説明

積層鉄心の製造装置及び製造方法

【課題】供給する薄板条材の加工度が進み、薄板条材の剛性が下がって弛みが生じても、薄板条材の通板時にリフターによる引っ掛かりを防止できる積層鉄心の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】下型11と上型をそれぞれ有する複数のステーションa〜lを有し、薄板条材12を順次各ステーションa〜lに送って、各ステーションa〜lで必要部分を打ち抜きして、鉄心片13、14を製造する積層鉄心の製造装置10において、各ステーションa〜lに設けられたリフター17〜21は、下流側のステーション程その突出量を大きくし、場合によっては、リフター17〜21の数は下流側のステーション程多く配置し、リフター17〜21間の幅は、下流側のステーション程広くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上型と下型を有する金型を用いて磁性鋼板からなる薄板条材(打ち抜き材)から鉄心片を打ち抜き形成し、これを積層して積層鉄心を製造する製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
順送金型装置において、特許文献1に記載のように、各ステーションに機械的なリフターやエアリフターを設けたものが提案されている。この特許文献1においては、同公報の図3、図4に示すように、各ステーションにリフターが設けられて、しかも、自由状態のリフターの突出高さは同一で、進行方向に隣り合うリフターの間隔も同一であり、更に各ステーションにおけるリフターの幅も同一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−104897号公報(図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、幅広の打ち抜き材から鉄心片を順次打ち抜き形成していく程、打ち抜き材の剛性は大きく低下していく。よって、後ろ(下流側)のステーションに行くに従って、打ち抜き材は撓み易くなり、引っ掛かりによる材料の変形、それに伴う金型の損傷が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、供給する薄板条材の加工度が進み、薄板条材の剛性が下がって弛みが生じても、薄板条材の通板時にリフターによる引っ掛かりを防止できる積層鉄心の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る積層鉄心の製造装置は、下型と上型をそれぞれ有する複数のステーションを有し、薄板条材を順次前記各ステーションに送って、前記各ステーションで必要部分を打ち抜きして、鉄心片を製造する積層鉄心の製造装置において、
前記各ステーションに設けられたリフターは、下流側の前記ステーション程その突出量を大きくしている。なお、本発明に係る積層鉄心の製造装置において、各ステーションの下型又は上型は、複数(全部を含む)のステーションで共通して使用する場合もある。
【0007】
本発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記リフターの数は下流側の前記ステーション程多く配置されているのが好ましい。
また、本発明に係る積層鉄心の製造装置において、前記薄板条材の幅方向に並んで配置される前記リフター間の幅は、下流側の前記ステーション程広くなっている。
【0008】
そして、本発明に係る積層鉄心の製造装置において、下流側の前記ステーションには前記薄板条材の幅方向に並んで配置される前記リフター間に1又は2以上のリフターが設けられている場合もある。
なお、リフターの先端部は、上流方向に下り傾斜する斜面が設けられているのが好ましく、これによって更に薄板条材の引っ掛かりを減少できる。
【0009】
また、本発明に係る積層鉄心の製造方法は、薄板条材を下型と上型をそれぞれ有する複数のステーションに順次送って、前記各ステーションで必要部分を打ち抜きして鉄心片を製造する積層鉄心の製造方法において、前記各ステーションに送られる前記薄板条材は、前記各ステーションに設けられているリフターによって下流側の前記ステーション程高く持ち上げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る積層鉄心の製造装置及び製造方法においては、各ステーションに設けられたリフターが、下流側のステーション程その突出量を大きくしているので、加工によって薄板条材の剛性が低くなっても、薄板条材がリフターに引っ掛かることによる金型の損傷を防止できる。
また、下流側のステーション程リフターの数を多くする場合、幅方向に並んで配置されるリフター間の幅を広くする場合も同様な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造装置を適用した薄板条材(打ち抜き材)の加工状態を示す平面図、(B)は同積層鉄心の製造装置の金型とリフターの関係を示す断面図、(C)は同積層鉄心の製造装置の金型とリフターの関係を示す平面図である。
【図2】同積層鉄心の製造装置に使用するリフターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1(A)〜(C)に示すように、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の製造装置10は、共通の下型11と、その上に配置される図示しない上型をそれぞれ有する複数のステーション(a)〜(l)を有し、電磁鋼板からなる薄板条材12を順次各ステーション(a)〜(l)に送って、各ステーション(a)〜(l)で必要部分を打ち抜きして、回転子鉄心片13、及び固定子鉄心片14を形成している。以下、これらについて詳しく説明する。なお、この実施の形態においては、下型11は一つで各ステーション(a)〜(l)で共通して使用しているが、各ステーション毎に上型、下型を設ける場合、又は複数のステーションに共通して下型又は上型を有する場合もある。
【0013】
各ステーション(a)〜(l)の下型11には図示しないダイとダイプレート16とを有し、ダイプレート16には図1、図2に示すようなリフター17〜21がそれぞれ複数設けられている。このリフター17(18〜21においても基本的構造は同じ)は、ダイプレート16内に設けられた抜き孔25内を上下動するリフターピン26とこのリフターピン26を所定高さまで付勢するスプリング27とを有している。
【0014】
リフターピン26の頂部は上流側に下り傾斜となった斜面28を有し、頂部は水平面29が形成されている。なお、リフターピン26は上型の加工に伴いストリッパーにより押されて下降し、上型の上昇によって突出する。また、斜面28、水平面29のいずれか一方又は双方を省略することもできる。
【0015】
各リフター17〜21は、ステーション(a)の手前側位置、及び各ステーション(a)〜(l)の中間位置にそれぞれ設けられている。この実施の形態において、リフター17の下型11からの突出長は6mm、リフター18の下型11からの突出長は7mm、リフター19の下型11からの突出長は8mm、リフター20の下型11からの突出長は10mm、リフター21の下型11からの突出長は13mmとなって、下流側のリフターの突出量(即ち、突出高さ)を同一か段階的に大きくしている。
【0016】
また、ステーション(a)の手前側、ステーション(a)〜(d)の中間位置にあるリフター17は下型11(ダイプレート16)の中央位置にあって、ステーション(d)、(e)の間には間隔の狭い2個のリフター17を有している。また、ステーション(e)〜(i)のそれぞれ中間位置にあるリフター18はそれぞれ下型11の中心線の両側に配置されている。ステーション(i)、(j)の間にはリフター19が、ステーション(j)にはその中央にリフター20が、ステーション(j)、(k)の中間部、及びステーション(k)、(l)の中間部にはリフター21が設けられている。更に、ステーション(l)の中央にもリフター21が設けられている。
【0017】
このように、リフター17〜21が配置されて、1)各ステーション(a)〜(l)に設けられたリフターは、下流側のステーション程その突出量を大きくし、2)リフターの数は下流側のステーション程多くし、3)薄板条材12の幅方向に並んで配置されるリフター間の幅は、下流側のステーション程広くしている。
【0018】
この装置10を用いた積層鉄心の製造方法を説明する。薄板条材12は各ステーション(a)〜(l)を順次通過することによってプレス加工され、徐々に薄板条材12の剛性が小さくなる。ステーション(a)〜(d)においては、スロットは形成されているが薄板条材12の剛性はさほど小さくならないので、リフター17が支持できる。ステーション(e)では軸孔が抜かれ、ステーション(f)以降では回転子鉄心片13が打ち抜かれるので、薄板条材12の剛性は徐々に下がる。この実施の形態では、リフター17〜21の高さを順次高くし、幅を広げ、搬送方向の間隔を一部又は全部のリフターについて短くしている。これによって、薄板条材12はより高く持ち上げられるので、リフターピン26や下型11に引っ掛かることが無くなる。
【0019】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、リフターピンの高さ、数、幅、間隔は上記した数値に限定されるものではなく、加工しようとする薄板条材に応じて変えることができる。
【0020】
また、前記実施の形態においては、薄板条材から回転子鉄心片と固定子鉄心片の両方を打ち抜き形成したが、片方の鉄心片のみを形成する場合も本発明は適用される。
更に、下流側のステーションには、薄板条材の幅方向に並んで配置されるリフターの間に1又は2以上のリフターを設けることもできる。
【符号の説明】
【0021】
10:積層鉄心の製造装置、11:下型、12:薄板条材、13:回転子鉄心片、14:固定子鉄心片、16:ダイプレート、17〜21:リフター、25:抜き孔、26:リフターピン、27:スプリング、28:斜面、29:水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と上型をそれぞれ有する複数のステーションを有し、薄板条材を順次前記各ステーションに送って、前記各ステーションで必要部分を打ち抜きして、鉄心片を製造する積層鉄心の製造装置において、
前記各ステーションに設けられたリフターは、下流側の前記ステーション程その突出量を大きくしたことを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造装置において、前記リフターの数は下流側の前記ステーション程多く配置されていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造装置において、前記薄板条材の幅方向に並んで配置される前記リフター間の幅は、下流側の前記ステーション程広くなっていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心の製造装置において、下流側の前記ステーションには、前記薄板条材の幅方向に並んで配置される前記リフターの間に1又は2以上のリフターが設けられていることを特徴とする積層鉄心の製造装置。
【請求項5】
薄板条材を下型と上型をそれぞれ有する複数のステーションに順次送って、前記各ステーションで必要部分を打ち抜きして鉄心片を製造する積層鉄心の製造方法において、前記各ステーションに送られる前記薄板条材は、前記各ステーションに設けられているリフターによって下流側の前記ステーション程高く持ち上げられることを特徴とする積層鉄心の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−107116(P2013−107116A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255296(P2011−255296)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000144038)株式会社三井ハイテック (300)
【Fターム(参考)】