説明

積層型二次電池および製造方法

【課題】 高エネルギー密度化、高容量化を低コストで実現するとともに、電池性能や信頼性が高く、電極取付け位置の多様化に対応することが容易な積層型二次電池および製造方法を提供すること。
【解決手段】 正極電極と負極電極とを、セパレータを介して対向させ積層し、電解液とともに容器に収める積層型二次電池であって、正極電極および負極電極は、プレス金型を用いた熱圧着成型により、集電体の表面に正極活物質層および負極活物質層を形成するとともに、正極活物質層および負極活物質層が未形成の領域を設けてタブ接合部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータを介して正極と負極の電極を積層する、積層型二次電池および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護意識の高まりから電動アシスト自転車や電気自動車、ハイブリッド自動車等の需要が増加し、当該機器に搭載される二次電池については、コスト低減と共に高エネルギー密度化、高容量化が強く求められている。
【0003】
二次電池の高エネルギー密度化、高容量化に関する市場からの要求に対しては、新規材料の開発と並んで電極構造の改良が進められ、高容量タイプでは正極と負極を複数積層した積層型二次電池が主流となっている。
【0004】
特許文献1には、積層体の取り扱いが容易でありながら、薄型化が可能であり、かつ、内部抵抗の増大を回避可能な、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等に用いられる電気化学デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−278897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような二次電池を製造する工程では、従来より塗布法によって電極が作製されている。すなわち、電極を構成する電極活物質、導電付与材、結合材(バインダー)、溶剤等を所定量混合したスラリーを調整し、ロール状に巻かれた長尺の金属箔等からなる集電体上に、スリットダイやドクターブレード等を用いて所定の塗布厚となるようにスラリーを塗布する。この際、後工程で接続端子の電極タブを接合するため、集電体上にスラリーを塗布しない部位を設ける。より具体的には、塗膜を形成しない部位にマスキングを施したり、塗膜幅を規制したストライプ状の塗布を行ったり、塗布と未塗布を交互に繰り返す間欠塗布を行う。
【0007】
集電体上に形成した塗膜は、乾燥工程を経た後、二次電池のエネルギー密度を高めるために圧延ローラを用いて圧延を行い、その後にスリット加工、打ち抜き加工を施して所定形状の電極シートを得る。
【0008】
電極シートは、それぞれ正極活物質層を形成した正極電極と、負極活物質層を形成した負極電極を用意し、セパレータを介して対向配置する。所定数量の電極シートを積層後、集電体上のスラリー未塗布部位に電極タブを接合し、外装に収納して電解液を注入し、最後に外装を封止することにより、積層型二次電池が得られる。
【0009】
しかしながら、従来の積層型二次電池では、電極製造時に塗布したスラリーの乾燥に伴い、塗膜の厚みが減少する肉やせや、電極活物質層正極活物質層を形成した正極電極を塗布した集電体をロール状に巻き取る際の不完全乾燥部位のブロッキング、塗膜の屈曲によるクラック等の不具合が発生する場合があるため、電極活物質層の膜厚を300μm以上に厚くすることが困難である。従って、厚膜電極化による電池容量の向上が困難であるという課題がある。
【0010】
また、従来の積層型二次電池では、スラリー製造、塗布、乾燥、圧延、スリット、打ち抜きの各工程を経るに伴い原材料のロスが累積するため、工程数が増すほど製品あたりの原材料消費も増え、コスト低減が難しいという課題がある。
【0011】
また、従来の積層型二次電池では、電極活物質層の塗布工程において、本来は電極タブの接合部位となるスラリー未塗布部にまでスラリーが付着することがあったり、スリット加工、打ち抜き加工により切断部にバリが発生したりする場合がある。このような付着物やバリ等が、製造工程中に脱落して製品中に混入すると、二次電池の性能や信頼性に影響を与える可能性があるという課題がある。
【0012】
更に、従来の積層型二次電池では、塗布工程で形成される電極活物質層の塗布部と未塗布部が交互に存在する電極構造であり、市場の要求による電極取付け位置の多様化などに対応することは困難であるという課題がある。
【0013】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高エネルギー密度化、高容量化を低コストで実現するとともに、電池性能や信頼性が高く、電極取付け位置の多様化に対応することが容易な積層型二次電池および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、集電体の表面に正極活物質層を形成した正極電極と、前記集電体の表面に負極活物質層を形成した負極電極とを、セパレータを介して対向させ積層し、電解液とともに容器に収める積層型二次電池であって、前記正極電極および前記負極電極は、プレス金型を用いた熱圧着成型により、前記集電体の表面に前記正極活物質層および前記負極活物質層を形成するとともに、前記正極活物質層および前記負極活物質層が未形成の領域を設けてタブ接合部を構成することを特徴とする積層型二次電池が得られる。
【0015】
本発明によれば、前記正極活物質層および前記負極活物質層は、正極または負極の活物質の粒子表面が、少なくとも導電付与材および結合材で覆われた複合化粉末であることを特徴とする積層型二次電池が得られる。
【0016】
本発明によれば、集電体の表面に正極活物質層を形成した正極電極と、前記集電体の表面に負極活物質層を形成した負極電極とを、セパレータを介し対向させて積層し、電解液とともに容器に収める積層型二次電池の製造方法であって、前記正極電極および前記負極電極は、プレス金型を用いた熱圧着成型により、前記集電体の表面に前記正極活物質層および前記負極活物質層を形成するとともに、前記正極活物質層および前記負極活物質層が未形成の領域を設けてタブ接合部を構成することを特徴とする積層型二次電池の製造方法が得られる。
【0017】
本発明によれば、前記正極活物質層および前記負極活物質層は、正極または負極の活物質の粒子表面が、少なくとも導電付与材および結合材で覆われた複合化粉末であることを特徴とする積層型二次電池の製造方法が得られる。
【0018】
本発明では、電極活物質層の形成を熱プレスにより行うことで、塗布法による形成で発生する場合が有る肉やせ、ブロッキング、クラック等の不具合が本質的に発生せず、電極活物質層の膜厚を厚くすることが容易である。
【0019】
また、本発明では、従来の積層型二次電池よりも工程数が少ない上に、塗布、乾燥、スリット、打ち抜き等の原材料のロスが比較的大きい工程を用いる必要が無い。
【0020】
また、本発明では、電極活物質層の形成部位は金型形状によって規定されるために不要な部分へ電極活物質が付着することがなく、電極活物質層形成後のスリット加工、打ち抜き加工も不要である。
【0021】
更に、本発明では、金型形状を変更することで、電極取付け位置の変更が容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電極活物質層の形成を熱プレスにより行うことで、電極活物質層の膜厚を300μm以上に厚くすることが容易であるため、厚膜電極化により電池容量が向上するとともに、従来の積層型二次電池よりも製品あたりの原材料消費が少なく、低コストでの製造が可能である。
【0023】
また、付着物やバリ等に起因して二次電池の性能や信頼性に影響を与えることがなく、市場要求に応じた電極取付け位置の多様化にも柔軟に対応することができる。
【0024】
従って、本発明によれば、高エネルギー密度化、高容量化を低コストで実現するとともに、電池性能や信頼性が高く、電極取付け位置の多様化に対応することが容易な積層型二次電池および製造方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による積層型二次電池の製造方法を示す概略図である。
【図2】本発明による積層型二次電池の集電体を示す正面図であり、図2(a)は正極集電体、図2(b)は負極集電体である。
【図3】図2の集電体を用いた電極シートを示す正面図であり、図3(a)は正極電極、図3(b)は負極電極である。
【図4】図3の電極にセパレータを配置する実施形態を示す概略図である。
【図5】本発明による積層型二次電池の実施形態1を示す外観斜視図である。
【図6】本発明による積層型二次電池の集電体の他の実施形態を示す正面図であり、図6(a)は正極集電体、図6(b)は負極集電体である。
【図7】図6の集電体を用いた電極シートを示す正面図であり、図7(a)は正極電極、図7(b)は負極電極である。
【図8】図7の電極にセパレータを配置する実施形態を示す概略図である。
【図9】本発明による積層型二次電池の実施形態2を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明による積層型二次電池の製造方法を示す概略図であり、図は正極電極の製造を説明するものである。
【0028】
図1において、熱プレス金型下型3には、正極活物質層2を充填した上に、所定形状に予めカットした正極集電体1を敷き、更に正極活物質層2を充填し、熱プレス金型下型3および熱プレス金型上型4を用いて所定の温度、圧力で熱圧着することにより、正極集電体1と正極活物質層2を一体化させて正極電極を得る。
【0029】
正極活物質層2は、少なくとも正極活物質、導電付与材、結合材を含む混合粉末を、熱プレス金型下型3および正極集電体1上に均一な厚みとなるよう充填し、熱圧着することにより、正極集電体1の両面に均一な厚みの正極活物質層2を形成する。
【0030】
正極活物質としては、LiMO(ただし、Mは少なくとも1種の遷移金属)であるリチウム複合酸化物、例えばLiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiCo(1−y)等を用いることができる。導電付与材としては、カーボンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック等の導電性物質を用いることができる。結合材としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン等の含フッ素系樹脂、SBR(スチレンブタジエンゴム)等のゴム系バインダやポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0031】
正極活物質層2を形成する混合粉末は、それぞれ正極活物質、導電付与材、結合材を含む粉末を、ミキサー等を用いて均一に混合する。好ましくは、メカノケミカル・ボンディング法により粒子複合化した粉末を用いればなお良い。
【0032】
メカノケミカル・ボンディング法によれば、衝撃力と粒子の相互作用により、圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し受けることで粒子を複合化させ表面改質を行うことができる。本発明の正極活物質層2を形成する混合粉末の場合、正極活物質を母粒子として、その表面を結合材および導電付与材が皮膜状に覆った複合化粉末が得られることから、各組成物を単純に混合した粉末に比べ分散性が良く、正極活物質の充填率を更に高めることができるとともに、粒子間の結合が強固になることから、結合材の添加量が少なくても粒子の脱落を効果的に防ぐことができる。
【0033】
なお、負極活物質層は、電極活物質を負極活物質に変えることにより、正極活物質層と同様の方法で製造することができる。負極活物質としては、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な、熱分解炭素類、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなどのコークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、フェノール樹脂、フラン樹脂などを焼成した有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性高分子材料等を用いることができる。
【0034】
図2は、本発明による積層型二次電池の集電体を示す正面図であり、図2(a)は正極集電体、図2(b)は負極集電体である。
【0035】
図2において、正極集電体1はアルミニウムやステンレス等の金属箔を用いることができ、正極の低抵抗化や低コスト化にはアルミニウム箔が好ましく、特にアルミニウムをエッチング処理して比表面積を増やしたアルミエッチング箔を用いると、出力特性が向上するため更に好ましい。正極集電体1の厚さは、薄いと製造工程における作業性が低下したり、熱プレス中に破損する可能性があり、厚いと一電極あたりの集電体体積が大きくなって所望のエネルギー密度が得られない場合がある。従って、正極集電体1の厚さは、積層型二次電池の要求仕様に応じて設定することが望ましい。
【0036】
負極集電体5は銅、ステンレス、ニッケル等の金属箔を用いることができ、負極の低抵抗化や低コスト化には銅箔が好ましい。負極集電体5の厚さも、薄いと製造工程における作業性が低下したり、熱プレス中に破損する可能性があり、厚いと一電極あたりの集電体体積が大きくなって所望のエネルギー密度が得られない場合がある。従って、積層型二次電池の要求仕様に応じて設定することが望ましい。
【0037】
正極集電体1および負極集電体5は、所定形状に予めカットしたシートとして準備する。図中では集電体の一隅を切り落とした形状を例示するが、セパレータを介して正極と負極を対向させて積層することから、後述する電極タブを接合する部位が短絡しない位置関係となるよう、正極集電体1と負極集電体5の形状を異なるものにすることが望ましい。なお、同じ形状の金型で打ち抜いた集電体を、極性に応じて裏返して熱プレス金型下型にセットすれば、量産性が高くコスト低減に寄与するためなお好ましい。
【0038】
図3は図2の集電体を用いた電極シートを示す正面図であり、図3(a)は正極電極、図3(b)は負極電極である。図4は図3の電極にセパレータを配置する実施形態を示す概略図である。図5は本発明による積層型二次電池の実施形態1を示す外観斜視図である。
【0039】
図3(a)は正極集電体1に正極活物質層2を形成した正極電極、図3(b)は負極集電体5に負極活物質層6を形成した負極電極である。なお、図示しないが、それぞれの電極は集電体の両面に電極活物質層が形成される。それぞれの電極は、後工程で電極タブを接合するために電極活物質層が未形成の領域、すなわち集電体が露出している部分を図のように設ける。
【0040】
図4では、正負の電極で集電体が露出している部分の二隅を切り落とした形状のセパレータ7を例示する。セパレータ7は、正極電極と負極電極の短絡を防ぐとともにイオン導電性を有するものであれば良く、多孔性を有するポリオレフィンフィルムが好ましいが、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリスチレン、ポリブタジエン及びその共重合体、ポリビニリデンフルオライド等、またはそれらから選択される少なくとも1種の材料からなる繊維不織布を用いても良い。セパレータ7の厚さは、薄いと積層工程における作業性が低下したり破損による短絡が発生する可能性があり、厚いとイオン導電率が低下して所望の性能が得られない場合がある。従って、セパレータ7の厚さは、積層型二次電池の要求仕様に応じて設定することが望ましい。
【0041】
図4に示すように、セパレータ7を挟んで、集電体が露出している部分が正負で重ならないように電極を対向させ、図示しないが所定の数量を積層することにより電池要素を作成する。その後、図5に示す電極タブ8をそれぞれ正負の集電体に接合し、外装9に電池要素を収納し、電解液を注入して外装9を封止することにより、積層型二次電池を得る。
【0042】
電解液としては、塩類を有機溶媒に溶解した電解液を使用することができる。塩類としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF等が例示され、これらの一種または二種以上の混合物を適用できる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、γーブチルラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトロヒドロフラン等が例示され、これらの一種または二種以上の混合物を適用できる。外装9は、電池要素を収納し、内部への空気や水の侵入を防ぐとともに電解液が漏洩しないよう密封することができるものであれば、缶状の金属筐体や、PP等の熱可塑性樹脂にアルミニウム箔を介してPET樹脂をラミネートしたものを使用することもできる。
【0043】
また、集電体および電極活物質層の形状および位置関係は、市場要求等に応じた積層型二次電池を提供するにあたり適宜変更することが可能である。すなわち、従来技術の塗布法で製造される場合に比べ、本発明の積層型二次電池では熱プレス金型を交換することにより、集電体および電極活物質層の形状および位置関係を変更する際の自由度が高い。
【0044】
集電体および電極活物質層の形状および位置関係について、他の実施形態を以下に説明する。
【0045】
(実施形態2)
図6は本発明による積層型二次電池の集電体の他の実施形態を示す正面図であり、図6(a)は正極集電体、図6(b)は負極集電体である。図7は図6の集電体を用いた電極シートを示す正面図であり、図7(a)は正極電極、図7(b)は負極電極である。図8は図7の電極にセパレータを配置する実施形態を示す概略図である。図9は本発明による積層型二次電池の実施形態2を示す外観斜視図である。
【0046】
図中において、正極集電体11および負極集電体15、正極活物質層12および負極活物質層16、セパレータ17は、それぞれ実施形態1で説明したものと同様の物質を用いて同様に形成することができる。
【0047】
本実施形態では、図6に示すように正極集電体11および負極集電体15の一隅を方形に切り落とした形状とし、図7に示すように正極集電体11に正極活物質層12を形成した正極電極、負極集電体15に負極活物質層16を形成した負極電極を得る。それぞれの電極は、後工程で電極タブを接合するために電極活物質層が未形成の領域、すなわち集電体が露出している部分を図のように設ける。図8に示すように、セパレータ17は正負の電極で集電体が露出している部分の二隅を方形に切り落として「凸」様の形状とし、セパレータ17を挟んで、実施形態1と同様の方法で電池要素を作成する。その後、図9に示す電極タブ18をそれぞれ正負の集電体に接合し、外装9に電池要素を収納し、実施形態1と同様の方法で積層型二次電池を得る。
【実施例】
【0048】
従来の塗布法により製造された積層型二次電池を比較例として、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0049】
(比較例)
LiMnからなる正極活物質粉末を94質量%、アセチレンブラックからなる導電付与材粉末を3質量%、PVDFからなる結合材粉末を3質量%秤量し、その全秤量値に対して50質量%のN―メチル2ピロリドンを加えてミキサーで混合し、スラリーを作製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の片面に、ドクターブレードを用いて約300μmの厚さに塗布した後、乾燥、圧延を実施し、所定の形状にスリットして正極電極を作製した。
【0050】
グラファイトからなる負極活物質粉末を88質量%、アセチレンブラックからなる導電付与材粉末6質量%、PVDFからなる結合材粉末を6質量%秤量し、その全秤量値に対して60質量%のN―メチル2ピロリドンを加えてミキサーで混合し、スラリーを作製した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体の片面に、ドクターブレードを用いて約300μmの厚さに塗布した後、乾燥、圧延を実施し、所定の形状にスリットして負極電極を作製した。
【0051】
積層型二次電池の組み立てでは、図4、図5に示すように、正極電極と負極電極の間に厚さ20μmのポリエチレン不織布によるセパレータ7を介して積層し、電池要素を作成した後、外装9の辺長の2/5以下の長さをもつ電極タブ8を集電体に接合した。外装9はナイロン/アルミニウム/ポリプロピレンの3層構造をもつラミネートフィルム2枚の周縁部を接合して形成する構造であり、電池要素を収納するために、一方のフィルムに絞り加工による収納部を、ポリプロピレン側が凹状となるように設けた。
【0052】
上記電池要素を一方のフィルムの収納部に収納し、他方のフィルムで電池要素を覆い、接合部を重ね合わせて熱融着によって外装9の周囲3辺を融着した。融着されていない1辺より電池要素収納部に電解液を注液後、内部に空気が残らないように減圧しながら熱融着機によって封止をおこない、フィルム外装の積層型二次電池を作製した。
【0053】
塗布法により製作された積層型二次電池では、正負の電極活物質層の厚みはスラリー組成と塗布厚、圧延条件によって異なるが、本比較例においては圧延後約180μmであった。
【0054】
電極を観察すると、電極活物質層の表面に微細なクラックが存在する部位があり、加工に伴う端部のバリも約15μm発生していた。また、わずかながら、電極活物質層の未形成部分に対するスラリーの付着が認められた。
【0055】
本比較例で電極を作製した場合の原材料のロスは、電極活物質層のスラリー作製時に10%、塗布時に4%、乾燥、圧延時にそれぞれ0.5%、スリット時に15%であった。従って、電極1枚あたりの原材料消費率は約130%であった。
【0056】
(実施例)
本実施例に係る積層型二次電池の基本的な構成は、実施形態1として説明したものと同様である。正極活物質層の形成では、LiMnからなる正極活物質粉末を94質量%、アセチレンブラックからなる導電付与材粉末を3質量%、PVDFからなる結合材粉末を3質量%秤量し、ミキサーで一次混合した後、メカノケミカル・ボンディング法により粒子複合化した。粒子複合化に用いた処理装置は、ハイブリダイザー(登録商標)NHS−0型(株式会社奈良機械製作所製)を使用したが、メカノケミカル・ボンディング法による同様の表面改質処理を行うことができるものであれば、他の市販の機器を用いても良い。
【0057】
正極電極は、図1に示すように、正極活物質層2を構成する前記の粒子複合化した粉末が均一な厚さとなるよう、熱プレス金型下型3に充填し、厚さ20μmのアルミニウム箔を予め規定形状にカットした正極集電体1を配し、同じく粒子複合化した粉末が均一な厚みとなるよう充填した。その後、所定の温度、圧力による熱プレスにより一体化して正極電極を作製した。
【0058】
また、負極電極も正極電極と同様に作製した。負極活物質層はグラファイトからなる負極活物質粉末を88質量%、アセチレンブラックからなる導電付与材粉末6質量%、PVDFからなる結合材粉末を6質量%秤量し、ミキサーで一次混合した後、メカノケミカル・ボンディング法により粒子複合化した。負極集電体は厚さ10μmの銅箔を用いた。
【0059】
正極電極と負極電極の間に厚さ20μmのポリエチレン不織布によるセパレータ7を介して積層し、電池要素を作成した後、外装9の辺長の2/5以下の長さをもつ電極タブ8を集電体に接合した。外装9はナイロン/アルミニウム/ポリプロピレンの3層構造をもつラミネートフィルム2枚の周縁部を接合して形成する構造であり、電池要素を収納するために、一方のフィルムに絞り加工による収納部を、ポリプロピレン側が凹状となるように設けた。
【0060】
上記電池要素を一方のフィルムの収納部に収納し、他方のフィルムで電池要素を覆い、接合部を重ね合わせて熱融着によって外装9の周囲3辺を融着した。融着されていない1辺より電池要素収納部に電解液を注液後、内部に空気が残らないように減圧しながら熱融着機によって封止をおこない、フィルム外装の積層型二次電池を作製した。
【0061】
本発明による積層型二次電池では、正負の電極厚みは熱プレス金型の形状と電極活物質層の充填量、および熱プレス圧等によって異なるが、本実施例においては片側最大10mm程度まで厚くしても割れ等の発生は認められなかった。
【0062】
また、電極を観察しても、加工に伴う端部のバリ発生や、電極活物質層の未形成部分に対する付着物等は認められなかった。
【0063】
本実施例で電極を作製した場合の原材料のロスは、電極作製時の電極活物質、粉末結合材、導電付与材を粒子複合化する際に1%、熱プレス時の加工条件出しの際に0.1%であった。従って、電極1枚あたりの原材料消費率は約101%であった。
【0064】
得られた積層型二次電池のセル容量は、比較例に対して105〜120%であった。また、エネルギー密度についても同様に105〜120%高かった。
【0065】
以上、図面を用いて本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、部材や構成の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば当然なしえるであろう各種変形や修正もまた、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
1、11 正極集電体
2、12 正極活物質層
3 熱プレス金型下型
4 熱プレス金型上型
5、15 負極集電体
6、16 負極活物質層
7、17 セパレータ
8、18 電極タブ
9、19 外装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の表面に正極活物質層を形成した正極電極と、前記集電体の表面に負極活物質層を形成した負極電極とを、セパレータを介して対向させ積層し、電解液とともに容器に収める積層型二次電池であって、前記正極電極および前記負極電極は、プレス金型を用いた熱圧着成型により、前記集電体の表面に前記正極活物質層および前記負極活物質層を形成するとともに、前記正極活物質層および前記負極活物質層が未形成の領域を設けてタブ接合部を構成することを特徴とする積層型二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質層および前記負極活物質層は、正極または負極の活物質の粒子表面が、少なくとも導電付与材および結合材で覆われた複合化粉末であることを特徴とする、請求項1に記載の積層型二次電池。
【請求項3】
集電体の表面に正極活物質層を形成した正極電極と、前記集電体の表面に負極活物質層を形成した負極電極とを、セパレータを介し対向させて積層し、電解液とともに容器に収める積層型二次電池の製造方法であって、前記正極電極および前記負極電極は、プレス金型を用いた熱圧着成型により、前記集電体の表面に前記正極活物質層および前記負極活物質層を形成するとともに、前記正極活物質層および前記負極活物質層が未形成の領域を設けてタブ接合部を構成することを特徴とする積層型二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記正極活物質層および前記負極活物質層は、正極または負極の活物質の粒子表面が、少なくとも導電付与材および結合材で覆われた複合化粉末であることを特徴とする、請求項3に記載の積層型二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−48967(P2011−48967A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195152(P2009−195152)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【Fターム(参考)】