説明

突入電流を抑制する抵抗体を備えた電気機器

【課題】突入電流を抑制する抵抗体とその抵抗体をバイパスする電磁リレーを備える電気機器において、待機電力を抑制しつつ、リレー接点の寿命を延ばすことのできる技術を提供する。
【解決手段】電気機器10は、突入電流を抑制する抵抗体106と、その抵抗体106をバイパスする電磁リレー120を備えている。電磁リレー120は、ノーマリオープン型であり、励磁されることによってその接点122を閉じ、抵抗体106の両端を短絡する。電磁リレー120は、電力消費の小さい第1運転状態の開始時に励磁されず、電力消費の大きい第2運転状態の開始時に励磁される。一旦励磁されると、第1運転状態と第2運転状態のいずれかが継続する限り、電磁リレー120は励磁され続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に関する。特に、突入電流を抑制する抵抗体を備えた電気機器に関する。
ここで、電気機器とは、その動作に電気を必要とする機器を広く意味し、電気のみによって動作する機器に限定されるものではない。例えば、都市ガス等の気体燃料を燃焼させるいわゆるガス機器であっても、その動作に電気を必要とするものは、ここでいう電気機器に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、電子機器の突入電流を抑制する回路構造が開示されている。突入電流とは、電源投入時に未充電の平滑回路(コンデンサ)へ流れ込む大電流である。これらの回路構造では、抵抗素子やパワーサーミスタといった抵抗体が、交流電源と平滑回路との間に設けられており、それによって未充電の平滑回路へ流れ込む突入電流が抑制される構成となっている。
【0003】
上記した抵抗体は、電源投入時にのみ必要であり、その後に電気機器が動作する段階では、逆に電力損失を発生させることになる。そこで、抵抗体に対して電磁リレーを並列に設けておき、電磁リレーを励磁してその接点を閉じることによって、抵抗体をバイパスできる構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−274665号公報
【特許文献2】特開2000−92695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源投入後、電磁リレーの接点を閉じておくためには、電磁リレーのコイルに励磁電流を通電し続ける必要がある。従って、電気機器の待機電力が増加するという問題を招いてしまう。この問題に対して、待機状態では電磁リレーを開いておき、電気機器の運転時にのみ電磁リレーを励磁するという手法も考えられる。しかしながら、電気機器の運転/停止に応じて電磁リレーの開閉が頻繁に繰り返されることになり、リレー接点の寿命が早期に尽きるという新たな問題が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、突入電流を抑制する抵抗体とその抵抗体をバイパスする電磁リレーを備える電気機器において、待機電力を抑制しつつ、リレー接点の寿命を延ばすことのできる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって具現化される電気機器は、整流回路と平滑回路と複数の電気的負荷と制御手段を備えている。整流回路は、交流電源からの電力を整流する回路である。平滑回路は、整流回路の出力側に設けられており、整流後の電力を平滑にする回路である。複数の電気的負荷は、例えばセンサ、モータ、電磁弁といったものであり、平滑回路の出力側に設けられ、平滑後の電力によって駆動される。制御回路は、それらの電気的負荷を選択的に動作させることによって、少なくとも第1運転状態と第2運転状態を実現する。
【0008】
電気機器はさらに、突入電流を抑制する抵抗体と、その抵抗体をバイパスする電磁リレーを備えている。抵抗体は、交流電源と平滑回路との間に設けられており、電源投入時に平滑回路へ流れ込む突入電流を抑制する。電磁リレーは、抵抗体に対して並列に設けられている。電磁リレーは、ノーマリオープン型であり、励磁されることによってその接点を閉じ、抵抗体の両端を短絡することができる。
【0009】
上記した電気機器では、第1運転状態において動作する電気的負荷の消費電力よりも、第2運転状態において動作する電気的負荷の消費電力の方が大きくなる。そこで、電磁リレーは、第1運転状態が開始される時に励磁されず、第2運転状態が開始される時に励磁されるように構成されている。即ち、第1運転状態では、電気的負荷による消費電力が小さいので、抵抗体を流れる電流値も小さくなる。この場合、抵抗体による電力損失が比較的に小さいことから、電磁リレーの開閉を行わない。それにより、電磁リレーの開閉回数を削減して、リレー接点の長寿命化を図る。一方、第2運転状態では、電気的負荷による消費電力が大きいので、抵抗体を流れる電流値も大きくなる。この場合、抵抗体による電力損失が比較的に大きいので、電磁リレーを閉じて抵抗体をバイパスし、抵抗体による電力損失を回避する。
【0010】
さらに、電磁リレーは、一旦励磁されると、第1運転状態と第2運転状態のいずれかが継続する限り、励磁され続けるように構成されている。即ち、リレー接点が一旦閉じられた後は、第2運転状態から第1運転状態へ変化しても、そのまま電磁リレーを励磁し続けて、抵抗体による電力損失を回避する。第2運転状態が終了する度にリレー接点を開放する方式と比べて、リレー接点の開閉回数を増加させることなく、抵抗体による電力損失をより多く回避することができる。最終的には、いずれの運転状態も終了され、待機状態となった時点で、電磁リレーの励磁を中止すればよい。それにより、待機電力も削減することができる。
【0011】
上記した電気機器において、第1運転状態と第2運転状態は、電磁リレーを開いた状態で抵抗体に流れる電流値、又はそれに対応する指標に応じて定めることができる。即ち、電気機器の実施し得る複数の運転状態について、電磁リレーを開いた状態で抵抗体に流れる電流値をそれぞれ求める。そして、当該電流値が所定の閾値よりも小さくなる運転状態については第1運転状態とし、当該電流値が前記の閾値よりも大きくなる運転状態については第2運転状態とすることができる。このとき、抵抗体に流れる電流値に代えて、それに対応する他の指標、例えば抵抗体の発熱量や電気的負荷の消費電力といったものを用いてもよい。
【0012】
上記した電気機器の構成は、各種の電気機器に適用することができる。一例として、上記した電気機器は、給湯運転と暖房運転と風呂運転の少なくとも二つを実施可能な機器(いわゆる給湯装置、給湯暖房装置、風呂釜装置など)とすることができる。ここで、給湯運転とは、給湯箇所へ供給する温水を沸かす運転を意味する。暖房運転とは、暖房端末の熱媒体を循環させて加熱する運転を意味する。風呂運転とは、浴槽の温水を循環させて加熱する運転を意味する。この場合、第1運転状態と第2運転状態のそれぞれは、給湯運転と暖房運転と風呂運転の少なくとも一つを実施する状態とすることができる。
【0013】
上記した電気機器では、電気機器の運転状態に応じて、電磁リレーの開閉が行われる。これは、電気機器の運転状態に応じて、抵抗体の電流値がある程度予測できることに立脚している。それに対して、抵抗体の電流値又はそれに対応する指標を実際に測定し、その測定値に応じて電磁リレーの励磁を行うことも有効である。この場合、電気機器が実施する運転状態を判別したり、運転状態毎に電磁リレーの励磁の要否を定めておく必要がない。そして、電磁リレーが一旦励磁された後は、測定値にかかわらず、電気機器の運転が終了するまで、電磁リレーの励磁を継続することが好ましい。この手法によっても、電気機器の待機電力、抵抗体による電力損失、及びリレー接点の寿命を、それぞれ改善することができる。
【0014】
上記した知見に基づき、以下の電気機器を具現化することができる。この電気機器は、交流電源からの電力を整流する整流回路と、整流回路の出力側に設けられており、整流後の電力を平滑にする平滑回路と、平滑回路の出力側に設けられており、平滑後の電力によって駆動される複数の電気的負荷と、複数の電気的負荷を選択的に動作させることによって、少なくとも一つの運転状態を実現する制御手段と、交流電源と平滑回路との間に設けられており、平滑回路への突入電流を抑制する抵抗体と、抵抗体に対して並列に設けられており、励磁されたときに前記抵抗体をバイパスする電磁リレーと、抵抗体に流れる電流値又はそれに対応する指標を検出する検出手段を備えている。そして、電磁リレーは、検出手段による検出値が所定値以上となったときに励磁され、一旦励磁された後は、制御手段による運転状態が継続する限り、励磁され続けることを特徴とする。この電子機器についても、一例ではあるが、給湯運転と暖房運転と風呂運転の少なくとも二つを実施可能な機器とすることできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、突入電流を抑制する抵抗体とその抵抗体をバイパスする電磁リレーを備える電気機器において、待機電力を抑制しつつ、リレー接点の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の給湯暖房装置の機能的な構成を示すブロック図。
【図2】実施例の給湯暖房装置の電気的な構成を示す回路図。
【図3】給湯暖房装置が有する主要な電気的負荷の一覧と、各種の運転時において動作する電気的負荷を示すテーブル。
【図4】給湯暖房装置の運転状態毎に、サーミスタに流れる電流値(計算値)、サーミスタの発熱値(実測値)、及びリレー接点の開閉状態を示すテーブル。ここで、「OFF」は励磁コイルに通電されずリレー接点が開いた状態を示し、「ON」は励磁コイルに通電されてリレー接点が閉じた状態を示す。
【図5】サーミスタに流れるAC電流(A)と、リレー接点の開閉状態(B)と、給湯運転の実施の有無(C)と、暖房運転の実施の有無(D)を示すタイムチャート。
【図6】図2に示す回路図からの変形例であり、サーミスタに流れるAC電流を測定するカレントトランス等が付加されたもの。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するにあたって、整流回路は、半波整流回路でもよいし、全波整流回路でもよい。整流回路は、例えばダイオードブリッジとすることができるが、特に限定されない。
【0018】
本発明を実施するにあたって、平滑回路は、コンデンサ(キャパシタ)とすることができるが、特に限定されない。平滑回路については、リップルを含む整流後の電力を平滑にできるものであって、かつ、電源投入時に突入電流が流れ込むという特性を有するものであれば、その構成は特に限定されない。
【0019】
本発明を実施するにあたって、突入電流を抑制する抵抗体には、一例ではあるが、抵抗素子、サーミスタ(パワーサーミスタ含む)を採用することができる。この場合、サーミスタについては、温度上昇に伴って抵抗値が低下するNTCタイプであることが好ましい。当該サーミスタで電力損失が生じたときに、温度上昇に伴ってその抵抗値が低下することから、さらなる電力損失を抑制することができる。
【0020】
本発明を実施するにあたって、電気機器は、給湯暖房装置とすることができる。この場合、給湯暖房装置は、給湯箇所へ供給する温水を沸かす給湯運転と、暖房端末の熱媒体を循環させて加熱する暖房運転と、浴槽の温水を循環させて加熱する風呂運転を、実施可能であることが好ましい。
【0021】
上記した給湯暖房装置では、一般に、給湯運転と暖房運転と風呂運転の一つを単独で実施するときよりも、給湯運転と暖房運転と風呂運転の少なくとも二つを同時に実施したときの方が、電気的に負荷による消費電力が大きくなり易い。従って、本発明の一実施形態では、前記した第1運転状態が、給湯運転と暖房運転と風呂運転の一つを単独で実施する状態であり、前記した第2運転状態が、給湯運転と暖房運転と風呂運転の少なくとも二つを同時に実施する状態であってもよい。この構成では、例えば給湯運転が単独で行われても、電磁リレーは励磁されない。しかし、例えば給湯運転と暖房運転が同時に行われると、電磁リレーが励磁される。電磁リレーが一旦励磁されると、給湯運転が終了しても、暖房運転を続けていれば、電磁リレーの励磁は継続される。その後、暖房運転も終了して待機状態に戻ると、電磁リレーの励磁が中止される。
【0022】
給湯暖房装置の具体的な構造によっては、給湯運転と暖房運転と風呂運転の間において、消費電力が大きく異なることもあり得る。従って、給湯運転と暖房運転と風呂運転のうち、消費電力が比較的に大きなものについては、単独で実施する場合でも前記した第2運転状態として取り扱い、電磁リレーを励磁する方が好ましいこともある。あるいは、給湯運転と暖房運転と風呂運転のうち、消費電力の比較的に小さな二つについては、同時に実施する場合でも前記した第1運転状態として取り扱い、電磁リレーを非励磁とする方が好ましいこともある。これらのことは、給湯暖房装置に限られず、様々な電気機器の様々な運転についても同様に当てはまる。
【0023】
一般に、給湯運転は、暖房運転や風呂運転と比較して、消費する電力が比較的に少ない一方で、繰り返し実施される頻度が非常に高いという特徴を持つ。そのことから、給湯運転を単独で実施する状態については、前記した第1運転状態とすることができる。この構成によると、電磁リレーの開閉する回数を大幅に削減し、リレー接点の寿命を有意に延ばすことができる。このとき、抵抗体による電力損失も、比較的に少なく維持することができる。
【0024】
上記した給湯暖房装置は、気体燃料又は液体燃料を燃焼して温水又は熱媒体を加熱するガス熱源器を備えることが好ましい。この場合、ガス熱源器に設けられた送風ファン、温水ポンプ、電磁弁、温度センサ、流量センサ等が、前記した複数の電気的負荷に相当する。これらの電気的負荷の一部又は全部が選択的に動作することによって、給湯運転、暖房運転、風呂運転といった各種の運転が、単独で又は同時に実施される。
【実施例】
【0025】
図面を参照しながら、実施例の給湯暖房装置10について説明する。給湯暖房装置10は、その動作に電気を必要とする電気機器の一例である。図1に示すように、給湯暖房装置10は、主に、給湯暖房ユニット20と、暖房端末30と、リモコン50を備えている。給湯暖房ユニット20には、上水を供給する給水管12と、温水を出湯する給湯管14が接続されている。
【0026】
給湯暖房ユニット20は、都市ガス等の気体燃料を燃焼させるガス熱源器であり、給水管12を通じて供給される上水を加熱することができる。加熱後の温水は、給湯管14を通じてカラン等の給湯箇所へ供給される。あるいは、加熱後の温水は、風呂戻り管44を通じて、浴槽40に供給される。即ち、浴槽40も給湯箇所の一つである。このように、給湯暖房装置10は、給湯箇所へ供給する温水を沸かす「給湯運転」を実施することができる。
【0027】
給湯暖房ユニット20は、暖房端末30の熱媒体を循環させて加熱するガス熱源器でもある。暖房端末30には、一例ではあるが、床暖房、パネルヒータ、浴室暖房乾燥機等が含まれる。また、暖房端末30の熱媒体は、一例ではあるが、温水や不凍液である。給湯暖房ユニット20は、暖房送り管32と暖房戻り管34を介して、暖房端末30に接続されている。暖房端末30の熱媒体は、暖房送り管32を通じて、給湯暖房ユニット20へ送られる。熱媒体は給湯暖房ユニット20において加熱され、暖房戻り管34を通じて暖房端末30に戻される。この熱媒体の循環は、給湯暖房ユニット20の暖房ポンプ(図示省略)によって行われる。このように、給湯暖房装置10は、暖房端末30の熱媒体を循環させて加熱する「暖房運転」を実施することができる。本実施例では、一つの暖房端末30のみが図示されているが、給湯暖房ユニット20には、床暖房、パネルヒータ、浴室暖房乾燥機といった複数の暖房端末30を、複数の系統に分けて接続することもできる。
【0028】
給湯暖房ユニット20は、浴槽40の温水を循環させて加熱(追い炊き)するガス熱源器でもある。給湯暖房ユニット20は、風呂送り管42と風呂戻り管44を介して、浴槽40に接続されている。浴槽40の温水は、風呂送り管42を通じて給湯暖房ユニット20へ送られ、給湯暖房ユニット20において加熱された後に、風呂戻り管44を通じて浴槽40に戻される。温水の循環は、給湯暖房ユニット20の風呂ポンプ(図示省略)によって行われる。このように、給湯暖房装置10は、浴槽40の温水を循環させて加熱する「風呂運転」を実施することができる。なお、給湯暖房装置10において、風呂運転で温水を加熱する経路は、衛生面を考慮して、給湯運転で温水を加熱する経路から独立して設けられている。
【0029】
次に、図2を参照して、給湯暖房装置10の回路構造について説明する。図2に示すように、給湯暖房装置10は、外部の交流電源(商用電源)100によって動作する。図2に示すように、給湯暖房装置10は、漏電ブレーカ102、フィルタ104、整流回路108、平滑コンデンサ110を備えている。漏電ブレーカ102は、過電流を検知したときに開放する遮断器である。フィルタ104は、サージ電圧といったノイズを除去するための回路であり、チョークコイルやコンデンサによって構成されている。整流回路108は、交流電源100からの電力を整流する回路である。本実施例の整流回路108は、全波整流回路であり、具体的にはダイオードブリッジである。平滑コンデンサ110は、整流回路108の出力側に設けられており、整流回路108による整流後の電力を平滑にする回路である。
【0030】
給湯暖房装置10は、前記した各種の運転を実施するために、コントローラ114と複数の負荷116を備えている。図3に示すように、複数の負荷116は、例えばセンサ、モータ、電磁弁といった電気的なものである。複数の負荷116は、スイッチング電源112を介して、平滑コンデンサ110の出力側に設けられており、平滑コンデンサ110による平滑後の電力によって駆動される。コントローラ114は、複数の負荷116を選択的に動作させることによって、前記した給湯運転、暖房運転、風呂運転を単独又は同時に実施する運転状態を実現する制御手段である。図3に示すように、実施する運転に応じて、作動する負荷116は様々に変化する。コントローラ114もまた、スイッチング電源112を介して、平滑コンデンサ110の出力側に設けられている。
【0031】
給湯暖房装置10が交流電源100に接続され、給湯暖房装置10に電源が投入されると、整流及び平滑後の電力が、スイッチング電源112を介してコントローラ114へ供給される。コントローラ114は、コンピュータを用いて構成されており、電力供給を受けて起動する。即ち、給湯暖房装置10は待機状態となる。その後、ユーザがカランを開くと、給湯暖房装置10は給湯運転を実施する。コントローラ114は、給湯運転に必要な負荷116を選択的に動作させる(図3参照)。あるいは、ユーザによるリモコン50への操作を受けて、給湯暖房装置10は暖房運転や風呂運転を実施する。このときも、コントローラ114は必要な負荷116を選択的に動作させる(図3参照)。
【0032】
ここで、上記した電源投入時、平滑コンデンサ110に突入電流が流れ込む。そのため、交流電源100と平滑コンデンサ110との間には、突入電流を抑制するパワーサーミスタ106が設けられている。また、電源投入後のパワーサーミスタ106による電力損失を回避するために、電磁リレー120がパワーサーミスタ106に対して並列に設けられている。電磁リレー120は、リレー接点122と励磁コイル124を有している。電磁リレー120は、ノーマリオープン型の有接点リレーであり、励磁コイル124に通電されている間、リレー接点122が閉じるように構成されている。励磁コイル124は、半導体スイッチ126を介して、スイッチング電源112に接続されている。半導体スイッチ126は、コントローラ114によってターンオン/オフされる。即ち、励磁コイル124への励磁/非励磁、即ち、リレー接点122の開閉は、コントローラ114によって制御される。
【0033】
電源投入後は、電磁リレー120を閉じておけば、パワーサーミスタ106をバイパスすることができ、パワーサーミスタ106による電力損失を抑制することができる。しかしながら、この場合は励磁コイル124へ電流を通電し続けることになるので、給湯暖房装置10の待機電力を増大させてしまう。この問題に対して、待機状態では電磁リレー120を開いておき、給湯暖房装置10の各種の運転時に合わせて電磁リレー120を励磁することも考えられる。しかしながら、このような手法では、給湯暖房装置10の運転/停止に応じて電磁リレー120の開閉が頻繁に繰り返されることになり、リレー接点122の寿命が早期に尽きるという新たな問題が生じてしまう。
【0034】
そのことから、本実施例の給湯暖房装置10では、運転状態に応じて電磁リレー120の開閉が選択的に実行される。即ち、一部の運転状態では電磁リレー120を開閉するが、一部の運転状態では電磁リレー120の開閉を行わない。図4に、その関係を示す。図4に示すように、パワーサーミスタ106に流れる電流値及び発熱量は、給湯暖房装置10の運転状態に応じて変化する(電磁リレー120は開いた状態である)。このことは、パワーサーミスタ106による電力損失についても、運転状態に応じて変化することを意味する。従って、本実施例では、パワーサーミスタ106に流れる電流値について閾値を定め、パワーサーミスタ106に流れる電流値が当該閾値よりも小さくなる運転状態では、電磁リレー120を励磁せず、リレー接点122を開いたままとする(図中ではOFF)。即ち、パワーサーミスタ106による電力損失が比較的に小さい運転状態に対しては、電磁リレー120の開閉を行わないこととして、リレー接点122への負担の軽減を図る。一例ではあるが、上記した閾値電流は、2アンペアに定められている。従って、給湯運転又は暖房運転を単独で実施する場合に、電磁リレー120は励磁されず、リレー接点122は開いたままに維持される。
【0035】
一方、給湯暖房装置10の実施し得る運転状態のうち、パワーサーミスタ106に流れる電流値が前記した閾値よりも大きくなるものについては、その開始時に電磁リレー120を励磁して、リレー接点122を閉じるように構成されている(図中ではON)。本実施例では、一例であるが、給湯運転と暖房運転と風呂運転の少なくとも二つを同時に実施する状態、及び、風呂運転が単独で実施される状態において、パワーサーミスタ106に流れる電流値が閾値電流(2アンペア)よりも大きくなる。このような運転状態では、パワーサーミスタ106における電力損失が比較的に大きい。従って、電磁リレー120のリレー接点122を閉じ、パワーサーミスタ106をバイパスすることによって、パワーサーミスタ106による電力損失を回避する。これは、電磁リレー120の開閉に伴うコストよりも、パワーサーミスタ106による電力損失の方が、十分に大きいという判断に基づく。ここで、電磁リレー120の開閉に伴うコストとは、励磁コイル124への通電電力だけでなく、開閉に伴って余命が減っていく電磁リレー120の部品コストなども考慮したものである。
【0036】
コントローラ114は、電磁リレー120を一旦励磁すると、給湯運転と暖房運転と風呂運転のいずれかを実施している限り、電磁リレー120を励磁し続けるように構成されている。例えば、暖房運転中に給湯運転がさらに実施されたとする。このとき、コントローラ114は電磁リレー120を励磁し、パワーサーミスタ106をバイパスする。その後、給湯運転が終了し、暖房運転が再び単独で実施されるとする。この場合、本実施例のコントローラ114は、電磁リレー120を励磁し続けて、パワーサーミスタ106をバイパスし続ける。この方式によると、給湯運転が終了した時点(即ち、同時運転が終了した時点)で電磁リレー120を開放する場合と比較して、電磁リレー120の開閉回数を増やすことなく、パワーサーミスタ106による電力損失をより多く回避することができる。
【0037】
図5のタイムチャートを参照しながら、給湯暖房装置10の動作例について説明する。図5中の時刻T1は、給湯暖房装置10が交流電源100に接続され、給湯暖房装置10に電源が投入された時点を示す。このとき、リレー接点122は開いており、平滑コンデンサ110への突入電流がパワーサーミスタ106によって抑制される。その後、時刻T2、T3において、給湯運転が行われたとする。また、時刻T4において暖房運転が開始されたとする。先に説明したとおり、給湯運転や暖房運転が単独で実施されても、リレー接点122は閉じられない。
【0038】
しかしながら、暖房運転中の時刻T5において、給湯運転がさらに行われたとする。この場合、給湯運転と暖房運転の同時運転に伴って、リレー接点122が閉じられる。電磁リレー120が一旦閉じられると、給湯運転の有無にかかわらず、暖房運転が終了する時刻T7まで、電磁リレー120は閉じたままに維持される。従って、暖房運転中に給湯運転が繰り返されるときでも(時刻T5、T6)、電磁リレー120が繰り返し開閉されることはない。その後、時刻T8において給湯運転が再び単独で実施されても、電磁リレー120は閉じられない。なお、図5では図示されないが、風呂運転が実施されたときは、それが単独運転であっても電磁リレー120は閉じられる。その後は、全ての運転が終了した時点で、電磁リレー120が開かれる。
【0039】
本実施例の給湯暖房装置10では、運転状態に応じて電磁リレー120の開閉を選択的に行うので、電磁リレー120の開閉する回数を有意に減少させることができる。特に、給湯運転については、暖房運転や風呂運転と比較して、消費する電力が比較的に少ない一方で、繰り返し実施される頻度は非常に高いという特徴がある。従って、そのような給湯運転に対しては、電磁リレー120の開閉を行わないことが好ましく、それによってリレー接点122の寿命を大きく延ばすことができる。ただし、図4に示す運転状態とリレー接点122を開閉する関係は、一例であり、特に限定されない。各運転状態における負荷116の予定消費電力(即ち、パワーサーミスタ106に流れ得る電流値)を考慮して、リレー接点122の開閉を適宜定めればよい。このとき、各運転状態の頻度を合わせて考慮することも有効である。その結果、給湯暖房装置10の待機電力、パワーサーミスタ106による電力損失、及びリレー接点122の寿命を、それぞれ改善することができる。
【0040】
本実施例では、給湯暖房装置10の実施し得る複数の運転状態について、パワーサーミスタ106に流れる電流値をそれぞれ求める。これは計算値でも実測値でもよい。そして、当該電流値が閾値電流よりも小さくなる運転状態については、電磁リレー120を励磁しない運転状態(第1運転状態)とし、当該電流値が閾値電流よりも大きくなる運転状態については、電磁リレー120を励磁する運転状態(第2運転状態)としている。このような区別は、パワーサーミスタ106に流れる電流値に限られず、それに対応する他の指標を用いて行うこともできる。例えば、負荷116による消費電力は、パワーサーミスタ106に流れる電流値に対応する指標の一つである。従って、各々の運転状態について負荷116の消費電力をそれぞれ求め、当該消費電力が所定の閾値電力よりも小さくなるものについては、電磁リレー120を励磁しない運転状態(第1運転状態)とし、当該消費電力が閾値電力よりも大きくなるものについては、電磁リレー120を励磁する運転状態(第2運転状態)とすることもできる。
【0041】
あるいは、図4に示すように、パワーサーミスタ106の発熱量(温度上昇幅)についても、パワーサーミスタ106に流れる電流値に対応する指標の一つである。そのことから、各々の運転状態についてパワーサーミスタ106の発熱量をそれぞれ求め、当該発熱量が所定の閾値発熱量よりも小さくなるものについては、電磁リレー120を励磁しない運転状態(第1運転状態)とし、当該発熱量が閾値発熱量よりも大きくなるものについては、電磁リレー120を励磁する運転状態(第2運転状態)とすることもできる。
【0042】
上記に対して、パワーサーミスタ106の電流値又はそれに対応する指標を実際に測定しながら、その測定値に応じて電磁リレー120の開閉を行うことも有効である。図6に、その場合の回路構成の一例を示す。図6に示すように、パワーサーミスタ106の電流値は、カレントトランス130及びセンサアンプ132によって測定することができる。センサアンプ132の出力信号は、コントローラ114へ入力される。それにより、コントローラ114は、パワーサーミスタ106の電流値に応じて、電磁リレー120を制御することができる。一例であるが、コントローラ114は、パワーサーミスタ106の電流値が2アンペア以上となった時に、電磁リレー120を励磁するようにプログラムされている。この場合、結果的に、図4に示す関係と同じく、運転状態に応じて電磁リレー120の励磁が行われる。そして、電磁リレー120が一旦励磁された後は、センサアンプ132から入力される測定値にかかわらず、給湯運転、暖房運転、風呂運転の全てが終了するまで、電磁リレー120の励磁を継続することが好ましい。それにより、給湯暖房装置10の待機電力、パワーサーミスタ106による電力損失、及びリレー接点122の寿命を、それぞれ改善することができる。ここで、前記した2アンペアという閾値は、装置の構成等に応じて適宜変更することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0044】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
10:給湯暖房装置
12:給水管
14:給湯管
20:給湯暖房ユニット
30:暖房端末
32:暖房送り管
34:暖房戻り管
40:浴槽
42:風呂送り管
44:風呂戻り管
50:リモコン
100:交流電源
102:漏電ブレーカ
104:フィルタ
106:パワーサーミスタ
108:整流回路
110:平滑コンデンサ
112:スイッチング電源
114:コントローラ
116:負荷
120:電磁リレー
122:リレー接点
124:励磁コイル
126:半導体スイッチ
130:カレントトランス
132:センサアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの電力を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力側に設けられており、整流後の電力を平滑にする平滑回路と、
前記平滑回路の出力側に設けられており、平滑後の電力によって駆動される複数の電気的負荷と、
前記複数の電気的負荷を選択的に動作させることによって、少なくとも第1運転状態と第2運転状態を実現する制御手段と
前記交流電源と前記平滑回路との間に設けられており、前記平滑回路への突入電流を抑制する抵抗体と、
前記抵抗体に対して並列に設けられており、励磁されたときに前記抵抗体をバイパスする電磁リレーを備え、
前記第1運転状態において動作する電気的負荷の消費電力よりも、前記第2運転状態において動作する電気的負荷の消費電力の方が大きく、
前記電磁リレーは、第1運転状態が開始される時に励磁されず、第2運転状態が開始される時に励磁され、一旦励磁された後は、第1運転状態と第2運転状態のいずれかが継続する限り、励磁され続けることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記第1運転状態は、前記電磁リレーを開いた状態で前記抵抗体に流れる電流値又はそれに対応する指標が、所定の閾値よりも小さくなる運転状態であり、
前記第2運転状態は、前記電磁リレーを開いた状態で前記抵抗体に流れる電流値又はそれに対応する指標が、前記の閾値よりも大きくなる運転状態であることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記電気機器は、給湯箇所へ供給する温水を沸かす給湯運転と、暖房端末の熱媒体を循環させて加熱する暖房運転と、浴槽の温水を循環させて加熱する風呂運転の、少なくとも二つを実施可能な機器であって、
前記第1運転状態と前記第2運転状態のそれぞれは、給湯運転と暖房運転と風呂運転の少なくとも一つを実施する状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機器。
【請求項4】
交流電源からの電力を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力側に設けられており、整流後の電力を平滑にする平滑回路と、
前記平滑回路の出力側に設けられており、平滑後の電力によって駆動される複数の電気的負荷と、
前記複数の電気的負荷を選択的に動作させることによって、少なくとも一つの運転状態を実現する制御手段と、
前記交流電源と前記平滑回路との間に設けられており、前記平滑回路への突入電流を抑制する抵抗体と、
前記抵抗体に対して並列に設けられており、励磁されたときに前記抵抗体をバイパスする電磁リレーと、
前記抵抗体に流れる電流値又はそれに対応する指標を測定する測定手段を備え、
前記電磁リレーは、前記測定手段による測定値が所定値以上となったときに励磁され、一旦励磁された後は、前記制御手段による運転状態が継続する限り、励磁され続けることを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−217306(P2012−217306A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82201(P2011−82201)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】