説明

空気調和装置の意匠パネルを製造する方法および空気調和装置の意匠パネル

【課題】端部における意匠パネルのR面の確保や見栄えの良さの確保を実現できる空気調和装置の意匠パネルを提供する。
【解決手段】意匠パネル80は、樹脂成形で樹脂層10を成形後、金型内に塗料注入して樹脂層10の上に塗装層20を形成させ、切断加工で仕上げられるもので、視認面81b,81cを含む第1部81、R面83aを持つ湾曲端部83、および両者81,83の間で視認面81cとR面83aとを結ぶ平面82aを持つ第2部82を備える。第1部81では樹脂層10の上に塗装層20が形成され、第2部82および湾曲端部83は樹脂層10のみから成る。平面82aは、第1部81の樹脂層10の第2部近傍の表面81aに対して傾斜している。第1部81の塗装層20の第2部近傍部分は、平面82aと連続した平面81cとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置の意匠パネルを製造する方法および空気調和装置の意匠パネル、特に、樹脂成形により樹脂層を成形した後に金型内に塗料を注入して樹脂層の上に塗装層を形成させるインモールドコーティング法を用いる方法や意匠パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭のリビングルームなどに設置される空気調和装置の室内ユニットにおいては、最近、意匠性を向上させるために、樹脂層の上に塗装層が形成された意匠パネルを前面パネルとして採用する動きが出てきている。
【0003】
室内ユニットの前面パネルのようにプラスチック成形品(樹脂成形品)に対しては、スプレーなどの方法によって揮発性有機溶剤を含んだ塗料を表面に付け、揮発性溶剤を蒸発させることで、塗装層を形成させることが考えられる。
【0004】
しかし、最近では、特許文献1に示されているように、型内塗装を行って塗装層を良好に短時間で形成させるインモールドコーティング法を用いて、塗装層を持つ樹脂成形品を製造することも提案されている。
【特許文献1】特開2004−223943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されているようなインモールドコーティング法によって空気調和装置の意匠パネルを製造しようと考える場合、意匠パネルがフィルタ交換などのために取り外し可能となっており、その端部の角についてはR面を形成するためのR処理を施す必要がある。一方、インモールドコーティング法によって樹脂層の上に塗装層を形成するときには、塗装層の端については、きれいに形状を出すことが困難であり、塗装層の端部にR面を形成させることは難しい。このため、インモールドコーティング法を単に空気調和装置の意匠パネルの製造に転用するだけでは、意匠パネルの縁のR処理が不十分となって取り扱いの安全性を損なったり意匠性を低下させたりする恐れがある。
【0006】
本発明の課題は、端部における意匠パネルのR面の確保や見栄えの良さの確保を実現できる空気調和装置の意匠パネルを製造する方法および空気調和装置の意匠パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、樹脂層と塗装層とから成る空気調和装置の意匠パネルを製造する方法であって、第1工程〜第5工程を備えている。第1工程では、金型内で樹脂層の成形を行って樹脂層成形品を作る。第2工程では、第1工程の後に、金型を少し離間させて、樹脂層成形品と金型との間に空間を確保する。第3工程では、第2工程で確保した空間に塗料を注入する。第4工程では、第3工程で注入した塗料を硬化させ、樹脂層成形品と塗装層とが一体となった意匠パネル成形品を生成する。第5工程では、第4工程後に意匠パネル成形品を金型から取り出し、意匠パネル成形品の塗装層の端部を切断して意匠パネルとする。樹脂層の端部には、R面が形成され、樹脂層の端部の近傍には、第1平面が形成され、R面と第1平面との間には、第1平面に対して内側に傾斜した第2平面が形成されるように、且つ、樹脂層の第1平面の上には塗装層が一体に形成され、R面および第2平面の上には塗装層が形成されないように、金型の形状が決められて第1〜第4工程が行われる。また、第5工程では、第2平面と連続する切断面に沿って塗装層の端部が切断される。
【0008】
この空気調和装置の意匠パネルを製造する方法では、第1〜第4工程において、樹脂層成形品に塗装層が一体となった意匠パネル成形品を得ることができる。そして、第5工程における意匠パネル成形品の塗装層の端部の切断によって、塗装層の切断面、樹脂層の第2平面および樹脂層のR面が連続した面となった意匠パネルが完成する。このように、ここでは、塗装層の切断面、樹脂層の第2平面および樹脂層のR面が連続した面となって意匠パネルの見栄えが良くなるとともに、端部にR面を確保することができて意匠パネルを取り扱う人の安全性が向上する。また、塗装層が形成される第1平面に対して樹脂層の第2平面が内側に傾斜しているため、塗装層のない第2平面が目立たず、意匠性も殆ど低下しない。
【0009】
第2発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、樹脂層の上に塗装層が形成される意匠パネルであって、第1部と、湾曲端部と、第2部とを備えている。第1部は、外部から視認される視認面を含む部分である。湾曲端部は、角部がR処理され、湾曲面を有している部分である。第2部は、第1部と湾曲端部との間に位置し、視認面と湾曲面とを結ぶ平面を含んでいる。また、第1部には、樹脂層の表面に塗装層が形成され、第2部および湾曲端部は、樹脂層のみから成っている。第2部の平面は、第1部の樹脂層の第2部近傍の表面に対して、第2部の裏面側に所定角度だけ傾斜している。そして、第1部の塗装層の第2部近傍部分が、第2部の平面と連続した平面となっている。
【0010】
この空気調和装置の意匠パネルでは、第1部の視認面と湾曲端部の湾曲面とを第2部の平面が結んでおり、且つ、第1部の塗装層の第2部近傍部分が第2部の平面と連続しているため、意匠パネルの見栄えが良くなっている。また、湾曲端部が樹脂層のみから成っているため、湾曲面を尖りなく形成することができ、意匠パネルを取り扱う人の安全性が向上している。さらに、第1部の塗装層の第2部近傍部分および第2部の平面が、第1部の樹脂層の表面に対して裏面側に傾斜して湾曲端部の湾曲面につながっているため、意匠パネルの意匠性が殆ど低下しない。
【0011】
第3発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、第2発明の意匠パネルであって、樹脂成形により樹脂層を成形した後に金型内に塗料を注入して樹脂層の上に塗装層を形成させるインモールドコーティング法によって成形され、その後の加工によって仕上げられるものである。そして、第1部の塗装層の第2部近傍部分は、インモールドコーティング法による成形後に、第2部の平面を基準として切断加工されて、第2部の平面と連続した平面となっている。
【0012】
ここでは、塗装層を備えず樹脂層のみから成る第2部の平面の存在により、第1部の塗装層の第2部近傍部分の切断加工を、第2部の平面を基準として行うことができている。そして、第2部の平面を基準として切断加工を行っているため、第1部の塗装層の第2部近傍部分と第2部の平面との連続が滑らかとなり、意匠パネルの製造安定性が向上する。
【0013】
第4発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、第3発明の意匠パネルであって、視認面と湾曲面とは、0.5mm以上離れており、第2部の平面により連続した面となっている。
【0014】
ここでは、第1部の視認面と湾曲端部の湾曲面とを0.5mm以上離し、その間を第2部の平面により結ぶ構成を採っているため、第2部の平面を基準とした第1部の塗装層の切断加工を確実に行うことができる。
【0015】
第5発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、第2発明、第3発明、あるいは第4発明の意匠パネルであって、第1部の樹脂層の第2部近傍の表面に対する第2部の平面の傾斜角度(所定角度)が、1度以上である。
【0016】
ここでは、第1部の樹脂層の第2部近傍の表面に対して第2部の平面を1度以上裏面側に傾斜させているので、視認面よりも湾曲端部側にある第2部の平面が意匠パネルにおいて目立たなくなり、意匠パネルの意匠性が向上する。
【0017】
第6発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、樹脂成形により樹脂層を成形した後に金型内に塗料を注入して樹脂層の上に塗装層を形成させるインモールドコーティング法によって成形され、その後の加工によって仕上げられる。この空気調和装置の意匠パネルは、第1部と、湾曲端部と、第2部とを備えている。第1部は、外部から視認される視認面を含む部分である。湾曲端部は、角部がR処理され、湾曲面を有している部分である。第2部は、第1部と湾曲端部との間に位置し、視認面と湾曲面とを結ぶ平面を含んでいる。また、第1部には、樹脂層の表面に塗装層が形成され、第2部および湾曲端部は、樹脂層のみから成っている。第2部の平面は、第1部の樹脂層の第2部近傍の表面に対して、第2部の裏面側に所定角度だけ傾斜している。そして、第1部の塗装層の第2部近傍部分が、第2部の平面と連続した平面となっている。
【0018】
この空気調和装置の意匠パネルでは、第1部の視認面と湾曲端部の湾曲面とを第2部の平面が結んでおり、且つ、第1部の塗装層の第2部近傍部分が第2部の平面と連続しているため、意匠パネルの見栄えが良くなっている。また、湾曲端部が樹脂層のみから成っているため、湾曲面を尖りなく形成することができ、意匠パネルを取り扱う人の安全性が向上している。さらに、第1部の塗装層の第2部近傍部分および第2部の平面が、第1部の樹脂層の表面に対して裏面側に傾斜して湾曲端部の湾曲面につながっているため、意匠パネルの意匠性が殆ど低下しない。
【発明の効果】
【0019】
第1発明の空気調和装置の意匠パネルを製造する方法によれば、意匠パネルの見栄えが良くなり、意匠パネルを取り扱う人の安全性が向上し、意匠パネルの意匠性も殆ど低下しない。
【0020】
第2,第6発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、湾曲面を尖りなく形成することができ、取り扱い者の安全性が向上し、意匠性も殆ど低下しない。
【0021】
第3発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、第2部の平面を基準として切断加工を行っており、製造安定性が向上する。
【0022】
第4発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、第2部の平面を基準とした第1部の塗装層の切断加工を確実に行うことができる。
【0023】
第5発明に係る空気調和装置の意匠パネルは、視認面よりも湾曲端部側にある第2部の平面が目立たなくなり、意匠性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<空気調和装置の全体構成>
本発明の一実施形態にかかる空気調和装置を、図1に示す。この空気調和装置1は、室内の壁面に取り付けられる壁掛け型の室内ユニット2と室外ユニット3とを有しており、両者2,3が連絡冷媒配管4や通信線で結ばれる。
【0025】
空気調和装置1は、図2に示す冷媒回路を構成する。この冷媒回路は、主として、室内熱交換器70、アキュムレータ31、圧縮機32、四路切換弁33、室外熱交換器30および電動膨張弁34で構成される。
【0026】
室内ユニット2に設けられる室内熱交換器70は、室内空気との間で熱交換を行う。また、室内ユニット2には、室内ファン71が設けられている。室内ファン71は、室内ユニット2内に設けられる室内ファンモータ72によって回転駆動され、室内空気を室内ユニット2内に吸い込ませ、室内熱交換器70に通し、熱交換が行われた後の空気を室内に排出する。室内ユニット2内に吸い込まれる室内空気は、主として室内ユニット2の本体60の上面に形成されている吸込口を通るが、その吸込口のすぐ下には、図3に示すようにフィルタ90が配置されている。これらのフィルタ90は、室内ユニット2の本体60の正面側に着脱自在に取り付けられている意匠パネル(前面パネル)80を外した状態において、本体60に対して装着したり脱着したりすることができる。
【0027】
室外ユニット3には、圧縮機32と、圧縮機32の吐出側に接続される四路切換弁33と、圧縮機32の吸入側に接続されるアキュムレータ31と、四路切換弁33に接続される室外熱交換器30と、室外熱交換器30に接続される電動膨張弁34とが設けられている。電動膨張弁34は、連絡冷媒配管4の液配管41に接続されており、この配管41を介して室内熱交換器70の一端と接続される。また、四路切換弁33は、連絡冷媒配管4のガス配管42に接続されており、この配管42を介して室内熱交換器70の他端と接続されている。また、室外ユニット3には、室外熱交換器30での熱交換後の空気を外部に排出するための室外ファン38が設けられている。この室外ファン38は、室外ファンモータ39によって回転駆動される。
【0028】
<空気調和装置の概略動作>
以上の構成により、室内ユニット2は、室内ファン71によって室内ユニット2の内部に吸い込んだ空気を、室内熱交換器70に通すことで除熱あるいは加熱して、室内へと吹き出す。除熱(冷房)あるいは加熱(暖房)といった空気調和処理は、吸込空気の温度や熱交換器の温度などを基に、電動膨張弁34、圧縮機32、室外ファンモータ39、室内ファンモータ72などの制御により行われる。
【0029】
<意匠パネルの構成>
上述のように、室内ユニット2は意匠パネル80を備えており、この意匠パネル80は室内ユニット2の本体60に対して着脱自在となっている。意匠パネル80は、後述するインモールドコーティング法によって成形されて仕上げ加工(切断加工)によって完成するものであり、樹脂層10と塗装層20との2層構成となっている。意匠パネル80の大半は正面側を向くフラットな平面部であるが、上部、左部および右部については背面側に向けて折り曲がる構造となっている。その折り曲がりの部分の拡大図を、図4に示す。図4において、上側が室内ユニット2の正面側、下側が室内ユニット2の背面側となる。
【0030】
図4に示すように、意匠パネル80は、正面を向くフラット部および背面側に折り曲げられた部分の大半を含む第1部81と、背面側の端部である湾曲端部83と、両部81,83の間に位置する第2部82とを備えている。第1部81は、室内に居る人から主に視認される視認面81b,81cを含んでいる。湾曲端部83は、意匠パネル80の表面80a側の角部および裏面80b側の角部にR処理(角部を丸める処理)が施されており、R面83a,83bを有する。また、湾曲端部83は、これらのR面83a,83bの間に位置する平面83cも含んでおり、その表面がR面83a,83bと平面83cとから成っている。第2部82は、第1部81と湾曲端部83との間に位置し、視認面81b,81cとR面83aとを結ぶ、表面80a側の平面82aを含んでいる。ここでは、視認面81b,81cとR面83aとを約1.0mm離している。後述する切断加工における基準として平面82aを用いるため、視認面81b,81cとR面83aとは少なくとも0.5mmは離しておく必要がある。
【0031】
また、第1部81には、樹脂層10の表面に塗装層20が形成されているが、第2部82および湾曲端部83は、樹脂層10のみから成る。第2部82の平面82aは、第1部81の樹脂層10の第2部82の近傍の表面81aに対して、第2部82の裏面82b側に、1.0〜1.5度だけ傾斜している。そして、第1部81の塗装層20の第2部82の近傍部分が、第2部82の平面82aと連続した平面(視認面)81cとなっている。
【0032】
<意匠パネルの製造方法>
上述の意匠パネル80は、樹脂成形により樹脂層10を成形した後に金型51,52(図5参照)の中に塗料を注入して樹脂層10の上に塗装層20を形成させるインモールドコーティング法によって成形され、その後の切断加工によって仕上げられる。具体的には、次のような各工程を経て意匠パネル80が製造される。この意匠パネル80の製造方法を、図5を参照して説明する。
【0033】
まず、第1工程では、図5(A)に示すように、金型51,52内で樹脂層10の成形を行って樹脂層成形品11を作る。ここで、上記の湾曲端部83のR面83a,83b、第2部82の平面82a、第1部81の第2部82の近傍の表面81aなども最終形状に成形される。
【0034】
次に、第1工程後の第2工程では、図5(B)に示すように金型51,52を少し離間させて、樹脂層成形品11と金型51との間に空間20aを確保する。図5(B)に示す状態を、金型51,52の型開状態と称す。
【0035】
次に、第2工程後の第3工程では、空間20aに塗料を注入する。塗料としては、熱硬化性塗料が用いられる。塗料の注入には、インジェクタ54を使用する。インジェクタ54は、図示しない計量シリンダと塗料タンクとに接続されており、金型51に形成されている塗料注入口から液体状の塗料を注入する。
【0036】
次に、第3工程後の第4工程では、金型51,52を再び近づけ、すなわち、金型51,52の型開状態を型締状態にして、第3工程で注入した塗料を硬化させる。ここでは、熱硬化性塗料の硬化反応の進行によって流動性が失われる前に速やかに金型51,52を型締状態にすることが求められる。そして、金型51,52の温度コントロールによって、注入された所定量の塗料が、樹脂層成形品11の上に一体に形成されて塗装層20となる。
【0037】
このような第1工程〜第4工程によって、樹脂層成形品11(樹脂層10)と塗装層20とが一体となった意匠パネル成形品15が生成される。
【0038】
第4工程後、金型51,52から外された意匠パネル成形品15は、その塗装層20の端部が、図4の点線で示すように意匠パネル80の最終形状にはなっていない。そこで、第1〜第4工程に続き、仕上げの切断加工を第5工程において行う。
【0039】
第5工程では、意匠パネル成形品15の塗装層20の端部を、樹脂層10の平面82a(上記の第2部82の平面82a)を基準として切断加工する。これにより、塗装層20の端部(第1部81の塗装層20の第2部82の近傍部分)が、第2部82の平面82aと連続した平面(視認面)81cとなる。そして、図4に示すように、意匠パネル80の表面80aとして、正面側から、第1部81の塗装層20の視認面81b,81c、第2部82の平面82a、湾曲端部83のR面83aが連続した状態で形成される。
【0040】
<空気調和装置の意匠パネルの特徴>
(1)
この空気調和装置1の意匠パネル80では、第1部81の視認面81b,81cと湾曲端部83のR面83aとを第2部82の平面82aが結んでおり、且つ、第1部81の塗装層20の第2部82の近傍部分が第2部82の平面82aと連続しているため、意匠パネル80の見栄えが良くなっている。また、湾曲端部83が樹脂層10のみから成っているため、R面83aを尖りなく形成することができ、意匠パネル80を取り扱う人の安全性が向上している。さらに、第1部81の塗装層20の第2部82の近傍部分および第2部82の平面82aが、第1部81の樹脂層10の表面81aに対して裏面82b側に傾斜して湾曲端部83のR面83aにつながっているため、意匠パネル80の意匠性が殆ど低下していない。
【0041】
言い換えると、この空気調和装置1の意匠パネル80を製造する方法では、第1〜第4工程において、樹脂層成形品11に塗装層20が一体となった意匠パネル成形品15を得ることができる。そして、第5工程における意匠パネル成形品15の塗装層20の端部の切断によって、塗装層20の切断面である視認面81c、樹脂層10から成る第2部82の平面82aおよび樹脂層10から成る湾曲端部83のR面83aが連続した面となった意匠パネル80が完成している。このように、ここでは、塗装層20の切断面である視認面81c、第2部82の平面82aおよび湾曲端部83のR面83aが連続した面となって意匠パネル80の見栄えが良くなるとともに、湾曲端部83(意匠パネル80の端部)にR面83aを確保することができて意匠パネル80を取り扱う人の安全性が向上する。また、塗装層20が形成される第1部81の樹脂層10の表面81aに対して第2部82の樹脂層10の平面82aが内側に傾斜しているため、塗装層20のない平面82aが正面から見たときに目立たず、意匠パネル80の意匠性は殆ど低下しない。
【0042】
(2)
この空気調和装置1の意匠パネル80では、塗装層20を備えず樹脂層10のみから成る第2部82の平面82aの存在により、第1部81の塗装層20の第2部82の近傍部分の切断加工を、第2部82の平面82aを基準として行うことができている。そして、0.5mm以上(ここでは約1.0mm)の幅のある第2部82の平面82aを切断加工の基準としているため、第1部81の塗装層20の切断面(視認面)81cと第2部82の平面82aとの連続が滑らかとなり、その切断角度も安定し、意匠パネル80の製造安定性が向上している。
【0043】
(3)
この空気調和装置1の意匠パネル80では、第1部81の樹脂層10の第2部82の近傍の表面81aに対して第2部82の平面82aを1度以上(1.0〜1.5度)裏面82b側に傾斜させているので、視認面81b,81cよりも湾曲端部83側にある第2部82の平面82aが意匠パネル80の正面視において目立たなくなり、意匠パネル80の意匠性が向上している。
【0044】
<変形例>
上記の実施形態では、意匠パネル80の大半が正面側を向くフラットな平面部であり、その平面部(フラット部)と背面側に折り曲げられた部分の大半を第1部81と表記しているが、本発明は、正面側を向く部分がフラットな平面部になっている意匠パネルに限定されるものではなく、正面側を向く部分が湾曲していたり凹凸を有していたり桟が形成されていたりする意匠パネルに対して適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】空気調和装置の外観概略斜視図。
【図2】空気調和装置の冷媒回路図。
【図3】室内ユニットの本体、フィルタおよび意匠パネルの分解斜視図。
【図4】意匠パネルの一部拡大断面図。
【図5】意匠パネルのインモールドコーティング法による製造方法を示す図。
【符号の説明】
【0046】
1 空気調和装置
2 室内ユニット
10 樹脂層
11 樹脂層成形品
15 意匠パネル成形品
20 塗装層
20a 空間
51 金型
52 金型
54 インジェクタ
80 意匠パネル
81 第1部
81a 第1部の樹脂層の第2部近傍の表面
81b 視認面
81c 視認面(平面、切断面)
82 第2部
82a 平面
83 湾曲端部(樹脂層の端部)
83a R面(湾曲面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層(10)と塗装層(20)とから成る空気調和装置(1)の意匠パネル(80)を製造する方法であって、
金型(51,52)内で前記樹脂層(10)の成形を行って樹脂層成形品(11)を作る第1工程と、
前記第1工程後に、前記金型(51,52)を少し離間させて、前記樹脂層成形品(11)と前記金型(51)との間に空間(20a)を確保する第2工程と、
前記第2工程で確保した前記空間(20a)に塗料を注入する第3工程と、
前記第3工程で注入した前記塗料を硬化させ、前記樹脂層成形品(11)と前記塗装層(20)とが一体となった意匠パネル成形品(15)を生成する第4工程と、
前記第4工程後に前記意匠パネル成形品(15)を前記金型から取り出し、前記意匠パネル成形品(15)の前記塗装層(20)の端部を切断して前記意匠パネル(80)とする第5工程と、
を備え、
前記樹脂層の端部(83)には、R面(83a)が形成され、前記樹脂層の端部の近傍には、第1平面(81a)が形成され、前記R面と前記第1平面との間には、前記第1平面に対して内側に傾斜した第2平面(82a)が形成されるように、且つ、前記樹脂層の前記第1平面(81a)の上には前記塗装層(20)が一体に形成され、前記R面(83a)および前記第2平面(82a)の上には前記塗装層(20)が形成されないように、前記金型の形状が決められて前記第1〜第4工程が行われ、
前記第5工程では、前記第2平面と連続する切断面(81c)に沿って前記塗装層の端部が切断される、
空気調和装置の意匠パネルを製造する方法。
【請求項2】
樹脂層(10)の上に塗装層(20)が形成される空気調和装置(1)の意匠パネル(80)であって、
外部から視認される視認面(81b,81c)を含む第1部(81)と、
角部がR処理され湾曲面(83a)を有する湾曲端部(83)と、
前記第1部(81)と前記湾曲端部(83)との間に位置し、前記視認面(81b,81c)と前記湾曲面(83a)とを結ぶ平面(82a)を含む第2部(82)と、
を備え、
前記第1部には、前記樹脂層の表面に前記塗装層が形成され、
前記第2部および前記湾曲端部は、前記樹脂層のみから成り、
前記第2部の平面(82a)は、前記第1部(81)の前記樹脂層(20)の前記第2部近傍の表面(81a)に対して、前記第2部(82)の裏面(82b)側に所定角度だけ傾斜しており、
前記第1部(81)の前記塗装層(20)の前記第2部近傍部分が、前記第2部(82)の平面(82a)と連続した平面(81c)となっている、
空気調和装置の意匠パネル。
【請求項3】
樹脂成形により前記樹脂層を成形した後に金型(51,52)内に塗料を注入して樹脂層の上に前記塗装層を形成させるインモールドコーティング法によって成形され、その後の加工によって仕上げられる空気調和装置の意匠パネルであって、
前記第1部の前記塗装層の前記第2部近傍部分は、前記インモールドコーティング法による成形後に、前記第2部の平面を基準として切断加工されて、前記第2部の平面と連続した平面となる、
請求項2に記載の空気調和装置の意匠パネル。
【請求項4】
前記視認面と前記湾曲面とは、0.5mm以上離れており、前記第2部の平面により連続した面となっている、
請求項3に記載の空気調和装置の意匠パネル。
【請求項5】
前記所定角度は、1度以上である、
請求項2から4のいずれかに記載の空気調和装置の意匠パネル。
【請求項6】
樹脂成形により樹脂層(10)を成形した後に金型(51,52)内に塗料を注入して樹脂層の上に塗装層(20)を形成させるインモールドコーティング法によって成形され、その後の加工によって仕上げられる空気調和装置(1)の意匠パネル(80)であって、
外部から視認される視認面(81b,81c)を含む第1部(81)と、
角部がR処理され湾曲面(83a)を有する湾曲端部(83)と、
前記第1部(81)と前記湾曲端部(83)との間に位置し、前記視認面(81b,81c)と前記湾曲面(83a)とを結ぶ平面(82a)を含む第2部(82)と、
を備え、
前記第1部には、前記樹脂層の表面に前記塗装層が形成され、
前記第2部および前記湾曲端部は、前記樹脂層のみから成り、
前記第2部の平面(82a)は、前記第1部(81)の前記樹脂層(20)の前記第2部近傍の表面(81a)に対して、前記第2部(82)の裏面(82b)側に所定角度だけ傾斜しており、
前記第1部(81)の前記塗装層(20)の前記第2部近傍部分が、前記第2部(82)の平面(82a)と連続した平面(81c)となっている、
空気調和装置の意匠パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−55730(P2008−55730A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234490(P2006−234490)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】