説明

空気浄化装置

【課題】 調温・調湿機能を備えた空気浄化装置の省エネ性能を向上させる。
【解決手段】 多孔膜式のケミカル除去ユニットと圧縮式冷媒回路により構成される調湿・調温ユニットとを一体に組合わせて構成することにより、冷媒回路側凝縮器の排熱を再熱用に有効に利用できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、調温・調湿機能を備えた空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造工場のクリーンルームなどで用いられるエアワッシャー等の湿式の空気浄化装置には、空気中の汚染ガス成分の除去に加えて、温度、湿度の調節機能を付加したものがある。
【0003】
その一例として、例えば上記エアワッシャー装置をクリーンルームの空気循環系路に設置し、外部空調機での加湿分を減らして省エネを図るようにしたもの(特許文献1)や、空気浄化部の下流に、浄化後の空気を調温・調湿するための個別の熱交換器を設置したもの(特許文献2)などがある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−279741号公報(明細書1−8頁、図1−8)
【特許文献2】特開平5−44959号公報(明細書1−4頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記エアワッシャーなどの水を用いて水溶性汚染ガス成分を除去する空気浄化装置では、その副次的な作用として、水の蒸発による浄化空気の湿度増加と温度低下の現象がある(図4のグラフ参照)。これらの現象はクリーンルーム全体を考えて、うまく使えば上記特許文献1のように、その他の空調機器の負荷を減らすことができ、トータルで省エネルギーとなる。
【0006】
しかし、このような効率的な使い方ができない場合には、上記特許文献2に示すように、純水噴霧装置の下流側に空気冷却器と空気加熱器の2つの熱交換器を設けて温度、湿度を適切に調節する方法が採用しなければならないが、同特許文献2では、各熱交換器の冷却熱源、加熱熱源は全く別々でトータルとしての省エネルギー化に関する配慮が全くなされていない。
【0007】
そこで、本願発明は、このような事情に鑑み、多孔膜式のケミカル除去ユニットと圧縮式冷媒回路により構成される調湿・調温ユニットとを組合わせて構成することにより、冷媒回路側凝縮器の排熱を再熱用に有効に利用できるようにした調温・調湿機能を備えた空気浄化装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、同目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0009】
(1) 第1の課題解決手段
この発明の第1の課題解決手段は、空気中の汚染物質を除去して浄化するとともに、浄化空気の調温・調湿を行うようにしてなる空気浄化装置であって、多孔膜式のケミカル除去ユニットと圧縮式冷媒回路で構成される調湿・調温ユニットとを組み合わせて構成したことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、従来、個別の冷媒回路で構成することにより系外に棄てられていた凝縮器の排熱を清浄化後の空気の再熱用に有効に利用することができるようになるので、その分だけ省エネになる。
【0011】
(2) 第2の課題解決手段
この発明の第2の課題解決手段は、上記第1の課題解決手段の構成において、圧縮式冷媒回路の凝縮器を、主凝縮器5と副凝縮器6との2つに分け、主凝縮器5部分を再熱器として使用する一方、副凝縮器部6分の凝縮熱を系外へ捨てるようにしたことを特徴としている。
【0012】
このように、放熱対象の相異に応じて凝縮器を主副2つに分けるようにすると、入口部7a側の空気の温度に対して出口部10a側の空気の温度が上りすぎることを有効に防止することができる。
【0013】
(3) 第3の課題解決手段
この発明の第3の課題解決手段は、上記第2の課題解決手段の構成において、主凝縮器5の能力と副凝縮器6の能力との比率は、必要とする出口条件にあわせて制御可能とされていることを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、主副2つの凝縮器5,6の能力が相手側機器やシステムに応じた適切なものとなり、より効率の良いものとなる。
【0015】
(4) 第4の課題解決手段
この発明の第4の課題解決手段は、上記第1,第2又は第3の課題解決手段の構成において、相手側機器の熱負荷を考慮して、入口部7aの空気温度≧出口部10aの空気温度としたことを特徴としている。
【0016】
このような構成によると、相手側機器やシステムの熱負荷に応じて、その内部の空気温度を概ね一定に保つことができる。
【0017】
(5) 第5の課題解決手段
この発明の第5の課題解決手段は、上記第1,第2.第3又は第4の課題解決手段の構成において、主凝縮器5を空冷方式、副凝縮器6を水冷方式としたことを特徴としている。
【0018】
再熱式システムの場合、凝縮器の放熱量を100%空気加熱に用いると、出口部10aの空気の温度が上がりすぎる。そこで、凝縮器の一部である副凝縮器6を水冷方式として、これを効果的に回避する。
【0019】
(6) 第6の課題解決手段
この発明の第6の課題解決手段は、上記第1,第2,第3,第4又は第5の課題解決手段の構成において、入口部7a側にプレヒータ20を入れて予熱するようにしたことを特徴としている。
【0020】
このような構成によると、プレヒータ20による予熱によって、入口部7a側の空気が高湿度の場合のケミカル除去ユニット多孔膜面への結露を有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上の結果、本願発明によると、従来は冷媒回路で構成することにより系外に棄てられることの多かった冷媒回路側凝縮器の排熱を再熱用に有効に利用できるようになるので、その分だけ省エネになる。
【0022】
また、同凝縮器の排熱の100%ではなく、装置出口状態の温度を考慮した排熱量を利用するようにしたので、装置全体として容易に最適な温度、湿度条件を作り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(最良の実施の形態1)
図1および図2は、本願発明の最良の実施の形態1に係る調温・調湿機能を備えた空気浄化装置の構成および作用を示している。
【0024】
この空気浄化装置は、例えば水循環ユニット1を介して純水が循環される複数の多孔膜エレメント2a,2b,2c,2dよりなるケミカル除去ユニットと圧縮機3、蒸発器4、主凝縮器5および副凝縮器6を備えた圧縮式の冷媒回路よりなる調温・調湿ユニットとからなり、これら各ユニットを空気浄化装置本体ケーシング21内の汚染空気取入口7aから、ケミカル除去通路7、中間通路8、調温・調湿通路9、浄化・調温・調湿空気送風ダクト10に連続する送風通路の上記ケミカル除去通路7、調温・調湿通路9の各々に配設して構成されている。
【0025】
ケミカル除去通路7は、下部側に汚染空気取入口7a、上部側に中間通路8側への送風口7bが設けられているとともに、同送風口7bの手前に第1のファン11が設けられていて、上記汚染空気取入口7aから取り入れた汚染ガス(半導体洗浄剤等の有害物を含むガス)を含む空気を下方側から上方側に向けて流し、その間にケミカル除去ユニットを通して汚染ガスを除去する。
【0026】
ケミカル除去ユニットは、気体の透過を許容し、水の透過を阻止する性状をもつ高分子系の多孔膜を用いて構成されている。具体的には、高分子多孔膜で構成された扁平筒状の素子(又はチューブ状の素子でもよい)を所定の間隔で多層に積層(又は配設)することによって枠状の多孔膜エレメント2a,2b,2c,2dを形成し、該多孔膜エレメント2a,2b,2c,2dの扁平筒状の素子内の空間を水流路(図示省略)とし、該扁平筒状の素子間の対向空間及び隣り合う多孔膜エレメント2a,2b,2c,2d間の対向空間をそれぞれ空気流路(図示省略)とするとともに、各多孔膜エレメント2a,2b,2c,2dの上記水流路に対して水循環パイプ1aを介して水循環ユニット1を接続して構成されている。また、上記空気流路は上記ケミカル除去通路7に連通している。
【0027】
そして、上記汚染空気取入口7aは、例えば半導体製造工場のクリーンルーム等に連通せしめられる。そして、同汚染空気取入口7aから導入される半導体洗浄剤等の汚染ガスを含んだ汚染空気Aを上記多孔膜エレメント2a,2b,2c,2dの空気流路に順次流す一方、上記水流路に上記水循環ユニット1側から純水を流すと、上記汚染空気Aが上記空気流路内を流れる間に、当該汚染空気Aに含まれている有害物質が、上記多孔膜よりなる筒状素子部分を上記空気流路側から上記水流路側へ透過し、当該水流路内を流れる水の中に溶解され、これによって、汚染空気の清浄化が図られる。したがって、上記多孔膜エレメント2a,2b,2c,2dよりなるケミカル除去ユニットAを通過して上記送風口7bから中間通路8側に導出される空気Bは有害物質濃度の極めて低い清浄な空気となる。
【0028】
なお、上記水循環ユニット1には、純水供給路14aと部分排水路14bが接続されており、該純水供給路14aから上記水循環ユニット1に流入する清浄な純水は、該水循環ユニット1を流通する間に有害物質を溶解し、汚染水として上記部分排水路14bから外部へ排出される。
【0029】
ところで、上記のような多孔膜式のケミカル除去ユニットを用いた場合にも、やはり水の透過と蒸発による浄化空気の湿度増加と温度低下の現象がある(前述の図4のグラフ参照)。
【0030】
そこで、調温・調湿ユニットが設けられている。
【0031】
この調温・調湿ユニットは、上述のように除湿器として機能する蒸発器4と再熱器として機能する空冷式の主凝縮器5に圧縮機3および水冷式の副凝縮器6を組み合わせた冷凍装置によって構成されている。そして、水冷式の副凝縮器6には、冷却水循環路17a,17bが設けられている。なお、15はドレン受け、15aはドレン配管である。
【0032】
蒸発器4と主凝縮器5間には、開閉制御弁16が設けられている一方、また主凝縮器5と副凝縮器6との間にも、例えば3方弁が設けられていて(図示省略)、それぞれに供給される冷媒量が所定の比率関係で適切に分配されるようになっている。
【0033】
そして、上記のようにして汚染ガス成分が除去された清浄な空気Bは、中間通路8に供給され、上方側から下方側に送風される。
【0034】
中間通路8には、その下部側に調温・調湿通路9側への送風口8aが開口されており、当該清浄化された空気Bを調温・調湿ユニットを有する調温・調湿通路9の下方から上方に向って供給する。そして、同通路9部分で、上記ケミカル除去ユニット部分で加湿、降温された浄化空気B(C)の除湿と昇温を図り(図2参照)、その上方側第2のファン12により送風口9aから上記吹出用の送風ダクト10(吹出口10a)を介して上記半導体製造工場のクリーンルーム等に導入(還流)される浄化空気Dを上記元の汚染状態の空気Aの温度と湿度とに調温・調湿する(同じく図2参照)。
【0035】
以上のように、本願発明では、空気中の汚染物質を除去して浄化するとともに、浄化空気の調温・調湿を行うようにしてなる空気浄化装置を、多孔膜式のケミカル除去ユニットと圧縮式冷媒回路(冷凍装置)で構成される調湿・調温ユニットとを組み合わせて構成している。
【0036】
このような構成によれば、従来、独立した冷媒回路で構成することにより系外に棄てられることの多かった調温用凝縮器の排熱を再熱用に有効利用することができるようになるので、その分だけ省エネになる。
【0037】
また本願発明では、上記の構成において、上記圧縮式冷媒回路の凝縮器を、容量の大きい主たる凝縮器5と容量の小さい副次的な凝縮器6との2つの凝縮器に分け、主凝縮器5部分を再熱器として使用する一方、副凝縮器6部分の凝縮熱を系外へ捨てるようにしている。
【0038】
このように、放熱対象の相異に応じて凝縮器を主副2つに分けるようにすると、入口部7a側の空気の温度に対して出口部10a側の空気の温度が上りすぎることを有効に防止することができる。
【0039】
また、本願発明では、上記の構成において、主凝縮器5の能力と副凝縮器6の能力との比率は、必要とする出口部10a側の条件に合わせて制御可能とされている。
【0040】
このような構成によれば、主副2つの凝縮器5,6の能力が相手側機器やシステムに応じた適切なものとなり、より効率の良いものとなる。
【0041】
そして、その制御方法としては、例えば流量制御弁で比率を変えられるようにするなどの方法が採用される。
【0042】
また、本願発明では、上記の構成において、装置全体では、入口部である空気取入口部7aの空気Aの温度と吹出口部10aの湿度は同じであるが、温度は相手側機器の熱負荷を考慮して、取入口部7aの空気Aの温度≧吹出口部10aの空気Dの温度となるようにしている。
【0043】
このような構成によると、相手側機器やシステムの熱負荷に応じて、その内部の空気温度を概ね一定に保つことができる。
【0044】
例えば相手側の機器内で発熱(顕熱)がある場合には、その分を見込んで低い温度の空気を返すようにする。そのようにすれば、相手側機器自体の冷房負荷が減り、トータルで省エネになる。
【0045】
また、本願発明では、上記の構成において、凝縮器の一部である副凝縮器6は水冷方式としている。
【0046】
このように、副凝縮器を水冷にすると、熱を捨てる手段が細い水配管で済み工事が容易になる。
【0047】
もちろん、このような配管工事上の効果を求めなければ、空冷でもよいことは言うまでもない。しかし、クリーンルームなどの場合は放熱場所が離れていることが多いので、そこまで太い空気ダクトを引っ張るのは相当に面倒である。したがって、上記構成は、その点で有益である。
【0048】
これらの結果、本願発明によると、従来は、それぞれ独立した冷媒回路で構成することにより、系外に棄てられることの多かった凝縮器の排熱を再熱用に有効利用できるようになるので、その分だけ省エネになる。
【0049】
また、同凝縮器の排熱量の100%ではなく、装置出口状態の空気Dの温度を考慮した排熱量を利用するようにしたので、装置全体に最適な温度、湿度条件を作り出すことができる。
【0050】
(最良の実施の形態2)
空気取入口部7aの空気Aが高湿度の場合には、多孔膜エレメント2a,2b,2c,2dの多孔膜面への結露が生じる。
【0051】
そこで、その対策として、上記図1の構成において、例えば図3のように汚染空気Aの取入口7a側にプレヒータ20を設けて予じめ加熱するようにしてもよい。
【0052】
このようにすると、効果的にケミカル除去ユニットの多孔膜部分の結露を防止することができる。そして、その場合において、プレヒータ20部の加熱源として、図示のように凝縮器排熱を当てるようにすれば、さらなる省エネになる(圧縮機3の吐出配管を並列に分岐して第3の凝縮器とする)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本願発明の最良の実施の形態1に係る調温・調湿機能を備えた空気浄化装置の構成を示す図である。
【図2】同装置の作用を示す図である。
【図3】本願発明の最良の実施の形態2に係る調温・調湿機能を備えた空気浄化装置の構成を示す図である。
【図4】従来の調温・調湿機能を備えた空気浄化装置の問題点を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1は水循環ユニット、2a,2b,2c,2dは多孔膜エレメント、3は圧縮機、4は蒸発器、5は主凝縮器、6は副凝縮器である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の汚染物質を除去して浄化するとともに、浄化空気の調温・調湿を行うようにしてなる空気浄化装置であって、多孔膜式のケミカル除去ユニットと圧縮式冷媒回路で構成される調湿・調温ユニットとを組み合わせて構成したことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
圧縮式冷媒回路の凝縮器を、主凝縮器(5)と副凝縮器(6)との2つに分け、主凝縮器(5)部分を再熱器として使用する一方、副凝縮器部(6)分の凝縮熱を系外へ捨てるようにしたことを特徴とする請求項1記載の空気浄化装置。
【請求項3】
主凝縮器(5)の能力と副凝縮器(6)の能力との比率は、必要とする出口条件にあわせて制御可能とされていることを特徴とする請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
相手側機器の熱負荷を考慮して、入口部(7a)の空気温度≧出口部(10a)の空気温度としたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の空気浄化装置。
【請求項5】
主凝縮器(5)を空冷方式、副凝縮器(6)を水冷方式としたことを特徴とする請求項2,3又は4記載の空気浄化装置。
【請求項6】
汚染空気取入口(7a)側にプレヒータ(20)を入れて予熱するようにしたことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−284087(P2006−284087A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104350(P2005−104350)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】