空気調和機
【課題】トルク脈動位相角の誤判定を防止し、より確実なトルク脈動位相角の判定結果を得て、これに応じて的確なトルク脈動補正を行なうこと。
【解決手段】空気調和機は、四方弁54に接続されたコンプレッサ26に直結され且つこのコンプレッサ26を可変速駆動するブラシレスDCモータ20と、このブラシレスDCモータ20をPWM(パルス幅変調)方式で駆動する駆動手段(18,42,32)と、コンプレッサ26の負荷トルクの脈動位相を検出する位相検出手段とを備えたコンプレッサ駆動制御装置10を搭載している。このコンプレッサ駆動制御装置10は、前記位相検出手段が負荷トルクの脈動位相を検出している期間には四方弁54の通電状態の変更を禁止する通電禁止手段を備えたものである。
【解決手段】空気調和機は、四方弁54に接続されたコンプレッサ26に直結され且つこのコンプレッサ26を可変速駆動するブラシレスDCモータ20と、このブラシレスDCモータ20をPWM(パルス幅変調)方式で駆動する駆動手段(18,42,32)と、コンプレッサ26の負荷トルクの脈動位相を検出する位相検出手段とを備えたコンプレッサ駆動制御装置10を搭載している。このコンプレッサ駆動制御装置10は、前記位相検出手段が負荷トルクの脈動位相を検出している期間には四方弁54の通電状態の変更を禁止する通電禁止手段を備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサの運転に伴って発生するトルクの脈動を抑制する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機においては、例えば特公平4−36000号公報、特公平6−48916号公報、特開平10−174488号公報、及び特開平11−46493号公報に見られる如く、ブラシレスDCモータ(無整流子直流電動機)を回転させてコンプレッサを駆動するコンプレッサ駆動制御装置が多用されている。
【0003】
コンプレッサとしては、1シリンダ構造又は2シリンダ構造のロータリ式の圧縮機構を備えたコンプレッサがあり、このコンプレッサの圧縮機構にブラシレスDCモータの回転軸が直結される。このモータは、モータ駆動装置を成すインバータによりPWM(パルス幅変調)方式で回転駆動されるので、モータの回転と一体にコンプレッサも回転運転される。
【0004】
このコンプレッサ、とくに、1シリンダ構造のコンプレッサはその運転に伴うトルクの脈動が大きい。この脈動は室外機からの振動や騒音をもたらすので、通常、モータ1回転中の特定位相区間の電圧の通電率(デューティ)を可変し、トルクの脈動を抑制するトルク脈動補正が実施されている。
【0005】
また、このトルク脈動補正に際し、トルク脈動位相角の判定が行われる。コンプレッサは冷媒流路切換用の電磁制御弁としての四方弁に接続されているが、モータ起動時に四方弁への通電を切り替え、モータ起動直後にトルク脈動位相角の判定を行っている。
【特許文献1】特公平4−36000号公報
【特許文献2】特公平6−48916号公報
【特許文献3】特開平10−174488号公報
【特許文献4】特開平11−46493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のトルク脈動補正にあっては、この補正を実施すると、モータ巻線電流が大きく脈動し、モータ駆動装置、すなわちインバータの入力電流にも脈動を生じ、そのピーク値が大きくなる傾向がある。このため、室内外の温度や設定温度、及びその他の環境条件に応じて、かかるピーク値がインバータの許容範囲を超えてしまうことがある。このような逸脱が生じると、機器や回路部品が焼損したり、耐寿命性を低下させてしまうという問題が発生する。
【0007】
また、前述したモータ起動、四方弁への通電、及びトルク脈動位相角判定のタイミング関係によれば、かかる判定中に四方弁が動作することがある。そのような事態に至ると、1回転中のトルク変動が乱れて、トルクの大きい回転位相とトルクの小さい回転位相の速度差が正確に求めることができない。つまり、トルク位相角が正確に判定されず、誤判定に陥るという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、トルク脈動位相角の誤判定を防止し、より確実なトルク脈動位相角の判定結果を得て、これに応じて的確なトルク脈動補正を行うことを、第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するため、請求項1の発明によれば、四方弁に接続されたコンプレッサに直結され且つ当該コンプレッサを可変速駆動するブラシレスDCモータと、このブラシレスDCモータをPWM(パルス幅変調)方式で駆動する駆動手段と、前記コンプレッサの負荷トルクの脈動位相を検出する位相検出手段とを備えたコンプレッサ駆動制御装置を搭載した空気調和機において、前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記位相検出手段が負荷トルクの脈動位相を検出している期間には前記四方弁の通電状態の変更を禁止する通電禁止手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
例えば、請求項2の発明によれば、前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記四方弁に通電を行って当該四方弁の位置を安定させる通電手段と、この通電手段の通電による位置安定後に前記ブラシレスDCモータを起動させる起動手段と、この起動後に前記位相検出手段を作動させる作動指令手段とを備える。
【0011】
これにより、四方弁への通電切替とトルク脈動位相角の判定とを同時に行わないようにでき、トルク脈動位相角の誤判定を防止できる。したがって、より確実なトルク脈動位相角の判定結果をもたらすことができ、この判定結果を反映して的確なトルク脈動補正を行うことができる。
【0012】
一例として、請求項3の発明では、前記コンプレッサは、1シリンダ構造のロータリ式コンプレッサで構成される。これにより、トルク脈動が大きいコンプレッサであっても、その脈動が的確に補正され、振動や騒音の発生が抑制されるとともに、過電流から回路要素を保護できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トルク脈動位相角の誤判定を防止し、より確実なトルク脈動位相角の判定結果を得て、これに応じて的確なトルク脈動補正を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る空気調和機を図1〜5を参照して説明する。この空気調和機は、本発明に係るコンプレッサ駆動制御装置を適用して実施されている。
【0016】
図1に、空気調和機のコンプレッサ駆動制御装置10を中心とした部分的な構成ブロック図を示す。
【0017】
このコンプレッサ駆動制御装置10は、交流電源12から交流電力が供給される整流回路14を備える。この整流回路14の出力端には平滑コンデンサ16が並列接続されるとともに、駆動手段としてのインバータ18が接続されている。このインバータ18は6個のトランジスタと夫々のトランジスタに逆並列接続された6個のダイオードとから成る半導体スイッチ群を備える。各トランジスタのベース電圧は後述するPWMドライバによってPWM(パルス幅変調)方式で制御される。
【0018】
インバータ18の3個の出力端はブラシレスDCモータ20に接続されている。このブラシレスDCモータ20は、3相結線された3本の電機子巻線22と磁石回転子24を備える。3本の電機子巻線22が前述したインバータ13の出力端に夫々接続される一方、磁石回転子4がコンプレッサ26の軸に機械的に直結されている。
【0019】
コンプレッサ26には、本実施形態では、1シリンダ構造のロータリ式が採用されている。
【0020】
また、ブラシレスDCモータ20の3本の電機子巻線22の夫々は回転子位置検出器28にも電気的に接続され、各電機子巻線22に誘起される電圧がこの検出器28により検出される。回転子位置検出器28はその電圧信号を回転子位置パルス信号に変換して、これを後段のカウンタ30に出力する。カウンタ30は回転子位置パルス信号の例えばエッジをカウントし、そのカウント値に応じたカウント信号をコントローラ32に出力する。
【0021】
コントローラ32は、信号の受渡しや信号レベルの整合を担うインタフェース回路34と、このコンプレッサ駆動制御機能の中枢を担うCPU36と、プログラムや初期値などを予め格納しているROM38、及びデータの書込み及び読出しが可能なRAM40を備えたマイクロコンピュータで構成されている。
【0022】
このコントローラ32には、前記CPU36から供給されるドライブ信号及びPWM信号に基づき前記インバータ18の通電状態を変更するドライバ42が接続されている。
【0023】
さらに、このコンプレッサ駆動制御装置10には非接触で電流検出を行う2つの電流検出器44及び46が装備されており、一方はインバータ18の入力側線路に配置され、もう一方は交流電源12の出力側線路に配置されている。2つの電流検出器44,46による電流検出信号はA/D変換器48,50を夫々介してコントローラ32に供給されている。
【0024】
さらに、コントローラ32は別のドライバ52を介して、電磁制御弁の構造を成す四方弁52のコイルにも接続されている。これにより、四方弁52に通電してその連結経路を冷房サイクルと暖房サイクルのいずれかに変更できるようになっている。この四方弁52は冷媒の冷凍サイクルを構成する循環系に挿入されており、前述したコンプレッサ26にも連結されている。
【0025】
前記コントローラ32のROM38に格納されているプログラムには、後述する図2〜3に記載のルーチンが含まれる。これらのルーチン処理を介して、PWM方式によるブラシレスDCモータ20の速度制御(すなわち、コンプレッサ26の運転制御)、コンプレッサ26のトルク脈動補正、さらには本発明の特徴を成す、トルク脈動補正の補正量の調整処理などの機能がソフトウエア的に実現される。
【0026】
したがって、特許請求の範囲に記載の構成要件の内、ブラシレスDCモータ20、コンプレッサ26、及び四方弁54を除く構成要件は、このCPU36を中心とするマイクロコンピュータの一部関与又は全面関与によって機能的に実現され、フローチャートにそれが図示されている(後述の第2,第3の実施形態においても同様である)。また、ROM38は本願発明を実行させるための記録媒体をも成す。
【0027】
第1の実施形態に戻って、図2及び図3は共にCPU36によって実行されるコンプレッサ駆動制御の概略を示す。この内、図2のメイン処理は電源オンに応答して開始され、電源オフまで繰返し実行されるメイン処理の概略を示す。もう一方の図3の処理は、図2のメイン処理の実行中に、一定の微小時間Δt毎に実行されるタイマ割込み処理の概略を示す。
【0028】
図2のメイン処理の概略を説明する。CPU36はその起動後、所定の初期設定処理を行う(ステップS1)。次いで、CPU36はカウンタ30から出力されるカウント信号を読み込み、このカウント信号に基づき現在のモータ回転速度、すなわちコンプレッサ26の現在の運転周波数nを検出する(ステップS2)。
【0029】
次いで、CPU36は、外部から指令されている速度指令信号を読み込み、この信号に対応した運転周波数と現在の運転周波数nとの差分(速度差)を演算し、この差分値に応じた回転速度指令値VPを演算する(ステップS3)。
【0030】
この後、CPU36は、現在の運転周波数nと予め設定してあるトルク脈動補正上限周波数Nとについて、n≦Nか否かを判断する(ステップS4)。一般に、コンプレッサ26を低い周波数で運転すると、そのトルクの脈動に因って振動や騒音が大きくなるので、この振動及び騒音の抑制範囲を抑制するために、トルク脈動補正上限周波数Nが設定されている。すなわち、このトルク脈動補正上限周波数Nは、トルク脈動補正を行う最大周波数(最大回転速度)であって、この値よりも低い周波数範囲でトルク脈動補正を行うことを規定するものである。
【0031】
このステップS4の判断がNO、つまりn>Nになっているときには次のステップS5の処理はスキップされ、その一方で、この判断がYES、つまりn≦Nが成立するときには所定の低周波数範囲であると認識して、ステップS5に移行する。このステップにおいて、CPU36は、後述する図3の処理によって略リアルタイムに更新されている現在のトルク脈動補正量SCをRAM40内の所定記憶領域から読み出す。
【0032】
次いで、上述の2つのステップで演算及び読み出した回転速度指令値VP及びトルク脈動補正量SCに基づくトータルの回転速度指令値Vを演算する(ステップS6)。そして、CPU36は、このトータルの指令値Vに応じたドライブ信号とPWM信号をドライバ42に出力することで、ドライバ42に対してブラシレスDCモータ20の回転速度制御を指令する(ステップS7)。これにより、ドライバ42はインバータ18における通電のデューティ比を指令値Vに応じてPWM制御するので、モータ20の回転速度、すなわちコンプレッサ26の運転周波数は指令値Vに対応した値に制御される。
【0033】
この回転速度制御の指令が終わると、CPU36は停止制御を行う(ステップS8)。すなわち、所定の停止条件が満足されたか否かを判断し、かかる条件が満足されると、ブラシレスDCモータ20の回転停止に要する指令をドライバ42に行い、一方、停止条件が満足されないときにはステップS2に戻って上述した処理を繰り返す。
【0034】
一方、図3のタイマ割込み処理は図2のメイン処理が実行されている間、一定時間Δt毎に実行される。この割込み処理が起動すると、CPU36はカウンタ30のカウント信号からブラシレスモータ20の現在の回転速度(すなわち、コンプレッサの現在の運転周波数n)を検出する(ステップS11)。次いで、この運転周波数nについてn≦N(N:トルク脈動補正上限周波数)か否かを判断する(ステップS12)。この判断でNO、すなわちn>Nの場合、何もせずにメイン処理に戻る。
【0035】
しかし、YESの判断、すなわちn≦Nの条件が成立し、運転周波数nが低い領域にあるときには、次いで、その運転周波数nに応じてトルク脈動補正量SCを調整し、記憶する処理を行う(ステップS13)。この補正量SCの更新は、一例として、ROM38の所定記憶領域に予め記憶させてあるテーブルを参照して実行される。
【0036】
このテーブルの例を図4及び図5に示す。両方の図は共に、横軸に運転周波数nをとり、縦軸にトルク脈動補正量SCをとっており、このグラフに対応したデータがテーブルとして予め記憶されている。図4のトルク補正量SCのグラフによれば、運転周波数nが一定値に達すると最大補正量まで立ち上がり、その後、トルク脈動補正上限周波数Nまで直線的に減少する。これに対し、図5のトルク補正量SCのグラフは、運転周波数nが一定値に達すると最大補正量まで立ち上がり、その後、トルク脈動補正上限周波数Nまで段階的に減少する。
【0037】
図4又は図5の何れの補正量曲線を採用するかは任意である。また、この補正量SCの更新は必ずしもテーブル参照により求める構成を採らなくてもよく、例えば、その都度、運転周波数nを関数とする演算式を解いて求めてもよい。
【0038】
このため、図4又は図5の何れの補正量曲線に拠っても、現在の運転周波数nが高くなるほど小さくなる補正量SCが逐一、更新設定される。当然に、運転周波数nが低くなると、補正量SCは高い値に更新設定される。
【0039】
この補正量SCの更新が終わると、その後の処理はメイン処理に戻される。したがって、前述したメイン処理において呼び出される補正量SCは常にその時点の運転周波数nの高低を反映した値に、ほぼリアルタイムに設定されている。
【0040】
このため、図2のステップS7を介して実行されるn≦N時の回転速度制御にあっては、外部から供給される速度指令信号及び現在の運転周波数との差分に基づくPWMデューティ比が、ロータ1回転中の特定の位相にて前述の如く調整されたトルク脈動補正量SCに相当する割合だけアップされ、又は、特定の位相にて前述の如く調整されたトルク脈動補正量SCに相当する割合だけダウンされる。
【0041】
一般に、モータ回転数(コンプレッサ運転周波数)が高くなると、インバータの入力電流が増加するので、運転周波数の増加に対して従来の如く常に同じ補正量でトルク脈動を補正していると、運転周波数が高くなるほど、インバータの許容値を超えた電流が流れ易くなる。
【0042】
しかしながら、本実施形態では、従来のように運転周波数が変わっても常に一定の同じ割合でデューティ比をアップ又はダウンさせるという制御法は採らず、上述したように、運転周波数が上昇するにつれて連続的に(図4参照)又は段階的に(図5参照)トルク脈動補正量を低減させている。
【0043】
このため、例えばコンプレッサ26を運転している周囲温度などの環境変化に因って負荷トルクが大きくなり、モータ20の巻線の電流脈動が大きくなっても、インバータ18の入力電流がその許容電流値を瞬時的に越えるという状態を殆ど確実に防止できる。したがって、瞬時的な電流に因るインバータ18の回路素子の焼損やダメージなどを殆ど確実に防止でき、これにより、インバータ自体の長寿命化を図ることができる。
【0044】
コンプレッサ26の振動や騒音は運転周波数が低いほど顕著に現れるが、本実施形態ではn≦Nの低い運転周波数領域ではありながら、その領域内の高い方の運転周波数で重点的に補正量を減少させているので、全体としてのトルク脈動補正の効果には殆ど影響しない。したがって、上述のインバータ電流の抑制と並行して、従来と同等の的確なトルク脈動補正を効果的に発揮させ、コンプレッサに起因した振動や騒音を確実に抑制することもできる。
【0045】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る空気調和機を、図6〜9を参照して説明する。この実施形態に係る空気調和機は、前述した図1に示す構成のコンプレッサ駆動制御装置10を備えており、そのハード的な構成は第1の実施形態のものと同じである。
【0046】
この第2の実施形態によれば、コントローラ32のCPU36は、そのメイン処理として、前述した図2及び図3に示す処理を行うものの、トルク脈動補正量の更新及びトルク脈動補正に関連した運転制御を、図6に示すタイマ割込み処理によって更に付加的に実行する。つまり、この第2の実施形態では第1の実施形態で発揮される機能に加え、図6に示す処理による機能も得られる。
【0047】
図6のタイマ割込み処理は一定時間Δt毎に実行される。CPU36は、この図6の処理が起動すると、電流検出器44からの電流検出信号を読み込み、インバータ18の入力電流iが検出され、そのピーク値ipが演算される(ステップS20,S21)。
【0048】
次いで、インバータ18の許容電流値に対応して予め設定されているしきい値ithに対して、このピーク値ipがip≧ithであるか否かを判断する(ステップS22)。このステップでCPU36がNO、すなわちip<ithであると判断したときには、その処理はそのままメイン処理に戻される。
【0049】
しかし、YES、すなわちip≧ithが成立すると認識したときには、インバータ入力電流iの増大分に応じてトルク脈動補正量SCを低減させる処理を行う(ステップS23)。この処理は、例えば図7に示す如く予め設定されているROM38内の記憶テーブルを参照することで行われる。同図のトルク脈動補正量SCの特性よれば、第1の実施形態と同様に運転周波数nの増加に伴って補正量SCは低下する一方で、インバータ入力電流が大きくなるほど、補正量SC全体の値が低減されている。このため、同じ運転周波数nであっても、インバータ入力電流iが増えると、その増加分に対応した値だけ低下させたトルク脈動補正量SCに更新設定される。
【0050】
なお、このステップS23で参照するデータは、図7に示す特性の内、インバータ入力電流iとトルク脈動補正量SCの関係のみである(運転周波数nとトルク脈動補正量SCの関係は前述した図3の処理で既に参照されている)。
【0051】
この更新設定の後、CPU36は再度、インバータ入力電流iを検出し、そのピーク値ipを演算し、さらにピーク値ipが所定値以上低下したか否かを判断する(ステップS24〜S26)。この判断がYES(ピーク値ipが所定値以上低下した)となるときには、その時点では、インバータ入力電流に応じて補正量を低減させる処理を行う前の運転周波数でのトルク脈動補正量よりも小さい補正量でトルク脈動補正が掛かっていることになるので、CPU36は、運転周波数を補正量低下に相当する分だけアップさせる(すなわち、モータの回転速度を補正量低下に相当する分だけ上げる)指令を出す。これにより、例えば図8に示す如く、運転周波数がアップされ、コンプレッサ26の振動や騒音が抑制される。
【0052】
一般に、このような状態は瞬時に改善されるものではないことを考慮して、CPU36は次いで、次回のコンプレッサ起動時までの間は、その時点のトルク脈動補正量で運転することができる最低周波数以下の値での運転を禁止する(ステップS28:図8参照)。これにより、「運転周波数のダウン、電流脈動の増加、トルク脈動補正量の減少、運転周波数のアップ、そして、脈動電流の低下」と巡るハンチング現象に陥る事態を回避できる。ステップS28の後はメイン処理に戻る。
【0053】
一方、前述したステップS26でNO、すなわちインバータ入力電流の増加に応じてトルク脈動補正量を低下させても、インバータ入力電流のピーク値が低下しないと判断された場合、CPU36は、トルク脈動補正の中断指令を出す(ステップS29)。次いで、インバータ入力電流iを検出し、そのピーク値ipを演算し、さらにピーク値ipが所定値以上低下したか否かを判断する(ステップS30〜S32)。この判断がYES(ピーク値ipが所定値以上低下した)となるときには、トルク脈動補正の中断に因ってコンプレッサからの振動及び騒音が増加するのを抑えるために、図9に例示する如く、運転周波数をトルク脈動制御上限周波数Nまでアップさせる(ステップS33)。この後、メイン処理に戻る。
【0054】
一方、ステップS32でNO、すなわちトルク脈動補正を中断させてもインバータ入力電流が思うように低下しないときには、CPU36はコンプレッサの運転そのものを中断させる指令を行う(ステップS34)。この後、メイン処理に戻る。
【0055】
なお、上述したステップS27、S33における運転周波数アップは図2の処理で使用する指令値Vを更新することで対処され、ステップS28、S29、S34における運転制御の指令は、図2のステップS7の回転速度制御に反映されるパラメータを更新することで対処される。
【0056】
このように本実施形態によれば、ブラシレスDCモータ20の負荷が大きいことに因り、第1の実施形態による運転周波数nに応じて補正量が変化するトルク脈動補正が行われた場合でも、依然として、インバータ18の入力電流がその許容値を超えてしまいそうな状態を未然に感知して、それを防止することができる。すなわち、インバータ入力電流が大きくなると、トルク脈動補正量を減少させるので、インバータ18を過大電流に因る破壊などから殆ど確実に防止することができる。
【0057】
加えて、何らかの事情に因って、このインバータ入力電流の増加に応じた補正量の低減を行っても依然として、インバータ入力電流が所望値以上に低下しないときには、トルク脈動補正の中断やコンプレッサの運転中断などの運転制御を行うので、2重、3重の保護機能を持たせることができる。これにより、インバータ18及びその周辺回路を過大電流に因る破壊から一層確実に防御することができる。
【0058】
なお、この第2の実施形態において、図6のステップS23で補正量を低減処理するときの対象信号はインバータ入力電流に限定されること無く、例えば空気調和機の運転電流(セット電流)であってもよい。この運転電流は、図1に示す交流電源側の電流検出器46による電流検出信号から、前述と同様に検出すればよい。この運転電流が大きくなるにしたがって、例えば図10に示す如く、トルク脈動補正量SCをテーブル参照法や演算により求めることで、同様の制御を行うことができる。
【0059】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る空気調和機を、図10〜13を参照して説明する。この実施形態に係る空気調和機は、前述した図1に示す構成のコンプレッサ駆動制御装置10を備えており、そのハード的な構成は第1の実施形態のものと同じである。
【0060】
この第3の実施形態に係るコンプレッサ駆動制御装置は、ブラシレスDCモータ20の起動、四方弁54の通電切替、及びトルク脈動位相角の判定のタイミングを規制する制御及びこれに関連した運転制御に特徴を有する。
【0061】
具体的には、コントローラ32のCPU36によって、図1のステップS1に関わる初期設定処理の一部として図11に部分的に示す処理が実行されるとともに、運転制御として図12に示す微小時間Δt毎のタイマ割込み処理が実行される。
【0062】
図11の処理によれば、CPU36は、一例として、最初に四方弁54への通電を切り替えて、安定な流路位置に移動させる(図13中の(a)参照:ステップS1a、S1b)。次いで、ブラシレスDCモータ20を起動させる(ステップS1c、S1d)。そしてこの後、トルク脈動補正の位相角判定を行う(ステップS1e)。一般に、位相角判定はモータの起動直後に行われるので、ここでも、それに従うシーケンスになっている。
【0063】
これにより、図13に示す如く、四方弁への通電が最初に切り替えられ、安定した後に、ブラシレスDCモータ20が起動させられる。そして所定時間経過した後で、トルク脈動位相角の判定に入る。したがって、従来のように、トルク脈動補正の位相角判定中に四方弁26が作動させられ、1回転中のトルク変動に乱れが生じ、トルクの大きい回転位相とトルクの小さい回転位相との間の速度差が正確に判定できなくなるといった事態を防止できる。
【0064】
なお、トルク脈動補正の位相角判定が終了した後で、四方弁54の位置切替用の通電を行ってもよい(図13中の(b)参照)。
【0065】
一方、タイマ割込み方式で実行される図12に記載の処理によれば、CPU36は、現在の運転周波数nを検出してn≦Nか否かを判断する(ステップS41、S42)。この判断がNO(n>N)のときにはそのままメイン処理に戻るが、YES(n≦N)のときには引き続いてステップS43〜S46の処理を実行する。
【0066】
すなわち、トルク脈動補正が開始されたときは、トルク脈動補正を行っている位相区間を通過する時間を検出し、その時間の平均状態を求める(ステップS43〜S46)。
【0067】
次いで、トルク脈動補正を実行したことによりトルク脈動が低減したか否かを、演算した平均状態に基づき判断する(ステップS47)。仮に、この位相区間を通過する時間が平均されずに分散される場合(ステップS47でNO)、トルク脈動補正の位相角判定が誤っているので、トルク脈動補正を中断すべくパラメータを設定する(ステップS48)。そして、トルク脈動補正上限周波数N以下での運転を禁止し、上限周波数Nを超える周波数で運転するようにパラメータを制御する(ステップS49)。このステップS49の処理に代えて、トルク脈動補正の位相角判定をやり直す処理を行ってもよい。
【0068】
このようにトルク脈動補正の位相角判定のタイミングを適正化し、さらに、その位相角判定の合否のチャックし、不備な場合の運転制御法まで提供できるので、前述した実施形態と同等の作用効果に加え、トルク脈動補正を安定的に且つより精度良く実施することができるという効果が得られる。
【0069】
なお、図4,7,10の実施形態において、コンプレッサの運転周波数の上昇に伴って調整するトルク脈動補正量は、その運転周波数の変化に拠らずに、常に一定の割合で変化する(補正量の傾きが一定)ように設定しているが、本発明に係る運転周波数とトルク脈動補正量との変化の関係は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図14(a)〜(c)に示す如く変化させてもよい。同図(a)に示す関係は、トルク脈動補正量の減少割合を運転周波数が上昇するにつれて指数関数的に減らしたもの、同図(b)に示す関係は、トルク脈動補正量の減少割合を運転周波数が上昇するにつれて逆指数関数的に減らしたもの、さらに、同図(c)に示す関係は運転周波数の上昇の初め付近と終わり付近で、特に、トルク脈動補正量の減少割合を大きくしたものである。これらの特性は、コンプレッサの振動の周波数特性などの応じて適宜に選択でき、これにより設計の自由度が増す。
【0070】
さらに、前述の実施形態にあっては、コントローラ32はマイクロコンピュータをその主要素として構成したが、このコントローラは、前述したと同等の機能を持たせるようにデジタル回路やリレー、スイッチ素子などのシーケンス回路を組み合わせて構成することもできる。
【0071】
上述した各実施形態およびその変形例は単なる例示であって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載にしたがって決まるもので、本発明の範囲を逸脱しない範囲において様々な態様のコンプレッサ駆動制御装置、空気調和機、及び記録媒体を実施することができる。
【0072】
本発明に係るコンプレッサ駆動制御装置及び空気調和機によれば、インバータなどの駆動手段の入力電流の許容値内でトルク脈動補正を最大限に発揮させて振動や騒音を効果的に抑制するとともに、過電流に因る機器や回路部品の焼損などを確実に防止して、高寿命で、性能が安定した装置を提供することができる。また、これに付随して、駆動手段に入力する電流などを抑制する運転上の制御手段を持たせているので、信頼性の高い装置を提供することができる。
【0073】
また、トルク脈動位相角の誤判定を防止し、より確実なトルク脈動位相角の判定結果を得て、これに応じて的確なトルク脈動補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る、空気調和機のコンプレッサ駆動制御装置の電気的な概略構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態においてCPUによって実行されるメイン処理を示す概略フローチャート。
【図3】第1の実施形態においてCPUによって実行されるトルク脈動補正量の更新処理を示すタイマ割込み処理の概略フローチャート。
【図4】運転周波数とトルク脈動補正量の関係の一例を示すグラフ。
【図5】運転周波数とトルク脈動補正量の関係に関する別の例を示すグラフ。
【図6】第2の実施形態においてCPUによって実行されるトルク脈動補正量の更新処理を中心に示すタイマ割込み処理の概略フローチャート。
【図7】運転周波数、インバータ入力電流、及びトルク脈動補正量の関係の一例を示すグラフ。
【図8】トルク脈動補正量の時間変化の一例を示す図。
【図9】トルク脈動補正量の時間変化の別の一例を示す図。
【図10】変形例に係る、運転周波数、セット運転電流、及びトルク脈動補正量の関係の一例を示すグラフ。
【図11】第3の実施形態においてCPUにより初期設定処理の一部として実行される処理の概略フローチャート。
【図12】第3の実施形態においてCPUによって実行される運転制御を示すタイマ割込み処理の概略フローチャート。
【図13】起動からトルク脈動補正に至る時間変化の一例を示す図。
【図14】運転周波数とトルク脈動補正量の関係の別の例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0075】
10 コンプレッサ駆動制御装置
18 インバータ
20 ブラシレスDCモータ
26 コンプレッサ
28 回転子位置検出器
30 カウンタ
32 コントローラ
36 CPU
38 ROM
40 RAM
42 PWMドライバ
44、46 電流検出器
48、50 A/D変換器
52 ドライバ
54 四方弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサの運転に伴って発生するトルクの脈動を抑制する空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機においては、例えば特公平4−36000号公報、特公平6−48916号公報、特開平10−174488号公報、及び特開平11−46493号公報に見られる如く、ブラシレスDCモータ(無整流子直流電動機)を回転させてコンプレッサを駆動するコンプレッサ駆動制御装置が多用されている。
【0003】
コンプレッサとしては、1シリンダ構造又は2シリンダ構造のロータリ式の圧縮機構を備えたコンプレッサがあり、このコンプレッサの圧縮機構にブラシレスDCモータの回転軸が直結される。このモータは、モータ駆動装置を成すインバータによりPWM(パルス幅変調)方式で回転駆動されるので、モータの回転と一体にコンプレッサも回転運転される。
【0004】
このコンプレッサ、とくに、1シリンダ構造のコンプレッサはその運転に伴うトルクの脈動が大きい。この脈動は室外機からの振動や騒音をもたらすので、通常、モータ1回転中の特定位相区間の電圧の通電率(デューティ)を可変し、トルクの脈動を抑制するトルク脈動補正が実施されている。
【0005】
また、このトルク脈動補正に際し、トルク脈動位相角の判定が行われる。コンプレッサは冷媒流路切換用の電磁制御弁としての四方弁に接続されているが、モータ起動時に四方弁への通電を切り替え、モータ起動直後にトルク脈動位相角の判定を行っている。
【特許文献1】特公平4−36000号公報
【特許文献2】特公平6−48916号公報
【特許文献3】特開平10−174488号公報
【特許文献4】特開平11−46493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のトルク脈動補正にあっては、この補正を実施すると、モータ巻線電流が大きく脈動し、モータ駆動装置、すなわちインバータの入力電流にも脈動を生じ、そのピーク値が大きくなる傾向がある。このため、室内外の温度や設定温度、及びその他の環境条件に応じて、かかるピーク値がインバータの許容範囲を超えてしまうことがある。このような逸脱が生じると、機器や回路部品が焼損したり、耐寿命性を低下させてしまうという問題が発生する。
【0007】
また、前述したモータ起動、四方弁への通電、及びトルク脈動位相角判定のタイミング関係によれば、かかる判定中に四方弁が動作することがある。そのような事態に至ると、1回転中のトルク変動が乱れて、トルクの大きい回転位相とトルクの小さい回転位相の速度差が正確に求めることができない。つまり、トルク位相角が正確に判定されず、誤判定に陥るという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、トルク脈動位相角の誤判定を防止し、より確実なトルク脈動位相角の判定結果を得て、これに応じて的確なトルク脈動補正を行うことを、第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するため、請求項1の発明によれば、四方弁に接続されたコンプレッサに直結され且つ当該コンプレッサを可変速駆動するブラシレスDCモータと、このブラシレスDCモータをPWM(パルス幅変調)方式で駆動する駆動手段と、前記コンプレッサの負荷トルクの脈動位相を検出する位相検出手段とを備えたコンプレッサ駆動制御装置を搭載した空気調和機において、前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記位相検出手段が負荷トルクの脈動位相を検出している期間には前記四方弁の通電状態の変更を禁止する通電禁止手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
例えば、請求項2の発明によれば、前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記四方弁に通電を行って当該四方弁の位置を安定させる通電手段と、この通電手段の通電による位置安定後に前記ブラシレスDCモータを起動させる起動手段と、この起動後に前記位相検出手段を作動させる作動指令手段とを備える。
【0011】
これにより、四方弁への通電切替とトルク脈動位相角の判定とを同時に行わないようにでき、トルク脈動位相角の誤判定を防止できる。したがって、より確実なトルク脈動位相角の判定結果をもたらすことができ、この判定結果を反映して的確なトルク脈動補正を行うことができる。
【0012】
一例として、請求項3の発明では、前記コンプレッサは、1シリンダ構造のロータリ式コンプレッサで構成される。これにより、トルク脈動が大きいコンプレッサであっても、その脈動が的確に補正され、振動や騒音の発生が抑制されるとともに、過電流から回路要素を保護できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トルク脈動位相角の誤判定を防止し、より確実なトルク脈動位相角の判定結果を得て、これに応じて的確なトルク脈動補正を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る空気調和機を図1〜5を参照して説明する。この空気調和機は、本発明に係るコンプレッサ駆動制御装置を適用して実施されている。
【0016】
図1に、空気調和機のコンプレッサ駆動制御装置10を中心とした部分的な構成ブロック図を示す。
【0017】
このコンプレッサ駆動制御装置10は、交流電源12から交流電力が供給される整流回路14を備える。この整流回路14の出力端には平滑コンデンサ16が並列接続されるとともに、駆動手段としてのインバータ18が接続されている。このインバータ18は6個のトランジスタと夫々のトランジスタに逆並列接続された6個のダイオードとから成る半導体スイッチ群を備える。各トランジスタのベース電圧は後述するPWMドライバによってPWM(パルス幅変調)方式で制御される。
【0018】
インバータ18の3個の出力端はブラシレスDCモータ20に接続されている。このブラシレスDCモータ20は、3相結線された3本の電機子巻線22と磁石回転子24を備える。3本の電機子巻線22が前述したインバータ13の出力端に夫々接続される一方、磁石回転子4がコンプレッサ26の軸に機械的に直結されている。
【0019】
コンプレッサ26には、本実施形態では、1シリンダ構造のロータリ式が採用されている。
【0020】
また、ブラシレスDCモータ20の3本の電機子巻線22の夫々は回転子位置検出器28にも電気的に接続され、各電機子巻線22に誘起される電圧がこの検出器28により検出される。回転子位置検出器28はその電圧信号を回転子位置パルス信号に変換して、これを後段のカウンタ30に出力する。カウンタ30は回転子位置パルス信号の例えばエッジをカウントし、そのカウント値に応じたカウント信号をコントローラ32に出力する。
【0021】
コントローラ32は、信号の受渡しや信号レベルの整合を担うインタフェース回路34と、このコンプレッサ駆動制御機能の中枢を担うCPU36と、プログラムや初期値などを予め格納しているROM38、及びデータの書込み及び読出しが可能なRAM40を備えたマイクロコンピュータで構成されている。
【0022】
このコントローラ32には、前記CPU36から供給されるドライブ信号及びPWM信号に基づき前記インバータ18の通電状態を変更するドライバ42が接続されている。
【0023】
さらに、このコンプレッサ駆動制御装置10には非接触で電流検出を行う2つの電流検出器44及び46が装備されており、一方はインバータ18の入力側線路に配置され、もう一方は交流電源12の出力側線路に配置されている。2つの電流検出器44,46による電流検出信号はA/D変換器48,50を夫々介してコントローラ32に供給されている。
【0024】
さらに、コントローラ32は別のドライバ52を介して、電磁制御弁の構造を成す四方弁52のコイルにも接続されている。これにより、四方弁52に通電してその連結経路を冷房サイクルと暖房サイクルのいずれかに変更できるようになっている。この四方弁52は冷媒の冷凍サイクルを構成する循環系に挿入されており、前述したコンプレッサ26にも連結されている。
【0025】
前記コントローラ32のROM38に格納されているプログラムには、後述する図2〜3に記載のルーチンが含まれる。これらのルーチン処理を介して、PWM方式によるブラシレスDCモータ20の速度制御(すなわち、コンプレッサ26の運転制御)、コンプレッサ26のトルク脈動補正、さらには本発明の特徴を成す、トルク脈動補正の補正量の調整処理などの機能がソフトウエア的に実現される。
【0026】
したがって、特許請求の範囲に記載の構成要件の内、ブラシレスDCモータ20、コンプレッサ26、及び四方弁54を除く構成要件は、このCPU36を中心とするマイクロコンピュータの一部関与又は全面関与によって機能的に実現され、フローチャートにそれが図示されている(後述の第2,第3の実施形態においても同様である)。また、ROM38は本願発明を実行させるための記録媒体をも成す。
【0027】
第1の実施形態に戻って、図2及び図3は共にCPU36によって実行されるコンプレッサ駆動制御の概略を示す。この内、図2のメイン処理は電源オンに応答して開始され、電源オフまで繰返し実行されるメイン処理の概略を示す。もう一方の図3の処理は、図2のメイン処理の実行中に、一定の微小時間Δt毎に実行されるタイマ割込み処理の概略を示す。
【0028】
図2のメイン処理の概略を説明する。CPU36はその起動後、所定の初期設定処理を行う(ステップS1)。次いで、CPU36はカウンタ30から出力されるカウント信号を読み込み、このカウント信号に基づき現在のモータ回転速度、すなわちコンプレッサ26の現在の運転周波数nを検出する(ステップS2)。
【0029】
次いで、CPU36は、外部から指令されている速度指令信号を読み込み、この信号に対応した運転周波数と現在の運転周波数nとの差分(速度差)を演算し、この差分値に応じた回転速度指令値VPを演算する(ステップS3)。
【0030】
この後、CPU36は、現在の運転周波数nと予め設定してあるトルク脈動補正上限周波数Nとについて、n≦Nか否かを判断する(ステップS4)。一般に、コンプレッサ26を低い周波数で運転すると、そのトルクの脈動に因って振動や騒音が大きくなるので、この振動及び騒音の抑制範囲を抑制するために、トルク脈動補正上限周波数Nが設定されている。すなわち、このトルク脈動補正上限周波数Nは、トルク脈動補正を行う最大周波数(最大回転速度)であって、この値よりも低い周波数範囲でトルク脈動補正を行うことを規定するものである。
【0031】
このステップS4の判断がNO、つまりn>Nになっているときには次のステップS5の処理はスキップされ、その一方で、この判断がYES、つまりn≦Nが成立するときには所定の低周波数範囲であると認識して、ステップS5に移行する。このステップにおいて、CPU36は、後述する図3の処理によって略リアルタイムに更新されている現在のトルク脈動補正量SCをRAM40内の所定記憶領域から読み出す。
【0032】
次いで、上述の2つのステップで演算及び読み出した回転速度指令値VP及びトルク脈動補正量SCに基づくトータルの回転速度指令値Vを演算する(ステップS6)。そして、CPU36は、このトータルの指令値Vに応じたドライブ信号とPWM信号をドライバ42に出力することで、ドライバ42に対してブラシレスDCモータ20の回転速度制御を指令する(ステップS7)。これにより、ドライバ42はインバータ18における通電のデューティ比を指令値Vに応じてPWM制御するので、モータ20の回転速度、すなわちコンプレッサ26の運転周波数は指令値Vに対応した値に制御される。
【0033】
この回転速度制御の指令が終わると、CPU36は停止制御を行う(ステップS8)。すなわち、所定の停止条件が満足されたか否かを判断し、かかる条件が満足されると、ブラシレスDCモータ20の回転停止に要する指令をドライバ42に行い、一方、停止条件が満足されないときにはステップS2に戻って上述した処理を繰り返す。
【0034】
一方、図3のタイマ割込み処理は図2のメイン処理が実行されている間、一定時間Δt毎に実行される。この割込み処理が起動すると、CPU36はカウンタ30のカウント信号からブラシレスモータ20の現在の回転速度(すなわち、コンプレッサの現在の運転周波数n)を検出する(ステップS11)。次いで、この運転周波数nについてn≦N(N:トルク脈動補正上限周波数)か否かを判断する(ステップS12)。この判断でNO、すなわちn>Nの場合、何もせずにメイン処理に戻る。
【0035】
しかし、YESの判断、すなわちn≦Nの条件が成立し、運転周波数nが低い領域にあるときには、次いで、その運転周波数nに応じてトルク脈動補正量SCを調整し、記憶する処理を行う(ステップS13)。この補正量SCの更新は、一例として、ROM38の所定記憶領域に予め記憶させてあるテーブルを参照して実行される。
【0036】
このテーブルの例を図4及び図5に示す。両方の図は共に、横軸に運転周波数nをとり、縦軸にトルク脈動補正量SCをとっており、このグラフに対応したデータがテーブルとして予め記憶されている。図4のトルク補正量SCのグラフによれば、運転周波数nが一定値に達すると最大補正量まで立ち上がり、その後、トルク脈動補正上限周波数Nまで直線的に減少する。これに対し、図5のトルク補正量SCのグラフは、運転周波数nが一定値に達すると最大補正量まで立ち上がり、その後、トルク脈動補正上限周波数Nまで段階的に減少する。
【0037】
図4又は図5の何れの補正量曲線を採用するかは任意である。また、この補正量SCの更新は必ずしもテーブル参照により求める構成を採らなくてもよく、例えば、その都度、運転周波数nを関数とする演算式を解いて求めてもよい。
【0038】
このため、図4又は図5の何れの補正量曲線に拠っても、現在の運転周波数nが高くなるほど小さくなる補正量SCが逐一、更新設定される。当然に、運転周波数nが低くなると、補正量SCは高い値に更新設定される。
【0039】
この補正量SCの更新が終わると、その後の処理はメイン処理に戻される。したがって、前述したメイン処理において呼び出される補正量SCは常にその時点の運転周波数nの高低を反映した値に、ほぼリアルタイムに設定されている。
【0040】
このため、図2のステップS7を介して実行されるn≦N時の回転速度制御にあっては、外部から供給される速度指令信号及び現在の運転周波数との差分に基づくPWMデューティ比が、ロータ1回転中の特定の位相にて前述の如く調整されたトルク脈動補正量SCに相当する割合だけアップされ、又は、特定の位相にて前述の如く調整されたトルク脈動補正量SCに相当する割合だけダウンされる。
【0041】
一般に、モータ回転数(コンプレッサ運転周波数)が高くなると、インバータの入力電流が増加するので、運転周波数の増加に対して従来の如く常に同じ補正量でトルク脈動を補正していると、運転周波数が高くなるほど、インバータの許容値を超えた電流が流れ易くなる。
【0042】
しかしながら、本実施形態では、従来のように運転周波数が変わっても常に一定の同じ割合でデューティ比をアップ又はダウンさせるという制御法は採らず、上述したように、運転周波数が上昇するにつれて連続的に(図4参照)又は段階的に(図5参照)トルク脈動補正量を低減させている。
【0043】
このため、例えばコンプレッサ26を運転している周囲温度などの環境変化に因って負荷トルクが大きくなり、モータ20の巻線の電流脈動が大きくなっても、インバータ18の入力電流がその許容電流値を瞬時的に越えるという状態を殆ど確実に防止できる。したがって、瞬時的な電流に因るインバータ18の回路素子の焼損やダメージなどを殆ど確実に防止でき、これにより、インバータ自体の長寿命化を図ることができる。
【0044】
コンプレッサ26の振動や騒音は運転周波数が低いほど顕著に現れるが、本実施形態ではn≦Nの低い運転周波数領域ではありながら、その領域内の高い方の運転周波数で重点的に補正量を減少させているので、全体としてのトルク脈動補正の効果には殆ど影響しない。したがって、上述のインバータ電流の抑制と並行して、従来と同等の的確なトルク脈動補正を効果的に発揮させ、コンプレッサに起因した振動や騒音を確実に抑制することもできる。
【0045】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る空気調和機を、図6〜9を参照して説明する。この実施形態に係る空気調和機は、前述した図1に示す構成のコンプレッサ駆動制御装置10を備えており、そのハード的な構成は第1の実施形態のものと同じである。
【0046】
この第2の実施形態によれば、コントローラ32のCPU36は、そのメイン処理として、前述した図2及び図3に示す処理を行うものの、トルク脈動補正量の更新及びトルク脈動補正に関連した運転制御を、図6に示すタイマ割込み処理によって更に付加的に実行する。つまり、この第2の実施形態では第1の実施形態で発揮される機能に加え、図6に示す処理による機能も得られる。
【0047】
図6のタイマ割込み処理は一定時間Δt毎に実行される。CPU36は、この図6の処理が起動すると、電流検出器44からの電流検出信号を読み込み、インバータ18の入力電流iが検出され、そのピーク値ipが演算される(ステップS20,S21)。
【0048】
次いで、インバータ18の許容電流値に対応して予め設定されているしきい値ithに対して、このピーク値ipがip≧ithであるか否かを判断する(ステップS22)。このステップでCPU36がNO、すなわちip<ithであると判断したときには、その処理はそのままメイン処理に戻される。
【0049】
しかし、YES、すなわちip≧ithが成立すると認識したときには、インバータ入力電流iの増大分に応じてトルク脈動補正量SCを低減させる処理を行う(ステップS23)。この処理は、例えば図7に示す如く予め設定されているROM38内の記憶テーブルを参照することで行われる。同図のトルク脈動補正量SCの特性よれば、第1の実施形態と同様に運転周波数nの増加に伴って補正量SCは低下する一方で、インバータ入力電流が大きくなるほど、補正量SC全体の値が低減されている。このため、同じ運転周波数nであっても、インバータ入力電流iが増えると、その増加分に対応した値だけ低下させたトルク脈動補正量SCに更新設定される。
【0050】
なお、このステップS23で参照するデータは、図7に示す特性の内、インバータ入力電流iとトルク脈動補正量SCの関係のみである(運転周波数nとトルク脈動補正量SCの関係は前述した図3の処理で既に参照されている)。
【0051】
この更新設定の後、CPU36は再度、インバータ入力電流iを検出し、そのピーク値ipを演算し、さらにピーク値ipが所定値以上低下したか否かを判断する(ステップS24〜S26)。この判断がYES(ピーク値ipが所定値以上低下した)となるときには、その時点では、インバータ入力電流に応じて補正量を低減させる処理を行う前の運転周波数でのトルク脈動補正量よりも小さい補正量でトルク脈動補正が掛かっていることになるので、CPU36は、運転周波数を補正量低下に相当する分だけアップさせる(すなわち、モータの回転速度を補正量低下に相当する分だけ上げる)指令を出す。これにより、例えば図8に示す如く、運転周波数がアップされ、コンプレッサ26の振動や騒音が抑制される。
【0052】
一般に、このような状態は瞬時に改善されるものではないことを考慮して、CPU36は次いで、次回のコンプレッサ起動時までの間は、その時点のトルク脈動補正量で運転することができる最低周波数以下の値での運転を禁止する(ステップS28:図8参照)。これにより、「運転周波数のダウン、電流脈動の増加、トルク脈動補正量の減少、運転周波数のアップ、そして、脈動電流の低下」と巡るハンチング現象に陥る事態を回避できる。ステップS28の後はメイン処理に戻る。
【0053】
一方、前述したステップS26でNO、すなわちインバータ入力電流の増加に応じてトルク脈動補正量を低下させても、インバータ入力電流のピーク値が低下しないと判断された場合、CPU36は、トルク脈動補正の中断指令を出す(ステップS29)。次いで、インバータ入力電流iを検出し、そのピーク値ipを演算し、さらにピーク値ipが所定値以上低下したか否かを判断する(ステップS30〜S32)。この判断がYES(ピーク値ipが所定値以上低下した)となるときには、トルク脈動補正の中断に因ってコンプレッサからの振動及び騒音が増加するのを抑えるために、図9に例示する如く、運転周波数をトルク脈動制御上限周波数Nまでアップさせる(ステップS33)。この後、メイン処理に戻る。
【0054】
一方、ステップS32でNO、すなわちトルク脈動補正を中断させてもインバータ入力電流が思うように低下しないときには、CPU36はコンプレッサの運転そのものを中断させる指令を行う(ステップS34)。この後、メイン処理に戻る。
【0055】
なお、上述したステップS27、S33における運転周波数アップは図2の処理で使用する指令値Vを更新することで対処され、ステップS28、S29、S34における運転制御の指令は、図2のステップS7の回転速度制御に反映されるパラメータを更新することで対処される。
【0056】
このように本実施形態によれば、ブラシレスDCモータ20の負荷が大きいことに因り、第1の実施形態による運転周波数nに応じて補正量が変化するトルク脈動補正が行われた場合でも、依然として、インバータ18の入力電流がその許容値を超えてしまいそうな状態を未然に感知して、それを防止することができる。すなわち、インバータ入力電流が大きくなると、トルク脈動補正量を減少させるので、インバータ18を過大電流に因る破壊などから殆ど確実に防止することができる。
【0057】
加えて、何らかの事情に因って、このインバータ入力電流の増加に応じた補正量の低減を行っても依然として、インバータ入力電流が所望値以上に低下しないときには、トルク脈動補正の中断やコンプレッサの運転中断などの運転制御を行うので、2重、3重の保護機能を持たせることができる。これにより、インバータ18及びその周辺回路を過大電流に因る破壊から一層確実に防御することができる。
【0058】
なお、この第2の実施形態において、図6のステップS23で補正量を低減処理するときの対象信号はインバータ入力電流に限定されること無く、例えば空気調和機の運転電流(セット電流)であってもよい。この運転電流は、図1に示す交流電源側の電流検出器46による電流検出信号から、前述と同様に検出すればよい。この運転電流が大きくなるにしたがって、例えば図10に示す如く、トルク脈動補正量SCをテーブル参照法や演算により求めることで、同様の制御を行うことができる。
【0059】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る空気調和機を、図10〜13を参照して説明する。この実施形態に係る空気調和機は、前述した図1に示す構成のコンプレッサ駆動制御装置10を備えており、そのハード的な構成は第1の実施形態のものと同じである。
【0060】
この第3の実施形態に係るコンプレッサ駆動制御装置は、ブラシレスDCモータ20の起動、四方弁54の通電切替、及びトルク脈動位相角の判定のタイミングを規制する制御及びこれに関連した運転制御に特徴を有する。
【0061】
具体的には、コントローラ32のCPU36によって、図1のステップS1に関わる初期設定処理の一部として図11に部分的に示す処理が実行されるとともに、運転制御として図12に示す微小時間Δt毎のタイマ割込み処理が実行される。
【0062】
図11の処理によれば、CPU36は、一例として、最初に四方弁54への通電を切り替えて、安定な流路位置に移動させる(図13中の(a)参照:ステップS1a、S1b)。次いで、ブラシレスDCモータ20を起動させる(ステップS1c、S1d)。そしてこの後、トルク脈動補正の位相角判定を行う(ステップS1e)。一般に、位相角判定はモータの起動直後に行われるので、ここでも、それに従うシーケンスになっている。
【0063】
これにより、図13に示す如く、四方弁への通電が最初に切り替えられ、安定した後に、ブラシレスDCモータ20が起動させられる。そして所定時間経過した後で、トルク脈動位相角の判定に入る。したがって、従来のように、トルク脈動補正の位相角判定中に四方弁26が作動させられ、1回転中のトルク変動に乱れが生じ、トルクの大きい回転位相とトルクの小さい回転位相との間の速度差が正確に判定できなくなるといった事態を防止できる。
【0064】
なお、トルク脈動補正の位相角判定が終了した後で、四方弁54の位置切替用の通電を行ってもよい(図13中の(b)参照)。
【0065】
一方、タイマ割込み方式で実行される図12に記載の処理によれば、CPU36は、現在の運転周波数nを検出してn≦Nか否かを判断する(ステップS41、S42)。この判断がNO(n>N)のときにはそのままメイン処理に戻るが、YES(n≦N)のときには引き続いてステップS43〜S46の処理を実行する。
【0066】
すなわち、トルク脈動補正が開始されたときは、トルク脈動補正を行っている位相区間を通過する時間を検出し、その時間の平均状態を求める(ステップS43〜S46)。
【0067】
次いで、トルク脈動補正を実行したことによりトルク脈動が低減したか否かを、演算した平均状態に基づき判断する(ステップS47)。仮に、この位相区間を通過する時間が平均されずに分散される場合(ステップS47でNO)、トルク脈動補正の位相角判定が誤っているので、トルク脈動補正を中断すべくパラメータを設定する(ステップS48)。そして、トルク脈動補正上限周波数N以下での運転を禁止し、上限周波数Nを超える周波数で運転するようにパラメータを制御する(ステップS49)。このステップS49の処理に代えて、トルク脈動補正の位相角判定をやり直す処理を行ってもよい。
【0068】
このようにトルク脈動補正の位相角判定のタイミングを適正化し、さらに、その位相角判定の合否のチャックし、不備な場合の運転制御法まで提供できるので、前述した実施形態と同等の作用効果に加え、トルク脈動補正を安定的に且つより精度良く実施することができるという効果が得られる。
【0069】
なお、図4,7,10の実施形態において、コンプレッサの運転周波数の上昇に伴って調整するトルク脈動補正量は、その運転周波数の変化に拠らずに、常に一定の割合で変化する(補正量の傾きが一定)ように設定しているが、本発明に係る運転周波数とトルク脈動補正量との変化の関係は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図14(a)〜(c)に示す如く変化させてもよい。同図(a)に示す関係は、トルク脈動補正量の減少割合を運転周波数が上昇するにつれて指数関数的に減らしたもの、同図(b)に示す関係は、トルク脈動補正量の減少割合を運転周波数が上昇するにつれて逆指数関数的に減らしたもの、さらに、同図(c)に示す関係は運転周波数の上昇の初め付近と終わり付近で、特に、トルク脈動補正量の減少割合を大きくしたものである。これらの特性は、コンプレッサの振動の周波数特性などの応じて適宜に選択でき、これにより設計の自由度が増す。
【0070】
さらに、前述の実施形態にあっては、コントローラ32はマイクロコンピュータをその主要素として構成したが、このコントローラは、前述したと同等の機能を持たせるようにデジタル回路やリレー、スイッチ素子などのシーケンス回路を組み合わせて構成することもできる。
【0071】
上述した各実施形態およびその変形例は単なる例示であって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載にしたがって決まるもので、本発明の範囲を逸脱しない範囲において様々な態様のコンプレッサ駆動制御装置、空気調和機、及び記録媒体を実施することができる。
【0072】
本発明に係るコンプレッサ駆動制御装置及び空気調和機によれば、インバータなどの駆動手段の入力電流の許容値内でトルク脈動補正を最大限に発揮させて振動や騒音を効果的に抑制するとともに、過電流に因る機器や回路部品の焼損などを確実に防止して、高寿命で、性能が安定した装置を提供することができる。また、これに付随して、駆動手段に入力する電流などを抑制する運転上の制御手段を持たせているので、信頼性の高い装置を提供することができる。
【0073】
また、トルク脈動位相角の誤判定を防止し、より確実なトルク脈動位相角の判定結果を得て、これに応じて的確なトルク脈動補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態に係る、空気調和機のコンプレッサ駆動制御装置の電気的な概略構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態においてCPUによって実行されるメイン処理を示す概略フローチャート。
【図3】第1の実施形態においてCPUによって実行されるトルク脈動補正量の更新処理を示すタイマ割込み処理の概略フローチャート。
【図4】運転周波数とトルク脈動補正量の関係の一例を示すグラフ。
【図5】運転周波数とトルク脈動補正量の関係に関する別の例を示すグラフ。
【図6】第2の実施形態においてCPUによって実行されるトルク脈動補正量の更新処理を中心に示すタイマ割込み処理の概略フローチャート。
【図7】運転周波数、インバータ入力電流、及びトルク脈動補正量の関係の一例を示すグラフ。
【図8】トルク脈動補正量の時間変化の一例を示す図。
【図9】トルク脈動補正量の時間変化の別の一例を示す図。
【図10】変形例に係る、運転周波数、セット運転電流、及びトルク脈動補正量の関係の一例を示すグラフ。
【図11】第3の実施形態においてCPUにより初期設定処理の一部として実行される処理の概略フローチャート。
【図12】第3の実施形態においてCPUによって実行される運転制御を示すタイマ割込み処理の概略フローチャート。
【図13】起動からトルク脈動補正に至る時間変化の一例を示す図。
【図14】運転周波数とトルク脈動補正量の関係の別の例を示すグラフ。
【符号の説明】
【0075】
10 コンプレッサ駆動制御装置
18 インバータ
20 ブラシレスDCモータ
26 コンプレッサ
28 回転子位置検出器
30 カウンタ
32 コントローラ
36 CPU
38 ROM
40 RAM
42 PWMドライバ
44、46 電流検出器
48、50 A/D変換器
52 ドライバ
54 四方弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四方弁に接続されたコンプレッサに直結され且つ当該コンプレッサを可変速駆動するブラシレスDCモータと、このブラシレスDCモータをPWM(パルス幅変調)方式で駆動する駆動手段と、前記コンプレッサの負荷トルクの脈動位相を検出する位相検出手段とを備えたコンプレッサ駆動制御装置を搭載した空気調和機において、
前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記位相検出手段が負荷トルクの脈動位相を検出している期間には前記四方弁の通電状態の変更を禁止する通電禁止手段を備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記四方弁に通電を行って当該四方弁の位置を安定させる通電手段と、この通電手段の通電による位置安定後に前記ブラシレスDCモータを起動させる起動手段と、この起動後に前記位相検出手段を作動させる作動指令手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記コンプレッサは、1シリンダ構造のロータリ式コンプレッサであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項1】
四方弁に接続されたコンプレッサに直結され且つ当該コンプレッサを可変速駆動するブラシレスDCモータと、このブラシレスDCモータをPWM(パルス幅変調)方式で駆動する駆動手段と、前記コンプレッサの負荷トルクの脈動位相を検出する位相検出手段とを備えたコンプレッサ駆動制御装置を搭載した空気調和機において、
前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記位相検出手段が負荷トルクの脈動位相を検出している期間には前記四方弁の通電状態の変更を禁止する通電禁止手段を備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記コンプレッサ駆動制御装置は、前記四方弁に通電を行って当該四方弁の位置を安定させる通電手段と、この通電手段の通電による位置安定後に前記ブラシレスDCモータを起動させる起動手段と、この起動後に前記位相検出手段を作動させる作動指令手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記コンプレッサは、1シリンダ構造のロータリ式コンプレッサであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−55783(P2009−55783A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290643(P2008−290643)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願平11−290247の分割
【原出願日】平成11年10月12日(1999.10.12)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願平11−290247の分割
【原出願日】平成11年10月12日(1999.10.12)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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