説明

積層型光学機能層の製造方法

【課題】 重合型液晶層上に形成する光学機能層の膜剥がれや膜残りを防ぐことが可能な積層型光学機能層の製造方法を提供する。
【解決手段】 積層型光学機能層10の形成方法は、ガラス基板11の一面側に重合型液晶層10A(第1の光学機能層)を形成する工程と、形成した重合型液晶層10Aの表面にプラズマ処理を施す工程と、プラズマ処理を施した重合型液晶層10Aの表面にカラーフィルタ層10B(第2の光学機能層)を形成する工程とを含むものである。重合型液晶層10Aの表面にプラズマ処理を施すことで、その表面が改質され、重合型液晶層10Aに対するカラーフィルタ層10Bの密着性が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合型液晶層と光学機能層とを積層してなる積層型光学機能層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置においては、各種液晶モードの視野角補償フィルムや直線偏光板、あるいは吸収型円偏光板(λ/4板、λ/2板)などとして、位相差フィルム(位相差素子)が設置されている。また、近年では、この位相差フィルムを、重合型の高分子液晶材料からなる液晶層を用いて形成したものが提案されている(例えば、特許文献1〜6)。
【0003】
中でも、特許文献1では、耐熱性や耐薬品性等の信頼性を向上させるために、上記のような重合型液晶による位相差フィルムを液晶表示装置の内部に設ける(インセル)技術が提案されている。また、特許文献6には、位相差フィルム上にカラーフィルタを積層した構成が提案されている。このように、位相差フィルムをインセルとした場合、位相差フィルムの一面にカラーフィルタなどの他の光学機能層を密着させて形成することになる。
【特許文献1】特開平7−199173号公報
【特許文献2】特表2001−500984号公報
【特許文献3】特開2001−56484号公報
【特許文献4】特開2005−272560号公報
【特許文献5】USP5,612,801
【特許文献6】特開平4−12324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、重合型液晶層からなる位相差フィルムをインセルとし、この上にカラーフィルタなどの他の光学機能層を形成する場合には、この光学機能層を構成する材料によって、重合型液晶層に対する密着性が高くなり過ぎて(あるいは、低くなり過ぎて)しまい、適度な密着性を確保することができなかった。このため、光学機能層の成膜時に膜剥がれや膜残りが生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、重合型液晶層上に形成する光学機能層の膜剥がれや膜残りを防ぐことが可能な積層型光学機能層の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による積層型光学機能層の製造方法は、透明基板上に、配向規制された重合型液晶よりなる第1の光学機能層を形成する工程と、第1の光学機能層の表面にプラズマ処理を施す工程と、第1の光学機能層のプラズマ処理を施した面に、第2の光学機能層を形成する工程とを含むものである。
【0007】
本発明による積層型光学機能層の製造方法では、配向規制された重合型液晶からなる第1の光学機能層の表面にプラズマ処理を施すことにより、第1の光学機能層の表面が改質される。この表面に、第2の光学機能層を形成することにより、第1の光学機能層に対する第2の光学機能層の密着性が適度な大きさに調整される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層型光学機能層の製造方法によれば、配向規制された重合型液晶からなる第1の光学機能層の表面にプラズマ処理を施したのち、第2の光学機能層を形成するようにしたので、第1の光学機能層に対する第2の光学機能層の密着性が調整され、第2の光学機能層の膜残りや膜剥がれを防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る積層型光学機能層10を備えた液晶表示装置1の概略構成を表すものである。液晶表示装置1は、重合型液晶層10A(第1の光学機能層)の一面にカラーフィルタ層(第2の光学機能層)10Bが形成された積層型光学機能層10が組み込まれた構成となっている。この液晶表示装置1は、一対のガラス基板11,18間に、配向膜12、積層型光学機能層10、第1電極13、配向膜14、液晶層15、配向膜16、および第2電極17をこの順に積層してなり、ガラス基板11の上面には偏光板20、ガラス基板18の下面には、位相差板19および偏光板21が貼り付けられている。さらに、偏光板21の下方には、光源22や反射板23が設けられている。このような液晶表示装置1は、液晶テレビやノート型パソコンなどの電子機器用表示モニタとして用いられる。
【0011】
ガラス基板11の一面には、配向膜12を介して積層型光学機能層10の重合液晶層10Aが形成されている。重合型液晶層10Aは、液晶表示装置1においては、例えば視野角補償用の位相差フィルムとして機能するようになっている。
【0012】
重合型液晶層10Aは、例えば、図2(A)〜(D)に示したような液晶分子の配列規則性を有する材料によって構成されている。図2(A)は、水平配向型のネマティック液晶10A−1であり、棒状の液晶分子が基板面に対して水平方向に配向したものである。図2(B)は、垂直配向型のネマティック液晶10A−2であり、棒状の液晶分子が基板面に対して垂直方向に配向したものである。図2(C)は、コレステリック液晶10A−3を示し、棒状の液晶分子が基板面に対して水平な面内で回転しつつ螺旋状に配列したものである。図2(D)は、円盤状または棒状の液晶分子が基板面から離れるに従って、チルト角が徐々に変化していくようなハイブリッド配向となっている。
【0013】
この重合型液晶層10Aは、液晶分子の配列(配向状態)によって、所定のリタデーションが得られるようになっている。また、配向膜12は、重合型液晶層10Aの配向を制御するためのものであり、例えばポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリビニルアルコールなどの樹脂材料に、ラビングなどの配向処理を施したものにより構成されている。あるいは、配向性を有する支持基板、例えば延伸フィルムなどを用いることにより、ガラス基板11と配向膜12とが一体となっている構成であってもよい。
【0014】
カラーフィルタ層10Bは、重合型液晶層10Aに隣接して設けられ、例えば、図3に示したように、ブラックマトリックスBMの開口領域に、R(赤),G(緑),B(青)の3色のカラーフィルタが規則的に配列したものである。このカラーフィルタR,G,Bは、例えば、顔料分散型カラーフィルタ等であり、赤色、緑色および青色の成分のうちのいずれか1色を効果的に透過し、それ以外の2色の光を効果的に吸収するものであれば、特に限定されるものではない。また、透過型であっても反射型であってもよい。カラーフィルタR,G,Bの厚みは、それぞれ例えば1μm〜2μm程度である。
【0015】
ブラックマトリックスBMは、画素毎の発光区域を区画すると共に、各色の区域どうしの境界における外光の反射の防止および画素間の光漏れを防止し、コントラストを高めるためのものである。このブラックマトリクスBMは、金属、金属酸化物および金属窒化物の薄膜層を積層してなり、例えば、CrO(xは任意数)およびCrの積層からなる2層クロムブラックマトリクス、あるいは反射率を低減させたCrO、CrNおよびCr(x,yは任意数)の積層からなる3層クロムブラックマトリクスなどにより構成され、厚みは例えば0.2μm〜2.0μmである。
【0016】
液晶層15は、例えばネマティック液晶、スメクティック液晶、コレステリック液晶などの液晶材料より構成され、例えばVA(Vertical Alignment)モード、IPS(In Plane Switching)モード、TN(Twisted Nematic)モードなどのセル構造を有している。第1電極13および第2電極17は、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明電極により構成され、配向膜14,16は、例えばポリイミドなどの樹脂材料によって構成されている。
【0017】
偏光板20,21は、特定の方向に振動する偏光を透過させるようになっており、それぞれの透過軸が、互いに直交するように配置されている。光源22としては、例えば、導光板などを用いたエッジライト型のバックライトが用いられ、偏光板21側へ光が照射されるようになっている。但し、これに限らず、直下型のバックライトであってもよい。また、反射板23は光源22あるいは偏光板21の側から戻ってきた光を拡散させて、再び表示光として利用する(リサイクル)ために設けられるものである。
【0018】
次に、上記のような液晶表示装置1の積層型光学機能層10の形成方法について、図3および図4を参照して説明する。この積層型光学機能層10の形成方法は、ガラス基板11の一面側に重合型液晶層10A(第1の光学機能層)を形成する工程と、形成した重合型液晶層10Aの表面にプラズマ処理を施す工程と、プラズマ処理を施した重合型液晶層10Aの表面にカラーフィルタ層10B(第2の光学機能層)を形成する工程とを含むものである。なお、図4では、液晶層10A−1、重合型液晶層10Aにおいて所定の方向に配向する液晶分子の一例について模式的に示している。
【0019】
(重合型液晶層10Aの形成)
まず、図4(A)に示したように、ガラス基板11の一面に、上述の材料等よりなる配向膜12を形成したのち、この配向膜12に対してラビング処理などの配向規制処理を施す。ラビング処理は、例えば、レーヨン、綿、ポリアミド、ポリメチルメタアクリレートなどの材料からなるラビング布を金属ロールに捲きつけ、このロールを配向膜12に接した状態で回転させることによって施すことができる。
【0020】
次いで、図4(B)に示したように、配向規制処理を施した配向膜12上に液晶層10A−1を成膜する。このとき、例えば室温で液晶相を示さない液晶材料などを用いた場合には、加熱処理によって配向処理を施すようにする。このように、配向膜12の配向規制力や加熱処理を施すことによって、液晶層10A−1内の液晶分子を所望の方向に配向させる。液晶材料としては、重合性を有する高分子液晶材料、例えば、化1〜化5に示したネマティック液晶や、コレステリック液晶が用いられ、必要に応じて2種以上を混合するようにしてもよい。このとき、液晶材料を、例えば液晶材料が可溶な各種溶媒(トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル)などの単一または混合溶媒に溶かして用いることにより、例えばスピンコート法などの各種コーティング法により、配向膜12上に液晶層10A−1を容易に塗布形成することができる。なお、この場合、用いた溶媒については、液晶層10A−1成膜後に、例えば加熱処理または減圧乾燥処理を施すことにより除去するようにする。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
また、液晶層10A−1への添加剤として、例えばメガファックR−08,R−90,F−483(商品名;大日本インキ社製)、BYK361(商品名;ビックケミー社製)、ポリフロー461(商品名;共栄社化学社製)などの界面活性剤を用いることができる。この界面活性剤の添加量としては、液晶の配向を阻害しない範囲で、液晶材料に対して0.01重量%〜10重量%程度であることが好ましい。さらに、光開始剤として、IRGACUR907,369,184,819、OXE01、OXE02(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(商品名;BASF社製)などを用いることができ、必要に応じて2種以上を用いたり、他の光開始剤を混合するようにしてもよい。光開始剤の添加量は、0.01重量%〜15重量%、好ましくは0.1重量%〜12重量%、より好ましくは0.5重量%〜10重量%の範囲とする。
【0027】
次いで、図4(C)に示したように、形成した液晶層10A−1に対して、例えば紫外線(UV)を照射することにより、三次元架橋処理を施す。このとき、紫外線UVを照射する光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などの水銀励起光源や、キセノン光源を用いることができる。但し、光開始剤の感度の高い波長領域に強度ピークを有する光源を選択することが好ましい。これにより、液晶層10A−1内の分子を三次元の鎖状あるいは網状に結合させ、液晶層10A−1を硬化させることができる。なお、この三次元架橋処理は、紫外線の他にも、粒子線や電磁線などの放射線を照射することによっても施すことができる。
【0028】
続いて、三次元架橋処理を施した液晶層10A−1に対して、さらに架橋を促進させるために重合処理を施す。重合処理は、例えば空気または窒素雰囲気中で、150℃〜250℃の熱処理を施すこと(熱重合)により行う。これにより、液晶層10A−1内の分子が重合し、位相差フィルムとしての重合型液晶層10Aを形成することができる。
【0029】
(プラズマ処理)
次に、図4(D)に示したように、形成した重合型液晶層10Aの表面にプラズマ処理を施す。プラズマ処理としては、重合型液晶層10A内部の三次元架橋構造を崩さない条件であれば特に限定されないが、好ましくは、大気圧(AP)プラズマ処理とする。この際、重合型液晶層10Aおよび光学機能層10Bの構成材料や、これらの間で必要とされる密着性の度合いに応じて、処理条件、例えばガス流量、電力、基板とのギャップ(膜面から電極までの距離)、搬送速度などの条件を適宜設定する。
【0030】
(カラーフィルタ層10Bの形成)
次に、プラズマ処理を施した重合型液晶層10Aの表面に、カラーフィルタ層10Bを直接成膜する。まず、重合型液晶層10Aの表面に、上述の金属クロムを含む薄膜の積層体を、例えば蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等により形成する。このとき、金属クロムを含有する上述の材料を用いることで、光学濃度、耐洗浄性および加工特性等に有利となる。続いて、形成した薄膜積層体に対して、例えばフォトリソグラフィ法により、フォトレジストの塗布、パターンマスクを用いた露光、現像、エッチング、および洗浄等の工程を経ることにより、ブラックマトリックスBMを形成する。なお、このブラックマトリックスBMは、無電界めっき法や黒色のインキ組成物を用いた印刷法等によっても形成することができる。
【0031】
こののち、カラーフィルタR,G,Bを、ブラックマトリクスBMの開口領域に、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターニング形成するか、あるいは、各色に着色したインキ組成物を調製して、各色毎に印刷するようにして形成する。また、このとき、カラーフィルタR,G,Bの各色を形成するごとに、上述のプラズマ処理を施すようにしてもよい。例えば、赤色(R)のパターンを形成したのち、さらにプラズマ処理を施した上で、緑色(G)あるいは青色(B)のパターンを形成することが好ましい。すなわち、カラーフィルタ層10Bのパターン形成回数に応じて、少なくとも2回以上のプラズマ処理を施すことが好ましい。以上の工程により、ガラス基板11上に積層型光学機能層10を形成する(図3)。
【0032】
このように、本実施の形態の積層型光学機能層10の形成方法では、ガラス基板11上に形成された重合型液晶層10Aの表面に、プラズマ処理を施すことで、重合型液晶層10Aの表面が改質され、重合型液晶層10Aに対するカラーフィルタ層10Bの密着性を適度な大きさに調整することができる。よって、成膜時の膜残りや膜剥がれを防ぐことが可能となる。
【0033】
ここで、重合型液晶層10Aの表面処理としては、他に低圧水銀灯などを用いたUV洗浄処理などが挙げられるが、この場合、三次元架橋した分子の結合が切れてしまい、酸化が発生し、リタデーションが低下したり、耐熱性が下がってしまう。本実施の形態では、プラズマ処理によって重合型液晶層10Aおよびカラーフィルタ層10Bの特性を損なうことなく、表面改質を行うことができる。
【0034】
また、重合型液晶層10Aを形成する工程において、重合性を有する液晶層10A−1に対して三次元架橋処理を施すことにより、後の工程でカラーフィルタ層10Bを形成する際や液晶セル化の際における温度変化によって、重合型液晶層10Aの光学特性が劣化することを防止することができる。さらに、この三次元架橋処理ののちに重合処理(熱重合)を施すことで、三次元架橋を促進させることができる。
【0035】
また、重合型液晶層10Aを、図2(A)に示したようなネマティック液晶材料を用いて形成することにより、液晶分子の長軸方向が実質的に基板面に対して水平に配向した位相差フィルム(Aプレート)として用いることができる。また、図2(B)に示したようなネマティック液晶材料を用いて形成することにより、液晶分子の長軸方向が実質的に基板面に対して垂直方向に配向した位相差フィルム(ポジティブCプレート)として用いることができる。
【0036】
また、重合型液晶層10Aを、図2(C)に示したようなコレステリック液晶材料を用いて形成することにより、紫外域に選択反射を有する位相差フィルム(ネガティブCプレート)や紫外線反射膜、可視光域に選択反射を有するカラー反射板、赤外域に選択反射を有する熱線カット板などとして用いることができる。
【0037】
また、重合型液晶層10Aを、図2(D)に示したようなハイブリッド配向型の液晶材料を用いて形成することにより、例えばOプレート位相差フィルムなどとして用いることができる。
【0038】
次に、本発明の変形例について説明する。
【0039】
(変形例1)
図5(A),図5(B)および図6(A),図6(B)は、それぞれ、積層型光学機能層10において重合型液晶層10A(第1の光学機能層)に隣接して形成される第2の光学機能層の一例を示すものである。
【0040】
図5(A)は、例えばスペーサやシール部などとして機能し、例えばアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂の混合物により構成された柱層24を形成したものである。図5(B)は、例えば、重合型液晶層10Aやカラーフィルタ層を保護するために設けられ、例えばアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂の混合物により構成された保護層25を形成したものである。
【0041】
図6(A)は、パターニングされた光透過層26を形成したものであり、例えばアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂の混合物により構成されている。光透過層26は、具体的には、セル内部に反射部と透過部とを有する液晶表示装置において、セルギャップを調整するために用いられるものである。図6(B)は、パターニングされた透明電極層27を形成したものである。
【0042】
このように、第2の光学機能層としては、図1および図3に示したようなカラーフィルタ層10Bに限らず、他の光学機能を有する有機層、あるいは透明電極などの無機層を形成するようにしてもよい。これにより、重合型液晶層10A上に形成する光学機能層が、図5(A),図5(B)および図6(A)のように有機層である場合には、通常、重合型液晶層との密着性が高すぎて成膜時に膜残りが生じるが、プラズマ処理を施すことで、密着性が低下し、膜残りを防ぐことができる。一方、光学機能層が、図6(B)のように無機層である場合には、通常、重合型液晶層との密着性が低すぎて成膜時に膜剥がれが生じるが、プラズマ処理を施すことで、密着性が向上し、膜剥がれを防ぐことができる。
【0043】
なお、本発明における「光学機能層」とは、その層自体が光学的な機能を有しているという意味に限定されず、液晶表示装置全体に関する何らかの光学的な機能に寄与する層を意味するものとする。
【0044】
(変形例2)
また、図7には、積層型光学機能層10の重合型液晶層10A(第1の光学機能層)の変形例(重合型液晶層11A)を示す。図に示したように、重合型液晶層11Aは、配向膜12上でパターニング形成された構成であってもよい。この場合、パターニングされた重合型液晶層11Aを平坦化させる平坦化層28が設けられる。この平坦化層28は、例えばアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂の混合物により構成されている。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0046】
(実施例1−1)
実施例1−1として、図3に示したような積層型光学機能層10を形成した。この際、まず、化1に示したネマティック液晶を用いて、下記のような組成物Aを調整した。一方、ガラス基板11上に、ラビング処理済みの配向膜12を形成した。但し、配向膜12としては、AL1254(商品名;JSR社製)を用いた。
[組成物A]
化1 :20重量%
IRGACURE907 :1重量%
メガファックR−08 :0.02重量%
PGMEA :78.98重量%
【0047】
次いで、上記組成物Aを、配向膜12上にスピンコート法にて塗布したのち、減圧乾燥(最終到達真空度50Pa)により溶剤を除去した。こののち、ホットプレート上(90℃)にて、3分間配向処理を行うことにより、配向膜12上に液晶層10A−1を形成した。
【0048】
続いて、液晶層10A−1に対して紫外線UVを照射することにより、三次元架橋処理を施した。この際、光源としては超高圧水銀灯を用い、照度20mW/cm2、露光時間40秒、窒素雰囲気中(酸素濃度0.1%以下)とした。こののち、窒素雰囲気中のオーブン(220℃、酸素濃度1%以下)にて60分間熱処理を行なうことにより、液晶層10A−1を熱重合させ、重合型液晶層10Aを形成した。
【0049】
このようにして形成した重合型液晶層10Aの膜厚を、触針式段差計にて測定したところ1.1μmであった。また、正面のリタデーションを測定したところ、110nmであり、ラビング軸に沿って傾斜させたところ、−50°のリタデーションは82nm、+50°のリタデーションは81nmであった。よって、Aプレート位相差フィルムが形成されていることが確認できた。
【0050】
次に、上記のようにして形成した重合型液晶層10Aの表面にプラズマ処理を施した。この際、プラズマ装置としては、ADMASTERII−620d(イースクエア社製)を用いた大気圧プラズマで処理を行った。また、CDA(クリーンドライエア)ガス流量:150ml/分、電力:2.0kW、基板とのギャップ:3.0mm、窒素ガス流量:250l/分、搬送速度:5m/分とした。
【0051】
次いで、プラズマ処理を施した重合型液晶層10Aの表面に、カラーフィルタ層10B(カラーフィルタR,G,BおよびブラックマトリクスBM)を、フォトリソグラフィ法を用いてパターン形成することにより、積層型光学機能層10を形成した。形成されたカラーフィルタ層10Bについて、顕微鏡観察および触針式段差計により、パターンの確認、膜厚の測定を行ったところ、素ガラス上に形成した場合と同程度の線幅、膜厚となっていることが確認できた。また、フォトリソグラフィ法により膜を除去した部分についてSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により観察を行ったが、膜残りは観察されなかった。
【0052】
(実施例1−2)
実施例1−2として、上記実施例1−1と同様にして形成した重合型液晶層10Aに対してフォトマスクを介して露光したのち、メチルエチルケトンにて現像しパターニングを行うことで、図7の変形例2に示したような重合型液晶層11Aを形成した。こののち、形成した重合型液晶層11Aの表面に、上記実施例1−1と同様にしてプラズマ処理を施し、その上に平坦化層28を形成することにより、積層型光学機能層10を形成した。このようにして形成した実施例1−2の平坦化層28について、上記実施例1−1と同様にして膜厚の測定を行ったところ、膜が均一に形成され、膜剥がれや膜残りは観察されなかった。
【0053】
(比較例1−1)
上記実施例1−1の比較例1−1として、形成した重合型液晶層の表面にプラズマ処理を施さなかったこと以外は、上記実施例1−1と同様にして積層型光学機能層を形成したところ、カラーフィルタ層形成時のパターン除去部分に膜残りが生じてしまった。
【0054】
(比較例1−2)
上記実施例1−2の比較例1−2として、形成した重合型液晶層の表面にプラズマ処理を施さなかったこと以外は、上記実施例1−2と同様にして積層型光学機能層を形成したところ、平坦化層形成時に膜がはじいてしまい、上手く成膜できなかった。
【0055】
(実施例2−1)
実施例2−1として、図3に示したような積層型光学機能層10を形成した。まず、化1および化2に示したネマティック液晶を用いて、下記のような組成物Bを調整し、配向膜12として、LX1400(商品名:日立化成デュポン社製)を用いたこと以外は、上記実施例1−1と同様にして、配向膜12上に重合型液晶層10Aを形成した。
[組成物B]
化1 :20重量%
化2 :1重量%
IRGACURE907 :1 重量%
メガファックR−08 :0.02重量%
PGMEA :77.98重量%
【0056】
このようにして形成した重合型液晶層10Aの膜厚を、触針式段差計にて測定したところ0.9μmであった。また、正面のリタデーションを測定したところ、90nmであり、ラビング軸に沿って傾斜させたところ、−50°のリタデーションは60nm、+50°のリタデーションは110nmであった。よって、液晶分子のチルト角が変化している位相差フィルム(Oプレート)が形成されていることが確認できた。
【0057】
次に、重合型液晶層10Aの表面に、電力を3.0kWとしたこと以外は、上記実施例1と同様の条件でプラズマ処理を施し、この表面にカラーフィルタ層10Bをフォトリソグラフィ法により形成した。但し、実施例2では、カラーフィルタ、R,G,BおよびブラックマトリクスBMの各色をそれぞれパターン形成するごとに、すなわち計4回のプラズマ処理を施すようにした。形成したカラーフィルタ層10Bについて、顕微鏡観察および触針式段差計により、パターンの確認、膜厚の測定を行ったところ、素ガラス上に形成した膜と同等の線幅、膜厚が形成されていることが確認できた。また、膜が除去された部分についてSEM観察を行ったが、膜残りは観察されなかった。
【0058】
このように、重合型液晶層10A上に、カラーフィルタ層10Bの各色のパターンを複数回にわたって形成する場合には、そのパターン形成の度にプラズマ処理を施すようにすることが好ましい。こうすることで、重合形液晶層10A上に既に形成されている層の表面についても改質される。また、一度プラズマ処理を施した重合型液晶層10Aの表面であっても、パターン形成の過程において膜が除去された部分については、プラズマ処理による表面改質効果が小さくなる。さらに、時間が経つことによっても、徐々に表面改質の効果は小さいものとなる。よって、パターン形成のたびにプラズマ処理を施すことで、適度な密着性が長時間保持され、膜残りを効果的に防ぐことができる。
【0059】
(実施例2−2〜2−4)
実施例2−1と同様にして、重合型液晶層10Aの表面にプラズマ処理を施したのち、実施例2−2では透明な保護層25(図5(B))、実施例2−3では柱層24(図5(A))をフォトリソグラフィ法により形成した。また、実施例2−4では、ITO層を成膜したのち、ポジレジストを塗布して塩酸により除去し、透明電極層27のパターニング形成(図6(B))を行った。この結果、膜が均一に形成され、膜残りや膜剥がれは観察されなかった。
【0060】
(比較例2−1〜2−4)
実施例2−1〜実施例2−4にそれぞれ対応する比較例2−1〜比較例2−4として、プラズマ処理を施さずに、積層型光学機能層を形成した。これら比較例2−1〜比較例2−4について、実施例2−1と同様にして、パターンの確認、膜厚の測定を行ったところ、比較例2−1では、カラーフィルタ層形成時のパターン除去部分に膜残りが生じてしまい、比較例2−2では、透明な保護層25がはじかれて、上手く成膜することができなかった。また、比較例2−3では柱層24の膜残り、比較例2−4では透明電極層27の膜剥がれが生じてしまった。
【0061】
このように、重合型液晶層を形成したのち、その表面にプラズマ処理を施すことで、表面が改質され、重合型液晶層に対する光学機能層の密着性が制御され、成膜時における膜残りや膜剥がれを防ぐことができることがわかる。
【0062】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、上記実施の形態等に限定されず、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、液晶表示装置の構成を具体的に挙げて説明したが、必要に応じて、拡散性を有する層や反射機能を有する層等、他の層を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した重合型液晶層における液晶分子の配列構成を模式的に表す図である。
【図3】図1に示した積層型光学機能層の断面拡大図である。
【図4】図1に示した積層型光学機能層の形成方法を工程順に表す図である。
【図5】変形例1に係る積層型光学機能層の概略構成を表す断面図である。
【図6】変形例1に係る積層型光学機能層の概略構成を表す断面図である。
【図7】変形例2に係る積層型光学機能層の概略構成を表す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…液晶表示装置、10…積層型光学機能層、10A…重合型液晶層、10B…カラーフィルタ、11,18…ガラス基板、12,14,16…配向膜、13,17…電極、15…液晶層、19…位相差板、20,21…偏光板、22…光源、23…反射板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、配向規制された重合型液晶よりなる第1の光学機能層を形成する工程と、
前記第1の光学機能層の表面にプラズマ処理を施す工程と、
前記第1の光学機能層の前記プラズマ処理を施した面に、第2の光学機能層を形成する工程と
を含むことを特徴とする積層型光学機能層の製造方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理は、大気圧プラズマ処理である
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項3】
前記第1の光学機能層を形成する工程は、
重合性を有する液晶層に配向規制処理を施す工程と、
前記配向規制処理が施された液晶層に、エネルギー線を照射することにより三次元架橋処理を施す工程と、
前記三次元架橋処理を施した液晶層に熱処理を施して熱重合させる工程と
を含むことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項4】
前記重合性を有する液晶層は、ネマティック液晶を含むものである
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項5】
前記重合性を有する液晶層は、コレステリック液晶を含むものである
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項6】
前記重合性を有する液晶層は、その厚み方向において液晶分子のチルト角が変化するようになっている
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項7】
前記第2の光学機能層は、カラーフィルタを含む
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項8】
前記第2の光学機能層は、ブラックマトリクスを含む
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項9】
前記第2の光学機能層は、有機層により構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項10】
前記第2の光学機能層は、透明電極である
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項11】
前記第1の光学機能層を形成する工程ののち、
前記第1の光学機能層をパターニングし、このパターニングされた第1の光学機能層の表面にプラズマ処理を施す
ことを特徴とする請求項1記載の積層型光学機能層の製造方法。
【請求項12】
前記パターニングされた第1の光学機能層にプラズマ処理を施したのち、
前記第2の光学機能層として、前記第1の光学機能層を平坦化させるための平坦化層を形成する
ことを特徴とする請求項11記載の積層型光学機能層の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−8899(P2009−8899A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170291(P2007−170291)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】