説明

空間−スペクトル的指紋スプーフの検出

バイオメトリックスプーフの識別に使用する判別特徴セットを導出する方法および機器が提供される。真の皮膚部位が個別の光学的条件下で照光され、真の皮膚部位のそれぞれから反射される光が受光される。真の皮膚部位を特徴づけるために、真の皮膚の特徴値が導出される。バイオメトリックスプーフが同様に個別の光学的条件下で照光され、スプーフから反射される光が受光される。バイオメトリックスプーフを特徴づけるために、スプーフの特徴値が導出される。判別特徴セットを規定する特徴のサブセットを選択するために、導出された真の皮膚の特徴値が、導出されたスプーフの特徴値と比較される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概してバイオメトリクスに関する。より具体的には、本出願は、指紋スプーフの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
「バイオメトリクス」とは一般的に生体の特質の統計的解析を指す。バイオメトリクス1つのカテゴリは、「バイオメトリック認証」を含む。これは通常、人々に自動認証を提供するモード、または、人々の身分証明を照合するモードの、2つのモードのうちの1つのモード下で動作する。バイオメトリック感知技術は、人物の肉体的特徴または行動的特質を測定し、これらの特徴をあらかじめ記録された同様の測定内容と比較して整合性があるかどうかを判定する。バイオメトリック認証に通常用いられる肉体的特徴は、顔、虹彩、手形、静脈構造、および指紋を含む。これらのうちの最後のものは、バイオメトリック認証のすべての特徴の中で最も普及している。現在、収集された指紋を解析する方法は、光学的技術、電気容量的技術、無線周波数技術、感熱技術、超音波技術、およびいくつかの他のあまり一般的でない技術を含む。
【0003】
バイオメトリックセンサ、特に指紋バイオメトリックセンサは、一般的に、種々の形態のスプーフサンプルによって破られやすい。指紋リーダの場合には、紙、ゼラチン、エポキシ、ラテックス、およびこれらに類する材料のような、ある種の無生物材料に埋め込まれた認定された使用者の指紋パターンをリーダに提示する種々の方法が、当該分野で公知である。したがって、たとえ指紋リーダが、整合する指紋パターンの有無を高い信頼性で判定すると考え得るとしても、その整合するパターンが本当の生体指から取得されたことを保証することは、やはりシステム全体のセキュリティにとって重要であり、このことを多くの普通のセンサで見極めることは、困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、指紋についての本物の提示とスプーフ提示との間の判別を可能にする方法とシステムが、当該分野では広く必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、バイオメトリック用途で提示される本当の皮膚部位を、スプーフから判別するために使用され得る方法とシステムを提供する。実施形態の第一のセットでは、バイオメトリックスプーフの識別に使用する判別特徴セットを導出する方法が提供される。複数の真の皮膚部位のそれぞれが、複数の個別の光学的条件下で照光される。真の皮膚部位のそれぞれから反射される第一の光が受光される。真の皮膚部位を特徴づけるために、受光された第一の光から、複数の特徴のそれぞれに対する真の皮膚の特徴値が導出される。同様に、複数のバイオメトリックスプーフのそれぞれが、複数の個別の光学的条件下で照光される。各バイオメトリックスプーフから反射される第二の光が受光される。バイオメトリックスプーフを特徴づけるために、受光された第二の光から、複数の特徴のそれぞれに対するスプーフの特徴値が導出される。判別特徴セットを規定する特徴のサブセットを選択するために、導出された真の皮膚の特徴値が、導出されたスプーフの特徴値と比較される。
【0006】
真の皮膚画像をスプーフ画像から一意的に区別するスペクトルおよび空間周波数的特徴、またはこれらの特徴の組合わせが、容易に明確でないか、または視覚による特徴の比較によっては識別され得ないので、一部の実施形態は判別分析(discriminant−analysis)手法に頼り、真の皮膚の特徴に固有な空間およびスペクトル的特徴と、スプーフの特徴に固有な空間およびスペクトル周波数的特徴とを識別するように、装置を最初に訓練する。かかる特徴は、スプーフ検出の試行時に新たなスペクトルおよび空間周波数データと比較される。具体化可能な判別分析方法は、マハラノビス(Mahalanobis)距離、スペクトル残差値、K最近傍(K−nearest−neighbor)法、あるいは、個人から取得されたスペクトルおよび空間周波数データをデータベースに存在する空間およびスペクトル周波数データと比較するための、線形または非線形判別手法を含む。
【0007】
特定の実施形態において、真の皮膚の特徴値は、真の皮膚部位ごとに受光された第一の光から複数の真の皮膚画像を抽出することによって導出され、スプーフの特徴値は、バイオメトリックスプーフごとに受光された第二の光から複数のスプーフ画像を抽出することによって導出される。これら真の皮膚画像のそれぞれおよびこれらスプーフ画像のそれぞれは、複数の個別の光学的条件のうちの1つの条件下の画像に対応する。真の皮膚の特徴値の導出は、真の皮膚画像を複数の異なるスペクトル周波数成分に分解することをさらに含み得、スプーフの特徴値はさらに、各スプーフ画像を複数の異なるスペクトル周波数成分に分解することによって導出される。
【0008】
真の皮膚画像のそれぞれおよびスプーフ画像のそれぞれを空間周波数成分に分解することは、一部の場合には、ウェーブレット分解を実施することを含み得る。さらに、一部の実施形態において、真の皮膚画像の異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、真の皮膚画像の異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比が、計算され得る。同様に、スプーフ画像の異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、スプーフ画像の異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比が、計算され得る。
【0009】
一部の実施形態において、真の皮膚画像およびスプーフ画像について、異なる空間周波数成分のそれぞれに対する強度分布が計算される。この場合、少なくとも1つの特徴が、照明強度に対して実質的に不変であり得る。照明強度に対して不変であるかかる特徴の例は、強度分布の第一の所定の百分位数における強度の、当該強度分布の第二の所定の百分位数における強度に対する比である。他の場合には、少なくとも1つの特徴が、照明強度と共に変化し得る。照明強度に応じて変化するかかる特徴の例は、第一の所定の百分位数における強度と第二の所定の百分位数における強度との間の差である。
【0010】
導出された真の皮膚の特徴値を導出されたスプーフの特徴値と比較するために、異なる実施形態で多くの異なる手法が用いられ得る。例えば、一実施形態において、真の皮膚部位とバイオメトリックスプーフとは、別々のクラスを規定する。比較は、特徴から導出された数量について、クラス内分散のクラス間分散に対する比を計算することを含む。1つの事例では、特徴から導出された数量は、特徴についてのフィッシャー線形判別変換(Fisher linear discriminant transform)を含む。
【0011】
特徴のサブセットの選択は、また、異なる実施形態において種々の異なる手法を用いて実施され得る。かかる手法の例は、遺伝的アルゴリズムおよび他のアルゴリズムのような学習アルゴリズムを含む。
【0012】
実施形態の第二のセットでは、皮膚部位とされる部位(purported skin site)上でバイオメトリック機能を実施する方法が提供される。皮膚部位とされる部位は、複数の個別の光学的条件下で照光される。皮膚部位とされる部位からの散乱光が受光される。複数の特徴のそれぞれに対する特徴値が、受光された光から導出される。複数の特徴のそれぞれに対して導出された特徴値について、基準特徴値との比較が実施される。皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位であるかどうかが、比較からしかるべく判定される。
【0013】
判別特徴セットを導出するために用いられるものと同様の特定の手法がまた、特徴値を導出するために適用され得る。例えば、複数の画像が、各画像が複数の個別の光学的条件のうちの1つの条件下の画像に対応するように、受光された光から抽出され得る。複数の画像のそれぞれは、複数の異なる空間周波数成分に分解され得る。例えば、分解は、ウェーブレット分解を行うことによって達成され得る。一実施形態において、異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比が、また、計算される。異なるな空間周波数成分のそれぞれに対して、強度分布が計算され得る。一部の場合には、例えば、強度分布の第一の所定の百分位数における強度の、強度分布の第二の所定の百分位数における強度に対する比を含む特徴のように、少なくとも1つの特徴は、照明強度に対して実質的に不変である。他の場合には、例えば、強度分布の第一の所定の百分位数における強度と強度分布の第二の所定の百分位数における強度との間の差を含む特徴のように、少なくとも1つの特徴は、照明強度と共に変化する。
【0014】
別の実施形態において、皮膚部位とされる部位は、複数の個別の光学的条件下で照光される。皮膚部位とされる部位から反射された光が受光される。受光された光は、バイオメトリック認証を実施するために用いられ、皮膚部位とされる部位が真の皮膚であるか、またはスプーフであるかを判定するために用いられる。
【0015】
皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位ではないと判定される場合には、皮膚部位とされる部位をスプーフとして識別するというアラームが、発せられ得る。一部の実施形態において、バイオメトリック認証がまた、受光された光から実施される。
【0016】
本発明の方法はまた、種々の様式の機器上で具現化され得る。例えば、計算装置に動作を指示するコンピュータ読み取り可能のプログラムを有するコンピュータ読み取り可能の記憶媒体が、提供され得る。計算装置は、記憶装置と通信可能なプロセッサを含む。コンピュータ読み取り可能のプログラムは、上記の任意の方法を実装するための命令を有する。
【0017】
他の場合には、バイオメトリックセンサが提供され得る。バイオメトリックセンサは、照明サブシステムと、検出サブシステムと、コントローラとを有する。照明サブシステムは、個人の皮膚部位とされる部位を照光するように配置される。検出サブシステムは、皮膚部位とされる部位から散乱される光を受光するように配置される。コントローラは、照明サブシステムおよび検出サブシステムと通信可能し、かつ上記の任意の方法を実装するための命令を有する。
【0018】
本発明の本質および利点のさらなる理解は、明細書の残り部分および図面を参照することによって達成され得る。これら図面において、同じ要素を示すために同じ参照符号が、いくつかの図面にわたって用いられる。一部の事例において、参照符号は、ローマ字のサフィックスが後ろに付いた数字を含む。参照符号の数字部のみを参照することによって、その数字部を有するが異なるローマ字サフィックスを有する参照符号のすべてを、集合的に参照することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態における、マルチスペクトルバイオメトリックセンサの正面図を示す。
【図2】図2は、図1に図示されたマルチスペクトルバイオメトリックセンサの機能を管理するために、および/または本発明の種々の方法を実装するために使用され得るコンピュータシステムの概略図を示す。
【図3A】図3Aおよび図3Bは、生体指から作成された指紋測定と、非生体スプーフとして機能する人工装具から作成された指紋測定との比較を示す。
【図3B】図3Aおよび図3Bは、生体指から作成された指紋測定と、非生体スプーフとして機能する人工装具から作成された指紋測定との比較を示す。
【図4】図4は、指紋の本物の提示とスプーフ提示との間を判別するための特徴を、特定するための方法を要約した流れ図である。
【図5】図5は、図1に図示されたものと同様のマルチスペクトルバイオメトリックセンサで収集された、データから導出されるマルチスペクトルデータキューブを示す。
【図6】図6は、画像にハイパスフィルタおよびローパスフィルタを適用することによって得られる、ウェーブレット分解の説明図を示す。
【図7A】図7Aおよび図7Bは、図5のマルチスペクトルデータキューブの分解によって導出された指紋の、高周波画像と低周波画像との比較を示す。
【図7B】図7Aおよび図7Bは、図5のマルチスペクトルデータキューブの分解によって導出された指紋の、高周波画像と低周波画像との比較を示す。
【図8A】図8Aおよび図8Bは、従来のヒストグラムと累積ヒストグラムとの間の差異を示す。
【図8B】図8Aおよび図8Bは、従来のヒストグラムと累積ヒストグラムとの間の差異を示す。
【図9】図9は、一実施形態における図5のマルチスペクトルデータキューブの分解から導出された、低周波画像の累積ヒストグラムを示す。
【図10】図10は、一実施形態における図5のマルチスペクトルデータキューブの分解から導出された、低周波画像の高周波画像に対する比の累積ヒストグラムを示す。
【図11】図11は、一実施形態における図5のマルチスペクトルデータキューブの分解から導出された、多数の異なる特徴についてのクラス間分散とクラス内分散との比を示す。
【図12】図12は、一実施形態における図5のマルチスペクトルデータキューブの分解にフィッシャー線形判別式を適用して導出された、多数の異なる特徴についてのクラス間分散とクラス内分散との比を示す。
【図13】図13は、本発明の実施形態に従って導出された2つのフィッシャー特徴の、指紋の本物の提示とスプーフ提示との間を判別する能力を示す散布図である。
【図14】図14は、判別力のある特徴の比較により、指紋の本物の提示とスプーフ提示との間を判別するための方法を要約した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1.序文)
本発明の実施形態は、指紋の本物の提示とスプーフ提示との間を判別するために使用され得る方法およびシステムを提供する。本明細書における使用では、「指紋」という用語は、指上で生起しているか、あるいは身体の別の部分で生起しているかにかかわらず、任意の皮膚の形状的特徴を指すことを意図されている。本発明の応用は、指または手の掌面上に存在する形状的特徴に適用されるときに最も有用となることが一般的に期待されるが、しかし、本明細書に記載の方法およびシステムは、かかる皮膚の場所に限定されず、他の皮膚の場所に対しても適用され得る。したがって、「指紋」を抽出し得る皮膚部位の具体例は、親指とその他の指の全表面および全関節、指の爪および爪床、手の平、手の甲、手首および前腕、顔、耳、目の周辺領域、ならびに身体の他のすべての外面を含む。
【0021】
本発明の実施形態に従って指紋の本物の提示とスプーフ提示との間を判別する能力は、スプーフと比較されたときの、生体の皮膚部位の空間およびスペクトル的複合的特性において見られる差異に基づく。特に皮膚は、多数の層、化学物質の種々の混合、ならびに、毛穴、汗腺、および毛細血管床のような個別の構造体でできた複合器官である。皮膚の最外層である表皮は、下層の真皮および皮下組織によって支持されている。表皮自身は、角質層、透明層、顆粒層、有棘層、および基底層を含む5つの識別された下位層を有し得る。したがって、例えば、最上部の角質層の下の皮膚は、表面の形状分布に関連する一部の特質と、皮膚の深さと共に変化する一部の特質を有する。皮膚への血液供給が真皮層に存在し、真皮は、毛細血管を介して血液供給を表面に接近させる、「真皮乳頭」として知られる表皮への突起を有する。指の掌面においては、この毛細血管構造は、表面上の隆線の構造を辿る。身体の他の場所においては、毛細血管床の構造は、規則性がより低下し得るが、やはり特定の場所および人物の特質である。同様に、皮膚の異なる層間の界面の形状は極めて複雑であり、皮膚の場所および人物の特質である。
【0022】
スプーフがかなり複雑に作られる場合もあるが、皮膚の構造は、スペクトル特性と空間特性との両方において、より複雑である。特に、スプーフはより単純なスペクトル特性を有し、それらの空間テクスチャは、スペクトルに関して均一となる傾向を有する。これは皮膚部位と比べて対照的であり得、皮膚部位は、空間テクスチャと光スペクトルとの間の複雑な相互作用とあいまって複雑なスペクトル特性を示し、スペクトル的意味に加えて空間的意味においても不均一性が存在する。これらの差異が、「色彩テクスチャ(chromatic texture)」の概念によって包含され得る判別の基礎を提供する。これは、画像の色調的特質の空間的分布の一部の局面を表現する、多数の尺度のうちの任意のものを一般的に指す、「画像テクスチャ」の概念を拡張したものである。例えば、指紋パターンまたは木目に普通に見られるテクスチャのように、一部のテクスチャは流紋状であり、それらは方向とコヒーレンスのような尺度によって良好に表現され得る。「色彩テクスチャ」は、この概念を、追加的にスペクトル周波数の関数でもある統計的分布として拡張する。平均、分散、歪み、および尖度のような、ある種の統計的モーメントが、テクスチャを定量的に表現するために用いられ得る。色彩テクスチャは、異なるスペクトル周波数におけるピクセル強度の画像全体にわたる変動によって明示され得、それは本発明の実施形態において、バイオメトリック用途においてスプーフを識別するために用いられ得る。
【0023】
(2.データ収集)
色彩テクスチャ情報は、本発明の実施形態において、マルチスペクトル条件下で皮膚部位とされる部位の画像を収集することによって取得され得る。本明細書における使用では、「マルチスペクトル」データは、単一照明セッションの間に複数の個別の光学的条件下で収集されるデータを指す。異なる光学的条件は、偏光条件の差異、照明角度の差異、撮像角度の差異、および波長の差異を含み得る。マルチスペクトルデータを収集するために使用され得るマルチスペクトルバイオメトリックセンサの一実施形態が、図1の正面図に示されている。この図において、マルチスペクトルセンサ101は、1つまたはより多くの光源103を有する照明サブシステム121と、撮像器115を有する検出サブシステム123とを備える。
【0024】
この図は、照明サブシステム121が複数の照明サブシステム121aおよび121bを備える実施形態を示しているが、使用され得る照明サブシステム121または検出サブシステム123に制限はない。例えば、照明サブシステム121の個数は、一定レベルの照明を得るように、パッケージングの要件を満たすように、およびマルチスペクトルバイオメトリックセンサ101の他の構造的制約を満足するように、都合よく選択され得る。照明光は、光源103から照明光学系105を通過して進み、照明光学系は、照明を、フラッドライト、線状照明、点状照明、およびこれらに類する形状のような、所望の形状に成形する。照明光学系105は、便宜上レンズから成るように示されているが、より一般的には、1つまたは複数のレンズ、1つまたは複数の鏡、および/または他の光学エレメントの任意の組合わせを含み得る。照明光学系105はまた、照明光を指定の1次元または2次元パターンで走査するための、走査器機構(図示せず)を備え得る。光源103は点光源、線光源、面光源を備え得、あるいは、異なる実施形態においては、一連のかかる光源を備え得る。一実施形態において、直線偏光子107を配置して光が被験者の指119または他の皮膚部位に当る前に、この直線偏光子を通過するようにするなどによって、照明光は偏光として提供され得る。
【0025】
一部の事例では、光源103は、光が狭い波長帯域の中で提供される1つまたは複数の準単色光源を備え得る。かかる準単色光源は、発光ダイオード、レーザダイオード、または量子ドットレーザのような装置を含み得る。代替案として、光源103は、白熱電球またはグロー直管(glow bar)のような広帯域光源を備え得る。広帯域光源の場合には、照明光は、照明光のスペクトル幅を狭めるために、バンドパスフィルタ109を通過し得る。一実施形態において、バンドパスフィルタ109は、1つまたは複数の離散的光学バンドパスフィルタを備える。別の実施形態において、バンドパスフィルタ109は、回転式にまたは直線的に(または回転式移動と直線的移動の組合わせで)移動して照明光の波長を変化させる連続可変フィルタを備える。さらに別の実施形態において、バンドパスフィルタ109は、液晶のチューナブルフィルタ、音響光学的チューナブルフィルタ、チューナブルファブリー・ペローフィルタ、または当業者に公知の他のフィルタ機構を備える。
【0026】
光源103からの光は、照明光学系105、ならびに、必要に応じて光学フィルタ109および/または偏光子107を通過した後に、プラテン117を通過して指119または他の皮膚部位を照光する。センサのレイアウトおよびコンポーネントは、照明の検出光学系113への鏡面反射を最小化するように、有利なように選択され得る。一実施形態において、かかる鏡面反射は、直接的に反射された光の検出量が最小になるように、照明サブシステム121および検出サブシステム123を相互に方向決めすることによって低減される。例えば、照明サブシステム121の光軸および検出サブシステム123の光軸は、プラテン117上に配置された反射鏡がかなりの量の照明光を検出サブシステム123の方向に反射しないように、角度をつけて配置され得る。さらに、照明サブシステムおよび検出サブシステム121および123の光軸は、両サブシステムの角度許容範囲がシステムの臨界角度よりも小さくなるように、プラテン117に対する角度で配置され得る。かかる構成は、プラテン117と皮膚部位119との間の全反射に起因する明らかな影響を回避する。
【0027】
鏡面反射光を低減するための代替的な機構は、光学偏光子を使用する。当業者には公知のとおり、光学測定を一定の皮膚深度に対してより敏感にするために、直線偏光子と円偏光子との両者が、有利なように用いられ得る。図1に示された実施形態において、照明光は、直線偏光子107によって偏光される。次いで、検出サブシステム123はまた、光軸が照明偏光子107と略直交するように配置された直線偏光子111を含み得る。このようにして、サンプルからの光は、多数の散乱事象を受けざるを得ず、その偏光状態を大幅に変化させる。かかる事象は、光が皮膚表面に侵入し、多くの散乱事象の後に光が散乱されて検出サブシステム123に戻るときに起こり、検出システムに入るのはこの光のみであり、任意の鏡面反射からの直交偏光の光は、検出サブシステム偏光子111によって拒絶される。
【0028】
検出サブシステム123は、プラテン表面117近傍領域の画像を検出器115上に形成するレンズ、反射鏡、および/または他の光学エレメントを備える、検出光学系を装備し得る。検出光学系113はまた、プラテン領域の部分を順次検出器115に中継する走査機構(図示せず)を備え得る。すべての場合において、検出サブシステム123は、皮膚表面に侵入し、かつ皮膚から出る前に皮膚および/または下層の組織内で光学的散乱を受けた光に対して、高感度であるように構成される。
【0029】
照明サブシステム121および検出サブシステム123は、種々の光学的領域(optical regimes)および種々の波長で動作するように構成され得る。一実施形態は、実質的に400〜1000nmの範囲の光を放出する光源103を用いる。この場合、検出器115は、シリコン検出器エレメント、またはかかる波長の光に高感度であるとして当業者に公知の、他の検出器材料をベースにし得る。別の実施形態において、光源103は、1.0〜2.5μmの近赤外領域を含む波長で照射を放出し得、この場合には、検出器115は、InGaAs、InSb、PbS、MCT、およびかかる波長の光に高感度であるとして当業者に公知の、他の材料から作られたエレメントを備え得る。
【0030】
図1に示された装置の構造は例示的なものにすぎず、他の実施形態において、種々の他の構造がマルチスペクトルデータを収集するために使用され得る。使用可能な代替的な構造の一部の例が、本発明の譲受人に譲渡された、同時係属中の以下の出願に記載されている。これらの出願のそれぞれの、すべての開示が、あらゆる目的のために本明細書において参考として援用される。2003年6月27日に出願の「HYPERSPECTRAL FINGERPRINT READER」と題する米国仮特許出願第60/483,281号;2003年9月18日に出願の「HYPERSPECTRAL FINGERPRINTING」と題する米国仮特許出願第60/504,594号;2004年3月10日に出願の「OPTICAL SKIN SENSOR FOR BIOMETRICS」と題する米国仮特許出願第60/552,662号;Robert K.Roweによる2004年6月1日に出願の「MULTISPECTRAL FINGER RECOGNITION」と題する米国仮特許出願第10/576,364号;2004年8月11日に出願の「MULTISPECTRAL IMAGING BIOMETRIC」と題する第60/600,867号;2004年9月17日に出願の「FINGERPRINT SPOOF DETECTION USING MULTISPECTRAL IMAGING」と題する米国仮特許出願第60/610,802号;2005年2月18日に出願の「SYSTEMS AND METHODS FOR MULTISPECTRAL FINGERPRINT SENSING」と題する米国仮特許出願第60/654,354号;2005年3月4日に出願の「MULTISPECTRAL IMAGING OF THE FINGER FOR BIOMETRICS」と題する米国仮特許出願第60/659,024号;2005年4月27日に出願の「MULTISPECTRAL BIOMETRIC SENSORS」と題する米国仮特許出願第60/675,776号;Robert K.Roweらによる2004年4月5日に出願の「MULTISPECTRAL BIOMETRIC SENSOR」と題する米国特許出願第10/818,698号;Robert K.Roweらによる2006年5月18日に出願の「MULTISPECTRAL BIOMETRIC SENSOR」と題する米国特許出願第11/437,388号;Robert K.Roweらによる2006年5月17日に出願の「BIOMETRIC SENSOR」と題する米国特許出願第11/383,901号;Robert K.Roweによる2005年7月8日に出願の「LIVENESS SENSOR」と題する米国特許出願第11/177,817号;2005年4月25日に出願の「MULTISPECTRAL IMAGING BIOMETRICS」と題する米国特許出願第11/115,100号;2005年4月25日に出願の「MULTISPECTRAL BIOMETRIC IMAGING」と題する米国特許出願第11/115,101号;2005年4月25日に出願の「MULTISPECTRAL LIVENESS DETERMINATION」と題する米国特許出願第11/115,075号;Robert K.Roweによる2004年12月17日に出願の「COMBINED TOTAL−INTERNAL−REFLECTANCE AND TISSUE IMAGING SYSTEMS AND METHODS」と題する米国特許出願第11/015,732号;、Robert K.Roweによる2006年4月24日に出願の「MULTISPECTRAL BIOMETRIC SENSORS」と題する米国特許出願第11/379,945号;およびRobert K.Roweによる2005年9月1日に出願の「COMPARATIVE TEXTURE ANALYSIS OF TISSUE FOR BIOMETRIC SPOOF DETECTION」と題する米国特許出願第11/219,006号。
【0031】
さらに、本発明の実施形態において、図1に示されたような、または他の出願に記載されているようなマルチスペクトルバイオメトリックセンサが、他の様式のバイオメトリックセンサと組み合わせて使用され得る。例えば、1つの構成は、スプーフ検出において助けとなるマルチスペクトルデータを同時に収集しながら、データベースと比較するための皮膚部位とされる部位の指紋パターンを規定する情報を収集するために、感熱機構、超音波機構、無線周波数機構、または他の機構を使用し得る。他の実施形態において、バイオメトリック認証およびスプーフ検出の両方に用いられる一組のマルチスペクトルデータを収集するために、マルチスペクトルバイオメトリックセンサが有利に用いられる。
【0032】
マルチスペクトルセンサの動作は、図2に概略的に示されるような計算システムと連係され得る。同図は、個々のシステムエレメントが分離されて、またはより一体化された態様で、どのように実装されるかを大まかに例示している。バス226を介して電気的に結合されたハードウェアのエレメントから成る、計算装置200が示されており、それはまた、マルチスペクトルバイオメトリックセンサ101とも結合されている。ハードウェアのエレメントは、プロセッサ202、入力装置204、出力装置206、記憶装置208、コンピュータ読み取り可能の記憶媒体リーダ210a、通信システム214、DSPまたは特定用途向けプロセッサのような処理高速化ユニット216、およびメモリ218を含む。コンピュータ読み取り可能の記憶媒体リーダ210aはさらに、コンピュータ読み取り可能の記憶媒体210bと接続され、この組合わせは包括的に、遠隔の、ローカルの、固定の、および/またはリムーバブルの記憶装置に、コンピュータ読み取り可能の情報を一時的におよび/またはより永久的に収容する記憶媒体を加えたものを表す。通信システム214は、有線の、ワイヤレスの、モデムの、および/または他の様式の、インターフェース接続を備え得、外部装置とのデータ交換を可能にする。
【0033】
計算装置200はまた、本発明の方法を実装するように設計されたプログラムのような、オペレーティングシステム224および他のコード222を含むソフトウェアのエレメントを備え、それらはここでは作業メモリ220内に配置されて示されている。特定の要件に従ってかなりの変形形態が使用され得ることが、当業者には明らかである。例えば、カスタマイズされたハードウェアが使用され得、かつ/または、特定のエレメントが、ハードウェア、ソフトウェア(アプレットのような移植性ソフトウェアを含む)またはそれらの両方に実装され得る。さらに、ネットワーク入力/出力装置のような他の計算装置への接続が、使用され得る。
【0034】
(3.データ解析)
スプーフが従来のバイオメトリック解析を欺くのに有効であるという可能性が図3Aおよび図3Bに例示されており、同図はそれぞれ、指およびスプーフから採取された指紋画像を示している。図3Bの画像を提供したスプーフは、非常に実物感のある人工装具の指先であり、それの構築は、発明者らによって外部委託された。人工装具の指先は、多層シリコーン構造体で作成され、実際の機能している指で型を取り、その実物の指の色彩に整合するように着色された。指紋の詳細を含めて、細部が人工装具に作り込まれた。図3Aおよび図3Bの画像から、いずれの画像が実際の指から収集され、いずれの画像がスプーフで収集されたのかを、見分けるのが困難であることは明らかである。
【0035】
(a 判別特徴の特定)
図4は、スプーフを識別する際の判別式(disriminant)として使用され得る特徴を特定するための方法を要約した流れ図を示す。一般的に、適切な判別式を特定した後に、その判別式を用いて特徴を適切に比較することによって、皮膚部位とされる部位の解析が実施され得る。
【0036】
方法は、マルチスペクトル条件下で真の皮膚部位を照明する、ブロック404で始まり、これは、上記のようなマルチスペクトルバイオメトリックセンサを用いて実施され得る。収集されたデータは、多数の独立変数に沿って情報を抽出することを可能にする、マルチスペクトルのデータセットを規定すると考えられ得る。マルチスペクトルデータセットは、「マルチスペクトルデータキューブ」と呼ばれる場合があるが、しかし、この用語は、データセットによって包含される独立変数の数について特段の制限を示唆することを意図していない。独立変数の個数は、データが収集されるマルチスペクトル条件を規定する、異なる光学的条件を生成するために用いられる異なるファクタの個数に依存し、異なる実施形態の間で変わり得る。
【0037】
ブロック408で示されているように、異なる光学的条件に対応するマルチスペクトルデータキューブから、複数の画像フレームが抽出される。これは図5に概略的に示されており、この場合、マルチスペクトルデータキューブが使用されて、8枚の画像504から成る画像セット500が抽出された。抽出される画像の枚数は、異なる実施形態において変わり得る。単なる例示であるが、8枚の画像504は、4つの異なる照明波長のそれぞれに対する2つの異なる偏光条件−非偏光条件および交差偏光条件−の下での画像に対応し得る。他の事例において、異なる画像が、異なる照明角度、異なる撮像角度、および/または光学的条件についての任意の他の差異に対応し得る。
【0038】
ブロック412において、各画像フレームは、異なる空間周波数成分に分解される。異なる実施形態において、かかる分解が達成され得る、多数の異なる方法が存在する。ある実施形態においては、ウェーブレット変換が各画像フレームに適用される。これは、離散ウェーブレット変換を用いる実施形態において、マレット−ツリー(Mallet−tree)分解に従って、図6に示されるように画像フレームに対してハイパスフィルタおよびローパスフィルタを適用することによって遂行され得る。この様式の分解においては、初期画像フレーム
【0039】
【数1】

は、ハイパスフィルタ604で処理されて
【0040】
【数2】

を生成し、かつローパスフィルタ608で処理されて
【0041】
【数3】

を生成する。要すれば、ローパスフィルタ608の出力が、引き続いて分解される。したがって、第二レベルの分解が
【0042】
【数4】

に適用されて、
【0043】
【数5】

および
【0044】
【数6】

を生成する。これは、所望の回数の分解レベルまで反復され得、n次レベルの分解を行うと(n+1)個の信号が生成される。
【0045】
各分解レベルにおいて、フィルタは、元の周波数範囲の一部を範囲とする信号を発生する。図6の説明図において、3レベルの分解の結果として、4個の信号、すなわち高周波信号を表す
【0046】
【数7】

、中間周波信号を表す
【0047】
【数8】

、低周波信号を表す
【0048】
【数9】

、および超低周波信号を表す
【0049】
【数10】

の信号を生成する。図7Aおよび図7Bでは、異なる周波数領域における信号の比較が示されており、これらの周波数で利用可能な異なる様式の情報を例示している。図7Aは高周波画像を示し、図7Bは低周波画像を示す。図7Aおよび図7Bの結果は、同一の原画像から導出された。
【0050】
ハイパスフィルタおよびローパスフィルタ604および608の詳細な形式は、異なる実施形態で変わり得る。例えば、Haar変換が実装される一実施形態においては、ハイパスフィルタ604は、入力画像の隣接するピクセルの間の差異を決定するように効果的に機能し、その一方で、ローパスフィルタ608は、隣接するピクセルの間の平均を決定するように効果的に機能する。離散ウェーブレットを用いて実装され得、かつ当業者にとって周知の他の変換の例は、とりわけ、Daubechies変換、Coiflet変換、Symlet変換、Meyer変換、Morlet変換、およびメキシカンハット変換を含む。これらおよび他の変換の実装もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0051】
特定の実施形態において、ブロック412で実施される周波数分解は、重ツリー複素ウェーブレット変換を用いて実施され、その詳細は、Nick Kingsburyによる、「Complex Wavelets for Shift Invariant Analysis and Filtering of Signals」、J.Appl.Comp.HarmonicAnalysis,10,234(2001)に記載されており、このすべての開示は、あらゆる目的のために本明細書において参考として援用される。簡単に言えば、ウェーブレット解析の複素領域への拡張は、解析の次元を増大させる。フィルタを適用して2個の画像を出力する代わりに、分解の各レベルは、そのレベルに対する入力画像と等しいサイズの4個の画像を生成し、最も低い周波数の画像が次のレベルの入力となる。異なる行および列のフィルタを用いて各画像が構築され、その結果として、出力画像は、それぞれが入力画像の4分の1のサイズである4個のコンポーネント画像の形式で提供されるそれら自身である。各事例において、4個のコンポーネント画像は、ピクセルクワッドに符号化される。この手法は有利なことに、特に種々の他の手法と比較して、比較的に空間的に不変であるという特性を有する。
【0052】
異なる実施形態で周波数分解を達成するために使用し得る手法の他の例は、当業者に公知の種々の異なる技術の中で、移動ウィンドウ(moving‐window)フーリエ変換の使用およびガボール(Gabor)フィルタの適用を含む。
【0053】
図4に戻ると、次いで、分解画像はそれぞれ、強度分布特徴セットを計算するために使用され得る。一般的に、強度分布特徴セットのエレメントは、各分解画像の一部の局面を定量化する、スカラ値を含む。ある実施形態において、これは、各分解画像から累積(integral)ヒストグラムを構築し、累積ヒストグラムの異なる点の間の関係からスカラ値を定めることによって達成される。
【0054】
図8Aおよび図8Bは、古典的ヒストグラムと累積ヒストグラムとの間の差異を図示したものである。図8Aに示されるような古典的ヒストグラムが、2つの規定値間で変数が出現する頻度を提供するのに対して、図8Bに示されるような累積ヒストグラムは、分布の任意の百分位数における値を提供する。分布を特徴づける情報は、一般にいずれの形式でも提示され得るが、しかし、本明細書に記載の用途に対しては、累積分布は、任意の2つの百分位値の比が、すべての値を等しく倍増する利得型(gain−like)変数に関して、実質的に一定であるという利点を有する。かかる利得型変数の1つの例は、マルチスペクトルバイオメトリックシステムにおける照明強度である。これによって、百分位値の比の形式をとるスカラの特徴セット変数は、照明強度に対して実質的に不変となる。
【0055】
百分位値の比であるスカラ的特徴に加えて、百分位値の他の四則演算的組合わせが、スカラ的特徴として用いられ得る。これらの他の四則演算的組合わせは、一部の事例においては照明強度に対して不変でない場合もあるが、しかし、それでもなお有益な判別情報を提供し得る。単なる例示であるが、各分解画像に対して定められ得る1つのスカラ的特徴は、百分位数0.30における画像強度の百分位数0.70における画像強度に対する比である。定められ得る別のスカラ的特徴は、百分位数0.30における画像強度と百分位数0.70における画像強度の和である。これらの例における0.30および0.70の百分位数は、単に例示的目的で用いられている。他の事例では、異なる百分位値が用いられ得る。また、本発明は、各画像から導出されるスカラ的特徴の個数によって限定されない。一部の事例では、各画像から単一の特徴のみが導出され得るが、他の実施形態は複数の特徴を導出し得る。さらに、分解から生まれたすべての画像からスカラ的特徴を導出することは、必要ではない。一部の実施形態において、スカラ的特徴は、分解画像のサブセットから抽出される。また、本明細書で説明された例はスカラ的特徴を使用しているが、多次元的特色を有する特徴を規定すること、または、スカラ的特徴を組み合わせて多次元ベクトルとすることが、代替的実施形態において可能である。
【0056】
図4のブロック404〜416によって包含される方法は、複数の皮膚部位に対して反復され得、同図のブロック420は、1つのセットの皮膚部位がすべてこのような形で処理されるまで、この方法がループすることを示している。
【0057】
同様の手順が、複数のスプーフに適用され得、種々のスプーフは好適にも、試行され得るスプーフの様式を代表する多様な特質を有する。皮膚部位に適用されたものと同じ基本的方法が、スプーフに適用される。ブロック424において、特定のスプーフがマルチスペクトル条件下で照光される。これらのマルチスペクトル条件は、ブロック404で真の皮膚部位が照光されたマルチスペクトル条件と実質的に同一である。ブロック428において、異なる光学的条件に対応するスプーフの複数の画像フレームが、生成されたデータキューブから抽出される。ブロック432において、各画像フレームが異なる周波数成分に分解され、ブロック436において、各フレームから強度分布特徴セットが計算される。これらのステップは、真の皮膚部位に適用したものと同一の手法を用いて実施され得、かつブロック440で実施されるチェックで示されるように、多数の異なるスプーフに対して実施され得る。
【0058】
皮膚部位とスプーフとの両方から特徴セットが生成された後に、ブロック444で、この特徴セットから判別力のある特徴(discriminating features)を決定するために、1つの判別モデルが適用される。判別モデルには多数の異なる様式のものがあり、異なる実施形態に適用され得る。ある実施形態は、平均的にスプーフと真の皮膚部位とは異なる強度分布を有するという、発明者による認識を用いている。これは、生きた組織を際立たせ、かつスペクトルの変動および空間的変動の両方において明示される、異なる構造的特質の結果である。任意の特定の特徴に対して、スプーフのクラスと真の皮膚部位のクラスとの間の分散は、クラス内分散に比べて小さいものと期待される。したがって、導出された特徴の判別力の1つの尺度は、クラス間分散に対するクラス内分散の比である。したがって、ある実施形態において、この比が、ブロック444で判別モデルを適用するときに直接的に計算される。
【0059】
例えば、特定の真の皮膚部位に対するステップ404〜416の適用は、多数の特徴値t(1)、t(1)、・・・・、t(1)をもたらし得、ここで、Nは特徴の個数である。この特徴値のセットをN次元ベクトル
【0060】
【数11】

で表現すれば、真の皮膚部位上の全測定に対する特徴のセットは、ベクトルのセット
【0061】
【数12】

によって表現され得、ここで、Mは、真の皮膚部位上で行われたマルチスペクトル測定の個数である。同様に、スプーフについての全測定に対する特徴のセットは、N次元ベクトルのセット
【0062】
【数13】

によって表現され得、ここで、Mはスプーフ上でのマルチスペクトル測定の個数である。この特徴値のセットに対して、真の皮膚の特徴値の平均は
【0063】
【数14】

であり、スプーフの特徴値の平均は
【0064】
【数15】

であり、特徴値のセット全体の平均は
【0065】
【数16】

である。クラス内分散は
【0066】
【数17】

であり、クラス間分散は
【0067】
【数18】

であり、各特徴jに対して、比は
【0068】
【数19】

として計算される。
【0069】
他の実施形態において、未処理の導出された特徴を新たな特徴のセットに変換するために、フィッシャー線形判別式が適用され得る。これは、変換Tを特徴セット
【0070】
【数20】

および
【0071】
【数21】

に適用して、新たな特徴セット
【0072】
【数22】

を生成することによって達成される。変換はN×Nマトリクスであり、
【0073】
【数23】

として表現され得、ここで、
【0074】
【数24】

ベクトルのセットは、下記のクラス間散乱マトリクスおよびクラス内散乱マトリクス
【0075】
【数25】

の一般化固有ベクトルである。未処理の特徴値に対して上述されたものと同じ様式の計算が、変換済みの特徴値について実施され、クラス間分散に対するクラス内分散の比を計算し得る。この変換は有利なことに、かかる比を最大化し、それによって、判別モデルの判別力を高める。
【0076】
多くの事例において、特徴または変換済みの特徴のサブセットが、真の皮膚サンプルとスプーフとの間の判別を行うのに十分であることが期待される。したがって、ブロック444における判別モデルを適用することの部分は、一部の事例においては最善の判別力を提供する特徴である、十分な判別力を有する特徴または変換済みの特徴のサブセットを選択することを含み得る。異なる実施形態で特徴のサブセットの選択のために使用され得る、多数の手法が存在し、それは、遺伝的アルゴリズム、ニューラルネットワーク、エキスパートシステム、シミュレーテッドアニーリング、および所望の判別力を有するこれらの特徴の特定を可能にし得る任意の種々の人工知能手法の使用を含む。かかる手法はまとめて、本明細書において「学習アルゴリズム」と呼ばれることもある。
【0077】
かかる手法の適用は、一般的に当業者にとって周知である。例えば、遺伝的アルゴリズムは、各セットがすべての利用可能な特徴のサブセットであるような、特徴セットの母集団を生成することによって機能する。母集団の各メンバーのスプーフ検出性能が判定される。最高性能メンバーが選択され、最高性能群の特徴セットを分離および結合することによって、新たな母集団が生成される。このプロセスは、性能の向上が停止するまで反復され、もたらされた母集団は所望の特徴セットを規定する。かかる方法は、生物のシステムに倣って「遺伝的」と記述される。特徴セットの分離および結合は、細胞の生物学的な再生と類似しており、最高性能メンバーの選択は、再生プロセスにおける生物学的選択と類似している。
【実施例】
【0078】
(実施例)
図4の方法が、スプーフと真の皮膚部位との間の良好な判別を提供する方法の能力を評価するために、発明者によって適用された。この実施例において、スプーフおよび真の皮膚部位がマルチスペクトル条件下で照光され、4つの個別波長で、かつ交差偏光構成と無偏光構成との2つの偏光条件において、画像が取得された。したがって、各皮膚部位および各スプーフに対して、8枚の画像が取得された。これら8枚の画像のそれぞれは、上記で説明された重ツリー複素ウェーブレット変換を用いて、3枚のサブ画像に分解された。3枚の画像は高周波成分、中間周波成分、および低周波成分に対応する。さらに、各画像について、中間周波画像の低周波画像に対する比として、第四のサブ画像が生成された。もたらされた32枚のサブ画像のそれぞれは、累積ヒストグラム解析が行われ、ここで、2つのスカラ的特徴が、すなわち、1つは0.30百分位数におけるサブ画像の強度と0.70百分位数における強度との和として、他方は0.30百分位数強度の0.70百分位数強度に対する比として、抽出された。上記したように、これらのうちの後者は全体的に照明に対して不変であることを特徴とするが、これらのうちの前者はそうではない。
【0079】
図9は、この事例では中間周波画像面である、サブ画像の1つからの累積ヒストグラムを示す。真の皮膚部位についての結果が曲線908で示され、この曲線は、曲線904で示される透明スプーフ、曲線912で示される半透明スプーフ、および曲線916で示される不透明スプーフの3つの異なる様式のスプーフの結果との比較を可能にしている。結果には明らかに何らかの差異が見られるが、この差異の大部分は、真の皮膚部位および様々なスプーフの透明度のレベルの差異に起因する。図10の結果は、中間周波画像面の低周波画像面に対する比の累積ヒストグラムを表示することによって、いかにこの効果が緩和されるかを示している。これは、照明強度に対する局所的な不感性を提供する。この場合、曲線1008に沿った真の皮膚部位の結果と、曲線1012に沿った透明スプーフ、曲線1016に沿った半透明スプーフおよび曲線1004に沿った不透明スプーフの諸結果との間の、本当の差異が認められ得る。
【0080】
32枚のサブ画像のそれぞれから2個のスカラ的特徴を、このように計算することで、全体で64個の判別モデルに供し得るスカラ的特徴が提供される。この事例において、64個のスカラ的特徴は、8個のグループに組織化され、各グループは、マルチスペクトルデータから抽出された8枚の画像面に対応する8個のメンバーを有する。このグループ分けは、表1に示されている。この表において、「P30」は0.30百分位数における強度を指し、「P70」は0.70百分位数の強度を指す。
【0081】
【表1】

これら未処理の特徴についての、クラス内分散のクラス間分散に対する比が、図11の結果に示されている。1に近い比は、判別力が比較的劣等であることを示し、比が高いほど判別力がより良好であることを示す。これらの結果は、判別力が特徴の全部にわたって広く分布しているが、特徴番号の大きい方において、低周波の特徴が全体的により良好であることを示している。図12は、フィッシャー線形判別式を適用することによって、判別力がより少ない個数の特徴により効果的に集中され得ることを示す。図12は、フィッシャー変換がなされた特徴についての、クラス内分散のクラス間分散に対する比を示す。
【0082】
この事例では、判別力は、わずか数個の特徴により強く集中されている。事実、変換後は、圧倒的多数の特徴はほとんど判別力を持たず、反面、判別力は、最後の3個の特徴に集中されている。これは、真の皮膚部位とスプーフとの間の判別が、わずか3個の変換済みの特徴を用いて達成され得ることを示唆している。
【0083】
実際に、2個の変換済みの特徴のみでも十分であることが分かる。このことは、図13に示されている。同図は散布図であり、変換済みの特徴の位置を、2個の最も重要な特徴の値によって画される2次元空間に示している。真の皮膚部位に対する結果が円で示され、異なる様式のスプーフに対する結果が異なるシンボルで示される。これら2個の特徴のみでは異なる様式のスプーフ間での良好な判別を行えないかもしれないが、これらがスプーフと真の皮膚部位との間の優れた判別を示していることは明らかである。スプーフに対する結果は空間の1つの領域に群がっており、真の皮膚部位に対する結果は空間の異なる領域に群がっている。
【0084】
(b.測定結果の類別)
上述のようにシステムが訓練された後に、そのシステムは、ありうるスプーフを識別するために、バイオメトリックの用途に用いられ得る。バイオメトリック用途に提示されるサンプルを類別するために使用され得る方法の概要が、図14の流れ図に示されている。
【0085】
この方法はブロック1404において、皮膚部位とされる部位をマルチスペクトル条件下で照光することによって始まり、この方法は、皮膚部位とされる部位を、真の皮膚部位として、またはスプーフとして類別しようとしている。上記のように、収集されるマルチスペクトルデータは、バイオメトリック認証に有利に用いられ得るが、これは本発明の要件ではなく、皮膚部位とされる部位を類別するための方法は、任意の様式のバイオメトリック認証方法と一緒に用いられ得るか、または、独立してある特定の用途に用いられ得る。ブロック1408において、皮膚部位とされる部位の複数の画像フレームが、マルチスペクトルデータから抽出される。これらの画像フレームは、異なる照明波長、異なる偏光条件、異なる照明角度および/または検出角度、などのような、異なる光学的条件に対応する。ブロック1412において、各フレームは、通常はシステムの初期訓練に用いられたものと同じ様式の分解手法を用いて、異なる周波数成分に分解される。
【0086】
ブロック1416において、判別力のある特徴セットに対する強度分布が計算される。判別力のある特徴セットは、一般的に訓練時に最初に解析された特徴セットのサブセットであり、所望の判別力を有するように決定された特徴を含むセットに対応する。異なる実施形態において、これらの特徴は、未処理の特徴または変換済みの特徴を備え得る。例えば、上記の実施例で用いられた入力データを用いて訓練されたシステムにおいては、判別力のある特徴セットは、62、63、および64と付番された特徴で構成され得、なぜならば、これらが実質的にすべての判別力を提供していたからである。異なる訓練シナリオの場合には、他の特徴が判別力のある特徴セットに含まれ得る。
【0087】
多くの理由で、特徴の特定のサブセットの選択が有用であり得る。それは、システムが訓練をされた後の、類別を実施するために要する処理時間を短縮し得る。さらに、比較的低い判別力を有する特徴は、類別に対してより多くのノイズを加えて、スプーフ検出誤りを増加させ得る。したがって、かかる特徴を方法から排除することは、類別の速度と信頼性との両方を向上し得る。
【0088】
ブロック1420において、判別力のある特徴セットについて算出された値が使用され、標準特徴セットクラスとの比較を実施し、ブロック1424において、皮膚部位とされる部位を、スプーフ類別または非スプーフ類別に割り当てる。かかる比較は、異なる実施形態において、異なる方法で進められる。例えば、図13に示されるような結果が、判別力のある特徴セットに対応する判別力のある特徴によって画される空間の領域を規定するために使用され得る。図13は2次元の空間の実施例を示しているが、異なる個数の特徴を含むようにすると、3次元、4次元、または5次元以上の空間が生成され得る。皮膚部位とされる部位の割当ては、判別力のある特徴セットについて算出された分布が空間のどこに位置するのかに基づく、一方向的割当てに従ってなされ得る。
【0089】
他の場合には、ブロック1416において算出された結果を訓練結果と比較して、皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位であることを確信できるレベルを決定するために、統計的手法が使用され得る。このような方法で統計的手法を使用することは、方法の感度の調節を可能にする。例えば、比較的セキュリティ度の低い用途は、皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位と整合することの確信度が、75%を超える確信レベルである場合にはいつでも、皮膚部位とされる部位の確証を許容し得る。逆に、セキュリティ度が非常に高い用途は、99%の確信レベル要件を課し得、中間の用途は中間の確信レベルを用い得る。
【0090】
ブロック1428でチェックされたときに、皮膚部位とされる部位がスプーフとして類別された場合には、さらなる行為を促すために、アラームが発せられ得る。異なる実施形態において、アラームは、音響的または視覚的アラームの形態をとり得、あるいは、皮膚部位とされる部位を提示している人物の活動を制限する形態をとり得る。一部の事例では、特定の用途に応じて、アラームは、皮膚部位とされる部位についてのさらなる調査、法執行権限のある人物の呼出し、または任意の様々な他の対応を開始し得る。
【0091】
一部の事例では、システムの決定が正しかったかどうかを検証するために、チェックが行われ得る。システムが真の皮膚部位をスプーフとして識別し、またはスプーフを真の皮膚部位として識別したという理由から、決定に誤りが多かった場合には特に、その情報がシステムの追加的な訓練のために使用され得る。一部の実施形態では、従って、ブロック1436においてチェックが行われ得、ブロック1440において、皮膚部位とされる部位に対して、全強度分布特徴セットについての計算を促す。かかる計算は、判別力のある特徴セットに限定されず、むしろ図4のブロック416およびブロック436において行われた計算様式を再現する。この完全な分布特徴セットが、ブロック1444で、判別力のある特徴セットを導出するために用いられた参照データ本体に追加される。これによって、ブロック1448において判別モデルを再度適用することが可能となる。この適用は、全般的に図4のブロック444での適用と同じであるが、追加のデータが含まれていることが、最も判別力のある特徴の前回とは異なる決定をもたらし得る。これは、前回のデータセットで不正確な結果を与えた決定に対してデータが追加されたときに、特に当てはまり得る。
【0092】
(実施例)
発明者らは、類別精度を試験するために、上記の実施例を拡張した。下記の表2は、異なる特徴グループと関係し得る選別誤りを、要約して示す。1つの列に、特定のグループが排除されかつ他の全グループが含まれたときに生じる選別誤りについての結果が提示されている。これは、もう一つの列にある、特定のグループのみが含まれたときに生じる選別についての結果と対比される。
【0093】
【表2】

これらの結果は、より低周波の特徴が全般的により大きな判別力を提供するという、一般的な結果を立証している。
【0094】
下記の表3は、照明レベルに不感的な特徴についての類別誤りを、照明レベルに敏感な特徴のものと比較した結果を示す。
【0095】
【表3】

全般的に、特徴は照明強度に対して不感的であることが望ましいが、表3の結果は、不感的特徴が、照明強度に対していくらかの感度を有する特徴ほどには強力でないこともあり得ることを、示している。したがって、一部の実施形態において、照明強度に対して不感的な特徴と、照明強度に対していくらかの感度を有する特徴との両方を含む特徴セットを有することが、有利となり得る。
【0096】
かくして、いくつかの実施形態を説明したことによって、種々の変更形態、代替的構成、および均等物が、本発明の精神から逸脱することなく用いられ得ることが、当業者によって認識される。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を制限するものとして捉えられるべきではなく、本発明の範囲は、以下の請求項において規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオメトリックスプーフの識別に使用する判別特徴セットを導出する方法であって、
複数の個別の光学的条件下で、複数の真の皮膚部位のそれぞれを照光するステップと、
該真の皮膚部位のそれぞれから反射された第一の光を受光するステップと、
該真の皮膚部位を特徴づけるために、該受光された第一の光から、複数の特徴のそれぞれに対する真の皮膚の特徴値を導出するステップと、
該複数の個別の光学的条件下で、複数のバイオメトリックスプーフのそれぞれを照光するステップと、
該バイオメトリックスプーフのそれぞれから反射された第二の光を受光するステップと、
該バイオメトリックスプーフを特徴づけるために、該受光された第二の光から、該複数の特徴のそれぞれに対するスプーフの特徴値を導出するステップと、
該判別特徴セットを規定する該特徴のサブセットを選択するために、該導出された真の皮膚の特徴値を、該導出されたスプーフの特徴値と比較するステップと、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記真の皮膚の特徴値を導出するステップは、前記真の皮膚部位のそれぞれについて、前記受光された第一の光から複数の真の皮膚画像を抽出するステップを包含し、
前記スプーフの特徴値を導出するステップは、前記バイオメトリックスプーフのそれぞれについて、前記受光された第二の光から複数のスプーフ画像を抽出するステップを包含し、
該真の皮膚画像のそれぞれおよび該スプーフ画像のそれぞれは、前記複数の個別の光学的条件のうちの1つの条件下の画像に対応する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記真の皮膚の特徴値を導出するステップは、前記真の皮膚画像のそれぞれを複数の異なるスペクトル周波数成分に分解するステップをさらに包含し、
前記スプーフの特徴値を導出するステップは、前記スプーフ画像のそれぞれを該複数の異なるスペクトル周波数成分に分解するステップをさらに包含する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記真の皮膚画像のそれぞれを分解するステップ、および前記スプーフ画像のそれぞれを分解するステップは、ウェーブレット分解を実施するステップを包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記真の皮膚の特徴値を導出するステップは、前記真の皮膚画像の異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、該真の皮膚画像の該異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比を、計算するステップをさらに包含し、
前記スプーフの特徴値を導出するステップは、前記スプーフ画像の異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、該スプーフ画像の該異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比を、計算するステップをさらに包含する、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記真の皮膚の特徴値を導出するステップは、前記真の皮膚画像の異なる空間周波数成分のそれぞれに対する強度分布を計算するステップをさらに包含し、
前記スプーフの特徴値を導出するステップは、前記スプーフ画像の異なる空間周波数成分のそれぞれに対する強度分布を計算するステップをさらに包含する、
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度に対して実質的に不変である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特徴のうちの少なくとも第二の特徴が、照明強度と共に変化する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備え、
該特徴のうちの前記少なくとも第二の特徴が、該第一の所定百分位数における該強度と該第二の所定百分位数における該強度との間の差を備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度と共に変化する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記真の皮膚部位および前記バイオメトリックスプーフは、別々のクラスを規定し、
前記導出された真の皮膚の特徴値を前記導出されたスプーフの特徴値と比較するステップは、前記特徴から導出された数量について、クラス内分散のクラス間分散に対する比を計算するステップを包含する、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記特徴から導出された前記数量は、該特徴のフィッシャー線形判別変換を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記特徴の前記サブセットを選択するために、前記導出された真の皮膚の特徴値を前記導出されたスプーフの特徴値と比較するステップは、該特徴の該サブセットを選択するために、学習アルゴリズムを該特徴に適用するステップを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記学習アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
バイオメトリックスプーフの識別用の判別特徴セットを導出するように計算装置の動作を指示する、コンピュータ読み取り可能のプログラムを自身の中に具現化しているコンピュータ読み取り可能の記憶媒体であって、該計算装置は記憶装置と通信するプロセッサを含み、該コンピュータ読み取り可能のプログラムは、
複数の個別の光学的条件下で複数の真の皮膚部位のそれぞれから反射された、第一の光の特性を表す第一のデータを、該プロセッサで該記憶装置から取り出すための命令と、
該真の皮膚部位を特徴づけるために、複数の特徴のそれぞれに対する真の皮膚の特徴値を、該プロセッサで該第一のデータから導出するための命令と、
複数のバイオメトリックスプーフのそれぞれから反射された、第二の光の特性を表す第二のデータを、該プロセッサで該記憶装置から取り出すための命令と、
該バイオメトリックスプーフを特徴づけるために、該複数の特徴のそれぞれに対するスプーフの特徴値を、該プロセッサで該第二のデータから導出するための命令と、
該判別特徴セットを規定する該特徴のサブセットを選択するために、該導出された真の皮膚の特徴値を該導出されたスプーフの特徴値と、該プロセッサで比較するための命令と、
を含む、
コンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項17】
前記真の皮膚の特徴値を導出するための前記命令は、前記真の皮膚部位のそれぞれについて、前記第一のデータから複数の真の皮膚画像表現を抽出するための命令を備え、
前記スプーフの特徴値を導出するための前記命令は、前記バイオメトリックスプーフのそれぞれについて、前記第二のデータから複数のスプーフ画像表現を抽出するための命令を備え、
該真の皮膚画像表現のそれぞれ、および該スプーフ画像表現のそれぞれは、前記複数の個別の光学的条件のうちの1つの条件下の画像に対応する、
請求項16に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項18】
前記真の皮膚の特徴値を導出するための前記命令は、前記真の皮膚画像表現のそれぞれを、複数の異なる空間周波数成分に分解するための命令をさらに備え、
前記スプーフの特徴値を導出するための前記命令は、前記スプーフ画像表現のそれぞれを、該複数の異なる空間周波数成分に分解するための命令をさらに備える、
請求項17に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項19】
前記真の皮膚画像表現のそれぞれを分解するための前記命令、および前記スプーフ画像表現のそれぞれを分解するための前記命令は、ウェーブレット分解を実施するための命令を備える、請求項18に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項20】
前記真の皮膚の特徴値を導出するための前記命令は、前記真の皮膚画像表現についての前記異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、該真の皮膚画像表現についての該異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比を、計算するための命令をさらに備え、
前記スプーフの特徴値を導出するための前記命令は、前記スプーフ画像表現についての前記異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、該スプーフ画像表現についての該異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比を、計算するための命令をさらに備える、 請求項18に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項21】
前記真の皮膚の特徴値を導出するための前記命令は、前記真の皮膚画像表現についての前記異なる空間周波数成分のそれぞれに対する強度分布を計算するための命令をさらに備え、
前記スプーフの特徴値を導出するための前記命令は、前記スプーフ画像表現についての該異なる空間周波数成分のそれぞれに対する強度分布を計算するための命令をさらに備える、
請求項18に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項22】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度に対して実質的に不変である、請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項23】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備える、請求項22に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項24】
前記特徴のうちの少なくとも第二の特徴が、照明強度と共に変化する、請求項22に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項25】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備え、
該特徴のうちの前記少なくとも第二の特徴が、該第一の所定百分位数における該強度と該第二の所定百分位数における該強度との間の差を備える、
請求項24に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項26】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度と共に変化する、請求項21に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項27】
前記真の皮膚部位および前記バイオメトリックスプーフは、別々のクラスを規定し、
前記導出された真の皮膚の特徴値を前記導出されたスプーフの特徴値と比較するための前記命令は、前記特徴から導出された数量について、クラス内分散のクラス間分散に対する比を計算するための命令を備える、
請求項16に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項28】
前記特徴から導出された前記数量は、前記特徴のフィッシャー線形判別変換を備える、請求項27に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項29】
前記特徴の前記サブセットを選択するために、前記導出された真の皮膚の特徴値を前記導出されたスプーフの特徴値と比較するための前記命令は、該特徴の該サブセットを選択するために、学習アルゴリズムを該特徴に適用するための命令を備える、請求項16に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項30】
前記学習アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムを備える、請求項29に記載のコンピュータ読み取り可能の記憶媒体。
【請求項31】
皮膚部位とされる部位上でバイオメトリック機能を実施する方法であって、
複数の個別の光学的条件下で、該皮膚部位とされる部位を照光するステップと、
該皮膚部位とされる部位から反射された光を受光するステップと、
該受光された光から、複数の特徴のそれぞれに対して特徴値を導出するステップと、
該複数の特徴のそれぞれに対する該導出された特徴値と参照特徴値との比較を実施するステップと、
該比較から、該皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位であるかどうかを判定するステップと、
を包含する、方法。
【請求項32】
前記特徴値を導出するステップは、前記受光された光から複数の画像を抽出するステップを包含し、該画像のそれぞれは、前記複数の個別の光学的条件のうちの1つの条件下の画像に対応する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記特徴値を導出するステップは、前記複数の画像のそれぞれを複数の異なる周波数空間成分に分解するステップをさらに包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の画像のそれぞれを分解するステップは、ウェーブレット分解を実施するステップを包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記特徴値を導出するステップは、前記異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、該異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比を、計算するステップをさらに包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記特徴値を導出するステップは、前記異なる空間周波数成分のそれぞれに対する強度分布を計算するステップをさらに包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度に対して実質的に不変である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、前記強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備える、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記特徴のうちの少なくとも第二の特徴が、照明強度と共に変化する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、前記強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備え、
該特徴のうちの前記少なくとも第二の特徴が、該第一の所定百分位数における該強度と該第二の所定百分位数における該強度との間の差を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度と共に変化する、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位かどうかを判定するステップは、該皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位ではないと判定するステップを包含する、請求項31に記載の方法であって、該方法は、該皮膚部位とされる部位をスプーフとみなすというアラームを発するステップをさらに包含する、方法。
【請求項43】
前記受光された光からバイオメトリック認証を実施するステップをさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
個人の皮膚部位とされる部位を照光するように配置された照明サブシステムと、
該皮膚部位とされる部位から反射された光を受光するように配置された検出サブテムと、
該照明サブシステムおよび該検出サブシステムと通信可するコントローラであって、
単一照明セッションの間に、複数の個別の光学的条件下で、該皮膚部位とされる部位を該照明サブシステムで照光するための命令と、
該皮膚部位とされる部位から反射された光を該検出サブシステムで受光するための命令と、
該受光された光から、複数の特徴のそれぞれに対して特徴値を導出するための命令と、
該複数の特徴のそれぞれに対する該導出された特徴値と、参照特徴値との比較を実施するための、および
該比較から、該皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位であるかどうかを判定するための命令と、
を含む、コントローラと、
を備える、バイオメトリックセンサ。
【請求項45】
前記特徴値を導出するための前記命令は、前記受光された光から複数の画像表現を抽出するための命令を備え、該画像表現のそれぞれは、前記複数の個別の光学的条件のうちの1つの条件下の画像に対応する、請求項44に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項46】
前記特徴値を導出するための前記命令は、前記複数の画像表現のそれぞれを複数の異なる空間周波数成分に分解するための命令をさらに備える、請求項45に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項47】
前記複数の画像表現のそれぞれを分解するための前記命令は、ウェーブレット分解を実施するための命令を備える、請求項46に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項48】
前記特徴値を導出するための前記命令は、前記異なる空間周波数成分のうちの第一の成分の、該異なる空間周波数成分のうちの第二の成分に対する比を、計算するための命令をさらに備える、請求項46に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項49】
前記特徴値を導出するための前記命令は、前記異なる空間周波数成分のそれぞれに対して強度分布を計算するための命令をさらに備える、請求項46に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項50】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度に対して実質的に不変である、請求項49に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項51】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、前記強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備える、請求項50に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項52】
前記特徴のうちの少なくとも第二の特徴が、照明強度と共に変化する、請求項50に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項53】
前記特徴のうちの前記少なくとも1つの特徴が、前記強度分布の第一の所定百分位数における強度の、該強度分布の第二の所定百分位数における強度に対する比を備え、
該特徴のうちの前記少なくとも第二の特徴が、該第一の所定百分位数における該強度と該第二の所定百分位数における該強度との間の差を備える、
請求項52に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項54】
前記特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、照明強度と共に変化する、請求項49に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項55】
コントローラが、前記皮膚部位とされる部位が真の皮膚部位ではないことを判定し、該コントローラは、該皮膚部位とされる部位をスプーフとみなすというアラームを発するための命令をさらに備える、請求項44に記載のバイオメトリックセンサ。
【請求項56】
前記コントローラは、前記受光された光からバイオメトリック認証を実施するための命令をさらに備える、請求項44に記載のバイオメトリックセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2009−545822(P2009−545822A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522992(P2009−522992)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/074747
【国際公開番号】WO2008/108871
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(503156596)ルミダイム インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】