説明

空調制御装置

【課題】空調制御装置において、空調制限下において乗員の快適性をより向上させるように、空調装置の運転条件等の詳細な判断を行うこと、詳細な判断に基づいて電力配分を変更する等で効率的な空調制御を行うこと、それらによって航続距離の確保と乗員の快適性確保とを両立することにある。
【解決手段】冷房機器(31)及び暖房機器(33)の使用可能電力量を算出し、冷房機器(31)及び暖房機器(33)を駆動制限値で駆動し、そして、バッテリ(6)、車両駆動状態により算出される空調機器(31、33)に割り当てることができる電力量を、乗員が要求する状態に応じて冷房機器(31)と暖房機器(33)とに分割し、電力制限中も必要とされる暖房、冷房を最大限使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調制御装置に係り、特に電気自動車(EV)やハイブリッド車両(HEV)等の電動車両における空調制御を行う空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(電気自動車)車両、HEV(ハイブリッド)車両等の電動車両は、バッテリ残量が低下すると、車両走行を優先するため、補助ヒータ(PTC)、電動コンプレッサ等の空調機器の制限が必要とされる。この空調機器の制限が行なわれる場合、車両走行状態、発電状態(HEV車両の場合)に関わらず、暖房、冷房が共に、最低駆動状態(電動コンプレッサは最小(Min)電力値、補助ヒータは最小(Min)電力値)に制限されるため、乗員が操作するパネル状態、外気温度等で決まる冷房、暖房性能に必要とされる電力が異なる場合でも、一律して動作を制限させている。
【0003】
即ち、電力の制限実行の肯定/否定だけの粗い判断に基づく結果としての空調制御は、空調制御の駆動制御量の通常値を単純制限した値を制限時の駆動制御量とし、条件が異なるあらゆる状態でも一律に行われている。
ところで、空調装置における噴出口を選択するモードが、防曇性(曇り止め性能)を高めるデフロスタモードや、デフロスタ&フットモード(D/Fモード)の場合、空気に含まれる湿気(水蒸気)を凝縮させるために、空調装置の冷房サイクルシステム部を構成する冷房機器を駆動するとともに、この冷房サイクルシステム部によって冷却された空気の温度を目的の噴出温度に上昇させるために、空調装置の暖房機器を駆動するように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開1997−76740号公報
【特許文献2】特許第3791234号公報
【0005】
特許文献1に係るハイブリッド車両は、駆動用の電気モータに電力を供給するバッテリから冷房ユニットに電力を送って冷房を行うものである。
特許文献2に係るハイブリッド車用空調装置は、室内を設定温度に調整するためにエアコンユニットが必要とする空調必要電力を演算し、車両走行中に、空調必要電力の増加に伴ってバッテリ残量の目標値を高く設定するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来、夏場に、暖房機器である補助ヒータを使用せず、冷房機器である電動コンプレッサのみ必要とする場合でも、最小(Min)電力値でしか駆動させることができず、本来、補助ヒータの駆動電力分を電動コンプレッサ側に加算させることができるにも関わらず、電動コンプレッサは最小(Min)電力値に制限されてしまう。また、バッテリ残量がまだある場合、又は、ハイブリッド(HEV)車両のように発電が可能な場合にも、空調機器の動作を全て停止させる等の制限を行ってしまう不具合があった。
また、デフロスタモードやデフロスタ&フットモード(D/Fモード)の場合、冷房機器の駆動と暖房機器の駆動を同時に行う必要があり、冷房と暖房の両方のシステムに電力を必要とするため、極めて消費電力が多くなる。そして、瞬間的には車両の駆動力に費やす電力に影響を与える可能性があり、長時間にわたれば航続距離を大きく減らすことに繋がるので、車両走行に影響を与える可能性が他のモードに比べ高いといえる。そのため、電力制限によって実質的な機能を損ない易い反面、電力制限によって実質的に機能しなくなると防暑性が下がることになる。走行時の視界確保の観点から、特定の条件下で防暑性が下がることを避け、空調性能を確保したい都合がある。
更に、制限実行の肯定/否定だけの粗い判断に基づく結果としての空調制御では、空調装置の運転条件等の詳細な判断を行っておらず、詳細な判断に基づいて電力配分を変更する空調制御を行っていない。
空調が消費する電力を抑制した分に応じて、航続距離を延ばすことはできるが、航続距離に必要な電力が確保されていても、快適性を著しく損ねてしまう空調制御となってしまうことがあった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、空調制限下において乗員の快適性をより向上させるように、空調装置の運転条件等の詳細な判断を行うこと、詳細な判断に基づいて電力配分を変更する等で効率的な空調制御を行うこと、それらによって航続距離の確保と乗員の快適性確保とを両立する空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車両に搭載されるバッテリと、このバッテリに供給可能な電力あるいはこのバッテリから供給される電力を用いて駆動する空調装置とを備えた車両の空調制御装置であって、前記空調装置の冷房システムを使用する際に電力によって駆動する冷房機器と、前記空調装置の暖房システムを使用する際に電力によって駆動する暖房機器とを備え、少なくとも前記バッテリの充電状態が低い場合に前記空調装置に供給する電力を制限する空調制御装置において、空調使用可能電力量を算出し、前記冷房機器の使用割合を算出するとともに、前記空調使用可能電力量と前記冷房機器の使用割合から前記冷房機器の使用可能電力量を算出する一方、前記暖房機器の使用割合を算出するとともに、前記空調使用可能電力量と前記暖房機器の使用割合から前記暖房機器の使用可能電力量を算出し、目標冷房電力を算出し、この目標冷房電力が前記冷房機器の使用可能電力量以下の場合、前記冷房機器の使用可能電力量と前記目標冷房電力の差分を冷房機器電力差として設定するとともに、前記目標 冷房電力を冷房駆動制限値として駆動し、前記目標冷房電力が前記冷房機器の使用可能電力量を超える場合、前記冷房機器電力差を零とするとともに、前記冷房機器の使用可能電力量と前記暖房機器電力差を冷房駆動制限値として駆動し、目標暖房電力を算出し、この目標暖房電力が前記暖房機器の使用可能電力量以下の場合、前記暖房機器の使用可能電力量と前記目標暖房電力の差分を前記暖房機器電力差として設定するとともに、前記目標暖房電力を暖房駆動制限値として駆動し、前記目標暖房電力が前記暖房機器の使用可能電力量を超える場合、前記暖房機器電力差を零とするとともに、前記暖房機器の使用可能電力量と前記冷房機器電力差を暖房駆動制限値として駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の空調制御装置は、空調制限下において乗員の快適性をより向上させるように、空調装置の運転条件等の詳細な判断を行い、詳細な判断に基づいて電力配分を変更する等で効率的な空調制御を行い、それらによって航続距離の確保と乗員の快適性確保とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は空調制御装置の制御ブロック図である。(実施例)
【図2】図2は車両に搭載される空調装置及び空調制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【図3】図3は自動空調システムの場合の冷房機器の使用割合を示す図である。(実施例)
【図4】図4は手動空調システムの場合の冷房機器の使用割合を示す図である。(実施例)
【図5】図5は冷房機器の使用可能電力量、暖房機器の使用可能電力量を算出するフローチャートである。(実施例)
【図6】図6は冷房駆動制限値を算出するフローチャートである。(実施例)
【図7】図7は暖房駆動制限値を算出するフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明は、空調制限下において乗員の快適性をより向上させるように、空調装置の運転条件等の詳細な判断を行うこと、詳細な判断に基づいて電力配分を変更する等で効率的な空調制御を行うこと、それらによって航続距離の確保と乗員の快適性確保とを両立する目的を、冷房機器及び暖房機器の使用可能割合等を算出して実現するものである。
【実施例】
【0012】
図1〜図7は、この発明の実施例を示すものである。
図1、図2において、1は電気車両やハイブリッド車両等からなる電動車両(以下「車両」という)、2は車両1のフロントガラス、3は車室である。
車両1には、推進用の駆動モータと変速機とからなるパワートレイン4と、車室3内を空調する空調装置(エアコン)5と、バッテリ6とが搭載される。
空調装置5は、図1に示すように、車室3内の空気温度と相対湿度とに基づいて除湿・冷房・暖房を行って車室3を空調するものであって、空気流通通路7を形成する通路形成体8を備えている。
この通路形成体8には、上流側となる一端で外気導入ダクト9が接続する外気導入口10と内気導入ダクト11が接続する内気導入口12とを切り替えるように内部側に揺動する内外気切替ダンパ13と、この内外気切替ダンパ13を作動する吸込口アクチュエータ14と、下流側となる他端でデフロスタダクト15に接続するデフロスタ吹出口16とベントダクト17に接続するベント吹出口18とを切り替えるように内部側に揺動する第1吹出口切替ダンパ19と、この第1吹出口切替ダンパ19を作動する第1モードアクチュエータ20と、また、下流側となる他端でフットダクト21に接続するフット吹出口22を開閉するように内部側に揺動する第2吹出口切替ダンパ23と、この第2吹出口切替ダンパ23を作動する第2モードアクチュエータ24とが設けられている。なお、第1モードアクチュエータ20と第2モードアクチュエータ24を、一つのアクチュエータとしてリンク機構で繋ぐことによって、同様に構成できる。
【0013】
また、通路形成体8内には、内外気切替ダンパ13の直下流側で送風ファン25と、この送風ファン25よりも下流側でエバポレータ26と、このエバポレータ26よりも下流側でヒータコア27と、このヒータコア27への空気流量を調整するように空気流通通路7内で揺動するエアミックスダンパ28と、このエアミックスダンパ28を作動するAM(自動・手動)アクチュエータ29とが備えられている。
送風ファン25は、この送風ファン25を駆動するファンモータ30を備えて、冷却された空気を車室3内に送給するものである。ヒータコア27は、車室3内を暖房するために駆動されるものである。このヒータコア27の下流近傍には、暖房機器33を構成する補助(PTC)ヒータ34が配置されている。
更に、通路形成体8外には、電気により駆動して車室3内の冷房に用いられる冷房機器31を構成する電動コンプレッサ32が配置されている。
冷房機器31は、空調装置5の冷房システムを使用する際に電力によって駆動する。暖房機器33は、空調装置5の暖房システムを使用する際に電力によって駆動する。
【0014】
また、車両1には、図1、図2に示すように、空調装置5を駆動制御する空調制御装置35が搭載される。
空調制御装置35は、バッテリ6に連絡するとともにパワートレイン4を駆動制御するパワートレイン用制御手段36と、自動又は手動で空調装置5を駆動制御する空調用制御手段37と、これらパワートレイン用制御手段36及び空調用制御手段37に連絡した電動車両用空調制御手段(EVコントローラ又はHEVコントローラとなる手段)38とを備えている。
この空調制御装置35は、バッテリ6に供給可能な電力あるいはこのバッテリ6から供給される電力を用いて空調装置5を駆動し、また、少なくともバッテリ6の充電状態が低い場合に空調装置5に供給する電力を制限する。
パワートレイン用制御手段36は、空調使用可能電力量算出部36Aと、空調装置5に供給する電力への制限の有無を判定する制限判定部36Bとを備え、発電制御、電力供給、車両駆動制御、電力消費、バッテリ残量、電力供給等から、空調(冷房、暖房)用システムに割り当てることができる空調使用可能電力量を算出する。
空調用制御手段37は、空調装置5が自動空調システムとして用いられる場合に用いられる自動空調制御手段39、又は、空調装置5が手動空調システムとして用いられる場合に用いられる手動空調制御手段40とからなる。
自動空調制御手段39は、乗員によって操作されるパネル操作部39Aと、外気温度検出センサ41に連絡して目標吹出し温度・吹出し口温度算出部39Bとを備え、(操作パネルは別でも可)にて、乗員が行うパネル操作、外気温度検出センサ41等(他の自動エアコンシステムとして必要とされる一般的なセンサ項目)にて目標吹出し温度、吹出し口(MODE状態)を算出する。
手動空調制御手段40は、乗員によって操作される操作パネル40Aを備え、乗員が行うパネル操作のMODE位置、温度調節位置により、乗員のパネル操作状態を算出する。
【0015】
電動車両用空調制御手段38は、図1に示すように、目標冷房電力量及び目標暖房電力量を算出する電力量算出部38Aと、温度調節状態吹出し口(MODE)状態を判定する状態判定部38Bと、冷房機器31の使用割合及び暖房機器33の使用割合を算出する使用割合算出部38Cと、冷房機器31の使用可能電力量及び暖房機器33の使用可能電力量を算出する使用可能電力量算出部38Dとを備える。
そして、電動車両用空調制御手段38は、冷却機器31としての電動コンプレッサ32と、暖房機器33としての補助ヒータ34とに連絡し、エバポレータサーミスタ温度、水温等から算出し、快適となるために必要とされる目標冷房電力量(電動コンプレッサ32の電力量)、目標暖房電力量(補助ヒータ(PTC等)34の電力量)を算出する。
また、この電動車両用空調制御手段38においては、自動空調システムの場合に、自動エアコン制御手段38が算出した目標吹出し温度とMODE(吹出し口)状態から、図3に示す冷房機器の使用割合Xを算出する(Xは、0〜100%間で設定を行う)。ここで、MODEは、デフロスタ(DFR)、D(デフロスタ)/F(フット)時は曇り止めを優先するため、冷房機器31の使用割合を大きめに設定する。一方、手動空調システムの場合は、MODE位置、温度調節位置から、図4に示す冷房機器31の使用割合を算出する(Xは、0〜100%間で設定を行う)。
【0016】
前記暖房機器33の使用割合は、100%から前記算出された冷房機器31の使用割合X%を引いた値で算出する(暖房機器使用割合=100%−X%)。
また、前記算出された空調使用可能電力量は、変動が大きい入力のため、平均処理を設けて、値の変動を抑制する。制限無しの場合には、空調機器の制限が無いため、以下の処理は、制限有りの場合のみ実施する。
この平均処理にて算出された平均空調使用可能電力量から冷房機器31の使用割合、暖房機器33の使用割合を用いて、冷房機器使用可能電力量、暖房機器使用可能電力量を算出する(図5参照)。
そして、前記算出された冷房機器使用可能電力量と前記算出された目標冷房電力量とを比較し、目標冷房電力量>冷房機器使用可能電力量となる場合には、暖房機器33へ提供できる冷房機器電力差を零(0)とし、冷房駆動制限値を、冷房機器使用可能電力量+暖房機器電力差とする(図6参照)。
さらに、この冷房駆動制限値にて、冷房機器31の駆動を行う。目標冷房電力量よりも冷房機器使用電力量が低い場合には、冷房機器使用可能電力の差分を暖房機器33側に提供し、冷房駆動制限値を、制限無しと同様に、目標冷房電力量にて冷房機器31の駆動を行う。この暖房に関しても、冷房機器31と同様に、暖房駆動制限値を確定させる(図7参照)。
【0017】
この実施例に係る空調制御装置35は、図1に示すように、電動車両用空調制御手段38と乗員が操作を行う操作パネル(手動エアコン制御の車両の場合は操作パネルのみ接続)、冷房、暖房を行う空調機器としての電動コンプレッサ32、補助ヒータ(PTC等)34、バッテリ状態の管理、車両の駆動制御、電動コンプレッサ32、補助ヒータ34の制御を行うものであって、バッテリ6、車両駆動状態により算出される空調システムに割り当てることができる電力量を、乗員が要求する状態に応じて冷房(電動コンプレッサ32の駆動電力)と暖房(補助ヒータ34の駆動電力)とに分割し、電力制限中も必要とされる暖房、冷房を最大限使用するものである。
具体的に説明すると、空調使用可能電力量を算出するとともに冷房機器31の使用割合を算出した場合に、この空調使用可能電力量と冷房機器31の使用割合とから冷房機器31の使用可能電力量を算出する。また、暖房機器33の使用割合を算出し、空調使用可能電力量と暖房機器33の使用割合とから暖房機器33の使用可能電力量を算出する。
また、冷房機器31の使用割合を、目標噴出温度又はそれに相当する物理量と噴出口選択モードとに基づいて設定する。この場合、暖房機器33の使用割合を、全体1、すなわち100%から冷房機器31の使用割合を差し引いた差分とする。
更に、デフロスタを含む噴出口選択モード、すなわち、デフロスタモードやデフロスタ&フットモード(D/Fモード)では、冷房機器31の使用割合を他の噴出口選択モードより大きく設定する。
更にまた、目標冷房電力を算出し、この目標冷房電力が冷房機器31の使用可能電力量以下の場合、冷房機器31の使用可能電力量と目標冷房電力との差分を冷房機器電力差として設定するとともに、目標冷房電力を冷房駆動制限値として駆動する。一方、目標冷房電力が冷房機器31の使用可能電力量を超える場合には、冷房機器電力差を零(0)とするとともに、冷房機器31の使用可能電力量と暖房機器電力差を冷房駆動制限値として駆動する。暖房機器電力差があれば、それを冷房機器の使用可能電力量に上乗せして冷房駆動制限値として駆動する。
また、目標暖房電力を算出し、この目標暖房電力が暖房機器33の使用可能電力量以下の場合には、暖房機器33の使用可能電力量と目標暖房電力の差分を暖房機器電力差として設定するとともに、目標暖房電力を暖房駆動制限値として駆動する。一方、目標暖房電力が暖房機器33の使用可能電力量を超える場合には、暖房機器電力差を零(0)とするとともに、暖房機器33の使用可能電力量と冷房機器電力差を暖房駆動制限値として駆動する。冷房機器電力差があれば、それを暖房機器33の使用可能電力量に上乗せして暖房駆動制限値として駆動する。
【0018】
次いで、冷房機器31の使用可能電力量及び暖房機器33の使用可能電力量の算出について、図5にフローチャートに基づいて説明する。
図5に示すように、プログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、空調装置5に供給する電力に制限が有るかどうかを判断し(ステップA02)、このステップA02がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA02がYESの場合には、空調使用可能電力量を算出し(ステップA03)、フィルタ処理によるなまし平均空調使用可能電力量を算出し(ステップA04)、冷房機器31の使用割合X%を算出し(ステップA05)、暖房機器33の使用割合を、100%−X%で算出する(ステップA06)。
その後、冷房機器31の使用可能電力量を、平均空調使用可能電力量×冷房機器31の使用割合X%で算出し(ステップA07)、そして、暖房機器33の使用可能電力量を、平均空調使用可能電力量×暖房機器33の使用割合(100%−X%)で算出し(ステップA08)、プログラムをリターンする(ステップA09)。
【0019】
次に、冷房駆動制限値の算出について、図6にフローチャートに基づいて説明する。
図6に示すように、プログラムがスタートすると(ステップB01)、先ず、空調装置5に供給する電力に制限が有るかどうかを判断する(ステップB02)。
このステップB02がYESの場合には、目標冷房電力量を算出し(ステップB03)、目標冷房電力量が冷房機器31の使用可能電力量を超えているかどうかを判断する(ステップB04)。
このステップB04がYESの場合には、冷房機器電力差を零(0)とし(ステップB05)、冷房機器31の使用可能電力量+暖房機器電力差を、冷房駆動制限値とし(ステップB06)、制限有りとする(ステップB07)。
一方、前記ステップB04がNOの場合には、冷房機器電力差を、冷房機器31の使用可能電力量−目標冷房電力量で算出する(ステップB08)。
このステップB08の処理後、又は、前記ステップB02がNOの場合には、冷房駆動制限値を算出し(ステップB09)、制限無しとする(ステップB10)。
前記ステップB07の処理後、又は、前記ステップB10の処理後は、プログラムをリターンする(ステップB11)。
【0020】
次に、暖房駆動制限値の算出について、図7にフローチャートに基づいて説明する。
図7に示すように、プログラムがスタートすると(ステップC01)、先ず、空調装置5に供給する電力に制限が有るかどうかを判断する(ステップC02)。
このステップC02がYESの場合には、目標暖房電力量を算出し(ステップC03)、目標暖房電力量が暖房機器33の使用可能電力量を超えているかどうかを判断する(ステップC04)。
このステップC04がYESの場合には、暖房機器電力差を零(0)とし(ステップC05)、暖房機器33の使用可能電力量+冷房機器電力差を、暖房駆動制限値とし(ステップC06)、制限有りとする(ステップC07)。
一方、前記ステップC04がNOの場合には、暖房機器電力差を、暖房機器33の使用可能電力量−目標暖房電力量で算出する(ステップC08)。
このステップC08の処理後、又は、前記ステップC02がNOの場合には、暖房駆動制限値を算出し(ステップC09)、制限無しとする(ステップC10)。
前記ステップC07の処理後、又は、前記ステップC10の処理後は、プログラムをリターンする(ステップC11)。
【0021】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に記載の発明は、空調使用可能電力量(の平均値)を算出し、冷房機器31の使用割合を算出するとともに、空調使用可能電力量と冷房機器31の使用割合から冷房機器31の使用可能電力量を算出する一方、暖房機器33の使用割合を算出するとともに、前記空調使用可能電力量と暖房機器33の使用割合から暖房機器33の使用可能電力量を算出し、目標冷房電力を算出する。
また、前記目標冷房電力が冷房機器31の使用可能電力量以下の場合、冷房機器31の使用可能電力量と前記目標冷房電力の差分を冷房機器電力差として設定するとともに、前記目標冷房電力を冷房駆動制限値として駆動し、前記目標冷房電力が冷房機器31の使用可能電力量を超える場合、冷房機器電力差を零とするとともに、冷房機器31の使用可能電力量と暖房機器電力差を冷房駆動制限値として駆動し、目標暖房電力を算出する。
更に、前記目標暖房電力が暖房機器33の使用可能電力量以下の場合、暖房機器33の使用可能電力量と前記目標暖房電力の差分を前記暖房機器電力差として設定するとともに、前記目標暖房電力を暖房駆動制限値として駆動し、前記目標暖房電力が暖房機器33の使用可能電力量を超える場合、前記暖房機器電力差を零とするとともに、暖房機器33の使用可能電力量と前記冷房機器電力差を暖房駆動制限値として駆動する。
これにより、空調装置5に使用できる電力が制限される電力制限下において、暖房と冷房とに使用する電力配分を最適な配分ないしそれに近い状態の配分に近づけることができる。また、暖房と冷房とのうち目標電力に対して余裕のある一方の電力(電力差)を他方の電力にまわすことができ、電力制限下であっても、空調装置5の能力をより高く確保できるので、快適性や視界を確保できる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明は、冷房機器31の使用割合を、目標噴出温度又はこの目標噴出温度に相当する物理量と、噴出口選択モードとに基づいて設定する一方、暖房機器33の使用割合を全体1から冷房機器31の使用割合を差し引いた差分とする。
これにより、目標噴出温度、又はそれに相当する物理量である温度調節位置と、噴出口選択モードとに基づくので、自動、手動を問わずに冷房機器31及び暖房機器33の使用割合を設定して、電力配分を最適ないしそれに近い状態に設定できる。
【0023】
更に、請求項3に記載の発明は、デフロスタを含む噴出口選択モードでは、冷房機器31の使用割合を他の噴出口選択モードよりも大きく設定する。
これにより、噴出口選択モードに応じて、防暑性を確保できるように設定することができる。
【0024】
なお、この発明においては、曇り止めを優先とし、乗員がDFR(デフロスタモード)を選択した場合には、別マップで冷房機器使用割合(電動コンプレッサの駆動割合)100%という設定も可能とする。
また、上記の実施例の制御を使用するか否かの乗員選択スイッチ等を設けて、従来通り、一律最低駆動にする空調機器の動作を止める等を選択できるようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明に係る空調制御装置を、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両や、各種車両に適用可能である。ハイブリッド車の場合、車両のパワートレインには、内燃機関を備え、冷却水等の熱を空調装置に補助的に利用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 車両
4 パワートレイン
5 空調装置
6 バッテリ
31 冷房機器
32 電動コンプレッサ
33 暖房機器
34 補助ヒータ
35 空調制御装置
36 パワートレイン用制御手段
37 空調用制御手段
38 電動車両用空調制御手段
41 外気温度検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリと、このバッテリに供給可能な電力あるいはこのバッテリから供給される電力を用いて駆動する空調装置とを備えた車両の空調制御装置であって、前記空調装置の冷房システムを使用する際に電力によって駆動する冷房機器と、前記空調装置の暖房システムを使用する際に電力によって駆動する暖房機器とを備え、少なくとも前記バッテリの充電状態が低い場合に前記空調装置に供給する電力を制限する空調制御装置において、空調使用可能電力量を算出し、前記冷房機器の使用割合を算出するとともに、前記空調使用可能電力量と前記冷房機器の使用割合から前記冷房機器の使用可能電力量を算出する一方、前記暖房機器の使用割合を算出するとともに、前記空調使用可能電力量と前記暖房機器の使用割合から前記暖房機器の使用可能電力量を算出し、目標冷房電力を算出し、この目標冷房電力が前記冷房機器の使用可能電力量以下の場合、前記冷房機器の使用可能電力量と前記目標冷房電力の差分を冷房機器電力差として設定するとともに、前記目標冷房電力を冷房駆動制限値として駆動し、前記目標冷房電力が前記冷房機器の使用可能電力量を超える場合、前記冷房機器電力差を零とするとともに、前記冷房機器の使用可能電力量と暖房機器電力差を冷房駆動制限値として駆動し、目標暖房電力を算出し、この目標暖房電力が前記暖房機器の使用可能電力量以下の場合、前記暖房機器の使用可能電力量と前記目標暖房電力の差分を前記暖房機器電力差として設定するとともに、前記目標暖房電力を暖房駆動制限値として駆動し、前記目標暖房電力が前記暖房機器の使用可能電力量を超える場合、前記暖房機器電力差を零とするとともに、前記暖房機器の使用可能電力量と前記冷房機器電力差を暖房駆動制限値として駆動することを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
前記冷房機器の使用割合を、目標噴出温度又はこの目標噴出温度に相当する物理量と、噴出口選択モードとに基づいて設定する一方、前記暖房機器の使用割合を全体1から前記冷房機器の使用割合を差し引いた差分とすることを特徴とする請求項1に記載の空調制御装置。
【請求項3】
デフロスタを含む噴出口選択モードでは、前記冷房機器の使用割合を他の噴出口選択モードよりも大きく設定することを特徴とする請求項2に記載の空調制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−197062(P2012−197062A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63999(P2011−63999)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】