説明

空調システムおよびその制御方法

【課題】地中熱を熱源としたヒートポンプを利用した空調機の消費電力が最小となる空調システムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】空調システム10は、地中熱を利用した熱交換器と、熱交換器に冷温水を循環させる冷温水ポンプ50と、冷温水ポンプ50の回転数を変化させるインバーター52と、熱交換器を循環した冷温水を介して冷房又は暖房する空調機20と、空調機20の室内負荷を算出するための第1の検出手段と、冷温水負荷を算出するための第2の検出手段と、室内負荷、冷温水負荷、冷温水ポンプ50の第1の消費電力と、空調機20の第2の消費電力を算出してシステムCOPを算出し、システムCOPのうちで最大となる冷温水流量を選定するシミュレーター62と、システムCOPが最大となる前記冷温水流量のインバーター52の周波数設定値で冷温水ポンプ50を制御するコントローラー64と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用した空調システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素などの地球温暖化ガスの排出を抑制でき、一年を通じて約一定温度である地中熱を熱源としてヒートポンプを運転することでヒートポンプの消費エネルギーを削減できる技術を利用した空調システムがある。
【0003】
このような地中熱ヒートポンプを利用した地中熱利用システムの運転方法が特許文献1に開示されている。特許文献1の地中熱利用システムは、地中に埋設された地中熱交換器と、地中熱交換器に循環させる熱媒を介して採放熱するためのヒートポンプと、ヒートポンプに接続された負荷機と、地中熱交換器に熱媒を循環させるための循環ポンプを備えた地中熱利用システムの運転方法であって、循環ポンプの変流量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−63267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地中熱ヒートポンプシステムでは、一般に運転中に冷温水を地中に搬送して地中から採熱又は排熱を行っている。このシステムでは、熱を搬送する冷温水のポンプ搬送動力がシステム全体に占める割合が大きいという問題があり、この搬送動力の低減を含めたシステム全体の消費電力の削減が求められている。
【0006】
そこで上記従来技術の問題点を解決するため、本発明は、地中熱を熱源とするヒートポンプを利用した空調機の消費電力が最小となる空調システムおよびその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空調システムは、地中熱を利用した熱交換器と、前記熱交換器に冷温水を循環させる冷温水ポンプと、前記冷温水ポンプの回転数を変化させるインバーターと、前記熱交換器を循環した前記冷温水を介して冷房又は暖房する空調機と、前記空調機の室内負荷を算出するための第1の検出手段と、前記熱交換器と前記空調機の間を循環する前記冷温水の冷温水負荷を算出するための第2の検出手段と、前記第1の検出手段の測定値に基づいて前記室内負荷を算出し、前記第2の検出手段の測定値に基づいて前記冷温水負荷と、前記冷温水ポンプの第1の消費電力と、前記空調機の第2の消費電力を算出し、前記第1及び第2の消費電力と前記室内負荷に基づいてシステムCOPを算出し、前記冷温水の流量を変化させて算出した前記システムCOPのうちで最大となる冷温水流量を選定するシミュレーションを行うシミュレーターと、前記システムCOPが最大となる前記冷温水流量の前記インバーターの周波数設定値で前記冷温水ポンプを制御するコントローラーと、を備えたことを特徴としている。
【0008】
この場合において前記シミュレーターは、予め前記第1及び第2の検出手段の測定値と、前記室内負荷と、前記冷温水負荷と、システムCOPが最大となる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示すデータベースを有し、前記第2の検出手段で検出した測定値と、前記第1の検出手段で検出した測定値に応じて前記データベースから前記インバーターの周波数設定値を抽出するとよい。
【0009】
この場合において前記データベースは、前記地中熱温度と、前記室内負荷と、前記熱交換器冷温水入口温度と、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示す制御テーブルであるとよい。
【0010】
本発明の空調システムの制御方法は、地中熱を利用した熱交換器と、前記熱交換器に冷温水を循環させる冷温水ポンプと、前記冷温水ポンプの回転数を変化させるインバーターと、前記熱交換器を循環した前記冷温水を介して冷房又は暖房する空調機と、前記空調機の室内負荷を算出するための第1の検出手段と、前記熱交換器と前記空調機の間を循環する前記冷温水の冷温水負荷を算出するための第2の検出手段と、を備えた空調システムの制御方法であって、前記第1の検出手段の測定値に基づいて前記室内負荷を算出し、前記第2の検出手段の測定値に基づいて前記冷温水負荷と、前記冷温水ポンプの第1の消費電力と、前記空調機の第2の消費電力を算出し、前記第1及び第2の消費電力と前記室内負荷に基づいてシステムCOPを算出し、前記冷温水の流量を変化させて算出した前記システムCOPのうちで最大となる冷温水流量を選定し、前記システムCOPが最大となる前記冷温水流量の前記インバーターの周波数設定値で前記冷温水ポンプを制御することを特徴としている。
【0011】
この場合において前記システムCOPのうちで最大となる冷温水流量を選定は、予め前記第1及び第2の検出手段の測定値と、前記室内負荷と、前記冷温水負荷と、システムCOPが最大となる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示すデータベースから、前記第2の検出手段で検出した測定値と、前記第1の検出手段で検出した測定値に応じて、抽出するとよい。
【0012】
この場合において前記データベースは、前記地中熱温度と、前記室内負荷と、前記熱交換器冷温水入口温度と、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示す制御テーブルであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
地中熱を熱源とするヒートポンプを利用した空調機を有する空調システムにおける冷温水ポンプと空調機の消費電力の合計を削減することができる。従って空調設備の効率的な運転、二酸化炭素の排出抑制などが可能となる。
またシステム全体に占める割合が大きな冷温水ポンプの搬送動力を効果的に低減し、システム全体の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の空調システムの構成概略を示す図である。
【図2】冷温水ポンプのインバーター周波数の最適値の算出手順を示したフロー図である。
【図3】冷温水流量とシステムの消費電力の関係の概念図である。
【図4】テーブルデータから取得される最適値に基づいて空調システムを制御する制御手段の説明図である。
【図5】室内負荷、地中熱交換器入口温度T3、地中熱温度T5に対応したシステムCOPが最大となるインバーター周波数の組み合わせを示す制御テーブルの説明図である。
【図6】消費電力W1、W2の算出値と実測値の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の空調システムおよびその制御方法の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1は本実施形態の空調システムの構成概略を示す図である。本実施形態の空調システム10は、空調機20と、地中熱交換器30と、前記空調機20と地中熱交換器30を接続する冷温水配管40と、冷温水ポンプ50と、インバーター52と、制御手段60と、を主な基本構成としている。本実施形態では地中熱を熱源とするヒートポンプを利用した空調システム10の運転方法について説明する。年間を通して温度が一定な地中に地中熱交換器30を設置し、空調機20用の冷温水を地中熱交換器30に循環させ地中との間で熱交換を行い、冷温水を夏季の冷房使用時には冷却し、冬季の暖房使用時には加熱している。
【0016】
空調機20は、ケーシング内にヒートポンプ及び空調部(不図示)を備えたヒートポンプ式の空調機である。ヒートポンプは、後述する地中熱交換器と接続し、採放熱している。空調部は、室内を冷房又は暖房する空調設備である。
【0017】
空調機20は室内負荷を算出するために必要な第1の検出手段を備えている。具体的に第1の検出手段は、第1及び第2の温度センサー70、72、第1及び第2の湿度センサー74、76、風速計78、第1の電力計80を基本構成としている。
【0018】
第1の温度センサー70は、空調機20の空調機吸い込み口の温度T1を測定するセンサーである。
第2の温度センサー72は、空調機20の空調機吐き出し口の温度T2を測定するセンサーである。
第1の湿度センサー74は、空調機20の空調機吸い込み口の湿度Rh1を測定するセンサーである。
第2の湿度センサー76は、空調機20の空調機吐き出し口の湿度Rh2を測定するセンサーである。
【0019】
風速計78は、空調機20から排出される冷房又は暖房の風速Lを測定するセンサーである。
第1の電力計80は、空調機20の消費電力W1を測定可能に構成されている。
第1及び第2の温度センサー70、72、第1及び第2の湿度センサー74、76、風速計78、第1の電力計80は後述する制御手段60へ測定値を送るように構成されている。
地中熱交換器30は、地中に埋設された複数の杭もしくはボアホール(穴)にUチューブ(配管)を挿入することで構成される。
【0020】
地中熱交換器30と空調機20の間には冷温水配管40が形成されている。
冷温水配管40は、送り配管42と戻り配管44から構成されている。この構成により空調機20内を通った冷温水は、冷温水配管40の戻り配管44を通った後、Uチューブを通り地中熱交換器30によって熱交換され、送り配管42から再び空調機20に戻る。
【0021】
冷温水配管40の送り配管42上には冷温水ポンプ50を取り付けている。冷温水ポンプ50の送り配管42内では地中熱交換器30から空調機20へ冷温水を供給している。また戻り配管44では空調機20から地中熱交換器30へ冷温水を供給している。
【0022】
冷温水ポンプ50にはインバーター52が接続され、インバーター52で周波数を変えることによりポンプの回転数を変えて冷温水の流量を変化させることができる。
空調システム10は、冷温水の負荷を算出するための第2の検出手段を備えている。第2の検出手段は、第3−第5の温度センサー82、84、85と流量計86と、第2の電力計54を主な基本構成としている。
【0023】
第3及び第4の温度センサー82、84と流量計86は、冷温水配管40上に取り付けられている。
第3の温度センサー82は、地中熱交換器30の冷温水入口側の入口温度T3を測定するセンサーである。
第4の温度センサー84は、地中熱交換器30の冷温水出口側の出口温度T4を測定するセンサーである。
第5の温度センサー85は、埋設された地中熱交換器30の地中熱温度T5を測定するセンサーである。
【0024】
流量計86は、送り配管42上の冷温水の流量を測定している。
冷温水ポンプ50の消費電力はインバーター52と電気的に接続する第2の電力計54によって計測される。
第3−第5の温度センサー82、84、85と流量計86と第2の電力計54は後述する制御手段60へ測定値を送るように構成されている。
【0025】
制御手段60は、インバーター52と電気的に接続しており、冷温水ポンプ50のインバーター周波数の最適値を求めるシミュレーター62と、冷温水ポンプ50で求めたインバーター周波数の最適値を出力するコントローラー64を主な基本構成としている。
シミュレーター62は、制御手段60による制御をシミュレーションして空調システム全体の消費電力などを算出するものである。
【0026】
制御手段60には、最適値を求めるために必要なシステム上の各種センサーの測定値が入力されている。具体的には空調機20に接続している第1及び第2の温度センサー70、72および第1及び第2の湿度センサー74、76、風速計78、第1の電力計80で計測された空調機の吸い込み空気、吐き出し空気の温度T1、T2、湿度、風速L、消費電力W1の計測値が入力される。
【0027】
また第3−第5の温度センサー82、84、85、流量計86で計測された地中熱交換器30の冷温水入口温度と冷温水出口温度T3、T4、地中熱温度T5、冷温水配管の冷温水流量LL、冷温水ポンプ50の消費電力W2の測定値が入力される。
【0028】
これらの入力された測定値に基づいて、制御手段60のシミュレーター62では冷温水ポンプ50のインバーター周波数の最適値を求めている。コントローラー64はインバーター周波数の最適値を冷温水ポンプ50に出力してポンプのインバーター周波数を制御している。
【0029】
上記構成による本実施形態の空調システムおよび制御方法について以下説明する。
図2は冷温水ポンプのインバーター周波数の最適値の算出手順を示したフロー図である。
第1の検出手段を構成する第1及び第2の温度センサー70、72、第1及び第2の湿度センサー74、76、風速計78により、空調機吸い込み温度T1、空調機吐き出し温度T2、空調機吸い込み湿度Rh1、空調機の吐き出し湿度Rh2、風速Lを測定する。また第2の検出手段を構成する第3−第5の温度センサー82、84、85、流量計86により、地中熱交換器30の冷温水入口温度と冷温水出口温度T3、T4、地中熱温度T5、冷温水流量LLを測定する。これらの測定値を制御手段60に入力する。(ステップ100)。
【0030】
入力された測定値のうち空調機吸い込み温度T1、空調機吐き出し温度T2、空調機吸い込み口の湿度Rh1、空調機の吐き出し湿度Rh2、風速Lの測定値に基づいて、制御手段60のシミュレーター62により空調機20にかかる室内負荷QQを算出する(ステップ120)。
【0031】
室内負荷QQは数式1によって算出する。
【数1】

【0032】
室内負荷QQは空調機冷房運転時の冷風又は温風によって処理される。この冷風又は温風は空調機内で電力を消費して製造される。冷房運転時には空調機内で消費される電力に相当する熱量と室内負荷QQに相当する熱量が空調機から冷温水に排出される。暖房運転時には、室内負荷QQから空調機内で消費される電力に相当する熱量を除外した熱量が冷温水から採取される。これらの冷温水に排出又は冷温水から採取される熱量が地中熱交換器30にかかる冷温水負荷Qとなる。
【0033】
次に地中熱交換器30にかかる冷温水負荷Qを算出する(ステップ130)。冷温水負荷Qは数式2によって算出する。
【数2】

【0034】
次に算出した冷温水負荷Qを処理可能な冷温水流量LLと、その冷温水流量LLにおける地中熱交換器出口温度T4をシミュレーター62を用いて算出する(ステップ140)。
算出した冷温水流量LLと地中熱交換器出口温度T4からヒートポンプ式空調機20のCOP及び消費電力W1、冷温水消費電力W2を算出する。
【0035】
ヒートポンプ式空調機20の消費電力W1の演算方法について説明する(ステップ160)。W1の算出は、まずシミュレーター62によって地中熱交換器30の冷温水出口温度T4を演算し、その温度(T4)と冷温水流量(LL)を用いて、ヒートポンプ式空調機自体の既知の性能曲線から算出することができる。
【0036】
冷温水ポンプ50の消費電力W2の演算方法について説明する(ステップ180)。W2の算出は実験によって流量を変化させながら冷温水ポンプを運転し、各流量に対応するインバーター周波数と消費電力を測定することで流量とインバーター周波数、流量と消費電力の近似曲線を求めることで得られる。これにより各流量に対応した冷温水ポンプの消費電力W2を算出する。
【0037】
次にシステム全体の性能指数であるシステムCOPを室内負荷QQ、空調機20の消費電力W1、冷温水ポンプ50の消費電力W2から算出する。
システムCOPは数式3により算出される。
【数3】

ここで冷温水流量と消費電力の関係について説明する。図3は冷温水流量とシステムの消費電力の関係の概念図である。同図横軸は冷温水流量を示し、縦軸は消費電力を示している。図示のように冷温水流量が増加すると、空調機20の消費電力は低下する。このとき冷温水ポンプ50は冷温水を多く送るため冷温水ポンプ50の消費電力は上昇する。そして空調機20と冷温水ポンプ50の消費電力の合計値は冷温水流量V0のとき消費電力が最小となる。
【0038】
数式3に示すようにシステムCOPと消費電力の合計値の関係は、消費電力の合計が小さいほどシステムCOPは大きくなる。従って消費電力の合計の最小値の冷温水流量V0となるように冷温水ポンプ50の流量を制御すれば、空調システム10全体の合計消費電力が最小となり、最適値とすることができる。
【0039】
冷温水負荷Qを処理可能な冷温水流量LLと地中熱交換器出口温度T4の組み合わせは複数考えられる。これらの組み合わせ、すなわち冷温水流量LLを変更してシミュレーター62を用いて1種類(冷温水流量LLと地中熱交換器出口温度T4の組み合わせ)ずつ算出し、各種類のシステムCOPを算出する(ステップ200)。
【0040】
算出結果の中からシステムCOPが最大となる冷温水流量LLを選定する(ステップ220)。
選定した冷温水流量LLを冷温水ポンプ50のインバーター周波数に換算する(ステップ240)。周波数換算は、流量を変化させながら冷温水ポンプを運転し、各流量に対応するインバーター周波数を測定することで予め流量とインバーター周波数の近似曲線を求めておき、この近似曲線を用いて得ることができる。
【0041】
コントローラー64からシステムCOPが最大となるインバータ周波数を冷温水ポンプ50のインバーター52に出力する(ステップ260)。
以上、シミュレーションの算出結果により取得された最適値に基づいて、空調システムを制御する例について説明したが、種々の環境条件における最適値を予めテーブルデータとして記憶しておき、このテーブルから取得される最適値に基づいて空調システムを制御することができる。
【0042】
図4はテーブルデータから取得される最適値に基づいて空調システムを制御する制御手段の構成例を示す図である。図示のように制御手段60Aは、シミュレーター62とコントローラー64と記憶部66を備えている。
【0043】
具体的にシミュレーター62は、予め第1及び第2の検出手段の測定値と、室内負荷QQと、冷温水負荷Qと、前述同様のシミュレーションの結果、システムCOPが最大となる冷温水流量LL又はインバーターの周波数設定値の相対関係を示すデータベースを記憶した記憶部66を有し、第2の検出手段で検出した測定値と、第1の検出手段で検出した測定値に応じてデータベースからインバーターの周波数設定値を抽出することができる。
【0044】
またデータベースの一例として、システムCOPが最大となる冷温水流量LL及び冷温水ポンプ50のインバーター周波数を演算するシミュレーションの方法について、予めシステムCOPが最大となるインバーター周波数と冷温水負荷Q、地中熱交換器入口温度T3、地中熱温度T5の組み合わせを算出しテーブル化した制御テーブルを使用する方法がある。
【0045】
図5は前記システムCOPが最大となる冷温水ポンプのインバーター周波数と、室内負荷QQと、地中熱交換器入口温度T3、地中熱温度T5の組み合わせを示す制御テーブルの説明図である。
【0046】
シミュレーター62により室内負荷QQ、冷温水負荷Qを処理可能な冷温水流量LL又は冷温水ポンプのインバーター周波数と、地中熱交換器入口温度T3、地中熱交換器出口温度T4、地中熱温度T5の組み合わせを予め算出してテーブル化して記憶部66に記憶しておく。前記Q、T3、T4、T5を入力値として、制御テーブルからシステムCOPが最大となるインバーター周波数を参照する。
【0047】
このようなデータベースを用いることにより、制御手段60の算出負荷を軽減し、処理時間を短縮化することができる。
またヒートポンプ式空調機20の形態は、パッケージエアコンを想定しているが、別の形態、例えば冷温水を製造するヒートポンプ式チラーであってもよい。
【0048】
ヒートポンプ式空調機20にヒートポンプ式チラーを用いる場合は、第3の温度センサー82が計測するT3はヒートポンプ式チラーで製造する冷温水の入口温度となり、第4の温度センサー84が計測するT4は、ヒートポンプ式チラーで製造する冷温水の出口温度となり、空調機20の風量Lは、ヒートポンプ式チラーで製造する冷温水の流量となる。
【0049】
ヒートポンプ式チラーを用いる場合、ヒートポンプ式チラーにかかる熱負荷QQは、数式4で算出される。
【数4】

ここでLLLは冷温水(負荷側)流量、Cwは冷温水比熱、ρwは冷温水比重を示している。
【0050】
以上のように図2に示すフロー図では、シミュレーター62により、ヒートポンプを利用した空調機の消費電力W1と冷温水ポンプの消費電力W2とを算出して求める方法で説明した。ここで装置の経年劣化等の要因により、消費電力W1、W2の算出値と実測値の間にずれが生じた場合、シミュレーションの精度が悪くなり最適運転が困難になることが考えられる。
【0051】
そこでこの問題を回避するために、消費電力W1、W2についてシミュレーター62による算出値と、第1及び第2の電力計80、54で測定した測定値を比較して算出値の補正を行う必要がある。
【0052】
図6は消費電力W1、W2の算出値と実測値の関係を示したグラフである。図中の横軸はシミュレーター62で計算した消費電力W1、W2の合計値を示し、縦軸は計算値(算出値)に対応する第1及び第2の電力計80、54の実測値(測定値)の合計値をプロットしたものである。これらの算出値と測定値を予め記憶部66に記憶しておき、図6中に示す算出値と測定値の間の関係式y=aX+bY(a,bは係数)を最小二乗法によって求め、シミュレーター62での算出時に算出値と測定値の関係式による補正を行えばよい。具体的には図2に示すフロー図において、予めステップ100の工程前に算出値と測定値の間の関係式y=aX+bY(a,bは係数)を最小二乗法によって求めておく。そしてステップ100からステップ180の工程を同様に行う。次にステップ180の消費電力W2を算出した後、予め記憶部66で記憶させた関係式により消費電力W1、W2の算出値の補正を行う工程を追加すればよい。以下ステップ200以降の工程を同様に行う。この処理を行うことによって、シミュレーター62によって算出される消費電力W1、W2を実測値に近づけることができ、シミュレーションの精度を向上させることができる。
【0053】
また消費電力W1、W2の算出値と測定値の関係式を用いて、図5に示すテーブルデータを修正して記憶部66に保存し、データテーブルを随時更新すれば、シミュレーションを高精度に維持することができる。
【0054】
このような本実施形態の空調システムおよび制御方法によれば、地中熱を熱源とするヒートポンプを利用した空調機を有する空調システムにおける冷温水ポンプと空調機の消費電力の合計を削減することができる。従って空調設備の効率的な運転が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
10………空調システム、20………空調機、30………地中熱交換器、40………冷温水配管、42………送り配管、44………戻り配管、50………冷温水ポンプ、52………インバーター、54………第2の電力計、60、60A………制御手段、62………シミュレーター、64………コントローラー、66………記憶部、70………第1の温度センサー、72………第2の温度センサー、74………第1の湿度センサー、76………第2の湿度センサー、78………風速計、80………第1の電力計、82………第3の温度センサー、84………第4の温度センサー、85………第5の温度センサー、86………流量計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中熱を利用した熱交換器と、
前記熱交換器に冷温水を循環させる冷温水ポンプと、
前記冷温水ポンプの回転数を変化させるインバーターと、
前記熱交換器を循環した前記冷温水を介して冷房又は暖房する空調機と、
前記空調機の室内負荷を算出するための第1の検出手段と、
前記熱交換器と前記空調機の間を循環する前記冷温水の冷温水負荷を算出するための第2の検出手段と、
前記第1の検出手段の測定値に基づいて前記室内負荷を算出し、前記第2の検出手段の測定値に基づいて前記冷温水負荷と、前記冷温水ポンプの第1の消費電力と、前記空調機の第2の消費電力を算出し、前記第1及び第2の消費電力と前記室内負荷に基づいてシステムCOPを算出し、前記冷温水の流量を変化させて算出した前記システムCOPのうちで最大となる冷温水流量を選定するシミュレーションを行うシミュレーターと、
前記システムCOPが最大となる前記冷温水流量の前記インバーターの周波数設定値で前記冷温水ポンプを制御するコントローラーと、
を備えたことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記シミュレーターは、予め前記第1及び第2の検出手段の測定値と、前記室内負荷と、前記冷温水負荷と、システムCOPが最大となる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示すデータベースを有し、前記第2の検出手段で検出した測定値と、前記第1の検出手段で検出した測定値に応じて前記データベースから前記インバーターの周波数設定値を抽出することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記データベースは、前記地中熱温度と、前記室内負荷と、前記熱交換器冷温水入口温度と、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示す制御テーブルであることを特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
地中熱を利用した熱交換器と、前記熱交換器に冷温水を循環させる冷温水ポンプと、前記冷温水ポンプの回転数を変化させるインバーターと、前記熱交換器を循環した前記冷温水を介して冷房又は暖房する空調機と、前記空調機の室内負荷を算出するための第1の検出手段と、前記熱交換器と前記空調機の間を循環する前記冷温水の冷温水負荷を算出するための第2の検出手段と、を備えた空調システムの制御方法であって、
前記第1の検出手段の測定値に基づいて前記室内負荷を算出し、
前記第2の検出手段の測定値に基づいて前記冷温水負荷と、前記冷温水ポンプの第1の消費電力と、前記空調機の第2の消費電力を算出し、
前記第1及び第2の消費電力と前記室内負荷に基づいてシステムCOPを算出し、
前記冷温水の流量を変化させて算出した前記システムCOPのうちで最大となる冷温水流量を選定し、
前記システムCOPが最大となる前記冷温水流量の前記インバーターの周波数設定値で前記冷温水ポンプを制御することを特徴とする空調システムの制御方法。
【請求項5】
前記システムCOPのうちで最大となる冷温水流量を選定は、予め前記第1及び第2の検出手段の測定値と、前記室内負荷と、前記冷温水負荷と、システムCOPが最大となる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示すデータベースから、前記第2の検出手段で検出した測定値と、前記第1の検出手段で検出した測定値に応じて、抽出することを特徴とする請求項4に記載の空調システムの制御方法。
【請求項6】
前記データベースは、前記地中熱温度と、前記室内負荷と、前記熱交換器冷温水入口温度と、システム全体の消費エネルギーが最も小さくなる前記冷温水流量又は前記インバーターの周波数設定値の相対関係を示す制御テーブルであることを特徴とする請求項5に記載の空調システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−247564(P2011−247564A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124134(P2010−124134)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】