説明

空気清浄効果を有するダクト型中空構造物および空気清浄方法

【課題】汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化等に応じて、圧力損失や空気清浄能力などの設定を容易に調整することができ、しかも光触媒や吸着材などの空気清浄手段を適切な時期に容易に交換・洗浄することができるダクト型中空構造物およびこれを用いた空気清浄方法を提供する。
【解決手段】空気流路を有する中空構造物本体2と、この中空構造物本体2の内部に、空気の流通方向と略平行に且つ着脱自在な状態で配置された汚染物質除去部材3とを備える。中空構造物本体2は開閉部を有し、この開閉部から汚染物質除去部材3を出し入れ可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された空気から汚染物質を除去して空気を清浄化するダクト型中空構造物およびこれを用いた空気清浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、例えば二酸化炭素(CO2 )の温室効果ガスについては、国際的な削減目標の設定などが行われており、二酸化炭素の削減を目的とした世界規模での植林事業に呼応して、建築分野においても、屋上緑化などの対策が講じられるようになってきている。
【0003】
また、健康面からも、自動車等から発せられる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)についても、その排出規制が一段と厳しくなっており、さらに悪臭物質やたばこ臭、シックハウス症候群を引き起こすホルムアルデヒドなどの居住空間における汚染物質も社会問題となっている。
【0004】
空気中に含まれるこれら汚染物質を除去する技術としては、太陽光等の光エネルギーの下で活性化した酸化チタン等の光触媒に接触させることにより、上記汚染物質を分解除去する技術や、オゾン処理による除去技術、あるいは活性炭などの吸着剤によって吸着除去する技術などが実用化されている。
【0005】
また、建築物においても、吸着剤や光触媒を用いたフィルターにより、建築物内部に取り込む空気や、建築物外部に排出する空気に含まれる汚染物質を除去する技術が提案されている。しかしながら、それら空気をフィルターに通すには、圧力損失が極めて大きくなるため、専用のブロワーを設置するか、あるいはダクト用の既設ブロワーを強化する必要がある。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献1〜9には、光触媒または光触媒と吸着剤の組合せからなる平板を汚染空気の流通方向と平行に配置することによって、圧力損失を低下させるようにした装置(以下、平行板装置と称する。)が提案されている。また、特許文献2には、平行板を積層配置する場合に、その間隔を経験的な数値(例えば0.5〜2.5mm)に設定することが記載され、特許文献8,9には、平行板の間隔を拡散スクラバとしてのGormley-Kennedy理論式から導かれた除去効率に基づいて設定することが記載されている。
【0007】
一方、屋外の汚染物質を除去する方法としては、例えば、建物外壁、ガードレール、道路などの構造物の表面に光触媒を塗布して、光触媒の作用により、周囲に存在するNOxやSOxを分解除去する方法が検討されている。しかしながら、この方法においては、NOxやSOxから硝酸や硫酸等が生成されて、それら生成物質が雨水によって光触媒表面から洗い流されることとなるため、そのまま放置しておくと、土壌中に拡散して地下水汚染などを引き起こす虞がある。このため、上記汚染水を回収するのが望ましいが、上記汚染水は大量に発生するために、その回収設備に掛かるコストは高く、また上述した建物外壁やガードレール等の構造物の近傍は、何れも回収設備を設置するのに適していないため、現状では汚染水を回収するのは困難である。
【0008】
そこで、本発明者等は、先に、上記問題点を解決する建築物として、建築物の下層部から頂部に至る範囲に亘ってボイド部を形成し、このボイド部の上昇気流を利用して、建築物の外部および/または内部の汚染空気を建築物頂部に集め、この集めた汚染空気を、建築物頂部に設置した中空状の空気清浄化装置に通して浄化する構成の建築物を提案するとともに、これを特許文献10に開示している。この特許文献10に記載の建築物によれば、地下水汚染などを引き起こすことなく、建築物の外部および/または内部の空気中に含まれる様々な汚染物質を効果的に除去して空気の清浄化を図ることができる。
【0009】
因みに、上記空気清浄化装置の内部には、仕切り板と扉によって仕切られた2つの空間が設けられ、その一方が空気流路(空気が流れる空間)に、他方が洗浄エリア(空気が流れない空間)に設定されるとともに、扉を回動させることによって、空気流路と洗浄エリアの切換が可能となっている。そして、この切換操作を行うことにより、装置内部の洗浄および排水の回収が可能となっている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−305213号公報
【特許文献2】特開平10−286436号公報
【特許文献3】特開2000−271486号公報
【特許文献4】特開2001−120956号公報
【特許文献5】特開2001−137665号公報
【特許文献6】特開2002−166131号公報
【特許文献7】特開2002−95929号公報
【特許文献8】特許第3483208号公報
【特許文献9】特開2005−131553号公報
【特許文献10】特開2004−154754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、建築物においては、例えば、外気の取入口や、地下空間と地上を結ぶ給排気口、水族館の排気口、地下駐車場の排気口、トンネルの排気口など、汚染物質の濃度が比較的変化し易い箇所がある。また、特許文献10に記載の建築物においては、ボイド部の広さや、立地条件、季節に伴う温度変動などにより、風速や、汚染物質の種類や濃度に変化が生じる場合がある。
【0012】
しかしながら、特許文献1〜9に記載の平行板装置や、特許文献10に記載の空気清浄化装置には、現場に設置した後に圧力損失や空気清浄能力(汚染物質の除去効率)などの設定を調整する手段を有していないため、上記のように、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件が変化する場合に、それら条件に合わせて上記設定を調整することが困難であった。そのため、例えば、設計時の予定性能を確保できない場合には、装置全体の交換が必要であった。
【0013】
また、上記平行板装置を既設のダクトなどに連結する際には、上記平行板装置をその設置環境に合わせて設計するか、または給排気動力の増設などの大掛かりな工事によって、既存の設備を上記平行板装置の仕様に合わせる手間が発生する。何れの場合も設置後に上記設定の微調整が必要になる場合が多いが、そのような場合においても、上記設定を調整することが困難であった。
なお、特許文献2には、前述したように、平行板の間隔を経験的な数値に設定する方法が記載され、特許文献8,9には、平行板間の間隔を拡散スクラバとしてのGormley-Kennedy理論式から導かれた除去効率に基づいて設定する方法が記載されているが、それら設計方法は、何れも初期の仮設計に使用することはできても、上記平行板装置を設置した後の調整に適用することはできなかった。
【0014】
また、光触媒や吸着剤でNOx除去などを行う場合には、定期的に水洗や交換が必要になるが、それら処理を行うべき時期や対象は、汚染物質の種類や濃度、風速などの使用条件によって変わってくる。しかしながら、特許文献1〜9に記載の平行板装置においては、上記処理を行うべき時期や対象を的確に把握することができないため、必ずしも最適ではない時期に全体を交換または洗浄せざるを得ず、結果的にコスト増大を招いていた。
また、特許文献10に記載の空気清浄化装置においては、光触媒や吸着材などの空気清浄手段を洗浄する際に、装置ごと洗浄しなければならないため、廃水量が多くなり、その回収に多大な労力を要するという問題点があった。
【0015】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化などに応じて、圧力損失や空気清浄能力などの設定を容易に調整することができ、しかも光触媒や吸着材などの空気清浄手段を適切な時期に容易に交換・洗浄することができるダクト型中空構造物およびこれを用いた空気清浄方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明に係るダクト型中空構造物は、空気清浄効果を有するダクト型中空構造物であって、空気流路を有する中空構造物本体と、上記中空構造物本体の内部に、空気の流通方向と略平行に且つ着脱自在な状態で配置された汚染物質除去部材とを備え、上記中空構造物本体は、その壁面(天井面、側面または底面の何れか)に開閉部を有し、この開閉部から上記汚染物質除去部材を出し入れ可能となっていることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、上記空気に含まれる汚染物質とは、例えば、建築物の外部の空気については、周囲の工場や自動車、地下空間等から排出されるNOx、SOx、CO2 などが挙げられる。また、建築物内部の空気については、事務所などの居住空間から発生するCO2 、建築材料、塗料、家具などから発生するホルムアルデヒドやトルエン、トイレから発生するアンモニアなどの悪臭物質、たばこなどに起因する有機化合物の塵埃などが該当し、さらに上記建築物が動物園や水族館である場合には、動物やその飼育過程で発生するトリメチルアミンなどの悪臭物質、工場などである場合には、各種の化学物質が挙げられる。
【0018】
また、上記開閉部は、中空構造物本体を設置した状態で、汚染物質除去部材の出し入れを行うことが可能であれば、例えば、回動式あるいはスライド式の扉部材で開口部を開閉するものや、蓋部材により開口部を開閉するものなど、如何なる態様のものであってもよい。
【0019】
上記汚染物質除去部材を“空気の流通方向と略平行”に配置するのは、圧力損失の増大を抑えるためであり、そうすることで、ブロアーを利用することなく、例えば自然の風の流れが通過できる程度の抵抗、または既存の給排気口に取り付けた場合にそのまま利用できる程度の抵抗とすることができ、究極ではないが効率的な汚染空気除去率を実現することができる。一般的なフィルターにおいては、究極の除去率を実現するために、空気清浄手段(光触媒、吸着材)を密に詰まった状態で配置して、空気清浄手段と空気の接触面積を大きくするが、この場合、空気抵抗が非常に大きくなるため、その分ブロアーの能力を高める必要がある。これに対して、本発明では、汚染空気が空気清浄手段の表面に接触しながら流通するため、フィルターのように空気清浄手段を透過する場合に比べて圧力損失が極めて低くなる。
【0020】
さらに、上記汚染物質除去部材が果たす役割としては、1)空気清浄手段を保持するための支持体、2)空気の流量を制御するための抵抗(汚染物質除去部材の数量や配置を変えることによって、自在に流量を調整することができる)、3)空気の流れを制御したり(セパレート効果)、乱流を起こさせたりして、空気清浄手段への空気の接触面積、接触量を増大させることなどが挙げられる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダクト型中空構造物において、上記中空構造物本体は、上記空気中の汚染物質の種類・濃度、風速の何れかを測定する測定装置を取り付けるための観測口を有することを特徴とするものである。
【0022】
例えば、汚染物質がNOxなどの場合、NOx測定器に内蔵されている吸引ポンプに接続したチューブを上記観測口から差し込むことにより、直接濃度を測定することが可能である。また、各種検知管を観測口から差し込んで測定することにより、精度は落ちるものの、幅広い物質に関して濃度を測定することができる。また、精度の高い測定を行う場合には、ポンプを利用してサンプリングすることにより、精密機器で分析することもできる。また、観測口からペン型の各種風速計を差し込めば、風速を測定することもできる。さらに、複数の観測口における測定結果を相互に比較するようにすれば、各観測口間の圧力損失や空気清浄能力(汚染物質の除去効率)を導き出すことも可能である。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のダクト型中空構造物において、上記汚染物質除去部材は、光触媒と吸着材の少なくとも一方を空気清浄手段として用いることを特徴とするものである。また、吸着材に光触媒を塗布または焼付けにより固着したものであってもよい。
【0024】
ここで、上記汚染物質除去部材は、その一部または全体に上記空気清浄手段を塗布または焼付けにより固着したものであっても、あるいは上記空気清浄手段を基材の一部または全体に塗布または焼付けにより固着して作製したパネル状またはボード状の空気清浄部材を着脱自在に装着したものであってもよい。また、上記空気清浄部材は、吸着材で構成されていてもよく、その構造がコルゲート状またはプリーツ状であってもよい。上記空気清浄部材を着脱自在に装着する方法としては、例えば、上記空気清浄部材の取付位置に係止溝や係止片等を形成して装着する方法や、専用のクリップ等を利用して装着する方法などが挙げられるが、何れの方法を採用するようにしてもよい。
【0025】
上記空気清浄手段を構成する光触媒としては、酸化チタン、金属酸化物半導体(酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化銀、酸化マンガン、酸化銅、酸化鉄、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウムなど)、金属硫化物半導体(硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化インジウム、硫化鉛、硫化銅、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化アンチモン、硫化ビスマスなど)、チタン酸ストロンチウム、セレン化カドミウム、タンタル酸カリウム、およびこれらの混合物などが適用可能である。また、光触媒とセメントの混合材や光触媒にハイドロキシアパタイトやフッ化アパタイトを結合させた触媒なども適用可能である。
【0026】
上記吸着材としては、ゼオライト、シリカゲル、イオン交換材、アルミナ系吸着材、金属錯体系吸着材、セラミックスなどの無機系吸着材や、活性炭、イオン交換材、キレート樹脂などの有機系吸着材が適用可能である。なお、上記吸着材には、特定のガスを除去するためのガス反応成分(例えば、二酸化炭素を除去するための水酸化カリウム溶液など)を塗布または含浸したものも含まれる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のダクト型中空構造物において、上記中空構造物本体は、その天井部が光透過性部材により構成され、この光透過性部材を介して、太陽光または光源の光を上記汚染物質除去部材が受光可能となっていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載のダクト型中空構造物において、上記汚染物質除去部材は、上記中空構造物本体の底部上面に載置可能な底板部と、この底板部上面に立設された一または複数の起立板部とを備えて、断面がU型、逆T型、L型、またはその何れか複数を並列に並べて組み合わせた形状をなしていることを特徴とするものである。
【0029】
ここで、各汚染物質除去部材の高さや幅寸法は、それぞれ中空構造物本体内の空気流路の高さや幅寸法以下であれば特に限定されるものではない。但し、空気清浄手段として光触媒を使用する場合には、光触媒への光の照射に支障を来さないように、各汚染物質除去部材の設置間隔を設定する必要がある。
複数の汚染物質除去部材を中空構造物本体内に配置する場合には、中空構造物本体の幅方向に並列に配置するようにしても、あるいは中空構造物本体の長さ方向(空気の流通方向)に直列に配置するようにしてもよい。また、複数の汚染物質除去部材を並列に並べた組合せを基本ユニットとして、同じ組合せの基本ユニットを直列に続けて配置するようにしたり、あるいは異なる組合せの基本ユニットを直列に配置することも可能である。さらに、中空構造物本体内に配置する汚染物質除去部材は、同じ種類の型で統一するようにしても、複数種類の型を組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、中空構造物本体の側壁部内面に沿って空気清浄手段を配置する場合には、L型の汚染物質除去部材を、その起立板部が上記側壁部内面に隣接する状態で配置するようにすればよい。
【0030】
請求項6に記載の本発明に係る空気清浄方法は、請求項1〜5の何れかに記載のダクト型中空構造物に汚染空気を流通させて、当該汚染空気を浄化する空気清浄方法であって、上記中空構造物本体を上記汚染空気の経路に沿って設置する第1工程と、上記中空構造物本体の内部に、上記汚染空気の流通方向と略平行に複数の上記汚染物質除去部材を配置する第2工程とを有し、上記第2工程では、予め設定された空気清浄能力および圧力損失に基づいて、上記汚染物質除去部材の数量、配置および空気清浄手段を決定し、その決定に従って、複数の上記汚染物質除去部材を直列および/または並列に配置することを特徴とするものである。
【0031】
汚染物質除去部材の数量を増加させると、圧力損失が増加して風速の低下および空気と空気清浄手段との接触時間の増大をもたらし、また空気と空気清浄手段の接触面積は増加する。一方、汚染物質除去部材の数量を減少させると、圧力損失が減少して風速の増大および空気と空気清浄手段との接触時間の減少をもたらし、また空気と空気清浄手段の接触面積は減少する。すなわち、汚染物質除去部材の数量を増減することにより、圧力損失および空気清浄能力を変化させることができる。
また、汚染物質除去部材の数量を変えなくとも、汚染物質除去部材の配置を変更すれば、圧力損失が変動することから、空気清浄能力が変化する。また、空気清浄手段の種類や密度を変えることによっても、空気清浄能力が変化する。したがって、汚染物質除去部材の数量、配置および空気清浄手段の設定を変えることによって、圧力損失および空気清浄能力を調整することが可能である。このため、適用場所や汚染物質の種類・濃度、風速などの条件に合わせて、汚染物質除去部材の数量、配置、空気清浄手段を選択するようにすれば、空気清浄能力や圧力損失などの要求性能がそれぞれ異なる個別の事例に対応することが可能である。
【0032】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の空気清浄方法において、上記空気中の汚染物質の種類・濃度、風速の何れかを測定し、その測定結果に基づいて、上記汚染物質除去部材の数量、配置および空気清浄手段の設定の何れかに変更を加えることにより、空気清浄能力および圧力損失を調整することを特徴とするものである。
【0033】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の空気清浄方法において、上記空気中の汚染物質の種類・濃度、風速の何れかを測定するとともに、その測定結果に基づいて、上記汚染物質除去部材の洗浄または交換を行う時期を推定し、その時期が到来したときに、上記汚染物質除去部材を上記開閉部から取り出して上記汚染物質除去部材の洗浄または交換を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0034】
請求項1〜5の何れかに記載の発明によれば、中空構造物本体の内部に汚染物質除去部材を設けるようにしたので、中空構造物本体の内部に流入した空気が中空構造物本体内部を通過する過程で、その空気中に含まれる様々な汚染物質を汚染物質除去部材により除去することができ、空気の清浄化を図ることができる。したがって、本発明に係るダクト型中空構造物を、例えば、外気の建築物内部への給気口、建築物内部から発生した汚染空気の外部への排気口、地上から地下空間への給気口、地下空間から地上への排気口、屋外環境中において広い空間から狭い空間に汚染物質が集まる場所または通過する場所、狭い空間から広い空間に汚染物質が拡散する場所または通過する場所などに取り付けることによって、それら給排気口や空気流路を通る空気中に含まれる様々な汚染物質を除去することができ、建築物内部や外部、あるいは地下空間などに清浄な空気を供給することができる。
【0035】
また、請求項1〜5の何れかに記載の発明によれば、汚染物質除去部材を空気の流通方向と略平行に配置するようにしたので、圧力損失の増大を抑制することができ、自然の風の流れまたは既存の給排気力のみで、汚染空気をダクト型中空構造物に流入させることができる。したがって、新設および既設を問わず建築物の給排気口に、本発明に係るダクト型中空構造物をそのまま取り付けるのみで、汚染空気の清浄化を図ることができ、またボイド部を内部に備えた建築物の頂部に設置するようにすれば、ボイド部に沿って上昇してきた空気中に含まれる汚染物質を除去することもできる。また、地下空間からの排気口やトンネルの排気口など、従来は適用が困難であった場所にも取り付けることができる。
【0036】
さらに、請求項1〜5の何れかに記載の発明によれば、中空構造物本体の内部に汚染物質除去部材を着脱自在な状態で配置して、この汚染物質除去部材を開閉部から出し入れ可能としたので、ダクト型中空構造物を設置した後であっても、汚染物質除去部材の数量や配置を簡単に変更することができる。したがって、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化等に応じて、汚染物質除去部材の数量や配置を変更することにより、圧力損失や空気清浄能力などの設定を容易に調整することができる。
【0037】
また、請求項1〜5の何れかに記載の発明によれば、汚染物質除去部材を外部に取り出すことができるので、汚染物質除去部材のみを洗浄あるいは交換することができ、それら処理に掛かるコストや手間を大幅に縮減することができる。
すなわち、建物外壁やガードレールなどの構造物に光触媒を塗布して屋外の汚染物質を除去する従来の方法では、前述したように、光触媒表面に付着した硝酸や硫酸が土壌中に拡散して地下水汚染を引き起こす懸念があり、それを防ぐために汚染水を回収しようとすると、汚染水が大量に発生するために、多大なコストが掛かるという問題点があった。また、前述した特許文献10に記載の空気清浄化装置においても、光触媒や吸着材などの空気清浄手段を洗浄する際に、装置ごと洗浄しなければならないため、効率が悪く、大量の廃水が発生するという問題点があった。
これに対して、請求項1〜5の何れかに記載の発明によれば、光触媒を一ヵ所に容易に集めることができることから、最小の水量で洗浄することができ、廃水の回収や処理も容易である。さらに、建物外壁やガードレールなどの構造物に光触媒を塗布する方法の場合には、光触媒の劣化などの調査や交換を行うのに多大な労力を要するが、本発明によれば、それら作業を短期間で容易に実施することができる。
【0038】
一般に、ダクト型中空構造物内部の空気の流れは計算できるが、光触媒反応および物理的吸着を含めた空気清浄効果の総合評価を計算で求めることはほぼ不可能である。これに対して、請求項2に記載の発明によれば、中空構造物本体に、汚染物質の種類・濃度、風速などを測定する測定装置を取り付けるための観測口を設けるようにしたので、中空構造物本体内部の空気中に含まれる汚染物質の種類・濃度、風速などを容易に測定することができる。また、各観測口における汚染物質濃度の測定結果を相互に比較することにより、観測口間の汚染物質の濃度差、すなわち汚染物質除去率を求めることができ、この汚染物質除去率によって、定量的な性能把握が可能になるとともに、空気清浄手段の交換時期を的確に把握することができる。なお、中空構造物本体の空気流入口から成分および濃度既知の模擬汚染空気を流すようにすれば、より確実なデータを採ることが可能である。
【0039】
また、請求項3に記載の発明のように、光触媒と吸着材の少なくとも一方を空気清浄手段として用いることにより、簡単な装置構成によって、複数種類の汚染物質を効果的に除去することができる。また、光触媒と吸着材を併用することにより、光触媒では除去が困難な汚染物質の除去や、夜間のように光が照射されない条件下での汚染物質の除去も可能となる。例えば、チタン酸二バリウムや珪酸リチウムなどの吸着材を用いるか、または吸着材に水酸化カリウム溶液を塗布または含浸することにより、光触媒では除去できない二酸化炭素を捕捉することも可能である。さらに、空気清浄手段として光触媒塗布吸着材を用いれば、光触媒による分解に時間を要する汚染物質についても、上記吸着材によって汚染物質を捉えて、上記光触媒表面に拡散させることにより、光触媒との接触時間を増加させて、汚染物質の分解を促進することができる。さらにまた、空気清浄手段として光触媒を用いる場合には、除菌効果および防カビ効果も期待できる。
【0040】
また、請求項4に記載の発明のように、中空構造物本体の天井部を光透過性部材で構成し、この光透過性部材を介して、汚染物質除去部材が太陽光を受光可能に構成すること(例えば、太陽光の照射位置に汚染物質除去部材を配置すること、あるいは反射鏡を用いて太陽光を汚染物質除去部材に導くこと)によって、光触媒と自然エネルギーのみで汚染空気の清浄化が可能になる。さらに、光ファイバーなどを用いて太陽光を中空構造物本体内部に導入することにより、あるいは紫外線照射手段を中空構造物本体内部に設置することにより、太陽光が届かない場所であっても汚染空気の清浄化を図ることができ、また夜間であっても汚染空気除去効果を継続することができる。
【0041】
さらに、上記汚染物質除去部材としては、請求項5に記載の発明のように、断面がU型、逆T型、L型、またはその何れか複数を並列に並べて組み合わせた形状の型(例えば、U型を2つ並べた形状の型)が用意されているため、汚染物質除去部材の数量、間隔および組合せを自在に変更することができる。また、汚染物質除去部材に固定する空気清浄手段の組合せの変更や交換も容易に行える。さらに、汚染物質除去部材が、何れも底板部と、この底板部上面に立設された一または複数の起立板部とにより構成されているため、上方から入射する光を効率良く受光することができる。また、上記汚染物質除去部材から空気清浄手段を取り除いたもの(支持部材)を、例えば、内部の気流の流れを変えたり、抵抗を増やすために使うこともできる。また、中空構造物本体の側壁部内面等に空気清浄手段を直接固定すると、空気清浄手段の交換や洗浄が困難になるが、L型の汚染物質除去部材を上記側壁部内面に沿って設置するようにすれば、ほぼ同じ位置に空気清浄手段を配置することができ、空気清浄手段の交換や洗浄も容易となる。
【0042】
また、外気のように汚染空気に粒子状物質が混在している場合には、ダクト型中空構造物の空気流入側に、粒子状物質を吸着可能な吸着材を取り付けた汚染物質除去部材を配置し、この汚染物質除去部材よりも下流側に、光触媒または光触媒塗布吸着材を取り付けた汚染物質除去部材を配置することによって、粒子状物質の除去と汚染空気の清浄とを分離して連続的に行うことができる。これにより、粒子状物質が光触媒表面に付着することによる光触媒の機能低下を防ぐことができる。また、粒子状物質の吸着が飽和状態に達した場合の吸着材の交換、および光触媒の洗浄または交換を個別に行うことができるため、それぞれの機能を最大限に発揮させ、且つ寿命を延ばすことができる。
【0043】
請求項6〜8の何れかに記載の発明によれば、ダクト型中空構造物の設置位置における風量、汚染物質の種類および濃度に応じて、汚染物質除去部材の数量、配置(設置間隔など)、各汚染物質除去部材に固定する空気清浄手段を自在に設定することができる。また、ダクト型中空構造物の設置後に自然または人為的に風量、汚染物質の種類および濃度に変動があった場合にも、同様に、汚染物質除去部材の数量や配置、空気清浄手段の種類等を設置場所において自在に変更することができる。
【0044】
例えば、風量(線速度)が増加すると、空気清浄手段への接触時間が低下するため、汚染物質の除去効率が低下する。その際に、汚染物質除去部材の数量を増やしてその間隔を狭めるようにすれば、圧力損失が高まり線速度の増加を抑える効果と、空気清浄手段との接触面積を増加させる効果が付与されることから、汚染物質の除去効率の低下を抑えることができる。一方、風量が減少すると、空気清浄手段への接触時間が増加するため、汚染物質の除去効率が増加する。ここで、汚染物質の除去効率が風量減少前の除去効率で十分である場合には、空気清浄手段を減らし、汚染物質除去部材の間隔を広げて、線速度および空気清浄手段の接触面積を調整することにより、コスト削減を図ることができる。
【0045】
また、請求項7に記載の発明によれば、空気中の汚染物質の種類・濃度、風速の何れかを測定し、その測定結果に基づいて、汚染物質除去部材の数量、配置および空気清浄手段の設定を調整するようにしたので、圧力損失や空気清浄能力を常に所望の状態に保つことができ、汚染空気中に含まれる様々な汚染物質を効果的に且つ確実に除去して空気の清浄化を図ることができる。
【0046】
請求項8に記載の発明によれば、空気中の汚染物質の種類・濃度、風速を測定するとともに、その測定結果に基づいて、汚染物質除去部材の洗浄または交換を行う時期を推定し、その時期が到来したときに、汚染物質除去部材を中空構造物本体の開閉部から取り出して汚染物質除去部材の洗浄または交換を行うようにしたので、適切な時期に汚染物質除去部材の洗浄または交換を行うことができ、それら処理に掛かるコストや手間を大幅に縮減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1および図2は、本発明に係るダクト型中空構造物の一実施形態を示す模式図である。
このダクト型中空構造物1は、図1(a)に示すように、中空構造物本体2と、この中空構造物本体2の内部に、空気の流通方向と略平行に且つ着脱自在な状態で配置された汚染物質除去部材3とにより概略構成されている。
【0048】
中空構造物本体2は、図1(b)に示すように、角形のダクトであり、その天井部を構成する光透過性部材4と、底部および両側壁部を構成する断面略コ字形の流路構成部材5とにより構成されている。光透過性部材4は、流路構成部材5の上部開口を塞ぐ状態で着脱可能に取り付けられて、上部開口(開閉部)を開閉可能となっている。この光透過性部材4は、例えば硼珪酸ガラスなどからなり、太陽光や光源の光(紫外線)を透過可能となっている。また、光透過性部材4には、空気の流通方向に沿って複数(例えば3つ)の観測口6a,6b,6cが形成されている。各観測口6a,6b,6cには、図2に示すように、汚染空気吸引チューブ11aが挿入され、この汚染空気吸引チューブ11aによって吸引された空気中の汚染物質の濃度および種類が、汚染空気測定装置11により測定されるようになっている。さらに、各観測口6a,6b,6cには、風速計12の検知部12aが挿入され、この風速計12によって中空構造物本体2内部の風速が測定されるようになっている。
【0049】
一方、汚染物質除去部材3は、図3に示すように、空気中に含まれる汚染物質を除去するための空気清浄部材7と、この空気清浄部材7を支持する支持部材8とにより構成されている。空気清浄部材7は、吸着材等の空気清浄手段を板状に成形したもの、あるいは板状の基材の全体または一部に空気清浄手段を塗布または焼付けたものである。ここでは、上記空気清浄部材7として、光触媒である酸化チタンをセラミックスに塗布して形成した第1空気清浄部材7aと、吸着材である珪藻土タイルからなる第2空気清浄部材7bとを用いている。
【0050】
支持部材8は、中空構造物本体2の底部上面に載置可能な底板部9と、この底板部9上面に立設された一または複数の起立板部10とを備えている。本実施形態では、支持部材8として、図1(c)に示すように、断面がL型の第1支持部材8a、逆T型の第2支持部材8b、U型の第3支持部材8c、U型を2つ並べた形状の第4支持部材8dを用いている。そして、これら支持部材8a,8b,8c,8dの底板部9の上面と、起立板部10の両面または片面に、それぞれ空気清浄部材7が着脱自在な状態で取り付けられている。空気清浄部材7を取り付ける方法としては、例えば、支持部材8に複数のフックを設けて、それらフックで空気清浄部材7を係止する方法や、クリップ等を用いて空気清浄部材7を支持部材8に止着する方法などが挙げられるが、空気清浄部材7を着脱自在に取付可能であれば如何なる方法であってもよい。また、支持部材8の底板部9に空気清浄部材7を取り付ける際には、空気清浄部材7を寝かせた状態で底板部9上面に載置するのみであってもよい。
【0051】
各支持部材8の配置方法としては、図1(c)に示すように、空気の流通方向(中空構造物本体2の長さ方向)に沿って、同一タイプの支持部材8を直列に配置する方法と、互いに異なるタイプの支持部材8を直列に配置する方法とがある。
【0052】
また、図3に示すように、複数の支持部材8を並列に配置することも可能である。図3(a)の例では、中空構造物本体2の底面中央部に、空気の流通方向と略平行に第2支持部材8bが配置されて、その両側(中空構造物本体2の幅方向における両側)に、中空構造物本体2の側壁部に沿って且つ空気の流通方向と略平行に第1支持部材8aがそれぞれ配置されている。そして、各支持部材8a,8bの底板部9の上面と、第2支持部材8bの起立板部10の両面と、第1支持部材8aの起立板部10の片面(中空構造物本体2内の空気と接触する面)には、それぞれ空気清浄部材7(第1空気清浄部材7aまたは第2空気清浄部材7b)が着脱自在な状態で取り付けられている。この図3(a)の例では、第1支持部材8aの起立板部10の高さが、中空構造物本体2の側壁部の高さよりも若干低く、また第2支持部材8bの起立板部10の高さが第1支持部材8aの起立板部10の高さよりも低く設定されている。
【0053】
同様に、図3(b)の例では、中空構造物本体2の底面中央部に、空気の流通方向と略平行に第3支持部材8cが配置されて、その両側に、中空構造物本体2の側壁部に沿って且つ空気の流通方向と略平行に第1支持部材8aがそれぞれ配置され、それら支持部材8a,8cの各面9,10に、それぞれ空気清浄部材7が着脱自在な状態で取り付けられている。また、図3(c)の例では、中空構造物本体2の底面中央部に、空気の流通方向と略平行に第4支持部材8dが配置されて、その両側に、中空構造物本体2の側壁部に沿って且つ空気の流通方向と略平行に第1支持部材8aがそれぞれ配置され、それら支持部材8a,8dの各面9,10に、それぞれ空気清浄部材7が着脱自在な状態で取り付けられている。
【0054】
図4は、汚染物質除去部材3の各種配置例を示す平断面図である。
先ず、図4(a)の例では、上述した図3(b)と同様の支持部材8a,8cの組合せ2組が、空気の流通方向に直列に配置されている。そして、中空構造物本体2の空気流入側の各支持部材8a,8cには、分解性の高い光触媒を空気清浄手段として用いた空気清浄部材7cが着脱自在な状態で取り付けられ、中空構造物本体2の空気排出側の各支持部材8a,8cには、吸着効果を付与した光触媒を空気清浄手段として用いた空気清浄部材7dが着脱自在な状態で取り付けられている。この場合、中空構造物本体2内に流入した汚染空気は、先ず、空気清浄部材7cの表面を通過する際に、空気清浄部材7cによって汚染物質が分解されることにより、汚染物質の濃度が大幅に低下し、その後、空気清浄部材7dの表面を通過する際に、空気清浄部材7cで分解しきれなかった低濃度の汚染物質が空気清浄部材7dにより吸着・分解されることにより、汚染物質の濃度がさらに低下する。したがって、このような空気清浄部材の配置構成によれば、効率良く汚染物質を除去することができる。
【0055】
図4(b)の例では、図4(a)と同様に各支持部材8a,8cが配置されている。そして、中空構造物本体2の空気流入側の各支持部材8a,8cには、浮遊粒子状物質を吸着する吸着材を空気清浄手段として用いた空気清浄部材7eが取り付けられ、中空構造物本体2の空気排出側の各支持部材8a,8cには、前述した空気清浄部材7dが取り付けられている。このような空気清浄部材の配置構成は、外気のように、浮遊粒子状物質を含む汚染空気を清浄化する場合に効果的であり、中空構造物本体2内に流入した汚染空気は、先ず、空気清浄部材7eの表面を通過する際に、空気清浄部材7eによって浮遊粒子状物質が吸着除去され、空気清浄部材7dの表面を通過する際に、空気清浄部材7dによって、その他の汚染物質が吸着・分解されることとなる。
【0056】
図4(c)の例では、中空構造物本体2の空気流入側と空気排出側とで支持部材の組合せが異なるものとなっている。すなわち、中空構造物本体2の空気流入側には、図3(a)と同様の支持部材8a,8bの組合せが配置され、中空構造物本体2の空気排出側には、図3(b)と同様の支持部材8a,8cの組合せが配置されている。そして、各支持部材8a,8b,8cには、それぞれ空気清浄部材7dが取り付けられている。この場合、空気流入側の各空気清浄部材7dに接触することなく通過した空気(第1支持部材8aの起立板部10と第2支持部材8bの起立板部10の中央付近を通過した空気)が、空気排出側の第3支持部材8cの起立板部10によって2分されて、この第3支持部材8cに取り付けられた空気清浄部材7dの表面に沿って流れることとなる。したがって、このような空気清浄部材の配置構成によれば、圧力損失を低く抑えつつも、効率良く汚染物質を除去することができる。
【0057】
次に、上記構成からなるダクト型中空構造物1を用いた空気清浄方法の一実施形態について説明する。
先ず、汚染空気の経路に沿って中空構造物本体2を設置する(第1工程)。中空構造物本体2の設置場所としては、図5に示すように、建築物の排気口(例えば、一般建築物のトイレ、厨房、禁煙スペース、動物館や水族館の飼育施設や鑑賞施設、工場などの排気口)や、建築物の外気取込口などが挙げられる。例えば、図6に示すように、建築物頂部の排気口や、地下駐車場、地下空間、トンネル内の空気の排気口に取り付けるようにしてもよい。中空構造物本体2の設置箇所が、例えば図7に示すように、雨よけを装備した排気口である場合には、中空構造物本体2等に反射鏡13を取り付けて、太陽光が反射鏡13に反射して中空構造物本体2の内部に入射するように構成する。また、夜間の光源確保のために、中空構造物本体2の内部にブラックライトを取り付けるようにしてもよい。
【0058】
こうして中空構造物本体2の設置が完了したら、設置した中空構造物本体2の内部に、汚染空気の流通方向と略平行に複数の汚染物質除去部材3を配置する(第2工程)。その際に、要求される空気清浄能力および許容される圧力損失に基づいて、汚染物質除去部材3の配置構成(支持部材8の数量、タイプおよび配置、空気清浄部材7の種類および配置など)を決定し、その決定に従って、前述したように汚染物質除去部材3を配置する。
【0059】
その後、汚染物質除去部材3の配置が完了したら、光透過性部材4を取り付けて、中空構造物本体2の天井部を塞ぎ、図2に示すように、各観測口6a,6b,6cに汚染空気吸引チューブ11aと風速計12の検知部12aを取り付ける。これにより、ダクト型中空構造物1の設置が完了となり、この状態で、汚染空気を中空構造物本体2の内部に流し込めば、その汚染空気中に含まれる様々な汚染物質を空気清浄部材7により除去することができ、空気の清浄化を図ることができる。
【0060】
ダクト型中空構造物1の仮運転を行い、設定と現地評価との誤差を検知した場合には、汚染物質除去部材3の数量、配置、構成を変更して微調整を行う。その後、本運転を開始し、常時または定期的に、各観測口6a,6b,6cから空気を採取して、当該空気中に含まれる汚染物質の濃度および種類のモニタリングを汚染空気測定装置11により行うとともに、風速計12により風速のモニタリングを行う。
【0061】
そして、汚染物質の濃度のモニタリングの結果、何れかの汚染物質除去部材3の汚染物質除去効果が著しく低下していることを検知した場合には、その汚染物質除去部材3を中空構造物本体2から取り出して、新たな汚染物質除去部材3または洗浄済みの汚染物質除去部材3と交換する。例えば、図4(a)に示すように汚染物質除去部材3が配置されている場合に、観測口6bと観測口6c間の汚染物質の濃度差に変化はないが、観測口6aと観測口6b間の汚染物質の濃度差が著しく低下したときには、中空構造物本体2の空気流入側の汚染物質除去部材3のみを中空構造物本体2から取り出して、新しい汚染物質除去部材3または洗浄済みの汚染物質除去部材3と交換するようにすればよい。
【0062】
中空構造物本体2から取り出した汚染物質除去部材3は、一箇所に集めて洗浄し、次の交換の際に再び使用する。このサイクルを繰り返す過程で、劣化が激しくなった場合には、適性廃棄を行う。なお、本実施形態のように、空気清浄部材7が着脱自在である場合には、空気清浄部材7のみを取り外して交換・洗浄するようにしてもよい。
【0063】
また、風速計12によるモニタリングの結果、風速の上昇を検知した場合(あるいは風速の測定値が設定値よりも高い場合)には、汚染物質除去部材3の数量を増やす調整を行う。
例えば、季節変動または人為的な調整により中空構造物本体2内部の風速が上昇すると、汚染空気の空気清浄手段への接触時間が減少するため、汚染物質の除去効率が低下することとなる。そこで、このような場合には、例えば図8(a)に示すように、汚染物質除去部材3の設置数量を増やして、汚染物質除去部材3の配置構成を変更することにより、圧力損失を高めて風速の増加を抑えると同時に、汚染空気と空気清浄手段の接触面積を増加させ、それら作用により、汚染物質の除去効率の低下を抑制する。汚染物質除去部材3の配置構成の変更後は、風速および汚染濃度を再度測定して性能(圧力損失、空気清浄能力)を確認する。
【0064】
一方、風速計12によるモニタリングの結果、風速の低下を検知した場合(あるいは風速の測定値が設定値よりも低い場合)には、汚染物質除去部材3の数量を減らす調整を行う。
例えば、季節変動または人為的な調整により中空構造物本体2内部の風速が低下すると、汚染空気の空気清浄手段への接触時間が増加するため、汚染物質の除去効率が増加することとなる。そこで、このような場合には、例えば図8(b)に示すように、汚染物質除去部材3の設置数量を減らして、汚染物質除去部材3の配置構成を変更することにより、圧力損失を低下させて風速の低下を抑えると同時に、汚染空気と空気清浄手段の接触面積を減少させ、それら作用により、汚染物質の除去効率の増加を適度に抑える。汚染物質除去部材3の配置構成の変更後は、風速および汚染濃度を再度測定して性能を確認する。
【0065】
また、汚染空気測定装置11によるモニタリングの結果、汚染物質の濃度の低下を検知した場合(あるいは濃度の測定値が設定値よりも低い場合)には、汚染物質除去部材3の数量を減らす調整を行う。
例えば、交通量の減少など、周辺環境の変化により中空構造物本体2内部の汚染物質濃度が低下すると、空気清浄手段の設置量が過剰になる。そこで、このような場合には、例えば、図8(c)に示すように、支持部材8を残したまま、一部の空気清浄部材7のみを撤去する。これにより、圧力損失を変動させることなく、空気清浄能力のみを調整することができる。なお、汚染濃度が比較的低い場合や、求められる空気清浄能力が緩やかな場合など、予め設定した条件が満たされる場合には、例えば、図8(d)に示すように、支持部材8を併せて撤去することも可能である。但し、この場合には、圧力損失が減少して風速が上昇することとなるので、それに伴う影響を予め把握しておく必要がある。汚染物質除去部材3の配置構成の変更後は、風速および汚染濃度を再度測定して性能を確認する。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、中空構造物本体2の内部に流入した空気中に含まれる様々な汚染物質を汚染物質除去部材3により効率的に除去して、空気の清浄化を図ることができる。また、汚染物質除去部材3を空気の流通方向と略平行に配置するようにしたので、圧力損失の増大を抑制することができ、自然の風の流れまたは既存の給排気力のみで、汚染空気をダクト型中空構造物1に流入させることができる。したがって、新設および既設を問わず建築物の給排気口に、本発明に係るダクト型中空構造物1をそのまま取り付けるのみで、汚染空気の清浄化を図ることができる。
【0067】
また、中空構造物本体2の内部に汚染物質除去部材3を着脱自在な状態で配置して、この汚染物質除去部材3を開閉部から出し入れ可能としたので、ダクト型中空構造物1を設置した後であっても、汚染物質除去部材3の数量や配置、空気清浄手段の設定を簡単に変更することができる。したがって、汚染物質の種類や濃度、あるいは風速などの条件の変化等に応じて、汚染物質除去部材3の数量や配置、空気清浄手段の設定を変更することにより、圧力損失や空気清浄能力などの設定を容易に調整することができる。
【0068】
また、汚染物質の種類・濃度、風速の測定結果に基づいて、汚染物質除去部材3の数量、配置および空気清浄手段の設定を調整するようにしたので、圧力損失や空気清浄能力を常に所望の状態に保つことができ、汚染空気中に含まれる様々な汚染物質を効果的に且つ確実に除去して空気の清浄化を図ることができる。
【0069】
さらに、汚染物質の種類・濃度、風速の測定結果に基づいて、汚染物質除去部材3の洗浄または交換を行う時期を推定し、その時期が到来したときに、汚染物質除去部材3を中空構造物本体2から取り出して汚染物質除去部材3の洗浄または交換を行うようにしたので、適切な時期に汚染物質除去部材3の洗浄または交換を行うことができ、それら処理に掛かるコストや手間を大幅に縮減することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、空気清浄効果を有するダクト型中空構造物1を給気口や排気口に設置する場合について例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、給気ラインや排気ラインの途中に設けるようにしてもよい。また、1ラインに設置するダクト型中空構造物1の数も1に限られるものではなく、複数であってもよい。ダクト型中空構造物1を複数設置する場合には、図9に示すように、すべての中空構造物本体2内に汚染物質除去部材3を配置するようにしても、あるいは図10(a)および図10(b)に示すように、一部の中空構造物本体2内に汚染物質除去部材3を配置するようにしてもよい。
【0071】
また、地下階からの排気ラインにダクト型中空構造物1を設置する場合には、例えば、図11に示すような箇所に、中空構造物本体2を介装することも可能である。光触媒を空気清浄手段として用いる場合、太陽光が届く箇所については、中空構造物本体2の天井部を光透過性部材4により構成して、汚染物質除去部材3に太陽光が照射するように調整する。一方、太陽光が届かない箇所については、中空構造物本体2の内部にブラックライト15を取り付けたり、あるいは太陽光または光源の光を光ファイバで中空構造物本体2の内部に導くことにより、汚染物質除去部材3に紫外線が照射するように調整する。なお、空気清浄手段として光触媒を用いずに吸着材(例えば、浮遊粒子状物質を吸着する吸着材)を用いる場合には、このような対処は不要である。
【0072】
また、既設の給気口または排気口にダクト型中空構造物1を設置する場合には、例えば、図12に示すように、二股状の中空構造物本体2を用いることも可能である。このような構成によれば、圧力損失の増大、および空気清浄手段との接触面積の低下を比較的抑えながら建築物外部への垂直突出部分の長さを低減できる。
【0073】
また、本実施形態では、光透過性部材(蓋部材)4により中空構造物本体2の上部開口を開閉するようにしたが、上述した図9,図11および図12に示すように、回動式の扉部材16で、中空構造物本体2の開口部を開閉するようにしてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、空気清浄部材7として、光触媒である酸化チタンをセラミックスに塗布して形成した空気清浄部材7aや、吸着材である珪藻土タイルからなる空気清浄部材7bなどを例示したが、これ以外の光触媒、吸着材を用いることも可能である。例えば、図13に示すように、タイル状に成形された珪藻土等の無機系吸着材17aの表面に光触媒17bを塗布してなる空気清浄部材(光触媒塗布吸着材)17を用いることも可能である。この図13の例では、各支持部材8の空気接触面を覆うように空気清浄部材17を配置した後、汚染物質除去部材3の頂部に固定金物18を取り付けることによって、空気清浄部材17を支持部材8に固定することができる。
【0075】
また、本実施形態では、支持部材8として、第1〜第4支持部材8a,8b,8c,8dを例示したが、支持部材8の形状はこれに限定されるものではなく、例えば中空構造物本体2の形状などに応じて適宜に変更することも可能である。また、本実施形態では、支持部材8を中空構造物本体2の底部に載置する構成としたが、例えば図7に示すように、空気の流通方向が鉛直方向となる場合などには、支持部材8を中空構造物本体2の底部に係止する構成としてもよい。
また、本実施形態では、汚染物質除去部材3を空気の流通方向と略平行に配置して、それら汚染物質除去部材3の数量や配置の設定を変更することにより、圧力損失等の調整を行うようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上記空気の流通方向に対して汚染物質除去部材3を傾けることにより、圧力損失等の調整を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るダクト型中空構造物の一実施形態を示す模式図で、(a)は全体構成、(b)は中空構造物本体、(c)は支持部材の構成例をそれぞれ示している。
【図2】図1のダクト型中空構造物に風速計および汚染空気測定装置を取り付けた状態を示す模式図である。
【図3】汚染物質除去部材の配置構成例を示す縦断面図である。
【図4】汚染物質除去部材の配置構成例を示す平断面図である。
【図5】図1のダクト型中空構造物の設置例を示す模式図で、(a)は設置前の状態、(b)は設置後の状態を示している。
【図6】図1のダクト型中空構造物の設置例を示す模式図で、(a)は設置前の状態、(b)は設置後の状態を示している。
【図7】図1のダクト型中空構造物の設置例を示す模式図で、(a)は設置前の状態、(b)は設置後の状態を示している。
【図8】汚染物質除去部材の数量および配置の調整例を示す平断面図である。
【図9】図1のダクト型中空構造物の設置例を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である
【図10】図9(a)の変形例を示す平面図である。
【図11】図1のダクト型中空構造物の設置例を示す模式図である。
【図12】図1のダクト型中空構造物の設置例を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図、(c)は正面図である。
【図13】空気清浄部材の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 ダクト型中空構造物
2 中空構造物本体
3 汚染物質除去部材
4 光透過性部材
6a,6b,6c 観測口
7 空気清浄部材
8 支持部材
9 底板部
10 起立板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気清浄効果を有するダクト型中空構造物であって、
空気流路を有する中空構造物本体と、上記中空構造物本体の内部に、空気の流通方向と略平行に且つ着脱自在な状態で配置された汚染物質除去部材とを備え、
上記中空構造物本体は開閉部を有し、この開閉部から上記汚染物質除去部材を出し入れ可能となっていることを特徴とするダクト型中空構造物。
【請求項2】
上記中空構造物本体は、上記空気中の汚染物質の種類・濃度、風速の何れかを測定する測定装置を取り付けるための観測口を有することを特徴とする請求項1に記載のダクト型中空構造物。
【請求項3】
上記汚染物質除去部材は、少なくとも光触媒、吸着材、光触媒を担持した吸着材の何れかを空気清浄手段として用いることを特徴とする請求項1または2に記載のダクト型中空構造物。
【請求項4】
上記中空構造物本体は、その天井部が光透過性部材により構成され、この光透過性部材を介して、太陽光または光源の光を上記汚染物質除去部材が受光可能となっていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のダクト型中空構造物。
【請求項5】
上記汚染物質除去部材は、上記中空構造物本体の底部上面に載置可能な底板部と、この底板部上面に立設された一または複数の起立板部とを備えて、断面がU型、逆T型、L型、またはその何れか複数を並列に並べて組み合わせた形状をなしていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のダクト型中空構造物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のダクト型中空構造物に汚染空気を流通させて、当該汚染空気を浄化する空気清浄方法であって、
上記中空構造物本体を上記汚染空気の経路に沿って設置する第1工程と、
上記中空構造物本体の内部に、上記汚染空気の流通方向と略平行に複数の上記汚染物質除去部材を配置する第2工程とを有し、
上記第2工程では、予め設定された空気清浄能力および圧力損失に基づいて、上記汚染物質除去部材の数量、配置および空気清浄手段を決定し、その決定に従って、複数の上記汚染物質除去部材を直列および/または並列に配置することを特徴とする空気清浄方法。
【請求項7】
上記空気中の汚染物質の種類・濃度、風速の何れかを測定し、その測定結果に基づいて、上記汚染物質除去部材の数量、配置および空気清浄手段の設定の何れかに変更を加えることにより、空気清浄能力および圧力損失を調整することを特徴とする請求項6に記載の空気清浄方法。
【請求項8】
上記空気中の汚染物質の種類・濃度、風速を測定するとともに、その測定結果に基づいて、上記汚染物質除去部材の洗浄または交換を行う時期を推定し、その時期が到来したときに、上記汚染物質除去部材を上記開閉部から取り出して上記汚染物質除去部材の洗浄または交換を行うことを特徴とする請求項6または7に記載の空気清浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−209594(P2007−209594A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33770(P2006−33770)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】