説明

空気入りタイヤの製造方法及び生タイヤ成形装置

【課題】タイヤ部材の巻上げ工程を改善する空気入りタイヤの製造方法及び生タイヤ成形装置を提供する。
【解決手段】成形ドラム2とこの成形ドラム2の両側の貼付装置とを含む生タイヤ成形装置を用いてタイヤを製造する。貼付装置は、成形ドラム2の軸方向に移動可能なスライド部材7、及びアーム本体8Aの他端に回動自在にローラ8Bが枢着された揺動アーム8を含む。成形ドラム2と揺動アーム8とに亘ってタイヤ部材を円筒状に巻き付け、タイヤ部材に一対のビードコアを嵌め込み、該ビードコア間のタイヤ部材を膨張させて本体部20を形成し、本体部20とスライド部材7との間に相対回転を与えつつスライド部材7を成形ドラム2に向けて軸方向に移動させる。これにより、タイヤ部材のはみ出し部21に接触するローラ8Bを、本体部20に沿って半径方向内から外へかつラジアル方向に対して斜めに移動させてはみ出し部を巻上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤ成形時におけるタイヤ部材の巻上げ工程等を改善することにより、貼付不良を低減しうる空気入りタイヤの製造方法及び生タイヤ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な空気入りタイヤの製造工程では、先ず、成形ドラムにカーカスプライを含むタイヤ部材を円筒状に巻き付けた後、一対のビードコアを嵌め込み、該ビードコア間のタイヤ部材をトロイド状に膨張変形させるとともに、該ビードコアよりもタイヤ軸方向外側のタイヤ部材のはみ出し部をビードコアの周りで巻上げて生タイヤ(「ローカバー」又は「グリーンタイヤ」と呼ばれることもある。)を成形し、これを金型で加硫成形することが行われている。そして、従来、生タイヤを成形する方法として、下記特許文献1乃至3が提案されている。
【0003】
特許文献1は、タイヤ部材のはみ出し部を、その内周面側に予め仕込まれた風船状に膨張するブラダーで押し上げて巻上げる方法を開示する。このように、ブラダーを用いてタイヤ部材を巻上げる方式は、一般に「ブラダー方式」と呼ばれる。
【0004】
また、特許文献2ないし3は、図18に示されるように、タイヤ部材のはみ出し部cの内周面を、円周方向に隔置された複数個のローラrを本体部gに沿ってタイヤ半径方向内から外にタイヤのラジアル方向に押し上げることにより、該はみ出し部cを本体部gに巻上げる方法を開示する。このような巻上げ方式は、一般に「メカニカル方式」とも呼ばれる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−39572号公報
【特許文献2】特開2004−268371号公報
【特許文献3】特開2004−9298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のブラダー方式では、ブラダーを定期的に交換するなどのメンテナンスが必要になる。このため、メンテナンスの都度、生産ラインを停止させなければならず、生産性の向上が十分に図れないという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2ないし3のメカニカル方式では、上述のようなブラダーのメンテナンスを不要としうる。しかしながら、図16に示したように、ローラrをラジアル方向と平行に押し上げるため、図17に示されるように、生タイヤtのビード部ないしサイドウォール部の外表面にはローラrによって押圧された溝状の凹部eと、これらの凹部e間にローラrと接触していない非押圧部分fとが設けられる。このような非押圧部分fは、はみ出し部cと本体部gとが十分に密着しておらず、ひいては内部に空気が残存するおそれがある。そして、生タイヤtの内部に多くの空気が残存していると、加硫時に成形不良が生じたり、耐久性を著しく悪化させるなどの問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、はみ出し部を巻上げるローラを半径方向内から外へかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動させることにより、従来に比べて、ローラとはみ出し部の接触(押圧)長さを増大させ、ひいてはタイヤ部材の本体部とはみ出し部との間の空気を効果的に排出し、不良品の発生を抑制しうる空気入りタイヤの製造方法及び生タイヤ成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、略円筒状をなす成形ドラムと、この成形ドラムの軸方向両側に配されたタイヤ部材の貼付装置とを含む生タイヤ成形装置を用いて空気入りタイヤを製造する方法であって、前記貼付装置は、前記軸方向に移動可能なスライド部材、及び一端が前記スライド部材に半径方向揺動可能に枢着されかつ他端が前記成形ドラム側にのびるアーム本体と、該アーム本体の前記他端に回動自在に枢着されたローラとを含む円周方向に隔設された複数本の揺動アームを含むとともに、前記成形ドラムと、軸方向に沿って保持された前記揺動アームとに亘ってカーカスプライを含むタイヤ部材を円筒状に巻き付ける工程と、前記タイヤ部材に一対のビードコアを嵌め込む工程と、該ビードコア間のタイヤ部材をトロイド状に膨張させて本体部を形成する工程と、前記本体部と前記スライド部材との間に相対回転を与えつつ前記スライド部材を前記成形ドラムに向けて移動させることにより、前記ビードコアから軸方向外側にはみ出したタイヤ部材のはみ出し部の内周面と接触する前記ローラを、前記本体部に沿ってタイヤ半径方向内から外へかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動させて前記はみ出し部を本体部に巻上げる巻上げ工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また請求項2記載の発明は、前記本体部は、前記ローラがはみ出し部をラジアル方向に10mm巻上げる間に10〜50゜回転する請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法である。
【0011】
また請求項3記載の発明は、前記本体部のトレッド領域の外面には、少なくともトレッドゴムを含むリング状のトレッドゴム体が貼り付けられており、前記はみ出し部の全部又は一部を巻上げた後、前記本体部と前記スライド部材との間に相対回転を与えつつ前記スライド部材を前記成形ドラムから離れる向きに移動させることにより、前記トレッドゴム体の外面に位置させた前記ローラを、トレッドゴム体の外面に沿ってかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動させて前記トレッドゴム体を本体部に密着させるトレッドゴム押圧工程とを含む請求項1又は2記載の空気入りタイヤの製造方法である。
【0012】
また請求項4記載の発明は、カーカスプライを含むタイヤ部材が巻付けられる円筒状の成形ドラムと、前記成形ドラムの軸方向の両外側に配されかつ前記タイヤ部材に外挿された一対のビードコアの内周面をタイヤ部材を介して保持する軸方向に移動可能な一対のビードコア保持装置と、前記一対のビードコア保持装置の両外側に配されかつ前記ビードコアよりもタイヤ軸方向外側のはみ出し部が巻き付けられるとともに、このはみ出し部をタイヤ半径方向外側に巻上げる貼付装置とを含む生タイヤ成形装置であって、前記貼付装置は、前記成形ドラムの軸方向に移動可能なスライド部材、前記はみ出し部の内周面側を通ってタイヤ軸方向にのびかつ一端が前記スライド部材に半径方向揺動可能に枢着されしかも他端が前記成形ドラム側にのびるアーム本体と、該アーム本体の他端に、このアーム本体の長手方向に沿った軸線周りで首振り自在に設けられたキャスタ状のローラとを含む円周方向に隔設された複数本の揺動アーム、及び前記スライド部材と前記ビードコア保持装置との間に相対回転を与える相対回転付与手段を含むことを特徴とする生タイヤ成形装置である。
【0013】
また請求項5記載の発明は、前記揺動アームは、第1のアーム本体と、この第1のアーム本体よりも長さが小さい第2のアーム本体とを少なくとも含むとともに、前記第1のアーム本体と第2のアーム本体とが円周方向に交互に設けられている請求項4記載の生タイヤ成形装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の方法に係る発明では、タイヤ部材のはみ出し部の内周面に接触するローラを、本体部に沿ってタイヤ半径方向内から外へかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動させてはみ出し部を本体部に巻上げる。これにより、ローラをラジアル方向に平行に移動させる場合に比べ、該ローラによる押圧長さが増大し、ひいてはタイヤ部材の本体部とはみ出し部との間の空気が効果的に排出される。従って、不良品の発生が抑制される。
【0015】
また、請求項4記載の装置に係る発明では、アーム本体の他端に、このアーム本体の長手方向に沿った軸線周りで首振り自在に設けられたローラを含む揺動アームを含むとともに、前記アーム本体の一端が枢着されたスライド部材とビードコア保持装置との間に相対回転を与える回転付与手段を含むことにより、前記ローラをはみ出し部の内周面やトレッドゴム体の外面に押し当てかつラジアル方向に対して斜めに移動させることができる。従って、ローラをラジアル方向に平行に移動させる場合に比べ、該ローラによる押圧長さが増大し、ひいてはタイヤ部材の本体部とはみ出し部との間の空気を効果的に排出することができ、不良品の発生を抑制しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態の生タイヤ成形装置1の部分正面図、図2と図3とはその要部拡大図、図4は図2の斜視図をそれぞれ示す。該生タイヤ成形装置1は、符号Cで表される基準線よりも右側を主体的に示しているが、左側もほぼ同様の構成を具えている。
【0017】
生タイヤ成形装置1は、略円筒状をなす成形ドラム2と、この成形ドラム2の軸方向の両外側に配された一対のビードコア保持装置3と、このビードコア保持装置3の軸方向両外側に配されたタイヤ部材の巻上げ装置4とを含み、これらは、略水平にのびる中心軸5で支持されている。
【0018】
前記中心軸5は、図1において右側に配される第1の中心軸5aと、この第1の中心軸5aと離間するとともに同軸上に突き合わせて配された第2の中心軸5bとからなる。これら第1及び第2の中心軸5a、5bは、その軸方向の外端をフレームF1で片持ち状に支持されている。
【0019】
本実施形態の生タイヤ成形装置1は、第1の中心軸5a側に設けられた第1の部分1Aと、第2の中心軸5b側の第2の部分1Bとは互いに接離可能に設けられる。例えば、本実施形態において、第1の部分1Aは、床面Fに敷設されたレールRに沿って中心軸5の軸方向に移動可能なテーブル台TB上に設けられている。
【0020】
前記成形ドラム2は、その中央に配されたセンタードラム2aと、その軸方向両側に隣接して配された一対のサイドドラム2b、2bとを含む。各ドラム2a及び2bは、いずれも実質的に同一の外径を有するとともに、前記第1、第2の中心軸5a及び5bを利用して同軸状に配される。このような成形ドラム2は、センタードラム2a及びサイドドラム2bの外周面を軸方向に実質的に連続させることにより、シート状のタイヤ部材を巻付けしうる幅の広い円筒状の外周面を提供する。なお、本実施形態において、第1の中心軸5aと、第2の中心軸5bとは、センタードラム2aと、その右側に配されたサイドドラム2bとの間で分離される。
【0021】
また、センタードラム2aは、例えば複数のセグメントsを円周方向に連ねることにより実質的に円周方向に連なる外周面が形成される一方、該セグメントsをアクチュエータ2a1を用いて交互にかつ半径方向内方に引き込むことにより、図3に示されるように縮径できる。
【0022】
また、サイドドラム2bは、筒状の基部2b1と、その軸方向外側の縁に固着されたフランジ2b2とを含み、センタードラム2a側が開口されるとともに、前記フランジ2b2にはスリーブ6が固着されている。該スリーブ6は、前記中心軸5に対して軸方向に対して摺動できかつ回動可能に外挿される。また、図1に示されるように、スリーブ6の軸方向の一端側には、スプロケット6Pが固着され、該スプロケット6Pには、チェーンCH1を介して電動機M1が連係される。従って、該電動機M1を駆動することにより、中心軸5の周りでスリーブ6を回動させ得る。
【0023】
前記ビードコア保持装置3は、図2〜3に示されるように、サイドドラム2bのフランジ2b2の近傍で前記スリーブ6に固着されたリング状の内側ベース3aと、この内側ベース3aから軸方向外側に離れた位置でスリーブ6に固着されたリング状の外側ベース3bと、前記内側ベース3a及び外側ベース3bとの間に配されかつスリーブ6に沿って軸方向に移動しうるスライドリング3cと、内側ベース3a及び外側ベース3bとの間で半径方向にのみ移動可能に保持されるとともに、前記スライドリング3cのスライドにより半径方向に出没可能なコア受け部3dとを含む。
【0024】
前記コア受け部3dは、円周方向に分割された複数のセグメントからなり、本実施形態において、前記スライドリング3cの斜面3c1と係合する斜面3d1を有する。このため、コア受け部3dは、スライドリング3cの軸方向外側の移動により半径方向外側に移動でき、かつ、スライドリング3cの軸方向内側への移動により、半径方向内側に移動しうる。ここで、軸方向内側とは、前記基準線Cに向かう方向とし、軸方向外側とは、前記基準線Cから離れる方向とする。
【0025】
また、コア受け部3dの外面には、例えばゴム座3eが固着されている。該ゴム座3eは、その軸方向の一端が前記内側ベース3aに固着されるとともに、他端がコア受け部3dを軸方向外側に超え、片持ち状で外側ベース3bを覆うようにのびている。
【0026】
前記巻上げ装置4は、前記スリーブ6に対して軸方向に摺動できかつ回転可能なスライド部材7と、このスライド部材7に円周方向に間隔をあけて取り付けられかつ軸方向にのびる複数本の揺動アーム8とを含む。
【0027】
前記揺動アーム8は、図3のA−A端面図である図5から明らかなように、一定の円周方向ピッチでスライド部材7に設けられる。また、揺動アーム8は、一端8aが前記スライド部材7に半径方向揺動可能に枢着されかつ他端8bが成形ドラム2側にのびるアーム本体8Aと、該アーム本体8Aの前記他端8bに回動自在に枢着されたローラ8Bとを含む。
【0028】
図6には、ローラ8Bの拡大図が示される。該ローラ8Bには、アーム本体8Aの他端8bに、このアーム本体の長手方向に沿った軸線L1周りで首振り自在に設けられたいわゆるキャスター状のローラが用いられる。即ち、ローラ8Bは、支持ブラケット8Baと、該支持ブラケット8Baに図示しない軸受けを介して回転自在に取り付けられたボルト軸8Bbがアーム本体8Aに螺着される。また、ローラ8Bの接地中心位置CPは、前記軸線L1(ボルト軸8Bbの軸中心線)から距離Z(Z≠0)でオフセットされている。このようなローラ8Bは、走行抵抗が最小となるよう、走行方向に対してローラ8Bの回転軸が常に直角方向となる向きに前記軸線L1周りで自在に首振りして転動できる。
【0029】
また、揺動アーム8には、これらを締め付ける環状のゴムバンドBが装着される。これにより、図1ないし3に示されるように、各揺動アーム8(及びその外周面)が実質的に水平をなす初期状態に保持される。この際、図2ないし3に示されるように各ローラ9が外側ベース3bの水平な外面に載置される。
【0030】
また生タイヤ成形装置1は、図1に示されるように、前記スリーブ6及びスライド部材7を軸方向に移動させ得る軸方向移動具Dが設けられる。
【0031】
該軸方向移動具Dは、一対の軸受け部材33で回動自在に枢着された水平方向にのびるネジ軸32、該ネジ軸32と平行にのびるレール部材34、及び該ネジ軸に32に螺号するボールナット部30と前記レール部34に噛み合い該レール部34を摺動しうるスライドガイド31とを有する第1、第2の移動フレームF2、F3を含む。
【0032】
前記第1の移動フレームF2は、その上部が前記スリーブ6に軸受け40を介して固着される。また、第2の移動フレームF2には、スリーブ6を回転させるための前記電動機M1が固着される。また、第2の移動フレームF3は、その上部が前記スライド部材7に固着される。
【0033】
また、前記ネジ軸32には、チェーン等の伝動具CH2を介して電動機M2のトルクが伝達される。さらに、ネジ軸32は、第1の移動フレームF2のボールナット部30に螺合する第1のネジ軸部32aと、第2の移動フレームF3のボールナット部30に螺合する第2のネジ軸部32bとが例えば電磁クラッチ36のような動力伝達入切手段を介して同軸状に突き合わされて配される。
【0034】
このような軸方向移動具Dは、電磁クラッチ36を接続した状態で電動機M2を所定の向きに駆動することにより、第1及び第2の移動フレームF2、F3を同じ速度で軸方向内側に移動させ得る。これにより、スリーブ6及びスライド部材7は、同一速度で軸方向内側へと移動しうる。これにより、例えば図3に示されるように、センタードラム2aを縮径させて、スリーブ6とともに一対のサイドドラム2b、2bを互いに近づけることができる。
【0035】
また、電磁クラッチ36を切った状態で電動機M2を前記と同一の向きに駆動することにより、スリーブ6を軸方向に移動させることなく第2の移動フレームF3だけを軸方向内側に移動させ得る。これにより、揺動アーム8は、前記ゴムバンドBを伸ばしながら、ローラ8Bが外側ベース3bに設けられた斜面3b1を上る向きに揺動し得る。また、電磁クラッチ36を切った状態で、スライド部材7の軸方向外側への移動により、ゴムバンドBの締め付け力によって、各揺動アーム8は、ローラ8Bが前記斜面3b1を下る向きに揺動する。なお、図2及び図3に示される揺動アーム8の初期状態において、アーム本体8Aの外周面8cを結んだ仮想円筒は、前記成形ドラム2の外径と実質的に等しく形成される。
【0036】
以上のように構成された生タイヤ成形装置1を用いて生タイヤを成形する工程について説明する。先ず、図7に示されるように、センタードラム2aとサイドドラム2bとの間の隙間j(ここでは、第1及び第2の中心軸5a、5bが分離している。)から環状をなす一対のビードコア15が成形ドラム2に嵌め込まれ、仮想線で示されるように、タイヤ部材10の貼り付けの邪魔にならないように軸方向外側の位置で待機させるのが望ましい。
【0037】
次に、成形ドラム2と、ほぼ軸方向に沿って保持された揺動アーム8とに亘って、シート状のタイヤ部材10が円筒状に巻き付けられる。該タイヤ部材10には、例えばインナーライナゴム11と、その幅方向の縁に連なるビードゴム14と、該ビードゴム14に連なるサイドウォールゴム13と、それらの外側に巻き付けられたカーカスプライ12とを含む。これらは、予め一体化されても良いし、また本実施形態のように、別々に巻き付けられても良い。なお、この際、例えばビードゴム14などの厚さや、後に行われるビードコア15の嵌め込み工程などを考慮して、ビードコア保持装置3のゴム座3eの外面を、成形ドラム2の外面よりもわずかに半径方向内側の位置で待機させるのが望ましい。
【0038】
次に、前記タイヤ部材10の外側に、一対のビードコア15を嵌め込む工程が行われる。該ビードコア15は、ビードコア保持装置3のコア受け部3dに対応した位置に嵌め込まれる。しかる後、図8に示されるように、コア受け部3dを半径方向外側に移動させる。これにより、コア受け部3dは、ゴム座3e及びタイヤ部材10を介してビードコア15の内周面を押圧して保持できる。なお、ビードコア15には、例えば断面略三角形状をなすビードエーペックスゴム16が予め一体に設けられるのが望ましい。
【0039】
次に、図9に示されるように、ビードコア15、15間のタイヤ部材10をトロイド状に膨張させて本体部20を形成する工程が行われる。即ち、成形ドラム2のセンタードラム2aを縮径した後、左右のスリーブ6をスライド部材7とともに軸方向内側に移動させる。これにより、スリーブ6に固着されたビードコア保持装置3がビードコア15を保持したまま軸方向内側に移動し、ビードコア15、15間の軸方向距離をCW0からCW1に縮め得る。同時に、例えば高圧空気などをタイヤ部材10の内側領域iへ供給することにより、ビードコア15、15間のタイヤ部材10をトロイド状に膨張変形させ得る。
【0040】
また、この際、本体部20のトレッド領域は、その半径方向外方で予め待機しているベルト層17a及びトレッドゴム17bを含むリング状のトレッドゴム体17の内周面に貼り合わされる。
【0041】
次に、この実施形態では、ステッチング工程が行われる。ステッチング工程は、図10に示されるように、トレッドゴム体17の外面にタイヤ周方向と同じ周方向面を有するステッチローラ19を押し付け、かつ、前記スリーブ6を回転させてタイヤ部材を回転させるとともに、ステッチローラ19をトレッドゴム体17の外面に沿って軸方向にゆっくりと移動させることにより行われる。これにより、トレッドゴム体17は、トロイド状にシェーピングされた本体部20のトレッド領域の外面に沿うように変形して密に接着される。
【0042】
前記ステッチング工程の後、ビードコア15から軸方向外側にはみ出すタイヤ部材のはみ出し部21を、本体部20側に巻上げる巻上げ工程が行われる。なお、前記はみ出し部21には、カーカスプライ12とサイドウォールゴム13とが少なくとも含まれる。
【0043】
前記巻上げ工程は、図11に示されるように、本体部20とスライド部材7との間に相対回転を与えつつスライド部材7を成形ドラム2に向けて軸方向に移動させることにより行われる。即ち、前記電動機M1を駆動することによりスリーブ6を介してビードコア保持装置3を回転させる。また、前記軸方向移動具Dの電磁クラッチ36を切った状態で電動機M2が所定の向きで駆動される。これにより、スリーブ6を停止させたままスライド部材7だけを軸方向内側に移動させる。即ち、本実施形態では、前記軸方向移動具Dとスリーブ6を回転させる電動機M1とが、スライド部材7とビードコア保持装置3との間に相対回転を与える相対回転付与手段として機能しうる。
【0044】
これにより、ローラ8Bは、半径方向に拡径する揺動アーム8によってラジアル方向に押し上げられる力を受けるとともに、中心軸5の周りを回転するタイヤ部材10のはみ出し部21から円周方向の回転力を受ける。これらの合力によって、ローラ8Bは、首を振り、ラジアル方向に対して斜めに移動しながらはみ出し部21を本体部20へと巻上げる。
【0045】
図12(a)には、このような巻上げ工程を経た生タイヤtの側面図が示される。生タイヤtのサイドウォール部には、ラジアル方向RLに対して斜めにローラ8Bが接触する。この実施形態ではつる巻状に凹部eが図示されている。このローラの接触長さは、従来のように、ローラをラジアル方向RLと平行に移動させて巻上げる方法に比べると大きくなる。従って、はみ出し部21と本体部20との空気を、従来に比してより多く外部に排出させることができる。このため、不良品の発生を抑制することができる。なおラジアル方向は、タイヤ回転軸を含む平面がタイヤを切断する切り口の方向とする。
【0046】
また、巻上げ工程中の本体部20とスライド部材7との相対回転量は、種々定めることができる。好ましくは、ローラ8Bがはみ出し部をラジアル方向に10mm巻上げる間に本体部20を10〜50゜、より好ましくは15〜30゜回転させるのが望ましい。前記回転量が10(゜/10mm)未満になると、はみ出し部とローラ8Bとの接触圧長さを十分に増加させることができないおそれがあり、逆に前記回転量が50(゜/10mm)を超えると、巻上げ力が不足しやすく、ひいては生産性が悪化するおそれがある。特に、前記回転量を調整することによって、生タイヤtのサイドウォール部の全域をローラ8Bにて押圧させることもできる。
【0047】
なお、巻上げ工程の後、スライド部材7を軸方向外側に移動させる。これにより、ローラ8Bは、ゴムバンドBによって常時締め付けられているため、巻上げた部分を再び押圧し、はみ出し部21と本体部20とをさらに密着させることができる(巻下げ工程)。この際、タイヤ部材10の回転を維持することにより、例えば図12(b)に示されるように、ローラ8Bを半径方向外から内へかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動させることができる。このような、生タイヤtは、実質的に全域がローラ8Bにて押圧されるとともに、凹部eが交差するように押圧されるため、アンジュレーションが低減し、ユニフォミティの高い空気入りタイヤを得るのに役立つ。
【0048】
なお、上記実施形態では、トレッドゴム体17のトレッドゴム17bをステッチローラ19を用いたステッチング工程にて本体部20に密着させる例を示したが、このステッチング工程に代えて又はステッチング工程とともに前記揺動アーム8を用いてさらにトレッドゴム17bを押圧しても良い(トレッドゴム押圧工程)。このようなトレッドゴム押圧工程を説明する概略図を図13に示す。
【0049】
先ず、揺動アーム8のローラ8Bを前述のようにイ、ロ、ハの順に移動させてはみ出し部21が巻上げられる。
【0050】
次に、揺動アーム8をレバー等(図示省略)で引き上げてローラ8Bをニの位置で待機させる。ニの位置では、ローラ8Bは、トレッドゴム体17の側縁を通る半径線Xよりもタイヤ軸方向外側にある。これにより、トレッドゴム体17b、ローラ8Bと干渉することなく本体部20に巻付けられる。
【0051】
トレッドゴム体17が本体部20に貼り付けられた後、揺動アーム8の前記引き上げを解除し、ローラ8Bをトレッドゴム17bの外面と接触するホの位置へと移動させる。しかる後、本体部20とスライド部材7との間に相対回転を与えつつ前記スライド部材7を成形ドラム2から離れる向きに移動させる。これにより、トレッドゴム17bの外面に位置させた前記ローラ8bは、トレッドゴム17bの外面に沿ってかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動して前記トレッドゴム体17を本体部20に密着させることができる。このような実施形態では、揺動アーム8をはみ出し部21の巻上げ及びトレッドゴム17bの押圧に共用できる点で特に望ましい。
【0052】
また、図14、図15には、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、前記揺動アーム8が、第1のアーム本体8A1と、この第1のアーム本体8A1よりも長さが小さい第2のアーム本体8A2とを含み、これらは円周方向で例えば交互に設けられている。
【0053】
前記第2のアーム本体8A2のローラ8Bは、隣り合う第1のアーム本体8A1、8A1で挟まれる空所よりも半径方向内側でこれらのアーム本体8A1と干渉しない位置に設けられる。また、第2のアーム本体8A2は、前記空所を通ってのびている。これにより、揺動アーム8は、第1のアーム本体8A1と第2のアーム本体8A2との各ローラ8B1、8B2を互いに干渉させることなく、各アーム本体8A1、8A2を密に配設することができる。従って、図16に示されるように、生タイヤtのサイドウォール部のより多くの領域にローラ8Bを接触させて巻上げることができるため、生タイヤ内部への残存空気をさらに減らすことができる。特に好ましい態様として、揺動アーム8は、円周方向に20本以上、より好ましくは30本以上並べられるのが望ましい。
【0054】
なお、成形された生タイヤtは、第1の部分1Aと第2の部分1Bとを離間させ、これらの間から取り出すことができる。
【0055】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は例示の具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施しうるのは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、スライド部材7を軸方向移動させるとともに、生タイヤの本体部20を回転させているが、本体部20を固定するとともに、スライド部材7を回転させながら軸方向に移動(即ち螺進退)させても良い。
【実施例】
【0056】
本発明の効果を確認するために、表1に示す巻上げ工程の仕様にて生タイヤ(タイヤサイズ「215/60R16 95H」)をそれぞれ20本づつ成形し、加硫した後、サイドウォール部にベア(内部空気による膨らみ)といった仕上がり不良品の発生率を調べた。結果は、いずれもラジアル方向と平行にローラを移動させてはみ出し部を巻上げた比較例1を100とする指数で表され、数値が小さいほど良好である。テストの結果は表1に示される。
【0057】
【表1】

【0058】
テストの結果、実施例の方法では、不良品発生率が激減していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態を示す生タイヤ成形装置の正面図である。
【図2】その要部拡大図である。
【図3】その成形ドラムを変化させた状態を示す断面図である。
【図4】生タイヤ成形装置の要部斜視図である。
【図5】図3のA−A端面図である。
【図6】揺動アームのローラの拡大図である。
【図7】生タイヤ成形装置にタイヤ部材を巻き付けた状態を示す断面図である。
【図8】ビードコア保持装置のコア受け部でビードコアを保持した状態を示す断面図である。
【図9】本体部を成形する工程を示す断面図である。
【図10】ステッチング工程を示す断面図である。
【図11】巻上げ工程を説明する断面図である。
【図12】生タイヤの側面図である。
【図13】トレッドゴム押圧工程を説明する概略図である。
【図14】揺動アームの他の実施形態を示す生タイヤ成形装置の要部断面図である。
【図15】その揺動アームの平面図である。
【図16】巻上げ工程を説明する断面図である。
【図17】従来の巻上げ工程を説明する断面図である。
【図18】従来の生タイヤの斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 生タイヤ成形装置
2 成形ドラム
3 ビードコア保持装置
4 巻上げ装置
7 スライド部材
8 揺動アーム
8A アーム本体
8A1 第1のアーム本体
8A2 第2のアーム本体
8B ローラ
10 タイヤ部材
12 カーカスプライ
13 サイドウォールゴム
15 ビードコア
20 本体部
21 はみ出し部
t 生タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状をなす成形ドラムと、この成形ドラムの軸方向両側に配されたタイヤ部材の貼付装置とを含む生タイヤ成形装置を用いて空気入りタイヤを製造する方法であって、
前記貼付装置は、
前記軸方向に移動可能なスライド部材、及び
一端が前記スライド部材に半径方向揺動可能に枢着されかつ他端が前記成形ドラム側にのびるアーム本体と、該アーム本体の前記他端に回動自在に枢着されたローラとを含む円周方向に隔設された複数本の揺動アームを含むとともに、
前記成形ドラムと、軸方向に沿って保持された前記揺動アームとに亘ってカーカスプライを含むタイヤ部材を円筒状に巻き付ける工程と、
前記タイヤ部材に一対のビードコアを嵌め込む工程と、
該ビードコア間のタイヤ部材をトロイド状に膨張させて本体部を形成する工程と、
前記本体部と前記スライド部材との間に相対回転を与えつつ前記スライド部材を前記成形ドラムに向けて移動させることにより、前記ビードコアから軸方向外側にはみ出したタイヤ部材のはみ出し部の内周面と接触する前記ローラを、前記本体部に沿ってタイヤ半径方向内から外へかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動させて前記はみ出し部を本体部に巻上げる巻上げ工程とを含むことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記本体部は、前記ローラがはみ出し部をラジアル方向に10mm巻上げる間に10〜50゜回転する請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記本体部のトレッド領域の外面には、少なくともトレッドゴムを含むリング状のトレッドゴム体が貼り付けられており、
前記はみ出し部の全部又は一部を巻上げた後、前記本体部と前記スライド部材との間に相対回転を与えつつ前記スライド部材を前記成形ドラムから離れる向きに移動させることにより、前記トレッドゴム体の外面に位置させた前記ローラを、トレッドゴム体の外面に沿ってかつタイヤのラジアル方向に対して斜めに移動させて前記トレッドゴム体を本体部に密着させるトレッドゴム押圧工程とを含む請求項1又は2記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
カーカスプライを含むタイヤ部材が巻付けられる円筒状の成形ドラムと、
前記成形ドラムの軸方向の両外側に配されかつ前記タイヤ部材に外挿された一対のビードコアの内周面をタイヤ部材を介して保持する軸方向に移動可能な一対のビードコア保持装置と、
前記一対のビードコア保持装置の両外側に配されかつ前記ビードコアよりもタイヤ軸方向外側のはみ出し部が巻き付けられるとともに、このはみ出し部をタイヤ半径方向外側に巻上げる貼付装置とを含む生タイヤ成形装置であって、
前記貼付装置は、
前記成形ドラムの軸方向に移動可能なスライド部材、
前記はみ出し部の内周面側を通ってタイヤ軸方向にのびかつ一端が前記スライド部材に半径方向揺動可能に枢着されしかも他端が前記成形ドラム側にのびるアーム本体と、該アーム本体の他端に、このアーム本体の長手方向に沿った軸線周りで首振り自在に設けられたキャスタ状のローラとを含む円周方向に隔設された複数本の揺動アーム、及び
前記スライド部材と前記ビードコア保持装置との間に相対回転を与える相対回転付与手段を含むことを特徴とする生タイヤ成形装置。
【請求項5】
前記揺動アームは、第1のアーム本体と、この第1のアーム本体よりも長さが小さい第2のアーム本体とを少なくとも含むとともに、
前記第1のアーム本体と第2のアーム本体とが円周方向に交互に設けられている請求項4記載の生タイヤ成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−154471(P2009−154471A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337307(P2007−337307)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】