説明

突起部の形成装置、突起部の形成方法、溶接部材、レーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法

【課題】表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材をレーザ溶接するときに突起部によって溶接部材同士の間に隙間部を生じさせることによって、表面処理層が気化して発生した蒸気によって溶接欠陥が生じることを防止し、さらにレーザ溶接に要するコストを低減するとともに溶接作業の作業効率の低下を防止するレーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法を提供する。
【解決手段】レーザ溶接装置500は、溶接部材300上に陥凹部341を形成する打ち込み部材520を、溶接面340と直交する基準線Oに対して傾斜させて打ち込むことによって溶接部材上の打点位置345に陥凹部を形成し、その陥凹部に連続させて突起部342をなす溶接部材の盛り上り部343を形成し、突起部によって重ね合わせた溶接部材同士の間に隙間部350を生じさせてレーザを照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起部の形成装置、突起部の形成方法、溶接部材、レーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛めっき等による表面処理層を形成した鋼板を重ね合わせてレーザ溶接するレーザ溶接方法が知られている。この種のレーザ溶接方法にあっては、レーザ照射によって表面処理層が気化し、重ね合わせた鋼板間に蒸気が発生する場合がある。蒸気の発生に伴って溶接部材が飛散する、いわゆるポロシティ現象が発生し、溶接欠陥が生じるという問題がある。そのため、亜鉛蒸気を外部へ流出させる隙間部を鋼板間に形成することによって、溶接欠陥を防止するレーザ溶接方法を採用している。
【0003】
上記のレーザ溶接方法にあっては、予め鋼板に突起部を形成させておいて、鋼板を重ね合わせることによって隙間部を形成している。一般に、突起部の形成は、突起部を形成する専用のプレス型を用いたプレス加工によって行っている。
【特許文献1】特開2001−162388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したプレス型による突起部の形成方法にあっては、専用のプレス型を製作するため、突起部の形成に要する設備コストがコストアップし、それに伴ってレーザ溶接作業に要するコストもコストアップするという問題が生じる。
【0005】
さらに、突起部を形成する際のプレス加工によって、突起部の形成部位における磨耗や、溶接部材にしわ等の変形が生じ得る。溶接部材の変形等を防止するために、成形精度の維持管理が必要となり、突起部の形成作業、および突起部の形成作業を工程に組み込んだレーザ溶接作業が煩雑化するという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部の形成技術に関し、突起部の形成に要する作業コストを低減するとともに突起部の形成作業の作業効率の低下を防止し得る突起部の形成装置、突起部の形成方法、および溶接部材を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接する際、溶接部材に形成された突起部によって溶接部材同士の間に隙間部を生じさせてレーザ溶接するレーザ溶接技術に関し、表面処理層が気化して発生した蒸気によって溶接欠陥が生じることを防止でき、さらにレーザ溶接に要するコストを低減するとともに溶接作業の作業効率の低下を防止し得るレーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成装置であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材と、
前記少なくとも一方の溶接部材上において前記打ち込み部材が打ち込まれる打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において前記打ち込み部材を保持する保持部材と、
前記打ち込み部材を駆動して溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材へ打ち込む駆動手段と、
前記駆動手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記駆動手段の動作を制御して、前記基準線に対して傾斜させて前記打ち込み部材を前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する、突起部の形成装置である。
【0009】
また、本発明は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成装置であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材と、
前記打ち込み部材を駆動して前記少なくとも一方の溶接部材に打ち込む駆動手段と、
固定型および前記固定型に向けて近接離反移動可能な可動型を備え、少なくとも型の開閉方向に沿って折り曲げられた溶接面を前記少なくとも一方の溶接部材にプレス加工するプレス型と、
前記プレス型に設けられ、前記打ち込み部材を前記溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて保持する保持部と、
前記駆動手段および前記プレス型の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記プレス型を型締めした状態で前記駆動手段の動作を制御して、前記基準線に対して傾斜させて前記打ち込み部材を前記少なくとも一方の溶接部材に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成し、
前記プレス型は、前記突起部が形成される位置より型開き方向の上流側における前記固定型と前記可動型との間に形成され、前記突起部が形成された部位の厚さ寸法より大きな寸法の隙間空間を有する、突起部の形成装置である。
【0010】
また、本発明は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成方法であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上における打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において保持され、前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材を、前記打ち込み部材を駆動する駆動手段を動作させて、溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する、突起部の形成方法である。
【0011】
また、本発明は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成方法であって、
固定型および前記固定型に向けて近接離反移動可能な可動型を備えたプレス型によって、少なくとも型の開閉方向に沿って折り曲げられた溶接面を前記少なくとも一方の溶接部材にプレス加工する工程と、
前記溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記プレス型に設けられた保持部に保持され、前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材を、前記プレス型を型締めした状態で前記打ち込み部材を駆動する駆動手段を動作させて、前記基準線に対して傾斜させて打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する工程と、を有し、
前記型締めしたとき、前記プレス型は、前記突起部が形成される位置より型開き方向の上流側における前記固定型と前記可動型との間に、前記突起部が形成された部位の厚さ寸法より大きな寸法の隙間空間を形成する、突起部の形成方法である。
【0012】
また、本発明は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部が形成された前記少なくとも一方の溶接部材であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上における打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において保持され、前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材が前記打ち込み部材を駆動する駆動手段の動作によって溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記打点位置に打ち込まれることによって、溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りが形成された、溶接部材である。
【0013】
また、本発明は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士の少なくとも一方に形成された突起部によって前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせてレーザ溶接するレーザ溶接装置であって、
前記少なくとも一方の溶接部材を載置する受け部と、
前記受け部に載置された前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材と、
前記少なくとも一方の溶接部材上において前記打ち込み部材が打ち込まれる打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において前記打ち込み部材を保持する保持部材と、
前記受け部に載置された前記少なくとも一方の溶接部材上に他方の溶接部材を重ね合わせた状態で前記重ね合わせた溶接部材をクランプするクランプ手段と、
前記打ち込み部材を駆動して溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材へ打ち込むとともに前記打点位置から前記退避位置に移動させる第1の駆動手段と、
前記クランプ手段を駆動して前記重ね合わせた溶接部材をクランプさせる第2の駆動手段と、
前記溶接部材にレーザを照射するレーザ照射手段と、
前記第1の駆動手段、前記第2の駆動手段、および前記レーザ照射手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記第1の駆動手段の動作を制御して、前記基準線に対して傾斜させて前記打ち込み部材を前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成し、前記打ち込み部材を前記打点位置から前記退避位置に移動させて、前記受け部に載置されるとともに前記突起部が形成された前記少なくとも一方の溶接部材上に前記他方の溶接部材を重ね合わせることによって前記隙間部を生じさせて、前記第2の駆動手段の動作を制御して、前記クランプ手段によって前記重ね合わせた溶接部材をクランプし、前記レーザ照射手段の動作を制御してレーザを照射する、レーザ溶接装置である。
【0014】
また、本発明は、溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士の少なくとも一方に形成された突起部によって前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせてレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上における打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において保持され、受け部に載置された前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材を、前記打ち込み部材を駆動する第1の駆動手段を動作させて、溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する突起部の形成工程と、
前記第1の駆動手段を動作させて、前記打ち込み部材を前記打点位置から前記退避位置に移動して、前記受け部に載置されるとともに前記突起部が形成された前記少なくとも一方の溶接部材上に他方の溶接部材を重ね合わせることによって前記隙間部を生じさせて、クランプ手段を駆動する第2の駆動手段を動作させることによって前記重ね合わせた溶接部材をクランプするクランプ工程と、
レーザ照射手段によって前記重ね合わせた溶接部材に対してレーザを照射する工程と、を有する、レーザ溶接方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材を、溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて打ち込むことによって溶接部材上の打点位置に陥凹部を形成し、その陥凹部に連続させて突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成するため、突起部の形成に要する作業コストを低減することができるとともに、突起部の形成作業の作業効率が低下することを防止できる。
【0016】
また、本発明によれば、上記の手法によって突起部を形成し、表面処理が施された溶接部材同士を重ね合わせてレーザ溶接するときに、突起部によって溶接部材同士の間に隙間部を生じさせてレーザ溶接するため、表面処理層が気化して発生した蒸気によって溶接欠陥が生じることを防止でき、さらにレーザ溶接に要する作業コストを低減するとともに、溶接作業の作業効率が低下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、理解を容易にするため
に、図面には陥凹部および突起部を誇張して示す。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るレーザ溶接装置500を簡略化して示す図である。図2は、打ち込み部材520による突起部342の形成方法を説明するための側面図、図3は、打ち込み部材520およびアーム部530の拡大図、図4は、打ち込み角度の調整方法を説明するための拡大図、図5〜8は、レーザ溶接方法を説明するための側面図、図9は、溶接軌跡を説明するための平面図である。
【0019】
まず、レーザ接装置500について説明する。
【0020】
図1および図2を参照して、レーザ溶接装置500は、突起部342を形成する突起部の形成装置を組み込んでおり、概説すれば、表面処理が施された鋼板310(「他方の溶接部材」に相当する)に形成された表面処理層311を介して突起部を形成する鋼板300(「少なくとも一方の溶接部材」に相当し、単に鋼板とも記す)に形成された突起部342によって鋼板300、310同士の間に隙間部350を生じさせてレーザ溶接するレーザ溶接装置であって、
突起部を形成する鋼板300を載置する受け台510(「受け部」に相当する)と、受け台510に載置された鋼板300上に陥凹部341を形成する打ち込み部材520と、鋼板300上において打ち込み部材520が打ち込まれる打点位置345と打点位置345から退避させた退避位置590との間において打ち込み部材520を保持するアーム部530(「保持部材」に相当する)と、受け台510に載置された鋼板300上に表面処理が施された鋼板310を重ね合わせた状態で重ね合わせた鋼板300、310をクランプするクランプ装置540(「クランプ手段」に相当する)と、打ち込み部材520を駆動して溶接面340と直交する基準線Oに対して傾斜させて鋼板300へ打ち込むとともに打点位置345から退避位置590に移動させる打ち込み用エアシリンダ550(「第1の駆動手段」に相当する)と、クランプ装置540を駆動して重ね合わせた鋼板300、310をクランプさせるクランプ用エアシリンダ560(「第2の駆動手段」に相当する)と、鋼板300、310にレーザを照射するレーザ照射ロボット570(「レーザ照射手段」に相当する)と、打ち込み用エアシリンダ550、クランプ用エアシリンダ560およびレーザ照射ロボット570の動作を制御する制御装置580(「制御手段」に相当する)と、を有している。制御装置580は、打ち込み用エアシリンダ550の動作を制御して、基準線Oに対して傾斜させて打ち込み部材520を鋼板300の打点位置345に打ち込むことによって、鋼板300上に形成される陥凹部341に連続させて突起部342をなす鋼板の盛り上り部343(「鋼板の盛り上り」に相当する)を形成し、打ち込み部材520を打点位置345から退避位置590に移動させる。打ち込み部材520を退避位置590に移動させた状態で受け台510に載置されるとともに突起部342が形成された鋼板300上に表面処理が施された鋼板310を重ね合わせることによって隙間部350を生じさせている。制御装置580は、クランプ用エアシリンダ560の動作を制御して、クランプ装置540によって重ね合わせた鋼板300、310をクランプさせて、レーザ照射ロボット570の動作を制御してレーザを照射する。
【0021】
本実施形態は、本発明に係るレーザ溶接装置500を、鋼板300上に突起部342を形成し、その突起部342によって重ね合わせた鋼板300、310同士の間に隙間部350を生じさせてレーザを照射するレーザ溶接に適用している。表面処理層311を、亜鉛めっきによって予め形成している。
【0022】
本明細書中における「表面処理層を介して重ね合わせる」とは、重ね合わせる鋼板の少なくとも一方に形成された表面処理層を、他方の溶接部材に向かい合わせて鋼板同士を重ね合わせることを意味する。以下、詳述する。
【0023】
図1および図2を参照して、鋼板300を配置するベース430は、打ち込み用エアシリンダ550およびクランプ用エアシリンダ560を固定するポスト部材410と、打ち込み部材520が打ち込まれる打点位置345の裏面側において鋼板300を支持する受け部材420と、を有している。受け部材420は、打ち込み部材520の打ち込みによって打点位置345の裏面側に凸部が形成されることを防止する(図2を参照)。打ち込み用エアシリンダ550およびクランプ用エアシリンダ560は、互いに隣接させて配置するのが望ましい。ポスト部材410を共用化することができ、材料費を削減することが可能になる。図示されるレーザ溶接装置500の配置は、例示したものであり、これに限定されるものではない。
【0024】
打ち込み部材520は、先端部が平坦に形成された鉄製のポンチ部材である。打ち込み部材520に形成されたねじ穴529とねじ部材531とによって、打ち込み部材520をアーム部530に固定している(図3をも参照)。打ち込み部材の長さ寸法は、打点位置や鋼板の形状等によって適宜変更することができる。また、材質や先端形状は特に限定されるものではなく、所望される陥凹部の形状や、突起部の形状に合わせて選択することができる。
【0025】
打ち込み用エアシリンダ550は、エア供給装置400より空気が供給されるエアシリンダ本体部551と、伸長動作に連動させて打ち込み部材520を駆動するエアシリンダ駆動部552と、を有している。
【0026】
エアシリンダ本体部551は、エアシリンダ駆動部552内の空気圧を調整する圧力制御手段と、エアシリンダ駆動部552へ供給する空気の流量を調整する流量制御手段と、を有している。圧力制御手段および流量調整手段は、図中省略する。
【0027】
圧力制御手段は、制御装置580からの動作信号S3に従って動作し、エアシリンダ駆動部552の伸縮動作を制御する(図2を参照)。流量制御手段は、エアシリンダ駆動部552を駆動する空気の流量を調整し、伸縮動作の速度を調整する。
【0028】
クランプ用エアシリンダ560は、打ち込み用エアシリンダ550と同様の構成を有しており、エアシリンダ駆動部562の伸縮動作によってクランプ装置540を駆動する。エアシリンダ本体部561は、圧力制御手段および流量制御手段を備えている。
【0029】
支持ピンおよび支持穴によって構成される支持構造535は、アーム部530をエアシリンダ本体部551に回動自在に支持する。同様にして、支持構造535は、クランプ装置540をエアシリンダ本体部561に回動自在に支持する。
【0030】
リンク機構440は、エアシリンダ本体部551と打ち込み部材520とを連結し、エアシリンダ駆動部552の伸縮動作に連動した打ち込み部材520の駆動を補助する。同様にして、リンク機構440は、クランプ用エアシリンダ560のエアシリンダ本体部561とクランプ装置540とを連結する。
【0031】
レーザ照射ロボット570は、レーザを照射する加工ヘッド571と、動作信号S1に従って加工ヘッド571を所定の位置へ移動させるロボットアーム572と、を有している。レーザ照射ロボット570は、制御装置580より送信された動作信号S1に従って動作する。ロボットアーム572によって加工ヘッド571を移動させて所定の溶接箇所へレーザを照射する。加工ヘッド571内部には、レンズ光学系が備えられており、レーザの焦点位置や照射エネルギーを調整することが可能になっている。
【0032】
制御装置580は、動作信号S2をエア供給装置400に送信し、エア供給装置400からエアシリンダ本体部551、561へ空気aを供給させる。エア供給装置400へ動作信号S2を送信するとともに、圧力制御手段および流量制御手段を動作させる動作信号S3を打ち込み用エアシリンダ550およびクランプ用エアシリンダ560に送信する。そして、レーザ照射ロボット570に対して、予め設定された溶接条件に基づいてレーザ溶接を実行させる動作信号S1を送信する(図1を参照)。
【0033】
図2を参照して、エア供給装置400は、制御装置580から送信された動作信号S2に従ってエアシリンダ本体部551へ空気aを供給する。エアシリンダ本体部551へ供給された空気によってエアシリンダ駆動部552が伸長動作を開始する。エアシリンダ駆動部552の伸長動作(図2において矢印bで示す)に連動して、打ち込み部材520の打ち込み動作(図2において矢印cで示す)を駆動する。
【0034】
基準線Oに対して傾斜させて鋼板300上に、打ち込み部材520を打ち込む。打ち込み部材520が打ち込まれた打点位置345に、陥凹部341を形成する。打点位置345は、突起部342を形成する位置に合わせて定める。
【0035】
打ち込み動作によって、陥凹部341の前方(図中右方向)に、陥凹部341に連続した突起部342をなす鋼板の盛り上り部343を形成する。鋼板の盛り上り部343は、後処理等を施すことなく、重ね合わせた鋼板300、310同士の間に隙間部350を形成する突起部342として機能する。
【0036】
突起部342を形成した後、制御装置580は、動作信号S3を打ち込み用エアシリンダ550に送信する。圧力制御手段によってエアシリンダ駆動部552内の空気圧を調整して、エアシリンダ駆動部552の収縮動作(図2において矢印b’で示す)を開始する。
【0037】
打ち込み部材520は、エアシリンダ駆動部552の収縮動作に連動して、退避位置590への移動動作(図2において矢印c’で示す)を開始する。退避位置590は、打ち込み部材520を打点位置345より退避させた位置である。なお、打ち込み部材520が退避位置590において退避している状態を図中点線で示し、打ち込み部材520が鋼板300上の打点位置345に打ち込まれた状態を図中実線で示す。
【0038】
制御装置580は、打ち込み用エアシリンダ550と同様に、クランプ用エアシリンダ560の動作を制御して、クランプ装置540を動作させる。クランプ装置540の動作制御方法の説明は、省略する。
【0039】
再び図2を参照して、制御装置580によって打ち込み用エアシリンダ550の動作を制御して、鋼板300上に形成される突起部342の高さ寸法を調整する方法について説明する。
【0040】
打ち込み用エアシリンダ550のエアシリンダ駆動部552へ供給する空気量を調整し、打ち込み部材520が鋼板300に付与する圧力を調整自在にして制御装置580を構成している。
【0041】
制御装置580は、打ち込み用エアシリンダ550に動作信号S3を送信し、流量制御手段を動作させる。エアシリンダ駆動部552へ供給する空気の流量を増加することによって、エアシリンダ駆動部552の伸長動作の速度が加速する。そのため、打ち込み部材520が鋼板300に付与する圧力が増加し、打ち込み部材520が鋼板300に貫入する量が増加する。その結果、圧力を増加する前の状態において形成される突起部342(図中点線で示す)が有する高さ寸法h1より大きな高さ寸法h2を有する突起部342(図中実線で示す)を形成することができる。
【0042】
同様にして、エアシリンダ駆動部552に供給される空気の流量を減少させることによって、減少させる前の状態において形成される突起部より小さな高さ寸法を有する突起部を形成することができる。
【0043】
このように、制御装置580によって打ち込み用エアシリンダ550の動作を制御して、鋼板300上に形成される突起部の高さ寸法を容易に調整することができ、所望の高さ寸法を有する突起部を形成することができる。同様にして、クランプ用エアシリンダ560の動作を制御して、クランプ装置540によるクランプ力を調整することも可能である。
【0044】
図3および図4を参照して、アーム部530は、支持部536と、打ち込み角度を調整自在にして打ち込み部材520を固定する角度調整手段533と、を有している。なお、打ち込み角度θは、陥凹部341が形成された状態で打ち込み部材520の先端部から溶接面340と直交する方向に向かって延びる基準線Oと打ち込み部材520とがなす角度によって定義する(図4を参照)。
【0045】
ねじ部材531および調整穴532によって、角度調整手段533を構成している。角度調整手段533によって打ち込み角度を調整し、打ち込み角度θ1から打ち込み角度θ2へ大きくすることによって、溶接面340をすくい上げるようにして打ち込み部材520を打ち込むことができる。その結果、打ち込み角度を大きくする前の状態において形成した突起部342(図中点線で示す)が有する高さ寸法h1より大きな高さ寸法h2を有する突起部342(図中実線で示す)を形成することができる。
【0046】
一方、打ち込み角度を小さくすることによって、図中下方により深く陥凹部341を鋼板300に形成することができる。そのため、打ち込み角度を小さくする前の状態において形成した突起部より小さな高さ寸法を有する突起部を形成することができる。
【0047】
このように、角度調整手段533によって基準線Oと打ち込み部材520とがなす打ち込み角度θを調整することによって、鋼板上に形成される突起部の高さ寸法を容易に調整することができ、所望の高さ寸法を有する突起部を形成することができる。
【0048】
打ち込み部材520の長さ寸法や、アーム部530と打ち込み部材520とが固定される固定位置を調整することによって、突起部342を形成する位置を調整することができる。例えば、図4に示されるように、打ち込み角度θ2を一定にした状態で、固定位置を調整する(調整後の打ち込み部材520を二点鎖点で示す)。固定位置を調整した状態で打ち込み部材520を打ち込むことによって、打点位置345を図中左方向へ移動させることができる。打点位置345の移動に伴って、陥凹部341および突起部342が形成される位置も図中左方向へ移動する。このようにして鋼板の形状や、溶接位置に対応させて突起部の形成位置を適宜調整することができる。
【0049】
角度調整手段533によって打ち込み角度θを調整して突起部の高さ寸法を調整する方法と、前述した制御装置580によって打ち込み用エアシリンダ550の動作を制御して突起部の高さ寸法を調整する方法とを併用することも可能である。
【0050】
次に、レーザ溶接方法について説明する。
【0051】
図5を参照して、打ち込み部材520、およびクランプ装置540が退避した状態で受け台510上に鋼板300を載置する。予め設定された打点位置345に合わせて受け部材420を配置する。なお、打ち込み用エアシリンダ550およびクランプ用エアシリンダ560は、図中紙面と直交する方向において並設して配置している。
【0052】
図6を参照して、制御装置580によって、エアシリンダ駆動部552の伸長動作(図6において矢印bで示す)を開始する。エアシリンダ駆動部552の伸長動作に伴って、打ち込み部材520の打ち込み動作(図6において矢印cで示す)を駆動する。打ち込み部材520は、リンク機構440によってエアシリンダ駆動部552の伸長動作に連動して打ち込み動作を開始する。
【0053】
基準線Oに対して傾斜させて鋼板300上に打ち込み部材520を打ち込む。打ち込み部材520を打ち込んだ打点位置345に陥凹部341を形成する。受け部材420は、打ち込み部材520の打ち込みによって、打点位置345の裏面側に凸部が形成されることを防止する。
【0054】
陥凹部341の前方(図中右方向)に、陥凹部341に連続した突起部342をなす鋼板の盛り上り部343を形成することができる。鋼板の盛り上り部343は、後処理等を施すことなく、重ね合わせた鋼板300、310同士の間に隙間部350を形成する突起部342として機能する。
【0055】
制御装置580は、エアシリンダ駆動部552を動作させる際、エアシリンダ本体部551に備えられた流量制御手段によって、エアシリンダ駆動部552へ供給される空気の流量を調整する。空気の流量を調整することによって、鋼板300に付与する圧力を調整することができ、鋼板300上に形成される突起部の高さ寸法を容易に調整することができる。
【0056】
基準線Oと打ち込み部材520とがなす打ち込み角度θは、アーム部530が有する角度調整手段533によって、適宜調整することが可能になっている。打ち込み角度θを調整することによって、鋼板300上に形成される突起部の高さ寸法を容易に調整することができる。
【0057】
打ち込み部材520の長さ寸法や、アーム部530と打ち込み部材520とを固定する固定位置を調整することによって、突起部を形成する位置を任意に定めることができ、鋼板の形状や、溶接位置に対応させて突起部の形成位置を適宜調整することができる。
【0058】
本実施形態にあっては、打ち込み部材520によって突起部342を形成しているため、専用のプレス型によって突起部を形成する従来の方法と比較して、突起部が形成される部位の周辺部および鋼板全体に与える圧力の影響を低減させることができる。そのため、突起部の形成作業によって鋼板が変形することを防止でき、鋼板の成形精度の維持管理を容易にすることができ、突起部の形成作業が煩雑化することを防止できる。さらに専用のプレス型を製作するコストを削減することができ、従来の方法と比較して、レーザ溶接に要するコストを低減することができる。
【0059】
図7を参照して、制御装置580によって、エアシリンダ本体部551に備えられた圧力制御手段を動作させ、エアシリンダ駆動部552を収縮させる。エアシリンダ駆動部552の収縮動作(図7において矢印b’で示す)は、打ち込み部材520の退避位置590への移動動作(図7において矢印c’で示す)を駆動する。打ち込み部材520は、リンク機構440によって、エアシリンダ駆動部552の収縮動作に連動して退避位置590への移動動作を開始する。
【0060】
打ち込み部材520は、鋼板300、310の重ね合わせ、およびレーザ照射作業を妨げない位置まで退避させる。
【0061】
次に、打ち込み部材520が退避した状態で、受け台510に載置されるとともに突起部342が形成された鋼板300上に表面処理が施された鋼板310を重ね合わせる。表面処理層311は、鋼板300の溶接面340に向かい合わせて配置する。
【0062】
図8を参照して、制御装置580によって、クランプ用エアシリンダ560のエアシリンダ駆動部562を動作させる。クランプ装置540は、エアシリンダ駆動部562の動作に連動して突起部342が形成された鋼板300と表面処理が施された鋼板310とをクランプするクランプ動作(図8において矢印dで示す)を開始する。
【0063】
突起部342が形成された鋼板300と表面処理が施された鋼板310とをクランプし、両鋼板300、310の間に、突起部342によって隙間部350を形成する。
【0064】
次に、隙間部350を形成させた状態でレーザを照射し、鋼板300、310を溶接する。この際、レーザ照射によって表面処理層が蒸発し、亜鉛蒸気が発生する場合がある。隙間部を形成させずにレーザを照射すると、鋼板同士の間に亜鉛蒸気が滞留することがある。そのため、亜鉛蒸気によって鋼板が飛散する、いわゆるポロシティ現象が発生し得る。さらに、鋼板内に亜鉛蒸気が残留した状態で鋼板が凝固し、溶接品質の低下が生じる場合がある。
【0065】
レーザ溶接装置500にあっては、隙間部350を通して鋼板300、310の間から亜鉛蒸気を排出させることができるため、亜鉛蒸気が滞留することを防止でき、ポロシティ現象が発生することを防止できる。さらに、鋼板内に亜鉛蒸気が残留することを防止でき、溶接品質が低下することを防止できる。なお、鋼板300、310の間に蒸気を滞留させずにレーザ溶接を行うには、隙間部の寸法Wを、0.05mm〜0.3mm程度の寸法で形成することが望ましい。
【0066】
レーザは、例えば、陥凹部341に隣接して形成された隙間部350に沿う直線形状の溶接軌跡110(図9(A)をも参照)や、突起部342および陥凹部341の周囲を囲む円形形状の溶接軌跡120(図9(B)をも参照)に沿って照射する。いずれの場合にも発生した亜鉛蒸気を隙間部350から効率的に排出することができ、ポロシティ現象が発生することを防止できる。
【0067】
専用のプレス型によって突起部を形成する従来の方法にあっては、プレス加工によって予め鋼板上に突起部を形成させている。そのため、レーザ溶接作業を実施する際には、鋼板を搬出する工程や、鋼板をセットする工程等の作業工程が必要となり、レーザ溶接作業の作業効率を向上させることが困難である。
【0068】
一方、レーザ溶接装置500にあっては、打ち込み部材520による突起部342の形成工程をレーザ溶接作業に組み込むことが可能になっている。そのため、受け台510上に鋼板300をセットした後、鋼板300を移動させることなく、突起部342の形成工程およびレーザ照射工程を実施することできる。従来の方法と比較して、作業工程数を減少させることができ、レーザ溶接作業の作業効率を向上させることが可能になっている。
【0069】
レーザ溶接装置500は、鋼板に形成された表面処理層が亜鉛めっき以外の材料で形成されている場合であっても適用することができる。
【0070】
表面処理層が形成された鋼板に突起部を形成させてレーザ溶接を行うことも可能である。
【0071】
レーザを照射する溶接軌跡は、図示されるものに限定されず、適宜変更することができる。
【0072】
クランプ装置によって鋼板をクランプする位置は、図示された位置に限定されるものではなく、溶接箇所や部材形状に合わせて適宜変更することができる。複数個のクランプ装置によって、複数の箇所において鋼板をクランプすることも可能である。
【0073】
打ち込み部材による突起部の形成作業を複数回実施することによって、複数個の突起部を形成することも可能である。
【0074】
(変形例1)
図10〜14は、第1の実施形態の変形例に係るレーザ溶接装置500を説明するための図である。図10(A)は、第1〜第3の打ち込み先端部521〜523が形成されたアーム部530の平面図、図10(B)は、図10(A)の矢印10a方向から見た正面図、図11は、第1〜第3の打ち込み先端部521〜523によって同時に複数の突起部342を形成する方法を説明するための側面図、図12は、第1〜第3の打ち込み先端部521〜523によって突起部342を形成する場合のレーザ溶接方法を説明するための側面図、および平面図、図13は、打ち込み先端部の個数をさらに増減させた変形例を説明するための平面図、図14は、図13に示される変形例によって突起部342を形成する場合のレーザ溶接方法を説明するための平面図である。図1〜9に示した部材と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
【0075】
本変形例に係るレーザ溶接装置500は、打ち込み部材520によって、複数の打ち込み先端部521〜524を構成し、一度の打ち込みによって複数の突起部を形成することができる。
【0076】
図10〜図12を参照して、図示例にあっては、打ち込み部材520によって、第1〜第3の打ち込み先端部521〜523を構成している。そのため、一度の打ち込みによって三個の突起部342を同時に形成することが可能になっている。
【0077】
図10(A)、(B)を参照して、第1〜第3の打ち込み先端部521〜523はそれぞれ、打ち込み角度を調整自在にしてアーム部530に固定している。打ち込み角度を調整することによって突起部の高さ寸法を調整することが可能になっている(図3をも参照)。
【0078】
図11を参照して、打ち込み用エアシリンダ550を動作させて、アーム部530に保持された打ち込み先端部521〜523を駆動させる。打ち込み先端部521〜523は、打点位置345に陥凹部341を形成する。
【0079】
陥凹部341の前方(図中右方向)に、陥凹部341に連続した突起部342をなす鋼板の盛り上り部343を形成する。形成された鋼板の盛り上り部343は、後処理等を施すことなく、重ね合わせた鋼板同士の間に隙間部を形成する突起部として機能する。
【0080】
図示するように、一度の打ち込みによって同時に複数の突起部342を形成することができる。なお、突起部342の高さ寸法の調整方法や、その他の作業工程については、第1の実施形態と同様であるため、省略する。
【0081】
図12(A)、(B)を参照して、レーザは、例えば、図示する直線形状の溶接軌跡110に沿って照射する。複数の突起部342を形成してレーザ溶接を行うことによって、レーザ照射によって発生する亜鉛蒸気を効率的に鋼板同士の間から排出することができ、ポロシティ現象の発生および溶接品質の低下をより確実に防止することが可能になる。
【0082】
一度の打ち込みによって複数の突起部を形成することができるため、複数個の突起部を形成してレーザ溶接作業を行う場合であっても、作業効率が低下することを防止できる。
【0083】
図13(A)、(B)を参照して、本変形例にあっては、例えば、打ち込み先端部の個数を二個や、四個に増減することも可能である。図示例にあっては、一度の打ち込みによって、二個、または四個の突起部を形成することができる。
【0084】
図14(A)、(B)を参照して、レーザは、例えば、図示する直線形状の溶接軌跡110に沿って照射する。第1〜第3の打ち込み先端部521〜523によって突起部342を形成した場合と同様に、レーザ照射によって発生する亜鉛蒸気を効率的に鋼板の間から排出することができ、ポロシティ現象の発生および溶接品質の低下をより確実に防止することが可能になる。
【0085】
一度の打ち込みによって複数の突起部を形成することができるため、複数個の突起部を形成してレーザ溶接作業を行う場合であっても、作業効率が低下することを防止できる。
【0086】
打ち込み先端部の個数や、アーム部が打ち込み部材を保持する配置は、上述した図示例のみに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0087】
(変形例2)
図15〜18は、第1の実施形態のその他の変形例に係るレーザ溶接装置500を説明するための図である。図15〜図18は、共用化されたエアシリンダ装置650によって打ち込み部材520およびクランプ装置540を駆動させる方法を説明するための側面図、および矢印e方向から見た正面図である。図1〜14に示した部材と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
【0088】
本変形例に係るレーザ溶接装置500は、打ち込み用エアシリンダ550およびクランプ用エアシリンダ560として選択的に機能し、打ち込み部材520、またはクランプ装置540を選択的に駆動する共用化されたエアシリンダ装置650(「一の駆動手段」に相当する)を有している。レーザ溶接装置500は、打ち込み部材520と共用化されたエアシリンダ装置650とを連結するとともに、切り替えによってクランプ装置540と共用化されたエアシリンダ装置650とを連結する切り替え手段610をさらに有しており、切り替え手段610によってエアシリンダ装置650を共用化している。
【0089】
図15(A)、(B)を参照して、切り替え手段610は、切り替えピン612および共用化されたエアシリンダ装置650に連結された連結支持部611から構成する。
【0090】
打ち込み部材520が退避した状態で切り替え手段610によってアーム部530とエアシリンダ装置650とを連結する。切り替えピン612による切り替え作業を容易なものとするために、アーム部530およびクランプ装置540を予め隣接した位置に配置しておくことが望ましい。
【0091】
図16(A)、(B)を参照して、エアシリンダ装置650を動作させて、打ち込み部材520を駆動する。打ち込み部材520の打ち込み動作によって、鋼板300上に突起部342を形成する。
【0092】
図17(A)、(B)を参照して、再びエアシリンダ装置650を動作させて、打ち込み部材520を鋼板300上から退避位置へ移動させる。打ち込み部材520が退避した状態で、打ち込み部材520とエアシリンダ装置650との連結を解除して、クランプ装置540とエアシリンダ装置650とを連結する。連結の切り替えは、連結ピンを図中矢印fで示されるようにスライド移動させて行う。なお、連結ピンの切り替えは、図示されないアクチュエータ等によって行う。
【0093】
図18(A)、(B)を参照して、鋼板300、310を重ね合わせて、エアシリンダ装置650を動作させる。エアシリンダ装置650によってクランプ装置540を駆動することができ、重ね合わせた鋼板300、310をクランプすることができる。
【0094】
共用化されたエアシリンダ装置650によって、打ち込み部材520、およびクランプ装置540を駆動させてレーザ溶接作業を行うことが可能である。そのため、打ち込み部材を駆動する専用のエアシリンダおよびクランプ装置を駆動する専用のエアシリンダを用いた場合と比較して、レーザ溶接装置に要する設備コストや作業コストを低減することができる。
【0095】
上述したように、本実施形態のレーザ溶接装置500は、制御装置580によって打ち込み用エアシリンダ550の動作を制御して、打ち込み部材520を、基準線Oに対して傾斜させて鋼板の打点位置345に打ち込むことによって、鋼板300上に形成される陥凹部341に連続させて突起部342をなす鋼板の盛り上り部343を形成し、打ち込み部材520を打点位置345から退避位置590に移動させている。打ち込み部材520を退避位置590に移動させた状態で受け台510に載置されるとともに突起部が形成された鋼板300上に表面処理が施された鋼板310を重ね合わせることによって隙間部350を生じさせている。制御装置580によってクランプ用エアシリンダ560の動作を制御して、クランプ装置540によって重ね合わせた鋼板300、310をクランプさせて、レーザ照射ロボット570の動作を制御してレーザを照射している。そのため、突起部が形成される部位の周辺部および鋼板全体に与える圧力の影響を低減させることができ、突起部の形成作業によって鋼板が変形することを防止できる。その結果、鋼板の成形精度の維持管理を容易にすることができ、突起部の形成作業が煩雑化することを防止できる。さらに突起部を形成するための専用のプレス型を製作する設備コストを削減することができ、レーザ溶接に要するコストを低減させることができる。
【0096】
レーザ溶接時に発生した亜鉛蒸気を、隙間部350を通して鋼板300、310の間から排出させることができるため、鋼板300、310同士の間に亜鉛蒸気が滞留することを防止できる。そのため、ポロシティ現象が発生することを防止でき、溶接欠陥が生じること防止できる。
【0097】
打ち込み部材520による突起部342の形成工程をレーザ溶接作業に組み込んでいるため、レーザ溶接作業に要する作業工程数を減少させることができ、レーザ溶接作業の作業効率を向上させることができる。
【0098】
制御装置580によって打ち込み用エアシリンダ550の動作を制御して、鋼板300上に形成される突起部342の高さ寸法を容易に調整することができ、所望の高さ寸法を有する突起部を形成することができる。
【0099】
角度調整手段533によって基準線Oと打ち込み部材520とがなす打ち込み角度θを調整することによって、鋼板300上に形成される突起部342の高さ寸法を容易に調整することができ、所望の高さ寸法を有する突起部を形成することができる。
【0100】
打ち込み部材520によって複数の打ち込み先端部521〜524を構成することができ、一度の打ち込みによって複数の突起部342を形成してレーザ溶接を行うことができる。そのため、レーザ照射によって発生した亜鉛蒸気を効率的に鋼板300、310の間から排出させることができ、ポロシティ現象の発生および溶接品質の低下をより確実に防止することができる。一度の打ち込みによって複数の突起部を形成することができるため、複数個の突起部を形成してレーザ溶接作業を行う場合であっても、作業効率が低下することを防止できる。
【0101】
共用化されたエアシリンダ装置650によって、打ち込み部材520、およびクランプ装置540を駆動させてレーザ溶接作業を行うことができるため、レーザ溶接装置に要する設備コストや作業コストを低減することができる。
【0102】
表面処理が施された鋼板310に形成された表面処理層311を介して重ね合わせた鋼板300、310同士をレーザ溶接するときに鋼板300、310同士の間に隙間部350を生じさせる突起部342が形成された鋼板300であって、突起部を形成する鋼板300上における打点位置345と打点位置345から退避させた退避位置590との間において保持され、突起部を形成する鋼板300上に陥凹部341を形成する打ち込み部材520が打ち込み部材520を駆動するうち込み用エアシリンダ550の動作によって溶接面340と直交する基準線Oに対して傾斜させて打点位置345に打ち込まれることによって、鋼板300上に形成される陥凹部345に連続させて突起部342をなす溶接部材の盛り上り部343が形成された鋼板である。
【0103】
(第2の実施形態)
図19は、本発明の第2の実施形態に係る突起部の形成装置800を簡略化して示す図である。図20は、保持部840を拡大して示す断面図、図21〜24は、突起部の形成装置800によって突起部342を形成する方法を説明するための断面図である。図1〜18に示した部材と共通する部材には同一の符号を付し、その説明は一部省略する。
【0104】
図19〜24を参照して、概説すれば、突起部の形成装置800は、表面処理が施された鋼板310に形成された表面処理層311を介して重ね合わせた鋼板300、310同士をレーザ溶接するときに鋼板300、310同士の間に隙間部350を生じさせる突起部342を、突起部を形成する鋼板300に形成する突起部の形成装置であって、突起部を形成する鋼板300上に陥凹部341を形成する打ち込み部材520と、打ち込み部材520を駆動して突起部を形成する鋼板300に打ち込む打ち込み用エアシリンダ860と、固定型830および固定型830に向けて近接離反移動可能な可動型820を備え、少なくとも型の開閉方向に沿って折り曲げられた溶接面340を、突起部を形成する鋼板300上にプレス加工するプレス型870と、プレス型870に設けられ、打ち込み部材520を溶接面340と直交する基準線Oに対して傾斜させて保持する保持部840と、打ち込み用エアシリンダ860およびプレス型870の動作を制御する制御装置580と、を有している。制御装置580は、プレス型870を型締めした状態で打ち込み用エアシリンダ860の動作を制御して、基準線Oに対して傾斜させて打ち込み部材520を鋼板300に打ち込むことによって、突起部を形成する鋼板300上に形成される陥凹部341に連続させて突起部342をなす溶接部材の盛り上り部343を形成する。プレス型870は、突起部342が形成される位置より型開き方向の上流側における固定型830と可動型820との間に形成され、突起部342が形成された部位の厚さ寸法より大きな寸法の隙間空間850を有している。
【0105】
固定型830は、型の開閉方向に沿って互いに離間して形成された一対の縦壁部831、縦壁部の端部同士を連結する連結壁部832、および縦壁部から互いに離れる方向に延在する横壁部833からなる断面ハット形状の成形面835を有している。可動型820は、固定型830に合致する断面凹形状の成形面836を有している。プレス型870は、突起部342を形成する鋼板300を断面ハット形状にプレス加工する。以下、詳述する。
【0106】
図19を参照して、打ち込み用エアシリンダ860を備えた支持用ロボット810によって打ち込み部材520を支持する。支持用ロボット810は、ロボットアーム812を備えた多間接ロボットであり、制御装置580から送信される動作信号S4に従って保持部840へ打ち込み部材520を配置する。
【0107】
可動型820は、制御装置580から送信される動作信号S5に従って図中上下方向に可動し、型締め、型開きを行なう。
【0108】
エア供給装置400は、制御装置580より送信される動作信号S2に従って空気aを供給して、打ち込み用エアシリンダ860を動作させる。
【0109】
打ち込み用エアシリンダ860は、打ち込み用エアシリンダ860内の空気圧を調整する圧力制御手段および打ち込み用エアシリンダ860を駆動する空気の流量を調整する流量制御手段を備えている。圧力制御手段および流量制御手段は、図中省略する。
【0110】
圧力制御手段は、制御装置580からの動作信号S4に従って動作し、空気圧を調整して打ち込み用エアシリンダ860を動作させる(図23を参照)。
【0111】
流量制御手段は、打ち込み用エアシリンダ860を駆動する空気の流量を調整し、打ち込み用エアシリンダ860の動作速度を調整する。
【0112】
第1の実施形態において説明した方法と同様にして、制御装置580によって打ち込み用エアシリンダ860の動作を制御して、鋼板300上に形成される突起部の高さ寸法を調整することができる。詳細な手順については、省略する。
【0113】
図20を参照して、可動型820に設けられ、保持した打ち込み部材520を打点位置345へ案内する貫通穴によって保持部840を構成する。
【0114】
図示されるように、打ち込み部材520によって、複数の打ち込み先端部521、522を構成することができる。一度の打ち込みによって複数の突起部342を形成させることができため、レーザ溶接によって発生した亜鉛蒸気を効率的に鋼板同士の間から排出することができ、ポロシティ現象の発生および溶接品質の低下を防止することが可能になる。
【0115】
次に、突起部の形成方法について説明する。
【0116】
図21を参照して、固定型830に鋼板300をセットした状態で、可動型820を型締めする。プレス加工によって、縦壁部831、連結壁部832、および横壁部833に沿って断面をハット形状に鋼板300を成形する。型の開閉方向(図中上下方向)に沿って溶接面340を折り曲げる。
【0117】
型締めによって、突起部342が形成される位置より型開き方向の上流側(図中における突起部342の下方側)における固定型830と可動型820との間に、隙間空間850を形成する。隙間空間850は、突起部342が形成された部位の厚さ寸法w1より大きな寸法w2によって形成する(図23をも参照)。
【0118】
図22を参照して、支持用ロボット810を動作させて、保持部840へ打ち込み部材520を配置する。保持部840によって、溶接面340と直交する基準線Oに対して傾斜させて打ち込み部材520を保持する。
【0119】
図23を参照して、打ち込み用エアシリンダ860を動作させて、打ち込み部材520を駆動する。基準線Oに対して傾斜させて鋼板300上に打ち込み部材520を打ち込む。
【0120】
打ち込み部材520が打ち込まれた打点位置345に、陥凹部341を形成する。陥凹部341の前方(図中下方向)に、陥凹部341に連続した突起部342をなす鋼板の盛り上り部343を形成する。鋼板の盛り上り部343は、後処理を施すことなく、重ね合わせた鋼板300、310同士の間に隙間部350を形成させる突起部342として機能する。
【0121】
本実施形態にあっては、打ち込み部材520によって突起部342を形成しているため、専用のプレス型によって突起部を形成する従来の方法と比較して、突起部が形成される部位の周辺部および鋼板全体に与える圧力の影響を低減させることができる。そのため、突起部の形成作業によって鋼板が変形することを防止でき、鋼板の成形精度の維持管理を容易にすることができ、突起部の形成作業が煩雑化することを防止できる。
【0122】
突起部の形成装置800によって、鋼板300をプレス成形するとともに突起部342を形成することができる。そのため、突起部を形成するための専用のプレス型が不要になる。専用のプレス型を製作するための設備コストを削減することができ、従来の方法と比較して、突起部の形成作業に要するコストを低減することができる。
【0123】
図24を参照して、支持用ロボット810によって保持部840より打ち込み部材520を退避させる。打ち込み部材520を退避させた状態で型を開き、突起部342が形成された鋼板300を取り出す。この際、隙間空間850によって、プレス型870と突起部342とを干渉させることなく、型を開くことができる。
【0124】
上述したように、本実施形態にあっては、制御装置580によって、プレス型870を型締めした状態で打ち込み用エアシリンダ860の動作を制御して、基準線Oに対して傾斜させて打ち込み部材520を鋼板300に打ち込むことによって、突起部を形成する鋼板300上に形成される陥凹部341に連続させて突起部342をなす溶接部材の盛り上り部343を形成している。プレス型870は、突起部342が形成される位置より型開き方向の上流側における固定型830と可動型820との間に形成され、突起部342が形成された部位の厚さ寸法より大きな寸法の隙間空間850を有している。そのため、突起部342の形成作業によって鋼板300が変形することを防止でき、鋼板300の成形精度の維持管理を容易にすることができ、突起部342の形成作業が煩雑化することを防止できる。さらに、専用のプレス型870を製作するための設備コストを削減することができ、突起部の形成に要するコストを低減することができる。
【0125】
制御装置580によって打ち込み用シリンダの動作を制御して、鋼板300上に形成される突起部342の高さ寸法を容易に調整することができ、所望の高さ寸法を有する突起部を形成することができる。
【0126】
打ち込み部材520によって複数の打ち込み先端部521、522を構成することができ、一度の打ち込みによって複数の突起部342を形成することができる。そのため、レーザ溶接時には、発生した亜鉛蒸気を効率的に鋼板300、310同士の間から排出させることができる。
【0127】
断面ハット形状にプレス成形された鋼板300に対して突起部342を形成する場合であっても、突起部が形成された部位の寸法w1と隙間空間の寸法w2とを調整することによって、プレス型870と突起部342とを干渉させることなく、型を開くことができる。
【0128】
プレス加工後の鋼板の形状は、少なくとも型の開閉方向に沿って折り曲げられた溶接面が形成されていればよい。そのため、プレス加工によって断面ハット形状以外の形状に鋼板を成形することもできる。
【0129】
隙間空間は、少なくとも、型開き方向の上流側において、型開きする際、プレス型と突起部との干渉を防止する位置に設けられていればよい。
【0130】
以下、本発明の第1の実施形態を実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0131】
(実施例1)
本実施例にあっては、打ち込み角度θを一定にして、打ち込み部材が打点位置に付与する圧力を変化させて、突起部の高さ寸法を計測した。突起部を形成する鋼板には、厚さ1.0mmの軟鋼板を使用した。
【0132】
図25を参照して、打ち込み角度θを20°で一定とし、打点位置に付与する圧力を変化させて突起部を形成した。各圧力条件において、3回ずつ打ち込みを実施した。
【0133】
この結果から、打ち込み角度を一定にした状態で打点位置に付与する圧力を増加させた場合、圧力の変化に伴って鋼板上に形成される突起部の高さ寸法が大きくなることを確認できた。
【0134】
(実施例2)
本実施例にあっては、打ち込み部材が打点位置に付与する圧力を一定にして、打ち込み角度θを変化させて、突起部の高さ寸法を計測した。突起部を形成する鋼板には、厚さ1.0mmの軟鋼板を使用した。
【0135】
図26を参照して、打点位置に付与する圧力を9.6kgfで一定とし、打ち込み角度θを変化させて突起部を形成した。各角度条件において、3回ずつ打ち込みを実施した。
【0136】
この結果から、打点位置に付与する圧力を一定にした状態で打ち込み角度θを大きくさせた場合、打ち込み角度の変化に伴って鋼板上に形成される突起部の高さ寸法が大きくなることを確認できた。
【0137】
(実施例3)
本実施例にあっては、鋼板上に形成する突起部の個数を変化させてレーザ溶接を実施し、ポロシティ現象の発生の有無を確認した。突起部を形成する鋼板には、厚さ0.65mmの軟鋼板を使用した。
【0138】
図27(A)を参照して、実施条件(A)は、図示されるように、鋼板上に2個の突起部を形成して、直線形状の溶接軌跡110に沿ってレーザを照射した。
【0139】
図27(B)を参照して、実施条件(B)は、図示されるように、鋼板上に4個の突起部を形成して、直線形状の溶接軌跡110に沿ってレーザを照射した。
【0140】
図27(C)を参照して、実施条件(C)は、図示されるように、鋼板上に3個の突起部を形成して、直線形状の溶接軌跡110に沿ってレーザを照射した。
【0141】
実施条件(A)〜(C)にあっては、打ち込み部材が打点位置に付与する圧力を13.92kgf、打ち込み角度θを15°とし、各条件において4回ずつ打ち込みを実施した。
【0142】
形成された突起部の高さ寸法とともに、ポロシティ現象の発生の有無の結果を表1に示す。
【0143】
下記の表1に示すように、各実施条件においてレーザ溶接を行った結果、ポロシティ現象の発生は確認されなかった。
【0144】
【表1】

【0145】
(実施例4)
本実施例は、実施例3と同様にして、鋼板上に形成する突起部の個数を変化させてレーザ溶接を実施し、ポロシティ現象の発生の有無を確認した。ただし、突起部を形成する鋼板には、厚さ1.0mmの高張力鋼板(強度440MPa)を使用した。打ち込み部材が打点位置に付与する圧力を4.8kgf、打ち込み角度θを20°とし、各条件において2回ずつ打ち込みを実施した。
【0146】
形成された突起部の高さ寸法とともに、ポロシティ現象の発生の有無の結果を表2に示す。
【0147】
下記の表2に示すように、各実施条件においてレーザ溶接を行った結果、ポロシティ現象の発生は確認されなかった。
【0148】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】第1の実施形態に係るレーザ溶接装置を簡略化して示す図である。
【図2】打ち込み部材による突起部の形成方法を説明するための側面図である。
【図3】打ち込み部材およびアーム部の拡大図である。
【図4】打ち込み角度の調整方法を説明するための拡大図である。
【図5】レーザ溶接方法を説明するための側面図である。
【図6】レーザ溶接方法を説明するための側面図である。
【図7】レーザ溶接方法を説明するための側面図である。
【図8】レーザ溶接方法を説明するための側面図である。
【図9】溶接軌跡を説明するための平面図である。
【図10】図10(A)は、複数の打ち込み先端部が形成されたアーム部の平面図、図10(B)は、複数の打ち込み先端部が形成されたアーム部の正面図である。
【図11】第1〜第3の打ち込み先端部によって同時に複数の突起部を形成する方法を説明するための側面図である。
【図12】図12(A)は、第1〜第3の打ち込み先端部によって突起部を形成する場合のレーザ溶接方法を説明するための側面図、図12(B)は、第1〜第3の打ち込み先端部によって突起部を形成した場合における溶接軌跡を説明するための平面図である。
【図13】打ち込み先端部の個数をさらに増減させた変形例を説明するための平面図である。
【図14】図14(A)、(B)は、打ち込み先端部の個数をさらに増減させた変形例における溶接軌跡を説明するための平面図である。
【図15】図15(A)は、変形例に係る共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための側面図、図15(B)は、共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための正面図である。
【図16】図16(A)は、変形例に係る共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための側面図、図16(B)は、共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための正面図である。
【図17】図17(A)は、変形例に係る共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための側面図、図17(B)は、共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための正面図である。
【図18】図18(A)は、変形例に係る共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための側面図、図18(B)は、共用化されたエアシリンダ装置によって打ち込み部材およびクランプ装置を駆動させる方法を説明するための正面図である。
【図19】第2の実施形態に係る突起部の形成装置を簡略化して示す図である。
【図20】保持部を拡大して示す断面図である。
【図21】突起部の形成装置によって突起部を形成する方法を説明するための断面図である。
【図22】突起部の形成装置によって突起部を形成する方法を説明するための断面図である。
【図23】突起部の形成装置によって突起部を形成する方法を説明するための断面図である。
【図24】突起部の形成装置によって突起部を形成する方法を説明するための断面図である。
【図25】実施例(1)の結果を示す図である。
【図26】実施例(2)の結果を示す図である。
【図27】実施例(3)および実施例(4)の実施条件を説明するための図である。
【符号の説明】
【0150】
110、120 溶接軌跡、
300 突起部を形成する鋼板(少なくとも一方の溶接部材)、
310 表面処理が施された鋼板(他方の溶接部材)、
311 表面処理層、
340 溶接面、
341 陥凹部、
342 突起部、
343 盛り上り部(溶接部材の盛り上り)、
345 打点位置、
350 隙間部、
400 エア供給装置、
410 ポスト部材、
420 受け部材、
430 ベース、
440 リンク機構、
500 レーザ溶接装置、
510 受け台(受け部)、
520 打ち込み部材、
521、522、523、524 複数の打ち込み先端部、
529 ねじ穴、
530 アーム部(保持部材)、
531 ねじ部材、
532 調整穴、
533 角度調整手段、
535 支持構造、
536 支持部、
540 クランプ装置(クランプ手段)、
550 打ち込み用エアシリンダ(第1の駆動手段)、
551、561 エアシリンダ本体部、
552、562 エアシリンダ駆動部、
560 クランプ用エアシリンダ(第2の駆動手段)、
570 レーザ照射ロボット(レーザ照射手段)、
571 加工ヘッド、
572 ロボットアーム、
580 制御装置(制御手段)、
590 退避位置、
610 切り替え手段、
611 連結支持部、
612 切り替えピン、
650 共用化されたエアシリンダ装置(一の駆動手段)、
800 突起部の形成装置、
810 支持用ロボット、
812 ロボットアーム、
820 可動型、
830 固定型、
831 縦壁部、
832 連結壁部、
833 横壁部、
835、836 成形面、
840 保持部、
850 隙間空間、
860 打ち込み用エアシリンダ、
870 プレス型、
S1、S2、S3、S4、S5 動作信号、
h1、h2 突起部の高さ寸法、
θ、θ1、θ2 打ち込み角度、
W 隙間部の寸法、
W1 突起部が形成された部位の厚さ寸法、
W2 隙間空間の厚さ寸法、
L レーザ、
O 基準線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成装置であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材と、
前記少なくとも一方の溶接部材上において前記打ち込み部材が打ち込まれる打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において前記打ち込み部材を保持する保持部材と、
前記打ち込み部材を駆動して溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材へ打ち込む駆動手段と、
前記駆動手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記駆動手段の動作を制御して、前記基準線に対して傾斜させて前記打ち込み部材を前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する、突起部の形成装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記打ち込み部材が前記溶接部材に付与する圧力を調整自在に構成され、
前記制御手段は、前記駆動手段の動作を制御して、前記打ち込み部材が前記溶接部材に付与する圧力を調整し、前記圧力を増加することによって、前記圧力を増加する前の状態において形成される前記突起部より大きな高さ寸法を有する前記突起部を形成する、請求項1に記載の突起部の形成装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記基準線と前記打ち込み部材とがなす打ち込み角度を調整する角度調整手段を有し、
前記角度調整手段によって前記打ち込み角度を調整し、前記打ち込み角度を大きくすることによって、前記打ち込み角度を大きくする前の状態において形成される前記突起部より大きな高さ寸法を有する前記突起部を形成する、請求項1または請求項2に記載の突起部の形成装置。
【請求項4】
前記打ち込み部材は、複数の打ち込み先端部を構成し、一度の打ち込みによって複数の前記突起部を形成する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の突起部の形成装置。
【請求項5】
溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成装置であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材と、
前記打ち込み部材を駆動して前記少なくとも一方の溶接部材に打ち込む駆動手段と、
固定型および前記固定型に向けて近接離反移動可能な可動型を備え、少なくとも型の開閉方向に沿って折り曲げられた溶接面を前記少なくとも一方の溶接部材にプレス加工するプレス型と、
前記プレス型に設けられ、前記打ち込み部材を前記溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて保持する保持部と、
前記駆動手段および前記プレス型の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記プレス型を型締めした状態で前記駆動手段の動作を制御して、前記基準線に対して傾斜させて前記打ち込み部材を前記少なくとも一方の溶接部材に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成し、
前記プレス型は、前記突起部が形成される位置より型開き方向の上流側における前記固定型と前記可動型との間に形成され、前記突起部が形成された部位の厚さ寸法より大きな寸法の隙間空間を有する、突起部の形成装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記打ち込み部材が前記溶接部材に付与する圧力を調整自在に構成され、
前記制御手段は、前記駆動手段の動作を制御して、前記打ち込み部材が前記溶接部材に付与する圧力を調整し、前記圧力を増加することによって、前記圧力を増加する前の状態において形成される前記突起部より大きな高さ寸法を有する前記突起部を形成する、請求項5に記載の突起部の形成装置。
【請求項7】
前記打ち込み部材は、複数の打ち込み先端部を構成し、一度の打ち込みによって複数の前記突起部を形成する、請求項5または請求項6に記載の突起部の形成装置。
【請求項8】
前記固定型は、型の開閉方向に沿って互いに離間して形成された一対の縦壁部、前記縦壁部の端部同士を連結する連結壁部、および前記縦壁部から互いに離れる方向に延在する横壁部からなる断面ハット形状の成形面を有し、
前記可動型は、前記固定型に合致する断面凹形状の成形面を有し、
前記プレス型は、前記少なくとも一方の溶接部材を断面ハット形状にプレス加工する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の突起部の形成装置。
【請求項9】
溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成方法であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上における打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において保持され、前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材を、前記打ち込み部材を駆動する駆動手段を動作させて、溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する、突起部の形成方法。
【請求項10】
溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部を、前記溶接部材の少なくとも一方に形成する突起部の形成方法であって、
固定型および前記固定型に向けて近接離反移動可能な可動型を備えたプレス型によって、少なくとも型の開閉方向に沿って折り曲げられた溶接面を前記少なくとも一方の溶接部材にプレス加工する工程と、
前記溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記プレス型に設けられた保持部に保持され、前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材を、前記プレス型を型締めした状態で前記打ち込み部材を駆動する駆動手段を動作させて、前記基準線に対して傾斜させて打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する工程と、を有し、
前記型締めしたとき、前記プレス型は、前記突起部が形成される位置より型開き方向の上流側における前記固定型と前記可動型との間に、前記突起部が形成された部位の厚さ寸法より大きな寸法の隙間空間を形成する、突起部の形成方法。
【請求項11】
溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士をレーザ溶接するときに前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせる突起部が形成された前記少なくとも一方の溶接部材であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上における打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において保持され、前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材が前記打ち込み部材を駆動する駆動手段の動作によって溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記打点位置に打ち込まれることによって、溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りが形成された、溶接部材。
【請求項12】
溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士の少なくとも一方に形成された突起部によって前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせてレーザ溶接するレーザ溶接装置であって、
前記少なくとも一方の溶接部材を載置する受け部と、
前記受け部に載置された前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材と、
前記少なくとも一方の溶接部材上において前記打ち込み部材が打ち込まれる打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において前記打ち込み部材を保持する保持部材と、
前記受け部に載置された前記少なくとも一方の溶接部材上に他方の溶接部材を重ね合わせた状態で前記重ね合わせた溶接部材をクランプするクランプ手段と、
前記打ち込み部材を駆動して溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材へ打ち込むとともに前記打点位置から前記退避位置に移動させる第1の駆動手段と、
前記クランプ手段を駆動して前記重ね合わせた溶接部材をクランプさせる第2の駆動手段と、
前記溶接部材にレーザを照射するレーザ照射手段と、
前記第1の駆動手段、前記第2の駆動手段、および前記レーザ照射手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記第1の駆動手段の動作を制御して、前記基準線に対して傾斜させて前記打ち込み部材を前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成し、前記打ち込み部材を前記打点位置から前記退避位置に移動させて、前記受け部に載置されるとともに前記突起部が形成された前記少なくとも一方の溶接部材上に前記他方の溶接部材を重ね合わせることによって前記隙間部を生じさせて、前記第2の駆動手段の動作を制御して、前記クランプ手段によって前記重ね合わせた溶接部材をクランプし、前記レーザ照射手段の動作を制御してレーザを照射する、レーザ溶接装置。
【請求項13】
前記第1の駆動手段は、前記打ち込み部材が前記溶接部材に付与する圧力を調整自在に構成され、
前記制御手段は、前記第1の駆動手段の動作を制御して、前記打ち込み部材が前記溶接部材に付与する圧力を調整し、前記圧力を増加することによって、前記圧力を増加する前の状態において形成される前記突起部より大きな高さ寸法を有する前記突起部を形成する、請求項12に記載のレーザ溶接装置。
【請求項14】
前記保持部材は、前記基準線と前記打ち込み部材とがなす打ち込み角度を調整する角度調整手段を有し、
前記角度調整手段によって前記打ち込み角度を調整し、前記打ち込み角度を大きくすることによって、前記打ち込み角度を大きくする前の状態において形成される前記突起部より大きな高さ寸法を有する前記突起部を形成する、請求項12または請求項13に記載のレーザ溶接装置。
【請求項15】
前記打ち込み部材は、複数の打ち込み先端部を構成し、一度の打ち込みによって複数の前記突起部を形成する、請求項12〜14のいずれか1つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項16】
前記第1の駆動手段および前記第2の駆動手段として選択的に機能させ、前記打ち込み部材、または前記クランプ手段を選択的に駆動する一の駆動手段と、
前記打ち込み部材と前記一の駆動手段とを連結するとともに、切り替えによって前記クランプ手段と前記一の駆動手段とを連結する切り替え手段と、をさらに有し、
前記切り替え手段によって前記一の駆動手段を共用化する、請求項12〜15のいずれか1つに記載のレーザ溶接装置。
【請求項17】
溶接部材に形成された表面処理層を介して重ね合わせた溶接部材同士の少なくとも一方に形成された突起部によって前記溶接部材同士の間に隙間部を生じさせてレーザ溶接するレーザ溶接方法であって、
前記少なくとも一方の溶接部材上における打点位置と前記打点位置から退避させた退避位置との間において保持され、受け部に載置された前記少なくとも一方の溶接部材上に陥凹部を形成する打ち込み部材を、前記打ち込み部材を駆動する第1の駆動手段を動作させて、溶接面と直交する基準線に対して傾斜させて前記少なくとも一方の溶接部材の前記打点位置に打ち込むことによって、前記少なくとも一方の溶接部材上に形成される前記陥凹部に連続させて前記突起部をなす溶接部材の盛り上りを形成する突起部の形成工程と、
前記第1の駆動手段を動作させて、前記打ち込み部材を前記打点位置から前記退避位置に移動して、前記受け部に載置されるとともに前記突起部が形成された前記少なくとも一方の溶接部材上に他方の溶接部材を重ね合わせることによって前記隙間部を生じさせて、クランプ手段を駆動する第2の駆動手段を動作させることによって前記重ね合わせた溶接部材をクランプするクランプ工程と、
レーザ照射手段によって前記重ね合わせた溶接部材に対してレーザを照射する工程と、を有する、レーザ溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−64136(P2010−64136A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235652(P2008−235652)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
【Fターム(参考)】