説明

空気入りタイヤおよびその製造方法

【課題】空気遮断性に優れ、隣接ゴムとの接着性に優れたインナーライナーを備え、加硫時にブラダー擦れ破損を軽減した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置されており、前記インナーライナーに隣接して、タイヤ断面高さHに対して、ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置した前記空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー積層体よりなるインナーライナーの内側でビード部領域に保護層を配置した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車の低燃費化に対する強い社会的要請から、タイヤの軽量化が図られており、タイヤ部材のなかでも、タイヤの内部に配され、空気入りタイヤ内部から外部への空気の漏れの量(空気透過量)を低減して耐空気透過性を向上させるはたらきをもつインナーライナーにおいても、軽量化などが行われるようになってきた。
【0003】
現在、インナーライナー用ゴム組成物は、たとえばブチルゴム70〜100質量%および天然ゴム30〜0質量%を含むブチルゴムを主体とするゴム配合を使用することで、タイヤの耐空気透過性を向上させることが行われている。また、ブチルゴムを主体とするゴム配合はブチレン以外に約1質量%のイソプレンを含み、これが硫黄・加硫促進剤・亜鉛華と相俟って、隣接ゴム層との分子間の共架橋を可能にしている。上記ブチル系ゴムは、通常の配合では乗用車用タイヤでは0.6〜1.0mm、トラック・バス用タイヤでは1.0〜2.0mm程度の厚みが必要となるが、タイヤの軽量化を図るために、ブチル系ゴムより耐空気透過性に優れ、インナーライナー層の厚みをより薄くできるポリマーが要請されている。
【0004】
従来、インナーライナー層の軽量化のために熱可塑性エラストマーを用いる技術がある。しかし、熱可塑性エラストマーを従来のブチルゴムインナーライナーよりも薄くした場合、空気遮断性と軽量化の機能を同時に満足させることはできない。更に、薄くすることでインナーライナーの強度は低下し、加硫工程時のブラダーの熱と圧力でインナーライナー層が破れてしまうことがある。
【0005】
特許文献1には、インナーライナー層とゴム層の接着性を改善するための積層体が開示されている。これはインナーライナー層の両側に接着層を設けることで、インナーライナー層の重ね合わせ部において接着層同士が接触するようになり、加熱によって強固に接着されるので、空気圧保持性を向上させている。しかし、このインナーライナー層の重ね合わせのための接着層は、加硫工程においてブラダーと加熱状態で接触することになり、ブラダーに粘着、接着するという問題がある。
【0006】
特許文献2には、加硫時におけるブラダーとの擦れ破損の対策として、インナーライナーに保護層を貼り付け又は溶液化し塗布する手法をとっているが工数が増加し生産性、生産コストに問題がある。
【0007】
特許文献3は、空気透過性の良好なナイロン樹脂とブチルゴムを動的架橋により混合物を作成し、厚み100μmのインナーライナー層を作製している。しかしナイロン樹脂は室温では硬くタイヤ用インナーライナーとしては不向きである。また、この動的架橋による混合物だけではゴム層との加硫接着はしないため、インナーライナー層とは別に加硫用接着層を必要とするため、インナーライナー部材としては構造が複雑で工程が多くなり、生産性の観点から不利である。
【0008】
先行文献4は、空気遮断性の良好なエチレン−ビニルアルコール共重合体中に無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を分散させ、柔軟なガスバリア層を作製している。また、熱可塑性ポリウレタン層では挟み込みサンドイッチ構造、さらにタイヤゴムと接着する面にゴム糊(ブチルゴム/天然ゴムの70/30をトルエンに溶解)を塗布させてインナーライナー層を作製している。しかし、柔軟樹脂分散の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は接着力が低く、熱可塑性ポリウレタン層と剥離するおそれがある。また柔軟樹脂分散の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は柔軟樹脂が分散されているが、屈曲疲労性に乏しくタイヤ走行中に破壊してしまう。さらにタイヤゴムと接着する面にゴム糊を塗布しているが、通常のインナーライナー工程とは別の工程が必要となり生産性が劣ることになる。
【0009】
特許文献5は、空気透過率の低いナイロンを用いてインナーライナー層を形成し、ゴム組成物であるタイヤ内面またはカーカス層との接着性を向上させることのできる空気入りタイヤに関する。しかし、特許文献5の技術においては、ナイロンフィルム層を形成するために、ナイロンフィルムをRFL処理した後、ゴム組成物から成るゴム糊を接着する必要があり、工程が複雑化するという問題がある。さらに、加硫工程では一般に、金型内に収容した未加硫タイヤ(生タイヤ)内にブラダー本体を挿入した後に、該ブラダー本体を膨張させて未加硫タイヤの内側から金型内面に押し付けて加硫成形を行うが、特許文献5のインナーライナー層では、ナイロンフィルム層とブラダーとが加熱状態で接触することになり、ナイロンフィルム層がブラダーに粘着、接着して破れてしまう問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−19987号公報
【特許文献2】特開2006−248439号公報
【特許文献3】特許第2999188号
【特許文献4】特開2008−24219号公報
【特許文献5】特開平9−165469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はインナーライナーを備えた空気入りタイヤにおいて、耐空気透過性および屈曲疲労性などのインナーライナーの基本特性に優れ、かつ軽量化を改善するとともに、ブラダー擦れによるインナーライナーの破損を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置されており、前記インナーライナーに隣接し、タイヤ断面高さHに対して、ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置した前記空気入りタイヤである。
【0013】
前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、また、前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000であることが望ましい。
【0014】
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000であることが望ましい。
【0015】
前記保護層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の少なくとも1種であることが望ましい。
【0016】
さらに本発明は前記空気入りタイヤの製造方法であって、未加硫タイヤの内面にインナーライナーを配置する工程、ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置する工程、さらに前記保護層を配置した未加硫タイヤを金型に配置して、未加硫タイヤの内側からブラダーを膨張させながら加硫することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態における空気入りタイヤの右半分を示す模式的断面図である。
【図2】空気入りタイヤの断面図における、ビード部の拡大図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるインナーライナーの模式的断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるインナーライナーの模式的断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態におけるインナーライナーの模式的断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるインナーライナーの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置されていることが望ましい。
【0019】
そして前記インナーライナーの内側に隣接して、タイヤ断面高さHに対して、ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層が配置されている。
【0020】
本発明の実施形態の空気入りタイヤを図にしたがって説明する。図1は、乗用車用空気入りタイヤの断面図の右半分である。空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部両端からトロイド形状を形成するようにサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに折り返して係止されるカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外側には、少なくとも2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
【0021】
前記ベルト層7は、通常、スチールコードまたはアラミド繊維等のコードよりなるプライの2枚をタイヤ周方向に対して、コードが通常5〜30°の角度になるようにプライ間で相互に交差するように配置される。なおベルト層の両端外側には、トッピングゴム層を設け、ベルト層両端の剥離を軽減することができる。またカーカスプライはポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードがタイヤ周方向にほぼ90°に配列されており、カーカスプライとその折り返し部に囲まれる領域には、ビードコア5の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス8が配置される。
【0022】
前記カーカスプライ6のタイヤ半径方向内側には一方のビード部4から他方のビード部4に亘るインナーライナー9が配置されている。
【0023】
空気入りタイヤの断面図を示す図1におけるビード部の拡大図を図2に示す。図2においてインナーライナー9は、カーカスプライ6を構成するゴム層と隣接して配置されている。
【0024】
前記空気入りタイヤにおいてインナーライナー9は、少なくともタイヤ断面高さHに対してビードトウから0.2Hの位置を含む部分に存在している。生タイヤの断面形状はビードトウ4Tから0.2Hの位置、即ち、ビードエーペックス8の位置する近傍において、タイヤ内腔方向に突出すように湾曲した形状となっている。そのため、加硫後にブラダーBが収縮する際、ブラダーBはタイヤ内腔において矢印の方向に移動する。そこで加硫後の高温状態において、ビードトウ4Tからビードエーペックス8が配置されている近傍、即ち0.2Hの位置近傍では、ブラダーの収縮時の移動により、加硫時の高温で流動化されたインナーライナーは擦られて表面が荒らされるとともに、厚さが不均一となる。
【0025】
そこで、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.04Hの範囲には、インナーライナー9に隣接して保護層Pを配置し、加硫時のブラダーBとの擦れによりインナーライナー9の表面が荒れるのを防ぎ、厚さの不均一化を軽減することができる。
【0026】
<保護層の配置>
保護層Pは、ビードトウから0.2Hの位置を基準として上下にそれぞれ少なくとも0.04Hの範囲に配置する。保護層Pは、少なくとも0.04Hの範囲に存在することが必要であり、0.04Hを超えて配置することができる。該保護層Pは、通常、タイヤ断面高さHを基準として0.01H〜0.4Hの範囲内に配置される。保護層Pのタイヤ径方向外側の上端部がビードトウから0.4Hを超える位置に配置されていると、未加硫タイヤを円筒状からトロイダル状に変形させる際に、保護層Pのタイヤ径方向外側の上端部がタイヤ径方向の膨脹に伴って剥離し易くなる。一方、保護層Pのタイヤ径方向内側の下端部がビードトウから0.01H未満の位置に配置されていると、加硫後のタイヤにおいて保護層Pがリム上でビード部の滑りを生じて好ましくない。
【0027】
保護層Pの厚さは、保護機能と軽量化の観点から0.01mm以上1.0mm以下の範囲で調整されるが、0.03mm以上0.8mm以下の範囲が好ましい。なお、保護層は、均一な厚さのものが採用できるが、その中央部を最も厚く両端方向に厚さを漸減する形状を採用することもできる。
【0028】
<保護層の材料>
保護層の構成材料としては、軟化点が150℃〜250℃、好ましくは180℃〜200℃の範囲とする。一般的なタイヤ加硫工程の加硫温度は150℃〜180℃の範囲であり、この加硫温度において、軟化、流動しない材料であることが望ましい。かかる観点から、保護層の材料は、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物が好ましい。
【0029】
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、含ハロゲンゴム(例えばBr−IIR、Cl−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物)を挙げることができる。
【0030】
前記保護層は、スチレン‐イソブチレン‐スチレントリブロック共重合体、スチレン‐イソブチレン‐スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の少なくとも1種であることが望ましい。
【0031】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体など)、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/テトラメチレングリコール共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート、ポリブチレンナフタレート、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステルなど)、ポリニトリル系樹脂(例えばポリアクリロニトリル、ポリメタクロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体など)、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンメチルアクリレート樹脂)、ポリビニル系樹脂(酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/エチレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体)、セルロース系樹脂(酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロルフルオロエチレン、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体)、イミド系樹脂(芳香族ポリイミド)などが使用できる。
【0032】
<エラストマー>
本発明の保護層には、前述の熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂にエラストマーを50質量%以下の範囲で混合できる。ここでエラストマーとしては、ジエン系ゴム及びその水素添加物、例えばオ、NR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR、NBR、水素化NBR、水素化SBR、オレフィン系ゴム、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム、ヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、例えばメチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム、含イオウゴム、例えばポリスルフィドゴム、フッ素ゴム、例えばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴムなどが使用できる。
【0033】
<インナーライナー>
本発明において、インナーライナーに用いられるポリマー積層体は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む第2層とからなり、前記第2層の厚さが0.01mm〜0.3mmである。
【0034】
<第1層>
本発明において、第1層はスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる。SIBSのイソブチレンブロック由来により、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0035】
さらに、SIBSは芳香族以外の分子構造が完全飽和であることにより、劣化硬化が抑制され、優れた耐久性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0036】
SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに適用して空気入りタイヤを製造した場合には、耐空気透過性を確保できる。したがってハロゲン化ブチルゴム等の、従来耐空気透過性を付与するために使用されてきた高比重のハロゲン化ゴムを使用する必要がなく、使用する場合にも使用量の低減が可能である。これによってタイヤの軽量化が可能であり燃費が軽減が図れる。
【0037】
SIBSの分子量は特に制限はないが、流動性、成形化工程、ゴム弾性などの観点から、GPC測定による重量平均分子量が50,000〜400,000であることが好ましい。重量平均分子量が50,000未満であると引張強度、引張伸びが低下するおそれがあり、400,000を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。SIBSは耐空気透過性と耐久性をより良好にする観点から、SIBS中のスチレン成分の含有量は10〜30質量%、好ましくは14〜23質量%であることが好ましい。
【0038】
該SIBSは、その共重合体において、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱い(重合度が10,000未満では液状になる)の点からイソブチレンでは10,000〜150,000程度、またスチレンでは5,000〜30,000程度であることが好ましい。
【0039】
SIBSは、一般的なビニル系化合物のリビングカチオン重合法により得ることができ。例えば、特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル化合物にイソブチレンと他の化合物を用いることでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。
【0040】
SIBSは分子内に芳香族以外の二重結合を有していないために、分子内に二重結合を有している重合体、例えばポリブタジエン、に比べて紫外線に対する安定性が高く、従って耐候性が良好である。さらに分子内に二重結合を有しておらず、飽和系のゴム状ポリマーであるにも関わらず、波長589nmの光の20℃での屈折率(nD)は、ポリマーハンドブック(1989年:ワイリー(Polymer Handbook, Willy,1989))によると、1.506である。これは他の飽和系のゴム状ポリマー、例えば、エチレン−ブテン共重合体に比べて有意に高い。
【0041】
SIBSからなる第1層の厚さは、0.05〜0.6mmである。第1層の厚さが0.05mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第1層がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じる恐れがある。一方、第1層の厚さが0.6mmを超えるとタイヤ重量が増加し、低燃費性能が低下する。第1層の厚さは、さらに0.05〜0.4mmであることが好ましい。第1層は、SIBSを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する慣用技術によってフィルム化して得ることができる。
【0042】
<第2層>
本発明において、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(以下SISともいう)からなるSIS層およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(以下SIBともいう)からなるSIB層の少なくともいずれかを含む。
【0043】
スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)のイソプレンブロックはソフトセグメントであるため、SISからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SISからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスプライのゴム層との接着性に優れているため、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0044】
SISの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。重量平均分子量が100,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、290,000を超えると押出加工性が悪くなるため好ましくない。SIS中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜30質量%であることが好ましい。
【0045】
本発明において、SISにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソプレンでは500〜5,000程度、またスチレンでは50〜1,500程度であることが好ましい。
【0046】
SISは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができ、例えば、リビングカチオン重合法により得ることができる。SIS層は、SISを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
【0047】
スチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)のイソブチレンブロックはソフトセグメントであるため、SIBからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすい。したがって、SIBからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、該インナーライナーは、たとえばカーカスやインスレーションを形成する隣接ゴムとの接着性に優れているため、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0048】
SIBとしては、直鎖状のものを用いることがゴム弾性および接着性の観点から好ましい。SIBの分子量は特に制限はないが、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。重量平均分子量が40,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、120,000を超えると押出加工性が悪くなるおそれがあるため好ましくない。
【0049】
SIB中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜35質量%であることが好ましい。
【0050】
本発明において、SIBにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソブチレンでは300〜3,000程度、またスチレンでは10〜1,500程度であることが好ましい。
【0051】
SIBは、一般的なビニル系化合物の重合法により得ることができ、例えば、リビングカチオン重合法により得ることができる。たとえば、国際公開第2005/033035号には、攪拌機にメチルシクロヘキサン、n−ブチルクロライド、クミルクロライドを加え、−70℃に冷却した後、2時間反応させ、その後に大量のメタノールを添加して反応を停止させ、60℃で真空乾燥してSIBを得るという製造方法が開示されている。
【0052】
SIB層は、SIBを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
【0053】
第2層の厚さは、0.01mm〜0.3mmである。ここで第2層の厚さとは、第2層がSIS層のみからなる場合は該SIS層の厚さを、第2層がSIB層のみからなる場合は該SIB層の厚さを、第2層がSIS層およびSIB層の2層からなる場合は、該SIS層および該SIB層の合計の厚さを意味する。第2層の厚さが0.01mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第2層がプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下する恐れがある。一方、第2層の厚さが0.3mmを超えるとタイヤ重量が増加し低燃費性能が低下する。第2層の厚さは、さらに0.05〜0.2mmであることが好ましい。
【0054】
<ポリマー積層体>
本発明においてインナーライナーに用いられるポリマー積層体の構造は各種の形態を採用できる。これらの形態をインナーライナーの模式的断面図で示す、図3〜図6に基づき説明する。
【0055】
<形態1>
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図3に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIS層12から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層12がカーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0056】
<形態2>
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図4に示すように、第1層としてのSIBS層11および第2層としてのSIB層13から構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカス61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0057】
<形態3>
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図5に示すように、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIS層12およびSIB層13が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナー61に適用する場合、SIB層13の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIB層13とカーカスプライ6との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0058】
<形態4>
本発明の実施の形態において、ポリマー積層体10は、図6に示すように、第1層としてのSIBS層11、第2層としてのSIB層13およびSIS層12が前記の順に積層されて構成される。該ポリマー積層体10を空気入りタイヤのインナーライナーに適用する場合、SIS層12の面を、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて設置すると、タイヤの加硫工程において、SIS層12とカーカスプライ61との接着強度を高めることができる。したがって得られた空気入りタイヤ1は、インナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【0059】
<ポリマー積層体の製造方法>
ポリマー積層体10は、SIBSと、SISおよびSIBの少なくともいずれかを、たとえば形態1〜4のいずれかに記載された順序でラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができる。
【0060】
<空気入りタイヤの製造方法>
本発明の空気入りタイヤは、次の工程で製造することができる。
(a)未加硫タイヤの内面にインナーライナーを配置する工程。
(b)ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置する工程。
(c)前記保護層を配置した未加硫タイヤを金型に配置して、未加硫タイヤの内側からブラダーを膨張させながら加硫する工程。
【0061】
本発明において、前記ポリマー積層体10を空気入りタイヤ1の生タイヤのインナーライナーに適用して他の部材とともに加硫成形して製造する。ポリマー積層体10を生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体10の第2層であるSIS層12またはSIB層13が、カーカスプライ61に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、SIS層12またはSIB層13とカーカス6との接着強度を高めることができる。
【0062】
前記保護層Pは、未加硫タイヤの内面にインナーライナーと隣接してフィルム状の保護層Pを貼り付けて、これを金型内に投入し、該未加硫タイヤの内側でブラダーを膨張させながら加硫を行う。得られた空気入りタイヤはインナーライナーとカーカスプライ61のゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および耐久性を有することができる。
【実施例】
【0063】
表1に示す仕様で実施例および比較例の空気入りタイヤを製造して性能を評価した。ここでインナーライナーに用いる第1層、第2層に用いるSIB、SIBSおよびSISは以下のとおり調製した。
【0064】
<SIB>
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た。
【0065】
スチレン成分含有量:15質量%
重量平均分子量 :70,000
<SIBS>
カネカ(株)社製のシブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)を用いた。
【0066】
<SIS>
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
【0067】
上記、SIBS、SISおよびSIBを、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)、またはインフレーション共押出機にてインナーライナーを作製した。
【0068】
空気入りタイヤは、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズのものに、上記ポリマー積層体をインナーライナーに用いて生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレス成型して製造した。
【0069】
【表1】

【0070】
<比較例1>
比較例1のインナーライナーには、次の配合成分をバンバリーミキサーで混合し、カレンダーロールにてシート化して厚さ1.0mmのポリマーフィルムを得た。
【0071】
クロロブチル(注1) 90質量部
天然ゴム(注2) 10質量部
フィラー(注3) 50質量部
(注1)エクソンモービル(株)社製の「エクソンクロロブチル 1068」。(注2)TSR20。(注3)東海カーボン(株)社製の「シーストV」(N660、窒素吸着比表面積:27m2/g)。
【0072】
<比較例2、3>
上述の方法で製造した厚さ0.6mmのSIBS層をインナーライナーとして用いた。比較例2は保護層を有しない例、比較例3は保護層を有する例である。
【0073】
<比較例4、5>
比較例4はインナーライナーの第1層にSIBS層、第2層にSIS層を用い、保護層を有しない例、比較例5はインナーライナーの第1層にSIBS層、第2層にSIB層を用い、保護層を有しない例である。
【0074】
<実施例1〜4>
実施例1、2は、インナーライナーの第1層にSIBS層を、第2層にSIS層を用い、かつ保護層を有する例であり、実施例3、4は、インナーライナーの第1層にSIBS層を、第2層にSIB層を用い、かつ保護層を有する例である。
【0075】
保護層は、上記比較例3で用いたものを含め、いずれも厚さが0.1mmであり、上端高さは0.28H、下端高さは0.10Hである。
【0076】
また、保護層の材料は、カネカ(株)社製のであるシブスターSIBSTAR 102T(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000のSIBS)を用いた。
【0077】
<性能試験>
実施例、比較例のインナーライナーを有する空気入りタイヤを製造し以下の性能試験を行った。
【0078】
<剥離試験>
JIS K 6256「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−接着性の求め方」に準じて試験片を作製した。インナーライナーとゴム層に用いる材料のシートを貼り合わせて加硫する。加硫後に貼り合わせ界面で剥離強度を測定した。試験片の大きさは25mm幅で、剥離試験は23℃の室温条件下で行った。比較例1の剥離強度を100として相対値で示す。値が大きいほど剥離強度に優れている。
【0079】
<屈曲疲労性試験>
JIS K 6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂試験方法」に準じて、ポリマー積層体またはポリマーフィルムをゴムに貼り付けて加硫し、中央に溝のある所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心にあらかじめ切り込みを入れ、繰り返し屈曲変形を与え亀裂成長を測定する試験を行った。雰囲気温度23℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した屈曲変形の繰り返し回数を算出した。比較例1の値を基準(100)として、実施例1〜4および比較例2〜5のポリマー積層体の屈曲疲労性について指数表示した。数値が大きい方が、亀裂が成長しにくく良好といえる。例えば、実施例1の指数は以下の式で求められる。
【0080】
(屈曲疲労性指数)=(実施例1の屈曲変形の繰り返し回数)/(比較例1の屈曲変形の繰り返し回数)×100
<静的空気圧低下率試験>
上述の方法で製造した195/65R15スチールラジアルPCタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付け、初期空気圧300Kpaを封入し、90日間室温で放置し、空気圧の低下率を計算した。
【0081】
<ブラダー擦れ破損>
170℃で20分間プレス成形して、195/65R15サイズの加硫タイヤを製造した。加硫タイヤを100℃で3分間冷却した後、加硫タイヤを金型から取り出し空気入りタイヤを製造した。ブラダー擦れ破損は、加硫タイヤの内側に配置されたインナーライナー層の損傷を目視で検査した。判定基準は以下のとおりである。
【0082】
A:インナーライナーの損傷の数がタイヤ1本あたり0である。
B:インナーライナーの損傷の数がタイヤ1本あたり1個以上である。
【0083】
<性能評価結果>
実施例1〜4は、いずれも保護層を有しており、ブラダー擦れ破損は認められなかった。一方、保護層を有しない比較例2、4および5はブラダー擦れ破損が認められた。また保護層を有するが、インナーライナーが第1層のみの比較例3もブラダー擦れ破損が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用空気入りタイヤのほか、トラック・バス用、重機用等の空気入りタイヤとして用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 空気入りタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカスプライ、7 ベルト層、8 ビードエーペックス、9 インナーライナー、10 ポリマー積層体、11 SIBS層、12 SIS層、13 SIB層、P 保護層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる厚さ0.05mm〜0.6mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含み、厚さが0.01mm〜0.3mmである第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置されており、
前記インナーライナーに隣接して、タイヤ断面高さHに対して、ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置した前記空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000である請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000である請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
保護層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の少なくとも1種からなる請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法であって、
未加硫タイヤの内面にインナーライナーを配置する工程、
ビードトウから0.2Hの位置から少なくとも上下に0.04Hの範囲に、厚さが0.01mm〜1.0mmの保護層を配置する工程、さらに
前記保護層を配置した未加硫タイヤを金型に配置して、未加硫タイヤの内側からブラダーを膨張させながら加硫することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−51537(P2012−51537A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197770(P2010−197770)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】