説明

積層型固体撮像装置

【課題】本発明は、高画質な出力を得られる積層型固体撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】2次元状に配列された画素100毎に設けられた画素トランジスタ30と、
該画素トランジスタの一方の拡散層に接続された画素電極31の上に積層され、該画素電極側と反対側に位置する受光面で受光した光を光電変換して、信号電荷を発生させる光電変換膜10と、
該光電変換膜の前記受光面上に設けられた透明電極20と、
読み出し対象となる前記画素を、前記画素トランジスタをオンとして選択するともに、前記画素電極から所定の固定電位を供給して前記光電変換膜を初期バイアス状態に戻す固体駆動部80と、
前記透明電極に接続され、前記光電変換膜が前記初期バイアス状態に戻るときに、前記光電変換膜を流れる前記信号電荷に対応する電流を検出し、光電変換膜で発生した前記信号電荷を読み出す読み出し回路130と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型固体撮像装置に関し、特に、画素トランジスタの画素電極の上に光電変換膜を積層した積層側固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体撮像装置として、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが利用されているが、これらの固体撮像装置は、画素サイズが小さくなってきたため、開口率が低くなり、感度、S/N(Signal/Noise)が悪化してきている。これを改善する手段として、CMOSイメージセンサ上に光電変換膜を積層した積層型固体撮像装置が提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
かかる積層型固体撮像装置によれば、開口率を100%近くまで向上させることができる。特に、光電変換膜に信号増幅作用がある場合、開口率の向上との相乗効果により、一層の高感度、高S/N化を図ることができる。このような撮像デバイスに適用する光電変換膜として、アバランシェ増倍作用を有するHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)膜を採用したHARP膜積層CMOSイメージセンサや、アモルファスシリコンを積層したCMOSイメージセンサの検討及び試作が行われている。これらの光電変換膜を利用した積層型固体撮像装置においては、いずれも光電変換膜で発生し、増倍された信号電荷を、CMOSの拡散層に接続された画素電極を介してCMOSイメージセンサの画素に導き、CMOSイメージセンサの出力として読み出す方式を採用している。
【非特許文献1】映像情報メディア学年次大会 12−3、P.166〜167、1998
【非特許文献2】映像情報メディア学年次大会 14−4、2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の非特許文献1及び非特許文献2に記載の構成では、光電変換膜とCMOSイメージセンサの読み出し回路との接合部分のバンプ等が画素毎にばらつき、かかる画素毎のばらつきが固定パターン雑音として現れたり、接合部分の界面状態により光電変換膜で発生して増倍された信号電荷がトラップされることにより、信号電圧が低下したり、残像が発生したりし、画質が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、光電変換膜と画素電極との接合部分のばらつきに起因する画質低下を解消し、高画質な出力を得られる積層型固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る積層型固体撮像装置は、2次元状に配列された画素毎に設けられた画素トランジスタと、
該画素トランジスタの一方の拡散層に接続された画素電極の上に積層され、該画素電極側と反対側に位置する受光面で受光した光を光電変換して、信号電荷を発生させる光電変換膜と、
該光電変換膜の前記受光面上に設けられた透明電極と、
前記信号電荷の読み出し対象となる前記画素を、前記画素トランジスタをオンとして選択するとともに、前記画素電極から所定の固定電位を供給して前記光電変換膜を初期バイアス状態に戻す固体駆動部と、
前記透明電極に接続され、前記光電変換膜が前記初期バイアス状態に戻るときに、前記光電変換膜を流れる前記信号電荷に対応する電流を検出し、光電変換膜で発生した前記信号電荷を読み出す読み出し回路と、を有することを特徴とする。
【0007】
これにより、信号電荷の読み出しを光電変換膜の受光面側から行うことができ、画素トランジスタの画素電極と光電変換膜の接合部分の画素毎のばらつきによる影響を受けることなく信号電荷を読み出すことができ、高品質の画像を撮像することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係る積層型固体撮像装置において、
前記固体駆動部は、前記画素トランジスタを行毎に駆動する垂直シフトレジスタと、前記画素の列毎に対応して設けられた水平選択トランジスタと、該水平選択トランジスタを駆動する水平シフトレジスタとを有し、
前記画素トランジスタの前記画素電極に接続されていない他方の拡散層は、各列に対応した前記水平選択トランジスタの一方の拡散層に接続されており、前記水平選択トランジスタの他方の拡散層は、前記固定電位を供給する固定電位供給手段に接続されたことを特徴とする。
【0009】
これにより、読み出し対象となる2次元配列された画素に、順次固定電位を供給して行順、列順に走査して読み出すことができ、固定撮像素子を画素選択のスイッチングのみに用い、ノイズを与えず高速に信号電荷の読み出しを行うことができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る積層型固体撮像装置において、
前記固定電位は、接地電位又は所定の電源電位であることを特徴とする。
【0011】
これにより、光電変換膜のキャリアの極性に応じて、適切な電位を供給することができるとともに、回路構成を簡素にすることができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る積層型固体撮像装置において、
前記光電変換膜は、アバランシェ増倍作用を有するアバランシェ増倍型光電変換膜であることを特徴とする。
【0013】
これにより、アバランシェ増倍作用と、撮像電極と光電変換膜の接合部分の固定雑音パターンの解消の効果と相俟って、高S/N化を実現でき、高品質の画像を得ることができる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明に係る積層側固体撮像装置において、
前記アバランシェ増倍型光電変換膜は、アモルファスセレンを含む膜であり、前記固定電位は、接地電位であることを特徴とする。
【0015】
これにより、HARP膜を用いて十分な信号電荷の増倍効果を得ることができ、光電変換膜のキャリアが正孔の場合には、光電変換膜を接地電位にして上面の透明電極から信号電荷を読み出すことができる。
【0016】
第6の発明は、第4の発明に係る積層型固体撮像装置において、
前記アバランシェ増倍型光電変換膜は、アモルファスシリコンを含む膜であり、前記固定電位は、所定の電源電位であることを特徴とする。
【0017】
これにより、アモルファスシリコンを適用した光電変換膜の場合には、光電変換膜を電源電位の初期バイアス状態に戻して適切に上面の透明電極から信号電荷を読み出すことができる。
【0018】
第7の発明は、第1〜6のいずれかの発明に係る積層型固体撮像装置において、
前記読み出し回路は、前記光電変換膜が初期バイアス状態に戻るときに流れる電流を電圧に変換して読み出す電流−電圧変換回路を含むことを特徴とする。
【0019】
これにより、電流を電圧に変換して信号電荷を読み出すことができ、その後の処理を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高画質で撮像画像を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明を適用した実施例1に係る積層型固体撮像装置の全体構成を示した図である。図1において、実施例1に係る積層型固体撮像装置は、光電変換膜10と、画素100と、固体駆動部80とを備える。画素100は、画素毎に画素トランジスタ30と、画素電極31とを備える。また、固体駆動部80は、水平選択トランジスタ40と、垂直シフトレジスタ50と、水平シフトレジスト60と、固定電位供給手段70とを備える。
【0023】
光電変換膜10は、上部の受光面から光を受光し、光に基づいて電荷信号を発生させる手段である。光電変換膜10は、光を受光して電荷信号に変換させる膜であれば、種々の光電変換膜10を適用することができるが、実施例1においては、アバランシェ増倍作用を有するHARP膜が適用されている例を説明する。HARP膜は、受光した光を電気信号に変換して信号電荷を発生させるだけでなく、アバランシェ増倍作用により、雪なだれ式に信号電荷量を増倍する。HARP膜は、横方向の抵抗値が非常に高く、画素間で信号電荷が混合されるおそれが少ないため、画素に区切る必要が無い。よって、HARP膜は、2次元に配列された画素トランジスタ30に接続された画素電極31の全面に積層している。
【0024】
画素100は、画像を撮像する単位であり、2次元状に配列される。各画素は、画素トランジスタ30と、画素トランジスタ30の一方の拡散層に接続された画素電極31とを有する。
【0025】
画素トランジスタ30は、画素毎に設けられたトランジスタである。画素トランジスタ30は、各画素100に対応して設けられ、複数の画素トランジスタ30が2次元状に配置される。本実施例に係る積層型固体撮像装置においては、1画素について1個の画素トランジスタ30が備えられる。本実施例に係る積層型固体撮像装置においては、画素トランジスタ30は、信号電荷の増幅や読み出しを行わず、読み取り対象となる画素を選択し、選択した画素に所定の固定電位を供給する役割のみを担う。画素トランジスタ30は、例えばMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタが適用されてよく、ゲートに駆動電圧が印加されてオンとされることにより、読み出し対象の画素100が選択されてよい。なお、画素トランジスタ30は、用途に応じてNチャネルMOSトランジスタが適用されてもよいし、PチャネルMOSトランジスタが適用されてもよいが、一般的には、NチャネルMOSトランジスタが適用される。
【0026】
画素電極31は、画素トランジスタ30の一方の拡散層に接続された電極であり、平面的には、画素電極31の1個の形状が、1個の画素100を構成する。よって、画素100に対応して、複数の画素電極31が、2次元状に配置される。画素電極31は、光電変換膜10の受光面と反対側に位置し、光電変換膜10の下面に設けられる。光電変換膜10が、画素電極31上に積層されていると言ってもよく、光電変換膜10の下面に、例えばバンプ等で光電変換膜10に接合されて画素電極31は設けられる。画素電極31は、読み出し対象として選択された画素100に対応する位置の光電変換膜10に、信号電荷読み出しの際に固定電位を供給する。つまり、読み出し対象となる画素100の画素トランジスタ30がオンとなったときに、画素電極31から所定の固定電位が光電変換膜10に印加される。画素電極31は、例えば、アルミニウム、銅又は金等の配線用の金属が適用されてよい。また、画素電極31は、光電変換膜10に所定の固定電位を供給できれば、画素トランジスタ30のドレイン又はソースのいずれに接続されてもよいが、実施例1においては、例えば、画素トランジスタ30にNチャネルMOSトランジスタが適用された場合には、画素トランジスタ30のドレインに画素電極31が接続されるように構成されてよい。
【0027】
画素トランジスタ30の、画素電極31と接続されていない他方の拡散層は、垂直ライン35に接続される。垂直ライン35には、画素100の垂直列をなす画素トランジスタ30の画素電極31と接続されていない方の拡散層が、共通して接続される。
【0028】
固体駆動部80は、信号電荷の読み出し対象となる画素100を選択し、読み出し対象となる画素100に対応する光電変換膜10に固定電位を供給し、光電変換膜10を初期バイアス状態に戻すように画素トランジスタ30を駆動する手段である。固体駆動部80は、水平選択トランジスタ40と、垂直シフトレジスタ50と、水平シフトレジスタ60と、固定電位供給手段70を備える。
【0029】
水平選択トランジスタ40は、信号電荷の読み出し対象となる画素100の画素トランジスタ30を、水平方向(列方向)について選択し、選択した画素トランジスタ30に所定の固定電位を供給するスイッチング用のトランジスタである。水平選択トランジスタは、例えばMOSトランジスタが適用されてよい。水平トランジスタ40は、画素トランジスタ30の水平方向についての選択を行うため、画素トランジスタ30の画素電極31に接続されていない方の拡散層が共通して接続されている垂直ライン36に、一方の拡散層が接続される。つまり、同列にある画素トランジスタ30の画素電極31に接続されていない方の拡散層は、垂直ライン35を介して、対応する列に設けられた水平選択トランジスタ40の一方の拡散層に接続される。
【0030】
水平選択トランジスタ40の、画素トランジスタ30(垂直ライン35)と接続されていない方の拡散層は、固定電位供給手段70に接続される。これにより、信号電荷の読み出し対象となった画素100の画素トランジスタ30がオンとなり、かつ読み出し対象となっている画素100の列の水平選択トランジスタ40がオンとなれば、固定電位供給手段70から供給される固定電位を画素トランジスタ30の画素電極31に供給することができる。なお、水平選択トランジスタ40は、用途に応じてNチャネルMOSトランジスタ及びPチャネルMOSトランジスタの双方を適用することができる。
【0031】
固定電位供給手段70は、水平選択トランジスタ40の一方の拡散層が接続され、水平選択トランジスタ40がオンとなって導通したときに、固定電位を供給するための手段である。実施例1に係る積層型固体撮像装置においては、固定電位供給手段70は接地電位を供給するように構成されている。この固定電位は、光電変換膜10の電位状態を、初期バイアス状態とするのに適切な電位が設定されてよく、実施例1に係る積層型固体撮像装置においては、光電変換膜10にキャリアが正孔のHARP膜が適用されているので、固定電位供給手段70は接地状態となっている。
【0032】
垂直シフトレジスタ50は、読み出し対象である画素トランジスタ30を駆動させるための垂直走査回路である。よって、垂直シフトレジスタ50は、画素トランジスタ30のゲートに接続されるが、2次元配列された画素トランジスタ30について、同じ行に配列された画素トランジスタ30のゲートに共通に接続されている。これにより、垂直方向について、順次信号電荷の読み出しを行う画素トランジスタ30を選択し、駆動させることができる。垂直シフトレジスタ50により、例えば、1行目、2行目・・・m行目というように順次信号電荷を読み出す画素100の画素トランジスタ30を選択駆動するとともに、水平選択トランジスタ40で水平方向に列の選択を行えば、一意に読み出し対象となる画素トランジスタ30を特定することができ、画素100について1個ずつ順次読み出しを行うことができる。なお、垂直シフトレジスタ50は、通常に用いられるシフトレジスタが適用されてよい。
【0033】
水平シフトレジスタ60は、読み出し対象となる画素トランジスタ30の列に対応する水平方向トランジスタ40を駆動させるための水平走査回路である。よって、水平シフトレジスタ60は、各列の水平選択トランジスタ40のゲートに接続され、選択する列の水平方向トランジスタ40を駆動できるように構成されている。水平シフトレジスタ60においても、例えば、1列目、2列目、・・・n列目というように、各列に配置された水平選択トランジスタ40を順次選択して駆動させることにより、水平方向に移動させる読み出し走査を行わせることができる。垂直シフトレジスタ50と水平シフトレジスタ60により、2次元状に配置された画素トランジスタ30を、一意に選択して読み出しを行うことができる。
【0034】
図2は、実施例1に係る積層型固体撮像装置の1画素100、1列分について、読み出し回路130まで加えた構成を示した図である。図2において、1画素分の画素トランジスタ30と、1列分の水平選択トランジスタ40が示されている。画素トランジスタ30と水平選択トランジスタ40は直列に接続され、画素トランジスタ30の一方の拡散層と、水平選択トランジスタ40の一方の拡散層が接続されている。水平選択トランジスタ40の他方の拡散層は、固定電位供給手段70に接続され、実施例1においては、グラウンドに接続されて接地電位が供給されるようになっている。
【0035】
画素トランジスタ30の、水平トランジスタ40と接続されていない方の拡散層は、画素電極31に接続され、画素電極31の上には、光電変換膜10が積層されている。光電変換膜10の上面は、受光面を構成するが、その受光面上に透明電極20が配置されている。透明電極20は、光電変換膜10と同様に、連続した1枚の電極として設けられてよい。また、透明電極20の上面には、ガラス基板90が配置されている。光電変換膜10は、ガラス基板90及び透明電極20を介して光を受光できる構成となっている。
【0036】
透明電極20には、読み出し回路130が接続されている。読み出し回路130は、画素100毎に設けられる必要は必ずしも無く、1個の読み出し回路130で、選択された画素100の信号電荷を順次切り替えて読み出す構成としてもよい。読み出し回路130は、初期バイアス供給回路110と、電流−電圧変換回路120とを有する。
【0037】
初期バイアス供給回路110は、画素トランジスタ30及び水平選択トランジスタがオンとなり閉回路が形成されたときに、光電変換膜10の両端に、透明電極20から抵抗R1を介して電圧V0を印加し、初期バイアス状態となるように初期バイアス電圧を印加するための回路である。よって、初期バイアス回路110は、抵抗R1と電源V0を備えてよい。電流−電圧変換回路120は、入力電流を電圧に変換して出力して信号電荷を読み出すための回路であり、例えば、オペアンプAmpと抵抗R2により構成されてよい。また、光電変換膜10には、例えば15〔μm〕の場合には1500〔V〕、25〔μm〕の場合には2500〔V〕と大電圧が印加されるため、初期バイアス供給回路110と電流−電圧変換回路120との間は、交流成分のみを通過させるための安全用のデカップリングコンデンサC1が設けられていてもよい。
【0038】
このように、本実施例に係る積層型固体撮像装置は、光電変換膜10の受光面である上面に設けられた透明電極20から初期バイアス電圧V0を印加するとともに、信号電荷の読み出しも上面の透明電極20から行う構成となっている。
【0039】
次に、かかる構成を有する実施例1に係る積層型固体撮像装置において、引き続き図2を用いて受光から信号電荷の読み出しまでの一連の動作について説明する。まず、受光前に、垂直シフトレジスタ50(図1参照)及び水平シフトレジスタ60(図1参照)により、信号電荷の読み出し対象となる画素100の画素トランジスタ30及びその画素トランジスタ30と垂直ライン35を介して接続されている水平選択トランジスタ40をオンとし、光電変換膜10の両端にかかる電圧を初期バイアス状態とする。これにより、抵抗R1を介して光電変換膜10に初期バイアス電圧V0が印加される。
【0040】
次いで、画素トランジスタ30及び水平選択トランジスタ40をオフとし、照射された光によって発生し、アバランシェ増倍された正孔を蓄積する。正孔は、HARP膜である光電変換膜10中の電界によって画素電極31側に走行、蓄積するため、光電変換膜10の両端の電圧が初期バイアス状態よりも減少する。
【0041】
1フレーム後に、再び画素トランジスタ30及び水平選択トランジスタ40をオンとすると、光電変換膜10の両端の電圧が初期バイアス状態に戻るため、電流が流れる。この電流を、電流−電圧変換回路120で電圧に変換して読み出す。このような動作を、各画素100で行えば、2次元の画像信号を得ることができる。
【0042】
この信号電荷読み出しの過程において、MOSトランジスタで構成された画素トランジスタ30及び水平選択トランジスタ40は、読み出しを行う画素100の選択及び画素100に対応する光電変換膜10の下面の電位を接地電位に落として光電変換膜10を初期バイアス状態にする役割のみを担っており、信号電荷の読み出しは行っていない。よって、従来の積層型固体撮像装置で問題となる、光電変換膜10と固体撮像装置の接合部分での接触抵抗の画素100毎のばらつきが、固定パターン雑音として現れたり、接合部分の界面状態により光電変換膜10で発生した信号電荷がトラップされたりすることによる信号電圧の低下や、残像の発生等の不具合を回避することができる。これにより、高S/Nの信号電荷読み出しが可能となる。
【0043】
図3は、実施例1に係る積層型固体撮像装置の光電変換膜10にHARP膜を適用した場合の1画素100の構成例を示した断面構成図である。図3において、画素100は、半導体基板150に形成された画素トランジスタ30を有し、積層構造によりゲート、ドレイン及びソースの引き出し配線32が形成されている。図1において説明したように、ゲートは垂直シフトレジスタ50に接続され、ソースは垂直ライン35に接続される。
【0044】
ドレインは、引き出し配線32を介して画素電極31に接続され、画素電極31上には、光電変換膜10としてHARP膜が積層される。HARP膜は、例えば、GeO層11と、CeO層12と、Se及びLiF層13と、a−Se(アモルファスセレン)層14と、Sb層15とから構成されてもよい。図3に示すように、HARP膜は、例えばアモルファスセレン層14が主成分として構成される。HARP膜は、正孔をキャリアとし、上面(受光面)から光が入射することにより内部で信号電荷である正孔が発生し、正孔が画素電極31の方に向かって走行するにつれて雪なだれ式に信号電荷量が増倍されるアバランシェ増倍作用を有する。これにより、高S/Nを実現することができる。
【0045】
なお、HARP膜のキャリアが正孔であるため、NチャネルMOSトランジスタから構成される画素トランジスタ30は、ドレインが画素電極31に接続される。
【0046】
光電変換膜10であるHARP膜の上面には、透明電極20が設置され、更にその上面にガラス基板90が設置され、1つの画素100を構成する。透明電極20には、図2において説明したように、読み出し回路130が接続され、上面の透明電極20側から信号電荷を読み出すことにより、光電変換膜10と画素トランジスタ30の接合部分の画素100毎のばらつきの影響を解消することができる。
【0047】
このように、実施例1に係る積層型固体撮像装置によれば、アバランシェ増倍作用を有するHARP膜を光電変換膜10として用いて、高S/Nの画像信号を取得することができる。
【実施例2】
【0048】
図4は、本発明を適用した実施例2に係る積層型固体撮像装置の全体構成を示した図である。実施例2に係る積層型固体撮像装置は、光電変換膜10aと、画素100aと、固体駆動部80aとを備える点においては、実施例1に係る積層型固体撮像装置と同様であるが、光電変換膜10aに、キャリアが電子のアモルファスシリコン膜が適用されており、それに伴い種々の構成要素の極性が実施例1と異なっている。なお、実施例1に係る積層型固体撮像装置と同様の構成要素については、同様の参照符号を付してその説明を省略する。また、実施例1に係る構成要素と極性のみ異なる構成要素については、参照符号の後にaを追加して付すものとする。
【0049】
図4において、実施例2に係る積層型固体撮像装置は、光電変換膜10aと、画素100aと、固体駆動部80aを備える。
【0050】
光電変換膜10aは、アモルファスシリコン膜が適用され、やはりアバランシェ増倍作用を有する。アモルファスシリコン膜においては、受光面で光を受光したときには、光の輝度に応じて信号電荷を発生させ、信号電荷が光電変換膜10a中を走行するにつれて信号電荷が増倍される点はHARP膜と同様であるが、信号電荷が正孔ではなく電子である点が異なっている。このように、アモルファスシリコン膜を光電変換膜10aに適用し、信号電荷が電子である場合も、極性が異なるのみで、HARP膜と同様に高S/Nの画像信号を取得できる。
【0051】
各画素100aは、実施例1と同様に、複数の画素100aが2次元状に配列され、各画素100aは画素トランジスタ30aを備える。画素トランジスタ30aは、MOSトランジスタが適用されてよいが、例えば、NチャネルMOSトランジスタが適用される場合には、ソースが画素電極31に接続され、ドレインが垂直ライン35に接続されるように構成される。画素電極31は、実施例1と同様に、アルミニウム、銅又は金等の配線用金属が適用されてよい。
【0052】
水平選択トランジスタ40aは、一方の拡散層が、画素トランジスタ30aが接続されている垂直ライン35に接続され、他方の拡散層が固定電位供給手段70aに接続されている点は、実施例1に係る積層型固体撮像装置と同様であるが、固定電位供給手段70aが接地電位ではなく、電源電圧V0の固定電位を供給している点で、実施例1とは異なっている。なお、水平選択トランジスタ40aの極性についても、実施例1と異なる極性の接続がなされてよく、例えば、NチャネルMOSトランジスタが適用された場合には、ドレインが固定電位供給手段70aに接続され、ソースが垂直ライン35に接続されて構成されてよい。
【0053】
垂直シフトレジスタ50及び水平シフトレジスタ60については、実施例1に係る積層型撮像装置と同様の構成の垂直シフトレジスタ50及び水平シフトレジスタ60を用いてもよい。垂直シフトレジスタ50は、行方向に並列してゲートが接続された画素トランジスタ30aを、順次行方向に駆動し、水平シフトレジスタ60は、各列に接続された水平選択トランジスタ40aを順次列方向に駆動することにより、実施例1に係る積層型固体撮像装置と同様の駆動動作を行うことができる。
【0054】
このように、実施例2に係る積層型固体撮像装置の平面構成図においては、光電変換膜10aの種類と極性、画素トランジスタ30aの極性、水平選択トランジスタ40aの極性及び固定電位供給源70aの固定電位のみが異なる。
【0055】
図5は、実施例2に係る積層型固体撮像装置の読み出し回路130aを加えた1画素分、1列分の構成を示した図である。
【0056】
図5において、光電変換膜10aにアモルファスシリコン膜が適用されたことに伴い、固定電位供給手段70aから電源電圧V0の固定電位が、水平選択トランジスタ40a及び画素トランジスタ30aのオンにより画素電極31に印加される構成となっている点と、読み出し回路130aの初期バイアス供給回路110aが、電源供給側ではなく抵抗R1を介して接地された回路となっている点で、実施例1の図2と異なっている。
【0057】
図5における動作例を説明する。
【0058】
まず、受光前に画素トランジスタ30a及び水平選択トランジスタ40aがオンとなって、画素電極31側が高電位側となって光電変換膜10aの両端に抵抗R1を介して初期バイアス電圧V0が印加され、初期バイアス状態となる。
【0059】
次いで、画素トランジスタ30a及び水平選択トランジスタ40aをオフとする。そして、ガラス基板90、透明電極20を介して光電変換膜10aに光が照射され、受光面に光が入射すると、光の輝度に応じて信号電荷である電子が発生し、信号電荷が光電変換膜10a内を走行するにつれて電子量が増倍される。アモルファスシリコン膜においては、HARP膜よりは増倍度合いは低いが、信号電荷である電子量を増倍させ、高S/Nの信号電荷を発生させることができる。かかる電子の発生により、アモルファスシリコン膜である光電変換膜10aの両端の電圧が初期バイアス状態より低下する。
【0060】
次のフレームにおいて、読み出し対象となる画素100の画素トランジスタ30a及び水平トランジスタ40aをオンとすると、固定電位供給手段70aから初期バイアス電圧V0が印加され、光電変換膜10aが初期バイアス状態に戻るとともに、透明電極20から電流が流れる。かかる電流を、読み出し回路130aの電流−電圧変換回路120で電圧に変換して読み出すことにより、光に対応して発生した信号電荷を読み出すことができる。
【0061】
なお、読み出し回路130aは、初期バイアス供給回路110aの抵抗R1が接続されている所がグラウンドとなる点以外は、電流−電圧変換回路120がオペアンプAmpと抵抗R2を有する点や、デカップリングコンデンサC1を備えてもよい点は、実施例1と同様であってよい。
【0062】
このように、実施例2に係る積層型固体撮像装置においても、画素トランジスタ30aと水平選択トランジスタ40aは読み出し対象となる画素100aの選択のみを行い、信号電荷の読み出しは、透明電極20側に接続された読み出し回路130aを用いて、光電変換膜10aの上面の透明電極20から行うことができる。これにより、光電変換膜10aと固体撮像装置の接合部分の接触抵抗の画素毎のばらつきが固定パターン雑音として生じたり、接合部分の界面状態に起因して光電変換膜10aで発生した信号電荷が捕獲され、信号電圧が減少したり残像が発生するという問題を解消することができる。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
特に、実施例1及び実施例2においては、光電変換膜10、10aにアバランシェ増倍作用を有する膜を適用した例を挙げて説明したが、このような増倍作用を持たない光電変換膜についても、本発明を適用することができる。この場合には、光照射によって発生した電子−正孔対がそれぞれ電界によって光電変換膜10、10aの両端に向かって走行、蓄積するため、信号電荷は電子、正孔のいずれで考えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1に係る積層型固体撮像装置の全体構成図である。
【図2】実施例1に係る積層型固体撮像装置の読み出し回路130を加えた構成図である。
【図3】光電変換膜10にHARP膜を適用した場合の画素100の断面構成図例である。
【図4】実施例2に係る積層型固体撮像装置の全体構成を示した図である。
【図5】実施例2に係る積層型固体撮像装置の読み出し回路130aを加えた構成図である。
【符号の説明】
【0066】
10、10a 光電変換膜
20 透明電極
30、30a 画素トランジスタ
31 画素電極
32 引き出し配線
35 垂直ライン
40、40a 水平選択トランジスタ
50 垂直シフトレジスタ
60 水平シフトレジスタ
70、70a 固定電位供給手段
80、80a 固体駆動部
90 ガラス基板
100、100a 画素
110、110a 初期バイアス供給回路
120 電流−電圧変換回路
130、130a 読み出し回路
150 半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元状に配列された画素毎に設けられた画素トランジスタと、
該画素トランジスタの一方の拡散層に接続された画素電極の上に積層され、該画素電極側と反対側に位置する受光面で受光した光を光電変換して、信号電荷を発生させる光電変換膜と、
該光電変換膜の前記受光面上に設けられた透明電極と、
前記信号電荷の読み出し対象となる前記画素を、前記画素トランジスタをオンとして選択するとともに、前記画素電極から所定の固定電位を供給して前記光電変換膜を初期バイアス状態に戻す固体駆動部と、
前記透明電極に接続され、前記光電変換膜が前記初期バイアス状態に戻るときに、前記光電変換膜を流れる前記信号電荷に対応する電流を検出し、前記光電変換膜で発生した前記信号電荷を読み出す読み出し回路と、を有することを特徴とする積層型固体撮像装置。
【請求項2】
前記固体駆動部は、前記画素トランジスタを行毎に駆動する垂直シフトレジスタと、前記画素の列毎に対応して設けられた水平選択トランジスタと、該水平選択トランジスタを駆動する水平シフトレジスタとを有し、
前記画素トランジスタの前記画素電極に接続されていない他方の拡散層は、各列に対応した前記水平選択トランジスタの一方の拡散層に接続されており、前記水平選択トランジスタの他方の拡散層は、前記固定電位を供給する固定電位供給手段に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の積層型固体撮像装置。
【請求項3】
前記固定電位は、接地電位又は所定の電源電位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型固体撮像装置。
【請求項4】
前記光電変換膜は、アバランシェ増倍作用を有するアバランシェ増倍型光電変換膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層型固体撮像装置。
【請求項5】
前記アバランシェ増倍型光電変換膜は、アモルファスセレンを含む膜であり、前記固定電位は、接地電位であることを特徴とする請求項4に記載の積層側固体撮像装置。
【請求項6】
前記アバランシェ増倍型光電変換膜は、アモルファスシリコンを含む膜であり、前記固定電位は、所定の電源電位であることを特徴とする請求項4に記載の積層型固体撮像装置。
【請求項7】
前記読み出し回路は、前記光電変換膜が初期バイアス状態に戻るときに流れる電流を電圧に変換して読み出す電流−電圧変換回路を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層型固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−40675(P2010−40675A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200070(P2008−200070)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】