説明

空気電池式水酸化金属製造方法及び空気電池式反応装置

【課題】 従来、電源を必要としない電気化学反応により、単に水酸化マグネシウムが生成し、電流が流れると共に水素ガスが発生することは知られていたが、効率よく継続して、水酸化マグネシウムを製造する手段と、前記水酸化マグネシウムを製造すると共に効率よく継続して発電する手段または水素ガスを製造する手段は開示されていなかった。したがって、効率よく継続して水酸化マグネシウムを製造し、水酸化マグネシウムの製造単価を低減し、エネルギー資源を有効活用することを課題とする。
【解決手段】 マグネシウム、アルミニウム等をアノードとし、アノードよりも電気化学的に貴電位の金属または炭素質材をカソードとした電極対と、電極接続導電手段と、溶存酸素供給手段と、pH5以上の電解水とで空気電池を構成することで、効率よく継続して水酸化金属を製造する手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マグネシウムまたはアルミニウム等の電気化学的に卑電位の金属をアノードとし、前記アノードよりも貴電位の金属または炭素質材をカソードとした電極対と、海水または食塩水等の塩素イオン含有の電解水とで空気電池を構成して、水酸化金属を製造すると共に、水素ガスを製造し、発電する水酸化金属製造方法および空気電池式水酸化金属の空気電池と電池式リン除去装置の空気電池を直列接続するリン除去装置等の空気電池式反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水酸化マグネシウムの製造は、ニガリ(塩化マグネシウム)と消石灰(水酸化カルシウム)を反応させて生成する方法が一般的であったが、しかしこの方法は、海水中微量成分のニガリを大量の海水を処理しなければならい。この方法に代わって、最近では、天然産のマグサイト(炭酸マグネシウム)を焼成して出来た軽焼マグサイト(酸化マグネシウム)を水と反応(消和反応)させて水酸化マグネシウムを生成させる方法が開発されている。また、水酸化アルミニウムの製造方法は、アルミニウム塩の水溶液にアルカリを加えると白色沈殿として生成する。また、水酸化亜鉛の製造方法は、亜鉛イオンを含む溶液に水酸化アンモニウムを加えると白色沈殿として生成する。
マグネシウムイオン含有水とアルカリ水溶液との中和晶析により水酸化マグネシウムを製造する方法において、保護コロイドの存在下に製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1。)。
また、軽焼マグネサイトに水を加えて消和反応を行うとき、前記水に予めアクリル酸ポリマー等を加えて製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2。)。
また、酸化マグネシウムと酸化カルシウムを含有する天然産マグネサイトを焼成、粉砕して得られる軽焼マグネしアをpH調整の上、加熱して製造する方法が開示されている(例えば、特許文献3。)。
また、リンを含有する有機性電解質廃水を、電源を設けた電気分解によった電気化学反応手段で処理していた(例えば、特許文献4。)。
また、電源を設けた電気分解によった電気化学反応手段で水酸化マグネシウムを生成して、海底に沈澱・堆積させて海底低質の改善を図る知見が開示されている(例えば、特許文献5。)。
また、電源を設けた電気分解において有機性電解質廃水を加熱して処理する方法が開示されている(例えば、特許文献6。)。
また、異種金属電極で構成した一次電池による電気化学反応手段でリン含有有機質廃水処理する知見が開示されている(例えば、特許文献7。)。
また、水と還元性ガスを導入して、電気分解法で水素ガスを製造する知見が開示されている(例えば、特許文献8。)。
また、異種金属電極で構成した一次電池による電気化学反応手段でリン含有有機質廃水処理を処理してリンを除去すると共に発電する知見が開示されている(例えば、特許文献9。)
また、アルミニウムまたはアルミニウム合金の水中摩擦生成微粒子を水中に浸漬して水素を発生する水素発生材料が開示されている。(例えば、特許文献10)
そしてまた、有機性排水の生物処理システムで生成する汚泥混合液を嫌気性消化槽に移送して嫌気性生物処理すると共にマグネシウム源を添加してリン酸マグネシウムアンモニウム(以後MAPと略記)の結晶粒子を生成及び成長させる方法が開示されている(例えば、特許文献11)
しかし、空気電池式の電気化学反応で効率よく水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウム等の水酸化物を製造する方法と製造装置は見当たらない。また、水酸化物を製造する空気電池とリン除去装置の空気電池を直列接続してリン除去効率を大きくする知見は開示されていない。また、空気電池式の電気化学反応で水酸化物を製造しながら水素ガスを生産し、発電して利用する装置の知見は開示されていない。また、空気電池式の水酸化物製造併用リン除去装置で水酸化物を製造し、リンを除去しながら水素ガスを生産し、発電して利用する装置の知見は開示されていない。また、空気電池式水酸化物製造またはリン除去装置の空気電池の電極対におけるアノードの面積をカソードの面積よりも大きくすることにより電気化学反応速度を大きくする知見は開示されていない。また、空気電池式の水酸化物製造併用リン除去装置における空気電池の電解水に活性化アルミニウム微粉抹を浸漬して、水酸化物の生成収量を多くし、またはリン除去率を大きくする知見は開示されていない。そしてまた、有機性排水の生物処理システムで生成する汚泥混合液を嫌気性消化槽に移送して嫌気性生物処理すると共にマグネシウム源を添加してMAPの結晶粒子を生成及び成長させる方法において、マグネシウム源として、空気電池式水酸化マグネシウム製造装置で製造した水酸化マグネシウムを添加する方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−97210
【特許文献2】特開平7−172822
【特許文献3】特開平8−67515
【特許文献4】特開2001−252668
【特許文献5】特開2004−230244
【特許文献6】特開平10−323672
【特許文献7】特開2007−021427
【特許文献8】特開2007-270256
【特許文献9】特願2005-209593
【特許文献10】特開2008−24590
【特許文献11】特願2003−583953(国際公開番号W02003/086990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電源を必要としない電気化学反応による水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムまたは水酸化亜鉛等の生成に関しては、単にそれらの金属をアノードとした空気電池で水酸化金属が生成し、また電流が流れると共に水素ガスが発生することが知られていたが、効率よく継続して、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムを製造する手段と、前記水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムを製造すると共に効率よく継続して発電する手段または水素ガスを製造する手段は開示されていなかった。そして、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムを製造すると共に効率よく継続して窒素及びリンを除去する手段が開示されていなかった。異種金属をアノードとカソードとした一次電池廃水処理法においては、低pH域においては反応速度も速く、又反応の持続性も良好であるが、中性近傍での反応速度は遅く、また反応の持続性が短い問題があった。また、低pH域においても低温域では反応速度が遅く、実用化出来ない問題があった。そしてまた、電源を有する電気分解法では、電気設備費と電力費が必要である問題があった。
【0005】
従って、本発明においては、効率よく継続して水酸化金属を製造することを課題とする。
【0006】
また、水酸化金属の製造単価を低減することを課題とする。
【0007】
また、富栄養化の原因物質である窒素化合物およびリン酸イオン含有の有機性電解質廃水処理において、電源を必要とせず、しかも効率良く窒素及びリン除去のための電気化学反応を長期間に亘り継続することを第課題とする。
【0008】
また、未利用エネルギー資源を有効活用することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、冬季における水温の低下に伴って電気化学反応速度の低下及び生物化学反応の低下を阻止して、より一層の効率良い電気化学反応と生物化学反応とすることを課題とする。
【0010】
また、効率よい継続した水酸化金属の製造と、水素ガスの製造と、窒素及びリンの除去を一部並行するか全て平行して、または別々に操業しながら、電気設備費と電力費をほとんど必要とせずに、効率よく継続して水素ガスを製造し、発電し、またはリンを除去することを課題とする。
【0011】
そしてまた、空気電池の内部抵抗を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、以下に記載されるような技術構成とする。
即ち、マグネシウムまたはアルミニウム等の電気化学的に卑電位の金属をアノードとし、前記アノードよりも貴電位の金属または炭素質材をカソードとした電極対と、電極接続導電手段と、溶存酸素供給手段と、pH5以上の塩素イオン含有の電解液とで空気電池を構成することで、効率よく継続して水酸化物を製造する空気電池式電気化学反応手段とする。
【0013】
また、単位空気電池を2個以上並列接続、直列または並列・直列混合接続することで水酸化物の製造を効率よく継続し、水酸化金属の製造単価を低減すると共にエネルギー資源を有効活用する空気電池式電気化学反応手段とする。
【0014】
また、空気電池式水酸化金属製造手段の空気電池と、リン酸イオン含有の有機性電解質廃水処理において、マグネシウムまたはアルミニウム等の電気化学的に卑電位の金属をアノードとし、前記アノードよりも貴電位の金属または炭素質材をカソードとした電極対と、電極接続導電手段と、溶存酸素供給手段と、pH5以上のリン酸イオン含有の有機性電解質廃水とで構成した空気電池を直列接続して、安価な水酸化金属を製造する空気電池式電気化学反応手段とすると共に、効率よくリンを除去する空気電池式電気化学反応手段とする。
【0015】
また、空気電池手段で生成する水素ガス捕集手段及び水素ガス貯蔵手段からなる水素ガスシステムと発電手段、集電手段、蓄電手段及び充放電コントローラからなる発電システムの両システム、または単独発電システムを配設することで、空気電池式水酸化物の製造または空気電池式のリン除去単価を低減する空気電池式電気化学反応手段とすると共にエネルギー資源を有効活用する空気電池式電気化学反応手段とする。
【0016】
また、空気電池の電極対において、アノード電極よりもカソード電極の面積を大きくすると共に同一カソードに二箇所以上の導電体を配設するか、またはカソード電極の面積を大きくしたものを分割して分割カソードとすると共に各分割カソードに導電体を一箇所以上配設し該分割カソードを並列接続して内部抵抗を小さくする空気電池式電気化学反応手段とする。
【0017】
また、空気電池式電気化学反応手段の電解水に活性化アルミニウム微粉抹をイオン透過性袋に収納したものを浸漬すると、水酸化物の収量が増加すると共に、リン除去量も増加する手段とする。
【0018】
また、太陽光または廃熱等の加熱手段で加熱すると共に電解水で冷却する加熱手段で電解水を加熱する手段とする。
【0019】
そしてまた、有機性排水の生物処理システムで生成する汚泥混合液を嫌気性消化槽に移送して嫌気性生物処理すると共にマグネシウム源として、空気電池式水酸化マグネシウム製造装置で製造した水酸化マグネシウムを添加してMAPの結晶粒子を生成及び成長させ、前記嫌気性消化槽からMAP結晶粒子を含む固形物を分離及び回収し、前記MAP結晶粒子が分離回収された残りの汚泥混合液の一部を前記嫌気性消化槽に返送して、窒素及びリンを除去すると共に水素ガス製造及び発電する手段とする。
【0020】
本発明の課題解決手段による作用は次のようである。すなわち、マグネシウムまたはアルミニウム等の電気化学的に卑電位の金属をアノードとし、前記アノードよりも貴電位の金属または炭素質材をカソードとした電極対電極接続電導手段と、溶存酸素供給手段と、pH5以上の塩素イオン含有の電解水とで空気電池を構成することで、前記アノードが酸化して金属イオンを電解水に放出すると共に電子が導電体を介してカソードに移動し、該カソードの活物質である酸素と水との還元反応に消費され、その結果として、水酸化金属の沈殿物を生成する。電解水が純水の場合でも、僅かに電流は流れ、電解水が食塩水の場合はより多くの電流が流れることから、塩素イオンが触媒として作用していると考えられる。
【0021】
また、リン酸イオン含有の有機性電解質廃水処理においては、単に水酸化金属の製造におけるように触媒となる塩素イオンを添加して電気化学反応を高める手法は、有機物を分解処理する生物に悪影響を及ぼすため採用し難い。また、水温が低い冬季において、特に有機性電解質廃水を電解質とした空気電池においては、電気化学反応速度が極めて遅くなるが、冬季においても強い発熱を伴う電気化学反応を示す海水または食塩水等の塩素イオンを多量に含有する電解水とマグネシウム等のイオン化傾向が強い金属をアノードとした単位空気電池を前記有機性電解質廃水を電解質とした空気電池に並列及び直列接続することで、前記有機性電解質廃水の電気化学反応も高められる。したがって、水酸化物を製造しながら、リンを除去する作用をする。但し、海水または食塩水等の塩素イオンを多量に含有する電解水とマグネシウム等のイオン化傾向が強い金属をアノードとした空気電池による水酸化金属の生産力は低下するので、この手法は、有機性電解質廃水からリンを除去することを主目的とする場合に適用されやすい。また、一般的に、オルトリン酸イオン含有の電解質廃水をマグネシウム、アルミニウムまたは鉄等の金属をアノードとし、黒炭、白炭、黒鉛又はグラファイト等の炭素質材をカソードとした空気電池を構成して電気化学反応処理手段で処理すると、例えばアルミニウムアノードでは、炭素質材微細孔壁に吸着した酸素分子は酸素原子に解離して、カソードを経由してアルミニウムの溶解反応で電離した電子を水分子と共に受け取り、水酸イオンとして溶解する。一方、アノードでは、アルミニウム原子が3個の電子を金属に残し、電解液に3価のアルミニウムとして溶解し、3個の前記電子はアノードとカソードを電線で接続した外部回路を通してアノードからカソードへ移動する結果として、電流は電線で接続した外部回路を通してカソードからアノードへ流れることになる。そして、水中へ溶解した3価のアルミニウムイオンとオルトリン酸イオンまたは水酸イオンと反応して、難溶解性で沈降性の良い水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムを生成する。さらに、水酸化アルミニウムは脱水反応によりアルミナを生成する。また、マグネシウムアノードでは、水中へ溶解した2価のマグネシウムイオンとオルトリン酸イオンまたは水酸イオンと反応して、難溶解性で沈降性の良い水酸化マグネシウム又はリン酸マグネシウムを生成すると共にオルトリン酸イオンとアンモニウムイオンが共存すると、マグネシウムイオンと反応して肥料となるリン酸マグネシウムアンモニウムを生成する。
【0022】
また、前記リン酸イオン含有の有機性廃水を電解水とした空気電池と、前記食塩水または海水等を電解水とした空気電池を直列接続すると前記リン酸イオン含有の有機性廃水を電解水とした空気電池の閉路電圧と負荷電流が上昇してリン除去効率が増加する。但し、前記食塩水または海水等を電解水とした空気電池の閉路電圧と負荷電流は減少する。
【0023】
また、副反応として、アノードの金属と水が反応した結果として、金属イオンと水酸イオンと水素ガスが生成する。生成水素ガスは微細な気泡の湧昇に伴って、かなり強い水の対流現象が現れる。また、アノードの金属酸化反応は発熱反応であって、水温上昇による対流現象が現れる。この水の対流現象によって、さらに、水表面では大気中酸素が水に溶存酸素として溶解する作用を伴うと共に電解水の濃度勾配の緩和を伴う。溶存酸素供給手段と攪拌手段においてはブロワ−で供給した空気を散気装置から散気して曝気する方式が最も一般的で手軽な方法であるが、表面曝気方式の機械曝気とすることや、酸素ガスを散気装置から散気することも可能であって、経済性以外に何ら制約するものはない。さらに、海における自然曝気としてもよい。曝気攪拌することによって空気電池の電気化学反応に必要な溶存酸素を供給すると共に電極での電気二重層または電気二重層近傍における反応生成物質と反応物質を速やかに交換する作用を奏する。
【0024】
アノードからカソードへ電子が移動するが、電流は逆にカソードからアノードへと流れる、そして、マグネシウムをアノードとし、食塩水を電解液とした空気電池では、起電圧は2.764Vとなるが、内部抵抗が大きいため、閉路電圧は小さくなる。しかし、電極面積を大きくするか、単位空気電池を並列接続すると電流密度が小さくなり、また電極間距離を小さくすることで内部抵抗は小さくなるので、負荷電流発生時の電圧降下を小さくすることが出来る。また、単位空気電池を直列接続することで、起電圧が増大するので、発電手段としての利用価値が高まる。
【0025】
また、例えば副反応のマグネシウムと水が反応した結果として生成した水素ガスはマグネシウム等のアノード上方に湧昇し、大気よりも軽いため、速やかに上昇するが、上部に開口のない蓋を配設すると、水面付近の水素ガス濃度が大きくなって、電解水への酸素ガスの溶解が阻害されるので、無蓋とするか、強制的に排除する必要がある。無蓋として大気へ逸散すると、せっかくのエネルギー資源を無駄にすることになる。
【0026】
また、リン酸イオン含有の有機性廃水は食塩水または海水等よりも空気電池の電解水としては発生電圧及び発生電流が小さく、特に冬季の低水温期においては、リン除去効率が低下するので、前記リン酸イオン含有の有機性廃水を電解水とした空気電池と、前記食塩水または海水等を電解水とした空気電池を直列接続すると前記リン酸イオン含有の有機性廃水を電解水とした空気電池の閉路電圧と負荷電流が上昇してリン除去効率が増加する。但し、前記食塩水または海水等を電解水とした空気電池の閉路電圧と負荷電流は減少する。
【0027】
また、試験の結果、電極対のカソードの面積がアノードの面積と同じ場合に対して多い場合における閉回路電圧と発生電流が増加する。銅をカソードとした場合よりも鉄をカソードとした場合が閉回路電圧と発生電流の増加傾向は顕著である。理由は不明であるが、二つの理由が考えられる。即ち、鉄は固有抵抗が大きいため、断面積が大きくなると電流密度が小さくなり、内部抵抗による電圧降下が小さくなり、結果として、閉回路電圧が増加したものと考えられる。また、カソードでの酸素還元反応の機会が増えるカソード支配の電気化学反応であると考えられる。
【0028】
また、空気電池式電気化学反応手段の電解水に活性化アルミニウム微粉抹をイオン透過性袋に収納したものを浸漬すると、水分子と化学反応を起こして、酸化アルミニウムと水素ガスが生成する共に、アルミニウムイオンとリン酸イオンが反応する。
【0029】
また、太陽光または廃熱等の加熱手段で加熱すると共に電解水で冷却する加熱手段で電解水を加熱すると、80℃程度までは、空気電池式の電気化学反応速度は上昇する。
【0030】
そしてまた、有機性排水の生物処理システムで生成する汚泥混合液を嫌気性消化槽に移送して嫌気性生物処理すると共にマグネシウム源として、空気電池式水酸化マグネシウム製造装置で製造した水酸化マグネシウムを添加すると、晶析反応によって、MAPの結晶粒子を生成及び成長する。さらに、前記嫌気性消化槽からMAP結晶粒子を含む固形物を分離及び回収し、前記MAP結晶粒子が分離回収された残りの汚泥混合液の一部を前記嫌気性消化槽に返送すると、晶析反応によって、MAPの結晶粒子を生成及び成長するので、MAP結晶粒子を含む固形物を分離及び回収する。従って、窒素及びリンを除去すると共に水素ガス製造及び発電する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0032】
pH5以上の、特に中性以上で、電解水の空気電池で生成する水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化金属は溶解度が極めて小さいので、沈殿または濾過等で固液分離が容易である。
【0033】
また、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の生成反応は発熱反応であるため、発熱反応エネルギーが大きいほど、電気化学反応速度が大きくなることへ有利に働く効果がある。
【0034】
また、生成する微細な水素ガスの湧昇により、水の対流現象が現れ、該対流現象によって、水表面では大気中酸素が水に溶存酸素として溶解する現象を伴うので、空気電池の電気化学反応に必要な酸素を供給する曝気動力をそれだけ低減出来ると共に電気化学反応を阻害する生成物質濃度を低減することが出来る。したがって、省エネルギー効果も達成出来る。
【0035】
そしてまた、電気化学反応で生成する水酸化マグネシウムは様々な分野で需要がある。即ち、脱ハロゲン系難燃添加剤、排煙脱硫剤、廃水の中和剤、胃腸の殺菌剤、便秘薬、肥料、及び赤潮原因微生物用の殺菌剤及び海底土壌改良剤等として、旺盛な需要がある。
【0036】
また、水素ガスシステムによっては、電気化学反応を阻害する水素ガスを反応系外へ速やかに排除する効果とエネルギー資源を有効に活用する効果がある。
【0037】
また、発電システムによっては、太陽光発電、風力発電等と連係統合することにより電気設備を兼用することが出来るので、経済的であるだけでなく、省エネルギー効果と省資源効果がある。
【0038】
また、空気電池はカソードでの還元反応に酸素を必要とするので、反応を持続させるためには、酸素を補給する必要があるが、リン酸イオン含有の有機性電解質廃水を生物処理している曝気槽に電極対を浸漬して空気電池式リン除去装置とする場合には特段の曝気は必要とせず、また、エアーリフトポンプで処理水を返送する途中において電極を浸漬する場合には補助的曝気でよいので、省エネルギー効果がある。また、リン酸イオン含有の電解質廃水は冬季の低水温下では、電気化学反応速度が水温の低下に伴って小さくなるので、リン酸イオン含有の有機性電解質廃水に電極対を浸漬して空気電池式リン除去装置の空気電池と空気電池式水酸化物製造装置の空気電池とを直列及び並列接続すると、前記リン酸イオン含有の電解質廃水に電極対を浸漬して空気電池式リン除去装置の電圧と電流が増大するので、電気化学反応速度が大きくなり、リン除去速度が大きくなる効果がある。
【0039】
また、リン酸イオン含有の有機性電解質廃水を生物処理している曝気槽の前処理工程に嫌気性処理槽を配設している場合において、前記曝気槽の後処理工程の沈殿汚泥を前記嫌気性処理槽へ循環する場合には、アノードにアルミニウムを使用すると、電気化学反応で生成した不溶性のリン酸塩と水酸化金属はアルミニウムアノードに付着するので、前記嫌気性処理槽に循環されることは生じない。従って前記嫌気性処理槽でのリン酸塩の再溶出を免れる効果がある。
【0040】
また、曝気槽の前処理工程に嫌気性処理槽を配設しない場合には、アノードにマグネシウムを使用すると、電気化学反応で生成した不溶性で凝集力を有するリン酸塩と水酸化金属はマグネシウムアノードから剥離するので、沈降分離または濾過分離が容易となる効果がある。そしてまた、リン酸イオン、リン酸体リン又はリン化合物含有の有機性電解質廃水を生物処理している曝気槽に、カソードに金属アノードと黒炭、白炭、黒鉛又はグラファイト等の炭素材カソードとした空気電池を構成すると共に前記黒炭、白炭、黒鉛又はグラファイト等の炭素質カソードを好気性生物処理の生物担体としていて、さらに電気化学反応及び生物化学反応を効率良く継続するために溶存酸素供給手段、攪拌手段を配設した電気化学反応手段及び生物化学反応手段とすると共に該電気化学反応手段及び生物化学反応の後処理として固液分離手段を後置することにより、電気分解法のように電力源を必要とせず、リンを除去すると共に、前記黒炭、白炭、黒鉛又はグラファイト等の炭素質カソードが生物担体としての機能も兼用するので、設置面積が小さくなり、設備費を低く抑えると共に省エネルギーとなる効果がある。さらに、前記黒炭、白炭、黒鉛又はグラファイト等の炭素体は、1g当たり100~400平方メートルの微細孔表面積を持つ極めて多孔質の材料で、高い吸着性、透水性、通気性を有し、微生物の快適な増殖の場となり、且つ溶出するミネラル分が微生物の好栄養源となるので処理効率を高くする効果がある。また、曝気槽の生物増殖にとっては、水温は35℃前後が最適であり、また、水温80℃程度までは、水温が高いほど空気電池式における電気化学反応速度は大きいので、工場廃熱で加熱するとさらに効果がある。
【0041】
また内部抵抗が小さくなることと、起電力が大きくなることにより、電気化学反応速度が大きくなるので、水酸化金属の生産力が高められ、または、同一生産量を生産する生産設備規模を小さく出来る効果がある。
【0042】
また、電極対のカソードの面積がアノードの面積と同じ場合に対して多い場合における閉回路電圧と発生電流が増加する閉回路電圧が増大し、負荷電流に対する電圧降下小さくなり、利用可能電力量が増大するので、リンを除去しながら発電し、水素ガスを生産出来るので、リン除去コストが低減出来る。
【0043】
また、空気電池式電気化学反応手段の電解水に活性化アルミニウム微粉抹をイオン透過性袋に収納したものを浸漬すると、水素ガスの生成量が増加すると共に、リン除去量が増加する効果がある。
【0044】
また、太陽光または廃熱等の加熱手段で加熱すると共に電解水で冷却する加熱手段で電解水を加熱すると、80℃程度までは、空気電池式の電気化学反応速度は上昇するので、自然エネルギーまたは廃熱等の未利用エネルギーを有効利用出来ると共に水酸化金属の生産量およびリン除去率を大きくすることが出来る。
【0045】
そしてまた、有機性排水の生物処理システムで生成する汚泥混合液を嫌気性消化槽に移送して嫌気性生物処理すると共にマグネシウム源として、空気電池式水酸化マグネシウム製造装置で製造した水酸化マグネシウムを添加すると、晶析反応によって、MAPの結晶粒子を生成及び成長する。さらに、前記嫌気性消化槽からMAP結晶粒子を含む固形物を分離及び回収し、前記MAP結晶粒子が分離回収された残りの汚泥混合液の一部を前記嫌気性消化槽に返送すると、晶析反応によって、MAPの結晶粒子を生成及び成長するので、MAP結晶粒子を含む固形物を分離及び回収出来るので、排水含有の窒素及びリンを除去すると共に希少資源のリンを回収出来る。マグネシウム源として、空気電池式水酸化マグネシウム製造装置以外の製造装置で製造した塩化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムを添加する方法に比較すると、前記空気電池式水酸化マグネシウム製造装置で製造した水酸化マグネシウムの製造コストが安いだけでなく、同時に未利用エネルギーである水素ガス及び電力を有効利用出来る効果を奏する。そしてさらに、有機性廃水を直接電解液とした空気電池式反応装置よりも、塩化ナトリウム、食塩または海水を電解液とした空気電池式反応装置の方が電気化学反応速度が大きいために、未利用エネルギーである水素ガス及び電力を有効利用出来る効果も大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第二発明第一実施例の空気電池式反応装置の概略説明斜視図
【図2】第二発明第二実施例の空気電池式反応装置の概略説明斜視図
【図3】第二発明第三実施例の空気電池式反応装置の部分平面図
【図4】第二発明第三実施例の空気電池式反応装置の全体平面図
【図5】第三発明第一実施例の空気電池式反応装置の概略説明縦断面図
【図6】第三発明第二実施例の空気電池式反応装置の概略説明縦断面図
【図7】第四発明第一実施例の空気電池式反応装置、水素ガス製造、空気電池発電および太陽光発電を統合した概略系統図
【図8】第六発明第一実施例の空気電池式反応装置のアノード面積よりカソード面積を多くした概略説明斜視図
【図9】第七発明第一実施例の空気電池式反応装置に活性アルミニウム微粉抹を併用した概略説明斜視図
【図10】第八発明第一実施例の空気電池式反応装置の処理水をヒートパイプで加熱している概略説明斜視図
【図11】第八発明第二実施例の空気電池式反応装置の処理水を熱交換器で加熱している概略説明斜視図
【図12】第九発明第一実施例の空気電池式反応装置を生物反応システムに適用した概略系統図
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
【実施例】
【0048】
図1はマグネシウム製のアノード1と、マグネシウムよりも電気化学的に貴電位の鉄製のカソード2とで電極対3とし、前記アノード1とカソード2を絶縁電線4で電気的に接続すると共に絶縁性のメッシュ5で絶縁した6組の前記電極対3を海水6に浸漬して収納槽7に収納して6組の空気電池8としている。さらに散気装置9で空気を供給して前記海水6を曝気すると共に攪拌して空気電池式反応装置10を構成している。そして、前記電極対3は電極支持ガイド11で支持されている。尚、曝気及び攪拌手段としては、本実施例では前記散気装置9で空気を供給して前記海水6を曝気すると共に攪拌しているが、該海水等6の電解水が、自然曝気で酸素を供給出来るだけの水表面積を有すると共に水素ガスの湧昇と電気化学反応熱による対流・攪拌現象で電気化学反応が実用的に十分である場合には前記散気装置9は必要としない。そして、前記カソード2としては、本実施例では鉄製としているが、銅製、炭素質材、銀、金白金及び鉛等のマグネシウムよりも電気化学的に貴電位のものであれば排除しないが、経済性及び人体に無害性を考慮して決定すべきである。
【0049】
図2は、収納槽7を筏12で支持していて、該筏12は、フロート13、バランスウェイト14、ロープ15およびアンカー16を装備している。そして、前記収納槽7には、海水が流入と流出するための下部口17と上部口18を開口して、マグネシウム製のアノード1と、マグネシウムよりも電気化学的に貴電位の鉄製のカソード2とで電極対3とし、前記アノード1とカソード2を絶縁電線4で電気的に接続すると共に絶縁性のメッシュ5で絶縁した6組の前記電極対3を海水6に浸漬して収納槽7に収納した空気電池式反応装置10としている。そして、電気化学反応で生成した燐酸マグネシウムは難溶性物質であるために、海水中の赤潮生物が利用する溶解性リン濃度を低下させると共に、水酸化マグネシウムで赤潮原因微生物を駆除する。本実施例では、水産物養殖場海域の海上設置の前記空気電池式反応装置10で生成した水酸化マグネシウム含有の水酸化マグネシウムスラリーを前記収納槽7の槽底7aより海中に散布しているが、陸上設置の収納槽7で製造した粉末状または粒状水酸化マグネシウムを水産物養殖場海域に散布することも出来る。また、本実施例では、赤潮発生海域での実施例としているが、アオコ発生流域でも同様の実施が可能である。
【0050】
図3および図4は、海水6を収納した収納槽7にはマグネシウム製のアノード1と鉄製のカソード2を絶縁性のメッシュ5を介在させて対向した電極対3としていて、他の2組を合わせて、合計3組の前記電極対3を収納している。本実施例では3組の該電極対3としているが、組数は必要に応じて決定される。そして、前記収納槽7に海水6を収納して散気装置9で曝気している。また、前記アノード1を互いに絶縁電線4で電気的に並列接続して並列接続アノード群19とすると共にカソード1を互いに絶縁電線4で電気的に並列接続して並列接続カソード群20として6組の電極対群21を構成していて、さらに、一番目の前記電極対群21の並列接続アノード群19を絶縁電線4で二番目の並列接続カソード群20に電気的に直列接続し、順次、6組の前記電極対群21を直列接続して空気電池式反応装置10としている。尚、該電極対群21の組数は必要に応じて決定される。
【0051】
図5は、リン酸イオン含有の有機性電解質廃水を好気性生物処理する接触酸化反応槽22の処理水23を夾雑物除去槽24及び嫌気性濾床槽25を経て前記接触酸化反応槽22へエアーリフトポンプ26で循環している循環配管27の途中に配設して散気装置9で曝気攪拌しているリン除去槽28には、図示してない複数組のアルミニウム製のアノード1とオガ炭製のカソード2の間に絶縁性メッシュ5を介在させ、前記複数組のアノード1及びカソード2をそれぞれ並列接続した並列接続アノード群19および並列接続カソード群20で構成した電極対群21を浸漬して空気電池式反応装置10としている。また、図示してない複数組のマグネシウム製のアノード1と鉄製のカソード2の間に絶縁性のメッシュ5を介在させ、複数組のアノード1及びカソード2をそれぞれ並列接続した並列接続アノード群19および並列接続カソード群20で構成した電極対群21を、散気装置9で曝気攪拌している海水6に浸漬した状態で収納槽7に配設して空気電池式反応装置10としている。そして、前記二台空気電池式反応装置10の空気電池群21を絶縁電線4で直列接続している。
【0052】
図6は、図5の接触酸化反応槽22の処理水23の代替として、活性汚泥法の曝気槽29の曝気槽水とし、該曝気槽水30をエアーリフトポンプ26で循環している循環管27の途中にリン除去槽28を配設している。そして、図示してないマグネシウム製のアノード1と鉄製のカソード2の間に絶縁性メッシュ5を介在させた電極対3の複数組を、散気装置9で曝気攪拌している前記リン除去槽28に配設して、前記複数組のアノード1及びカソード2をそれぞれ並列接続した並列接続アノード群19および並列接続カソード群20で構成した電極対群21としている。
【0053】
図7は、図5と同様の構成とした並列接続アノード群19と並列接続カソード群20で構成した電極対群21を海水6と共に収納している収納槽7と、散気装置9を内設して海水6を曝気している曝気槽29とを、循環ポンプ30を配設している循環管31Aと循環管31Bとで連通接続して空気電池式反応装置10を構成している。そして、無蓋の前記収納槽7の上方に近接して配設されている水素捕集風洞口32に水素ガス捕集管33を連通接続している。該水素ガス捕集管33の途中には、前記水素捕集風洞口32内に内設された水素濃度センサー34で開閉制御している電磁弁35、圧縮機36、圧力センサー37で水素充填終了圧を検知して制御されている電磁弁35および接続アダプタ38を連通接続して配設して水素ガス吸蔵ボンベ39に連通接続して構成した水素ガス製造装置40としている。また、図5と同様の構成とした並列接続アノード群19と並列接続カソード群20で構成した電極対群21を接触酸化反応槽22の処理水23と共に収納しているリン除去槽28と、散気装置9を内設して処理水23を曝気して空気電池式反応装置10としている。そして、海水6を電解水とした空気電池式反応装置10の空気電池8と処理水を電解水とした空気電池式反応装置10の空気電池8を直列接続している。また、前記空気電池8で発電した電力と太陽電池41で発電した電力を統合して利用するために、接続盤42、バッテリー43、充放電コントローラ44、パワーコンディショナ45、分電盤46及び商用電源に順次、絶縁電線4で電気的に接続して受電設備47を構成している。尚、前記水素ガス吸蔵ボンベ39の代替として、水素ガスホルダーとすることも出来、また前記商用電源を無くした受電設備とすることも出来る。
【0054】
図8は、図1の電極対3の代替として、電線4で互いに並列接続した二枚の鉄製カソード2と、一枚のアルミニウム製アノード1を前記電線4で電気的に接続して構成した電極対3を複数枚配設している。
【0055】
図9は、図5のリン除去槽28の処理水23に活性化アルミニウム微粉抹をイオン透過性袋48に収納したものを浸漬すると共に図9の電極対3とした空気電池式反応装置10でリンを除去している。
【0056】
図10はヒートパイプ49の吸熱部49aを太陽光で暖めリン含有の処理水23で放熱部49bを冷却して、結果として前記処理水23を加熱している。
【0057】
図11は工場廃熱水で加熱する熱交換器50で処理水23を加熱している。
【0058】
図12は、都市下水の生物処理システム51で生成する汚泥混合液を嫌気性消化槽52に移送して嫌気性生物処理すると共にマグネシウム源として、海水6を電解質とし、マグネシウム製アノード1、鉄製カソード2、絶縁電線3及び収納槽7とで構成した空気電池式反応装置10で製造した水酸化マグネシウムのスラリーを添加すると、晶析反応によって、MAPの結晶粒子を生成及び成長する。さらに、前記嫌気性消化槽52からMAP結晶粒子を含む固形物を液体サイクロン53で分離及び回収し、前記MAP結晶粒子が分離回収された残りの汚泥混合液の一部を前記嫌気性消化槽52に返送すると、晶析反応によって、MAPの結晶粒子が生成及び成長し、MAP結晶粒子を含む固形物を分離及び回収出来るので、下水等の有機性廃水含有の窒素及びリンを除去すると共に希少資源のリンを回収し、同時に未利用エネルギーである水素ガス及び電力を有効利用している。本実施例では、マグネシウム源として、水酸化マグネシウムのスラリーを添加しているが、粉末又は粒状の水酸化マグネシウムとしても良いが、該粉末又は粒状の水酸化マグネシウムを添加する場合で、アノードとして供するマグネシウム材が高純度の場合には問題なくそのままで添加できるが、重金属を高い割合で含有しているマグネシウム合金の場合には、回収MAPをそのままで経済的に、肥料として利用するために、分級分離した水酸化マグネシウムを添加すべきである。前記嫌気性消化槽52の代替としては、前段処理工程の酸醗酵処理を行う酸醗酵槽と後段処理工程のメタン醗酵を行うメタン醗酵槽とすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
水酸化マグネシウムは、排煙脱硫用、廃水中和用、便秘剤、栄養強化剤、食品のpH調整剤、色素安定剤、難燃材、肥料、赤潮生物駆除財、アオコ生物駆除剤および海底低質改善剤等に利用出来、また水酸化アルミニウムは胃腸薬等の医薬品、顔料の原料、難燃材への添加剤および凝集剤として利用出来、省エネルギーで環境を破壊することなく、しかも経済的に水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムを製造することが出来るので、空気電池式水酸化物製造装置は産業に大いに貢献出来る。しかも、副産物の水素ガスは環境負荷が全然ない燃料として自動車、燃料電池等の分野で、また、発電では太陽電池、風力発電等の補助電力として、そしてまた、有機性廃水の空気電池式リン除去装置の空気電池と直列接続空気電池としての利用出来るだけでなく、有機性廃水の窒素及びリンを同時に除去する廃水処理剤として利用出来る。
【符号の説明】
【0060】
1 アノード
2 カソード
3 電極対
4 絶縁電線
5 メッシュ
6 海水
7 収納槽
8 空気電池
9 散気装置
10 空気電池式反応装置
11 電極支持ガイド
12 筏
13 フロート
14 バランスウェイト
15 ロープ
16 アンカー
17 下部孔
18 上部孔
19 並列接続アノード群
20 並列接続カソード群
21 電極対群
22 接触酸化反応槽
23 処理水
24 夾雑物除去槽
25 嫌気性濾床槽
26 エアーリフトポンプ
27、31A、31B 循環配管
28 リン除去槽
29 曝気槽
30 循環ポンプ
32 水素ガス捕集風洞口
33 水素ガス捕集管
34 水素ガス濃度センサー
35 電磁弁
36 圧縮機
37 圧力センサー
38 接続アダプタ
39 水素ガス吸蔵ボンベ
40 水素ガス製造装置
41 太陽電池
42 接続盤
43 バッテリー
44 充放電コントローラ
45 パワーコンディショナ
46 分電盤
47 受電設備
48 イオン透過性袋
49 ヒートパイプ
49a 吸熱部
49b 放熱部
50熱交換器
51 生物処理システム
52 嫌気性消化槽
53 液体サイクロン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的に卑電位の金属をアノードとし、よりも貴電位の金属または炭素質材をカソードとした電極対と、電極接続電導手段と、溶存酸素供給手段と、pH5以上の電解液とで空気電池を構成したことを特徴とする空気電池式水酸化金属製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の空気電池式水酸化物製造方法を利用して、水酸化物を製造することを特徴とする請求項1記載の空気電池式反応装置。
【請求項3】
電気化学的に卑電位の金属をアノードとし、前記アノードより貴電位の金属または炭素質材をカソードとした電極対と、電極接続導電手段と、溶存酸素供給手段と、pH5以上にあるリン酸イオン含有の電解液とで構成した空気電池を直列接続又は並列接続したことを特徴とする請求項2記載の空気電池式反応装置。
【請求項4】
請求項2記載の空気電池式反応装置と、水素ガス捕集手段及び水素ガス貯蔵手段からなる水素ガスシステムと、前記空気電池式水酸化物製造装置で発電した電力を、配線手段と蓄電手段、充放電コントローラ、パワーコンディショナ、分電盤及び商用電源等を単独または併用して電力システムとしたことを特徴とする請求項2記載の空気電池式反応装置。
【請求項5】
請求項3記載の空気電池式反応装置と、水素ガス捕集手段及び水素ガス貯蔵手段からなる水素ガスシステムと前記空気電池式水酸化物製造併用リン除去装置で発電した電力を、配線手段と蓄電手段、充放電コントローラ、パワーコンディショナ、分電盤及び商用電源等を単独または併用して電力システムとしたことを特徴とする請求項3記載の空気電池式反応装置。
【請求項6】
カソードの表面積をアノードの表面積よりも大きくしたことを特徴とする請求項2、3、4または5記載の空気電池式反応装置。
【請求項7】
リン酸イオン電解水に、活性化アルミニウム微粉抹をイオン透過性袋に収納したものを浸漬したことを特徴とする、請求項2、3または5記載の空気電池式反応装置。
【請求項8】
太陽光または廃熱等の加熱手段で加熱すると共に電解水で冷却する加熱手段で電解水を加熱することを特徴とする請求項1、2、3,4,5、6または7記載の空気電池式反応装置。
【請求項9】
有機性排水の生物処理システムで生成する汚泥混合液を嫌気性消化槽に移送して嫌気性生物処理すると共にマグネシウム源として、空気電池式水酸化マグネシウム製造装置で製造した水酸化マグネシウムを添加してMAPの結晶粒子を生成及び成長させ、前記嫌気性消化槽からMAP結晶粒子を含む固形物を分離または分離回収し、前記MAP結晶粒子が分離または分離回収された残りの汚泥混合液の一部を前記嫌気性消化槽に返送することを特徴とする請求項1、2、4、6または8記載の空気電池式反応装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−47835(P2010−47835A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160512(P2009−160512)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(306037861)ブルーアクア・インダストリー株式会社 (11)
【Fターム(参考)】