説明

空気清浄機能を有する天井構造

【課題】室内に放散されたVOCを吸着・分解することで得られた比較的清浄な空気を再び室内に還流することを目的とする。
【解決手段】有機化合物を吸着・分解する光触媒等を含有した塗料が表面に塗布された通気性を有する木質面材料を用いた天井材を通過させて,広い面積を低速で室内空気を移動させることによって,室内空気中のVOC濃度を低減することを特徴とする換気構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,空気中の有機物を吸着・分解する効果を有する通気性のある材料を天井に活用した空気清浄システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
天井面を通して通気する手法としては,天井下面を通して暖気を室内に導入する方法が考案されている(例えば特許文献1,特許文献2参照)。しかし,これらの方法は天井面からの給排気を行うために,専用チャンバーやダクトを配する必要がある。そのため,付加的な工事を必要とする。
【特許文献1】特開平6−58612号公報(第6頁,図3)
【特許文献2】特開平8−105148号公報(第6頁,図7)
【0003】
また,光触媒等を利用して室内空気に含まれるVOCを分解する方法としては,壁又は天井に光触媒等を含有した塗料を塗布して,その表面を流れる空気を浄化するものがある(例えば非特許文献1参照)。この方法は,成り行きでVOCが光触媒に接触することを期待したものであるため,その効果は高くない。また,照明機器の笠部分に光触媒を含有した塗料を塗布し,その照明の取り付け部分に排気孔を配したものもある(特許文献3参照)。これは,光触媒塗料の塗布面積が小さくかつ紫外線量が少ないことから,効果は期待できない。さらに,天井材に有孔板を配して,天井面裏を排気チャンバーとする空調装置があるが(特許文献4参照),室内空気を排気する目的の空調装置であり,光触媒機能を効果的に発揮して,空気中のVOCを吸着・分解することで除去することを目的とする構造ではない。さらに,有孔板を使用することから,空隙が大きく,排気ムラを生じやすく,流速が速いことから,VOCの分解効果は低い。
【非特許文献1】「エアピュアレ カタログ」,上商株式会社・新東北化学工業株式会社,2005年,2頁
【特許文献3】特開2000−65396(第3頁,図1)
【特許文献4】特開平6−229584(第3頁,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光触媒による室内空気中のVOCの分解は,室内の紫外線量が少なく光触媒塗料の塗布面積が少ないことから,あまり効果が見られない。加えて,室内空気が成り行きの対流によって光触媒に接触することから,低濃度でのVOCが光触媒に接触する確率が低くなるため,さらに光触媒によるVOC分解効果が少なくなっている。
【0005】
また,強制的に集気する光触媒活用空気清浄機では,紫外線ランプによって強い紫外線を照射することが可能であるが,フィルターを通過する流速が速いことや空気清浄機近傍の空気がショートサーキットをおこすことから,処理できない空気を生じる可能性があり,室内のVOC濃度低減効果は高くない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は,室内の少ない紫外線を大きな面積を占める天井面で受けることによって,小さい面積に強い紫外線を受けた場合に相当する効果を得ることができる。
【0007】
また,天井の広い面から分散して空気を通気することによって,天井面材を通過する際の流速が1cm/秒程度に遅くなる。光触媒等を含有した塗料を塗布した材料表面を通過する空気の流速が遅い方が,VOCの除去率が高くなる(非特許文献2参照)ことから,天井面材を通過する際に,VOCの分解効率を高くすることができる。さらに,通気抵抗を大きくすることによって,天井裏全体の圧力差が均一な状態に近くなることから,天井面全体からのムラの少ない通気を行うことができる。
【非特許文献2】「愛知県産業技術研究所研究報告第3号」,愛知県産業技術研究所,2004年,13頁
【発明の効果】
【0008】
本発明によって,効率的に空気を清浄化することが可能となり,室内空気を快適な状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記の本発明について,図面を用いて下記にさらに詳しい説明を行う。図1は,天井面及び天井裏空間の構造及び室内空気の移動経路を示した断面図である。図2は,天井裏の空気移動を示した平面図である。図中の1は通気性を有する面材料で構成される天井構造材,2は通気性を有しない面材料で構成される天井裏表面仕上げ材,3は通風ファン,4は通気性を有しない隔壁,5は通風ファン3を稼働することによって負圧を生じた天井裏空間,6は通風ファンを稼働することによって正圧を生じた天井裏空間,7は紫外線光源,8は採光窓を示している。
【0010】
1は,木毛にセメント,石膏,珪藻土,漆喰などの無機質材料を混合して製造した,約20m/m/pa/時間の通気性を有する面材料である。
【0011】
対象室の天井裏に設置された3を稼働することで,5が負圧となり,室内の空気が1から流入する。また,正圧となった6から1を通して室内に流入する。
【0012】
1には光触媒含有塗料などの有機物分解機能を有した塗料を塗布する。また,天井裏にUVLEDやUV蛍光灯などの7,また8を用いて外光を導入することができる。
【0013】
室内の空気は,1の表面に接触しながら5に流入する。その際,1の表面に塗布された有機物分解機能を有した塗料に接触することにより,空気中の揮発性有機化合物が酸化還元反応により分解され,より分子量の小さい化合物に分解される。また,5から3を通して6に異動した空気は,1の表面に接触しながら室内に流入する。その際,再度1の表面に塗布された有機物分解機能を有した塗料に接触するため,空気中の揮発性有機化合物の分解効率が向上する。
【0014】
1は,木材に無機質材料を付着させることによって,有機物である木材が有機物分解機能を有する塗料によって分解されることを防止し,かつ面密度を変えることによって適切な通気量を調整することが可能な材料である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】天井面および天井裏空間の構造及び室内空気の移動経路を示した断面図である。
【図2】天井裏空間の空気移動経路を示した平面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 通気性を有する面材料で構成される天井構造材
2 通気性を有しない面材料で構成される天井裏仕上げ材
3 通風ファン
4 通気性を有しない隔壁
5 負圧を生じた天井裏空間
6 正圧を生じた天井裏空間
7 紫外線光源
8 採光窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井の一部又は全面に適度な通気性を有する材料を配し,天井の一部から室内空気を天井裏に誘導し,別の一部から室内に戻すことを特徴とした空気循環システム。
【請求項2】
通気抵抗を大きくすることで,天井裏全体の圧力差を均一にしてムラの少ない通気をすることを特徴とした請求項1記載の空気循環システム。
【請求項3】
通気を有する材料の表面に空気中の有機物を分解する成分を含有した塗料を塗布した請求項1,2記載の空気循環システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−303697(P2008−303697A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176718(P2007−176718)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【Fターム(参考)】