説明

空気圧縮機

【課題】パイプの振動を抑制して固定部等の破損を抑制すると共に、パイプでの圧縮空気の冷却性を向上させた空気圧縮機の提供。
【解決手段】出力部3により駆動されて空気を圧縮する圧縮空気生成部4と、圧縮空気生成部4で生成された圧縮空気を貯留する空気タンク2と、空気タンク2と圧縮空気生成部4との間に介在し一端で圧縮空気生成部4に接続されると共に他端で空気タンク2に接続されて圧縮空気生成部4から空気タンク2へと圧縮空気を送気するパイプ21Bと、を備え、圧縮空気生成部4には、一端と他端との間でパイプ21Bを保持する固定具7が装着されている空気圧縮機1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気を動力源とする工具等に圧縮空気を供給するための空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場などでは、圧縮空気の圧力で釘やネジを木材などに打ち込む空気工具が広く使用されており、この空気工具に供給される圧縮空気を生成するのに空気圧縮機が用いられている。空気圧縮機では、モータ等によりクランクケースに設けられたシリンダ内のピストンを駆動して空気を圧縮すると共に圧縮された空気がパイプを介してタンクに貯留され、このタンクから空気工具に圧縮空気を供給している。このパイプは、良熱導体、例えば銅製であり、タンクでの圧縮空気の充填効率を向上させるべく、パイプ内を圧送される圧縮空気を冷却している。また圧縮空気の圧力を高圧にするために、例えば特許文献1に示されるように、複数のピストンで段階的に圧縮を行う多段式往復圧縮機が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−185648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストンが往復動することにより、クランクケースやシリンダには振動が発生する。この振動は、シリンダとタンクとの間に介在する上述のパイプにも伝達するが、振動がパイプに伝達することによりタンクやシリンダのパイプを固定する固定部のゆるみや破損が発生することがある。パイプを短くすることにより固定部の破損等を抑制することはできるが、取り回しの都合や、パイプにおける圧縮空気の冷却効率が下がるため、安易にパイプを短くすることはできない。よって本発明は、パイプの振動を抑制して固定部等の破損を抑制すると共に、パイプでの圧縮空気の冷却性を向上させた空気圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、回転力を出力する駆動部により駆動されて空気を圧縮する圧縮空気生成部と、該圧縮空気生成部で生成された圧縮空気を貯留する空気タンクと、該圧縮空気生成部と該空気タンクとの間に介在し一端で該圧縮空気生成部に接続されると共に他端で該空気タンクに接続されて該圧縮空気生成部から該空気タンクへと該圧縮空気を送気するパイプと、を備え、該圧縮空気生成部には、該パイプを保持する固定具が弾性体を介して装着されている空気圧縮機を提供する。
【0006】
このような構成によると、パイプにおいて最大振幅位置が振動不能に固定されるため、パイプの振幅を低減することができる。振幅が低減することにより、パイプの空気タンクと圧縮空気生成部とにおける接続箇所で生じる負荷が低減され、接続箇所の破損を防止することができる。
【0007】
上記構成の空気圧縮機において、該固定具は、良熱導体を含んで構成されると共に、熱放散用フィンを有することが好ましい。
【0008】
このような構成によると、固定具によりパイプを更に冷却することができるため、パイプによる圧縮空気の冷却性を向上させ、圧縮空気の空気タンクへの充填効率を向上させることができる。
【0009】
また該圧縮空気生成部を冷却する冷却風を送風する送風ファンを更に有し、該熱放散用フィンは該冷却風に接する位置に配置されていることが好ましい。
【0010】
このような構成によると、固定具によるパイプの冷却性を更に向上させることができる。
【0011】
また該固定具は、該圧縮空気生成部に装着される基部と、該基部に弾性体を介して保持される保持部と、を有し、該パイプは、該基部と該保持部との間に挟持されて保持されることが好ましい。
【0012】
このような構成によると、パイプが弾性的に保持されるため、パイプを、潰すことなく容易に保持することができる。
【0013】
また該固定具において、該パイプを保持する箇所は、該パイプにおいて該固定具に保持される箇所の外形と一致するように形状化されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、安定してパイプを保持することができる。また固定具とパイプとの接触面積が大きくなるため、基部と保持部とを良熱導体で構成することにより、パイプの冷却効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の空気圧縮機によれば、パイプの振動を抑制してパイプの固定部等の破損を抑制すると共に、パイプでの圧縮空気の冷却性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気圧縮機の正面斜視図。
【図2】本発明の実施の形態に係る空気圧縮機のカバーを外した状態での正面斜視図。
【図3】本発明の実施の形態に係る空気圧縮機のカバーを外した状態での正面図。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】図3のV−V線に沿った部分断面図。
【図6】本発明の実施の形態に係る空気圧縮機の固定具の変形例に係る部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る空気圧縮機を図1乃至図5に基づき説明する。図1に示される空気圧縮機1は、圧縮空気を動力とする釘打ち機等の工具へ圧縮空気を供給する携帯型の空気圧縮機であり、図2に示されるように、タンク部2と、駆動部3と、圧縮空気生成部4と、制御回路部8とから主に構成されており、駆動部3、圧縮空気生成部4、制御回路部8は、図1に示されるようにハウジング1Aで覆われている。
【0018】
タンク部2は、図2に示されるように二本のタンク21、22とから主に構成されており、圧縮空気生成部4から供給される圧縮空気を最高圧力4.2MPa程度で貯留している。二本のタンク21、22は、それぞれ同形状であって両端部が閉塞された略円筒形状をなしており、その円筒の軸心が平行になるように並列配置され、軸方向一端側と他端側とにおいてそれぞれフレーム23(図3)で連結されていると共に、図示せぬ連結管により内部が連通している。以下の説明においては、円筒の軸方向を空気圧縮機1の前後方向とし、この前後方向と直交する方向であって二本のタンク21、22が並ぶ方向を左右方向とする。また前後方向及び左右方向と直交する方向を上下方向とする。タンク部2は、上下方向において空気圧縮機1の最下部に位置している。
【0019】
二本のタンク21、22それぞれの前端位置及び後端位置であって下側には、空気圧縮機1における載置部分となる防振支持用ゴム足21A、22Aが設けられており、軸方向一端及び他端(前端及び後端)に位置するフレーム23からは、上方に向けてハンドル23A、23Aがそれぞれ延出されている。
【0020】
タンク部2において、タンク21には、高圧側と低圧側とに対応した圧縮空気取り出し口であるカプラ24A、24Bが設けられており、これらカプラ24A、24Bにはホースを介して釘打機等の圧縮空気を動力として駆動される工具が接続される。カプラ24A、24Bのタンク21側には、減圧弁25A、25Bがそれぞれ設けられている。減圧弁25A、25Bにより、カプラ24A、24Bから吐出される圧縮空気の圧力が、上記最高圧力以下となる。カプラ24A、24Bの近傍には、圧力計26が設けられて吐出される圧縮空気の圧力をモニタしている。またタンク21には、後述の高圧側ピストン部6Bに接続されて圧縮空気が送気されるパイプ21Bが固定部21Cを介して接続されている。このパイプ21Bは、良熱導体である銅製であり、一端が後述の高圧側ピストン部6Bから延出されて、後述のクランクケース41上方かつ後述のファン42近傍を通って他端がタンク21に接続されている。このパイプ21Bは、一端と他端との間で最も振動しやすい箇所、即ち振動時に最も振幅が大きくなる箇所が、後述のクランクケース41上方かつ後述のファン42近傍位置になるように構成されている。またタンク21、22には、内部圧力が異常に高くなった場合に圧縮空気を大気中に吐出する図示せぬ安全弁が設けられている。
【0021】
駆動部3は、タンク部2上に載置された直流モータから構成され、図4に示されるようにステータ31と、ロータ32と、ロータ32と一体回転する出力軸部33とを備えており、出力軸部33の軸方向が前後方向と一致し、出力軸部33が前方に突出するようにタンク部2上であって、前後方向の略中心位置に配置されている。
【0022】
圧縮空気生成部4は、タンク部2上に載置され駆動部3に接続されるアルミ等の金属製のクランクケース41を枠体とし、主にクランク部であるクランク部5と、ピストン部6とを有しており、固定具7が装着されている。クランク部5は、クランクケース41内のクランク室41a内に配置され、クランクシャフト51と、クランクシャフト51に一体回転するように装着される第一クランクアーム52及び第二クランクアーム53とを備え、バランスウェイト54が付設されると共に第一クランクアーム52、第二クランクアーム53、バランスウェイト54を一体に固定するネジ55が設けられている。
【0023】
クランクシャフト51は、軸方向が前後方向と一致するように配置されて出力軸部33に一体回転するように接続されており、その前端近傍位置でクランクケース41に回転可能に軸支されている。クランクシャフト51の最前端は、クランクケース41から突出しており、この最前端位置にクランクケース41や駆動部3及び固定具7に冷却風を送風するファン42が同軸一体回転するように装着されている。クランクシャフト51において、第一クランクアーム52、第二クランクアーム53、及びバランスウェイト54が装着される箇所には、前後方向に延びる図示せぬ溝が穿設されており、この図示せぬ溝内にクランクシャフト51と第一クランクアーム52、第二クランクアーム53、及びバランスウェイト54とを同軸一体回転させるキー51Aが挿入されている。
【0024】
第一クランクアーム52は、円板状のカムであり、円板の軸心から外れた位置に、円板の軸心とは異なる軸心を有しクランクシャフト51及びキー51Aを挿入可能な第一貫通孔52aを有している。また第一クランクアーム52には、ネジ55が貫通する図示せぬ貫通孔が形成されている。
【0025】
第二クランクアーム53は、第一クランクアーム52と同径の円板状に構成されたカムであり、第一クランクアーム52の後面に当接する位置であって第一クランクアーム52と同位相となる位置に第一貫通孔52aと同形状の第二貫通孔53aが形成されており、第二貫通孔53aにクランクシャフト51及びキー51Aが挿入されてクランクシャフト51に装着されている。また第二クランクアーム53には、ネジ55が螺合すると共に、第一クランクアーム52の図示せぬ貫通孔と同軸の図示せぬネジ穴が形成されている。
【0026】
バランスウェイト54は、装着部54Aと、ウエイト部54Bとから構成されており、第一クランクアーム52の前面に当接するように装着されている。装着部54Aには、第一貫通孔52a、第二貫通孔53aと同形状を成しクランクシャフト51及びキー51Aが挿入される穿孔54aが形成されている。また装着部54Aには、第二クランクアーム53の図示せぬネジ穴と同軸の図示せぬ貫通孔が形成されている。ウエイト部54Bは、前後方向と直交する断面において、装着部54Aから延出されて設けられており、クランクシャフト51の軸心回りにおいて、第一クランクアーム52、第二クランクアーム53との重量バランスを取っている。
【0027】
ネジ55はバランスウェイト54の前面にフランジが当接し、装着部54Aの図示せぬ貫通孔、第一クランクアーム52の図示せぬ貫通孔を通過して第二クランクアーム53の図示せぬネジ穴に螺合している。このようにネジ55が螺合することにより、バランスウェイト54と第一クランクアーム52とを前後方向で一体に密着させると共に、第一クランクアーム52と第二クランクアーム53を一体に密着させる。
【0028】
ピストン部6は、第一クランクアーム52で駆動される低圧側ピストン部6Aと第二クランクアーム53で駆動される高圧側ピストン部6Bとから構成されており、低圧側ピストン部6Aで大気中より取り込んだ空気を圧縮すると共に圧縮した空気をパイプ6C(図3)を介して高圧側ピストン部6Bに吐出し、高圧側ピストン部6Bで吐出された空気を更に圧縮して圧縮空気を作成しパイプ21B(図2)を介してタンク部2に圧縮空気を吐出している。
【0029】
低圧側ピストン部6Aは、主に低圧側シリンダ61Aと低圧側コンロッド62Aと低圧側ピストン63Aとから構成されている。低圧側シリンダ61Aは、クランクケース41から図4紙面上において左方向に突出するようにクランクケース41に接続されており、クランク室41aに連通する低圧側圧縮室61aを画成している。また低圧側シリンダ61Aの先端には、大気中の空気を低圧側圧縮室61a内に取り入れる図示せぬ弁及びパイプ6C(図3)に接続されて圧縮した空気を後述の高圧側圧縮室61bに送気するバルブ61が接続されている。
【0030】
低圧側ピストン63Aは、低圧側圧縮室61a内径より小径に構成されて低圧側圧縮室61a内に配置され、クランク室41a側に向かって低圧側リップリング64A及び低圧側下部ピストン65Aが接続されている。低圧側リップリング64Aは、低圧側下部ピストン65Aを介してネジ66Aで低圧側ピストン63Aに固定されており、その外周が低圧側圧縮室61a内面と当接するように構成されて、低圧側圧縮室61a内の空気がクランク室41a及び外気に漏れることを抑制している。また、低圧側リップリング64Aは、低圧側ピストン63Aと低圧側圧縮室61a内面が直接接触して互いに損傷することを防止している。
【0031】
低圧側コンロッド62Aは、一端がベアリング67Aを介して第一クランクアーム52の外周に接続されると共に、他端が低圧側下部ピストン65Aに接続されており、第一クランクアーム52と共にクランクシャフト51の回転運動を低圧側ピストン63Aの往復運動に変換している。
【0032】
高圧側ピストン部6Bは、主に高圧側シリンダ61Bと高圧側コンロッド62Bと高圧側ピストン63Bとから構成されている。高圧側シリンダ61Bは、クランクケース41から図4紙面上において右方向に突出するようにクランクケース41に接続されており、クランク室41aに連通する高圧側圧縮室61bを画成している。また高圧側シリンダ61Bの先端には、パイプ6Cに接続されて低圧側圧縮室61aから吐出された空気を高圧側圧縮室61b内に取り入れるバルブ61D、及びパイプ21B(図2)に接続されて高圧側圧縮室61bで圧縮された圧縮空気をタンク部2に向けて吐出するバルブ61Eが接続されている。
【0033】
高圧側ピストン63Bは、高圧側圧縮室61b内径より小径に構成されて高圧側圧縮室61b内に配置され、クランク室41a側に向かって高圧側リップリング64B及び高圧側下部ピストン65Bが接続されている。高圧側リップリング64Bは、高圧側下部ピストン65Bを介してネジ66Bで高圧側ピストン63Bに固定されており、その外周が高圧側圧縮室61b内面と当接するように構成されて、高圧側圧縮室61b内の空気がクランク室41a及び外気に漏れることを抑制している。さらに、該高圧側リップリング64Bのクランクシャフト51側には、高圧側ピストン63Bと高圧側下部ピストン65Bで構成する空間に、耐摩耗性が優れた弾性材で構成されたサポートリング64Cが配設されている。サポートリング64Cの高圧側リップリング64B側の面は、半径方向外側が高圧側リップリング64B側にせり出した形状となっている。またサポートリング64Cは、高圧側コンロッド62Bが傾いたときに、高圧側リップリング64Bと高圧側ピストン63Bの外周面との問にはわずかな隙間が形成されるように構成されている。このような構成により、サポートリング64C、高圧側リップリング64Bの外周部が高圧側圧縮室61bの内周部を摺動するように接触し、高圧側リップリング64Bは、高圧側圧縮室61b内の圧縮中の空気がクランク室41a及び外気へ抜けることを防止するように、高圧側圧縮室61bを気密にシーリングすることができる。また、高圧側リップリング64Bおよび、サポートリング64Cは、高圧側ピストン63B及び高圧側下部ピストン65Bと高圧側圧縮室61b内面とが直接接触して互いに損傷することを防止している。
【0034】
高圧側コンロッド62Bは、一端がベアリング67Bを介して第二クランクアーム53の外周に接続されると共に、他端が高圧側下部ピストン65Bに接続されており、第二クランクアーム53と共にクランクシャフト51の回転運動を高圧側ピストン63Bの往復運動に変換している。
【0035】
固定具7は、図2に示されるように、クランクケース41の上面かつ前端位置であってファン42の後方位置に配置されてパイプ21Bを保持しており、主に基部71と保持部72とから構成されている。基部71はアルミ製であり、弾性体である樹脂シート7Aを介してクランクケース41上に載置され、後端位置にネジ73が貫通する孔71aが形成され、前端位置かつ上面位置に左右方向に延びる基部側保持溝71bが形成されている。基部側保持溝71bは、その内部にパイプ21Bが左右方向に延びるように配置された状態でパイプ21Bの外周と密着するように、パイプ21B外形とほぼ一致する形状を成している。
【0036】
ネジ73は、金属製のカラー73Aを介して孔71a内に挿入され、クランクケース41に形成されたネジ孔41bに螺合している。カラー73Aは樹脂性のものを使用することもできる。ネジ73のフランジと、基部71の上面であって孔71a周辺部分との間には、弾性体である樹脂シート73Bが配置されている。このように、基部71をクランクケース41に固定するネジ73と、クランクケース41との間には、すべて弾性体が介在しているため、クランクケース41の振動が基部71に伝播することが抑制される。また基部71の上面であって、基部が基部側保持溝71bの後方には、後述のネジ74が螺合するネジ孔71cが形成されている。
【0037】
保持部72は、基部71上に載置され、後端位置にネジ74が貫通する孔72aが形成され、前端位置かつ下面位置に左右方向に延びる保持部側保持溝72bが形成されている。保持部側保持溝72bは、基部側保持溝71bと対向し、かつ基部側保持溝71bと同様にパイプ21B外形と一致する形状を成すように形成されている。
【0038】
ネジ74は、カラー74Aを介して孔72a内に挿入され、基部71のネジ孔71cに螺合している。ネジ74のフランジと、保持部72の上面であって孔72a周辺部分との間には、ネジ74のフランジに対して保持部72を下側に位置する基部71に付勢する弾性体であるバネ74Bが介在している。保持部72は、バネ74Bで基部71に付勢される構造を成すことにより、保持部72と基部71との間にパイプ21Bを弾性的に挟持する構造を得ることができる。
【0039】
また保持部72において、保持部側保持溝72bの上方には、複数のフィン72Aが設けられている。フィン72Aは、図2に示されるように、前後方向を長手方向とする四枚の板が左右方向に並列して構成されており、各々の板の隙間にファン42からの冷却風が流れるように構成されている。
【0040】
制御回路部8は、駆動部3の後方に配置され、駆動部3のオン・オフの制御を行っている。また制御回路部8には、主電源スイッチ8Aが設けられている。
【0041】
上記構成の空気圧縮機1において、圧縮空気を生成するには、主電源スイッチ8Aをオンにして駆動部3を駆動してクランクシャフト51を回転し、低圧側ピストン63A、高圧側ピストン63Bを往復動させる。この往復動に係る工程のうち、低圧側ピストン63A、高圧側ピストン63Bが低圧側圧縮室61a、高圧側圧縮室61b内の上死点から下死点へ下降運動する吸い込み工程において、外部空気が低圧側圧縮室61aに吸い込まれると共に、低圧側圧縮室61a内で圧縮された空気が高圧側圧縮室61b内に吸い込まれる。一方、低圧側ピストン63A、高圧側ピストン63Bが低圧側圧縮室61a、高圧側圧縮室61b内の下死点から上死点へ上昇運動する圧縮工程においては、低圧側ピストン63A、高圧側ピストン63Bが低圧側圧縮室61a、高圧側圧縮室61b内の吸い込み空気を圧縮し、圧縮空気を生成する。さらに、低圧側ピストン63A、高圧側ピストン63Bが低圧側圧縮室61a、高圧側圧縮室61bの上死点へ達する吐出工程において生成された圧縮空気は、高圧側圧縮室61bに向けて吐出されると共に、タンク部2に向けて吐出される。
【0042】
以上の吸い込み工程、圧縮工程および吐出工程を低圧側ピストン63A、高圧側ピストン63Bの往復運動により繰り返すことによって、圧縮空気生成部4よりタンク部2に許容最高圧力の圧縮空気を供給することができる。この圧縮空気を製造する工程においては、低圧側ピストン部6A及び高圧側ピストン部6Bが動作するが、この動作には振動が伴う。パイプ21Bは、両端に位置する固定部21C及びバルブ61Eで保持されている構造であるため、この振動によって揺さぶられて同様に振動し、固定部21C及びバルブ61Eに破損等が生じるおそれがある。しかし、最も大きな振幅が発生しやすい位置で、固定具7により保持することにより、パイプ21Bの振幅を低減し、固定部21C及びバルブ61Eに作用する負担を低減して固定部21C及びバルブ61Eの破損を防止することができる。
【0043】
またパイプ21Bを流れる圧縮空気は、圧縮空気生成部4において常温常圧の空気が圧縮されて生成されるため、その温度が高温になる。この高温の圧縮空気がタンク部2に規定圧力で貯留された場合には、その後のタンク部2からの熱放散による圧縮空気の温度低下に伴い圧力低下し、空気圧縮機1の性能を発揮できない場合がある。これに対して、パイプ21B及びパイプ21Bを保持する固定具7を良熱導体から構成し、更に固定具7にフィン72Aを備えることによりパイプ21B内を流れる圧縮空気の温度を低下させ、良好にタンク部2内に圧縮空気を貯留することができる。
【0044】
固定具7において、パイプ21Bを保持する基部側保持溝71b及び保持部側保持溝72bは、パイプ21B外形よりもわずかに大きい形状である。よって、パイプ21Bとの接触面積が広いため、パイプ21Bから固定具7に伝わる熱量を多くすることができ、より好適にパイプ21Bを流れる圧縮空気の温度を低下させることができ、パイプ21Bの冷却効率を高めることができる。また接触面積が広くなるため、固定具7からパイプ21Bに加えられる単位面積当たりの圧力を低減することができ、パイプ21Bが固定具7による保持により破損することがない。特に本実施の形態では、バネ74Bにより、保持部72と基部71とでパイプ21Bが挟持される構造であり、パイプ21Bが弾性的に保持されるため、パイプ21Bが潰れることが抑制される。
【0045】
また、図6に示すように、パイプ21Bの外側に熱伝導性が高いシート状の保護部材80を設け、保護部材80を介して保持部72と基部71でパイプ21Bを挟む構成としてもよい。保護部材80を設けることで、パイプ21Bと保持部72及び基部71との間の摩擦からパイプ21Bを保護することができる。この保護は空気圧縮機1の作動時に顕著である。保護部材80は熱伝導性の高い材質であることが望ましく、金属のほか樹脂素材を用いることができる。
【0046】
本発明による空気圧縮機は、上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば本発明による空気圧縮機1では、タンク部2と圧縮空気生成部4との間に位置するパイプ21Bを保持していたが、これに限らず、圧縮空気生成部4の振動により振幅が大きくなるパイプであるならば、パイプ21Bに限らず、他のパイプを保持してもよい。またパイプ21Bが高強度の構造体である圧縮空気生成部4のクランクケース41上を通過するため、クランクケース41に固定具7を設けたが、これに限らず、高強度の構造体となる箇所、例えばフレーム23近傍にパイプ21Bが位置するならば、フレーム23に固定具7を設けてパイプ21Bを保持してもよい。また固定具7は、冷却性を考慮してファン42の直下流側に配置したが、ファン42の冷却風は、ハウジング1A内において駆動部3付近まで流れるため、必ずしもこの位置に拘ることはない。
【符号の説明】
【0047】
1:空気圧縮機 1A:ハウジング 2:タンク部 3:駆動部 4:圧縮空気生成部
5:クランク部 6:ピストン部 6A:低圧側ピストン部 6B:高圧側ピストン部
6C:パイプ 7:固定具 7A:樹脂シート 8:制御回路部
8A:主電源スイッチ 21:タンク 21A:防振支持用ゴム足 21B:パイプ
21C:固定部 23:フレーム 23A:ハンドル 24A:カプラ
25A:減圧弁 26:圧力計 31:ステータ 32:ロータ 33:出力軸部
41:クランクケース 41a:クランク室 41b:ネジ孔 42:ファン
51:クランクシャフト 51A:キー 52:第一クランクアーム
52a:第一貫通孔 53:第二クランクアーム 53a:第二貫通孔
54:バランスウェイト 54A:装着部 54B:ウエイト部 54a:穿孔
55:ネジ 61:バルブ 61A:低圧側シリンダ 61B:高圧側シリンダ
61D:バルブ 61E:バルブ 61a:低圧側圧縮室 61b:高圧側圧縮室
62A:低圧側コンロッド 62B:高圧側コンロッド 63A:低圧側ピストン
63B:高圧側ピストン 64A:低圧側リップリング 64B:高圧側リップリング
64C:サポートリング 65A:低圧側下部ピストン 65B:高圧側下部ピストン
66A:ネジ 66B:ネジ 67A:ベアリング 67B:ベアリング 71:基部
71a:孔 71b:基部側保持溝 71c:ネジ孔 72:保持部 72A:フィン
72a:孔 72b:保持部側保持溝 73:ネジ 73A:カラー
73B:樹脂シート 74:ネジ 74A:カラー 74B:バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力を出力する駆動部により駆動されて空気を圧縮する圧縮空気生成部と、
該圧縮空気生成部で生成された圧縮空気を貯留する空気タンクと、
該圧縮空気生成部と該空気タンクとの間に介在し一端で該圧縮空気生成部に接続されると共に他端で該空気タンクに接続されて該圧縮空気生成部から該空気タンクへと該圧縮空気を送気するパイプと、を備え、
該圧縮空気生成部には、該一端と該他端との間で該パイプを保持する固定具が弾性体を介して装着されていることを特徴とする空気圧縮機。
【請求項2】
該固定具は、良熱導体を含んで構成されると共に、熱放散用フィンを有することを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項3】
該圧縮空気生成部を冷却する冷却風を送風する送風ファンを更に有し、
該熱放散用フィンは該冷却風に接する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項4】
該固定具は、該圧縮空気生成部に装着される基部と、該基部に弾性体を介して保持される保持部と、を有し、
該パイプは、該基部と該保持部との間に挟持されて保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の空気圧縮機。
【請求項5】
該固定具において、該パイプを保持する箇所は、該パイプにおいて該固定具に保持される箇所の外形と略一致するように形状化されていることを特徴とする請求項4に記載の空気圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7354(P2013−7354A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141583(P2011−141583)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】