の段落番号〔0007〕、特表2000−509075号公報の14頁〜16頁、特開2007−114433号公報の段落番号〔0053〕〜〔0068〕、特開2007−314599号公報の段落番号〔0087〕〜〔0095〕等に記載の単量体を挙げることができる。
より具体的には、硫黄成分としては、直鎖状スルフィド基、チオカーボネート基や環状スルフィド基、ベンゾチアゾール基、チオウラシル基などの含硫黄複素環基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましい例として挙げられる。
【0024】
本発明においては、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位として、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
上記一般式(I)において、Rは、水素原子、又は総炭素数1〜4のアルキル基を表す。
総炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。
【0027】
前記一般式(I)において、Rは、水素原子、総炭素数1〜18のアルキル基、総炭素数6〜14のアリール基、又は総炭素数7〜16のアラルキル基を表し、このアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立に、無置換でも置換基を有していてもよく、また、飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【0028】
前記Rで表される総炭素数1〜18のアルキル基は、無置換でも置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基等のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、スルホニル基等が好適である。
これらのうち、総炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、総炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基は特に好ましい。
【0029】
前記Rで表される総炭素数6〜14のアリール基は、無置換でも置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル等のアリール基が挙げられる。これらのアリール基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、スルホニル基等が好適である。
これらのうち、総炭素数6〜10のアリール基が好ましく、フェニル基は特に好ましい。
【0030】
前記Rで表される総炭素数7〜16のアラルキル基は、無置換でも置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。これらのアラルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、スルホニル基等が好適である。
これらのうち、総炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、ベンジル基は特に好ましい。
【0031】
前記一般式(I)において、Zは、−O−又は−NH−を表す。また、Yは、総炭素数1〜8の2価の連結基を表す。
Yで表される総炭素数1〜8の2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基)、アルケニレン基(例、エテニレン基、プロぺニレン基)、アルキニレン基(例、エチニレン基、プロピニレン基)、アリーレン基(例、フェニレン基)、二価のヘテロ環基(例、6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基)、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)、又はこれらの組み合わせ(例えば、−NHCHCHNH−、−NHCONH−等)であることが好ましい。
前記Yで表されるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環基、並びにRで表されるアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。該置換基の例としては、前記Rで表されるアリール基の置換基と同じである。Rで表されるアルキル基及びアリール基は、既述のRで表されるアルキル基及びアリール基と同義である。
Yで表される総炭素数1〜8の2価の連結基のうち、総炭素数1〜6の2価の連結基が好ましく、中でも、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、−CH−CH(OH)−CH−、−C−O−C−は特に好ましい。
【0032】
以下、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
本発明における硫黄原子含有アクリル樹脂は、上記のような繰り返し単位を、質量分率で1%〜100%含むことが好ましく、5%〜80%がより好ましく、10%〜50%が特に好ましい。質量比率がこの範囲内であると、基材と金属膜との高い密着強度を発現するのに効果的である。
【0036】
また、本発明における硫黄原子含有アクリル樹脂は、分子内に熱又は光で硬化する部分構造を有するものであってもよい。この熱又は光で硬化する部分構造としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキシラン基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アリル基等が挙げられ、中でも、合成適性、コストの点から、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0037】
上記のような熱又は光で硬化する部分構造は、以下に示すような繰り返し単位として硫黄原子含有アクリル樹脂に導入されることが好ましい。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0038】
【化4】

【0039】
本発明における硫黄原子含有アクリル樹脂は、硬化性、接着層膜強度の点から、上記のような熱又は光で硬化する部分構造を有する繰り返し単位を、1モル%〜99モル%の範囲で含有することが好ましく、5モル%〜50モル%の範囲がより好ましく、10モル%〜30モル%の範囲が更に好ましい。
【0040】
更に、本発明における硫黄原子含有アクリル樹脂は、必要に応じて、アルカリ現像性を付与できる点で、分子内に酸基を有するものが好ましい。酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、フェノール類、スルホアミドなどの基を挙げることができ、特にカルボン酸基が好ましい。
上記のような酸基は、以下に示すような繰り返し単位として硫黄原子含有アクリル樹脂に導入されることが好ましい。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
(a)工程においてアルカリ現像が必要な場合には、硫黄原子含有アクリル樹脂は、酸価が20mgKOH/g〜400mgKOH/gであることが好ましく、50mgKOH/g〜350mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が前記範囲内であるとアルカリ現像性も良好である。
上述した酸基を有する繰り返し単位は、この酸価を満たすように硫黄原子含有アクリル樹脂に含まれることが好ましい。
【0044】
本発明に係る硫黄原子含有アクリル樹脂の分子量としては、重量平均分子量で、2,000〜1,000,000が好ましく、3,000〜200,000がより好ましく、5,000〜100,000が最も好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、基材と金属膜との密着性向上に有効であり、現像性に支障を来すこともない。
【0045】
−熱又は光で硬化する化合物−
本発明における接着層用組成物には、熱又は光で硬化する化合物を含有することが好ましい。
熱又は光で硬化する化合物として、多官能モノマーなどを用いることができる。多官能モノマーは、それ自体重合して重合後に接着層中でバインダーとして機能するものであり、該多官能モノマーの含有により、接着層の膜強度を高めることができる。多官能モノマーとしては、低温プロセス適性の点で光重合可能なモノマーが好ましい。
【0046】
前記多官能モノマーとしては、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、1,4−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン若しくはグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加反応させた後で(メタ)アクリレート化したもの等の多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0047】
更に、特公昭48−41708号、同50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、同52−30490号の各公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
【0048】
上記の中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリルモノマーを用いることが好ましい。多官能モノマーは、一種単独で用いる以外に2種類以上を混合して用いてもよい。
【0049】
多官能モノマーを用いる場合、多官能モノマーの接着層用組成物中における添加量としては、特に限定されるものではなく、該組成物の全固形分に対して、5質量%〜50質量%が一般的であり、10質量%〜40質量%が好ましい。該添加量が前記範囲内であると、光感度や接着層の強度も良好であり、接着層の粘着性が過剰になることもない。
なお、前記多官能モノマー以外に更にオリゴマーを含んでいてもよい。
【0050】
−重合開始剤−
本発明における接着層用組成物には、重合開始剤を含有することが好ましい。
前述した熱又は光で硬化する部分構造を有する硫黄原子含有アクリル樹脂や、多官能モノマーは、光や熱を用いて重合可能な化合物であり、これらの化合物を含有する接着層用組成物の光硬化性又は熱硬化性を高めるには、重合開始剤を併用することが好ましい。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれもが用いられるが、中でも、光重合開始剤を添加して接着層用組成物を光硬化性とすることがより好ましい。
【0051】
接着層用組成物に使用しうる熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどのような過酸化物開始剤、及びアゾ系開始剤などを使用することができる。
【0052】
接着層用組成物に使用しうる光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(k)ピリジウム類化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(k)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(a)芳香族ケトン類
本発明において、光重合開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記化合物が挙げられる。
【0054】
【化7】

【0055】
中でも、特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例を以下に列記する。
特公昭47−6416号に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号に記載のベンゾインエーテル化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0056】
【化8】

【0057】
特公昭47−22326号に記載のα−置換ベンゾイン化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0058】
【化9】

【0059】
特公昭47−23664号に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号に記載のジアルコキシベンゾフェノン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0060】
【化10】

【0061】
特公昭60−26403号、特開昭62−81345号に記載のベンゾインエーテル類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0062】
【化11】

【0063】
特公平1−34242号、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号に記載のα−アミノベンゾフェノン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0064】
【化12】

【0065】
特開平2−211452号に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0066】
【化13】

【0067】
特開昭61−194062号に記載のチオ置換芳香族ケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0068】
【化14】

【0069】
特公平2−9597号に記載のアシルホスフィンスルフィド、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0070】
【化15】

【0071】
特公平2−9596号に記載のアシルホスフィン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0072】
【化16】

【0073】
また、特公昭63−61950号に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号に記載のクマリン類等を挙げることもできる。
【0074】
(b)オニウム塩化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0075】
【化17】

【0076】
一般式(1)中、ArとArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Zはハロゲンイオン、過塩素酸イオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0077】
一般式(2)中、Arは、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Zは(Zと同義の対イオンを表す。
【0078】
一般式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Zは(Zと同義の対イオンを表す。
【0079】
本発明において、好適に用いることのできる(b)オニウム塩化合物の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]、特開2001−305734号公報の段落番号[0048]〜[0052]、及び、特開2001−343742公報の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたものなどを挙げることができる。
【0080】
(c)有機過酸化物
本発明において、光重合開始能を有する構造として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれる。その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ターシャリーブチルパーオキシカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0081】
(d)チオ化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい、(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
【0082】
【化18】

【0083】
一般式(4)中、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。
一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記表1に示す官能基を有する化合物が挙げられる。
【0084】
【表1】

【0085】
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号に記載のロフィンダイマー類、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0086】
(f)ケトオキシムエステル化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい、(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0087】
(g)ボレート化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい、(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
【0088】
【化19】

【0089】
一般式(5)中、R28、R29、R30、及びR31は、互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、又は置換若しくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30、及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換若しくは非置換のアルキル基である。(Zはアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。
【0090】
一般式(5)において、R28〜R31で表されるアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また、置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば、−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくは、フェニル基)、ヒドロキシ基、−COOR32(ここで、R32は、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、−OCOR33、−OR34(ここで、R33、R34は、それぞれ、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、又は下記式で表されるものを置換基として有するものが含まれる。
【0091】
【化20】

【0092】
上記式中、R35及びR36は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。
【0093】
一般式(5)で示される化合物例としては、具体的には、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物、及び以下に示すものが挙げられる。
【0094】
【化21】

【0095】
(h)アジニウム化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい、(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、及び特公昭46−42363号に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0096】
(i)活性エステル化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい、(i)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223号に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
【0097】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)で表される化合物、及び下記一般式(7)で表される化合物を挙げることができる。
【0098】
【化22】

【0099】
一般式(6)中、Xはハロゲン原子を表し、Yは−C(X、−NH、−NHR38、−NR38、又は−OR38を表す。ここで、R38は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基を表す。R37は、−C(X、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、又は置換アルケニル基を表す。
【0100】
【化23】

【0101】
一般式(7)中、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。Xは、ハロゲン原子を表す。nは、1〜3の整数を表す。
【0102】
前記一般式(6)で表される化合物として、具体的には、下記化合物を挙げることができる。
【0103】
【化24】

【0104】
前記一般式(7)で表される化合物として、具体的には、下記化合物を挙げることができる。
【0105】
【化25】

【0106】
(k)ピリジウム類化合物
本発明において、光重合開始剤として好ましい(k)ピリジウム類化合物の例としては、下記一般式(8)で表される化合物を挙げることができる。
【0107】
【化26】

【0108】
一般式(8)中、好ましくは、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、又は置換アルキニル基を表し、R、R、R、R、及びR10は同一であっても異なるものであってもよく、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の有機残基を表し、少なくとも一つは、下記一般式(9)で表される構造の基を有する。また、RとR、RとR10、RとR、RとR、RとR、RとR10が互いに結合して環を形成してもよい。更に、Xは対アニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
【0109】
【化27】

【0110】
一般式(9)中、R12、及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、又は置換アルキニル基を表し、R11は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、又は置換アミノ基を表す。また、R12とR13、R11とR12、R11とR13が互いに結合して環を形成してもよい。Lはヘテロ原子を含む2価の連結基を表す。
【0111】
これらの光重合開始剤の中でも、耐熱性のある光重合開始剤が好ましく、具体的には芳香族ケトン類が好ましい。
この芳香族ケトン類の中でも下記構造の芳香族ケトン類がより好ましい。
【0112】
【化28】



【0113】
なお、上記構造の芳香族ケトン類が光重合開始基としてポリマー鎖に連結して高分子光重合開始剤を形成する場合、連結基は、フェニル環と連結していることが好ましい。或いは、フェニル基とポリマー鎖が直接結合していてもよい。
【0114】
【化29】

【0115】
なお、上記構造の芳香族ケトン類が光重合開始基としてポリマー鎖に連結して高分子開始剤を形成する場合、連結基はフェニル環又はOHと連結していることが好ましい。或いは、フェニル基又はOHがポリマー鎖と直接結合していてもよい。
【0116】
【化30】

【0117】
なお、上記構造の芳香族ケトン類が光重合開始基としてポリマー鎖に連結して高分子開始剤を形成する場合、連結基はフェニル環と連結していることが好ましい。或いは、フェニル基とポリマー鎖が直接結合していてもよい。
【0118】
前記ポリマー鎖との連結基としては、2価又は3価の連結基が挙げられる。具体的には、−O−、−OCO−、−CO−、−OCONH−、−S−、−CONH−、−OCOO−、−N=、又はこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。これらのうち、−O−、−OCO−を用いることが好ましい。
【0119】
本発明における光重合開始剤としては、低分子のものであっても、前述のような高分子のものであってもよい。
隣接する基材や金属層との密着性向上効果の観点からは、高分子型の光重合開始剤を用いることが好ましい。このような高分子型の光重合開始剤の分子量としては、10000以上が好ましく、30000以上100000以下がより好ましい。
高分子型の光重合開始剤としては、前記したものの他に、例えば、特開平9−77891号、特開平10−45927号に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物を使用することもできる。
より具体的には、高分子型の光重合開始剤としては、例えば、下記(a)〜(n)で表される繰り返し単位を含む化合物を挙げることができる。
【0120】
【化31】

【0121】
【化32】

【0122】
【化33】

【0123】
また、高分子型の光重合開始剤としては、下記構造のような、光重合開始基を有するモノマーから誘導される繰り返し単位と、その他のモノマーから誘導される繰り返し単位と、を含む共重合体であってもよい。
【0124】
【化34】

【0125】
なお、本発明における接着層用組成物には、光重合開始能を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
このような光重合開始能を有するエポキシ樹脂は、例えば、エポキシ基を有するモノマーと光重合開始基を有するモノマーとを共重合させることで容易に得ることができる。
以下に、エポキシ基を有するモノマーと、光重合開始基を有するモノマーと、の共重合体である光重合開始能を有するエポキシ樹脂の具体的例を示すが、本発明で用いられるエポキシ樹脂はこれらに限定されるものではない。
なお、下記共重合体(C)〜(N)中、x、yは、モル分率を表し、x+y=100(x≠0、y≠0)である。
【0126】
【化35】

【0127】
【化36】

【0128】
【化37】

【0129】
なお、これらの上記共重合体の内、モル分率x、yは、膜強度やグラフト重合性の観点から、x=5〜70、y=30〜95であることが好ましく、x=5〜50、y=50〜95であることが更に好ましく、x=10〜30、y=70〜90であることが特に好ましい。
【0130】
なお、本発明に使用可能な重合開始剤は、上記した重合開始剤に制限されるものではなく、他の公知のものの中から適宜選択することできる。
【0131】
重合開始剤は、1種単独で用いる以外に、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明における接着層用組成物が重合開始剤を含有する場合、その添加量は、該組成物の全固形分に対して、0.1質量%〜50質量%が一般的であり、1質量%〜30質量%が好ましい。該含有量が前記範囲内であると、感度や接着層の強度低下を効果的に防止することができる。
【0132】
−増感剤−
また、本発明における接着層用組成物は、感度を高める目的で、上述した光重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。
増感剤としては、具体的には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン誘導体等が含まれる。
【0133】
−溶剤−
本発明において接着層用組成物は、適宜、溶剤を含んでいてもよい。
有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のグリコール誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1−メトキシ−2−プロパノール等を挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶剤として使用してもよい。
【0134】
−接着層の形成方法−
接着層を形成する方法としては、まず、前述した接着層用組成物を塗布液として、前記した基材表面に、ナイフコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、スピンコーティング、バーコーティング、ディップコーティング等を採用して均一に塗布し、乾燥する方法が採用される。
乾燥時の加熱温度としては、20℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。加熱時間は、1秒〜50時間、より好ましくは100秒から3時間である。
【0135】
また、接着層用組成物の塗布、乾燥が終了した後、エネルギーの付与が行われる。このエネルギーの付与方法としては、加熱や活性光線の露光などが挙げられる。
加熱は、基材と接着層用組成物の塗布膜との積層体を、接触、非接触の熱源により加熱する方法、加熱ゾーン中を搬送するか或いは加熱ゾーン中に配置する方法などが挙げられる。
接触加熱は、ヒータを内蔵した加熱ロールと接触させる方法などが挙げられ、非接触加熱としては、赤外線ヒータによる加熱、温風の吹き付け、高温雰囲気下への配置などが挙げられる。
加熱条件としては、50℃〜90℃で5分間〜60分間程度であることが好ましい。
【0136】
また、エネルギー付与を活性光線の露光により行う場合には、一般的に用いられる水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等を用いてもよいし、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、蛍光灯等の光源を用いてもよい。また、熱陰極管、冷陰極管、電子線、X線等の光源、電磁波等を用いることができる。
本発明では、水銀灯、LED、半導体レーザを光源として用いることが好ましい。LED又は半導体レーザは小型であることが特徴である。特にLEDは長寿命であり、発熱量が少なく、消費電力が小さい上、オゾンが発生しない、電源を入れると即時使用可能であるという長所を有する。
また、光ビーム走査露光、マスクを用いたパターン露光によりパターンを形成することもできる。
【0137】
エネルギー付与終了後には、接着層中に残存する未反応の化合物を除去する目的で、溶媒による洗浄、例えば、水による洗浄が行われることが好ましい。
【0138】
本発明における接着層の厚みは、密着強度の点から、0.1μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.2μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。
【0139】
〔(a2)工程〕
積層体の製造方法<2>における(a2)工程では、金属箔上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する。すなわち、積層体の製造方法<1>における(a1)工程において、基材上に接着層を設けるのに対し、積層体の製造方法<2>における(a2)工程では、金属箔上に接着層を設ける。
まず、本工程で用いる金属箔について説明する。
【0140】
<金属箔>
本工程に用いられる金属箔としては、銅箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、ニッケル箔、銀箔、インジウム箔が挙げられ、中でも、好ましくは銅箔である。
また、金属箔の厚みとしては、5〜400μmが好ましく、9〜120μmがより好ましい。
【0141】
<接着層>
(a2)工程では、上述の金属箔上に接着層を形成する。
ここで、(a2)工程に用いられる接着層用組成物、及びこれを用いた接着層の形成方法は、前記(a1)工程で用いた接着層用組成物、及びこれを用いた接着層の形成方法と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0142】
前記(a1)工程により、基材上に接着層が形成され、また、前記(a2)工程により、金属箔上に接着層が形成される。
【0143】
〔(b1)工程〕
(b1)工程は、前述の(a1)工程にて基材上に接着層が形成された後、該接着層上に、(1)金属箔をラミネートする、又は、(2)蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成する手段を用いて金属層を形成する。
以下、(1)及び(2)の手段について説明する。
【0144】
<(1)金属箔をラミネートする手段>
(a1)工程にて基材上に接着層が形成された後、該接着層上に、(1)金属箔をラミネートすることで金属層を形成することができる。
接着層付き基材と金属箔とをラミネートする方法としては、例えば、特開2002−204047号公報の段落番号〔0016〕〜〔0028〕に記載の方法を挙げることができる。
基材付き接着層と、例えば銅箔と、を熱圧着する際の条件としては、40℃以上140℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。熱圧着温度がこの範囲にあると、接着層に粘着性が生じ銅箔との接着が良好となり、熱膨張の差に起因した位置ズレも抑制することができる。また、その際の圧力は、0.1Mpa〜20Mpaが好ましく、より好ましくは、0.4Mpa〜10MPaである。
また、ここで用いる金属箔としては、銅箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、ニッケル箔、銀箔、インジウム箔が挙げられ、中でも、好ましくは銅箔である。また、金属箔の厚みとしては、5μm〜400μm、より好ましくは9μm〜120μmである。
【0145】
<(2)蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成する手段>
(a1)工程にて基材上に接着層が形成された後、該接着層上に、(2)蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成することで金属層を形成することができる。
接着層上に蒸着又はスパッタリングで金属層を形成する方法としては、例えば、特開2008−91596号の段落番号〔0017〕〜〔0030〕に記載の方法を挙げることができる。
ここで、蒸着又はスパッタを用いて形成される金属膜(金属層)としては、ニッケル層、クロム層、銅層、又はニッケル、クロム、及び銅のいずれか2種以上を含む合金層から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、環境適性の観点から銅層が好ましい。
また、形成される金属膜(金属層)の膜厚としては、特に限定されるものではなく、導体層としての銅層を所定の厚さに積層することもできる。
【0146】
本発明において、上述のように蒸着又はスパッタを用いて形成された金属膜をめっき核とし、このメッキ核を用いて、その後、無電解めっき及び/又は電解めっきを行ってもよい。
ここで、無電解めっき、及び電解めっきについては、下記に記載した方法を用いることができる。
【0147】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本発明における無電解めっきは、例えば、蒸着又はスパッタを用いて形成された金属膜を有する基板を、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0148】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCu(SO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0149】
このようにして形成される金属層の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性を得るためには、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0150】
(電気めっき)
電気めっきは、蒸着又はスパッタを用いて形成された金属膜を電極として行われる。
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本発明において電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0151】
電気めっきにより得られる金属層の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0152】
〔(b2)工程〕
(b2)工程では、前述の(a2)工程にて金属箔上に接着層が形成された後、該接着層上に、(3)有機樹脂層をキャスト法で成膜する手段を用いて基材を形成する。
以下、(3)の手段について説明する。
【0153】
<(3)有機樹脂層をキャスト法で成膜する>
(a2)工程にて金属箔上に接着層が形成された場合は、該接着層上に、(3)有機樹脂層をキャスト法で成膜することで基材を形成することができる。
金属箔付き接着層上に有機樹脂層をキャスト法で成膜する方法としては、例えば、特開2000−133892号公報の段落番号〔0011〕〜〔0044〕に記載の方法を挙げることができる。
ここで、有機樹脂層を成膜する際には、例えば、ポリアミック酸ワニス等のポリイミド系ワニスをキャスト法で成膜し、その後、高温でイミド化することでポリイミド層を形成する方法が用いられる。
【0154】
上述のように、本発明の積層体の製造方法<1>によれば、(a1)工程と(b1)工程を有することで、また、本発明の積層体の製造方法<2>によれば、(a2)工程と(b2)工程を有することで、基材と金属層との間の接着層によりこの両者が強固に接着される。このため、基材と金属層との密着強度は、仮に基材の平滑性が高い場合であっても実用上十分な値を示す。
【0155】
〔プリント配線板への応用〕
本発明の積層体の製造方法により得られた積層体の金属層は、公知の方法でパターニングすることで、プリント配線板の配線とすることができる。得られたプリント配線板の配線は、平滑な基材との密着性に優れるという利点をも有するものである。
以下、プリント配線板の配線を形成する際のパターニング法について説明する。
【0156】
(エッチング工程)
本工程は、前述の方法で得られた積層体の金属層をパターン状にエッチングする工程である。
このエッチング工程には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0157】
サブトラクティブ法とは、積層体の金属層上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液でめっき膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチング装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0158】
また、セミアディティブ法とは、積層体の金属層上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属層をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジソト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては前述の手法が使用できる。
【0159】
以上の工程を経ることで、プリント配線板が得られる。
得られたプリント配線板は、基材との密着性に優れた金属パターン(配線)を有し、また、金属パターン間の絶縁信頼性に優れるといった特徴を有する。
特に、後述するように、表面凹凸が小さく、平滑性の基材を用いることで、更に、高周波送電時の電気損失を少なくすることができる。
【0160】
プリント配線板は、表面凹凸(Rz)が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の有機樹脂基材上に、接着層を介してめっき膜が設けられたものであり、前述のように、密着性に優れることを特徴とするものであり、密着性は0.6kN/m以上であることが好ましい。
【0161】
なお、基材表面の凹凸は、基材を基材表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定することができる。
本発明の製造方法により得られた積層体は、有機樹脂層からなる、或いは有機樹脂層を含む基材や絶縁層の上に形成された電気回路基板とのビルドアップにより、多層プリント配線板とすることもできる。
【実施例】
【0162】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0163】
[実施例1]
〔合成例1:アクリル樹脂Aの製造〕
N,N−ジメチルアセトアミド24質量部を80℃に加熱した後、これに窒素気流下で、エチルチオエチルメタクリレート2.69質量部、アクリル酸10.0質量部の混合物(モノマー液)と、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(商品名:V−601、和光純薬工業(株)製)0.355質量部、及びN,N−ジメチルアセトアミド12質量部の混合物(開始剤溶液)とをそれぞれ1.5時間かけて同時滴下した。滴下終了後、更に窒素気流下、80℃で5.5時間加熱した。次いで、下記構造のモノマーA 4.22質量部、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ,ラジカル(TEMPO)0.038質量部、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.70質量部、N,N−ジメチルアセトアミド12質量部の混合物を添加し、90℃で4時間加熱した。その後、反応液を室温まで冷却し、酢酸エチルに滴下、再沈を行った。析出した固体をろ過、乾燥し、アクリル樹脂Aを得た(重量平均分子量:73,000、酸価:296mgKOH/g)。
【0164】
【化38】

【0165】
〔アクリル樹脂組成物層の形成〕
有機樹脂基材としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H、厚さ128μm)を用いた。該基材に、下記の組成の接着層用組成物Aを、スピンコーターを用いて塗布し、その後、60℃の温度条件下において5分乾燥して、厚さが1μmのアクリル樹脂組成物層を形成した。
【0166】
(接着層用組成物A)
(A)アクリル樹脂A:10質量部
(B)1−メトキシ−2−プロパノール(和光純薬工業製):124質量部
【0167】
〔エネルギーの付与による接着層の形成〕
エネルギー付与は、1500W高圧水銀灯(UVX−02516S1LP01、ウシオ電気(株)製、254nmにおける光強度38mW/cm)を使用し、上記のようにして得られた有機樹脂基材とアクリル樹脂組成物層との積層体におけるアクリル樹脂組成物層側より全面に照射することにより実施した。光照射後、該積層体を、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業製)1質量%の水溶液に25℃で5分浸漬し、硬化が不十分な樹脂を除去した。
【0168】
〔金属層の形成〕
上記のようにして得られた接着層上に、18μmの膜厚の圧延銅箔(日本製箔製)を0.2MPaの圧力で80℃の条件によりラミネートして、銅箔からなる金属層を有する積層体Aを得た。
【0169】
〔性能評価:剥離強度〕
テンシロン(型番RTM−100、株式会社オリエンテック製)により、JIS C 6481に準拠して、積層体Aの金属層の剥離強度を測定し、その最大値と最小値の平均値を、金属層の剥離強度とした。結果を下記表2に示す。
【0170】
[実施例2]
実施例1で使用した接着層用組成物A中のアクリル樹脂Aに代えて、下記構造のアクリル樹脂B(重量平均分子量:68,000)を等量含有する接着層用組成物A’を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体Bを得た。
【0171】
【化39】

【0172】
[実施例3]
実施例1で使用した接着層用組成物A中のアクリル樹脂Aに代えて、下記構造のアクリル樹脂C(重量平均分子量:58,000)を等量含有する接着層用組成物A”を使用した以外は実施例1と同様にして、積層体Cを得た。
【0173】
【化40】

【0174】
[実施例4]
〔合成例2:低温硬化型潜在性硬化剤の製造〕
ノニルフェノール1.0molに対し、ホルマリン2.0mol及び2−メチルイミダゾール2.0molを、180℃で3時間反応させて、下記構造の化合物(I−1)を得た。
【0175】
【化41】

【0176】
上記化合物(I−1)についてGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)(昭和電工(株)Shodex GPC RI−71)により平均分子量を測定したところ、Mw=402を示した。これは、反応物の理論上の分子量とほぼ一致した。
得られた化合物(I−1)1molをキシレン/DMF溶液(2:1)363mlに溶解した。溶液中の化合物(I−1)の濃度は50質量%である。その後、該溶液中に液状のエポキシ樹脂(I−2)(Epikote828、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量380)0.6molを添加し、化合物(I−1)と70℃で反応させ、その後、キシレン/DMF溶液を減圧留去してエポキシ樹脂付加物(I)を含む「低温硬化型潜在性硬化剤」を得た。このときの化合物(I−1)とエポキシ樹脂(I−2)とのモル比は、1:0.6である。
この低温硬化型潜在性硬化剤はエポキシ樹脂を低温で硬化させる際の硬化剤として有用である。
【0177】
有機樹脂基材としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H、厚さ128μm)を用いた。該基材上に、下記の組成のエポキシ樹脂組成物を、コーティングバーを用いて塗布し、その後、70℃の温度条件下において2時間硬化して、厚さが5μmのエポキシ樹脂層を形成した。
【0178】
(エポキシ樹脂組成物)
(A)エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、エピコート828):10質量部
(B)低温硬化型潜在性硬化剤:合成例2で得た化合物:2質量部
【0179】
その後の、アクリル樹脂組成物層の形成、接着層の形成、金属層の形成は、実施例1と同様にして行い、積層体Dを得た。
【0180】
[実施例5]
実施例4で使用したエポキシ樹脂組成物の代わりに下記組成のエポキシ樹脂組成物を用いた以外は実施例4と同様にして、積層体Eを得た。
【0181】
(エポキシ樹脂組成物)
(A)エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、エピコート828):10質量部
(B)低温硬化型潜在性硬化剤A:合成例2で得た化合物:2質量部
(C)イルガキュア2959(チバスペシャルティケミカルズ製):1.3質量部
【0182】
【化42】

【0183】
[実施例6]
〔アクリル樹脂組成物層の形成〕
18μmの膜厚の電解銅箔(三井金属鉱業製)上に、下記の組成の接着層用組成物Aを、スピンコーターを用いて塗布し、その後、60℃の温度条件下において5分乾燥して、厚さが1μmのアクリル樹脂組成物層を形成した。
【0184】
(接着層用組成物A)
(A)アクリル樹脂A:10質量部
(B)1−メトキシ−2−プロパノール(和光純薬工業製):124質量部
【0185】
〔エネルギーの付与による接着層の形成〕
エネルギー付与は、1500W高圧水銀灯(UVX−02516S1LP01、ウシオ電気(株)製、254nmにおける光強度38mW/cm)を使用し、上記のようにして得られた基材とアクリル樹脂組成物層との積層体におけるアクリル樹脂組成物層側より全面に照射することにより実施した。光照射後、該積層体を、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業製)1質量%の水溶液に25℃で5分浸漬し、硬化が不十分な樹脂を除去した。
【0186】
〔有機樹脂層の形成〕
その上に、ポリアミック酸の12%N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を塗布し、140℃で乾燥させ30μmの膜厚のポリアミック酸膜(ポリイミド前駆体膜)を形成した。その後、160℃、200℃、230℃で仮乾燥してNMPを除去した後、窒素雰囲気のオーブン中で350℃、1時間加熱を行うことでポリイミド膜をイミド化した。これにより、積層体Fを得た。
【0187】
[実施例7]
実施例6で使用した接着層用組成物Aの代わりに下記組成の接着層用組成物Bを用いた以外は実施例6と同様にして、積層体Gを得た。
【0188】
(接着層用組成物B)
(A)アクリル樹脂A:10質量部
(B)1−メトキシ−2−プロパノール(和光純薬工業製):124質量部
(C)イルガキュア2959(チバスペシャルティケミカルズ製):0.2質量部
【0189】
[実施例8]
〔接着層の形成〕
ガラスエポキシ樹脂(松下電工製)からなる基材上に、実施例7で用いた接着層用組成物Bを用い、また、実施例7と同様にして、接着層を形成した。
【0190】
〔金属層の形成〕
得られた接着層上に、18μmの膜厚の圧延銅箔(日本製箔製)を0.2MPaの圧力で80℃の条件によりラミネートして、銅箔からなる金属層を有する積層体Hを得た。
【0191】
[実施例9]
〔接着層の形成〕
PETフィルム(「東洋紡エステル」フイルム、品名:A4100、厚さ:188μm、製造番号:145102071−3)からなる基材上に、実施例7で用いた接着層用組成物Bを用い、また、実施例7と同様にして、接着層を形成した。
【0192】
〔金属層の形成〕
得られた接着層上に、18μmの膜厚の圧延銅箔(日本製箔製)を0.2MPaの圧力で80℃の条件によりラミネートして、銅箔からなる金属層を有する積層体Iを得た。
【0193】
[実施例10]
〔接着層の形成〕
PENフィルム(ポリエチレンナフタレート:帝人社製テオネックスQ65FA)からなる基材上に、実施例7で用いた接着層用組成物Bを用い、また、実施例7と同様にして、接着層を形成した。
【0194】
〔金属層の形成〕
得られた接着層上に、枚葉型の真空スパッタ蒸着槽(アルバック社製)を用いて、100nmの膜厚の銅膜をスパッタにて形成した。これにより、銅膜からなる金属層を有する積層体Jを得た。
【0195】
[実施例11]
〔接着層の形成〕
ポリカーボネート樹脂基材(タキロン製)からなる基材上に、実施例7で用いた接着層用組成物Bを用い、また、実施例7と同様にして、接着層を形成した。
【0196】
〔金属層の形成〕
得られた接着層上に、枚葉型の真空スパッタ蒸着槽(アルバック社製)を用いて、100nmの膜厚の銅膜をスパッタにて形成した。これにより、銅膜からなる金属層を有する積層体Kを得た。
【0197】
[実施例12]
〔接着層の形成〕
ABS樹脂基材(カンキ化工材製)からなる基材上に、実施例7で用いた接着層用組成物Bを用い、また、実施例7と同様にして、接着層を形成した。
【0198】
〔金属層の形成〕
得られた接着層上に、枚葉型の真空スパッタ蒸着槽(アルバック社製)を用いて、100nmの膜厚の銅膜をスパッタにて形成した。これにより、銅膜からなる金属層を有する積層体Lを得た。
【0199】
〔比較例1〕
実施例1で使用したアクリル樹脂に代えて、下記構造のアクリル樹脂D(重量平均分子量:74,000)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体CAを得た。
【0200】
【化43】

【0201】
〔比較例2〕
実施例1で使用したアクリル樹脂に代えて、下記構造のアクリル樹脂E(重量平均分子量:60,000)を用いた以外は実施例1と同様にして積層体CBを得た。
【0202】
【化44】

【0203】
[実施例13]
〔基材の作製〕
有機樹脂基材としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H、厚さ128μm)を用いた。該基材上に、下記の組成のエポキシ樹脂組成物を、コーティングバーを用いて塗布し、その後、70℃の温度条件下において2時間硬化して、厚さが5μmのエポキシ樹脂層を形成した。
【0204】
(エポキシ樹脂組成物)
(A)エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、エピコート828):10質量部
(B)低温硬化型潜在性硬化剤A:合成例2で得た化合物 : 2質量部
(C)トリメチロールプロパントリメタクリレート(和光純薬工業製): 3質量部
【0205】
〔接着層の形成〕
上記のようにして得られた基材上に、実施例7で用いた接着層用組成物Bを用い、また、実施例7と同様にして、接着層を形成した。
【0206】
〔金属層の形成〕
得られた接着層上に、18μmの膜厚の圧延銅箔(日本製箔製)を0.2MPaの圧力で80℃の条件によりラミネートして、銅箔からなる金属層を有する積層体Mを得た。
【0207】
[実施例14]
18μmの膜厚の電解銅箔(三井金属鉱業製)上に、実施例3と同様にして、アクリル樹脂Cを含む接着層を形成し、その上に、ポリアミック酸の12%N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を塗布し、140℃で乾燥させ30μmの膜厚のポリアミック酸膜(ポリイミド前駆体膜)を形成した。その後、160℃、200℃、230℃で仮乾燥してNMPを除去した後、窒素雰囲気のオーブン中で350℃、1時間加熱を行うことでポリイミド膜をイミド化した。これにより、積層体Nを得た。
【0208】
[実施例15]
〔基材の作製〕
有機樹脂基材としてポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン500H、厚さ128μm)を用いた。該基材上に、下記の組成のエポキシ樹脂組成物を、コーティングバーを用いて塗布し、その後、70℃の温度条件下において2時間硬化して、厚さが5μmのエポキシ樹脂層を形成した。
【0209】
(エポキシ樹脂組成物)
(A)エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、エピコート828):10質量部
(B)低温硬化型潜在性硬化剤A:合成例2で得た化合物 : 2質量部
(C)トリメチロールプロパントリメタクリレート(和光純薬工業製): 3質量部
【0210】
〔接着層の形成〕
上記のようにして得られた基材上に、実施例7で用いた接着層用組成物Bを用い、また、実施例7と同様にして、接着層を形成した。
【0211】
〔金属層の形成〕
得られた接着層上に、18μmの膜厚の圧延銅箔(日本製箔製)を0.2MPaの圧力で80℃の条件によりラミネートして、銅箔からなる金属層を有する積層体を得た。
【0212】
〔電解めっき〕
得られた積層体に対し、下記組成の電解めっき浴にて、3A/dmの電流密度で20分間電解めっきを行い、厚さ8μmの電解銅めっき層を形成し、60℃で120分間のアフターベークを行い、積層体Oを得た。
【0213】
(電解めっき浴の組成)
・蒸留水 :1300mL
・硫酸銅・5水塩(和光純薬工業製) :133g
・濃硫酸(和光純薬工業製) :340g
・塩酸(和光純薬工業製) :0.25mL
・カッパ−グリームPCM(メルテックス(株)製):9mL
【0214】
実施例2〜実施例15、比較例1〜比較例2で得られた積層体B〜O、CA、CBについて、金属層の剥離強度を実施例1と同様にして行った。これらの結果を表2に示す。
【0215】
また、実施例1〜実施例15、比較例1〜比較例2において、接着層と金属層の界面接着に要する温度を測定し、これをプロセス最高温度として表2に併記した。
なお、実施例6、7、及び14のポリイミドキャスト法では、イミド化によるポリイミド膜形成に高温を要するがその温度は除外してある。
【0216】
【表2】

【0217】
上記表2より、本発明の積層体の製造方法によれば、90℃以下のプロセス温度で、基材との高い密着強度を発現する金属層を形成しうることがわかる。
【0218】
〔実施例16〕
実施例5で得られた積層体Eを用いて、サブトラクティブ法により微細配線を作製した。
具体的には、実施例5で得られた積層体Eの金属層表面に、光硬化型感光性ドライフィルム(富士フイルム製)をラミネートし、所望の導体回路パターンが描画されたマスクフィルム(金属パターン部分が開口部、金属パターン非形成部がマスク部)を通して紫外線露光させ、画像を焼付け、現像を行った。このとき形成した金属パターン(絶縁評価用櫛型パターン)の形状を図1に示す。
次に、塩化第二銅エッチング液を用いてレジストが除去された部分の金属膜を除去した。その後、ドライフィルムを剥離することにより、銅微細パターンを得た。
電気絶縁性評価はHAST試験機(高度加速寿命試験装置EHS−411M:Espec社製)を用いた。印加電圧10.0V、温湿度は125℃、85%不飽和(2気圧)、試験時間は200時間の条件で行い、加湿水は抵抗値13MΩの蒸留水を使用した。ここで、櫛形配線間の絶縁性に関する故障本数を計測し、絶縁故障率を算出した。
【0219】
〔実施例17〕
実施例5で得られた積層体Eを用いて、セミアディティブ法により微細配線を作製した。
具体的には、実施例5で得られた積層体Eの金属層表面に、光硬化型感光性ドライフィルム(富士フイルム製)をラミネートし、所望の導体回路パターンが描画されたマスクフィルム(金属パターン部分がマスク部、金属パターン非形成部が開口部)を通して紫外線露光させ、画像を焼付け、現像を行った。次に、レジストが除去された部分に、下記に示す電解めっき浴にて20分間電解めっきを行った。次に、ドライフィルムレジストを剥離した後、塩化第二銅エッチング液を用いて金属パターン非形成部分の金属膜を除去し、銅微細パターンを得た。形成した金属パターンの形状は実施例16と同様であり、また、絶縁性評価も実施例16と同様に行った。
【0220】
(電解めっき浴の組成)
・蒸留水 :1300mL
・硫酸銅・5水塩(和光純薬工業製) :133g
・濃硫酸(和光純薬工業製) :340g
・塩酸(和光純薬工業製) :0.25mL
・カッパ−グリームPCM(メルテックス(株)製) :9mL
【0221】
〔比較例3〕
特開2004−79660号公報の実施例1の方法(表面プラズマ処理を行う非スパッタめっき法)に従い、ポリイミドフィルム上に電解銅めっきを行い、積層体を作製した。この積層体を用いて、実施例16と同様にして、サブトラクティブ法により微細配線を作製した。絶縁性評価は、実施例16と同様に行った。
【0222】
前記実施例16、実施例17、及び比較例3の絶縁性評価の結果を下記表3に示す。
【0223】
【表3】

【0224】
表3の結果より、本発明の形成方法によれば、基材表面に対し親水化前処理を施す必要がないため、電気絶縁性に優れた微細配線を作製することができる。
また、実施例16、及び実施例17のように、クロムフリーのプロセスを提供できるため、環境負荷も小さいことが分かる。
【0225】
<クロスハッチテスト>
前記実施例16、実施例17、下記比較例4、比較例5で得られた微細配線(金属パターン)を、クロスカットガイドを用いて1mm幅にクロスカットし、100個のサンプルを作成した(1個のサンプルサイズ:1mm×50μm)。その後、JIS K5400(碁盤目試験)に従い、テープ剥離を行い、剥離せず残存したサンプルの個数をルーペで測定した。その結果を下記表4に示す。
テープ剥離テスト結果は、100個のサンプルのうち、残ったサンプルの個数を表し、分子の数が大きいほど密着性が高いことを表す。
【0226】
〔比較例4〕
実施例5において、アクリル樹脂Aの代わりにアルキル樹脂Eを用いて積層体CCを作製した。この積層体を用いて、実施例16と同様にして、サブトラクティブ法により微細配線を作製した。
【0227】
〔比較例5〕
実施例5において、アクリル樹脂Aの代わりにアルキル樹脂Eを用いて積層体CDを作製した。この積層体を用いて、実施例17と同様にして、セミアディティブ法により微細配線を作製した。
【0228】
【表4】

【0229】
上記表4に記載の通り、本発明の積層体の製造方法により得られた積層体は、基材と金属膜(金属パターン)との密着性に優れることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】実施例及び比較例における絶縁評価用櫛型パターンの形状を示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)基材上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程と、
(b1)該接着層上に、(1)金属箔をラミネートする、又は、(2)蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成する手段を用いて金属層を形成する工程と、を含む、基材と接着層と金属層とからなる積層体の製造方法。
【請求項2】
(a2)金属箔上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程と、
(b2)該接着層上に、(3)有機樹脂層をキャスト法で成膜する手段を用いて基材を形成する工程と、を含む、基材と接着層と金属層とからなる積層体の製造方法。
【請求項3】
前記接着層用組成物が、熱又は光で硬化する化合物を更に含有する請求項1又は請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂が、分子内に熱又は光で硬化する部分構造を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記接着層用組成物が、光重合開始剤を更に含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記(a1)工程で用いられる基材が、金属、有機樹脂、及び金属を積層した有機樹脂から選択された基材である請求項1、請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記金属が、銀、銅、及び金から選択された金属である請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記金属が銅である請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記金属がパターン状である請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記有機樹脂が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びABS樹脂から選択された樹脂を含む請求項6に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−76139(P2010−76139A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244417(P2008−244417)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】