説明

空気循環装置およびコンピュータ用筐体と防塵フィルタの目詰まり検知方法

【課題】 防塵フィルタの目詰まりの検知に必要とされるセンサに汚れや劣化が生じにくく、コンピュータ等を始めとする精密機器の筐体の冷却手段としても利用できる空気循環装置を提供する。
【解決手段】 防塵フィルタ3を介して外気を取り込む吸気ファンF1と空気排出口4に設けられた排気ファンF2とを併用し、防塵フィルタ3に目詰まりが生じていない状態で筐体1内の気圧が外気圧と等しくなるようにして筐体1内に清浄な空気を循環させると共に、防塵フィルタ3における目詰まりの発生を、吸気ファンF1および排気ファンF2の配設位置から離間した位置に設けられた空気吸入口5に設置されたセンサS1によって検出される外気の流入に基いて検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気循環装置およびコンピュータ用筐体と防塵フィルタの目詰まり検知方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
吸気ファンの空気取り入れ口に設けられた防塵フィルタの目詰まりを検知する機能を備えた空気循環装置としては、例えば、特許文献1に開示される空気清浄機付温風暖房装置や特許文献2に開示される空気清浄機が公知である。
【0003】
このうち、特許文献1のものは、空気清浄ファンの空気取り入れ口を防塵フィルタとバイパス風路とで構成し、このバイパス風路にシャッタと風速センサとを設け、定期的にシャッタを開いて空気清浄ファンを最大風量で駆動し、風速センサで検出される風速の増大に基いて防塵フィルタの目詰まりを検知するようにしている。つまり、目詰まりの発生により防塵フィルタの空気抵抗が増大してバイパス風路側の空気の風速が増大することに着目し、この風速の増大の有無に基いて防塵フィルタの目詰まりの発生を検知しようというのが、その趣旨である。
しかしながら、このような構成を適用した場合、防塵フィルタの目詰まりの発生の有無を検知するために定期的にシャッタを開く必要があり、この際、防塵フィルタを通らない外気が相当な風速で装置内部に流入することになるので、このような構造のものをコンピュータ等を始めとする精密機器の筐体の冷却手段として転用すると、内部の電気部品等に劣化や損傷が生じる恐れがある。また、風速センサ自体も高速な外気の流れに晒されるので、風速センサへの汚れの付着や風速センサの検出精度の劣化といった弊害も心配される。
【0004】
一方、特許文献2のものは、空気抵抗の低い主フィルタと該主フィルタよりも相対的に空気抵抗の高い副フィルタとを空気取り入れ口に併設し、各防塵フィルタに対する空気の流入量を分配し、副フィルタ側に設けられた感圧スイッチによって副フィルタに対する空気の流入量の増大、つまり、主フィルタの目詰まりを検知するものである。
このような構成を適用した場合、感圧スイッチの設置箇所には副フィルタが設けられているので、前述した特許文献1におけるバイパス風路のように、検出手段(風速センサ)の設置箇所から汚れた外気が浸入するといった心配はないが、空気抵抗の高い副フィルタに設置された感圧スイッチが作動する程度に副フィルタに対する空気の流入量が増大してからでないと主フィルタの目詰まりが検知されないといった問題がある。
本来、この構成は、十分な送風能力を備えた送風機を有する家庭用あるいは車載用の空気清浄機に用いられるべきものであり、このような構造をコンピュータ等を始めとする精密機器の筐体の冷却手段に転用すると、ファンを駆動するモータの過負荷といった問題が心配される。
また、副フィルタの感圧スイッチは、副フィルタの外側、つまり、外気と直に接する部分に設けられているので、前記と同様、汚れの付着に伴う感圧スイッチの検知精度の劣化といった弊害は免れない。
【0005】
【特許文献1】特開2000−320897号公報(段落番号0019,図1)
【特許文献2】特開平7−213840号公報(段落番号0013,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、防塵フィルタの目詰まりの検知に必要とされるセンサに汚れや劣化が生じにくく、コンピュータ等を始めとする精密機器の筐体の冷却手段としても利用できる空気循環装置および此れを備えたコンピュータ用筐体と防塵フィルタの目詰まり検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空気循環装置は、筐体内に外気を吸入する吸気ファンと、該吸気ファンの空気取り入れ口に設けられた防塵フィルタと、前記筐体内の空気を外部に排出する空気排出口とを備えた空気循環装置であり、前記課題を達成するため、特に、
前記空気排出口に、前記筐体内の空気を外部に排出するための排気ファンを配備し、前記吸気ファンおよび前記排気ファンの配設位置から離間させて前記筐体に空気吸入口を設けると共に、該空気吸入口に外気の流入を検出するセンサを設置し、該センサによって検出される外気の流入状態に基いて前記防塵フィルタにおける目詰まりの有無を検知するようにしたことを特徴とする構成を有する。
【0008】
以上の構成により、吸気ファンが防塵フィルタを介して筐体内に外気を取り込む一方、空気排出口に設けられた排気ファンが筐体内の空気を外部に排出することで、筐体内に清浄な空気を循環させる。
防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態では、吸気ファンによって筐体に取り込まれる外気の量と排気ファンによって外部に排出される空気の量とが一致して筐体内の気圧が外気圧と等しくなるため、筐体の空気吸入口を介して筐体内に外気が流入することはない。このため、筐体の空気吸入口に設けられたセンサが空気吸入口を通る空気の流れに晒されることはなく、また、このセンサは、吸気ファンおよび排気ファンの配設位置から離間した位置に設置されているので、吸気ファンによって筐体内に吸入される外気の流れや排気ファンによって筐体から排出される空気の流れにも直には晒されない。従って、センサへの汚れの付着や汚れに伴うセンサの検出精度の劣化といった問題が解消される。同時に、筐体の内部に吸入される外気は防塵フィルタを通った清浄な空気のみとなるから、筐体内部の電気部品等に劣化や損傷が生じるといった問題も解消され、コンピュータ等を始めとする精密機器の筐体の冷却手段として好適である。
そして、長期の使用もしくは劣悪な環境下での使用によって防塵フィルタに目詰まりが生じると、防塵フィルタの空気抵抗が増大し、吸気ファンによって単位時間当たりに筐体内に取り込まれる外気の量が減少する。しかし、排気ファンによる空気の排出能力には変化が生じないので、筐体内の気圧が外気圧に比べて相対的に低下し、この気圧差を補償すべく、筐体の空気吸入口を介して外気が筐体内に流入する。空気吸入口に設置されたセンサは空気吸入口からの外気の流入を防塵フィルタの目詰まりの発生として検知する。このように、吸気ファンと排気ファンの協調動作によって外気圧と動的に等しく保たれていた筐体内の気圧が低下して空気吸入口から外気が流入することに基いて防塵フィルタの目詰まりを検知するようにしているので、防塵フィルタの目詰まりを早期に発見することが可能となる。この結果、吸気ファンや排気ファンを駆動するモータの過負荷といった問題も改善され、これらのファンの駆動源として小型のモータを利用したコンピュータ等の精密機器の筐体の冷却手段としても好適である。
【0009】
吸気ファンと排気ファンの協調動作によって筐体内の気圧を外気圧と等しく保つ必要上、防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態において、吸気ファンによる単位時間当たりの外気の吸入量と排気ファンによる単位時間当たりの空気の排出量とが略一致するように、吸気ファンおよび排気ファンの空気搬送量を予め設定しておくことが望ましい。
【0010】
具体的には、吸気ファンの径を排気ファンの径よりも大型化する、または、吸気ファンのピッチを排気ファンのピッチよりも強めにする、あるいは、吸気ファンの回転速度を排気ファンの回転速度よりも高めにする等の手段もしくは其の組み合わせで、防塵フィルタの空気抵抗によって生じる外気の吸入量の損失を補償することができる。
【0011】
また、空気吸入口は、空気取り入れ口(吸気ファン)を設けた筐体の一面と同一面に設けるとよい。
【0012】
一般に、筐体は直方体状の形態を呈するので、空気取り入れ口(吸気ファン)を設けた面と直交する四面では筐体内に吸入された空気が層流化して流れる傾向にあり、これらの面に空気吸入口を設けると筐体内の空気の流れによって空気吸入口から外気が吸い込まれる可能性があり、また、空気吸入口に設けられたセンサが筐体内の空気の流れに晒されるといった可能性もある。これに対し、空気取り入れ口(吸気ファン)を設けた筐体の一面では筐体内の空気が層流化して流れる可能性は低いので、筐体内の空気の流れによる外気の吸い込み等の弊害を効果的に予防することがきる。
【0013】
更に、センサによって検出される外気の流入速度と予め設定された許容値とを比較し、外気の流入速度が許容値を超えると目詰まりの発生を検知する制御部と、該制御部によって目詰まりの発生が検知されたときに異常を表示する異常表示部とを備えることが望ましい。
【0014】
既に述べた通り、この発明では、筐体内の気圧が低下して空気吸入口から外気が流入することに基いて防塵フィルタの目詰まりを検知するようにしているので、防塵フィルタの目詰まりを早期に発見することが可能であるが、センサによって検出される外気の流入速度と比較される許容値の大小を調整することで、目詰まりの発生と見做す際の判定基準を任意に設定することができる。異常表示部は、制御部によって目詰まりの発生が検知された時点、つまり、センサによって検出される外気の流入速度が予め設定された許容値を超えた時点で目詰まりの発生を意味する異常表示を行う。
【0015】
本発明のコンピュータ用筐体は、前述の空気循環装置を備えたコンピュータ用筐体である。
【0016】
既に述べた通り、吸気ファンや排気ファンを駆動するモータの過負荷といった問題が改善され、これらのファンの駆動源として小型のモータを利用して筐体内のマイクロプロセッサやマザーボード等の発熱する電気部品を効果的に冷却することができ、また、筐体の内部に吸入される空気が清浄な外気のみとなることから、筐体内部の電気部品等に劣化や損傷が生じるといった問題も解消される。
【0017】
空気循環装置を備えたコンピュータ用筐体にあっては、センサによって検出される外気の流入速度と予め設定された許容値とを比較して目詰まりの発生を検知する制御部として当該コンピュータ用筐体のマイクロプロセッサを利用することができ、また、目詰まりの発生を異常として表示する異常表示部としては、当該コンピュータ用筐体のモニタを利用することができる。
【0018】
空気循環装置に専用の制御部や異常表示部を独立的に配備する必要がないので、装置全体の製造コストの軽減化が可能である。
【0019】
更に、この制御部は、前記センサによって検出される外気の流入速度が予め設定された許容値を連続的に超えた場合に目詰まりの発生を検知するように構成することが望ましい。
【0020】
センサによって検出される外気の流入速度が予め設定された許容値を連続的に超えた場合に限って目詰まりの発生を検知することにより、吸気ファンや排気ファンの瞬間的な回転異常による筐体内の気圧の低下が防塵フィルタの目詰まりとして誤検知されるのを防止することができる。
【0021】
本発明における防塵フィルタの目詰まり検知方法は、筐体の空気取り入れ口に配備された防塵フィルタに生じる目詰まりを検知するための目詰まり検知方法であり、前記と同様の課題を達成するため、
前記防塵フィルタを介して筐体に外気を取り込む吸気ファンと前記筐体の空気排出口に設けられた排気ファンとを併用し、前記防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態で前記筐体内の気圧が外気圧と等しくなるようにして前記筐体内に清浄な空気を循環させると共に、
前記防塵フィルタにおける目詰まりの発生を、前記吸気ファンおよび排気ファンの配設位置から離間させて前記筐体に設けられた空気吸入口からの外気の流入の程度に基いて、
前記外気の流入の程度が予め決められた範囲を超えた場合に、目詰まりの発生として検知することを特徴とした構成を有する。
【0022】
防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態で筐体内の気圧が外気圧と等しくなるようにして筐体内に清浄な空気を循環させるための方法あるいは手段については既に述べた。また、空気吸入口からの外気の流入の程度に基き、外気の流入の程度が予め決められた範囲を超えた場合に目詰まりの発生として検知するための方法あるいは手段としては、前述した通り、外気の流入を検出するセンサ等が利用できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、防塵フィルタを介して外気を取り込む吸気ファンと空気排出口に設けられた排気ファンとを併用し、防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態で筐体内の気圧が外気圧と等しくなるようにして筐体内に清浄な空気を循環させると共に、防塵フィルタにおける目詰まりの発生を、吸気ファンおよび排気ファンの配設位置から離間した位置に設けられた空気吸入口に設置されたセンサによって検出される外気の流入に基いて検知するようにしているので、防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態で空気吸入口を介して筐体内に外気が流入することはない。
従って、センサが空気吸入口を通る空気の流れに晒されることはなく、また、吸気ファンによって筐体内に吸入される外気の流れや排気ファンによって筐体から排出される空気の流れにセンサが直に晒されることもなくなり、センサへの汚れの付着や汚れに伴うセンサの検出精度の劣化といった問題が解消され、しかも、筐体の内部に吸入される外気は防塵フィルタを通った清浄な空気のみとなるから、筐体内部の電気部品等に劣化や損傷が生じるといった問題も解消される。
更に、防塵フィルタに目詰まりが生じると、防塵フィルタの空気抵抗が増大して筐体内の気圧が外気圧に比べて相対的に低下し、筐体の空気吸入口を介して筐体内に流入する外気の流れをセンサが防塵フィルタの目詰まりの発生として検知するので、防塵フィルタの目詰まりを早期に発見することが可能となり、吸気ファンや排気ファンを駆動するモータの過負荷といった問題も改善され、これらのファンの駆動源として小型のモータを利用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の目詰まり検知方法および空気循環装置をコンピュータ用筐体(以下、単に筐体という)に適用した場合の実施形態について簡略化して示した平断面図であり、図2は、空気循環装置の制御部として機能するマイクロプロセッサを備えたマザーボード等の構成を簡略化して示した機能ブロック図である。
【0025】
筐体1は、図1に示されるように直方体状の形態を呈し、その一側面1aの側端部には、筐体1内に外気を吸入するための吸気ファンF1と、吸気ファンF1のための空気取り入れ口2と、防塵フィルタ3とが重合して設けられている。
また、この一側面1aと対面する他の一側面1bの側端部には空気排出口4が備えられ、この空気排出口4に、筐体1内の空気を強制的に外部に排出するための排気ファンF2が配備されている。
図1に示される通り、吸気ファンF1および空気取り入れ口2と排気ファンF2および空気排出口4とは、実質的に、筐体1の対角線上に位置する。
【0026】
また、筐体1の一側面1a(空気取り入れ口2を設けた面と同一面)には、吸気ファンF1および排気ファンF2の配設位置から離間するようにして空気吸入口5が設けられ、この空気吸入口5に、センサS1が設置されている。センサS1は、空気吸入口5を介して流入する外気の流れを検出するためのもので、具体的には、空気吸入口5を介して流入する外気の風速を検出する構成を有する。
【0027】
吸気ファンF1はモータM1で回転駆動され、また、排気ファンF2はモータM2で回転駆動される。
【0028】
符号6は筐体1内に配備されたマザーボードであり、図2に示されるように、少なくとも、コンピュータの主要部を構成する演算手段としてのマイクロプロセッサ(以下、単にCPUという)7と、ROM8およびRAM9といった記憶手段を有し、更には、外部装置と接続するためのインターフェイス10や入出力回路11およびハードディスクドライブ12等の大容量記憶手段を備える。
【0029】
筐体1がノートパソコン等である場合には、モニタ13およびキーボード14は筐体1と一体であり、また、筐体1が通常のパーソナルコンピュータあるいはワークステーション等である場合には、一般に、モニタ13およびキーボード14は筐体1とは別体に構成される。何れの場合も、モニタ13は、防塵フィルタ3における目詰まりの発生を表示する異常表示部としての機能を兼ね備える。
【0030】
吸気ファンF1,排気ファンF2のモータM1,M2は、入出力回路11とドライバ15,16を介してCPU7によって回転速度を制御され、また、センサS1で検出された風速VはA/D変換器17によってディジタル変換され、入出力回路11を介してCPU7に読み込まれる。
【0031】
また、温度センサS2は筐体1の内部温度を検出するためにマザーボード6上に配備され、温度センサS2によって検出された検出温度Tは、A/D変換器18によってディジタル変換され、入出力回路11を介してCPU7に読み込まれる。温度センサS2をCPU7の近傍に配備し、専ら、CPU7の発熱を検出するようにしてもよい。
【0032】
この実施形態では、防塵フィルタ3に目詰まりが生じていない状態で吸気ファンF1による単位時間当たりの外気の吸入量と排気ファンF2による単位時間当たりの空気の排出量とが略一致するように、吸気ファンF1および排気ファンF2の空気搬送量が予め定められている。
具体的には、図1に示されるようにして吸気ファンF1の径を排気ファンF2の径よりも大型化すること、および、図3に示されるようにして吸気ファンF1の回転速度VF1を排気ファンF2の回転速度VF2よりも高めに設定することで、防塵フィルタ3の空気抵抗によって生じる外気の吸入量の損失を補償し、単位時間当たりの外気の吸入量と単位時間当たりの空気の排出量とを略一致させている。
この他にも、他の条件を同一として吸気ファンF1,排気ファンF2の径のみを適正に選択すること、他の条件を同一として吸気ファンF1,排気ファンF2のピッチのみを適正に選択すること、他の条件を同一として吸気ファンF1,排気ファンF2の回転速度VF1,VF2のみを適正に選択すること、あるいは、これらの操作の2以上の組み合わせによって、防塵フィルタ3に目詰まりが生じていない状態における単位時間当たりの外気の吸入量と単位時間当たりの空気の排出量とを略一致させることが可能である。
【0033】
更に、この実施形態では、筐体1に内蔵されたマザーボード6等の電気部品の冷却を適正化するため、図3に示されるように、温度センサS2によって検出される検出温度Tに応じ、筐体内温度である検出温度Tが増加すればするほど、吸気ファンF1,排気ファンF2の回転速度VF1,VF2も増加するように調整される。
この結果、吸気ファンF1および排気ファンF2における単位時間当たりの空気搬送量は検出温度Tに応じて増加するが、検出温度Tがどのような値であっても、単位時間当たりの外気の吸入量と単位時間当たりの空気の排出量とが略一致するように、各検出温度Tに対応する吸気ファンF1,排気ファンF2の回転速度VF1,VF2が設定されている。
また、図3中の設定温度Tはマザーボード6等に対する冷却を行わなくても筐体1や内部の電気部品に支障を生じない筐体内温度の最大値に相当する値である。温度センサS2によって検出される検出温度Tが設定温度T以下であれば、マザーボード6等の電気部品の冷却は必要ないので、吸気ファンF1,排気ファンF2は駆動されない。
風速の許容値ΔVは、防塵フィルタ3に目詰まりが発生しているか否かを判定する際の比較値として利用される値であり、センサS1によって検出される風速Vが連続的に許容値ΔVを超えた時点で、防塵フィルタ3における目詰まりの発生を検知するようになっている。吸気ファンF1,排気ファンF2の回転速度VF1,VF2が高くなれば、外乱等に起因する回転速度のムラで外気の吸入量と空気の排出量との間に瞬間的な偏差が生じる可能性も高くなるので、許容値ΔVは、吸気ファンF1,排気ファンF2の回転速度VF1,VF2の増加に合わせて増大するように設定されている。
これらの情報を内包した図3の線図は、関数として、あるいは、マップ状のデータとしてROM8に予め記憶されている。
【0034】
この実施形態では、外気の流入状態を示す値として、空気吸入口5を介して流入する外気の風速Vを利用しているが、風量あるいは風圧等によって外気の流入状態を捉えることも可能であり、従って、風速を検出するセンサS1に代えて風量や風圧等を検出するセンサ(風量センサ,風圧センサ等)を転用しても構わない。
【0035】
以上の構成において、この実施形態の空気循環装置の主要部は、吸気ファンF1,空気取り入れ口2,防塵フィルタ3,空気排出口4,排気ファンF2,空気吸入口5、および、外気の流入状態を検出するためのセンサS1によって形成される。
また、センサS1によって検出される風速Vと予め設定された許容値ΔVとを比較し、風速Vが許容値ΔVを連続的に超えた場合に防塵フィルタ3における目詰まりの発生を検知する制御部は、筐体1に内蔵されたマザーボード6が有するCPU7によって構成され、筐体1が備えるモニタ13が、制御部であるCPU7からの指令を受けて防塵フィルタ3の目詰まりの発生を表示する異常表示部として機能する。
制御部として機能するCPU7と異常表示部として機能するモニタ13および上述の主要部を合わせたものが、この実施形態における空気循環装置であり、この空気循環装置がコンピュータ用筐体1に実装されている。
【0036】
図4は、空気循環装置の制御部として機能するCPU7が所定周期毎に繰り返し実行する目詰まり検出処理の概略を示したフローチャートである。この処理は、CPU7のバックグラウンド処理として実行され、他のアプリケーションプログラム等の実行を妨げないように配慮されている。
【0037】
次に、図4を参照して、この実施形態の空気循環装置の動作を具体的に説明する。
【0038】
空気循環装置の制御部として機能するCPU7は、所定周期毎に繰り返し実行される目詰まり検出処理において、まず、温度センサS2によって検出されている検出温度Tを読み込み(ステップa1)、この値が設定温度Tに達しているか否か、つまり、吸気ファンF1,排気ファンF2を駆動してマザーボード6等の電気部品を冷却する必要があるか否かを判定する(ステップa2)。
検出温度Tが設定温度Tに達しておらずステップa2の判定結果が偽となった場合には、吸気ファンF1,排気ファンF2を駆動してマザーボード6等の電気部品を冷却する必要はない。また、吸気ファンF1,排気ファンF2が駆動されていない状況下では、防塵フィルタ3の目詰まりの有無に関わりなく筐体1内の気圧は外気圧と一致し、この発明の作用原理上、防塵フィルタ3の目詰まりの検知も不能となるため、CPU7は、この周期の目詰まり検出処理をこのまま終了する。
【0039】
一方、検出温度Tが設定温度Tを超えてステップa2の判定結果が真となった場合には、吸気ファンF1,排気ファンF2を駆動してマザーボード6等の電気部品を冷却する必要があることを意味するので、CPU7は、検出温度Tに対応する回転速度VF1,VF2をROM8に記憶されている関数あるいはマップ状のデータに従って求め(図3参照)、回転速度VF1,VF2を達成すべくモータM1,M2を制御し、吸気ファンF1,排気ファンF2を回転速度VF1,VF2で駆動して筐体1の内部に外気を循環させる(ステップa3)。
【0040】
次いで、CPU7は、検出温度Tに対応する風速の許容値ΔVをROM8に記憶されている関数あるいはマップ状のデータに従って求め(ステップa4,図3参照)、更に、現時点でセンサS1によって検出されている風速Vを読み込み(ステップa5)、この値が許容値ΔVに達しているか否か、要するに、防塵フィルタ3の目詰まりによって吸気ファンF1による外気の取り込み量が制限されている可能性があるか否かを判定する(ステップa6)。
【0041】
前述した通り、この実施形態では、防塵フィルタ3に目詰まりが生じていない状態で吸気ファンF1による単位時間当たりの外気の吸入量と排気ファンF2による単位時間当たりの空気の排出量とが略一致するように吸気ファンF1,排気ファンF2の径や回転速度VF1,VF2が設定されているので、防塵フィルタ3に目詰まりがない状態では筐体1内の気圧と外気圧とが略一致する。この場合、空気吸入口5を介して筐体1内に外気が流入することはないのでステップa6の判定結果は偽となる。
【0042】
ここで、ステップa6の判定結果が偽となった場合、つまり、空気吸入口5を介して筐体1内に流入する外気の風速Vが許容値ΔVに達していない場合には、実用上の問題となる目詰まりが防塵フィルタ3に発生していないことは明らかであるから、CPU7は、工場出荷時にリセット状態に設定された異常検出フラグfのリセット状態を保持したまま、あるいは、以前の処理周期で一旦セットされた異常検出フラグfを改めてリセットして(ステップa7)、この周期の目詰まり検出処理をこのまま終了する。
【0043】
これに対し、防塵フィルタ3に目詰まりが生じている状態では、防塵フィルタ3における空気抵抗の増大によって吸気ファンF1における単位時間当たりの外気の取り込み量が制限される一方、排気ファンF2による空気の排出量は何らの制限も受けないので、筐体1内の気圧が外気圧に比べて相対的に低下して負圧となり、この気圧差を補償すべく、筐体1の空気吸入口5を介して外気が筐体1内に流入し、この際の外気の流入速度つまり風速VがセンサS1によって検出されることになる。そして、この目詰まりが一定の限度に達すると、空気吸入口5を介して筐体1内に流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超えてステップa6の判定結果が真となる。
しかし、吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常、例えば、吸気ファンF1の一時的な回転速度の低下あるいは排気ファンF2の一時的な回転速度の上昇、もしくは、これらの現象の組み合わせによって筐体1内の気圧が一時的に低下することも有り得るので、風速Vが許容値ΔVを超えた時点で直ちに目詰まりの発生と断定するのは必ずしも適当ではない。
【0044】
従って、ステップa6の判定結果が真となり、空気吸入口5を介して筐体1内に流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超えたことが確認された場合には、CPU7は、その原因が、防塵フィルタ3の目詰まりによるものであるのか、吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常によるものであるのかを識別するための処理を実行する。
【0045】
この場合、CPU7は、まず、この時点で異常検出フラグfが既にセットされているか否か、つまり、少なくとも前回の処理周期におけるステップa6の判定結果が真となっていたか否かを判定する(ステップa8)。
【0046】
ここで、ステップa8の判定結果が偽となり、異常検出フラグfがセットされていないことが確認された場合には、少なくとも、前回の処理周期においては空気吸入口5を介して筐体1内に流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超える現象が発生していなかったことを意味するので、CPU7は、この現象の連続発生回数を計数するカウンタCに初期値1を改めてセットすると共に(ステップa9)、異常検出フラグfをセットして当該現象の新たな発生を記憶して(ステップa10)、この周期の目詰まり検出処理を終了する。つまり、空気吸入口5を介して流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超えた段階で直ちに防塵フィルタ3の目詰まりを検知するわけではない。
【0047】
一方、ステップa8の判定結果が真となり、異常検出フラグfがセットされていることが確認された場合には、空気吸入口5を介して筐体1内に流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超える現象が少なくとも前回の処理周期から継続して発生していることを意味するので、CPU7は、カウンタCの値を1インクリメントし、この現象の連続発生回数を更新して記憶する(ステップa11)。
【0048】
次いで、CPU7は、カウンタCの現在値が予め設定された判定値Nに達しているか否か、つまり、空気吸入口5から流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超える現象が吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常によって生じたものであるのか、防塵フィルタ3の目詰まりによって生じたものであるのかを判定する(ステップa12)。
なお、判定値Nは、空気吸入口5から流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超えた原因を識別するための判定値であり、予め実験等によって適正な値を求めておくものとする。
【0049】
ここで、ステップa12の判定結果が偽となった場合、つまり、カウンタCの現在値が判定値Nに達していない場合には、前述の現象が吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常に起因して発生した可能性があるので、CPU7は、異常検出フラグfのセット状態とカウンタCの現在値を保持し、このまま当該周期の目詰まり検出処理を終了する。
【0050】
一方、ステップa12の判定結果が真となってカウンタCの現在値が判定値Nに達していることが確認された場合には、流入する外気の風速Vが許容値ΔVを超える現象がN回の処理周期に亘って連続的に検出されたことを意味する。この場合、吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常ではなく、防塵フィルタ3の定常的な目詰まりによって外気の吸入量が制限されて筐体1内の気圧が低下しているものと考えられるので、CPU7は、この時点を以って防塵フィルタ3における目詰まりの発生を検知し、異常表示部として機能するモニタ13の表示画面に目詰まりの発生を意味する警告メッセージを表示する(ステップa13)。
【0051】
なお、上述の処理において、カウンタCの値が1≦C<Nとなっている間に筐体1に流入する外気の風速Vが許容値ΔVの範囲内に収まる現象が検出された場合には防塵フィルタ3自体に定常的な目詰まりはないものと見做され、ステップa7の処理で異常検出フラグfがリセットされる。この場合、次周期以降の処理周期で外気の風速Vが許容値ΔVを超える現象が検出されると、ステップa10の処理で異常検出フラグfがセットされると共に、カウンタCは、ステップa9の処理で改めて初期値1からの計数を開始する。つまり、異常表示部として機能するモニタ13に目詰まりの発生を意味する警告メッセージが表示されるのは、外気の風速Vが許容値ΔVを超える現象がN回以上の処理周期に亘って継続的かつ連続的に検出された場合のみであり、これにより、吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常に起因した異常表示を確実に防止することができる。
【0052】
また、吸気ファンF1,排気ファンF2の起動により筐体1の内部が十分に冷却されて検出温度Tが設定温度Tを下回った場合にはステップa3以降の処理がスキップされてCPU7からモータM1,M2への駆動指令の出力は停止され、この結果として吸気ファンF1,排気ファンF2の運転も停止されるが、CPU7を再起動しない限り異常検出フラグfやカウンタCの値は保持されるので、再び検出温度Tが上昇して改めて吸気ファンF1,排気ファンF2が起動された時点で外気の風速Vが許容値ΔVを超える現象が再び検出されれば、カウンタCは、作用原理の点から防塵フィルタ3の目詰まりの検知が不能となっていた処理周期つまり吸気ファンF1,排気ファンF2が停止していた処理周期を無視し、作用原理の点から防塵フィルタ3の目詰まりの検知が可能であった最後の処理周期、つまり、吸気ファンF1,排気ファンF2の運転を停止させた直前の処理周期から引き続いて計数を継続することになる。従って、筐体1内の温度変化によって吸気ファンF1,排気ファンF2が頻繁にオン/オフするような場合であっても、防塵フィルタ3の目詰まりの検知に必要とされる判定所要時間が過剰に冗長されるといった心配はない。
【0053】
警告メッセージは、CPU7がモニタ13に表示信号を出力することによって表示状態を保持されるものであるから、一旦このメッセージが表示されてもCPU7の再起動等によって異常検出フラグfやカウンタCの値が失われると表示されなくなるが、防塵フィルタ3に目詰まりが発生している状況下では、CPU7の起動後ある程度の時間が経過した時点で必ずステップa12の判定結果が真となるので、事実上、CPU7の動作開始直後から動作終了までの期間に亘って警告メッセージの表示を保持することが可能である。
【0054】
また、防塵フィルタ3の清掃あるいは交換作業等を行って目詰まりが解消した場合には、ステップa6の判定結果が偽となる。この際、警告メッセージの表示をクリアするといった格別の処理は行わないが、前述した通り、CPU7の再起動によって警告メッセージの表示は自動的にクリアされ、以降、防塵フィルタ3に再び目詰まりが生じるまで、警告メッセージの表示は行われない。
【0055】
次に、この実施形態の空気循環装置の構造上の特徴について列挙する。
【0056】
まず、防塵フィルタ3に目詰まりが生じていない状態では、吸気ファンF1によって筐体1に取り込まれる外気の量と排気ファンF2によって外部に排出される空気の積算とが一致して筐体1内の気圧が外気圧と等しくなるため、筐体1の空気吸入口5を介して筐体1内に外気が流入することはない。従って、筐体1の空気吸入口5に設けられたセンサS1が空気吸入口5を通る空気の流れに晒されることはなく、また、このセンサS1は、図1に示される通り、吸気ファンF1からも排気ファンF2からも離間した位置に設置されているので、吸気ファンF1によって筐体1内に吸入される外気の流れや排気ファンF2によって筐体1から排出される空気の流れにも直には晒されない。従って、センサS1への汚れの付着や汚れに伴うセンサS1の風速の検出精度の劣化といった問題がない。同時に、冷却のために筐体1の内部に吸入される外気は防塵フィルタ3を通った清浄な空気のみとなるから、筐体1の内部の電気部品、例えば、CPU7,ROM8,RAM9等に劣化や損傷が生じるといった問題も解消され、コンピュータ用筐体等の冷却手段として適する。
【0057】
また、防塵フィルタ3に目詰まりが生じると、防塵フィルタ3の空気抵抗が増大し、吸気ファンF1によって単位時間当たりに筐体1に取り込まれる外気の量が減少して筐体1内の気圧が低下し、この気圧差を補償すべく筐体1の空気吸入口5を介して筐体1の内部に流入する外気の状態、具体的には、空気吸入口5から筐体1に流入する外気の風速VをセンサS1が検出し、この風速Vが許容値ΔVを超えることを以って、制御部を構成するCPU7が、防塵フィルタ3における目詰まりの発生を検知する。このように、吸気ファンF1と排気ファンF2の協調動作によって外気圧と動的に等しく保たれていた筐体1内の気圧が低下して空気吸入口5から外気が流入することに基いて防塵フィルタ3の目詰まりを検知するようにしているので、防塵フィルタ3の目詰まりが軽度なものであっても、これを早期に発見することが可能である。この結果、目詰まりの進行によって空気抵抗が著しく増大する前に防塵フィルタ3の清掃や交換作業を行うことが可能となり、吸気ファンF1や排気ファンF2を駆動するモータM1,M2の過負荷といった問題が改善されるので、吸気ファンF1や排気ファンF2の駆動源として小型のモータを利用することができ、コンピュータ等を始めとする精密機器の筐体、特に、ラップ・トップ・コンピュータやノート型パソコン等の冷却手段としても好適である。
【0058】
しかも、センサS1によって検出される外気の流入速度Vが予め設定された許容値ΔVを連続的に超えた場合、具体的には、所定周期毎に繰り返し実行されるN回(設定値)の目詰まり検出処理において継続的かつ連続的に外気の流入速度Vが許容値ΔVを超える現象が生じた場合に限って目詰まりの発生を検知するようにしているので、吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常による筐体1内の気圧の低下が防塵フィルタ3の目詰まりとして誤検知されるのを確実に防止することができる。
【0059】
また、センサS1によって検出される外気の流入速度Vと比較される許容値ΔVは設定値であり、この値の大小を調整することで、目詰まりの発生として見做す際の判定基準を任意に設定することができ、例えば、筐体内に清浄な外気を循環させたい場合には許容値ΔVの値を低めに設定して防塵フィルタ3の早期メンテナンスを実行する一方、ランニングコストを優先する場合には許容値ΔVの値を高めに設定して防塵フィルタ3を性能の限界まで使い切るといった選択的な利用も可能となる。
【0060】
図1に示される通り、センサS1を設置する空気吸入口5は、空気取り入れ口2を設けた面と直交する面、例えば、図1中の一側面1c,1dのように筐体1内に吸入された空気が壁に沿って層流化して流れる可能性が高い面を避けて、空気取り入れ口2や吸気ファンF1を設けた筐体1の一側面1aと同一面に設けているので、防塵フィルタ3の目詰まり以外の理由、つまり、筐体1内の空気の流れによって空気吸入口5から外気が吸い込まれるといった可能性を軽減することができ、特に、筐体1に大量の外気を循環させる必要があるような場合において、外乱の影響(筐体1内の壁に沿って流れる空気の影響で空気吸入口5から外気が吸い込まれる現象)を排除して防塵フィルタ3の目詰まりを的確に検知することができる。同時に、筐体1内の空気の流れにセンサS1が晒されるといった可能性も低く抑えることができるので、センサS1の初期精度が長期間に亘って安定的に維持されるメリットがある。
【0061】
また、空気循環装置の制御部としてマザーボード6上のマイクロプロセッサ7を、更に、空気循環装置の異常表示部としてはコンピュータ用筐体1のモニタ13を利用するようにしたので、空気循環装置に専用の制御部や異常表示部を改めて独立的に配備する必要はなく、装置全体の製造コストを軽減化することができる。
【0062】
この実施形態では、防塵フィルタ3における目詰まりの発生を検知する制御部を筐体1に内蔵されたマザーボード6が有するCPU7によって構成しているが、マイクロプロセッサを内蔵しない筐体に空気循環装置を配備する場合には、例えば、センサS1からのアナログ信号電圧と基準電圧とを比較するコンパレータによって空気循環装置の制御部を構成し、センサS1からのアナログ信号電圧が基準電圧を上回ったときにコンパレータから出力される信号に基いて点灯されるLED等によって異常表示部を構成することが可能である。
この場合も、タイマ等を併設することにより、前記と同様、吸気ファンF1や排気ファンF2の瞬間的な回転異常に起因した異常表示を未然に防止することが可能である。具体的には、この場合のタイマは、センサS1からのアナログ信号電圧が基準電圧を上回ったときにコンパレータから出力される信号の継続時間を計測するタイマであり、このタイマの計測時間が設定値を越えた時点でLED等の異常表示部を作動させるようにする。
【0063】
更に、より簡便な構成によって本発明における防塵フィルタの目詰まり検知方法を実現することが可能である。
【0064】
例えば、図1に示されるセンサS1がなくても、本発明の目詰まり検知方法の作用原理を適用した目詰まり検知装置を実施することができる。具体的には、図1の筐体1からセンサS1を取り外した構成とした上で、空気吸入口5に重合させて筐体1の一側面1aの外側に、適当な弾性と靱性を有する変形容易な舌片の一端を貼着し、この舌片を弁のように作用させて防塵フィルタ3の目詰まりの有無を簡易的に検知するといったことが可能である。この場合、空気吸入口5から筐体1内に吸い込まれる外気の流速が一定の限度を超えると弁機能を有する舌片が筐体1の一側面1aの外側に密着し、また、外気の流速が一定の限度を下回っていれば弁機能を有する舌片が筐体1の一側面1aの外側から離間することになるので、この舌片の状態を確認することで、防塵フィルタ3の目詰まりの有無を知ることができる。
このような構成を適用した場合、舌片が実質的にセンサおよび異常表示部として機能するので、装置の構造はハードウェアの面においてもソフトウェアの面においても著しく簡略化され、例えば、マイクロプロセッサやモニタ等を備えない単純な構成の空気清浄機等の防塵フィルタの目詰まりの検知にも容易に転用することができる。
また、センサ機能と異常表示機能とを同時に実現する構成としては、例えば、前述の舌片に代えて、空気吸入口5に接続されて下方に延出する透明管と、この透明管に沿って上下移動自在に内嵌された球体等を利用することもできる。この場合、筐体1の内部が負圧となれば球体が上方に吸い上げられて移動するので、防塵フィルタ3の目詰まりの有無を容易に確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、防塵構造を有する各種機器の筐体に備えられた防塵フィルタの目詰まりの検出に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の目詰まり検知方法および空気循環装置をコンピュータ用筐体に適用した場合の一実施形態について簡略化して示した平断面図である。
【図2】空気循環装置の制御部として機能するマイクロプロセッサを備えたマザーボード等の構成を簡略化して示した機能ブロック図である。
【図3】検出温度Tと吸排気ファンの回転速度VF1,VF2および許容値ΔVの関係を示した線図である。
【図4】空気循環装置の制御部として機能するマイクロプロセッサが実行する目詰まり検出処理の概略を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 コンピュータ筐体
1a 筐体の一側面
1b 筐体の他の一側面
2 空気取り入れ口
3 防塵フィルタ
4 空気排出口
5 空気吸入口
6 マザーボード(筐体内の電気部品)
7 マイクロプロセッサ(空気循環装置の制御部)
8 ROM
9 RAM
10 インターフェイス
11 入出力回路
12 ハードディスクドライブ
13 モニタ(異常表示部)
14 キーボード
15,16 ドライバ
17,18 A/D変換器
F1 吸気ファン
F2 排気ファン
S1 外気の流入を検出するセンサ(風速センサ)
S2 温度センサ
M1,M2 モータ
T 検出温度
設定温度(筐体や内部の電気部品に支障を生じない筐体内温度の最大値)
ΔV 許容値
V 風速(センサによって検出される外気の流入状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に外気を吸入する吸気ファンと、該吸気ファンの空気取り入れ口に設けられた防塵フィルタと、前記筐体内の空気を外部に排出する空気排出口とを備えた空気循環装置であって、
前記空気排出口に、前記筐体内の空気を外部に排出するための排気ファンを配備し、前記吸気ファンおよび前記排気ファンの配設位置から離間させて前記筐体に空気吸入口を設けると共に、該空気吸入口に外気の流入を検出するセンサを設置し、該センサによって検出される外気の流入状態に基いて前記防塵フィルタにおける目詰まりの有無を検知するようにしたことを特徴とする空気循環装置。
【請求項2】
前記防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態で、前記吸気ファンによる単位時間当たりの外気の吸入量と前記排気ファンによる単位時間当たりの空気の排出量とが略一致するように、前記吸気ファンおよび前記排気ファンの空気搬送量が予め設定されていることを特徴とする請求項1記載の空気循環装置。
【請求項3】
前記空気吸入口が、前記空気取り入れ口を設けた前記筐体の一面と同一面に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気循環装置。
【請求項4】
前記センサによって検出される外気の流入速度と予め設定された許容値とを比較し、前記流入速度が前記許容値を超えると目詰まりの発生を検知する制御部と、該制御部によって目詰まりの発生が検知されたときに異常を表示する異常表示部とを備えたことを特徴とする請求項1,請求項2または請求項3記載の空気循環装置。
【請求項5】
請求項1,請求項2または請求項3の何れか一項に記載の空気循環装置を備えたことを特徴とするコンピュータ用筐体。
【請求項6】
請求項4記載の空気循環装置を備えたコンピュータ用筐体であって、前記制御部が当該コンピュータ用筐体のマイクロプロセッサにより構成され、前記異常表示部は当該コンピュータ用筐体のモニタによって構成されていることを特徴とするコンピュータ用筐体。
【請求項7】
前記制御部は、前記センサによって検出される外気の流入速度が予め設定された前記許容値を連続的に超えた場合に目詰まりの発生を検知することを特徴とする請求項6記載のコンピュータ用筐体。
【請求項8】
筐体の空気取り入れ口に配備された防塵フィルタに生じる目詰まりを検知するための目詰まり検知方法であって、
前記防塵フィルタを介して筐体に外気を取り込む吸気ファンと前記筐体の空気排出口に設けられた排気ファンとを併用し、前記防塵フィルタに目詰まりが生じていない状態で前記筐体内の気圧が外気圧と等しくなるようにして前記筐体内に清浄な空気を循環させると共に、
前記防塵フィルタにおける目詰まりの発生を、前記吸気ファンおよび排気ファンの配設位置から離間させて前記筐体に設けられた空気吸入口からの外気の流入の程度に基いて、
前記外気の流入の程度が予め決められた範囲を超えた場合に、目詰まりの発生として検知することを特徴とした防塵フィルタの目詰まり検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−100309(P2006−100309A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280949(P2004−280949)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】