説明

空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法及び接合装置

【課題】高効率且つ高精度の端面接合を実現し得る空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法及び接合装置を提供する。
【解決手段】本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法は、カーカスプライ素材3の巻付け始端側の端部分3aを、成型ドラム2の一方の吸着手段4aに吸着させて該成型ドラム2を回動変位させ、巻付け終端側の端部分3bを、他方の吸着手段4bに吸着させて、前記カーカスプライ素材3を巻き付け、成型ドラム2を縮径変形させて始終夫々の端部分3a,3bを相互に接近させるとともに、カーカスプライ素材3の各々の前記端部分3a,3bに撓み部8を形成した後、外側引寄せ爪6及び内側引寄せ爪5の夫々を作動させて始終の夫々の端面3c,3dを接合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡縮径変形可能な成型ドラムの外周面上に、カーカスプライ素材をそれの全長に渡って巻き付けるとともに、該カーカスプライ素材の、巻付け始端側及び巻付け終端側の両端面を相互に突き合わせ接合させる、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法及びその装置に関するものであり、とくに、高効率且つ高精度の端面接合を実現し得る技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材を接合する方法としては、カーカスプライ素材の始端側の端面と終端側の端面とを突き合わせて接合する、いわゆるバットジョイントによる接合方法がある。
【0003】
しかるに、インナーライナー素材の成型とカーカスプライ素材の突き合わせ接合とを同一の成型ドラム上で行う場合、カーカスプライ素材の内周面が、成型ドラム上に予め成型されるインナーライナーの外周面に貼り付いてしまうことから、カーカスプライ素材の端面の突き合わせ接合を行うためには、インナーライナー素材上に巻き付け配置したカーカスプライ素材を、一旦引き剥がしてから端面突き合わせ接合を行うことが必要になるので、生産効率の低下が否めなかった。
【0004】
そのため、従来は、カーカスプライ素材の端面の突き合わせ接合を、専用の成型ドラム上にて行う方法が一般的である。
【0005】
例えば、特許文献1には、「径の拡縮が可能な成形ドラムをその拡径時の成形ドラム表面に周方向の一部が閉じられずに成形ドラムの全幅にまたがる溝孔開口が生じるように形成し、この溝孔開口の片側外方にドラム軸と平行な第1アームおよび第2アームを、第1アームの先端が上記溝孔開口の半径方向外側を、第2アームの先端が上記溝孔開口の半径方向内側をそれぞれ溝孔開口と平行に進退できるように設け、上記第1アームの先端および第2アームの先端にそれぞれ幅方向に並ぶ2個のロールホルダを設け、これらのロールホルダにそれぞれ上記成形ドラムの周方向に並ぶ一対のジョイントロールを、第1アームのジョイントロールと第2アームのジョイントロールとが成形ドラムの半径方向に対向するように、かつ成形ドラムの幅方向片側および他側のジョイントロールが成形ドラムに巻付けられているスチールプライの上記溝孔開口をまたぐ部分を交互に挟むように設けたことを特徴とするラジアルタイヤのスチールプライ接合装置。」が記載されている。
【0006】
この接合装置では、「スチールプライの両端突き合わせ部の裏面が成形ドラムの表面に接触しないが、上記のようにドラム幅の中央部から外側へ向かってジョイントロールを移動させると、移動方向に対して反対側半分のスチールプライの両端突き合わせ部から離れた部分が成形ドラムに接して摩擦力が作用し、この摩擦力が上記ジョイントロールの移動に伴う引張りに対向するので、上記のジョイントロールを支障なく移動させることかできる。そして、ジョイントロールがスチールプライの表裏両面に接するので、スチールプライ両端の突き合わせ部が、表裏両面共確実に接合される。」との作用により、「スチールプライ両端の突き合わせ部が表裏両面共確実に接合され、接合強度が向上する。」とし、また、「幅方向片側のジョイントロールと他側のジョイントロールとでその走行方向に対する支軸の傾斜角度を最適角度に設定してスチールプライの接合を能率的に行うことができる。」とする。
【0007】
しかしながら、上記の接合装置では、各ジョイントロールを、スチールプライ両端の突合せ部の全長に渡って転動させることが必要になるため、接合に時間が掛かってしまい、高い生産性が得られないという問題がある。
【0008】
また、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材等の帯状部材の端面接合装置として、例えば、特許文献2には、「帯状部材の幅方向に離れるとともに長手方向に延びる複数本の第1ベルトを有し、帯状部材の長手方向に伸縮することができる第1コンベアと、第1コンベアの前方に設置され、前記第1ベルトと交互に位置しながら帯状部材の幅方向に離れるとともに長手方向に延びる複数本の第2ベルトを有し、帯状部材の長手方向に伸縮することができて、第1、第2コンベアが共に伸長して互いに最も接近したとき、第1ベルトの前端部間に第2ベルトの後端部が交互に入り込む第2コンベアと、第1コンベアと第2コンベアとの境界に昇降可能に設置され、上昇して第1、第2コンベアから上方に突出したとき、第1コンベア上の帯状部材の前端および第2コンベア上の帯状部材の後端が突き当たることでこれら帯状部材の位置を決定する複数本の上下方向に延びる位置決めピンと、位置決めピンの上方に設置された昇降可能な上接合爪と、上接合爪の下方に昇降可能に設置され、上昇したとき、下降してきた上接合爪と協働して第1コンベア上の帯状部材の前端と第2コンベア上の帯状部材の後端とを接合する下接合爪と、を備えたことを特徴とする帯状部材の端面接合装置。」が記載されている。
【0009】
これによれば、「第1、第2コンベア(27)、(33)を作動し、第1ベルト(25)上の帯状部材(T)を前端が位置決めピン(38)に強く突き当たるまで前方に、また、第2ベルト(31)上の帯状部材(T)を後端が位置決めピン(38)に強く突き当たるまで後方に搬送し、これら帯状部材(T)の前、後端部に屈曲した変形部を形成する。これにより、これら帯状部材(T)の前、後端は互いにほぼ平行となるよう姿勢が修正され、また、これらの間の距離も一定に設定される。」との作用により、「帯状部材の前、後端を高能率でかつ高精度で接合することができる。」とする。
【0010】
しかし、上記のような帯状部材の端面接合装置では、2枚以上の帯状部材の各端面を接合してより長い帯状部材とするものであり、この端面接合装置によっては、1枚の帯状部材を巻き回して円筒状の部材を形成することは不可能である。
【0011】
また、上記装置では、各帯状部材を搬送して位置決めピンに突き当てるためのコンベアが必要であるが、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材のための成型ドラムに、このようなコンベアを組み込むことは難しく、また、仮に組み込んだとしても、夫々の制御が煩雑になってしまうため、特許文献2に記載された上記接合装置を、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の接合に適用することは、通常、不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−276530号公報
【特許文献2】特開平6−198745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、高効率且つ高精度の端面接合を実現し得る空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法及び接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法は、拡縮径変形可能な成型ドラムの外周面上に、カーカスプライ素材を全長に渡って巻き付けるとともに、該カーカスプライ素材の、巻付け始端側及び巻付け終端側の両端面を相互に突き合わせ接合させる空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法であって、
前記カーカスプライ素材の巻付け始端側の端部分を、前記成型ドラムの一方の吸着手段に吸着させて、該成型ドラムを回動変位させるとともに、前記カーカスプライ素材の巻付け終端側の端部分を、前記成型ドラムの他方の吸着手段に吸着させて、該カーカスプライ素材をその全長に渡って前記成型ドラムの外周面上に巻き付け、次いで、
前記成型ドラムの両吸着手段の間に位置する突き当て手段の、ドラム径方向外方への進出姿勢下で、前記成型ドラムを縮径変形させて、前記カーカスプライ素材の、夫々の吸着手段に吸着させた始終の夫々の前記端面を、相互に接近させるとともに、前記カーカスプライ素材の夫々の前記端部分に、半径方向外側に凸となる撓み部を形成した後、
前記突き当て手段の、半径方向内方への後退姿勢下で、前記撓み部の外表面及び内表面の夫々に、外側引寄せ爪及び内側引寄せ爪の夫々を係合させるとともに、前記外側引寄せ爪及び内側引寄せ爪の夫々を作動させて、前記カーカスプライ素材の始終の夫々の前記端面を接合させるにある。
【0015】
ここで、上記「吸着手段」としては、負圧吸引または磁力によるもの等が挙げられるが、好ましくは、負圧吸引によるものを用いる。
【0016】
またここで、前記内側引寄せ爪及び外側引寄せ爪としては、複数個の爪部材を、ドラム軸線方向に左右交互に整列配置して構成されて、該引寄せ爪の閉口時に、左右それぞれの爪部材が相互に入り込み変位するものを夫々用いることが好ましい。
【0017】
本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合装置は、拡縮径変形可能な成型ドラムの外周面上に、カーカスプライ素材を全長に渡って巻き付けるとともに、該カーカスプライ素材の、巻付け始端側及び巻付け終端側の両端面を相互に突き合わせ接合させる空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合装置であって、
前記成型ドラムの外周面よりもドラム径方向内側に位置する内側引寄せ爪、前記成型ドラムの外周面よりもドラム径方向内側に配置した突き当て手段を、ドラム径方向外方に向けて進出可能な突き当て進出手段、及び、該突き当て進出手段のドラム周方向両側に位置し、前記カーカスプライ素材を吸着可能な夫々の吸着手段を有する成型ドラムと、
前記内側引寄せ爪と協働して、前記カーカスプライ素材の始終の夫々の前記端面を接合可能な外側引寄せ爪とを具えてなるものである。
【0018】
この装置において好ましくは、前記夫々の吸着手段を、カーカスプライ素材の、巻付け始端側及び巻付け終端側の夫々の端部分を負圧吸引して吸着するものとする。
【0019】
そしてまた好ましくは、前記内側引寄せ爪及び外側引寄せ爪のそれぞれを、ドラム軸線方向に左右交互に配置した複数個の爪部材にて構成されて、該引寄せ爪の閉口時に、左右それぞれの爪部材が相互に入り込み変位するものとする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の接合方法によれば、特に、成型ドラムの夫々の吸着手段に、カーカスプライ素材の始終夫々の端部分を吸着させて、カーカスプライ素材を成型ドラムに巻き付けた後、両吸着手段の間に位置する突き当て手段の、ドラム径方向外方への進出姿勢下で、成型ドラムを縮径変形させて、カーカスプライ素材の始終夫々の端面を、突き当て手段の側面に当接させ、カーカスプライ素材の始終の端部分に、半径方向外側に凸となる撓み部を形成することにより、従来の、「帯状部材の端面接合装置」のように、コンベアを用いることなく、成型ドラム上でカーカスプライ素材の始終夫々の端面を迅速に揃えることができる。
【0021】
またこの方法では、成型ドラム上でカーカスプライ素材の始終夫々の端面を揃えることができるので、これらの端面を、内外の引寄せ爪によって容易に突き合わせ接合することができる。そのため、この端面接合方法では、従来の「スチールプライ接合装置」のように、各ジョイントロールを、カーカスプライ素材の突き合わせ部分の全長に渡って転動させる必要がなく、これによって、これら端面の迅速且つ高精度な接合を実現することができる。
【0022】
本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合装置によれば、特に、成型ドラムの外周面よりもドラム径方向内側に位置する内側引寄せ爪、前記成型ドラムの外周面よりもドラム径方向内側に配置した突き当て手段を、ドラム径方向外方に向けて進出可能な突き当て進出手段、及び、突き当て進出手段のドラム周方向両側に位置し、前記カーカスプライ素材を吸着可能な夫々の吸着手段を有する成型ドラムと、内側引寄せ爪と協働してカーカスプライ素材の始終夫々の端面を接合可能な、外側引寄せ爪とを具えることにより、本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法を容易に実施することができ、また、先述したこの方法による効果を得ることができる。
【0023】
本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法及び接合装置において、成型ドラムの夫々の吸着手段を、カーカスプライ素材を負圧吸引して吸着するものとした場合は、これらの吸着手段が、負圧吸引によってカーカスプライ素材の始終夫々の端部分に吸着するため、スチールコードを含まないカーカスプライ素材に対しても上記方法及び装置を適用させることができる。
【0024】
また、上記の端面接合方法及び接合装置において、内側引寄せ爪及び外側引寄せ爪として、複数の爪部材を、ドラム軸線方向に左右交互に整列配置して構成されて、該引寄せ爪の閉口時に、左右それぞれの爪部材が相互に入り込み変位する引寄せ爪を夫々用いた場合、カーカスプライ素材の端面接合時に、複数の爪部材が、カーカスプライ素材の両端部分の表面に均等に食い込んで、それらの端部分の相互を引き寄せることになるので、両端面がドラム軸線方向の全長に渡って均等に相互加圧されるとともに、これらの接合面積が大きくなるため、より高精度で強力な接合を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の、カーカスプライ素材の接合装置の一の実施形態並びに、巻付け始端側の端部分を成型ドラムの一方の吸着手段に吸着させたカーカスプライ素材を模式的に示す側面図である。
【図2】成型ドラムを回動変位させて、カーカスプライ素材を成型ドラムに巻き付ける途中の、図1の接合装置及び、カーカスプライ素材を模式的に示す側面図である。
【図3】図1の接合装置並びに、巻付け始端側及び終端側の端部分の夫々を成型ドラムの各々の吸着手段に吸着させたカーカスプライ素材を模式的に示す側面図である。
【図4】(a)〜(c)は、図1の接合装置を用いて行うことができるカーカスプライ素材の接合方法において、カーカスプライ素材の始終夫々の端面を接合させる工程を示す説明図である。
【図5】(a)は、開口時の内側引寄せ爪の一例を模式的に示す、成型ドラムの部分拡大平面図であり、(b)は、閉口時の内側引寄せ爪の一例を模式的に示す同様の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1〜3に示す、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材3の接合装置1は、拡縮径変形可能な成型ドラム2の外周面上に、カーカスプライ素材3を全長に渡って巻き付けるとともに、カーカスプライ素材3の、巻付け始端側及び巻付け終端側の両端面3c,3dを相互に突き合わせ接合させるためのものである。
【0027】
ここで、本発明の空気入りタイヤのカーカスプライ素材3の端面接合装置1では、成型ドラム2の外周面よりもドラム径方向内側に位置する内側引寄せ爪7、
前記成型ドラム2の外周面よりもドラム径方向内側に配置した突き当て手段5aを、ドラム径方向外方に向けて進出可能な突き当て進出手段5、及び、突き当て進出手段5のドラム周方向両側に位置し、カーカスプライ素材3を吸着可能な夫々の吸着手段4a,4bを有する成型ドラム2と、内側引寄せ爪7と協働して、カーカスプライ素材3の始終夫々の端面3c,3dを接合可能な外側引寄せ爪6とを具えていることが肝要である。
【0028】
尚、図示例では、夫々の吸着手段4a,4bを、内側引寄せ爪7のドラム周方向の両側のそれぞれに配置されて、成型ドラム2の外周面の一部を形成する揺動板4c,4dと、揺動板4c,4dの内部にそれの外表面への露出姿勢で、たとえば、ドラム軸線方向に相互に50mmピッチ程度の間隔をおいて配置した複数個の吸着パッド4e,4fとを有するものとしている。
また、突き当て進出手段5の突き当て手段5aは、たとえば、成型ドラム2の軸線方向に所要の間隔をおいて設けた、ドラム径方向内外に進退変位可能な複数本のピン状のものとすることができる。なお、突き当て手段5aは、図1及び2に示すところでは、成型ドラムの外周面に対して後退姿勢であり、図3に示すところでは、成型ドラムの外周面から突出する進出姿勢となっている。
【0029】
各吸着手段4a,4b、突き当て手段5a、突き当て進出手段5、外側引寄せ爪6及び内側引寄せ爪7はいずれも、成型ドラム2の軸線方向の全幅に渡って、連続的または断続的に配されていることが好ましい。これによれば、上記各吸着手段4a,4b、突き当て手段5a、突き当て進出手段5、外側引寄せ爪6及び内側引寄せ爪7による夫々の機能が、成型ドラム2の軸線方向の幅を超えない範囲の、種々の幅のカーカスプライ素材3に対して、その全幅に渡って均一に作用するため、より高精度で効率的な端面接合を行うことができる。
【0030】
本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法は、上述したような端面接合装置を用いて実施することができ、この端面接合方法の一例を、図1〜4を参照しつつ以下に詳説する。
【0031】
図1では、カーカスプライ素材3の巻付け始端側の端部分3aを、成型ドラム2の一方の吸着手段4aに吸着させている。その際、図1に示すように、カーカスプライ素材3の始端側の端面3cは、他方の吸着手段4b側に向くことになる。
【0032】
尚、カーカスプライ素材3は、例えば、タイヤサイズ等に応じて、所定の裁断機(図示せず)等によって所要の長さに裁断されたものであることが好ましい。また、成型ドラム2のサイズは、裁断されたカーカスプライ素材3の長さ等に応じて選択することができる。
【0033】
図1に示す状態から、成型ドラム2を、カーカスプライ素材3の始端側の端面3cが向く方向(図示例では、反時計回り)に回動変位させることにより、図2に示すように、カーカスプライ素材3が成型ドラム2に順次巻き付けられていく。成型ドラム2をさらに同一方向に回動変位させ、約1周回したところで、図3に示すように、カーカスプライ素材3の終端側の端部分3bを、成型ドラム2の他方の吸着手段4bに吸着させる。
【0034】
これにより、カーカスプライ素材3が、図3に示すように、その全周に渡って成型ドラム2に巻き付けられ、カーカスプライ素材3の端面3c及び3dは、突き当て進出手段5を挟んで、相互に概ね対向した状態になる。
【0035】
ここで、突き当て手段5aを、図3に示すような進出姿勢とし、この進出姿勢下でさらに成型ドラム2を縮径変形させることにより、この縮径変形に伴い、吸引手段4a,4bの揺動板4c、4dが、吸着パッド4e,4fの負圧吸引によって揺動板4c、4dの外表面に吸着された各々の端部分3a,3bとともに相互に接近することで、成型ドラム2の外周面に巻き付けられた略円筒状のカーカスプライ素材3もまた縮径されて、カーカスプライ素材3の長さの余剰分が、成型ドラム2の外周面の実質的な間隙である突き当て手段5aの近傍の空間に、最も多く集中することになる。
【0036】
この余剰分の集中によって、カーカスプライ素材3の始終夫々の端面3c及び3dは、図4(a)に拡大図で示すように、突き当て手段5aに近接して位置するか、または、突き当て手段5aの側面に当接することになり、また、カーカスプライ素材の始終の端部分3a,3bには、半径方向外側に凸となる撓み部8が形成されることになる。
【0037】
本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法では、とりわけ、成型ドラム2の拡縮径変形の作用を利用して、カーカスプライ素材3の両端面3c及び3dを相互に接近させ、さらに、成型ドラム2の縮径変形によって生じるカーカスプライ素材3の余剰分を利用して、上記のような撓み部8を形成することを一つの特徴とする。
【0038】
このような撓み部8を形成することにより、各端面3c及び3dが、カーカスプライ素材3の全幅に渡って相互に接近することになるので、カーカスプライ素材3の裁断時または巻き付け時の誤差等による両端面3c及び3d間の距離の誤差が瞬時にリセットされる。
【0039】
次いで、突き当て手段5aを、図4(b)に示すように、半径方向内方への後退姿勢とするとともに、外側引寄せ爪6を、図に白抜き矢印で示すように下降させて、前記撓み部8の外表面及び内表面の夫々に、外側引寄せ爪6及び内側引寄せ爪7の夫々を係合させる。
【0040】
しかる後は、揺動可能にヒンジ連絡した複数個の爪部材6aを有する外側引寄せ爪6を、図4(c)に誇張して示すように、同様に揺動可能な爪部材7aを有する内側引寄せ爪7に向けてさらに下降させることで、それぞれの爪部材6a,7aを、図に矢印で示すように、ヒンジピンの回りに揺動変位させて、カーカスプライ素材3の、外側引寄せ爪6および内側引寄せ爪7の間に挟み込んだ始終の夫々の端面3c及び3dの相互を強固に圧着させる。
これにより、これらの始端面3cと終端面3dとを、高精度に突き合わせ接合することができる。
【0041】
このような内側引寄せ爪7は、例えば、図5(a)及び(b)に、成型ドラムの拡大平面図で示すように、左右のそれぞれが互いに接近・離隔する向きに揺動可能に取り付けられて、カーカスプライ素材3との接触面に、多数本の溝を形成した爪部材7aの複数個を、ドラム軸線方向(図の上下方向)に左右交互に配置して構成することが好ましい。
尚、説明のため、図5に示すところでは、内側引寄せ爪7について例示したが、外側引寄せ爪6についても、これと同様の構成とすることができる。
【0042】
ここで、通常、爪部材7aの幅Wを小さくして、爪部材7aのドラム軸線方向の配設個数を増やすほど、より均質で高精度な端面接合を得られるが、爪部材の耐久性やカーカスプライ素材3への食い込みによる影響等の種々の事情に鑑みれば、幅Wは、2〜6mm程度の範囲であることが好ましい。
【0043】
以上の工程によって、効率的且つ高精度に、カーカスプライ素材3の両端面3c及び3dを突き合わせ接合し、空気入りタイヤ用の円筒状のカーカスプライを形成することができる。
【0044】
尚、本発明の空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法及び装置において、例えば、突き当て手段5a、外側引寄せ爪6及び内側引寄せ爪7等を、温度制御可能とすることができる。
【0045】
これによれば、突き当て手段5a、外側引寄せ爪6及び内側引寄せ爪7を高温状態にしてカーカスプライ素材3の各端部分3a,3bまたは各端面3c,3dに接触させることによって、両端面3c,3dが加熱され、これらが相互に接着しやすくなるので、端面接着の効率及び接着強度をさらに向上させることができる。
【0046】
上記方法及び装置によって形成された、成型ドラム2上のカーカスプライは、その後、所定の搬送装置(図示せず)等によって次の製造工程に搬送され、例えば、インナーライナー成型用のドラム上で成型されたインナーライナーに、該インナーライナーの径方向外側から貼着させることができる。これによって、上記カーカスプライをインナーライナーと一体化させることができる。
【0047】
或いは、上記方法及び装置によって成型ドラム2上に形成されたカーカスプライを、例えば、既に同様の方法及び装置によって端面を接合されて円弧状に形成され、搬送装置に取り付けられて成型ドラム2よりも大径に拡径されている他のカーカスプライに、該他のカーカスプライの径方向内側から成型ドラム2ごと挿入することによって、成型ドラム2上のカーカスプライを他のカーカスプライの径方向内側に配置し、さらに、この状態から成型ドラム2を拡径させることによって、成型ドラム2上のカーカスプライが拡径して、他のカーカスプライの内周面に貼着することになる。
【0048】
これによって、上記成型ドラム2上のカーカスプライを、他のカーカスプライと一体化させ、複数層のカーカスプライから成るカーカス部材を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 カーカスプライ素材の端面接合装置
2 成型ドラム
3 カーカスプライ素材
3a 巻付け始端側の端部分
3b 巻付け終端側の端部分
3c 巻付け始端側の端面
3d 巻付け終端側の端面
4a 吸着手段(巻付け始端側)
4b 吸着手段(巻付け終端側)
4c,4d 揺動板
4e,4f 吸着パッド
5 突き当て進出手段
5a 突き当て手段
6 外側引寄せ爪
6a 爪部材
7 内側引寄せ爪
7a 爪部材
8 撓み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡縮径変形可能な成型ドラムの外周面上に、カーカスプライ素材を全長に渡って巻き付けるとともに、該カーカスプライ素材の、巻付け始端側及び巻付け終端側の両端面を相互に突き合わせ接合させる空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法であって、
前記カーカスプライ素材の巻付け始端側の端部分を、前記成型ドラムの一方の吸着手段に吸着させて、該成型ドラムを回動変位させるとともに、前記カーカスプライ素材の巻付け終端側の端部分を、前記成型ドラムの他方の吸着手段に吸着させて、該カーカスプライ素材をその全長に渡って前記成型ドラムの外周面上に巻き付け、次いで、
前記成型ドラムの両吸着手段の間に位置する突き当て手段の、ドラム径方向外方への進出姿勢下で、前記成型ドラムを縮径変形させて、前記カーカスプライ素材の、夫々の吸着手段に吸着させた始終の夫々の前記端部分を、相互に接近させるとともに、前記カーカスプライ素材の始終の夫々の前記端部分に、半径方向外側に凸となる撓み部を形成した後、
前記突き当て手段の、半径方向内方への後退姿勢下で、前記撓み部の外表面及び内表面の夫々に、外側引寄せ爪及び内側引寄せ爪の夫々を係合させるとともに、前記外側引寄せ爪及び内側引寄せ爪の夫々を作動させて、前記カーカスプライ素材の始終の夫々の前記端面を接合させる、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法。
【請求項2】
前記成型ドラムの夫々の吸着手段により、前記カーカスプライ素材の夫々の端部分を、負圧吸引して吸着させる請求項1に記載の、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法。
【請求項3】
前記内側引寄せ爪及び外側引寄せ爪として、複数個の爪部材を、ドラム軸線方向に左右交互に整列配置して構成されて、該引寄せ爪の閉口時に、左右それぞれの爪部材が相互に入り込み変位する引寄せ爪を夫々用いる請求項1または2に記載の、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合方法。
【請求項4】
拡縮径変形可能な成型ドラムの外周面上に、カーカスプライ素材を全長に渡って巻き付けるとともに、該カーカスプライ素材の、巻付け始端側及び巻付け終端側の両端面を相互に突き合わせ接合させる空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合装置であって、
前記成型ドラムの外周面よりもドラム径方向内側に位置する内側引寄せ爪、前記成型ドラムの外周面よりもドラム径方向内側に配置した突き当て手段を、ドラム径方向外方に向けて進出可能な突き当て進出手段、及び、該突き当て進出手段のドラム周方向両側に位置し、前記カーカスプライ素材を吸着可能な夫々の吸着手段を有する成型ドラムと、
前記内側引寄せ爪と協働して、前記カーカスプライ素材の始終の夫々の前記端面を接合可能な外側引寄せ爪とを具えてなる、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合装置。
【請求項5】
前記夫々の吸着手段を、カーカスプライ素材の、巻付け始端側及び巻付け終端側の夫々の端部分を負圧吸引して吸着するものとしてなる請求項4に記載の、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合装置。
【請求項6】
前記内側引寄せ爪及び外側引寄せ爪のそれぞれを、ドラム軸線方向に左右交互に配置した複数個の爪部材にて構成されて、該引寄せ爪の閉口時に、左右それぞれの爪部材が相互に入り込み変位するものとしてなる請求項4または5に記載の、空気入りタイヤ用のカーカスプライ素材の端面接合装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−43303(P2013−43303A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180865(P2011−180865)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】