説明

積層体及び積層体を含む回路基板

【課題】基材フィルム上に塗布乾燥によって樹脂層を積層する積層体において、樹脂層を形成する均質な塗布膜が得られ、ハンドリング性、加工性、及びラミネート後の基材フィルムの剥離性に優れ、しかもラミネート後の表面に欠陥が発生することのない積層体及び積層体を含む回路基板を提供すること。
【解決手段】本発明の積層体は、基材フィルムと、基材フィルム上に設けられた離型剤層と、離型剤層上に設けられた樹脂層と、を具備した積層体であって、樹脂層に少なくとも1種のポリイミド系樹脂を含み、離型剤層の水を用いた場合の表面接触角が90度以上105度未満であり、γ−ブチロラクトンを用いた場合の表面接触角が40度以上55度未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板やそれらを保護するカバーレイフィルム、ビルドアップ回路基板などの製造に用いられる積層体に関するものであり、より詳細には、特定の離型剤がコーティングされた基材フィルムを使用してなる積層体及びそれを用いて製造される回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板の製造に用いられる材料として、1種以上の樹脂を含んでなる絶縁材料が用いられている。このような用途に用いられる絶縁材料としては、そのハンドリング性を向上させるため、樹脂層の片側の表面に加工時の離型フィルムとしての基材フィルムが設けたものが用いられている。
【0003】
これらの絶縁材料は、例えば金属箔と樹脂とで構成されるフレキシブルプリント基板の片面あるいは両面に、又はガラス繊維と樹脂とで構成されるビルドアップ回路基板向けのリジッドのコア基板の片面あるいは両面に、プレス機あるいは真空ラミネーターにより積層加工される。具体的には、基板と絶縁材料を形成する樹脂層とを接触させて、基板に形成された回路間やビアホールを樹脂層で埋め込むため、プレス機あるいは真空ラミネーターにより加熱・加圧して積層加工される。一般的に積層加工では、コア基板と接した面と逆の面に基材フィルムが積層された絶縁材料が用いられ、積層加工後に絶縁材料から基材フィルムが剥離除去される。
【0004】
絶縁材料は、基材フィルム上に樹脂層を積層して形成される。基材フィルム上への樹脂層の形成は、絶縁材料を有機溶媒に溶解させたワニスを塗布乾燥することにより行われる。塗布乾燥時に均質な層を得るためには、基材フィルム表面との親和性(濡れ性)の制御が必要である。また、積層加工後に基材フィルムと樹脂層との剥離を容易にするために、一般的には離型剤(又は、剥離剤)がコーティングされた基材フィルムが使用されている。
【0005】
このような離型剤を用いた積層体としては、基材フィルムと、少なくとも1種のイミド化合物を含む樹脂層と、が積層された積層体において、離型剤としてメラミン樹脂やアルキッド樹脂の離型剤を使用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−302525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には、樹脂層から基材フィルムを剥離するための剥離強度の制御については開示されているが、基材フィルム上で均質な樹脂層を形成するための離型剤層との濡れ性については開示されていない。また、絶縁材料として一般的に用いられるポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸構造や、可溶性ポリイミド構造などを含むため、有機溶媒に溶解させたワニスを塗布乾燥する過程にて基材フィルム上に均質な樹脂層を形成することが極めて困難であった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みて為されたものであり、基材フィルム上に塗布乾燥によって樹脂層を積層する積層体において、樹脂層を形成する均質な塗布膜が得られ、ハンドリング性、加工性、及びラミネート後の基材フィルムの剥離性に優れ、しかもラミネート後の表面に欠陥が発生することのない積層体及び積層体を含む回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材フィルム上に設けられた離型剤層の水との表面接触角を90度以上105度未満、γ−ブチロラクトンとの表面接触角を40度以上55度未満にすることにより、ポリイミド系樹脂の均質な樹脂層を形成でき、ハンドリング性、加工性、及びラミネート後の基材フィルムの剥離性に優れ、ラミネート後の表面に欠陥が発生しない積層体が実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
【0010】
本発明の積層体は、基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた離型剤層と、前記離型剤層上に設けられた樹脂層と、を具備した積層体であって、前記樹脂層に少なくとも1種のポリイミド系樹脂を含み、前記離型剤層の水を用いた場合の表面接触角が90度以上105度未満であり、γ−ブチロラクトンを用いた場合の表面接触角が40度以上55度未満であることを特徴とする。
【0011】
本発明の積層体においては、積層工程後の前記基材フィルムと前記樹脂層との剥離強度が、20mN/mm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の積層体においては、前記離型剤層の厚みが、0.01μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の積層体においては、前記離型剤層が、オレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の積層体においては、前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂又はポリイミド樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の積層体においては、前記基材フィルムの厚みが10μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の回路基板は、上記積層体を用いて製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材フィルム上に塗布乾燥によって樹脂層を積層する積層体において、樹脂層を形成する均質な塗布膜が得られ、ハンドリング性、加工性、及びラミネート後の基材フィルムの剥離性に優れ、しかもラミネート後の表面に欠陥が発生することのない積層体及び積層体を含む回路基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、以下詳細に説明する。
本発明に係る積層体は、基材フィルム(A)と、基材フィルム(A)上に設けられた離型剤層(C)と、離型剤層(C)上に設けられ、少なくとも1種のポリイミド系樹脂を含んでなる樹脂層(B)とが積層された積層体であって、樹脂層(B)に少なくとも1種のポリイミド系樹脂を含み、離型剤層(C)の水との表面接触角が90度以上105度未満、γ−ブチロラクトンとの表面接触角が40度以上55度未満である。
【0019】
離型剤層(C)の水との表面接触角が90度以上であることより、少なくとも1種のポリイミド系樹脂を含有した樹脂層(B)の溶液を、基材フィルム(A)の表面上に形成された離型剤層(C)の表面に流延又は塗布して乾燥させる段階において、塗布面積の収縮を抑制でき、基材フィルム上に均一に樹脂層(B)を形成することができる。また、水との表面接触角が105度未満であることより塗布面積の拡張を抑制でき、所定の面積に均一な厚みの樹脂層(B)を形成することができる。
【0020】
また、γ−ブチロラクトンとの表面接触角が40度以上であることにより、少なくとも1種のポリイミド系樹脂を含有する樹脂層(B)を含有した溶液を、基材フィルム(A)の表面上に形成された離型剤層(C)の表面に流延又は塗布した段階において、塗布面積の収縮や塗布面上での外観むらが発生せず、乾燥後の樹脂層(B)の厚み均一性が向上する。また、γ−ブチロラクトンとの表面接触角が55度未満であることにより塗布面積の拡張を抑制でき、所定の面積に均一な厚みの樹脂層(B)を形成することができる。
【0021】
離型剤層(C)としては、特に限定されず各種材料を用いることができるが、一般的には樹脂が用いられ、樹脂の中でも特に好ましくはオレフィン樹脂が用いられる。離型剤層(C)にオレフィン樹脂を用いることにより、後述する樹脂層(B)として用いられるポリイミド系樹脂との濡れ性が向上する。
【0022】
オレフィン樹脂としては、各種市販のオレフィン樹脂を用いても良く、公知の方法に従い合成したポリオレフィン樹脂を用いても良い。ポリオレフィン樹脂の合成法としては、一般的には、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。また、モノマーとして用いる不飽和カルボン酸、あるいはその無水物は、グラフト共重合(グラフト変性)されていても良い。
【0023】
ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、及び無水マレイン酸からなる三元共重合体や、エチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸の三元共重合体が挙げられ、これらを用いることが好ましい。
【0024】
樹脂層(B)に用いられるポリイミド系樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸構造を含むポリイミド樹脂や、可溶性ポリイミド構造を含む可溶性イミド化合物などがあげられる。ここで、可溶性イミド化合物とは、15℃〜100℃の温度範囲にて、有機溶媒に1重量%以上溶解するイミド化合物をいう。また、ポリイミド系樹脂としては、実装材料や半導体材料の用途における耐熱性の観点から、非シリコン系の元素で構成された構造であることが好ましい。
【0025】
樹脂層(B)としてポリイミド系樹脂を使用することにより、層間絶縁材料に低熱膨張、高熱分解温度などの優れた耐熱性、高接着性、高柔軟性、高強度などの優れた機械的特性を付与することが出来る。
【0026】
上記有機溶媒としては、例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒などから選ばれる少なくとも1種の溶媒を挙げることができる。
【0027】
樹脂層(B)には、接着性の向上、更なる耐熱性の向上などのため、ポリイミド系樹脂以外の成分として、エポキシ樹脂、シアナートエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や、フェノール樹脂、ジアミン化合物などの熱硬化性樹脂の硬化剤や光重合可能な不飽和2重結合を有する(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤、無機フィラー、フタロシアニン系化合物などの顔料や染料を含有させることもできる。
【0028】
本発明に係る積層体は、基材フィルム(A)上に離型剤層(C)を形成した後に、樹脂層(B)を形成することにより製造することが出来る。離型剤層(C)は、離型剤を含有した溶液を基材フィルム(A)の表面に流延又は塗布した溶液を乾燥させることによって形成できる。樹脂層(B)は、樹脂層(B)を構成する成分を含有した溶液を、基材フィルム(A)の表面上に形成された離型剤層(C)の表面に流延又は塗布し、溶液を乾燥させる操作を繰り返すことにより形成できる。
【0029】
基材フィルム(A)としては、特に限定されるものではないが、耐熱性、入手性の点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂又はポリイミド樹脂を好ましく用いることが出来る。
【0030】
基材フィルム(A)の厚みは、ハンドリング性、入手性、積層体のラミネート性などの点から10μm以上150μm以下が好ましい。
【0031】
基材フィルム(A)の表面上に形成される離型剤層(C)の厚みは、特に限定されないが、離型性の点で、0.01μm以上5.0μm以下であることが好ましい。
【0032】
離型剤層(C)、樹脂層(B)を形成する時の乾燥温度は、基材フィルム(A)の耐熱性や離型剤層(C)、樹脂層(B)の耐熱性の点で、30℃以上180℃以下であることが好ましく、60℃以上150℃以下であることがより好ましく、80℃以上130℃以下であることが特に好ましい。乾燥温度が180℃を超えると、基材フィルム(A)、離型剤層(C)や樹脂層(B)が劣化し、又は剥離性が低下してしまう可能性がある。乾燥温度が30℃未満であると乾燥が不十分となり、層表面のタック性が強くなり、ハンドリング性を損なう場合がある。
【0033】
本発明においては、上述したように離型剤層(C)の表面接触角を所定の範囲にすることにより、塗布面積の収縮を抑制することができる。なお、ここでいう塗布面積の収縮とは、樹脂を含有する溶液を流延又は塗布した段階の面積と、乾燥後の面積との比較により判断することができる。
【0034】
本発明においては、離型剤層(C)の水との表面接触角90度以上105度未満であり、γ−ブチロラクトンとの表面接触角40度以上55度未満であることにより、下記式(1)に示す収縮率が±10%未満となる。
収縮率(%)=1−(乾燥後の樹脂層の面積)/(流延又は塗布時の樹脂層の面積)×100…式(1)
【0035】
本発明に係る積層体は、基材フィルム(A)上に離型剤層(C)、樹脂層(B)を順に設けて得られた積層体を、加熱加圧する積層工程(ラミネート工程)を行って形成される。ここで、本発明においては、積層工程後の基材フィルム(A)と樹脂層(B)の剥離強度が、20mN/mm以下であることが好ましい。積層工程後の基材フィルム(A)と樹脂層(B)の剥離強度が、20mN/mm以下であれば、離型剤層(C)からの基材フィルムの剥離が容易となり、剥離時に樹脂表面の一部が基材フィルム上に残存し、外観不良の発生を抑制することができるため好ましい。また、剥離強度が1mN/cm以上であれば、基材フィルム(A)と樹脂層(B)は十分に接着した状態を保てるため好ましい。なお、剥離強度は、積層体の作製、離型剤層(C)の厚みや離型剤の種類、基材フィルム(A)の厚みや種類などを選択することなどにより、上記範囲とすることが出来る。
【0036】
(実施例)
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
本実施例において、積層体の離型剤層に対する各溶剤(水及びγ―ブチロラクトン)との表面接触角の測定、塗布面積の収縮率の測定、樹脂層の外観むらの評価、積層体の積層工程後の剥離強度の測定、ハンドリング性の評価は以下のように実施した。
【0038】
[表面接触角の測定]
基材フィルム(A)を剥離した離型剤層(C)の表面に、イオン交換水、γ―ブチロラクトンを1.0μl滴下した。滴下後3秒静置した後、自動接触角測定装置(DM300、協和界面科学社製)にて、水、及びγ−ブチロラクトンとの表面接触角を測定した。
【0039】
[塗布面積の収縮率の測定]
ポリイミド系樹脂を含む樹脂層(B)の塗布液を、基材フィルム(A)の離型剤層(C)側に所定の厚みになるように、270cm×270cmの面積に塗布し、乾燥後の樹脂の存在する面積との比較により測定した。収縮率は、下記式(2)に従って測定した。なお、下記表1において、+の値は塗布後の面積の収縮を表し、−の値は塗布後の面積の拡張を表す。
収縮率(%)=[1−(乾燥後の樹脂層(B)の面積)/(流延又は塗布時の樹脂層(B)の面積)]×100…式(2)
【0040】
[樹脂層の外観むらの評価]
外観目視にて評価した。基材フィルム(A)と樹脂層(B)とのはじき(空隙)、及び樹脂層(B)の色むら(膜の白濁)が共にない場合を○、樹脂層(B)のはじき又は色むらの少なくとも一方が発生した場合を×とした。
【0041】
[積層工程後の基材フィルム剥離強度]
ガラスエポキシ基板FR−4(MCL−E−67、日立化成工業社製;銅箔の厚さ35μm、全体の厚さ0.6mm)の銅箔を化学処理により全面剥離し、銅箔を剥離したガラスエポキシ基板の表面と積層体の樹脂層(B)の表面とが接するように重ねて、温度100℃、圧力0.5MPaの条件下、1分間の加熱加圧によりガラスエポキシ基板に本発明に係る積層体が積層した積層基板を得た。この積層基板を所定の幅に切りだした後、下記条件にて基材フィルム(A)の剥離試験を行い、剥離強度を測定した。
測定装置:東洋精機製作所社製、ストログラフVES剥離角度:180°方向、クロスヘッド速度:100mm/min、試料幅:25mm。
【0042】
[積層加工後ハンドリング性の評価]
ガラスエポキシ基板FR−4(MCL−E−67、日立化成工業社製;銅箔の厚さ35μm、全体の厚さ0.6mm)の銅箔を化学処理により全面剥離し、銅箔を剥離したガラスエポキシ基板の表面と積層体の樹脂層(B)の表面とが接するように重ねて、温度100℃、圧力0.5MPaの条件下、1分間の加熱加圧を行ってガラスエポキシ基板に本発明に係る積層体が積層した積層基板を得た。得られた積層基板から基材フィルム(A)を剥離し、剥離後の樹脂層(B)の表面を目視観察することにより、積層加工後のハンドリング性を評価した。樹脂層(B)表面に剥離による筋むらなどが発生した場合を×、剥離による欠陥が発生しなかった場合は○とした。
【0043】
(ポリイミド系樹脂の合成例)
三口セパラブルフラスコにトリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)10.0g、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート13.1g、γ−ブチロラクトン104.1gを入れ、均一溶液になるまで攪拌した。次に、ペンタンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル10g、デカンジオール−ビス−無水トリメリット酸エステル11.5gを加え、氷冷しながら1時間、その後室温で6時間攪拌した。次に生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することで重量平均分子量30000のポリイミド前駆体溶液を得た。
【0044】
ポリイミド前駆体に対して20重量部のキノンジアジド化合物、12.5重量部の3’−ヒドロキシアセトアニリドを混合し、固形分濃度が30重量%なるようにγ−ブチロラクトンにて希釈し、均一になるまで攪拌しポリイミド系樹脂溶液を得た。
【0045】
[実施例1]
表面処理によって離型剤層(C)(離型剤種:ポリオレフィン系樹脂、厚み0.2μm)を形成した基材フィルム(A)(PETフィルム:TR−1、厚み:25μm、ユニチカ社製)の離型剤層(C)表面に合成例のポリイミド系樹脂溶液を塗布し、次いで、100℃で30分間乾燥させて樹脂層(B)を形成した。樹脂層(B)の乾燥後の厚みは15μmであった。離型剤層(C)表面における水との表面接触角は92度であり、γ―ブチロラクトンとの表面接触角は44.2度であった。得られた積層体について、基材フィルム(A)と樹脂層(B)との剥離強度、及びハンドリング性などを評価した。用いた離型剤層(C)、各溶剤との表面接触角、基材フィルム(A)について下記表1に示し、積層加工前の収縮率、外観、積層加工後の剥離強度、ハンドリング性について下記表2に示す。
【0046】
[実施例2〜実施例3]
離型剤層(C)の厚みを変更した(実施例2:0.5μm、実施例3:1μm)以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体について、基材フィルム(A)と樹脂層(B)の剥離強度、及びハンドリング性などを評価した。用いた離型剤層(C)、各溶剤との表面接触角、基材フィルム(A)について下記表1に示し、積層加工前の収縮率、外観、積層加工後の剥離強度、ハンドリング性について下記表2に示す。
【0047】
[実施例4]
離型剤種として、オレフィン樹脂エマルジョン(アローベースCB−1200、固形分濃度23wt%)を基材フィルム(A)(PETフィルム:G2、厚み:25μm、帝人デユポン社製)上に塗布し、100℃で1分間、更に、130℃で1分間乾燥させて離型剤層(C)を形成した。離型剤層(C)の厚みは0.5μmであった。この離型剤層(C)上に実施例1と同様の手法で樹脂層(B)を形成した。水との表面接触角は90度であり、γ−ブチロラクトンとの表面接触角は41度であった。得られた積層体について、基材フィルム(A)と樹脂層(B)の剥離強度、及びハンドリング性などを評価した。用いた離型剤層(C)、各溶剤との表面接触角、基材フィルム(A)について下記表1に示し、積層加工前の収縮率、外観、積層加工後の剥離強度、ハンドリング性について下記表2に示す。
【0048】
[比較例1〜比較例4]
離型剤層(C)の離型剤種を変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た(比較例1:未処理(なし)、比較例2:アルキッド樹脂(0.5μm)、比較例3:メラミン樹脂(0.5μm)、比較例4:シリコーン樹脂(0.5μm))。得られた積層体について、基材フィルム(A)と樹脂層(B)の剥離強度、及びハンドリング性などを評価した。用いた離型剤層(C)、各溶剤との表面接触角、基材フィルム(A)について下記表1に示す。また、積層加工前の収縮率、外観、積層加工後の剥離強度、ハンドリング性について下記表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表1及び表2に示すように、基材フィルム(A)と樹脂層(B)との間に設けられた離型剤層(C)の各種溶剤に対する表面接触角を所定の範囲にすることにより、所望の性能を得ることができる(実施例1〜実施例4)。また、離型剤層(C)にオレフィン樹脂を含有させることにより、各種溶剤との接触角を所定の範囲にすることができ、ハンドリング性、加工性に優れ、ラミネート後の基材フィルム(A)の剥離性に優れ、ラミネート後の表面に欠陥が発生しない積層体を得ることができる(実施例1〜実施例4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた離型剤層と、前記離型剤層上に設けられた樹脂層と、を具備した積層体であって、前記樹脂層に少なくとも1種のポリイミド系樹脂を含み、前記離型剤層の水を用いた場合の表面接触角が90度以上105度未満であり、γ−ブチロラクトンを用いた場合の表面接触角が40度以上55度未満であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
積層工程後の前記基材フィルムと前記樹脂層との剥離強度が、20mN/mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記離型剤層の厚みが、0.01μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記離型剤層が、オレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂又はポリイミド樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記基材フィルムの厚みが10μm以上150μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の積層体を用いて製造されたことを特徴とする回路基板。

【公開番号】特開2011−212948(P2011−212948A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82521(P2010−82521)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】