説明

積層体及びその製造方法

【課題】表面が高硬度でかつ柔軟な取扱い性に優れた硬化樹脂フィルムを有する積層体とその製造方法を目的とする。
【解決手段】本発明の積層体は、第1の剥離フィルムと、第2の剥離フィルムと、第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとの間に存在し、第1の放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる第1の硬化樹脂層と、第2の放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる第2の硬化樹脂層とを有し、前記第1の硬化樹脂層が、鉛筆硬度がHB以下で、厚さが10〜200μmであり、前記第2の硬化樹脂層が、鉛筆硬度がH以上で、厚さが2〜50μmであり、前記第1の硬化樹脂層が裏面側に配置され、前記第2の硬化樹脂層が表面側に配置され、前記第2の硬化樹脂層と前記第2の剥離フィルムが隣接していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性樹脂を硬化させた硬化樹脂フィルムは、家具、建具、キッチン収納、壁紙等の建材分野、店舗看板や地図看板などのサイン分野で部材表面に意匠性を付与する化粧シートのベースフィルムや、樹脂製品の表面に耐擦傷性を付与するハードコートとして用いられる。
【0003】
このような硬化樹脂フィルムは、例えば剥離フィルム上に放射線硬化性樹脂を塗布した後接着層を塗布して硬化させた積層体の状態で提供され、建材などに貼付した後に剥離フィルムを剥離して利用されていた(特許文献1参照)。
また、上記のような利用分野で用いられる硬化樹脂フィルムには、耐擦傷性や耐薬品性が必要とされている。これらの性質を付与するためには、硬化樹脂フィルムを高硬度にする必要があり、放射線硬化性樹脂の配合により架橋密度を制御することで硬度が付与されていた(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−180400号公報
【特許文献2】特開2000−108594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような利用分野で用いられる硬化樹脂フィルムに要求される硬度は鉛筆硬度H以上であった。
しかしながら、特許文献2に開示されているように、放射線硬化性樹脂の配合により架橋密度を制御することのみで、鉛筆硬度H以上の硬化樹脂フィルムを得た場合、硬化樹脂フィルムが脆くなってしまう傾向にある。従って、特許文献1に開示されているように、従来の硬化樹脂フィルムは、建材等に貼付するまで剥離フィルム等の基材を必要とし、独立のフィルムとして取扱うことが困難であった。
一方、脆くなく、取扱いやすいことを前提に放射線硬化性樹脂を配合し架橋密度を低くした場合、硬度の低い硬化樹脂フィルムとなり、耐擦傷性、耐薬品性等の硬化樹脂フィルムに必要な性質を付与することができないという問題が生じた。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、表面が高硬度でかつ柔軟な取扱い性に優れた硬化樹脂フィルムを有する積層体とその製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層体は、第1の剥離フィルムと、第2の剥離フィルムと、第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとの間に存在し、第1の放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる第1の硬化樹脂層と、第2の放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる第2の硬化樹脂層とを有し、前記第1の硬化樹脂層が、鉛筆硬度がHB以下で、厚さが10〜200μmであり、前記第2の硬化樹脂層が、鉛筆硬度がH以上で、厚さが2〜50μmであり、前記第1の硬化樹脂層が裏面側に配置され、前記第2の硬化樹脂層が表面側に配置され、前記第2の硬化樹脂層と前記第2の剥離フィルムが隣接していることを特徴とする。
【0007】
本発明の積層体では、前記第1の放射線硬化性樹脂組成物が顔料を含有していると好ましい。
本発明の積層体では、前記第2の硬化樹脂層の、第2の剥離フィルムに接する表面がエンボス加工されていると好ましい。
【0008】
本発明の積層体の製造方法は、第1の剥離フィルムの表面に、硬化後の鉛筆硬度がHB以下となる第1の放射線硬化性樹脂組成物を硬化後に10〜200μmとなるように塗布して第1塗膜を得る第1塗膜形成工程と、第1塗膜の上に、硬化後の鉛筆硬度がH以上となる第2の放射線硬化性樹脂組成物を硬化後に2〜50μmとなるように塗布して第2塗膜を得る第2塗膜形成工程と、第2塗膜を第2の剥離フィルムで被覆する被覆工程と、第1の剥離フィルム又は第2の剥離フィルムの上より放射線を照射して、第1塗膜及び第2塗膜を硬化させて第1の硬化樹脂層及び第2の硬化樹脂層を得る硬化工程を有することを特徴とする。
本発明の積層体の製造方法において、前記第2の剥離フィルムが、第2の硬化樹脂層に接する面に凹凸を有するエンボスフィルムであり、これによって第2の硬化樹脂層表面にエンボス形状を形成すると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体によれば、耐擦傷性、耐薬品性などを有しながらも、取扱い性に優れた硬化樹脂フィルムが得られる。
また、本発明の積層体の製造方法によれば、上記のような積層体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、図1に示すように、第1の剥離フィルム11と、第2の剥離フィルム12と、第1の剥離フィルム11と第2の剥離フィルム12との間に存在する、鉛筆硬度がHB以下である第1の硬化樹脂層13と鉛筆硬度がH以上である第2の硬化樹脂層14とを有することを特徴とする。
なお、本発明の積層体において、鉛筆硬度がHB以下である第1の硬化樹脂層13は裏面側に配置され、鉛筆硬度がH以上である第2の硬化樹脂層14は表面側に配置され、前記第2の硬化樹脂層と前記第2の剥離フィルムは隣接している。
また、以下本発明の積層体10において、第1の剥離フィルム11と第2の剥離フィルム12とを剥離して得られる、第1の硬化樹脂層13と第2の硬化樹脂層14とを有する積層物を硬化樹脂フィルム16ということがある。
【0011】
[第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルム]
本発明の積層体における第1の剥離フィルムは使用前又は次工程の建材等への接合加工前に剥離されると好ましい。第2の剥離フィルムは、次工程の建材等への接合加工後に剥離されると好ましい。従って、第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとに用いられるフィルムは、各硬化樹脂層より容易に剥離できるものであれば制限されず、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等
の他、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン、並びにシリコーン樹脂などの剥離材で被覆された紙などが挙げられる。
【0012】
第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとはその表面状態によって、最終製品の各硬化樹脂層の表面状態を左右することできる。
従って、例えば、硬化樹脂層の表面状態をより平滑にするためには、表面が平滑なプレーンポリエチレンテレフタレートフィルム等を使用すると好ましく、艶を消したマット調にするためには、シリカ等が添加された艶消しポリエチレンテレフタレートフィルムや表面をサンドブラストで荒らしたポリエチレンテレフタレートフィルム等を使用すると好ましく、凹凸のあるエンボス調にするためには、エンボス加工されたポリエチレンテレフタレートフィルム等を使用すると好ましい。
【0013】
第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとの厚さは共に、12〜188μmであると好ましく、25〜100μmであるとより好ましく、25〜50μmであると更に好ましい。
第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとの厚さがそれぞれ、12μm以上であれば、構造上の取扱いが容易であり、188μm以下であれば製品価格に対して有利である。
【0014】
[第1の硬化樹脂層]
第1の硬化樹脂層は、硬化樹脂フィルムに柔軟性を付与して第2の硬化樹脂層の脆さを防ぎ、硬化樹脂フィルムの取扱い性を向上させるものである。従って、第1の硬化樹脂層には、硬度が低い第1の放射線硬化性樹脂組成物を用いる必要がある。
なお、本発明における放射線とは紫外線あるいは電子線を意味する。
【0015】
第1の放射線硬化性樹脂組成物としては、紫外線又は電子線照射後の鉛筆硬度がHB以下である放射線硬化性樹脂組成物を用い、更に鉛筆硬度が、B以下であるとより好ましく、2B以下であると更に好ましい。鉛筆硬度がHB以下であれば、硬化樹脂フィルムに柔軟性を付与することが可能であり、硬化樹脂フィルムの取扱い性が向上する。
一方、第1の放射線硬化性樹脂組成物の鉛筆硬度は6B以上であると好ましく、3B以上であるとより好ましい。特に鉛筆硬度が3B以上の場合、第2の硬化樹脂層との組合せにおいて、際擦傷性や耐薬品性を維持しやすい傾向にある。
【0016】
第1の放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、鉛筆硬度は以下のようにして測定する。
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「二軸延伸PETフィルム」という。)に、50μmの厚さの硬化樹脂層が得られるように各紫外線硬化性樹脂を塗布する。次に、窒素雰囲気下、160W、ライン速度10m/minの条件で紫外線照射を行い、紫外線硬化性樹脂硬化させて硬化樹脂層とし、その後、二軸延伸PETフィルムを剥離する。
得られた硬化樹脂層を水平にしたガラス板に載せて、JIS K5600−5−4に準じて、23℃の条件下で鉛筆硬度を測定する。
詳しくは、きず跡が生じない場合、少なくとも3mm以上のきず跡が生じるまで硬度を上げて試験を行う。一方、きず跡が生じた場合、きず跡が生じなくなるまで硬度を下げて試験を行う。
以上の試験を行い、きず跡を生じない場合の最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とする。
なお、鉛筆硬度の測定は2回繰り返し、2回の結果が1単位以上異なる場合は試験をやり直す。
【0017】
一方、第1の放射線硬化性樹脂組成物として、電子線硬化性樹脂を用いる場合、鉛筆硬度は以下のようにして測定する。
厚さ50μmの二軸延伸PETフィルムに、50μmの厚さの硬化樹脂層が得られるように各電子線硬化性樹脂を塗布した後、窒素雰囲気下、電圧200kv、線量70kGy、ライン速度10m/minの条件で電子線照射を行い、硬化させて硬化樹脂層とし、二軸延伸PETフィルムを剥離する。
得られた硬化樹脂層を水平にしたガラス板に載せて、上記紫外線硬化性樹脂と同様JIS K5600−5−4に準じて、鉛筆硬度を測定する。
【0018】
鉛筆硬度がHB以下である第1の放射線硬化性樹脂組成物は、電子線硬化性樹脂であっても紫外線硬化性樹脂であってもよく、重合性モノマーと、重合性オリゴマーとを含有するものを用いると好ましい。
具体的には、重合性モノマーとして、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート〔「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを表す。以下同様。〕、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、重合性オリゴマーとしては、重合性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
なお、鉛筆硬度をより低くして柔軟性がより顕著な第1の硬化樹脂層を得たい場合は、重合性モノマーを添加しないことが好ましい。
また、アクリル系オリゴマー、具体的にはウレタンアクリレートを用いると高耐候性を付与することができ好ましい。
【0019】
また、第1の放射線硬化性樹脂組成物には、光開始剤や光開始助剤を含有させることも可能である。
光開始剤としては、紫外線によりラジカルを発生するものであれば制限されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが好ましい。
これら光開始剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよい。2種類以上混合する場合には、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンと2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンとの併用、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドと2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンとの併用が好ましい。
【0020】
更に、第1の放射線硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定化剤、シリカ等充填剤、及びシリコンオイル等の添加物を含有させることができる。
特に、電子線硬化性樹脂を用いる場合は、有機顔料、無機顔料等を含有させて着色することが可能である。特に、第1の硬化樹脂層を、顔料を用いて着色すると意匠性が得られ好ましい。
また、無着色の場合は、紫外線吸収剤や光安定化剤等を含有させると紫外線を防ぎ、耐候性に劣る下地基材の性能をカバーすることも可能となる。
【0021】
第1の硬化樹脂層の厚さは、10μm以上であり、20μm以上であると好ましく30μm以上であるとより好ましい。一方、第1の硬化樹脂層の厚さは200μm以下であり、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
第1の硬化樹脂層の厚さが10μm以上であれば、フィルムの柔軟性及び取扱い性を維持することができ、200μm以下であれば、製品価格に有利である。
【0022】
[第2の硬化樹脂層]
第2の硬化樹脂層は、硬化樹脂フィルムの表面に耐擦傷性、耐薬品性などの表面性能を付与するものである。従って、第2の硬化樹脂層には、高硬度である第2の放射線硬化性樹脂組成物を用いる必要がある。
第2の放射線硬化性樹脂組成物としては、紫外線又は電子線照射後の鉛筆硬度がH以上である放射線硬化性樹脂組成物を用い、更に鉛筆硬度が、3H以上であるとより好ましく、5H以上であると更に好ましい。一方、第2の放射線硬化性樹脂組成物の鉛筆硬度の上限値は9Hである。
鉛筆硬度がH以上であれば、硬化樹脂フィルムの表面に十分な対擦傷性や耐薬品性などを付与することが可能であり、また、鉛筆硬度がH未満(HB以下)であれば、表面性能には特徴を見出せない。
更に、鉛筆硬度が9H以下であれば、第1の硬化樹脂層との組合せにおいて、柔軟性を維持しやすい傾向にある。
なお、鉛筆硬度の測定方法は、第1の放射線硬化性樹脂組成物と同様とする。
【0023】
鉛筆硬度がH以上である第2の放射線硬化性樹脂組成物には、重合性モノマーと、重合性オリゴマーとを含有するものを用いると好ましい。
具体的には、重合性モノマーとしては、第1の放射線硬化性樹脂組成物と同様のものを用いることができる。
一方、重合性オリゴマーとしては、変性アクリル樹脂、直鎖アクリルオリゴマー、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等を挙げることができる。
特に、アクリル系オリゴマー、具体的にはウレタンアクリレートを用いると高耐候性を付与することができ好ましい。
【0024】
また、第2の放射線硬化性樹脂組成物には、第1の放射線硬化性樹脂組成物と同様の光開始剤や光開始助剤を添加することが可能である。
更に、必要に応じて第1の放射線硬化性樹脂組成物と同様の添加物を含有させることも可能である。
【0025】
第2の硬化樹脂層の厚さは、2μm以上であり、5μm以上であると好ましく10μm以上であるとより好ましい。一方第2の硬化樹脂層の厚さは50μm以下であり、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
第2の硬化樹脂層の厚さが2μm以上であれば、耐擦傷性や耐薬品性などの表面性能を維持することができる。一方、100μm以下であれば製品価格に対して有利である。
【0026】
[その他の層]
(その他の硬化樹脂層)
本発明の積層体においては、第1の硬化樹脂層と第2の硬化樹脂層との間に別の硬化樹脂層を設け、第1の硬化樹脂層から第2の硬化樹脂層に向けて各層の鉛筆硬度を段階的に上げていくことが可能である。このように、硬化樹脂フィルムを3層以上とすると、より取扱い性に優れ、かつ耐擦傷性や耐薬品性に優れる硬化樹脂フィルムを得ることが可能となる。
【0027】
また、本発明の積層体においては、第1の硬化樹脂層と第1の剥離フィルムとの間に、接着層、プライマー層、色柄印刷層等を設けることが可能である。例えば、図1に示される積層体10のように、第1の剥離フィルム11と第1の硬化樹脂層13との間に、接着層15を設置できる。
接着層に用いる接着剤としては、粘着剤であるアクリル系樹脂や、熱可塑性の加熱接着剤であるウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂及び酢酸ビニル系樹脂等を用いることが可能である。
なお、第1の硬化樹脂層と第1の剥離フィルムとの間に、接着層を予め設けておくと、建材等に本発明に係る硬化樹脂フィルムを貼付する際、現場での施工が容易となり好ましい。
【0028】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は以下の4工程を有する。
一定方向に移動する第1の剥離フィルムの表面に、第1の放射線硬化性樹脂組成物塗布して第1塗膜を得る第1塗膜形成工程。
第1塗膜の上に、第2の放射線硬化性樹脂組成物を塗布して第2塗膜を得る第2塗膜形成工程。
第2塗膜を第2の剥離フィルムで連続的に被覆する被覆工程。
第1の剥離フィルム又は第2の剥離フィルムの上より窒素ガス雰囲気下で適切な条件の放射線を照射して、第1塗膜及び第2塗膜を硬化させて第1の硬化樹脂層及び第2の硬化樹脂層を得る硬化工程。
【0029】
なお、各層を塗布する方法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、リバースロールコート、ナイフコート、フローコート、コンマコート及びダイコート等が挙げられる。
また、上記積層体の形成方法は、第1塗膜形成工程と第2塗膜形成工程との間に、鉛筆硬度を変化させた別の硬化樹脂層を設ける工程を有していてもよく、第1の硬化樹脂層から第2の硬化樹脂層に向けて各層の鉛筆硬度を段階的に上げると好ましい。
また、第2の剥離フィルムとして、片面に凹凸を有するエンボスフィルムを用い、このエンボスフィルムの凹凸を有する面と第2の硬化樹脂層とが接するようにすると、第2の硬化樹脂層の表面に硬化と同時にエンボス形状を形成することができる。
また、前記第1塗膜形成工程の前に、第1の剥離フィルムの表面に接着剤を塗布し、予め接着層を設けることも可能である。若しくは、塗膜の硬化後、第1の剥離フィルムを剥離し接着剤等を塗布しても良い。
【0030】
本発明の積層体は、鉛筆硬度がHB以下である第1の放射線硬化性樹脂組成物よりなる第1の硬化樹脂層と、鉛筆硬度がH以上である第2の放射線硬化性樹脂組成物よりなる第2の硬化樹脂層を有している。
このように、放射線硬化性樹脂組成物の鉛筆硬度を各層ごとに調整することで、本発明の積層体の第1の剥離フィルム及び第2の剥離フィルムを剥離して得られる、第1の硬化樹脂層と第2の硬化樹脂層を有している硬化樹脂フィルムは、フィルム表面を高硬度としても脆くならずに取扱い性に優れ、また、柔軟性を付与してもフィルム表面の耐擦傷性や耐薬品性が低下しない優れたものとなった。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、各実施例における諸物性の測定及び評価は次の方法で行った。
【0032】
[鉛筆硬度]
<電子線照射法>
厚さ50μmの二軸延伸PETフィルム(ユニチカ製、S50)に、50μmの厚さの硬化樹脂層が得られるように各放射線硬化性樹脂組成物を塗布した。その後、窒素雰囲気下、電圧200kv、線量70kGy、ライン速度10m/minの条件で電子線照射を行い、放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化樹脂層とし、二軸延伸PETフィルムを剥離した。
得られた硬化樹脂層を水平にしたガラス板に載せて、JISK5600−5−4に準じて、23℃の条件下で鉛筆硬度を測定した。
詳しくは、きず跡が生じない場合、少なくとも3mm以上のきず跡が生じるまで硬度を上げて試験を行った。一方、きず跡が生じた場合、きず跡が生じなくなるまで硬度を下げて試験を行った。
以上の試験を行い、きず跡を生じない場合の最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
なお、鉛筆硬度の測定は2回繰り返し、2回の結果が1単位以上異なる場合は試験をやり直した。
【0033】
[耐擦傷性]
スチールウール#0000(日本スチールウール製)を約10mmにまとめ、500gの荷重をかけて得られたサンプルの表面を10往復摩擦し、その後表面を目視で観察して傷の有無を確認して、以下の基準で評価をおこなった。
なお、摩擦時の条件は、温度23℃、ストローク幅25mm、速度2秒/往復とした。
<評価基準>
A:傷が0〜5本
B:傷が5〜10本
C:傷が10本以上
【0034】
[耐薬品性]
サンプル上に脱脂綿20mm角を置き、スポイトで各薬品を5cc含ませ、一昼夜放置した。
但し、油性マジック(黒及び赤)(マジックインキ製、太書き用)については直接サンプルに塗布して、一昼夜放置した。
その後、各薬品をサンプル上から、水洗、中性洗剤、消しゴム等を用いて除去し、サンプル表面の変化を目視で観察し、以下の基準で評価を行った。
なお、用いた各薬品は以下のとおりである。
<薬品>
「有機溶剤系」:イソプロピルアルコール、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン
「酸、アルカリ系」:NaOH(濃度10質量%溶液)、HCl(濃度10質量%溶液)、HSO(濃度10質量%溶液)、オレイン酸(濃度10質量%溶液)
「食品系」:カレー(エスビー食品製、エスビーカレー、固形分10質量%溶液)、醤油(キッコーマン製、本醸造しょうゆ)、コーヒー(ネスレ日本製、ネスカフェ、4質量%溶液)、ケチャップ(カゴメ製)
「事務用品系」:油性マジック(黒)(マジックインキ製、太書き用)、油性マジック(赤)(マジックインキ製、太書き用)、水性インク(青)(パイロット製、インキブルー)、水性インク(赤)(パイロット製、インキレッド)
「洗剤系」:キッチンハイター(商品名、花王製)、マジックリン(商品名、花王製)、オレンジエキスクリーナー(商品名、エステー化学製)、カビキラー(商品名、ジョンソン製)、ガラスクルー(商品名、ジョンソン製)
「整髪料系」:ホイップフィール(商品名、ユニリーバ製)
「黒鉛系」;カーボンペースト(組成:カーボンブラック25質量%、塩化ビニル樹脂25質量%、ジオクチルフタレート50質量%)、靴墨(JEWEL製、ニューエクセル)
<評価基準>
0:薬品の痕跡無し。
1:薬品のごくわずかな痕跡が残る。
2:薬品の軽微な痕跡が残る。
3:薬品の明らかな痕跡が残る。
4:薬品をほとんど除去できない。
【0035】
[取扱い性]
各サンプルについて以下の2つの試験を行い、評価を行った。
(試験1)
各サンプルを手で持ち上げ、別側の手指で摘んで折り曲げて、表面山曲げを行った。
(試験2)
各サンプルを手で持ち上げ、別側の手指で摘んで折り曲げて、表面谷曲げを行った。
なお、各試験における折り曲げ時の温度は23℃とする。
<評価基準>
A:表面山曲げ、表面谷曲げ共に割れない。
B:表面山曲げで割れるが、表面谷曲げでは割れない。
C:フィルムが割れて持ち上げられない。
※本発明の特性上、山曲げで割れず谷曲げで割れることはない。
【0036】
各実施例にて用いた剥離フィルム(A)及び放射線硬化性樹脂組成物(B)、プライマー(C)を以下に示す。
【0037】
[剥離フィルム(A)]
(A−1):二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ製、S50、ハイグロスクリヤーフィルム)、厚さ50μm。
(A−2):二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、A4100、超ハイグロスクリヤーフィルム)、厚さ50μm。
(A−3):二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学製、E−130、マットフィルム)、厚さ26μm。
【0038】
[放射線硬化性樹脂組成物(B)]
(B−1):ポリエステルアクリレート(東亞合成製、アロニックスM8030、鉛筆硬度4H)。
(B−2):ウレタンアクリレート(日本合成化学製、紫光UV−1700B、鉛筆硬度4H)。
(B−3):ポリウレタン系(荒川化学製、ビームセット510、鉛筆硬度4B)。
(B−4):ウレタンアクリレート(日本合成化学製、紫光UV−3000B、鉛筆硬度6B)。
【0039】
[プライマー(C)]
(C−1):ウレタン系(昭和インク工業所製、PCプライマー、加熱接着用プライマー)。
(C−2):塩化ビニル酢酸ビニル系(昭和インク工業所製、SXメジューム、粘着剤用プライマー)。
【0040】
[実施例1]
まず、第1の剥離フィルムとして(A−1)を用い、これにプライマー(C−1)をグラビア印刷法にて全面に塗布して、接着層を形成した。
次に、鉛筆硬度が4Bである電子線硬化性樹脂(B−3)を第1の放射線硬化性樹脂組成物として用い、これを50μm塗布し、更にその上に鉛筆硬度が4Hである電子線硬化性樹脂(B−1)を第2の放射線硬化性樹脂組成物として用い、これを30μm塗布した。
次に、電子線硬化性樹脂(B−1)上を、第2の剥離フィルムとして用いた(A−1)にて連続的に被覆した。
第1の剥離フィルム(A−1)の上より、窒素ガス雰囲気下で電圧200kv、線量70kGy、ライン速度10m/minの条件にて電子線照射を行い、第1の硬化樹脂層と第2の硬化樹脂層を有する積層体を形成した。
得られた積層体より、第1の剥離フィルム(A−1)と第2の剥離フィルム(A−1)とを剥離し、表面がハイグロスクリヤー調である、21×30cmのサンプルを作成し、各評価を行った。結果を表1に示した。
【0041】
[実施例2]
第1の(剥離)フィルム、プライマー、第1の硬化樹脂層、第2の硬化樹脂層及び第2の剥離フィルムとして、それぞれ表1に示されるものを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を形成した。
得られた積層体より、第1の剥離フィルム(A−1)と第2の剥離フィルム(A−2)を剥離し、表面が超ハイグロスクリヤー調である、21×30cmのサンプルを作成し、各評価を行った。結果を表1に示した。
【0042】
[実施例3]
第1の剥離フィルム、プライマー、第1の硬化樹脂層、第2の硬化樹脂層及び第2の剥離フィルムとして、それぞれ表1に示されるものを用いた以外は実施例1と同様にして積層体を形成した。
得られた積層体より、第1の剥離フィルム(A−1)と第2の剥離フィルム(A−3)とを剥離し、表面がマット調(エンボス調)である、21×30cmのサンプルを作成し、各評価を行った。結果を表1に示した。
【0043】
[比較例1]
第1の放射線硬化性樹脂組成物を用いない他は、実施例1と同様にして積層体を形成した。
得られた積層体より、第1の剥離フィルム(A−1)と第2の剥離フィルム(A−1)とを剥離し、表面がハイグロスクリヤー調である、21×30cmのサンプルを作成し、各評価を行った。結果を表1に示した。
【0044】
[比較例2]
第2の放射線硬化性樹脂組成物を用いない他は、実施例1と同様にして積層体を形成した。
得られた積層体より、第1の剥離フィルム(A−1)と第2の剥離フィルム(A−1)とを剥離し、表面がハイグロスクリヤー調である、21×30cmのサンプルを作成し、各評価を行った。結果を表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示されるように、鉛筆硬度がHB以下である第1の硬化樹脂層と、鉛筆硬度H以上である第2の硬化樹脂層を有した、実施例1〜3の積層体においては、各剥離フィルムを剥離すると、耐擦傷性及び取扱い性に優れた硬化樹脂フィルムを得ることができた。
更に実施例1〜3の積層体より得られた硬化樹脂フィルムを用いて耐薬品性の評価を行ったところ、いずれの薬品においても、0又は1の評価が得られ、耐薬品性が良好であった。
なお、プライマーとして熱可塑性の加熱接着用プライマーを用いた実施例1の積層体は、加熱接着用プライマーを加熱活性することにより建材等に接着することが可能である。
また、プライマーとして対粘着剤用ウレタン系プライマーを用いた実施例2及び3においては、現場で貼付する対象物に応じて粘着加工を行うことが可能である。
対して、鉛筆硬度がHB以下である第1の硬化樹脂層を有していない、比較例1の硬化樹脂フィルムは、取扱い性が優れるものでなく、フィルムを持ち上げると割れてしまい、剥離フィルムを剥がして独立して取り扱えるものではなかった。
鉛筆硬度がH以上である第2の硬化樹脂層を有していない、比較例2の硬化樹脂フィルムは、耐擦傷性が優れず、耐薬品性の評価が、イソプロピルアルコール、エタノール、オレイン酸について2の評価となり、水性インク(青)、水性インク(赤)について3の評価となり、カレー、油性マジック(黒)、油性マジック(赤)、酢酸エチル、メチルエチルケトンについて4の評価となり実用的ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の積層体は、家具、建具、キッチン収納、壁紙等の建材分野、及び店舗看板、地図看板等のサイン分野等に用いることができるほか、厚膜で独立フィルムとして取扱えるため、樹脂フィルムのハードコート材としても利用できる。
更に、放射線硬化性樹脂組成物にアクリル樹脂を主成分として配合すると耐候性を付与できるため、耐候性に劣る素材のオーバーレイフィルムとして用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の積層体の断面図の一例である。
【符号の説明】
【0049】
10:積層体、11:第1の剥離フィルム、12:第2の剥離フィルム、13:第1の硬化樹脂層、14:第2の硬化樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の剥離フィルムと、第2の剥離フィルムと、第1の剥離フィルムと第2の剥離フィルムとの間に存在し、第1の放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる第1の硬化樹脂層と、第2の放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる第2の硬化樹脂層とを有し、
前記第1の硬化樹脂層が、鉛筆硬度がHB以下で、厚さが10〜200μmであり、
前記第2の硬化樹脂層が、鉛筆硬度がH以上で、厚さが2〜50μmであり、
前記第1の硬化樹脂層が裏面側に配置され、前記第2の硬化樹脂層が表面側に配置され、前記第2の硬化樹脂層と前記第2の剥離フィルムが隣接している積層体。
【請求項2】
前記第1の放射線硬化性樹脂組成物が顔料を含有している、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第2の硬化樹脂層の、第2の剥離フィルムに接する表面がエンボス加工されている、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
第1の剥離フィルムの表面に、硬化後の鉛筆硬度がHB以下となる第1の放射線硬化性樹脂組成物を硬化後に10〜200μmとなるように塗布して第1塗膜を得る第1塗膜形成工程と、
第1塗膜の上に、硬化後の鉛筆硬度がH以上となる第2の放射線硬化性樹脂組成物を硬化後に2〜50μmとなるように塗布して第2塗膜を得る第2塗膜形成工程と、
第2塗膜を第2の剥離フィルムで被覆する被覆工程と、
第1の剥離フィルム又は第2の剥離フィルムの上より放射線を照射して、第1塗膜及び第2塗膜を硬化させて第1の硬化樹脂層及び第2の硬化樹脂層を得る硬化工程を有する、積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の剥離フィルムが、第2の硬化樹脂層に接する面に凹凸を有するエンボスフィルムであり、これによって第2の硬化樹脂層表面にエンボス形状を形成する、請求項4に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−279840(P2009−279840A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134405(P2008−134405)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】