説明

空調システム

【課題】居住者毎に最適な気温で窓を開けて外気を取り入れることができる。
【解決手段】管理対象の部屋毎に、通風のための主要な窓16が特定されていて、開閉センサ18が取り付けられている。管理対象の部屋には、室温を測定する室温温度センサ24が設けられ、外気温を測定する外気温温度センサ28が設けられている。管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられたことを検出すると、管理対象の部屋の室温と外気温とを取得し、この室温と外気温が、居住者の快適環境である旨の表示を含めた居住者毎環境データ46を記憶する。管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられた後に、部屋の外気温を監視して、その外気温が居住者の快適環境である値に達したとき、居住者に対して、窓の開放を薦める旨のメッセージ50を出力する。その後、外気を取り入れて快適環境を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の窓を開放して自然換気を積極的に利用することができる空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
居住者に対して「やや暑い」とか「やや寒い」といった快適指標に対する評価を求めて、その結果を制御データとして記憶し、環境温度の変化に応じて、空調装置の最適設定値を、居住者が快適と感じる温度にできるだけ近づくように制御する技術が開発されている。さらに、その基準に基づいて空調装置の設定温度の変更を薦めたり、カーテンやブラインドの使用を薦めるメッセージを出力するような制御技術も開発されている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−187050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
今日の住宅設計では、外気を適切に取り入れるための通風シミュレーションの結果に基づいて、窓の位置や形状を最適化することが行われている。窓を開けて外気を取り入れることでエアコンの運転を停止すれば、省エネルギに結びつく。しかしながら、建物には複数の部屋があって、部屋毎に温熱環境が異なる。また、体感温度には個人差がある。従って、適切なタイミングで窓を自動的に開閉制御するのは容易でない。
上記の課題を解決するために、本発明は、居住者毎に最適なタイミングで窓を開けて外気を取り入れることができるように、居住者の行動を学習して、その結果を有効に利用する空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
建物内の管理対象の部屋に室温を管理する空調装置が設けられ、前記空調装置のオンオフと設定温度を制御する空調制御装置が設けられており、単数または複数の管理対象の部屋毎に、通風のための主要な窓が特定されていて、該当する主要な窓には開閉センサが取り付けられており、前記開閉センサの出力する開閉信号を前記空調制御装置が取得し、前記管理対象の部屋には、室温を測定する温度センサが設けられ、この温度センサの出力する検出信号を前記空調制御装置が取得し、前記管理対象の部屋の外側の外気温を測定する温度センサが設けられ、この温度センサの出力する検出信号を前記空調制御装置が取得し、前記空調制御装置は、前記開閉センサの出力する開閉信号により、前記管理対象の部屋の主要な窓が開放されたことを検出すると、その部屋の空調装置の運転を停止し、前記管理対象の部屋の主要な窓が閉じられたことを検出すると、その部屋の空調装置の運転開始を可能にし、前記管理対象の部屋の主要な窓が閉じられたことを検出したとき、前記温度センサの出力信号により、前記管理対象の部屋の室温と外気温とを取得し、この室温と外気温が、前記居住者の快適環境である旨の表示を含めた居住者毎環境データを生成して、記憶装置に記憶し、前記管理対象の部屋の主要な窓が閉じられた後に、前記管理対象の部屋の外気温を監視して、その外気温が前記居住者の快適環境である値に達したとき、前記居住者に対して、出力装置により窓の開放を薦める旨のメッセージを出力することを特徴とする空調システム。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の空調システムにおいて、管理対象の部屋の主要な窓が、通風シミュレーションの結果に基づいて設計された、通風を目的とする窓であることを特徴とする空調システム。
【0007】
〈構成3〉
構成2に記載の空調システムにおいて、前記空調制御装置は、前記出力装置により、前記居住者に対して、開放すべき主要な窓を通知するメッセージを出力することを特徴とする空調システム。
【0008】
〈構成4〉
構成3に記載の空調システムにおいて、前記空調制御装置は、前記管理対象の部屋の主要な窓が開かれたとき、前記空調装置の運転を停止し、前記管理対象の部屋の主要な窓が全開されたとき、前記換気装置の運転を停止し、前記管理対象の部屋の主要な窓が一部開かれて全開されていないとき、前記主要な窓の開度を検出して、必要換気量を計算し、換気装置の風量を制御することを特徴とする空調システム。
【0009】
〈構成5〉
構成3または4に記載の空調システムにおいて、前記空調制御装置は、前記管理対象の部屋の主要な窓が開かれたとき、前記空調装置の運転を停止し、前記管理対象の部屋の室温を監視して、その室温を、居住者の快適環境である値にするように換気装置の風量を制御することを特徴とする空調システム。
【0010】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載の空調システムにおいて、管理対象の部屋の主要な窓が閉じられた後、管理対象の部屋の室温と湿度がそのまま維持されるように空調装置の初期設定をして、自動的に運転を開始することを特徴とする空調システム。
【0011】
〈構成7〉
構成6に記載の空調システムにおいて、前記空調制御装置は、前記居住者の快適環境である値の室温を標準値として、居住者の服装の種類を示す情報もしくは居住者の特徴を示す情報の入力を受け付けて、空調装置の設定を標準値からシフトさせる制御を実行することを特徴とする空調システム。
【0012】
〈構成8〉
構成7に記載の空調システムにおいて、前記標準値から一定の範囲をゆらぎ範囲に設定して、温度を任意の周期で変動させるゆらぎ制御を実行することを特徴とする空調システム。
【0013】
〈構成9〉
構成1乃至8のいずれかに記載の空調システムにおいて、管理対象の部屋を利用する居住者を認識する入退室管理装置を設けて、前記居住者毎環境データは、管理対象の部屋の室温と外気温と居住者の識別情報とを関係付けたデータで構成されることを特徴とする空調システム。
【0014】
〈構成10〉
構成1乃至9のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記空調装置の制御端末には、制御内容と前記制御端末の操作者とを前記空調制御装置に通知する通信手段が設けられており、前記空調制御装置には、前記通知を受信する受信手段が設けられていることを特徴とする空調システム。
【0015】
〈構成11〉
構成10に記載の空調システムにおいて、全ての居住者のために、それぞれ空調装置の制御端末が設けられ、前記空調制御装置の出力するメッセージは、前記制御端末に出力されることを特徴とする空調システム。
【0016】
〈構成12〉
構成11に記載の空調システムにおいて、前記制御端末は、空調装置をオンオフ制御する機能と、温度設定をする機能と、換気装置をオンオフする機能と換気装置の換気量を設定する機能を備えていることを特徴とする空調システム。
【0017】
〈構成13〉
構成10乃至12のいずれかに記載の空調システムにおいて、空調装置の制御は、「温度を上げる」と「温度を下げる」という制御のみで、直接温度を選択できない構成にすることを特徴とする空調システム。
【0018】
〈構成14〉
構成1乃至13のいずれかに記載の空調システムにおいて、前記居住者毎環境データが複数取得されたとき、部屋の湿度、時刻、季節を含むパラメータに従って、いずれかの居住者毎環境データを居住者の快適環境である値に選定することを特徴とする空調システム。
【0019】
〈構成15〉
コンピュータを、構成1に記載の空調制御装置として機能させる空調制御プログラム。
【0020】
〈構成16〉
コンピュータを、構成1に記載の空調制御装置として機能させる空調制御プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0021】
〈構成1の効果〉
居住者が窓を閉じるという行為を検出することにより、居住者がそれまで空調装置無しの快適な環境を得ていたと判断できる。窓が閉じられたとき取得した外気温や室温等の値を居住者の快適環境であるとする。これにより、外気温が下がったときに、居住者に窓を開けるように、メッセージを発信できる。
〈構成2の効果〉
通風シミュレーションの結果に基づいて設計された窓であれば、窓を開いたときに、外気温と換気量により、到達する室温を計算でき、制御の信頼性が向上する。
〈構成3の効果〉
換気により設計どおりの室温を実現するために、必要な全ての窓を開放するように案内をすることができる。
〈構成4の効果〉
主要な窓を開いたときには、ただちに空調装置を停止して、無駄な運転を防ぐ。同時に、これまで運転していた換気装置も運転を停止する。しかし、主要な窓が全開されないないときには、窓の開度に応じて、換気量を調整すれば、設計どおりの換気効果を得ることができる。
〈構成5の効果〉
主要な窓が開けられた後も、居住者が求める快適環境を得るために、目標とする温度に達するまで、必要に応じて換気装置を運転することができる。
〈構成6の効果〉
窓が閉じられたときの室温と湿度が維持されるように空調装置を制御すれば、居住者の快適環境を自動的に継続できる。
〈構成7の効果〉
居住者の状態により居住者の快適環境である値の室温からシフトした室温に制御することができる。
〈構成8の効果〉
ゆらぎ制御により、全体として省エネルギー制御が可能になる。
〈構成9の効果〉
管理対象の部屋を、特定の居住者のみが利用するのでない場合には、居住者毎に別々の居住者毎環境データを生成するとよい。部屋を利用している居住者に最適な制御ができる。
〈構成10の効果〉
空調装置がリモコン(制御端末)で制御されたとき、どの居住者が制御端末を操作したかを空調制御装置に通知すれば、空調制御装置は居住者毎環境データに、該当する情報を追加できる。
〈構成11の効果〉
例えば、携帯電話を全ての居住者のための制御端末にする。これにより、居住者毎の空調装置の制御内容を学習し、居住者別に各種メッセージを送信することかできる。
〈構成12の効果〉
居住者が自発的に空調装置や換気装置を操作することにより、居住者毎環境データをより最適化できる。
〈構成13の効果〉
空調制御装置が取得した居住者毎環境データの示す室温等を基準にして相対的に設定温度を制御することができる。
〈構成14の効果〉
パラメータの違いにより、快適と感じる温度が異なるから、学習により複数の居住者毎環境データを蓄積しておき、パラメータまで考慮して居住者の快適環境である値を得るようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の空調システム10を示すブロック図である。
【図2】空調制御装置36の具体的なハードウエアブロック図である。
【図3】通風シミュレーション図である。
【図4】居住者が窓を締める動作の前後の状態説明図である。
【図5】居住者があける動作の前後の状態説明図である。
【図6】空調システム10の機能ブロック図である。
【図7】空調システム10が生成するデータの構造を示す説明図である。
【図8】実施例1の空調システムの動作フローチャート(その1)である。
【図9】実施例1の空調システムの動作フローチャート(その2)である。
【図10】換気効果の説明図である。
【図11】ディスプレイ32を利用した入退出管理装置の説明図である。
【図12】個々の居住者を識別する制御端末の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、管理対象の部屋毎に、換気により快適な環境を得ることができる主要な窓を決めておく。居住者がそれらの主要な窓を閉める直前までは、居住者は換気により快適な環境を得ていたと判断できる。従って、例えば、外気温が上昇して、居住者により窓が閉じられたとき、管理対象の部屋の室温と外気温とを取得し、この室温と外気温を、居住者の快適環境を示す値として、記憶装置に記憶させておく。そして、空調装置を運転中に外気温が下がったとき、居住者に対して、窓の開放を薦める旨のメッセージを出力する。以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
(管理対象の部屋)
図1は実施例1の空調システム10を示すブロック図である。
管理対象の部屋は空調装置14により温度管理がされている。建物は木造一戸建て住宅でもよいし、集合住宅でも構わない。管理対象の部屋は、単数でも複数でも任意の数だけ設けることができる。管理対象の部屋は、建物の一部の部屋であってもよいし、全部の部屋であってもよい。空調装置14のオンオフと設定温度は空調制御装置36により制御される。また、居住者の操作する制御端末70により設定することもできる。空調制御装置36は、後で説明するようなコンピュータにより実現することができる。
【0025】
管理対象の部屋毎に、通風のための主要な窓16が特定されている。これは、通風シミュレーションの結果から特定したもので、通風による有効な換気を可能にする窓である。通風シミュレーションについては、後で図3を用いて説明する。図1に示した主要な窓16には、それぞれ開閉センサ18が取り付けられている。開閉センサ18は、主要な窓16が開いているか閉まっているかを示す開閉信号を出力する。さらに、窓の開度を示す信号を出力することが好ましい。
【0026】
開閉センサ18の出力する開閉信号は、空調制御装置36が取得する。管理対象の部屋には、室温を測定する室温温度センサ24が設けられ、この室温温度センサ24の出力する検出信号を空調制御装置36が取得する。また、管理対象の部屋の外側の外気温を測定する外気温温度センサ28が設けられ、この外気温温度センサ28の出力する検出信号を空調制御装置36が取得する。このほかに、管理対象の部屋の湿度を測定する図示しない湿度センサ等を設けることが好ましい。
【0027】
空調制御装置36は、開閉センサ18の出力する開閉信号により、管理対象の部屋の主要な窓16が開放されたことを検出すると、その部屋の空調装置14の運転を停止する。また、管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられたことを検出すると、その部屋の空調装置14の運転開始を可能にする。自動的に空調装置を起動してもよいし、居住者の指示の入力を待つようにしてもよい。
【0028】
空調制御装置36は、管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられたことを検出したとき、室温温度センサ24や外気温温度センサ28の出力信号により、管理対象の部屋の室温と外気温とを取得する。この室温と外気温を含む居住者毎環境データを、空調制御装置36の記憶装置に記憶する。管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられた後に、管理対象の部屋の外気温を監視して、その外気温が居住者の快適環境である値に達したとき、居住者に対して、ディスプレイ32やスピーカ34等の出力装置により窓の開放を薦める旨のメッセージを出力する。窓が開放されると、空調制御装置36は、換気装置22の運転状態も調整する。
【0029】
図2は空調制御装置36の具体的なハードウエアブロック図である。
空調制御装置36は汎用のコンピュータにより実現できる。図に示すように、空調制御装置36の内部バス73には、CPU(中央処理装置)74と、ROM(リードオンリメモリ)76と、RAM(ランダムアクセスメモリ)78と、HDD(ハードディスク)80と、入出力インタフェース82とが接続されている。
【0030】
入出力インタフェース82には、ディスプレイ32やスピーカ34、空調装置14、換気装置22、開閉センサ18、室温温度センサ24、外気温温度センサ26、通信装置35等が接続されている。ROM76やRAM78やHDD80は、空調制御装置36の記憶装置を構成する。CPU74やROM76やRAM78は演算処理装置を構成する。制御に使用されるデータは主としてHDD80に記憶されて保存される。CPU74が実行するコンピュータプログラムは、ROM76に記憶され、あるいはRAM78にロードされて実行される。
【0031】
図3は通風シミュレーション図38である。
図のような間取り図の建物に、窓を設ける場合には、建物の向きや環境を考慮して、最適な位置に最適な面積の窓が配置されるように設計がされる。そして、例えば、南向きの家で南風が吹いたとき、図の矢印のように風が通り抜けれは、外気を適切に取り入れた換気ができるというようにコンピュータでシミュレーションをする。
【0032】
例えば、通風シミュレーション図38の右下の部屋を、室温を管理する管理対象の部屋12としたとき、主要な窓は、図中で太線矢印で示した窓になる。これらの窓に開閉センサを取り付けて、居住者がこれら全ての窓を開閉したかどうかを監視して、必要に応じて居住者にメッセージを出力する。また、高気密性住宅では、窓を閉じた状態でも一定量以上の換気を確保するために、原則として24時間連続運転をする換気装置を設けている。この換気装置の運転も窓の開閉に連動させることができる。なお、以下「換気装置」というときは、24時間連続運転をするために取り付けられた換気装置のことをいうものとする。
【0033】
通風シミュレーションの結果に基づいて設計された窓であれば、窓を開いたときに、外気温と換気量により、到達する室温を計算できる。従って、居住者に対して出力するメッセージの信頼性が向上する。なお、こうした通風シミュレーションに基づく設計がされていない場合でも、通風のための適切な窓を選定して主要な窓とすれば、以下のとおりの制御が可能である。
【0034】
図4は居住者が窓を締める動作の前後の状態説明図である。
図の縦軸は気温、横軸は時間の経過を示す。図の時刻t1までは、管理対象の部屋12の主要な窓16は開かれていた。しかしながら、外気温も室温も上昇したため、居住者は時刻t1で主要な窓16を閉めた。時刻t1以前は、主要な窓16が全部開放されているときには換気装置22の運転を停止している。そこで、時刻t1で換気装置22の運転を開始した。また、主要な窓16が開かれていたときには空調装置14も運転されていなかった。そこで、時刻t1で空調装置14の運転を開始した。この時刻t1の室温と外気温を後で説明するように空調制御装置36の記憶装置に記憶しておく。
【0035】
図5は居住者があける動作の前後の状態説明図である。
図の縦軸と横軸は図4と同様である。図の時刻t2までは、管理対象の部屋12の主要な窓16は閉じられている。しかしながら、外気温が記憶装置に記憶しておいた外気温まで下がったため、後で説明するようにして、居住者にメッセージを出力する。居住者は時刻t2で主要な窓16を開ける。主要な窓16が閉じられていたときには空調装置14も換気装置22も運転されていた。しかし、時刻t2で空調装置14の運転は停止した。一方、換気装置22は、主要な窓16の開放状態に応じた運転をする。主要な窓が全開されたときには、換気装置22の運転をただちに停止する。十分な自然換気が可能なため、換気装置22の電力消費を節約することができる。しかし、主要な窓が半分ほどしか開けられないときは、時刻t2から、換気装置22は、フル運転よりも少し風量を減らして運転を継続する。その後主要な窓が全開されたときには、換気装置22の運転を停止する。本発明の空調システム10は、例えば、上記のような制御をする。
【0036】
(空調装置)
図1において、空調装置14は、管理対象の部屋の内部に設置されていてもよいし、ダクト等を通じて管理対象の部屋に調整された適温の空気が供給される構造であってもよい。主要な窓16を開けて外気を取り入れて、自然換気あるいは強制換気により、居住者にとって快適な温熱環境を得るように制御する。従って、主要な窓16を開けているときは、空調装置14の運転を停止する。主要な窓16を閉じているときは、居住者の意思によって空調装置をオンオフできる状態にする。もちろん、主要な窓16を閉じると同時に自動的に空調装置14を起動するようにしても構わない。
【0037】
空調システム10は、空調装置14を運転しなくても、主要な窓16を開けて外気を取り入れているとき、居住者が十分に快適であると感じる状態を、自動的に検出する。夏季の場合に、居住者が開放していた窓を閉めて空調装置の冷房運転を開始した場合には、そのときの環境温度を学習する。冬期の場合には、居住者が開放していた窓を閉めて空調装置の暖房運転を開始した場合には、そのときの環境温度を学習する。いずれも、窓を閉めるまでは、空調装置を使用せずに外気を取り入れて、居住者が快適であったと判断して、その状態を記憶する。
【0038】
(窓と開閉センサ)
単数または複数の管理対象の部屋毎に、既に説明したとおり、通風のための主要な窓16が特定されている。該当する主要な窓16には、図1に示したように、開閉センサ18が取り付けられている。主要な窓16は、上記の通風シミュレーションの結果に基づく、通風を目的とする全ての窓とする。主要な窓は、全て管理対象の部屋の壁面に設けられているとは限らない。建物の外壁の任意の場所に設けられていてよい。さらに、通風のための風が弱いか無風状態のときは、換気装置22の運転を条件に通風シミュレーションの結果が実現するとして構わない。主要な窓16に取り付けられた開閉センサ18の出力する開閉信号を空調制御装置36が取得する。空調制御装置36は、換気装置22の運転制御も行うことが好ましい。なお、以下の実施例1では、特定の居住者が単独で管理対象の部屋を利用する場合を説明する。
【0039】
(室温と外気温の監視)
管理対象の部屋の温熱環境を監視するために、管理対象の部屋の室温を測定する室温温度センサ24を設ける。外気温を測定する温度センサは、通風シミュレーションの結果に基づいて外気を取り入れる窓の周辺の温度を測定するものであることが望ましい。
【0040】
(窓の開閉と空調装置の制御)
管理対象の部屋の主要な窓16が開放されたことを検出すると、管理対象の部屋の空調装置14の運転を停止する。全ての主要な窓16が開放されなかったときは、空調制御装置36は、ディスプレイ32やスピーカ34、あるいは居住者の所持する制御端末70に対して、開放すべき窓を通知するメッセージを送信する。管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられたことを検出すると、管理対象の部屋の空調装置の運転開始を可能にする。
【0041】
主要な窓16を閉じた状態で、空調装置14を起動しなくても一時的に快適な場合もある。空調の運転開始と温度設定は居住者の所持する制御端末70で制御することが好ましい。全ての主要な窓16が閉じられないまま空調装置14の運転開始が指示されたときには、空調制御装置36は、ディスプレイ32やスピーカ34、あるいは居住者の所持する制御端末70に対して、閉じ忘れた窓を通知するメッセージを送信する。
【0042】
(コンピュータプログラムとデータ)
図6は空調システム10の機能ブロック図である。
空調システム10はインストールされたコンピュータプログラムを実行することにより、図の演算処理装置40の部分に示した各手段として機能する。そして、この演算処理のために記憶装置42にデータを記憶する。窓開閉信号受信手段52は開閉センサ18の出力する開閉信号20を受け入れて記憶装置42に記憶させる。温度検出信号受信手段54は、開閉信号20を監視しており、管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられたことを検出したとき、室温温度センサ24の出力する室温データ28と外気温温度センサ26の出力する外気温データ29を受け入れて、記憶装置42に記憶させる。
【0043】
空調運転制御手段56は、開閉信号20を参照して、空調装置14の運転を制御する。換気装置運転制御手段58は、開閉信号20を参照して換気装置22の運転を制御する。状況管理データ生成手段60は、開閉信号20と室温データ28と外気温データ29を記憶装置42から読み取り、空調運転制御手段56や換気装置運転制御手段58の運転状態を含む部屋毎状況管理データ44を生成して、記憶装置42に記憶させる。
【0044】
環境データ生成手段62は開閉信号20と室温データ28と外気温データ29とを参照して、管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられたときの室温と外気温が、居住者の快適環境であることを示す居住者毎環境データ46を生成して、部屋毎状況管理データ44に記憶させる。記憶装置42と居住者毎環境データ46の詳細は、後で図7を用いて説明する。
【0045】
画面制御手段64は記憶装置42から画面データ48を読み出してディスプレイ32に表示する。メッセージ出力手段66は、居住者毎環境データ46を参照しながら開閉信号20と室温データ28を監視して、管理対象の部屋の主要な窓が閉じられ外気温が前記居住者の快適環境である値に達したとき、居住者に対して、窓の開放を薦める旨のメッセージを、スピーカ34により出力する。なお、同時にそのメッセージを含む画面データ48を生成して、画面制御手段64に出力させることもできる。
【0046】
通信制御手段67は居住者が操作する制御端末70の空調制御信号を通信装置35を通じて受信して、部屋毎状況管理データ44にその結果を加える。なお、実施例2では、通信制御手段67が画面データ48を読み取って、通信装置35を通じて制御端末70に表示させる動作もする。また、空調運転制御手段56は、居住者に対して、窓の開閉の際に、管理対象の部屋の通風に必要な主要な窓を通知するメッセージを出力することができる。このメッセージも、音声あるいは画像で出力される。
【0047】
図7は空調システム10が生成するデータの構造を示す説明図である。
図7(a)は主要な窓が閉まっている状態での、部屋毎状況管理データ44の例を示す。この部屋毎状況管理データ44は、状況管理データ生成手段60により管理対象の部屋毎に生成される。各データは、部屋識別情報により区別する。部屋毎状況管理データ44には、室温温度センサ24により取得された室温や湿度、外気温温度センサ26により取得された外気温が含められる。さらに、管理対象の部屋の主要な窓毎に、開閉センサ18により取得される状態が記録されている。また、空調運転制御手段56と換気装置運転制御手段58から通知を受けて、空調装置14や換気装置22の運転状態も含められる。
【0048】
さらに、この審理対象の部屋を複数の居住者が利用する場合を考慮して、利用者の識別情報も含められる。図7(c)は主要な窓が開かれた状態での、部屋毎状況管理データ44の例を示す。このデータを図7(a)のデータと比較すると、主要な窓の状態と空調装置14と換気装置22の運転状態とが変化している。図6で説明した各手段は、この部屋毎状況管理データ44の内容が書き換えられたタイミングで、状況管理データ生成手段60からそのイベントの通知を受けて、書き換えられた内容を参照してそれぞれの処理を実行する。
【0049】
図7(b)は居住者毎環境データ46の例を示す。居住者毎環境データ46は、環境データ生成手段62により、居住者毎に生成される。各データは、居住者識別情報により区別される。そして、それぞれの居住者が窓を開けたときの室温温度センサ24と外気温温度センサ26の出力により、快適室温と快適外気温とを記録する。なお、快適室温と快適外気温とは、繰り返し取得をして平均値を求めるといった学習により最適化するとよい。
【0050】
さらに、例えば、部屋によってとか、湿度とか、窓を開けた時刻とか、季節によって、快適室温と快適外気温とが相違することが考えられる。そこで、例えば、「快適室温と快適外気温」を大きく変動させる要因になるパラメータを設定し、パラメータ毎に「快適室温と快適外気温」を記憶しておくことが好ましい。上記の説明では、空調装置を使用中に、外気温がこの居住者毎環境データ46に記録された快適外気温と等しい値になったとき、窓を開けるように居住者にメッセージを出力すると説明した。このとき、まず、パラメータに応じて「快適室温と快適外気温」の組み合わせを選択してから、快適外気温を参照するようにすればよい。
【0051】
(窓の開閉による居住者毎環境データの取得)
図8は、実施例1の空調システムの動作フローチャート(その1)である。
以上説明した構成のシステムの具体的な動作を、図1〜図7を参照しながら説明する。図7に示すような間取りの建物で説明する。管理対象の部屋12には、図1に示した設備が設けられている。この管理対象の部屋12を利用してした居住者は、これまで空調装置14を使用していた。管理対象の部屋12の主要な窓16が閉じられたことを開閉センサ18により検出した(ステップS11)。このとき、少なくともその直前までの温熱環境で居住者は快適であったと判断できる。
【0052】
そこで、温度検出信号受信手段54は、管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられたときの、管理対象の部屋の室温データ28と外気温データ29とを取得する(ステップS12と13)。また、窓が閉められたときには、窓の通風を制御する換気装置22の運転を停止する(ステップS14)。環境データ生成手段62は、居住者の識別情報と、管理対象の部屋の室温と外気温とを含む、居住者毎環境データ46を生成して、記憶装置42に記憶する(ステップS15、16、1)。居住者毎環境データ46に記録された室温と外気温とは、管理対象の部屋における、その居住者の快適環境を示す情報である。なお、居住者の識別情報は、部屋毎状況管理データ44に記録されているので、それを参照している(ステップS15、16)。
【0053】
(窓開けを薦めるメッセージ出力)
図9は、実施例1の空調システムの動作フローチャート(その2)である。
管理対象の部屋の主要な窓16が閉じられた後、空調運転制御手段56は、管理対象の部屋の室温と湿度が、そのままの状態で維持されるように、空調装置14の初期設定をして自動的に運転を開始することもできる。既に図4と図5で説明したように、通常は、窓を閉めた後、外気温は上昇し、室温は空調装置14の運転により若干低下する。その後、時間の経過あるいは天候の変化により外気温が低下して、居住者の快適環境である値に達したときには、窓を開放して換気をすると、室温も居住者の快適環境である値に保持することが可能になる。
【0054】
そこで、温度検出信号受信手段54が記憶装置42の室温データ28や外気温データ29を書き換えるときにそのイベントを状況管理データ生成手段60に通知する。状況管理データ生成手段60はそのつど、部屋毎状況管理データ44を書き換える。そして、部屋毎状況管理データ44が書き換えられたときにそのイベントがメッセージ出力手段66に通知される。部屋毎状況管理データ44を参照し(ステップS21)、外気温を比較する。(ステップS22)。外気温が下がって管理対象の部屋の外側の外気温が上記の居住者の快適環境である値に達したときに、メッセージ出力手段66は、管理対象の部屋に居る居住者に対して、「窓を開ければ快適です」といった、窓の開放を薦める旨メッセージを出力する(ステップS23,24,25)。メッセージは、画面制御手段64を通じてディスプレイ32に文字や画像データで出力される。また、スピーカ34に対して音声データで出力される。
【0055】
これにより、居住者は窓を開ける。開閉センサ18の開閉信号20を窓開閉信号受信手段52が取得したとき、そのイベントが空調運転制御手段56と換気装置運転制御手段58に通知される(ステップS26)。空調運転制御手段56の制御により、空調装置14は自動的に運転を停止する(ステップS27)。同時に、管理対象の部屋の室温を監視して、室温を居住者の快適環境である値を保持できるように、換気装置22を運転する(ステップS28)。この制御は、換気装置運転制御手段58が実行する。換気不足による室温の上昇を防ぐために、必要に応じて換気装置を運転することが好ましい。居住者が換気量を調整できるように、後で説明するように、居住者の端末装置70に換気量調整ボタンを設けることが好ましい。
【0056】
(学習効果)
以上のように、居住者が窓を閉じるという行為を検出することにより、居住者がそれまで空調装置無しの快適な環境を得ていたと判断できる。窓が閉じられたとき取得した外気温や室温等の値を居住者の快適環境であるとする。これにより、外気温が下がったときに、居住者に窓を開けるように、メッセージを発信できる。
【0057】
主要な窓を閉めて空調装置を運転しているときは、居住者は外気温の変化に気付かないことが多い。従って、上記のように、空調システムが管理対象の部屋の室温と外気温を監視して、窓の開放を薦めるメッセージを出力することが最も好ましい。しかしながら、居住者自身が自発的に窓を開けて、外気を取り入れることがある。その後、窓をあけたままの状態が継続したときは、そのときの室温や外気温が、居住者にとって快適であると判断できる。
【0058】
例えば、夏季に、居住者が窓を閉めたときの室温28度を最適設定温度と学習しているものとする。ここで、居住者が自発的に窓を開けて外気を取り入れたとき、室温が29度ならば、この温度でも居住者は快適と感じると判断できる。そのときは、最適設定温度が室温29度になるように、居住者毎環境データを書き換えるとよい。その後、居住者が窓を閉めたときの室温が30度であれば、30度は不快、29度は快適という判断ができる。こうして繰り返しデータを取得することで、学習をして、居住者毎の最適設定温度を決めるとよい。
【0059】
同じ居住者で、主要な窓が開放されたときと主要な窓が閉じられてエアコンが起動されたときの両方のデータを取得すると、居住者が快適と感じる温度範囲の上限値と下限値とを示すデータを取得したことになる。例えば、夏に、主要な窓が開放されたときには、通風によりその居住者にとって快適な温度(下限)が得られたものと判断できる。その後しばらくして主要な窓が閉じられて空調装置が起動されたときには、外気温の上昇とともに部屋の温度が上昇してその居住者は空調を必要とする限界の温度(上限)に達したものと判断できる。従って、上記の居住者毎環境選択データを繰り返して取得して平均値を計算すると、居住者が快適と感じる温度範囲の上限値と下限値を求める学習動作を行うこともできる。
【0060】
(換気効果)
図10は、換気効果の説明図である。
上記の制御をする場合に、主要な窓が全部開閉されないと、換気効果や空調効果に支障がでる。そこで、換気装置運転制御手段58は、例えば、図10(a)に示すように、主要な窓が閉められたとき、全部閉められたかどうかを判断して(ステップS31,32)、閉め忘れられている窓を検出し(ステップS33)、その旨のメッセージを出力するとよい(ステップS34)。
【0061】
また、図10(b)に示すように、主要な窓が開かれたとき、全部開かれたかどうかを判断して(ステップS41,42)、開き忘れられている窓を検出し(ステップS43)、その旨のメッセージを出力するとよい(ステップS44)。
【0062】
さらに、図10(c)に示すように、管理対象の部屋の主要な窓が開かれたとき、外気温と主要な窓の開度を検出して(ステップS51、52)、必要換気量を計算して、換気装置22の風量を制御することが好ましい(ステップS53,54)。例えば、居住者が主要な窓を完全に開放したときは、自然換気のみで快適環境が得られ、室内の換気も十分であるから、換気装置22を運転する必要は無い。一方居住者が主要な窓を、例えば、半分だけ開いたことを検出した場合には、完全に開放したときとの換気量を比較して、設計上の換気量に対して不足する換気量を補うように換気装置22を運転するとよい。一方、例えば、無風状態で、主要な窓を完全に開放しても自然換気が不十分な場合がある。これに対処するために、室温を検出して、外気温との温度差が一定以上大きくなったときは、その温度差を縮めるように、換気装置22を運転してもよい。
【0063】
また、空調装置14は、居住者毎環境データ46に記録した居住者の快適環境である値の室温を標準値として制御することが好ましい。このとき、居住者に服装の種類を示す情報や、就寝中とか料理中といった状態情報や、高齢者といった居住者の特徴を示す情報の入力を受け付けて、空調装置の設定を標準値から自動的にシフトさせる制御を実行してもよい。例えば、ウオームビズ、クールビズ等の服装の種類を示す情報の入力や、高齢者や乳幼児といった特性、年齢や性別等の居住者の特徴を示す情報の入力を受け付けて、空調装置の設定を標準値からシフトさせる制御を実行してもよい。例えば、同じ居住者であっても、服装の種類が「暖」と「涼」のいずれかの指定があったときは、最適設定温度から1度上げたり1度下げたところで制御するとよい。
【0064】
さらに、上記の標準値から一定の範囲をゆらぎ範囲に設定して、温度を任意の周期で変動させるゆらぎ制御を実行することにより、全体として省エネルギー制御も可能になる。例えば、居住者毎環境データから最適設定温度を28度とし、これを基準値にしたとき、例えば、30度〜27度の範囲で10分とか1時間といった周期でゆっくりと設定温度を上下させるとよい。
【実施例2】
【0065】
(居住者の制御端末)
管理対象の部屋を特定の居住者のみが利用する場合がある。一方、別々の居住者がかわるがわる管理対象の部屋を利用する場合がある。複数の居住者が同時に共同で利用する場合もある。このとき、各居住者にはそれぞれ体感温度に個人差がある。この実施例のシステムでは、これらの場合に適する制御方法を説明する。
【0066】
図11は、図1に示すディスプレイ32を利用した入退出管理装置の説明図である。
この実施例において、管理対象の部屋を特定の居住者のみが利用する場合以外は、少なくとも管理対象の部屋の主要な窓を閉じた居住者を認識する手段を設ける。居住者毎の居住者毎環境データ46を生成するためである。管理対象の部屋にどの居住者がいるかを認識するには、既知の入退室管理装置を利用できる。例えば、居住者毎にICタグを所持しており、自動的に入退出を検出してもよい。この実施例ではもっと簡単に、ディスプレイ32を利用して入退出管理を行う。
【0067】
図11において、ディスプレイ32により、予め4人の居住者を登録しておく。そして、図のように、居住者の入退出時に居住者に登録ボタン72をプッシュさせる。いずれかの登録ボタン72がプッシュされると、該当する居住者の識別情報と、在室か不在かという情報が通信装置35と通信制御手段67を通じて状況管理データ生成手段60に通知される。状況管理データ生成手段60は、居住者の入退出のたびに部屋毎状況管理データ44を書き換える。そして、該当する居住者が上記の主要な窓を閉めると、環境データ生成手段62がその居住者の識別情報を取得して、居住者毎環境データ46を生成する。
【0068】
登録ボタン72は、ディスプレイによるタッチスイッチでよい。なお、居住者の所持するIDカードやタグの情報を読み取ったときには、自動的に登録ボタン72をプッシュした処理が実行される。なお、管理対象の部屋に複数の居住者が居るときには、特定の居住者の居住者毎環境データ46のみを参照して窓開けのためのメッセージを出力してもよい。しかしながら、空調運転制御手段56は、複数の居住者の居住者毎環境データ46の外気温の値を平均して、その値を基準にして、空調装置14を制御することもできる。メッセージ出力手段66も、その値を基準にして、窓開けのためのメッセージを出力するとよい。
【0069】
(居住者毎の制御端末)
図12は個々の居住者を識別する制御端末の説明図である。
既知の技術によれば、居住者68が、それぞれ携帯電話のアプリケーションプログラム等によって、空調装置14の制御を行うことができる。この携帯電話を制御端末70と呼ぶことにする。この実施例では、例えば、全ての居住者68に空調装置14の制御端末70を所持させる。個々の居住者が制御端末70を利用して空調制御装置36と通信ができれば、空調制御装置36は容易に居住者を区別して上記の制御をすることができる。
【0070】
例えば、居住者68が窓を閉じたときには、居住者68が空調装置14を起動する確率が高い。従って、どの居住者68が空調装置14を起動したかを空調制御装置が認識する。制御端末70は、空調装置14をオンオフ制御する機能と、温度設定をする機能とを備えているとよい。さらに、図12(b)に示すように、空調制御装置のメッセージ出力手段66から該当する居住者に対して送信されるメッセージを文字や画像や音声で表示する機能を備えていることが好ましい。制御端末70が携帯電話であれば、これを実現できる。
【0071】
なお、共用の制御端末を使用する場合には、制御端末を操作するときに、操作者を通知するボタン等を制御端末に設けてもよい。空調装置の温度設定は、居住者が自由に調整できる。しかし、例えば、図12の(c)に示すように、制御ボタンは、「温度を上げる」と「温度を下げる」という制御のみで、例えば、1回ボタンを押す毎に1度温度が変化するという構成にする。居住者が実際に体感している温度を最適化する場合には、数値を示す温度表示は好ましくないからである。通風量についても同様である。
【0072】
居住者が快適と感じる設定を空調制御装置が既に学習している。従って、通常は自動的に最適設定ができる。しかし、居住者が「温度を上げる」とか「温度を下げる」という制御を頻繁に行うときは、学習結果を補正する。例えば、28度を最適設定値として空調を開始していたところ、居住者が毎回、「温度を下げる」のボタンを1回押すときは、27度を最低設定値に補正するとよい。
【0073】
以上のシステムでは、居住者が自分の感覚で窓の開閉をし、その動作を室温制御装置が監視して、居住者毎環境選択データを取得するので、データの登録や設定といった煩わしい操作を必要としない。建物内部の部屋毎に、居住者毎に最適なタイミングで窓の開閉をして、通風をフルに利用した温熱環境をつくることができる。従って、きわめて高い省エネ効果がある。また、通風を利用した温熱環境は居住者の健康にも最適であると言われている。居住者にこの環境を積極的に取り入れる習慣がつけば、従来以上に、空調装置にたよらない時間が増加するという効果がある。
【0074】
なお、上記の演算処理装置で実行されるコンピュータプログラムは、機能ブロックで図示した単位でモジュール化されてもよいし、複数の機能ブロックを組み合わせて一体化されてもよい。また、上記のコンピュータプログラムは、既存のアプリケーションプログラムに組み込んで使用してもよい。本発明を実現するためのコンピュータプログラムは、例えばCD−ROMのようなコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、任意の情報処理装置にインストールして利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 空調システム
12 管理対象の部屋
14 空調装置
16 主要な窓
18 開閉センサ
20 開閉信号
22 換気装置
24 室温温度センサ
26 外気温温度センサ
28 室温データ
29 外気温データ
32 ディスプレイ
34 スピーカ
35 通信装置
36 空調制御装置
38 通風シミュレーション図
40 演算処理装置
42 記憶装置
44 部屋毎状況管理データ
48 画面データ
50 メッセージ
52 窓開閉信号受信手段
54 温度検出信号受信手段
56 空調運転制御手段
58 換気装置運転制御手段
60 状況管理データ生成手段
62 環境データ生成手段
64 画面制御手段
66 メッセージ出力手段
67 通信制御手段
68 居住者
70 制御端末
72 登録ボタン
74 CPU
76 ROM
78 RAM
80 HDD
82 入出力インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の管理対象の部屋に室温を管理する空調装置が設けられ、
前記空調装置のオンオフと設定温度を制御する空調制御装置が設けられており、
単数または複数の管理対象の部屋毎に、通風のための主要な窓が特定されていて、該当する主要な窓には開閉センサが取り付けられており、
前記開閉センサの出力する開閉信号を前記空調制御装置が取得し、
前記管理対象の部屋には、室温を測定する温度センサが設けられ、この温度センサの出力する検出信号を前記空調制御装置が取得し、
前記管理対象の部屋の外側の外気温を測定する温度センサが設けられ、この温度センサの出力する検出信号を前記空調制御装置が取得し、
前記空調制御装置は、
前記開閉センサの出力する開閉信号により、前記管理対象の部屋の主要な窓が開放されたことを検出すると、その部屋の空調装置の運転を停止し、
前記管理対象の部屋の主要な窓が閉じられたことを検出すると、その部屋の空調装置の運転開始を可能にし、
前記管理対象の部屋の主要な窓が閉じられたことを検出したとき、前記温度センサの出力信号により、前記管理対象の部屋の室温と外気温とを取得し、この室温と外気温が、前記居住者の快適環境である旨の表示を含めた居住者毎環境データを生成して、記憶装置に記憶し、
前記管理対象の部屋の主要な窓が閉じられた後に、前記管理対象の部屋の外気温を監視して、その外気温が前記居住者の快適環境である値に達したとき、前記居住者に対して、出力装置により窓の開放を薦める旨のメッセージを出力することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空調システムにおいて、
管理対象の部屋の主要な窓が、通風シミュレーションの結果に基づいて設計された、通風を目的とする窓であることを特徴とする空調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空調システムにおいて、
前記空調制御装置は、前記出力装置により、前記居住者に対して、開放すべき主要な窓を通知するメッセージを出力することを特徴とする空調システム。
【請求項4】
請求項3に記載の空調システムにおいて、
前記空調制御装置は、
前記管理対象の部屋の主要な窓が開かれたとき、前記空調装置の運転を停止し、
前記管理対象の部屋の主要な窓が全開されたとき、前記換気装置の運転を停止し、
前記管理対象の部屋の主要な窓が一部開かれて全開されていないとき、前記主要な窓の開度を検出して、必要換気量を計算し、換気装置の風量を制御することを特徴とする空調システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の空調システムにおいて、
前記空調制御装置は、
前記管理対象の部屋の主要な窓が開かれたとき、前記空調装置の運転を停止し、
前記管理対象の部屋の室温を監視して、その室温を、居住者の快適環境である値にするように換気装置の風量を制御することを特徴とする空調システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の空調システムにおいて、
管理対象の部屋の主要な窓が閉じられた後、管理対象の部屋の室温と湿度がそのまま維持されるように空調装置の初期設定をして、自動的に運転を開始することを特徴とする空調システム。
【請求項7】
請求項6に記載の空調システムにおいて、
前記空調制御装置は、前記居住者の快適環境である値の室温を標準値として、居住者の服装の種類を示す情報もしくは居住者の特徴を示す情報の入力を受け付けて、空調装置の設定を標準値からシフトさせる制御を実行することを特徴とする空調システム。
【請求項8】
請求項7に記載の空調システムにおいて、
前記標準値から一定の範囲をゆらぎ範囲に設定して、温度を任意の周期で変動させるゆらぎ制御を実行することを特徴とする空調システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の空調システムにおいて、
管理対象の部屋を利用する居住者を認識する入退室管理装置を設けて、
前記居住者毎環境データは、管理対象の部屋の室温と外気温と居住者の識別情報とを関係付けたデータで構成されることを特徴とする空調システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の空調システムにおいて、
前記空調装置の制御端末には、制御内容と前記制御端末の操作者とを前記空調制御装置に通知する通信手段が設けられており、前記空調制御装置には、前記通知を受信する受信手段が設けられていることを特徴とする空調システム。
【請求項11】
請求項10に記載の空調システムにおいて、
全ての居住者のために、それぞれ空調装置の制御端末が設けられ、前記空調制御装置の出力するメッセージは、前記制御端末に出力されることを特徴とする空調システム。
【請求項12】
請求項11に記載の空調システムにおいて、
前記制御端末は、空調装置をオンオフ制御する機能と、温度設定をする機能と、換気装置をオンオフする機能と換気装置の換気量を設定する機能を備えていることを特徴とする空調システム。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の空調システムにおいて、
空調装置の制御は、「温度を上げる」と「温度を下げる」という制御のみで、直接温度を選択できない構成にすることを特徴とする空調システム。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の空調システムにおいて、
前記居住者毎環境データが複数取得されたとき、部屋の湿度、時刻、季節を含むパラメータに従って、いずれかの居住者毎環境データを居住者の快適環境である値に選定することを特徴とする空調システム。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1に記載の空調制御装置として機能させる空調制御プログラム。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1に記載の空調制御装置として機能させる空調制御プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−251731(P2012−251731A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124943(P2011−124943)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】