説明

空間光伝送装置

【課題】 空間光伝送装置において、広画角の光学系を備え、入力光の光利用効率が高く、比較的広範囲の軸外光の捕捉・追尾にも対応できるようにする。
【解決手段】 空間光伝送装置において、正のパワーを有する反射光学素子3、負のパワーを有し、反射部4aと透過部4bとからなる凸面4Aを有する分岐光学素子4を含み、それぞれが光軸に対して偏心または傾いて配置された偏心光学系1により実質的なアフォーカル光学系が形成され、反射部4aによる反射光の光路上に射出瞳が形成される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間光伝送装置に関する。例えば、広範囲な捕捉・追尾が必要とされ、環境ノイズに強いことが要求される長距離追尾などを行うための空間光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に空間光伝送装置を用いた通信は、送信側と受信側がお互いに相手側方向を向いて通信光を送受光する。そして通信中は、送信側からの通信光が受信側受光部から外れて通信がとぎれることがないように相手の光束を追尾し続ける必要がある。また、長距離の送受光を達成するためには、光学系による性能劣化を最小限にする必要がある。
このような従来の空間光伝送装置として、例えば、特許文献1には、凹面からなる主鏡に対して凸面からなる副鏡が共軸となるように対向配置し、これらの双方で反射された第1光束をコリメータレンズで平行光束化するカセグレンタイプ光学系により光通信を行い、主鏡で反射され副鏡を透過した第1光束と波長の異なる第2光束で通信相手の位置情報を検出するようにした光通信光学装置が記載されている。
また、特許文献2には、同様にカセグレンタイプ光学系からなり、副鏡の光軸近傍に光通過領域を設け、その光通過領域を介して標識光束を入出射するようにした光通信光学装置が記載されている。
【特許文献1】特開平6−337355号公報(第2−5頁、図1−2)
【特許文献2】特開平7−84186号公報(第2−5頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の空間光伝送装置には以下のような問題があった。
特許文献1に記載された技術では、カセグレンタイプ光学系を用いるので、球面収差、色収差の発生がなく光学系も折り畳むことができるため、コンパクトで高性能な装置とすることができるものの、主鏡と副鏡とが共軸に配置されているため、副鏡部分の光束が遮蔽される。また、副鏡後に位置検出器を配置しているため、位置検出器の大きさ(電気回路、メカ部材も含めて)の光束を遮蔽することになる。
そのため、光軸近傍の重要な光束を導くことができず、その分が光量損失となり、光利用効率が劣ってしまうという問題がある。
また、副鏡に第2光束を半透過するコーティングを施すことで、受信の際に第1光束の波長と異なる第2光束(ビーコン光)を受信し相手の位置を知ることができるが、送信の際は、高パワーのビーコン光が内部から副鏡に照射されるので、高パワーの送信ビーコン光が位置検出器に導かれる。そのため、送信時に、送信ビーコン光と受信ビーコン光を同時に検出することになるから、例えば時分割や波長分割などを行わなければ相手位置検出が難しくなるため装置構成が複雑で高価なものとなるという問題がある。
また、特許文献2に記載の技術では、同様にカセグレンタイプ光学系を用いるため、通信光、ビーコン光ともに、副鏡により光束の中心が遮蔽され光量損失が発生し、光利用効率が劣ってしまうという問題がある。
特に軸外光束においては、このような光量損失に加えて主鏡で反射した光束の一部が副鏡中心の光通過領域に導かれ内部光学系まで到達しないことによる光量損失が発生する。つまり軸外光束では画角によりケラレ量が変化し、その結果、追尾の際にビーコン光のパワーが変化して追尾エラーが発生しやすくなるという問題がある。
光量損失を低減するために、副鏡中心の光通過領域を小さくすることも考えられるが、光通過領域が小さいと送信ビーコン光の光束径を副鏡付近で小さくしなければならず、その結果、ビーコン光の拡散角が不適切となって追尾エラーが発生しやすいという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、入力光の光利用効率が高く、比較的広範囲の軸外光の捕捉・追尾にも対応可能な広画角の光学系を備えた空間光伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の空間光伝送装置は、略平行な光束を入力光とする実質的なアフォーカル光学系を有する空間光伝送装置であって、前記実質的なアフォーカル光学系が、前記入力光の光路に沿う順に、前記入力光の光軸から偏心または傾いて配置された正のパワーを有する第1の光学素子と、前記入力光の光軸から偏心または傾いて配置された負のパワーを有する第1の部分反射面が形成された第2の光学素子とを備える偏心光学系からなり、前記第1の部分反射面による反射光の光路上に射出瞳が形成された構成とする。
このような構成によれば、第1の光学素子に入射する略平行な光束からなる入力光が正のパワーを受けて集光され、集光された光束が、第2の光学素子に形成された第1の部分反射面に対して画角ごとに異なる位置に入射する。そして第1の部分反射面上の入射位置による反射率分布に応じて光束の一部または全部が反射され、反射光は第1の部分反射面の負のパワーを受けて拡散され、光路上に射出瞳が形成される。したがって、この偏心光学系により、略平行な入力光の一部または全部が、入射画角に応じて所定の角倍率で縮径された略平行光束となる実質的なアフォーカル光学系が形成される。
一方、入力光の画角に応じて第1の部分反射面を透過する透過光は、第1の部分反射面を透過する際に正のパワーを受けてさらに集光される。
したがって、例えば、反射面を入力光の光軸の近傍の範囲に設けることにより、相対的に画角が小さい入力光を反射して射出瞳に導く実質的なアフォーカル光学系の光路と、相対的に画角が大きい入力光を第1の部分反射面で透過し、第2の光学素子の裏面側に導いて集光する入力光の分岐光学系の光路とを形成することができる。
そのため、簡素な構成により、少なくとも2つの入射画角範囲の入力光を観察およびセンシングしたり、受光したりすることができる。例えば、入射画角が小さい範囲の入力光は射出瞳の範囲で観察し、入射画角がその範囲を超える入力光は第2の光学素子の裏面側で観察することができる。その際、第2の光学素子の透過光は集光されているので、画角に比べて限定された範囲で観察することができる。その結果、コンパクトな構成でありながら、実質的なアフォーカル光学系のみからなる場合に比べて、広範囲の画角を有する入力光を観察することが可能となる。
例えば、前者を通信光や相対的に小さい画角範囲の追尾光として利用し、後者をより大きい画角範囲の追尾光などとして利用することにより、実質的なアフォーカル光学系のみの場合に比べて、広範囲の軸外光の捕捉、追尾を行うことが可能となる。
その際、第1、第2の光学素子は、入力光の光軸に対して偏心または傾いて配置された偏心光学系であるため、入力光が各光学素子により遮蔽されて光量損失が生じることがないように配置することができる。
【0006】
ここで、第1の部分反射面は、入力光の一部が反射されるものであれば、例えば、一部に反射部、他部分に透過部が形成された構成でもよいし、また一部にハーフミラー部、他部分に透過部が形成された構成でもよいし、また全部がハーフミラー面からなる構成でもよい。また、それら反射部、透過部、ハーフミラー面の大きさ、形状、反射率分布は必要に応じて適宜に設定することができる。
【0007】
本発明の空間光伝送装置では、前記実質的なアフォーカル光学系が、前記第2の光学素子の反射光の光路上に正のパワーを有する第3の光学素子を備え、前記第2の光学素子と前記第3の光学素子との間に中間像が形成され、前記第3の光学素子により射出瞳が形成される構成とすることが好ましい。
この場合、実質的なアフォーカル光学系を、第2の光学素子と第3の光学素子との間に中間像を形成して、第3の光学素子により射出瞳が形成されるものとするので、いわゆるケプラータイプのアフォーカル光学系とすることができる。
そのため、射出瞳位置に例えば偏向ミラーなどの光学素子を比較的容易に配置することができ、高機能な光学系を構成しやすくなる。例えば、中間像を形成しないいわゆるガリレオタイプのアフォーカル光学系ではアフォーカル光学系を構成する2つの光学素子の中間に射出瞳が形成されるため射出瞳位置に偏向ミラーなどの光学素子を配置することができない。そこでそのような光学素子を配置する場合には射出瞳位置以外の位置に配置しなければならず、ケラレを防止するためにはより広い光学面が必要となってしまう。したがって偏向ミラーなどの光学素子を配置する場合、このようなガリレオタイプに比べてケプラータイプは高倍率、高画角の光学系に対応しやすく小型化もしやすいものである。
【0008】
また、本発明の空間光伝送装置では、前記第2の光学素子が、前記第1の部分反射面の透過側に、パワーを有する光学作用面を備える構成とすることが好ましい。
この場合、第1の部分反射面を透過した透過光がパワーを有する光学作用面により集光されるから、適宜のパワーを持たせることにより、透過光の光学特性、例えば集光位置、スポット径、画角に対する像面での走査特性などを適宜調整することができる。したがって、例えば透過光を追尾光として用いる場合には、光検出器に対する光学特性を調整して、レイアウトの最適化を図ったり、検出精度の向上を図ったりすることができる。
【0009】
また、本発明の空間光伝送装置では、前記第2の光学素子が、前記第1の部分反射面の透過光を前記第1の部分反射面に向けて反射し、前記第1の部分反射面の裏面で少なくとも1回反射した光を透過させる第2の部分反射面を備えることが好ましい。
この場合、第2の部分反射面を設けることにより、第1の部分反射面を透過した透過光を、第2の部分反射面と第1の部分反射面とでそれぞれの少なくとも1回反射させてから、第2の部分反射面を透過させることができるので、第1の部分反射面を透過した透過光の光路を折り畳んでコンパクトな構成とすることができる。
また、第1、第2の部分反射面のパワーを内部反射面として用いることができるので、少ない部品構成で高性能な光学系を構成することができる。
【0010】
ここで、第2の部分反射面は、第1の部分反射面の透過光を少なくとも1回反射できるものであれば、例えば、一部に反射部、他部分に透過部が形成された構成でもよいし、また一部にハーフミラー面、他部分に透過部が形成された構成でもよいし、また全部がハーフミラー面からなる構成でもよい。ただし、光利用効率の点では、反射部と透過部とを有する構成とすることが好ましい。また、第2の部分反射面の反射部は全反射面とすることがより好ましい。ここで言う全反射は、硝材内部で光線入射角が臨界角以上の場合に発生する全反射ではない。
また、第2の部分反射面は、パワーを有する形状としてもよいし、平面としてもよい。
【0011】
また、本発明の空間光伝送装置では、前記入力光のうち、少なくとも前記第1の部分反射面の透過光を検出する光検出器を備えることが好ましい。
この場合、第1の部分反射面を透過した相対的に大きな入射画角を有する透過光を検出する光検出器を備えることにより、実質的なアフォーカル光学系からは得られない大きな入射画角の入力光の情報を得ることができる。例えば、光検出器により、透過光の位置情報を検出することにより、第1の部分反射面で反射されない広画角の範囲での入力光の位置検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空間光伝送装置によれば、入力光の光軸から偏心または傾いて配置された偏心光学系により実質的なアフォーカル光学系を構成するので、光量損失を低減して入力光の光利用効率が高めることができ、入力光を入射画角に応じて、第2の光学素子の第1の部分反射面で反射される光と、第2の光学素子を透過する光とに分岐することにより、それぞれ入射画角の異なる光を観察およびセンシング、受光可能とするので、比較的広範囲の軸外光の捕捉・追尾にも対応可能な広画角の光学系を備えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る空間光伝送装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る空間光伝送装置の概略構成について説明するための光学系の光軸を含む断面における模式断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。図3は、同じく通信光の光路について説明するための光路図である。図4は、同じく粗追尾のための光路について説明するための平面視の光路図である。図5は、同じく精追尾のための光路について説明するための平面視の光路図である。図6は、同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。なお図中の光線は、それぞれ主光線と2本の従属光線により描いている(以下、同様)。入射画角は、図3、5では0°、図4では0°、±1°(紙面垂直軸回り)、図6では0°、±10°(紙面垂直軸回り)である。
【0014】
本実施形態の空間光伝送装置100は、互いに離れた複数の装置間で、ビーコン光を投射して互いの位置捕捉を行い、互いの出射方向を追尾しながら通信光を送受光するための装置である。その概略構成は、図1に示すように、ジンバルステージ44により可動支持された筐体43の内部に、ビーコン光光源36、通信光光源35、偏心光学系1、位置検出器16A(光検出器)、位置検出器16B、4分割受光器15、および入射方向検出手段40からなる。
【0015】
ジンバルステージ44は、支持台44c上に、水平方向に回転移動可能な水平回転駆動部44bと、鉛直面内で回転移動可能なティルト駆動部44aとからなる。そして、駆動制御手段44dに入力された制御信号102に基づいて筐体43を2軸方向まわりに回転移動できるようになっている。
【0016】
ビーコン光光源36は、光伝送の相手側の装置が空間光伝送装置100の位置を捕捉するためのビーコン光54を適宜の照射範囲が得られるような発散角で投射するための光源であり、例えば、レーザ光源およびコリメートレンズなどから構成される。
通信光光源35は、光伝送の相手側の装置に通信光53を投射するための光源であり、例えば、レーザ光源およびコリメートレンズなどから構成される。
通信光53は、通信のS/N比が低下しないように正確にコリメートされた状態で、通信光光源35から偏心光学系1に入射される。そして、倍率βで拡径されて開口絞り2から外部に出射されるようになっている。
【0017】
また、通信光光源35、ビーコン光光源36は、それぞれ送光制御手段113と接続され、外部からの送光制御信号101に基づいて、送光の出力やタイミングが制御される。すなわち、適宜の通信手順に基づいて、例えば初期通信時にビーコン光54のみを点灯し相手側により捕捉されてから通信光53を送光する、といったような制御が行われる。
ここで、通信光53とビーコン光54との波長は、相手側により互いに区別できれば、同じ波長でもよいが、波長を変えておけば、相手側で通信光53とビーコン光54とを容易に区別できるので好都合である。
【0018】
偏心光学系1は、装置の外部から開口絞り2を通して入射する略平行光の入射光束51(入力光)を光束径が1/β倍に縮径された略平行光の入射光52に変換する角倍率βの実質的なアフォーカル光学系と、その光路の途中で分岐光55a、55b、55cを分岐してそれぞれ位置検出器16A、16B、4分割受光器15に導く分岐光学系とからなる。
入射光52は、カップリングレンズ10により集光され、光ファイバ11のファイバ受光面11aに結合される。そして光ファイバ11を通して通信光12として伝送されるようになっている。
【0019】
分岐光55aは、入射光束51のうち入射画角ωが相対的に大きい光束(本実施形態では、1°≦|ω|≦10°)を分岐したものである。
位置検出器16Aは、送受光の相手側から送光されたビーコン光や通信光の入射画角を検出するために、分岐光55aを受光面16aにより受光し、受光面16a上での2軸方向の位置を検出する位置検出器である。位置検出器16Aとしては、比較的小さいスポット径により広範囲で高精度に位置が検出できる光検出器、例えば、電子撮像素子(以下CCD)、位置検出受光器(以下2次元PSD)などを採用することができる。この検出出力は入射方向検出手段40に送られて入射方向の検出に用いられる。
以下、分岐光55aを用いた追尾を広追尾と称する。
【0020】
分岐光55bは、入射光束51のうち分岐光55aより入射画角ωが相対的に小さい光束(本実施形態では、0°≦|ω|≦1°)を分岐したものである。
位置検出器16Bは、送受光の相手側から送光されたビーコン光や通信光の入射画角を検出するために、分岐光55bを受光面16aで受光して、受光面16a上での2軸方向の位置が検出可能な検出出力を生成するものである。位置検出器16Bとしては、位置検出器16Aと同構成のもの、または基本構成が同一で受光面の大きさや受光面の位置分解能が異なるものを採用できる。
以下、分岐光55bを用いた追尾を粗追尾と称する。
【0021】
分岐光55cは、送受光の相手側から送光されたビーコン光や通信光の入射画角を検出するために、入射光束51を、分岐光55a、55bに比べてファイバ受光面11aに近い位置で分岐し、相対的に最も小さい範囲の入射画角ωの光束(本実施形態では、0°≦|ω|≦0.05°)を高精度に位置検出できるようにしたものである。
4分割受光器15は、4分割フォトダイオード(以下QD)からなる受光面15aにより分割面ごとの受光量を検出し、それらを演算することにより、受光面15a上に入射する分岐光55cの2軸方向の位置に応じた検出出力を生成する光検出器である。この検出出力は入射方向検出手段40に送られて入射画角、入射方向の検出に用いられる。
4分割受光器15は、例えばCCDなどと比べて位置の検出範囲は狭いものの、高分解能を有している。そのため、4分割受光器15によれば、本実施形態の場合、入射画角ω=0.05°以下の入射光束51の入射画角を検出することができる。
以下、分岐光55cを用いた追尾を精追尾と称する。
【0022】
入射方向検出手段40は、位置検出器16A、16B、4分割受光器15から送出される検出出力に所定の演算を施して、それぞれの受光面上での基準位置からのずれ量を算出し、それぞれの光学レイアウトに基づいて入射方向を検出し、入射画角を0°に近づけるための補正量に換算するための検出手段である。
そして、位置検出器16A、16Bから検出される入射画角のずれに応じてジンバルステージ44を駆動して、入射光束51の入射方向に合わせて筐体43を移動させる制御信号102を駆動制御手段44dに対して送出するようになっている。
ずれ量が適宜の目標値に達し、精追尾動作可能となると、ジンバルステージ44の位置を固定し、4分割受光器15の検出出力により後述する偏向ミラー8(図2参照)の駆動手段(不図示)に制御信号103を送出して、入射光52がファイバ受光面11aに最適にカップリングされるように偏向ミラー8の偏向角を制御する精追尾動作を行えるようになっている。
ここでずれ量の適宜の目標値は、精追尾に円滑に移行できる値とする。本実施形態の場合、±0.05°かそれよりわずかに狭い範囲を採用することができる。ただし、精追尾範囲を異なる範囲に設定している場合には、この目標値も精追尾範囲に応じて変更することは言うまでもない。
【0023】
次に、偏心光学系1の構成について説明する。
図2に示すように、偏心光学系1の概略構成は、開口絞り2、反射光学素子3(第1の光学素子)、分岐光学素子4(第2の光学素子)、光路分岐素子5、反射光学素子7(第3の光学素子)、偏向ミラー8、光路分岐素子9、および集光レンズ14(図5参照)からなる。
【0024】
開口絞り2は、入射光束51の光束径を規制するためのもので、偏心光学系1の入射瞳をなしている。本実施形態では、直径Dの円孔絞りとしている。軸上主光線50は、主光線のうち、開口絞り2の中心Oを通り、受光面の中心に入射する光線である。また軸上主光線に一致した光路を光軸とする。
なお、本実施形態では、図示の紙面垂直方向に入射画角を有していてもよい。しかし、以下では説明を簡単にするために、軸上主光線50の光路を含む平面内の2次元光路について説明し、必要に応じて3次元光路について説明する。特に断らなければ、2次元光路について述べることは3次元光路にも容易に拡張できる。
【0025】
反射光学素子3は、開口絞り2を透過した入射光束51を反射して光路を折り畳むとともに集光するための光学素子で、反射面3aが、正のパワーを有する回転非対称な曲面からなる自由曲面により構成されている。そして、反射面3aは、反射光を物体の入射光束51の光束外に導くため、入射光束51の光軸に対して図示の紙面垂直軸から見て反時計回り(後述する座標系のX軸回り正方向)に偏心して配置されている。
反射面3aの形状は、通常発生する収差の他にも、反射面3aを偏心させたことにより発生する特殊な偏心収差、例えば軸上における非点収差、コマ収差、偏心収差独特の弓形や台形の形状になるディストーション(像歪み)などを補正するような形状とする。そのためには、図示の紙面に一致する平面(後述する座標系におけるY−Z平面)のみを対称面とするような回転非対称な曲面とすることが好ましい。
反射光学素子3は、最も物体側の光学素子として、偏心光学系1の主たるパワーを担う光学素子とされている。
【0026】
ここで、以下に用いる座標系と自由曲面式について説明する。
座標系は、図2に示すように、物体側から開口絞り2、反射光学素子3に向う光線追跡で、入射側光軸を、軸上主光線50のうち絞り面を形成する開口絞り2の中心に直交し反射光学素子3の反射光学素子3の中心に至る光線として定義する。そして光線追跡において、開口絞り2の中心を偏心光学系の偏心光学面の原点Oとして(ただし、図示の座標軸は光路との重なりを避けるために原点位置をずらしている)、入射側光軸に沿う方向をZ軸方向とし、物体側から偏心光学系の開口絞り2に向かう方向をZ軸正方向とし、紙面をY−Z平面とし、紙面の表から裏へ向かう方向をX軸正方向とし、X軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をY軸とする。
【0027】
傾き角は、X軸、Y軸、Z軸を中心とする傾き角をそれぞれα、β、γとしたとき、傾き角αとβの正はそれぞれX軸、Y軸の正方向に対して反時計回りを、傾き角γの正はZ軸の正方向に対して時計回りの角度と定義する。
そして、各光学作用面を座標系で表す場合、軸上主光線50を物体から像面に向かう方向で順光線追跡し、開口絞り2と軸上主光線50が交差する点を原点として、X軸を紙面垂直方向に保って、Z軸が軸上主光線50に一致するように、Y、Z軸を回転させたローカル座標系で表す。ただし、後述する実施例1〜2の光路1において、面番号8以降の面は、面番号8の偏心座標(角度)を原点として扱う。同じく実施例3の光路1においては、面番号7以降の面を面番号7の偏心座標(角度)を原点として扱う。同じく実施例4の光路1においては、面番号6以降の面を面番号6の偏心座標(角度)を原点として扱う。
なお、面の中心軸のα,β,γの回転のさせ方は、面の中心軸とそのXYZ直交座標系を、まずX軸の回りで反時計回りにα回転させ、次に、その回転した面の中心軸を新たな座標系のY軸の回りで反時計回りにβ回転させると共に1度回転した座標系もY軸の回りで反時計回りにβ回転させ、次いで、その2度回転した面の中心軸を新たな座標系の新たな座標系のZ軸の回りで時計回りにγ回転させるものである。
【0028】
本実施例で用いられる自由曲面の形状は、例えば、下記の式(a)により定義される自由曲面式で表現される。式(a)のZ軸が自由曲面の軸となる。
【数1】

ここで、(a)式の第1項は球面項、第2項は自由曲面項である。球面項中、Rは頂点の近軸曲率半径、kはコーニック定数(円錐定数)であり、r=√(X2 +Y2 )である。
【0029】
自由曲面項は、
【数2】

ただし、C(jは1以上の整数)は係数である。
【0030】
上記自由曲面は、一般的には、X−Z面、Y−Z面共に対称面を持つことはないが、本実施形態ではXの奇数次項を全て0にすることによって、Y−Z面と平行な対称面が1つだけ存在する自由曲面となる。例えば、上記定義式(a)においては、C2 、C5 、C7、C9 、C12、C14、C16、C18、C20、C23、C25、C27、C29、C31、C33、C35・・・の各項の係数を0にすることによって可能である。
【0031】
分岐光学素子4は、物体側から凸面4A(第1の部分反射面)、透過面4B(パワーを有する光学作用面)を有するレンズであり、凸面4Aは光軸に対して偏心または傾いて配置された自由曲面、透過面4Bは同じく凸球面からなる。
そして凸面4Aは、光軸を中心とする所定範囲に反射ミラーコーティングされた反射部4aが形成されている。凸面4Aのうち反射部4aを除いた部分は透過部4bとなっている。図2の破線は反射部4aにより反射されるために位置検出器16Aに到達しない光束を示している(以下の図も同様)。
反射部4aの有効範囲は粗追尾を行うために十分な大きさとされる。本実施形態では、入射画角ωが、0°≦|ω|≦1°の光束を略すべて反射できる大きさとされる。このような大きさであれば、反射部4aの形状は適宜でよく、例えば、矩形、正方形、楕円、円などの形状とすることができる。
反射部4aの負のパワー、偏心量は、反射面3aで反射された光束を反射して反射光学素子3と干渉しない領域に光路を折り畳んでY−Z平面において略Z字状の光路を形成するとともに、反射光学素子3において発生する偏心収差を補正し、像側の所定位置に中間像6を結ぶことができるように設定される。
反射面4aの形状は、通常発生する収差の他にも、反射面3aを偏心させたことにより発生する特殊な偏心収差、例えば軸上における非点収差、コマ収差、偏心収差独特の弓形や台形の形状になるディストーション(像歪み)などを補正するような形状とする。そのためには、Y−Z平面のみを対称面とするような回転非対称な曲面とすることが好ましい。
【0032】
光路分岐素子5は、図4に示すように、入射光束51を粗追尾光として用いるために光路を分岐して分岐光55bを形成するための光学素子である。そして、反射部4aと中間像6(図2参照)との間に配置され、反射部4aで反射された光束の一部をX軸負方向(図2の紙面手前方向)に反射して光路を分岐し、反射された光路上にもう1つの中間像6が形成されるようにするものである。例えば、適宜の光分岐面を備えるビームスプリッタ、ハーフミラーなどを採用することができる。この反射光路上の中間像6の略像面位置には位置検出器16Bが配置される。
【0033】
光路分岐素子5の分岐方向は、位置検出器16Bの配置位置が他の光学素子と干渉しなければ、X軸負方向とは限定されず、必要に応じて任意に方向に分岐することができる。本実施形態のようにX軸方向に分岐すれば、偏心光学系1のY軸方向の高さをコンパクトとすることができて好ましい。
【0034】
また、入射光束51がビーコン光と通信光とで異なる波長を有する場合には、光路分岐素子5をビーコン光の波長光を反射し、通信光を透過する波長選択型反射コーティングが施された光分岐面を備える構成としてもよい。
【0035】
反射光学素子7は、正のパワーを有することにより、光路分岐素子5を透過する光束が中間像6を形成した後の発散光を略平行光束として反射し、射出瞳を形成する自由曲面ミラーである。そのため、光軸に対して偏心または傾いて配置され、本実施形態では、図2に示すように光軸に対してX軸まわりの正方向に傾斜されている。
すなわち、反射光学素子3、分岐光学素子4、反射光学素子7は、中間像6を形成する実質的なアフォーカル光学系を構成している。
【0036】
偏向ミラー8は、実質的なアフォーカル光学系の射出瞳の近傍に配置され、光束の出射方向を可変するための可動ミラーである。例えば、ガルバノミラーや光MEMSなどから構成され、図示しない駆動手段に接続されている。そして、駆動手段が入射方向検出手段40(図1参照)からの制御信号103に基づいて駆動手段が制御され、偏向ミラー8の偏向角が、4分割受光器15の検出出力に応じて可変されるようになっている。
【0037】
光路分岐素子9は、図5に示すように、入射光束51を精追尾光として用いるために偏向ミラー8により反射された光束の一部をX軸負方向に反射して分岐するための光学素子である。例えば、ビームスプリッタ、ハーフミラーなどを採用することができる。
光路分岐素子9の反射後の光路上には、光束を集光する集光レンズ14が設けられ、それにより集光された分岐光55cが形成され、4分割受光器15の受光面15aに導かれるようになっている。
光路分岐素子9を透過した光束は入射光52としてカップリングレンズ10に入射されファイバ受光面11aに結合される。
【0038】
光路分岐素子9の分岐方向は、4分割受光器15の配置位置が他の光学素子と干渉しなければ、X軸負方向とは限定されず、必要に応じて任意に方向に分岐することができる。本実施形態のようにX軸方向に分岐すれば、偏心光学系1のY軸方向の高さをコンパクトとすることができて好ましい。
【0039】
次に空間光伝送装置100の作用について、偏心光学系1の光路と追尾動作とを中心に説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る空間光伝送装置の第1の部分反射面上における入射画角とスポット径の位置関係について説明するため模式説明図である。図7(a)は、ω=0°の場合を示す。図7(b)〜(e)は、X軸方向の入射画角成分をω、Y軸方向の入射画角成分をωと表すときに、(ω,0°)、(0°,ω)、(ω,ω)の場合のスポット径の位置および形状を示すものである。図7(b)は、ω=ω=±0.05°を、図7(c)は、ω=ω=±1.0°を、図7(d)は、ω=ω=±10°を、図7(e)は、ω=ω=±5.0°をそれぞれ示す。
【0040】
相手側の装置から出射されたビーコン光や通信光は、長距離を通過するため回折により拡径した状態で空間光伝送装置100を含む範囲に到達し、略平行光束である入射光束51として開口絞り2から入射する。
入射光束51は、図2に示すように、偏心光学系1に入射すると、反射面3aによりY−Z平面内でそれぞれ負方向に進む斜め方向に反射されて、分岐光学素子4の凸面4Aに到達する。そして入射光束51の入射画角に応じて光路が分岐される。
【0041】
例えば、入射光束51が光軸上を進む場合、図7(a)に示すように、スポットSは反射部4aの略中央に入射して反射される。
また入射画角成分が、ω=ω=±0.05°の場合、スポットS…は反射部4aの略中央に入射して反射される(図7(b)参照)。
また入射画角成分が、ω=ω=±1.0°の場合、スポットS…は反射部4aの範囲内に入射して反射される(図7(c)参照)。
また入射画角成分が、ω=ω=±10°の場合、スポットS…は反射部4aの外部、すなわち透過部4bに入射し透過される(図7(d)参照)。
また入射画角成分が、ω=ω=±5.0°の場合、スポットS…のそれぞれの一部の光束が反射部4aにより反射され、残りの光束が透過部4bに入射し透過される。
【0042】
すなわち、入射画角|ω|が1°以下の場合、入射光束51の略全光束が反射部4aにより、入射側の光路に干渉しない方向に反射されて、図3に示す光路を進む。つまり、反射部4aの負のパワーの作用を受けて収差が補正されるとともに、所定距離離れた位置に中間像6を形成し、その後発散しながら進んで反射面7aに到達する。
反射面7aに到達した光束は、反射面7aの正のパワーにより集光され略平行光束とされ、入射側の光路と重ならない方向に反射される。
そして、反射面8aによりカップリングレンズ10に向けて反射され、カップリングレンズ10により集光され、結像面に結像する。
入射画角ωが十分小さければ、光軸上のファイバ受光面11a上に結像され、光ファイバ11を通じて通信光12として伝送される。
入射角が大き過ぎる場合は、粗追尾動作および精追尾動作により入射画角が補正される。
【0043】
このような光路における粗追尾および精追尾動作について説明する。
粗追尾は、図4に示すように、光路分岐素子5により分岐された光束の位置を位置検出器16Bで検出することにより行う。
つまり、位置検出器16Bに光束が入射すると、位置検出器16Bにより受光面16a上の位置検出が行われ、入射方向検出手段40により入射画角と入射方向が算出される。入射方向検出手段40は、その情報を基にして入射画角を0°にするためのジンバルステージ44の移動量を決定し制御信号102として駆動制御手段44dに出力する。
粗追尾の位置分解能およびジンバルステージ44の位置補正量には限界があるので、入射画角が適宜量、例えば±0.05°の範囲に収まると、ジンバルステージ44の移動は停止され、精追尾制御に移行する。
【0044】
ここで、入射光束51がビーコン光と通信光とで異なる波長を有する場合には、光路分岐素子5として波長選択型反射コーティングが施された分岐面を備える構成を用いて、ビーコン光をすべて位置検出器16Bに入射して粗追尾を行うことができる。
【0045】
精追尾は、図5に示すように、光路分岐素子5を透過して反射光学素子7により略平行光束とされ偏向ミラー8により偏向された光束を、光路分岐素子9により分岐し集光レンズ14により集光して分岐光55cとし、その集光位置を4分割受光器15で検出することにより行う。
反射光学素子7から出射される略平行光束は、入射画角の変化に応じた角度方向に向けて略射出瞳位置から出射されるから、集光レンズ14を射出瞳位置から適宜距離だけ離すことにより、入射画角に対する受光面15a上の移動量を適宜値に設定できる。例えば、入射画角±0.05°の範囲の光束が受光面15aの受光範囲の略全域を移動するように設定することができる。そのため、位置検出範囲が同じセンサを用いる場合でも、粗追尾より狭い角度範囲をより高精度に検出することができる。
そして検出位置に応じて検出信号を入射方向検出手段40に送出し、入射方向検出手段40により入射画角、入射方向を検出する。
【0046】
入射方向検出手段40は、検出結果に応じて、入射画角のずれ量が0°となるような制御信号103を送出し、偏向ミラー8の偏向角を制御する。
その結果、光路分岐素子9を透過した入射光52が光軸に沿ってファイバ受光面11aに最適に結合される。
そして、外乱などにより入射画角が変わっても、その都度、精追尾もしくは粗追尾が行われ、入射光束51が光ファイバ11に安定して入射する状態が維持される。
入射光束51が通信光である場合にはそのまま通信が実施され、ビーコン光である場合には通信光を送信するための情報を通信光光源35から相手側に送ることができる。
入射光束51がビーコン光と通信光とで異なる波長を有する場合には、光路分岐素子5として波長選択型反射コーティングが施された光分岐面を備える構成を用いることにより、ビーコン光を受光した状態のまま、通信を行うことができる。
【0047】
このように偏心光学系1では、光軸に対して偏心または傾いて配置された光学系からなるので、精追尾された場合、入射光束51が光路中の光学素子などにより蹴られることなく、入射光52として縮径され、光ファイバ11に結合される。そのため、光利用効率が優れた光学系となっている。
【0048】
通信光光源35の送信光は、入射光52の光路中にビームスプリッタやハーフミラーなどからなる不図示の光合成手段を配置し、通信光光源35により略平行光束として出射される通信光53を光軸上に入射させ、入射光束51の光路を逆進して開口絞り2から出射することにより送光することができる。また、光利用効率については入射光束51と同様の理由で良好となっている。
精追尾された状態では、分岐光学素子4に入射する通信光53は反射部4aに入射して反射される。本実施形態では、反射部4aで略すべて反射されるので、高出力に調整された通信光53が位置検出器16Aに入射して、追尾精度に影響することはない。
【0049】
次に広追尾動作について説明する。
図7(d)、(e)に示すように、入射画角が±1°を超える範囲の入射光束51は、一部が反射部4aで反射されるものの、残りが透過部4bを透過する(図6参照)。そして、透過部4bの正のパワーにより集光され、透過面4Bの正のパワーによりさらに集光されて分岐光学素子4から出射される。そして、結像面17で結像され、位置検出器16Aの受光面16aに入射する。
そして、位置検出器16Aの検出出力が入射方向検出手段40に送出されることで、受光面16a上の位置が算出され、入射画角が0°となるような制御信号102が駆動制御手段44dに送出され、それに基づいてジンバルステージ44が駆動される。そして、入射画角のずれ量が±1°程度になって粗追尾可能な入射画角が得られると、上記の粗追尾制御に移行する。
【0050】
このように本実施形態の広追尾動作によれば、入射光束51の入射画角ωが、1°≦|ω|≦10°のように大幅にずれている場合でも追尾動作が可能となる。
その際、広追尾のための分岐光学系としては、実質的なアフォーカル光学系に含まれる分岐光学素子4の透過部4bと透過面4Bからなる簡素な構成とすることができ、部品点数が削減された構成となっている。
【0051】
つまり、本実施形態の空間光伝送装置100は、実質的なアフォーカル光学系を兼ねる分岐光学素子4を利用して、広追尾のための分岐光学系を構成した偏心光学系1を備えることにより、光利用効率に優れた送受光光学系を構成することができ、分岐光学系にそれぞれ位置検出器16A、16B、4分割受光器15などの光検出器を配置することで、広追尾、粗追尾、精追尾を段階的に移行して広範囲の入射画角に対して追尾制御を行うことができるものである。
【0052】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る空間光伝送装置について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。図9は、同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。
【0053】
本実施形態の空間光伝送装置は、図1に示す空間光伝送装置100の偏心光学系1に代えて偏心光学系200(図8参照)を備える。
偏心光学系200は、偏心光学系1の分岐光学素子4に代えて、分岐光学素子21(第2の光学素子)を備え、それに合わせて偏心光学系1の反射光学素子3、反射光学素子7に代えて、それぞれ略同様の構成で光学パラメータが異なる反射光学素子20(第1の光学素子)、反射光学素子22(第3の光学素子)を備える。また、第1の実施形態の位置検出器16Aに代えて、4分割受光器13(光検出器)を備える。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0054】
分岐光学素子21は、物体側から凸面21A(第1の部分反射面)、部分反射面21B(第2の部分反射面)を有する反射光学素子であり、それぞれ光軸に対して偏心または傾いて配置された自由曲面、平面からなる。
【0055】
凸面21Aは、物体側からの入射光束を略反射するために、光軸を中心とする所定範囲に反射ミラーコーティングされた反射部21aが形成されている。凸面21Aのうち反射部21aを除いた部分は透過部21bとなっている。
透過部21bは、物体側からの入射光束を略透過し、像側から入射光束を略内部反射する光学特性を有している。ただし、この透過率、反射率は広追尾動作が可能な範囲において、適宜のコーティングなどにより調整することができる。
反射部21aの有効範囲は粗追尾を行うために十分な大きさとされる。本実施形態では、入射画角ωが、0°≦|ω|≦1°の光束を略すべて反射できる大きさとされる。このような大きさであれば、反射部21aの形状は適宜でよく、例えば、矩形、正方形、楕円、円などの形状とすることができる。
反射部21aの負のパワー、偏心量は、反射面20aで反射された光束を反射して反射光学素子20と干渉しない領域に光路を折り畳んでY−Z平面において略Z字状の光路を形成するとともに、反射光学素子3において発生する偏心収差を補正し、像側の所定位置に中間像6を結ぶことができるように設定される。
反射面21aの形状は、通常発生する収差の他にも、反射面21aを偏心させたことにより発生する特殊な偏心収差、例えば軸上における非点収差、コマ収差、偏心収差独特の弓形や台形の形状になるディストーション(像歪み)などを補正するような形状とする。そのためには、Y−Z平面のみを対称面とするような回転非対称な曲面とすることが好ましい。
【0056】
部分反射面21Bは、透過部21bを透過した光束の到達する周辺部に反射コーティングが施され、入射光束を凸面21A側に内部反射する反射部21cとされている。そして、反射部21cを除く中央部が透過部21dとされ、反射部21cで内部反射され、凸面21Aで内部反射された光束が透過できるように構成されている。
【0057】
4分割受光器13は、第1の実施形態の4分割受光器15と同様な構成を有する。そして、受光面16aに代えて受光面15aに相当する受光面13aを備える。
受光面13aは、凸面21Aで内部反射された分岐光55aが結像面17に結像しさらに拡径して適宜径のスポットが形成され、それらが広追尾範囲を動いても受光できる位置に、結像面17と略平行に配置される。
【0058】
反射光学素子20、反射光学素子22は、第1の実施形態の反射光学素子3、反射光学素子7と略同様な構成を有し、設計上の光学パラメータが異なるのみなので説明は省略する。
【0059】
本実施形態によれば、反射面20aで反射され、反射部21aで反射された光束により、第1の実施形態と同様の入射画角の範囲で粗追尾動作および精追尾動作を行うことができる。
【0060】
広追尾は、図9に示すように、反射面20aにより反射され透過部21bを透過する光束により行う。本実施形態では、入射画角ωが、例えば、1°≦|ω|≦5°の範囲で広追尾できる。
透過部21bを透過した光束は集光されつつ部分反射面21Bの反射部21cに入射して内部反射される。そして、凸面21Aの中央側に向かって進み凸面21Aで内部反射され、凸面21Aのパワーによりさらに集光される。そして、凸面21Aで内部反射された光束が透過部21dを透過し分岐光55aが形成され、4分割受光器13の受光面13aで受光される。そして、検出出力が入射方向検出手段40に送られ、入射光束51の入射画角と入射方向とが算出される。
したがって、第1の実施形態と同様に4分割受光器13の検出出力により広追尾動作を行うことができる。
【0061】
本実施形態の構成によれば、広追尾を行う分岐光学系に分岐光学素子21を用いるので、2回の内部反射を用いることができる。
そのため光路が折り畳まれて分岐光学系を光軸方向にコンパクト化することができるという利点がある。
また、凸面21Aによる内部反射により透過面のみの場合に比べて大きなパワーを実現することができる。そのため、凸面21Aの比較的小さな曲率でも必要なパワーを実現できるので、分岐光学素子21の製造が容易となる。また、部分反射面21Bのパワーの自由度が大きくなる。例えば、本実施形態のように、パワーをすべて凸面21Aでまかなうことにして部分反射面21Bを平面とすることができる。したがって分岐光学素子21を簡素かつ安価な構成とすることができるという利点がある。
ただし、部分反射面21Bとしてパワーを有する凸面や自由曲面などを採用してもよい。その場合、透過部21bのパワーを低減したり、収差補正を行って受光面13a上のスポット形状などの光学特性を良好にしたりすることができ、広追尾の精度を向上することができる。
【0062】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る空間光伝送装置について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。図11は、同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。
【0063】
本実施形態の空間光伝送装置は、図1に示す空間光伝送装置100の偏心光学系1に代えて偏心光学系201(図10参照)を備える。
偏心光学系201は、偏心光学系1の分岐光学素子4に代えて、分岐光学素子25(第2の光学素子)を備え、それに合わせて偏心光学系1の反射光学素子3、反射光学素子7に代えて、それぞれ略同様の構成で光学パラメータが異なる反射光学素子24(第1の光学素子)、反射光学素子26(第3の光学素子)を備える。そして広追尾の光検出器として、第1の実施形態の位置検出器16Aに代えて、位置検出器31(光検出器)を備える。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
分岐光学素子25は、第1の実施形態の分岐光学素子4の凸面4A、透過面4Bに代えて、それぞれ凸面25A(第1の部分反射面)、透過平面25Bを備える光学素子である。
凸面25Aは、凸面4Aと同様に、反射部25a、透過部25bを備える部分反射面で曲面形状のみが異なっている。
透過部25bの形状は、分岐光55aの結像面17上の走査特性や結像性能が良好となる自由曲面が採用される。
そして結像面17に位置検出器31の受光面31aが配置される。
【0065】
位置検出器31は、位置検出器16Aと同様な構成を有し、受光面16aに代えて大きさや分解能などが異なる受光面31aを備えている。受光面31aの大きさや分解能は、広追尾の検出範囲に合わされている。そして、結像面17に結像された分岐光55aの2軸方向の位置が検出可能な検出出力を生成できるようになっている。
【0066】
反射光学素子24、反射光学素子26は、第1の実施形態の反射光学素子3、反射光学素子7と略同様な構成を有し、設計上の光学パラメータが異なるのみなので説明は省略する。
【0067】
本実施形態によれば、反射面24aで反射され、反射部25aで反射された光束により、第1の実施形態と同様の入射画角の範囲で粗追尾動作を行うことができる。また入射画角ωが、例えば、0°≦|ω|≦0.01°の範囲で精追尾できる。
【0068】
広追尾は、図11示すように、反射面24aにより反射され透過部25bを透過する光束により行う。本実施形態では、入射画角ωが、例えば、1°≦|ω|≦6°の範囲で広追尾できる。
透過部25bを透過した光束は集光されつつ透過平面25Bから分岐光55aとして出射され、結像面17上に結像される。そして位置検出器31により受光面31a上のスポットの位置が検出される。
そして、第1の実施形態の位置検出器16A代えて位置検出器31の検出出力により、同様にして広追尾動作を行うことができるものである。
【0069】
本実施形態の構成によれば、広追尾を行う分岐光学系の像面17に位置検出器31を配置するので、例えばQDを用いる場合のようにスポット径を拡径するために像面からデフォーカスする必要がないので、光軸方向にコンパクトな構成とすることができる。
また、位置検出器31のようなCCDや2次元PSDによれば、QDよりも広範囲の入射画角に対して高精度の検出を行うことができるので、高精度な広追尾を行うことができるという利点がある。
【0070】
なお、本実施形態では、透過部25bの裏面にはパワーを有しない透過平面25Bを用いているので、分岐光学素子25を簡素かつ安価な構成とすることができるが、必要に応じて透過部25bの裏面側の光学作用面にパワーを持たせてもよい。その場合、光路長をより短縮したり、結像性能をより向上したりすることができる。
【0071】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る空間光伝送装置について説明する。
図12は、本発明の第4の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。図13は、同じく通信光の光路について説明するための光路図である。図14は、同じく粗追尾のための光路について説明するための平面視の光路図である。図15は、同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。
【0072】
本実施形態の空間光伝送装置は、図1に示す空間光伝送装置100の偏心光学系1に代えて偏心光学系202(図12参照)を備える。
偏心光学系202は、偏心光学系1から光路分割素子5、反射光学素子7を削除するとともに、偏心光学系1の分岐光学素子4に代えて、分岐光学素子30(第2の光学素子)を備え、それらに合わせて偏心光学系1の反射光学素子3、反射光学素子7に代えて、略同様の構成で光学パラメータが異なる反射光学素子29(第1の光学素子)を備える。また、位置検出器16Aに代えて位置検出器31を備える。このような構成により、粗追尾と広追尾とを位置検出器31で兼用することができるものである。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
反射光学素子29は、第1の実施形態の反射光学素子3と略同様な構成を有し、設計上の光学パラメータが異なるのみなので説明は省略する。
【0073】
分岐光学素子30は、第1の実施形態の分岐光学素子4の凸面4A、透過面4Bに代えて、それぞれハーフミラー面30A(第1の部分反射面)、透過平面30Bを備える光学素子である。
ハーフミラー面30Aは、例えば、反射率が90%、透過率が10%となるようなのコーティングとする。
そして、曲面形状は、反射面29aで集光された光束を少なくとも精追尾動作を行う入射画角ωの範囲、例えば0°≦|ω|≦0.05°、に対しては反射光が略平行光束となるような負のパワーを有し、透過する光束に対しては、透過平面30Bを透過後に結像面17に結像する正のパワーを有するレンズを構成できる形状となっている。
すなわち、反射光学素子29、ハーフミラー面30Aは、ハーフミラー面30Aで反射される光束に関して、中間像を形成しないタイプの実質的なアフォーカル光学系を構成している。
【0074】
そして、図13、14に示すように、ハーフミラー面30Aと光路分割素子9との間に偏向ミラー8が配置され、偏向角可変に偏向できるようになっている。
偏向ミラー8で偏向された光束は、光路分割素子9に入射し、透過光が入射光52となってカップリングレンズ10を経てファイバ受光面11aに入射するようになっている。また、図14に示すように、光路分割素子9で反射して分岐される光束が集光レンズ14に入射して集光され分岐光55cとして4分割受光器15に入射するようになっている。
【0075】
ハーフミラー面30Aを透過する光束の光路では、結像面17に位置検出器31が配置される。位置検出器31に入射する光束は、入射画角ωの範囲は、0°≦|ω|≦4°の範囲とされている。したがって、位置検出器31の検出出力は、上記第1〜第3の実施形態の粗追尾および広追尾に相当する追尾動作が行える角度範囲となっている。
【0076】
本実施形態によれば、反射面29aで反射され、ハーフミラー面30Aで反射された光束により、少なくとも入射画角ωが、例えば、0°≦|ω|≦0.01°の範囲で精追尾できる。
また、粗追尾および広追尾は、反射面29aにより反射されハーフミラー面30Aを透過する光束により行う。この場合、粗追尾と広追尾とを共通の光検出器で行えるため、部品点数が削減されるという利点がある。また、粗追尾と広追尾との制御動作も共通となるので、入射方向検出手段40の制御や演算が簡素化されるため、その構成が容易となるという利点がある。
このように本実施形態では、入射画角ωが、例えば、1°≦|ω|≦4°の範囲で粗追尾と広追尾とを連続的に行うことができるものである。
【0077】
本実施形態では、通信光光源35から通信光53を送光する場合、精追尾された状態でも、ハーフミラー面30Aに入射する光束のうち約10%が透過する。
しかしながら、本実施形態の実質的なアフォーカル光学系は、それぞれの反射面が光軸に対して偏心または傾いて配置されて略Z字状の光路を形成しているので、ハーフミラー面30Aにおいて、受光面31aに向けて透過する入射光束51と通信光53の透過光とは、十分大きな角度で交差するから、通信光53の透過光は、受光面31aに向かう光束に対して十分傾斜しつつ透過平面30Bを透過する。そのため、受光面31aの有効範囲に入射しない構成となっている。
したがって、送光のため高出力に調整された通信光53を偏心光学系202に入射しても、通信光53が受光面31aに到達して粗追尾および広追尾のエラーが発生せず、安定した追尾動作を行うことができるという利点がある。
このため、送受光および追尾動作を行う際、送光光の光検出器への入射を防止するために、例えば、時分割制御したり、偏光等の技術を用いることなく、簡素な構成により送受光および追尾動作を行うことができる。
【0078】
なお、上記の第1〜第3の実施形態の説明では、第1の部分反射面の反射部の形状により粗追尾を行う入射画角の範囲が決まるものとして説明したが、精追尾、粗追尾、広追尾を分ける入射画角の範囲は一定のものではなく、必要に応じて変更することができる。
良好な追尾を行うためには、精追尾、粗追尾、広追尾の移行が円滑に行えることが重要となる。そのためには、例えば、それぞれの追尾の境界において追尾光のスポット形状や受光状態が急変しないような構成としてもよい。
そのために、例えば第1の部分反射面の反射部と透過部との境界の曲率や反射率を滑らかに変化させるようにしてもよい。
また、第1の部分反射面の反射部を粗追尾の検知範囲を超えて延長してもよい。
また、第1の部分反射面の反射部の領域内や、精追尾に用いる反射部と粗追尾の用いる反射部との間の領域などで反射率などを可変したり、徐変したりしてもよい。
【0079】
また、上記の第4の実施形態の説明では、第1の部分反射面がハーフミラー面である例で説明したが、広追尾、粗追尾、精追尾に用いる追尾光の光量をそれぞれ可変できるようにハーフミラー面の反射率を可変してもよい。例えば、光束が光ファイバ11に入射しない広追尾領域では、光量が低下しやすいビーコン光を効率よく受光するために透過率を高めて追尾光を高出力とし、通信が行われる精追尾領域では、反射率を高めて通信光を高出力とする、などというように可変してもよい。
【0080】
また、上記の説明では、通信光の受光手段が光ファイバである例で説明したが、例えば、光検出器などの受光手段であってもよい。
【0081】
また、上記の説明では、第2の光学素子が反射光学素子やレンズ素子などの場合で説明したが、実質的なアフォーカル光学系と、少なくとも広追尾を行うための分岐光学系を構成できれば、その他の構成を採用してもよい。例えば、フレネルレンズ、DOE(回折光学素子)、HOE(ホログラム素子)などであってもよい。
また、上記の説明では、第1の光学素子が反射光学素子の場合で説明したが、光軸に対して偏心または傾いて配置され、入射、出射光路上に光路の妨げとなる他の光学素子を配置することなく実質的なアフォーカル光学系を構成できれば、透過光学素子を用いてもよい。また光学素子のタイプは、フレネルレンズ、DOE(回折光学素子)、HOE(ホログラム素子)などであってもよい。
【0082】
また、上記の説明では、送光するビーコン光と通信光とが別々の場合で説明したが、ビーコン光と通信光とを同軸に出射したり、通信光でビーコン光を兼用したりする構成を採用してもよい。
【0083】
また、上記の第4の実施形態の説明で、第1の部分反射面に送光される通信光が透過する場合でも、光検出器に入射しないレイアウトが可能であると説明したが、このことは、第1〜第3の実施形態における第1の部分反射面の反射部が送信される通信光を100%反射しない構成である場合にも同様に当てはまり、同様な効果を奏するものである。
【0084】
また、上記に説明した技術的思想や技術要素は、技術的に可能な範囲で適宜に組み合わせた実施形態をとることができる。
【実施例1】
【0085】
次に、上記に説明した第1の実施形態の空間光伝送装置の偏心光学系の第1数値実施例を示す。図3〜6は、本実施例の光路を示している。光路1、2、3は、それぞれ図3(5)、4、6に示す光路に対応する。
下記に第1数値実施例の光学系の構成パラメータを示す。図3〜6に表記されたr、d、n(iは整数)は、下記に示す光学系の構成パラメータの曲率半径、面間隔d、屈折率nに対応する。また屈折率については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記している(各実施例共通)。
【0086】
(光路1)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
4 FFS[2] d4 = 0.00 偏心[2]
5 ∞ d5 = 0.00 偏心[3]
6 FFS[3] d6 = 0.00 偏心[4]
7 ∞ d7 = 0.00 偏心[5]
8 ∞ d8 = 0.00 偏心[6]
9 5.36 d9 = 1.39 n1 = 1.6700 ν1 = 47.2
10 ∞ d10= 7.17
像 面 ∞ d11= 0.00

FFS[1]
4 -3.7206x10-36 -3.1817x10-38 9.6762x10-6
10 8.6162x10-611 -4.9297x10-913 -3.9445x10-8
15 -3.8896x10-8
FFS[2]
4 -9.2260x10-36 -6.8245x10-38 1.3719x10-4
10 1.1543x10-411 1.7658x10-613 -6.7535x10-8
15 -2.1936x10-6
FFS[3]
4 -2.3942x10-26 -2.1073x10-28 -2.9866x10-4
10 -2.1191x10-411 1.0448x10-413 1.0442x10-4
15 -3.7073x10-617 -5.3318x10-5
偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 40.00
α 21.02 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y -34.28 Z 1.98
α 16.36 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y -40.58 Z 40.34
α -0.68 β -45.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y -47.00 Z 79.45
α 10.67 β 0.00 γ 0.00
偏心[5]
X 0.00 Y -55.80 Z 64.61
α 15.33 β 0.00 γ 0.00
偏心[6]
X 0.00 Y -55.80 Z 77.70
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
【0087】
(光路2)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
4 FFS[2] d4 = 0.00 偏心[2]
5 ∞ d5 = 0.00 偏心[3]
12 ∞ d12= 0.00 偏心[7]
像 面 ∞ d13= 0.00

偏心[7]
X -29.91 Y -44.87 Z 40.29
α 0.00 β -90.00 γ 0.00
【0088】
(光路3)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
14 FFS[2] d14= 0.00 偏心[2] n2 = 1.5163 ν2 = 64.1
15 100.0 d15= 0.00 偏心[8]
16 ∞ d16= 0.00 偏心[9]
像 面 ∞ d17= 0.00

偏心[8]
X 0.00 Y -42.00 Z - 3.00
α 25.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[9]
X 0.00 Y -46.73 Z -14.90
α 44.00 β 0.00 γ 0.00
【実施例2】
【0089】
次に、上記に説明した第2の実施形態の空間光伝送装置の偏心光学系に対応する第2数値実施例を示す。図8、4、9は本実施例の光路を示している。光路1、2、3は、それぞれ図8、4、9に示す光路に対応する。
下記に第2数値実施例の光学系の構成パラメータを示す。図8、4、9に表記されたr、d、n(iは整数)は、下記に示す光学系の構成パラメータの曲率半径、面間隔d、屈折率nに対応する。座標系その他は実施例1と同様である。
【0090】
(光路1)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
4 FFS[2] d4 = 0.00 偏心[2]
5 ∞ d5 = 0.00 偏心[3]
6 FFS[3] d6 = 0.00 偏心[4]
7 ∞ d7 = 0.00 偏心[5]
8 ∞ d8 = 0.00 偏心[6]
9 5.36 d9 = 1.39 n1 = 1.6700 ν1 = 47.2
10 ∞ d10= 7.17
像 面 ∞ d11= 0.00

FFS[1]
4 -3.7206x10-36 -3.1817x10-38 9.6762x10-6
10 8.6162x10-611 -4.9297x10-913 -3.9445x10-8
15 -3.8896x10-8
FFS[2]
4 -9.2260x10-36 -6.8245x10-3
FFS[3]
4 -2.3942x10-26 -2.1073x10-28 -2.9866x10-4
10 -2.1191x10-411 1.0448x10-413 1.0442x10-4
15 -3.7073x10-617 -5.3318x10-5
偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 40.00
α 21.02 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y -34.28 Z 1.98
α 16.36 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y -40.58 Z 40.34
α -0.68 β -45.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y -47.00 Z 79.45
α 10.67 β 0.00 γ 0.00
偏心[5]
X 0.00 Y -55.80 Z 64.61
α 15.33 β 0.00 γ 0.00
偏心[6]
X 0.00 Y -55.80 Z 77.70
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
【0091】
(光路2)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
4 FFS[2] d4 = 0.00 偏心[2]
5 ∞ d5 = 0.00 偏心[3]
12 ∞ d12= 0.00 偏心[8]
像 面 ∞ d13= 0.00

偏心[8]
X -29.91 Y -44.87 Z 40.29
α 0.00 β -90.00 γ 0.00
【0092】
(光路3)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
14 FFS[2] d14= 0.00 偏心[2] n2 = 1.5163 ν2 = 64.1
15 ∞ d15= 0.00 偏心[9] n2 = 1.5163 ν2 = 64.1
16 FFS[2] d16= 0.00 偏心[2] n2 = 1.5163 ν2 = 64.1
17 ∞ d17= 0.00 偏心[9]
18 ∞ d18= 0.00 偏心[10]
像 面 ∞ d19= 0.00

偏心[9]
X 0.00 Y -45.00 Z 0.00
α 20.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[10]
X 0.00 Y -45.00 Z -10.00
α 25.00 β 0.00 γ 0.00
【実施例3】
【0093】
次に、上記に説明した第3の実施形態の空間光伝送装置の偏心光学系に対応する第3数値実施例を示す。図10、4、11は、本実施例の光路を示している。光路1、2、3は、それぞれ図10、4、11に示す光路に対応する。
下記に第3数値実施例の光学系の構成パラメータを示す。図10、4、11に表記されたr、d、n(iは整数)は、下記に示す光学系の構成パラメータの曲率半径、面間隔d、屈折率nに対応する。座標系その他は実施例1と同様である。
【0094】
(光路1)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
4 FFS[2] d4 = 0.00 偏心[2]
5 FFS[3] d5 = 0.00 偏心[3]
6 ∞ d6 = 0.00 偏心[4]
7 ∞ d7 =13.71 偏心[5]
8 5.36 d8 = 1.39 n1 = 1.6700 ν1 = 47.2
9 ∞ d9 = 7.17
像 面 ∞ d10= 0.00

FFS[1]
4 -3.4695x10-36 -3.0627x10-38 7.0058x10-6
10 6.4008x10-611 -4.5924x10-813 -6.9392x10-8
15 -2.9317x10-8
FFS[2]
4 -1.2961x10-26 -1.0243x10-28 1.5540x10-4
10 1.2949x10-411 -8.3760x10-613 -2.0022x10-5
15 -5.3816x10-6
FFS[3]
4 -2.4525x10-26 -1.6367x10-28 -3.4732x10-3
10 -1.6409x10-411 8.3339x10-313 -3.7336x10-3
15 -4.3095x10-417 4.0623x10-3
偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 40.00
α 19.04 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y -36.88 Z -7.27
α 15.82 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y -47.00 Z 77.48
α 27.87 β 0.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y -65.13 Z 68.00
α 30.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[5]
X 0.00 Y -65.21 Z 70.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
【0095】
(光路2)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
4 FFS[2] d4 = 0.00 偏心[2]
11 ∞ d11= 0.00 偏心[6]
12 ∞ d12= 0.00 偏心[7]
像 面 ∞ d13= 0.00

偏心[6]
X 0.00 Y -43.31 Z 34.3
α -13.83 β -45.00 γ 0.00
偏心[7]
X -23.32 Y -38.30 Z 35.53
α 0.00 β -90.00 γ 0.00
【0096】
(光路3)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
14 FFS[2] d14= 0.00 偏心[2] n2 = 1.5163 ν2 = 64.1
15 ∞ d15= 0.00 偏心[8]
16 ∞ d16= 0.00 偏心[9]
像 面 ∞ d17= 0.00

偏心[8]
X 0.00 Y -39.24 Z -11.07
α 9.58 β 0.00 γ 0.00
偏心[9]
X -0.00 Y -45.91 Z -18.52
α 22.87 β 0.00 γ 0.00
【実施例4】
【0097】
次に、上記に説明した第4の実施形態の空間光伝送装置の偏心光学系に対応する第4数値実施例を示す。図13、15は本実施例の光路を示している。光路1、2は、それぞれ図13、15に示す光路に対応する。
下記に第4数値実施例の光学系の構成パラメータを示す。図13、15に表記されたr、d、n(iは整数)は、下記に示す光学系の構成パラメータの曲率半径、面間隔d、屈折率nに対応する。座標系その他は実施例1と同様である。
【0098】
(光路1)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 =0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
4 FFS[2] d4 = 0.00 偏心[2]
5 ∞ d5 = 0.00 偏心[3]
6 ∞ d6 =10.00 偏心[4]
7 5.36 d7 = 1.39 n1 = 1.6700 ν1 = 47.2
8 ∞ d8 = 7.17
像 面 ∞ d9 = 0.00

FFS[1]
4 -5.4558x10-36 -4.8560x10-38 1.2757x10-5
10 1.8739x10-511 -8.4074x10-813 -2.1045x10-7
15 -7.4453x10-8
FFS[2]
4 -3.0751x10-26 -2.9836x10-28 -1.1195x10-3
10 1.1096x10-311 -1.0608x10-413 -1.6098x10-4
15 2.0348x10-517 6.1279x10-519 -1.0386x10-4
21 -4.1271x10-5
偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 40.00
α 20.65 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y -26.59 Z 9.73
α 20.61 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y -26.63 Z 40.00
α 45.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y -45.00 Z 40.00
α -90.00 β 0.00 γ 0.00
【0099】
(光路2)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ ∞
1 ∞ d1 = 0.00
2 絞り面 d2 = 0.00
3 FFS[1] d3 = 0.00 偏心[1]
9 FFS[2] d9 = 0.00 偏心[2] n2 = 1.5163 ν2 = 64.1
10 ∞ d10= 0.00 偏心[5]
11 ∞ d11= 0.00 偏心[6]
像 面 ∞ d12= 0.00

偏心[5]
X 0.00 Y -28.27 Z 7.24
α 32.42 β 0.00 γ 0.00
偏心[6]
X 0.00 Y -30.86 Z 3.56
α 30.86 β 0.00 γ 0.00
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空間光伝送装置の概略構成について説明するための光学系の光軸を含む断面における模式断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。
【図3】同じく通信光の光路について説明するための光路図である。
【図4】同じく粗追尾のための光路について説明するための平面視の光路図である。
【図5】同じく精追尾のための光路について説明するための平面視の光路図である。
【図6】同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る空間光伝送装置の第1の部分反射面上における入射画角とスポット径の位置関係について説明するため模式説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。
【図9】同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。
【図11】同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る空間光伝送装置に用いる偏心光学系について説明するための光軸を含む断面の模式光路図である。
【図13】同じく通信光の光路について説明するための光路図である。
【図14】同じく粗追尾のための光路について説明するための平面視の光路図である。
【図15】同じく広追尾のための光路について説明するための光軸を含む断面の光路図である。
【符号の説明】
【0101】
1、200、201、202 偏心光学系
2 開口絞り
3、20、24、29 反射光学素子(第1の光学素子)
3a、20a、24a、29a 反射面
4、21、25、30 分岐光学素子(第2の光学素子)
4A、21A、25A 凸面(第1の部分反射面)
4B 透過面(パワーを有する光学作用面)
4a、21a、21c、25a 反射部
4b、21b、21d 透過部
5、9 光路分割素子
6 中間像
7 反射光学素子(第3の光学素子)
7a、8a 反射面
8 偏向ミラー
10 カップリングレンズ
11 光ファイバ
11a ファイバ受光面
12 通信光
13、15 4分割受光器(光検出器)
13a、15a、16a、31a 受光面
14 集光レンズ
16、31 位置検出器(光検出器)
17 結像面
21B 部分反射面(第2の部分反射面)
25B、30B 透過平面
30A ハーフミラー面(第1の部分透過面)
35 通信光光源
40 入射方向検出手段
44 ジンバルステージ
44d 駆動制御手段
50 軸上主光線(光軸)
51 入射光束(入力光)
100 空間光伝送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平行な光束を入力光とする実質的なアフォーカル光学系を有する空間光伝送装置であって、
前記実質的なアフォーカル光学系が、前記入力光の光路に沿う順に、
前記入力光の光軸から偏心または傾いて配置された正のパワーを有する第1の光学素子と、
前記入力光の光軸から偏心または傾いて配置された負のパワーを有する第1の部分反射面が形成された第2の光学素子とを備える偏心光学系からなり、
前記第1の部分反射面による反射光の光路上に射出瞳が形成されたことを特徴とする空間光伝送装置。
【請求項2】
前記実質的なアフォーカル光学系が、
前記第2の光学素子の反射光の光路上に正のパワーを有する第3の光学素子を備え、
前記第2の光学素子と前記第3の光学素子との間に中間像が形成され、前記第3の光学素子により射出瞳が形成されることを特徴とした請求項1に記載の空間光伝送装置。
【請求項3】
前記第2の光学素子が、前記第1の部分反射面の透過側に、パワーを有する光学作用面を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空間光伝送装置。
【請求項4】
前記第2の光学素子が、前記第1の部分反射面の透過光を前記第1の部分反射面に向けて反射し、前記第1の部分反射面の裏面で少なくとも1回反射した光を透過させる第2の部分反射面を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空間光伝送装置。
【請求項5】
前記入力光のうち、少なくとも前記第1の部分反射面の透過光を検出する光検出器を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空間光伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−173688(P2006−173688A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359231(P2004−359231)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】