説明

積層基板

【課題】 絶縁性・耐熱性・低熱膨張性・平滑性・耐衝撃性・フレキシブル性・薄型・軽量性に加えて、耐錆性を兼備した積層基板を提供する。
【解決手段】 金属薄板の片側表面上に樹脂層が形成され、該樹脂層が形成された側の反対面の金属薄板表面上に金属薄板の腐食を防止する、(1)Si系窒化物、(2)Si系酸化物、(3)Al系酸化物、(4)Nb、Ta、Mo、Wまたはこれらの金属を主成分とする合金、(5)質量%で1〜10%を含有し、残部は実質的にNiからなる合金、の(1)〜(5)の何れか1種でなる無機層が形成されている積層基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、液晶ディスプレイ(以下LCDと略記する)、有機EL、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示装置に利用されるディスプレイ用基板、光源用の有機EL、LED等の照明デバイス用基板や太陽電池等の電池用基板に用いることができる、積層基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、表示装置に用いられるディスプレイ用基板として、ガラス、プラスチックまたは金属薄板を用いたディスプレイ用基板が知られている。
LCDや有機ELに代表されるディスプレイの駆動方式は、導線を格子状に配置した単純マトリクス方式と薄膜トランジスタ(以下TFTと略記する)をスイッチング素子としたアクティブマトリクス方式があり、後者の方が反応速度が速い。
このTFTを例とするとガラス基板上に電極材料・絶縁膜・アモルファスシリコンを高温で繰り返し積層し、フォト・エッチングにより高い位置合わせ精度で形成する。よって前述のディスプレイ用基板には300℃程度までの耐熱性が必要である。また、ディスプレイ用基板と積層膜の熱膨張差が大きい場合、ディスプレイ用基板が撓み、各積層膜間において位置合わせ精度が低下するといった問題がある。そのためディスプレイ用基板にはTFTや配線材料と熱膨張係数を合わせるために、低熱膨張性が求められる。
また、ディスプレイ用基板表面に大きな凹凸があると、駆動回路の断線を引き起こす惧れがあり、従って基板には平滑性が要求される。更に、ディスプレイ用基板上には駆動回路を形成するため絶縁性を有する必要がある。
【0003】
これらの絶縁性・耐熱性・低熱膨張性・平滑性を兼ね備えた材料の一つがガラスであり、ディスプレイ用基板として広く普及している。
しかし、ディスプレイを携帯する需要が増加し、落下などの衝撃に耐え得る耐衝撃性や薄型・軽量・フレキシブル性が要求されるようになり、ガラスに取って代わるディスプレイ用基板の検討が急務となっており、このような携帯性に優れた基板は、付加的に薄型・軽量・フレキシブル性・耐衝撃性を兼ね備えたものが求められるようになってきた。
例えばディスプレイ用基板として、本出願人も特開2004−191463号(特許文献1参照)や、特開2005−195771号(特許文献2参照)として、薄型化・軽量化・耐衝撃性・フレキシブル性・低熱膨張特性・絶縁性・耐熱性・平滑性を兼ね備えた薄型ディスプレイ用途に使用される基板を提案した。
【0004】
【特許文献1】特開2004−191463号公報
【特許文献2】特開2005−195771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1や特許文献2に開示されるディスプレイ用基板は、ガラス基板では実現不可能な耐衝撃性・フレキシブル性を金属薄板と樹脂層との組合わせにより実現しているが、露出した金属薄板は湿気により発錆の危険性が高まる。この問題は、例えば、積層基板が用いられる表示装置、照明デバイスや太陽電池の使用環境、設置環境、保管場所、輸送中の条件等によっては、発錆の危険性が更に高まることになる。そのため、発錆防止のために耐食性を確保する必要がある。
本発明の目的は、絶縁性・耐熱性・低熱膨張性・平滑性・耐衝撃性・フレキシブル性・薄型・軽量性に加えて、耐錆性を兼備した積層基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものである。
即ち本発明は、金属薄板の片側表面上に樹脂層が形成され、該樹脂層が形成された側の反対面の金属薄板表面上に金属薄板の腐食を防止する、
(1)Si系窒化物、
(2)Si系酸化物、
(3)Al系酸化物、
(4)Nb、Ta、Mo、Wまたはこれらの金属を主成分とする合金、
(5)質量%でWを1〜10%含有し、残部は実質的にNiからなる合金、
の(1)〜(5)の何れか1種でなる無機層が形成されてなる積層基板である。
無機層の厚みは、0.05μm〜10.0μmであることが好ましく、樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上、厚みが1〜10μmであり、表面粗さRy:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下であることが好ましい。
また本発明の金属薄板は、表面粗さRy:5.0μm以下、Ra:0.15μm以下、且つ30℃〜300℃迄の熱膨張係数が12×10−6/℃以下、厚みは10〜200μmである積層基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層基板は、絶縁性・耐熱性・低熱膨張性・平滑性・耐衝撃性・フレキシブル性・薄型・軽量性に加えて、耐錆性を実現できることから、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、LCD、有機EL、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示装置に利用されるディスプレイ用基板、光源用の有機EL、LED等の照明デバイス用基板の他、太陽電池等の電池用基板に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の重要な特徴の一つは、絶縁性・耐熱性・低熱膨張性・平滑性・耐衝撃性・フレキシブル性・薄型・軽量性に加えて、使用環境(湿潤大気中)における耐腐食性を実現できるように、金属薄板が露出した面に無機層を形成したことにある。
本発明の積層基板の一例として、ディスプレイ用基板を例に挙げ、図1に基づき説明する。
図1は本発明の積層基板の一例を示す、ディスプレイ用基板(1)の模式図である。本発明の積層基板(1)は、金属薄板(2)の片面に樹脂層(3)が形成され、該樹脂層が形成された側の反対面の金属薄板(2)上に金属薄板の腐食を防止する無機層(4)が形成された三層構造からなる。
樹脂層(3)上には配線(図示しない)やTFT(5)を形成することによってディスプレイ用部材とすることができる。
金属薄板(2)は、ディスプレイ用基板(積層基板(1))に一定の強度を付与するための支持層として機能し、樹脂層(3)は配線が形成される平滑な下地を形成し、配線の断線や短絡等の不良防止をより確実に行に行えるようにする平滑化層として機能し、また、金属薄板(2)と配線を電気的に絶縁する絶縁層としても機能する。
無機層(4)は、例えばディスプレイを使用する屋内外のような湿潤大気中における発錆し易い使用環境など、耐食性が求められる環境に対して腐食防止効果を持ち、金属薄板が露出した面に形成することにより、ディスプレイ用基板(積層基板(1))の発錆を防止する。
【0009】
なお、図1の構成において、樹脂層(3)と配線の密着力が弱い場合は、図3に示すように、本発明のディスプレイ用基板(積層基板(1))上に配線密着層(6)を設けても良い。配線密着層に用いる材料は、例えばSiOやSiN等があり、材料の特性を考慮して割れが発生しない程度の厚みで(例えば1.0μm以下)形成すると良い。
また、図1、2に示すように樹脂層(3)上に配線やTFT(5)を配する構造とすると、平滑性や絶縁性を十分に確保でき、配線の断線や短絡等の不良防止をより確実に行うことができる。また、金属薄板上(2)が露出した面に無機層(4)を形成することで、湿潤大気中などの使用環境におけるディスプレイ用基板(積層基板(1))の腐食を防止することができ、本発明によって得られる効果を最大限に発揮できる構造となる。
【0010】
以下に、本発明で規定した理由を詳しく説明する。
本発明で金属薄板を用いる理由は、塑性加工によって薄くし易く、優れたフレキシブル性を有し、薄くすると重量も軽量であること、衝撃に強いこと、耐熱性にも優れていることなど、薄型・軽量・耐衝撃性・フレキシブル性・耐熱性を確保するのに最適であり、例えばディスプレイ用基板として適した材料であるからである。そのため、本発明では金属薄板を支持層として用いた。
好ましい金属薄板としては、表面粗さRy:5.0μm以下、Ra:0.15μm以下と規定する。上記の図1に示すとおり、樹脂層を金属薄板上に直接形成するため、金属薄板の表面に極度の凹凸が存在する場合、凸部では樹脂層の厚みが薄くなり、樹脂層のリーク電流の増加を引き起こす。
樹脂層の表面粗さと金属薄板の表面粗さには相関関係があり、平滑な金属薄板を用いると樹脂層を平滑に形成し易くなって、より確実に平滑性を確保できる。金属薄板の表面粗さの好ましい範囲はRy:3.9μm以下、Ra:0.10μm以下である。なお、この範囲に表面粗さを調整するには、例えば金属薄板製造時の仕上圧延のワークロールの表面粗さ、ワークロールのヤング率、圧延速度等で調整することで所望の表面粗さに調整することが可能である。
【0011】
そして、金属薄板に低熱膨張性を付与するために30℃〜300℃迄の熱膨張係数が10×10−6/℃以下の金属薄板であることが好ましい。例えば、TFTの形成プロセス上、基板は150〜300℃に加熱されるため、熱膨張の大きな金属薄板を用いた場合は、積層基板の熱膨張係数が大きくなり、TFTの積層膜との熱膨張差により基板に反りが生じ、各積層膜間の位置ずれ量が大きくなる。
これは大画面になるほど顕著になり高精細なディスプレイの製造が困難となる。そのため、本発明で用いる金属材料は30℃〜300℃迄の熱膨張係数が10×10−6/℃以下の金属材料とする。好ましくは2〜6×10−6/℃の範囲の熱膨張特性を有する金属材料を選択するのが良い。
【0012】
上述した本発明で規定する低熱膨張性を有する金属材料としては、例えばタングステン、モリブデン、タンタル、Fe−Ni系合金等の金属がある。
中でも、冷間圧延によって容易に薄くできることから、薄型化が可能であり、軟化焼鈍や圧延率によって材料の強度の調整や平滑化が容易である材料としてFe−Ni系合金を用いるのが好ましい。
Fe−Ni系合金を具体的に例示すと、Fe−36%Ni合金、Fe−42%Ni合金、Fe−47%Ni合金、Fe−50%Ni合金、Fe−42%Ni−6%Cr合金、Fe−31%Ni−5%Co合金、Fe−29%Ni−17%Co合金を挙げることができる。さらにはこれらの合金に強度を向上させる元素を適宜添加した合金を、金属薄板の素材として用いても良い。なお、前述の合金組成は質量%として示している。
そして、金属薄板の厚みとしては、軽量化・薄型化のためには薄いほど好ましい。しかし、薄すぎる場合、撓みが大きいため製造工程において搬送・保持し難くなること、および圧延の精度の問題や工数の増大によるコスト上昇が発生することから、厚みは10〜200μmであることが好ましい。
【0013】
次に無機層について説明する。無機層は、湿潤大気中などの使用環境において金属基板の発錆を防止する機能を有する。
無機層の形成法にはCVD、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、ゾルゲル、めっき等がある。ゾルゲルでは、一般的にスピンコータやディッピングにより無機層を形成するが、スピンコータの場合、コーティング液の歩留まり低下や大型基板上へのコーティングに不向きであるため、無機層の形成は、CVD、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、めっき等を用いるのが好ましい。
なお、本発明で使用する無機層の材質は、耐食性が確保でき、且つ形成した膜が化学的安定性に優れている必要がある。
そのため、本発明では、(1)例えばSiN等のSi系窒化物、(2)例えばSiO等のSi系酸化物、(3)例えばAl等のAl系酸化物、(4)Nb、Ta、Mo、Wまたはこれらの金属を主成分とする合金、(5)質量%でWを1〜10%含有し、残部は実質的にNiからなるNi−W合金を用いる。
このうち、特に(5)Ni−W合金は耐食性が優れており、合金中のWが多い程、耐食性は向上する。しかしながら、Wが質量%で1%未満であるとピンホールが発生し錆易くなり、10%を超えてもより一層の耐食性改善効果が期待できず、かえって優れた耐食性を得ることができなくなるため、Wを1〜10%に限定する。
また、本発明において、Al系酸化物とは、定量分析を行った時、Oを除いて検出される金属(半金属元素含む)元素のうち、Alが最も多く含有されているものをAl系酸化物と言い、Si系酸化物とは、定量分析を行った時、Oを除いて検出される金属(半金属元素含む)元素のうち、Siが最も多く含有されているものをSi系酸化物と言う。
なお、Si系窒化物についても、定量分析を行った時、Nを除いて検出される金属(半金属元素含む)元素のうち、Siが最も多く含有されているものをSi系窒化物と言う。
【0014】
そして、上述した無機層の厚みは0.05μm〜10.0μm程度であれば良く、この厚みで耐食性を十分発揮できる。また、これ以上無機層を厚くすると、膜形成に時間がかかるだけでなく、形成する膜の材質によってはフレキシブル性を劣化させてしまう場合がある。そのため本発明では、無機層の厚みは0.05μm〜10.0μmとした。好ましくは0.05〜2.0μmであり、更に好ましくは、0.1μm〜0.5μmである。
【0015】
本発明において、樹脂層は本発明の積層基板上に配線を形成する用途に際しては、平滑な下地を形成して配線の断線や短絡等の不良防止をより確実に行えるようにする平滑化層として機能し、また、金属薄板と配線を電気的に絶縁する絶縁層としても機能する。
本発明において、樹脂層は上記機能がより確実に発揮できるように、樹脂層は表面粗さRy:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下と規定した。図1に示したとおり樹脂層上には、微細な駆動回路や表示素子であるTFTを形成する場合があり、樹脂層に過度の凹凸が存在する場合、その凹凸による表面粗さの影響により駆動回路の断線を生じ易くなる。
そのため、駆動回路や表示素子であるTFTを形成する樹脂層の表面には平滑性が要求され、最大高さ粗さがRy:1.0μm、算術平均粗さがRa:0.1μmを超えると、樹脂層の表面粗さに起因した駆動回路の断線を生じ易くなる。また図2に示した配線密着層を形成する場合も、配線密着層の表面粗さは樹脂層の表面粗さの凹凸に追随するため、平滑性を確保できない。そのため、本発明では樹脂層は表面粗さRy:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下とした。好ましくはRy:0.5μm以下、Ra:0.06μm以下である。
【0016】
また例えば本発明の積層基板をディスプレイ用基板として用いた際に、TFTの形成プロセス上、積層基板は150〜300℃に加熱されることから、樹脂層には耐熱性が必要である。耐熱性とは、ガラス転移温度のことを指し、150℃以上のガラス転移温度を有する樹脂を選定するのが好ましい。
ガラス転移温度が低い樹脂を用いた場合、加熱により樹脂が軟化し、成膜不良や基板の変形を起こし易い。また熱により樹脂の分解が始まり、TFT構成膜中に不純物が混入してTFTの特性劣化の原因となる。そのため樹脂のガラス転移温度は、より好ましくは、170℃以上、更に好ましくは200℃以上、更に好ましくは300℃以上である。この条件を満足する樹脂としては例えばポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミドイミド樹脂、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、カルド樹脂などがある。
【0017】
樹脂層の好ましい厚みは、樹脂層が過度に厚くならないようにの樹脂層の絶縁性や金属薄板の表面粗さを考慮して形成すればよく、材料コストや薄型・軽量性を考慮すると薄いほど好ましい。
例えば本発明の積層基板をディスプレイ用基板として用いた際には、上記の平滑であることの他に、絶縁性も求められる。絶縁性は、樹脂層のリーク電流によって評価することができ、リーク電流が小さい程好ましく絶縁性が高い。樹脂層のリーク電流の要求値はディスプレイの精細度によって異なるが、例えば紙媒体の印刷物に近い精細度である600ppiであれば、20Vの電圧を印加した際に10−10A/cm以下であり、この値を超えてしまうと短絡し易くなり、TFTが正常に駆動しないという不良を生じる。
例えば、樹脂層の厚みが1μm以下であると、上記のリーク電流の要求値を超え易くなり、絶縁性の確保と平滑化の両立が難しくなる。そのため絶縁性の確保と平滑化の両立をより確実に得ようとすると、樹脂層の厚みは1μm以上必要であるが、コストの面から10μm以下とする。より好ましい範囲は、4〜8μmである。
【実施例】
【0018】
薄型化、軽量化、耐衝撃性、フレキシブル性、低熱膨張特性、耐熱性を確保するために、金属薄板用の素材として、Niを42質量%含有するFe−Ni合金の鋼塊を真空溶解により作製した。作製した鋼塊を、熱間圧延により厚さ3mmの板材に加工した。続いてこの板材を、冷間圧延により厚さ1mmに加工した後、還元雰囲気中で焼鈍を行い、さらに冷間圧延により厚さ:150μm、幅:400mmの金属薄板に加工した。
作製した金属薄板の30〜300℃の熱膨張係数を熱機械分析装置を用いて測定したところ、4.2×10−6/℃であった。また、レーザー走査顕微鏡(OLYMPUS社製、OLS−1000)を用いて352μm×264μmの範囲で表面粗さを測定したところ、Ry:3.88μm、Ra:0.10μmであった。
上記の金属薄板をアルカリ脱脂・酸洗した後、耐食性を付与するために、金属薄板の片面に電子ビーム蒸着装置を用いNb、Ta、Mo、めっきによりNi−5mass%W膜、スパッタリングによりAl膜、SiO膜を作製し、無機膜を形成した。無機層は表1に示す厚みで形成した。
【0019】
次に、平滑性と絶縁性を確保するための樹脂層を形成して樹脂層/金属薄板/無機層の三層構造を本発明の積層基板とした。
樹脂層の形成は、ポリイミドワニスをスピンコーターを用いて塗布し、加熱することにより乾燥・硬化を行い、本発明のディスプレイ用基板とした。なお用いたポリイミドのガラス転移温度は500℃、厚みは7.9μmであった。また、光干渉式表面粗さ計(Zygo社製、MODEL5700)を用い、725×635μmの範囲で表面粗さを測定したところ、Ry:230nm、Ra:20nmであった。
また、比較例として無機層を形成しない、樹脂/金属薄板の二層構造の積層基板を用意した。
次に温度85℃、湿度85%の雰囲気中に120時間放置し、積層基板の樹脂を被覆していない側(無機層表面)を光学顕微鏡により観察し(50倍)、発錆の有無を観察した。表1の発錆欄は、積層基板が発錆した場合は×、発錆していない場合は○と記した。
【0020】
【表1】

【0021】
上記のように、本発明の積層基板は優れた耐食性を有することが分かる。そして、本発明の積層基板は、金属薄板を用いることで薄型化、軽量化、耐衝撃性、フレキシブル性、低熱膨張特性、耐熱性を確保し、樹脂層にて平滑性と絶縁性を確保し、更に無機層にて耐腐食性を確保していることから、例えばTFTを用いるディスプレイ用基板としての基本的な特性を十分に満足し、好適な積層基板となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
上記実施例においては、TFTを用いるディスプレイ用基板を一例として説明したが、絶縁性・耐熱性・低熱膨張性・平滑性・耐衝撃性・フレキシブル性・薄型・軽量性に加えて、更に環境に対する耐腐食性を実現できるため、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、LCD、有機EL、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示装置に利用されるディスプレイ用基板、光源用の有機EL、LED等の照明デバイス用基板、太陽電池等の電池用基板に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のディスプレイ用基板を用いたディスプレイ部材の一例を示す模式図である。
【図2】本発明のディスプレイ用基板を用いたディスプレイ部材の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
1. ディスプレイ用積層基板
2. 金属薄板
3. 樹脂層
4. 無機層
5. TFT
6. 配線密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板の片側表面上に樹脂層が形成され、該樹脂層が形成された側の反対面の金属薄板表面上に金属薄板の腐食を防止する、
(1)Si系窒化物、
(2)Si系酸化物、
(3)Al系酸化物、
(4)Nb、Ta、Mo、Wまたはこれらの金属を主成分とする合金、
(5)質量%でWを1〜10%含有し、残部は実質的にNiからなる合金、
の(1)〜(5)の何れか1種でなる無機層が形成されていることを特徴とする積層基板。
【請求項2】
金属薄板の腐食を防止する無機層の厚みは、0.05μm〜10.0μmである請求項1に記載の積層基板。
【請求項3】
樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上、厚みが1〜10μmであり、表面粗さRy:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下である請求項1乃至2の何れかに記載の積層基板。
【請求項4】
金属薄板は、表面粗さRy:5.0μm以下、Ra:0.15μm以下、且つ30℃〜300℃迄の熱膨張係数が10×10−6/℃以下、厚みは10〜200μmである請求項1乃至3の何れかに記載の積層基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−168376(P2007−168376A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372372(P2005−372372)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】